ポケモン対戦ログ(2010.2.12) おまけ
かごめ「さてここからはどうでもいい裏設定とかそんなあたりだな。
今回はそんなもん抜きで次のログをまとめてしまいたかったんだが」
諏訪子「メタな話になるけどAC18の熱帯の開幕近づいてきてるんでしたっけ?」
紫「でも、年々プレイ人口減ってるとも聞きますし」
かごめ「だからと言って狐が目論見どおりに動くと思っているならその浅はかさは愚かしい。
アレはその時々のフィーリングを優先するから、人間が居るうちに対戦数稼いで検証作業とか始めたりするかも知れんぞ。
そうすれば次に対戦の機会を設けるのなんていつになる事やら」
諏訪子「ポケウォーカーで静か洞窟まで1万ワット切ったとか言ってたけど(3月7日執筆時現在)、そっちもどうする気なんだろ」
かごめ「ミカルゲは意地でも捕獲するとは思うよー。
実際、もっと早く最終コースまで到達してればそれで魅魔様を召喚するつもりだったらしいんだが」
諏訪子「先手を打たれてしまったと」
かごめ「こればっかりは仕方ない事ではあるんだが^^;
別に誰が誰を誘致するかなんて前もって定めていたわけじゃねえしな。
でもミカルゲはミカルゲで育てるんじゃないかとは思うが」
かごめ「で、例の話なんだけどな。
一応、見解を押し付けるつもりはないから好きにやってくれ、こっちも好きに書くとは明言してるらしいんだが…」
諏訪子「そこまで言ってるんだったら反映させない選択肢を取れば気楽でいいのにねー。
そこまで話の流れや世界観をリンクさせなきゃならないという事もないんだろうし」
かごめ「何でか知らんが、それを頭で解ってても感情で受け入れないのが狐なんだよ。
しかも相手の意向のほうを優先して、それを受けて自分の見解を構築する様なスタンスでいるらしい。
だからこんな馬鹿なことでいちいち悩まなきゃいけなくなるんじゃないかと思うが」
紫「でも逆に、そうなった場合どれほど事実関係に食い違いがあるのか見くらべてみるのも面白そうではありますけどね」
かごめ「確かに、今更な話だが実際に見てない状態でぶっつけ本番で当たったという視点と、あのまま見たことにしてどういうスタンスで臨んだ事にされてるのかは興味があるところだがな」
紫「あら、ある程度予測がついてたとかそういうのも全くないんですの?」
諏訪子「ないだろー。
そもそもあれだけ情報伏せられてたら、狐の脳味噌に完全予測を立てる能力なんてないわけだし。
その上霊夢はまだしも、萃香とか雛とかは他の人間にも予測不可能だと思うよ。
特にあの萃香の発想はそうそう出てこないんじゃないかなー」
かごめ「実際、狐は現物を見るまで姐さん対策の技って何なのか思い浮かびすらせず、紹介記事見て数分で考えるのやめたらしいからな。
つーかポケモンの種類まで伏せられていたものなんて、狐ごときに一切の予想は不可能だろう常識的に考えて。
それを「前もって見た」ともとれる扱いにされてたから、狐は混乱した状態のままたっぷり1日考えて、結局「見ても居ないものを予め見たような扱いにするのは…」とか言いに行っちまったわけだが」
諏訪子「なんでそんな苦行をするのかが意味不明状態」
かごめ「まったくだな。
どうせこっち側の天狗×2の見解など恐らく、一致をみる事はあるまいし、狐のは解釈的に如何なところの方が大きいと思うよ。
でもそれでも、もう熱帯開始までポプンではやることないし、なんとかさっさとあの対戦のログだけでも書く構えでいるらしい」
紫「だから強行軍でこんなものまで仕上げてるわけですね…これくらいやれるならさっさと幻想詩譜を完結させろと」
かごめ「フヒヒwwwwwサーセンwwwwwww」
おまけ1 「神話の幻想と詠う真祖」
魔界地方都市エソテリア。
そこは、魔界の最果て…表の世界との境界近くに位置する、伝説の多く眠る地。
かつて、魔界に覇を唱え、「魔界神」を名乗り天上の神々に挑戦した覇王が居を構えたその地に、彼が蘇ったのは偶然だったのか必然だったのか…。
その酒場の一角に、彼はいた。
かつて、その覇王を倒し野望を挫いた、伝説の勇者との戦いで負った傷だらけの姿、そのままで。
かつて地上を脅かした魔王としてのプライドも姿も捨て、ただ、好敵手と認めた勇者を倒すべく…戦う魔獣となった彼は、新たなる誇りと共に勇者たちと戦い…全身全霊の死闘の果てにその生涯を閉じた。
それが、何故この地に舞い戻って来てしまったのか…?
あるいはそれは、彼が護ろうとした少年の命を願った、気まぐれな人間の神の悪戯だったのかも知れない。
その少女達との出会いも、また…。
エソテリアの酒場の一角。
そこには彼と、その場にあはあまりにそぐわない格好をした少女が居る。
クセ毛の黒髪、僅かに紫がかった水晶のような瞳、華奢に見えて余計な肉付きのない整った容姿。
ゆったりとした白い半袖シャツと、デニム地のロングスカート。
外の世界ではごくありふれた少女の風体は、この魔界都市…まして、酒場という環境においてはあまりにも浮いていたと言わざるを得ない。
しかし、この少女を見咎める者はない。
魔界の都市でも、近年それなりの交流も見られるようになった外の世界に近いこの地は治安が比較的安定していたのも理由の一つだっただろう。
あるいは、形式上この地方をおさめている若き魔界北方公の手腕の賜物だったのかも知れないが…。
「さて…善は急げと言いたいところだが」
少女は宛がわれたグラスに口を付ける間もなく、懐からその卓に並べられた品物の対価をそっと、グラスの下に挟みこんだ。
そして、徐に立ち上がり、戸口へと歩く。
「…さっきからそこで見ているのは誰だい?
酒場ってのは、中で酒を飲むための施設であって、戸口でこそこそと中の連中を覗き見るような場所じゃない」
そのときになって彼も気づいた。
戸口に居た者の…途轍もない重圧を。
「あら…一応中立都市と定めてしまった場所で、余計な波風を立てるまいと思ってたんだけど」
現れた姿に、酒場の客たちからざわめきが上がる。
背格好はその少女とさほど変わらないだろうか。
薄いブルーの髪を左側だけ結い、派手さよりも重厚さを感じさせる緋のドレスを身にまとった…あどけない表情の少女。
「あ…あれはっ…!」
「間違いねえ…魔界平定の会盟に参加した六大実力者の一人…」
「よ、止せ馬鹿ッ!それを聞かれたらッ…!」
少女の手がすっと、天を衝こうとするその刹那。
「…やめときなよ。
別にあんたを馬鹿にしてるってわけじゃないんだろう?」
「あら…そんな動きにくそうな服で、意外に速く動けるのね。
止めるきっかけを貰えて助かったわ」
一瞬のうちに、黒髪の少女がその隣に姿を映し、振り挙げられようとする手を制していた。
「……とりあえず、表に出るかい?
交渉は既に終わった、と言っても、納得するような性格はしてないんだろう?」
「あらあら…勘違いしてもらっては困るわ。
私は交渉に来たんじゃないのよ。
けれど…確かにここでは迷惑になりそうだわ」
彼は、その少女の指すような視線に、静かに殺気の色が混じり始めている事に気付いた。
♪BGM 「神話幻想 〜 Infinite Being」♪
「私はあなたの顔を知っているわ。
けれど、あなたは私が何者かという事に気が付いていても、直接は知らないでしょうから自己紹介しておきましょうか?」
「結構。
魔界六大公がひとり、魔界神・神綺の名を知らん奴なんざ魔界に居てたまるか。
確かにあんたほどの実力者になれば、おいそれと魔界の外に出てくるわけにもいかんだろうが」
黒髪の少女がその肩書を告げたときに、神綺と呼ばれた少女が僅かに眦を釣り上げるのを、彼は確かに見ていた。
しかし、神綺はすぐに、元のような穏やかな表情に戻す。
「今は、そういうことにしてあげるわ。
いずれすべて私の手元に戻ってくる予定のモノ。
でもね」
神綺の笑みから穏やかさが消える。
「だからこそ、そこの魔族さんを勝手に連れ出していただいては困るのよ。
今、何者の支配も受けていないとはいえ、魔界にあるモノは総て私のモノよ…」
彼は、その鋭い眼光に戦慄した。
其処から放たれるは、かつて彼が仕えた魔界の覇者に匹敵する強大な重圧。
しかし。
「…で、意味も解らず唐突にこの世界に投げ出され、今これから新しい道を探そうとする大将を…“可愛いアリスちゃん”の手駒にするために連れてくってのかい?
やめときな。
あいつは…アリスはもう、あんたの庇護が必要なほど弱い存在じゃない」
処女は臆する事もなく言葉を返す。
「今はよく解ってないかも知れない…あるいは頭のいいあいつのこと、既に頭で理解しても感情で受け入れきれずに困惑しているだけなのかも知れない。
どう言う理由かは知らんが「全力」を出す事を恐れ、それ故己の本心をさらけ出せずに頑ななまでに他者とのつながりを避け、深く関わるまいとしてたアリスは…共に力を合わせ、競い合わせることを知って変わろうとしてるんだ。
あんたがあいつの親というなら…もう解ってるんじゃないのか?」
その言葉に、強い感情が籠り始めている事を彼は知った。
怒りでも、憎しみでもない。
「…それに、大将…ハドラーは、あたしの元で新たな道を探ってみると約束を交わしてくれた。
其れを今更になって、品物扱いして動くような性格を、この大将がしていると思う?」
黒髪の少女は、羽をかたどった髪飾りを外す。
そのとき、彼…ハドラーにも、ふたりの体から凄まじいオーラが立ち上っている事に気づく。
「それでもここで…あたしを殺してでも、強引に連れ帰ってみるかい?」
その言葉よりも早く、少女は一足飛びに間合いを詰める。
次の瞬間。
黒髪の少女の手に握られた一振りの刀は、神綺の片腕…いや、細く透き通るような人差し指と中指に止められていた…。
「成程…“炎剣の詩姫”…いいえ、“神を断つ剣”と言われるだけあって、予想よりも良い動きをしたわね。
…思わず、受け止めてあげてしまったわ♪」
「…ちぇっ…真っ二つに叩き斬ってやるつもりでやったのを、こうまであっさり止められたんじゃね。
いいよ…好きにすれば」
少女が手の力を緩めるのと、刀が解放されるのはほぼ同時だった。
刀は何時の間にか、元の髪飾りの姿に戻っている。
振り向いた少女は、少し困ったように彼に笑いかけた。
「大将、あんたどうするよ?
さっきああは言ったが…あんたが別の道を求めるなら止めやしないさ。
あのお方はいずれ、魔界の全土を掌握なさる身の様だからな」
彼の答えは決まっていた。
「…神綺といったか…。
オレは既に、彼女…藤野かごめの七度に及ぶ礼を受け、その元で新たなる道を探すことに決めた。
貴様がいかなる存在であろうが…オレはもう、己の言葉を曲げるつもりなどないっ…!」
神綺は再度、その顔立ちに似合わぬ鋭い眼光を投げつけてくる。
その表情が、最初に姿を現した時のあどけない表情へ戻る。
「ふっ…ふふふふふ…この私を前にして、私がこれほどの力を見せてあげたというのに全然物怖じしないのね。
気に入ったわ、あなた達。
ただし、よく覚えておくことね…」
神綺が飛翔する。
何時の間にかその背には、鋭利なフォルムを持つ三対六枚の白い翼。
魔界を照らす紅い月の光を逆光に浴び、その姿は魔界の神と呼ぶにふさわしいモノに、ハドラーには思えた。
「魔界の存在する総てのものはこの私、魔界神・神綺の手によって生まれ、統べられるべきモノ。
勿論、ハドラーちゃん…貴方もね。
そして、かごめちゃん…貴方は人の所有物を勝手に持って行こうとしている…これがどういう意味か、わかるわよね?」
「…そんなにアリスの事が可愛いなら、その地位を捨ててでもあんた自身があいつの力になってやればいいじゃない。
ただし…あたし達が今やってるのは殺し合いじゃない。
誰かを自分の支配下に置くという戦争でもない…それが本当に解っているんだったらね…!」
二人の視線が再度交錯する。
「本当に…小憎らしいほどいい度胸をしているわ。
その言葉、後悔しないことね…御機嫌よう」
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♪BGM 「砕月」(東方萃夢想)♪
神綺が去って、一体どれほどの時間が経ったろうか。
「ふぇー…。
まさかあんな大物が、こんな辺境にまで自ら出張ってくるとはなぁ。
アレはアレなりに、本気だったってことかい」
黒髪の少女…かごめは、その場に腰を落とした。
「思わず抜いて斬りかかっちまったがなー…案外そっちの方で話が通じるタイプだったみたいだな。
お陰で助かったわ。
あんなのと何の手立てもなくタイマン張るなんて、命がいくつあっても足らないよ」
振りかえった顔で、苦笑してみせる。
「ふ…小気味良い娘よ…!
お前はむしろ、俺が戦った勇者よりも魔法使いのほうによく似ている。
だが…あいつも言うなれば一人の勇者だった…今のお前と同じように…!」
ハドラーは、その手を取って正面に立たせ…ふたりは向かい合った格好になる。
「…知っての通り、オレには何も残ってはいない。
共に歩む者とは言ったが、気が変わった。
オレはお前…いや、あなたをこの時点より新たな主として仰がせてはくれぬだろうか?」
「……そんな堅苦しくしなくてもいいのに。
ま、呼び方はあんたに任せる。
これからひとつ、宜しく頼むよ」
「こちらこそだ…新たな主殿よ」
そこに、新たなる契約が成立した。
おまけ2 「天狗異聞」
その会場に入ろうとしたところで、その黒髪の少女は何かの気配を感じて立ち止まる。
「どうした…っと、主殿?」
「…すまん姐さん。
ちとあたしはやりたい事ができたから、ここで帰らせてもらうわ」
姐さん、と呼ばれたその長身の女性…鮮やかな金の髪に、額から延びた一本の角。
かつての山の四天王である星熊勇儀は、その表情を気にしない振りをして応えた。
「…ああ…皆まで言わなくても、なんとなく解った。
あたしは、萃香の戦いぶりでもじっくり観戦させてもらうよ」
少女はそのまま振り返らない。
「…すまんね、じゃあまた後で」
少女は手をかざし、そこに生まれた空間に飛び込む。
「あら、あの子帰っちゃったの?
残念だわ…面白そうな子だったからもう少し話をしてみたかったのだけど」
頭の片側だけ結った、目の覚めるようなブルーの髪と、緋一色のドレスという少女…魔界神・神綺は残念そうな表情でつぶやく。
済まないね、と勇儀は一言詫びの言葉を告げる。
「“あいつ”は気分屋なところもあるから…気分を害したようなら、“あいつ”に代わってあたしが詫びるよ」
「いいのよ、別に気にしてないし。
…かごめちゃんは思ったよりも度胸があり、かつ聡い子だから…二度もこの私に何の策もなく喧嘩を売ってくるのはおかしいと思ってたけどね♪」
神綺は気にした風もなく、勇儀や連れ合いに、会場へ入るよう促す。
もしかしたら誰もが、それに気づいていたのかもしれないが…。
「ちょっと、にとり!
突然、戻って来い、なんてどういうことよ!」
そこからさほど離れていない森の中、彼女は唐突にそこに姿を現した。
そして、その場に居合わせたであろう協力者の名を大声で呼ぶ。
「そんなに大声を出していいのかい?」
突如、森の闇の中から響く声に、彼女は体を硬直させた。
「別に偵察しに出かけて来たのをとがめるつもりはないさ。
シンオウ地方でも、何時の間にかいなくなってて気づいたら帰って来てる、そんな事もしょっちゅうだったからな」
ゆっくりと、その声の主の輪郭が闇の中から浮かび上がってくる。
その後ろから、もう一人金髪の少女と…。
「…ふぇぇ…ごめんよ文ぁ〜…」
「にとり…!」
協力者であった青い髪の少女…谷河童のにとりは、後ろ手に戒められて姿を現す。
「駄目だよ文ぁー、ししょーも勝手に居なくなって心配してたんだからねー!」
闇が晴れてくるとともに、金髪で小柄の少女が姿を見せる。
宵闇の妖怪・ルーミア。
彼女と行動を共にする少女が、最も信を置く“仲間”の一人。
一寸先も見通せない近辺の闇は、彼女の能力により生み出されたものである。
そして…ルーミアと共に現れた黒髪の少女は…文と呼ばれたその少女とまったく同じ顔立ちと姿をしていた。
「だから、心配はしてないって言ったろルーミア。
あたしが気になってるのは…何故、あたしになり済まして、しかも姐さんまで巻き込んだかってことだよ!」
瞬間。
彼女は、反射的に逃げ出そうとしたその少女の背後に回り込む。
本来なら、文と呼ばれたその少女がこうも容易く背後を取られることはなかったろうが…そのまま、彼女は力任せに草の上に組み敷かれていた。
「…くぅッ!」
「何故こんな事をした!答えろ、文ッ!」
苦悶の表情のまま、文は自分を組み敷いた少女の表情を見て驚愕した。
だが、感情の片隅で…そうされても仕方がなかったのだ、という事も、彼女には解っていただろう。
見た目よりもずっと聡い彼女が、それを理解するのに然程時間はかからないはずだった。
その少女が、勝手に相手を探ろうとしていた事を怒っていたのではない。
何故、文が自分自身の姿で堂々と潜り込もうとせず…彼女の姿を取っていたのかという事。
自分の生まれ持った「速さ」を武器に、変装などといった小細工を決して弄さず、身ひとつで情報を集めることを旨とした彼女が、何故矜持を曲げ、しかも他者を巻き込んだかというその一点…。
けれど。
♪BGM 「羽根 -Plame-」(「AIR」)♪
「……あなたには解らないわよ……!」
頭では解っていたのだ。
しかし、彼女の感情が、それを認めることができなかったのだ。
「…気まぐれで…自分の似姿を勝手に作られて…それに打ちのめされた挙句っ…自分の力まで奪われた私の気持ちなんて…!」
惨めだった。
いかなる理由があったとはいえ、自分で吹っかけてしまった喧嘩で負けてしまったその事が。
その悔しさが、一筋の涙となって、瞳から零れ落ちていた。
「だから…あいつを見返してやろうとしたのか。
だったら、どうしてあたしになり済ます必要があったんだい?」
少女は、ゆっくりとその戒めを解く。
本音を吐きだした彼女が、もう逃げることはしないということを確信したからであろう。
「…ったく…中途半端に意地っ張りだな、おまえさんも。
本音を滅多に吐かない分、レミリアの数倍タチが悪いわ」
呆れたような口調で、ゆっくりとその体を起させる。
自分の泣き顔を見られる事を避けようとしたのか、文は項垂れたままだった。
「……話してくれ。
文、お前幻想郷で何があったんだ?
ここまでしなきゃならなかった…あのアカギに対しても一歩も引かず啖呵を切って見せた、気丈なあんたが泣かなきゃならんほどのその理由を」
長い沈黙の後、彼女はその出来事を話し始めた。
八雲紫が作り出したというその分身と雌雄を決するべく息巻いていた文であったが、その行方は杳として知れなかった。
紫の式であれば恐らくは彼女と同じ場所に住んでいるか、もしくは専属的に従っていたアリス=マーガトロイドと共に居るだろうという事まで予想は着いていた…はずだった。
しかし、当のアリスはいまだに幻想郷に戻って来ている気配もなく、紫の住む家などそもそも幻想郷の誰もが知らないし、彼女もその例外ではない。むしろ、八雲家が何処にあるのかの捜索も、普段の自分にとっては暇潰しのひとつだったかも知れない。
そこからは、「記者魂」の基本に帰って、心当たりのある場所を虱潰しに探す事だった。
(仕方ない。
認めたくなんてないけど、私とまったく同じ行動パターンを持ってるなら…)
彼女は、長く留守にしていた自分の家に戻ることを決めた。
「あれ?
文様何時の間に、外へ出られてたんですか?」
山の滝…雪も解け始め見事な枯山水の風景を作り出しているその場所で、文は一人の天狗と出会った。
白狼天狗の椛、山の天狗社会における、文にとってはほぼ唯一の部下と呼べる存在であり、お互い気の許せる数少ない友人の一人でもあった。
“仲間”の増えた現在においても、それは変わる事はない。
その椛が、不可解な言い方をした。
それは、まるで自分が今まで自分の家に居たかのような。
嫌な予感が脳裏をよぎる。
「…椛、その“私”を、何時私の家で見かけたの!?」
「え…ほんのついさっき…半刻程前ですけど…。
どうしたんですか文様?怖い顔をなさって…」
文は困惑する椛を余所に、応えることなくその場を飛び去った。
一番の問題人物である霧雨魔理沙不在とはいえ、念のため厳重過ぎるほど施錠してあった家の扉があいている。
はばかることなく、家の中を好き放題に散らかすその影と物音。
「ふーむ、流石にスペカをそのまま放置して出掛けているわけもありませんでしたかー。
あの貧弱オリジナルの事だからそのくらいのマヌケをしてるかと思いましたが…。
ま、そうでなければ小生もそんな馬鹿と同類視されかねませんから、良いのやもしれませんなあ!」
文は反射的に、部屋の中に飛び込んでいた。
「あんたッ!!」
「おや、これはこれは…直接会うのは初めてでしたっけなぁ。
丁度いい、探してぶちのめす手間が省けた。
生憎自己紹介している時間も惜しいので、こちらの用件だけを済ませるとしましょう」
向かい合った、全く同じ顔立ちの天狗がふたり。
「生まれて間もない小生には、技を練る暇がなかったのですよ。
最強最速の天狗となる為の礎に、まずはあなたの技を使ってやる事にしましょうか。
…なに、小生のほうが巧く使える筈…あなたは負け犬ならぬ負け鴉として、惨めに這いつくばっているといい!!」
「…成程…それでスペルを4枚も取られた、か。
にとり、お前まさかその事」
「知らなかったよ…でも、なんとなく何かあったとは思ってた。
いい加減付き合いも長いし、私の実験中だったスキマ発生装置を貸せって言って来たとき、焦ってるのは解ったから…断るに断り切れなかったんだよー。
…だからいい加減に私もスマキから解放してほしいんですわ?お?^^;」
何処から調達されたのか、布団と縄で笥巻きにされてつるされているにとりと一瞥もせず、その少女は暗闇の中へ呼び掛けた。
「…見てるんだろう、紫?
あたしゃまだ幻想郷のルール、とりわけスペカルールに関しての知識が今ひとつなんだ。
…こういう場合の落とし前ってどうなるのか一つ聞いておきたいんだが」
「あら…最近はすぐ解られてしまうんですのね…。
私の隠形術も錆びついてしまったのかしら」
木陰から、一人の女性が姿を見せた。
陰陽五行をモチーフにした、ゆったりとしたワンピースの裾を翻し、紫は真剣な表情でつぶやく。
♪BGM 「夜が降りてくる 〜 Evening Star」(「東方萃夢想」)♪
「先に手を出そうとした事は彼女に非がある。
しかし…アレの所業ついては許されざる事。
式が犯した罪は、契約主でもある私の責任でもあります…そのために、与えた私の力の残り分を使ったというなら、なおの事」
「スペルカードのルール上、持ち得た能力は如何なるものであっても使うことは許される。
それが、他者の能力を盗用し自分の能力とする能力であっても、他者の技を己の力で再現して使う事も…場合によっては、双方同意の上かつ立会人があると言う条件の元で貸与や譲渡も許される。
…しかし…」
「いかなる理由があるとはいえ、他人の技や力を物理的に強奪し、我が物顔で使用するなどあってはならぬ事。
スペルのアンティ(賭け)も、受けるも持ちかけるも禁則事項です。
アレの行動はその両方を満たし…あまりにも重大なルール違反と言わざるを得ない。
他の取り決め事は多く形骸化している中で、このスペルカードルールのみ誰ひとりとして犯した事はない」
「…それじゃ、白黒の場合はどうなるんだい?」
「あの子は、表面上の評判はどうあれ、己の努力で技を磨いてきました。
その代名詞とされるマスタースパークも、ノンディクショナルレーザーも、元は別の者が使っていた技から彼女自身の力で再現してスペルとしたもの。
禁則に抵触するところはありませんわ。
あの手癖の悪い彼女ですら、他人のスペルそれ自体を強奪してはならないというルールには忠実に従っているのです」
紫は溜息を吐く。
「…急ごしらえで、彼女の髪と、以前死にかけていたのを拾ってきた外の世界の木葉天狗の体を融合させ、アリス専属の記者天狗としたのですが…ベースとなった木葉天狗の性質が強く残ってしまい、善悪の見境のない性格となってしまいました。
時間が足りなかった故、後々再教育を施すつもりでいたのですが…その矢先にこんな事件を起こしてしまうとなれば」
「待ちなよ。
どんな理由があれ、一度生み出された者をそうホイホイ消す事はどうかと思うね。
式とはいえ、あいつも生きているんだろう?」
「…何が言いたいのです?」
「落とし前は、当人同士でつけさせればいい。
式というなら、本来の性能を発揮するためには定期的にあんたの力を与えてやらなきゃならない、そうだろう?」
「ええ」
「だったら、あいつに力を一切与えず、当人の力だけで文と戦わせてやってくれ。
ベースが同じ天狗だというなら、独力で戦えないわけじゃないんだろう?
もし何か理由を付けて逃げ出そうとするようなら、あんたの口先三寸で言いくるめて無理矢理に舞台に引きずり出す事だ。
式の責任を取るというなら、あんたの落とし前分はそれで十分だと思うが」
「ですが…それでは」
「盗られたカードと、あいつをどう扱うかはそのときの勝者が決めればいい。
…でも」
「文、お前はどうする?
ここまではあたしの提言に過ぎない…あんたはあんたで別の意思があるなら、それに従うよ」
少女は、自分の腕の中でうつむいたままの文にそっと話しかける。
数分の沈黙の後。
「…考える時間…ちょうだい」
彼女はそれだけ、力なく呟いた。
諏訪子「なあかごめさんよ、あんたちょっとわずかに自分らの事美化し過ぎでね?」
かごめ「そういう系統の事は狐に言ってくれ。つーかアレが全部悪い」
紫「言われてみればそもそも、アレがクローンだって言いだしたのも狐の野郎ですし…それに合わせてくださったアリスの中の人の苦労とかマジで考えてないですよね^^;」
かごめ「まぁ先の話のネタバレになるけど、これもふみ坊が何にされてるか知った後で思いついた話だからなぁ。
原作設定では天狗のランクって4つあって、上から天魔、大天狗、鴉天狗、そして白狼天狗を含めた雑多な小天狗ってことになってるんだろう確か?
狐観でも、まぁポプ世界がベースになるんだが、一応天狗にも大天狗とそれ以外って区別はあるらしい」
諏訪子「そんなのあったんかい^^;」
かごめ「大天狗ってのがあくまで、天狗族を束ねる長の称号として存在してるって程度だがな。
あと天狗にも色々種類があって、御馴染の鴉天狗の他、有名なところでは話の中で出て来た木葉天狗(このはてんぐ)、川天狗というのがいる。
このあたりは水木しげる大先生の「日本妖怪大全」(講談社刊)に掲載されていた種族だが…狐設定上、こっち(かごめ達)の世界で大天狗の地位についているのは、智羅っていう白い鴉天狗ってことになってるね」
紫「つまり天狗に種族の違いがあっても、ランクには影響していないということになりますわね」
かごめ「可能な限り、ポケモンとは無関係のニュートラルな状態では、文とふみ坊のふたりに差はないしあることにしたくないというのが狐の考えらしいんだな。
その解釈を踏まえた上での話はネタバレになるからここでは伏せるが…ヒントは河装備のにとりとみとり」
諏訪子「あー…そういうことかー…。
なんとなく何をやりたいのか解る人にはわかっちゃうねー^^;」
紫「というか…そういうややっこしい設定考えるの好きですねぇ…^^;」
かごめ「元からそういうの好きだったけど、最近「古明地こいしのドキドキ大冒険」観るようになってから尚更な…。
そもそもあたしの過去だってロクな設定されてないぞ。
そのうち、それに関わった奴をあたしの手持ちで参加させるってほざいしてるし何がしたいんだろな本当に…」
かごめ「というわけで今回はこれで終わり。
…つーかこれからAC18で戦争開始って言ってるから次のログも何時になる事かだな」
諏訪子「それよりも、私とか対戦できる環境にはなるのかその辺が心配^^;
折角3V確定ルンパっていう最高の状態で話に絡めるかと思ってたのにー」
紫「( ̄□ ̄;)それで全力じゃないとかどの口が言ってるんですかあんた!!」
かごめ「じゃあそういうことで><ノ」
(ログ終わる)