対戦の後
フィールドの地面は所々岩山の様に隆起し、瓦礫の山状態になっている…
♪BGM 「地霊達の帰還」(東方地霊殿)♪
かごめ「上級神格クラスが加減もせず大暴れしたとはいえ、しかしまぁ…^^;」
アリス「ええ…ここまでの状況になるなんて予想GUYだったわ^^;」
魅魔「(首から下はフィールドに埋まっている)
一体どうすんだいこれ?
そもそもさぁ、中にはここまでじゃなくてもフィールドは滅茶苦茶になることだってある筈だろ?
…そういう場合の対処法って」
かごめは無言で懐から小さなカエル型の鈴を出して鳴らした
次の瞬間上空から巨大なガマガエルに乗った諏訪子が降ってきた!
諏訪子「御呼びー?^^」
かごめ「おう祟神様、お仕事の依頼なのぜ^^」
諏訪子「(大袈裟な仕草で周囲を見回す)ん〜…ほうほう、こりゃあ派手にやってくれたねえ^^;
まぁでも、このくらいまでなら何とかなりそうだね。
三十分ほどかかるがいいかい?」
かごめ「インターバルもあるし問題なかろ。
…つーわけで魔界神サマよ、あんたら負けたこったし費用よろしく」
神綺「( ̄□ ̄;)はい!?
ちょちょ、それはないんじゃないかしら…確かに私もやったはやったけど殆どはそこの鬼とか魅魔とかが」
勇儀「(∩゚д゚)アーアーきこえなーい」
魅魔「まぁアレだね、こういうのの後始末をつけるってのは基本的に軍師、戦略立案者の役目じゃね?
自信満々だったわりに結局はこのザマなんだから勉強料としては丁度いいんじゃねーのー?(にたにた)」
神綺「…ねえ土着神さん、あの首だけ出してる悪霊も一緒に始末してもらえないかしら…?(#^ω^)ビキビキ」
諏訪子「んーっと…(ケロ帽から算盤を取りだす)
土地霊の浄化は追加でサービス料取るからそれ含めて…出来れば幻想郷や魔界の通貨以外で欲しいから、例えば金とかだとキロ数に換算して…こんなくらい?」
神綺「……あら、値切ろうかと思ったけど案外リーズナブルじゃない。
良いわ、その程度の金塊なら後で来る連中に持ってこさせるわ。
あの悪霊タチ悪いから、後腐れないくらい完全浄化してやってね♪」
諏訪子「毎度ありー^^」
魅魔「( ̄□ ̄;)ちょ!お前らそれ冗談にも程があr」
諏訪子「まずは軽く地ならし…いっくよー!土着神“手長足長さま”!!>▽<」
魅魔「( ̄□ ̄;)ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああす!!?」
神奈子「なんだい諏訪子の奴、何時の間にバイト始めたいんだい?」
早苗「確か…命蓮寺の更地作ってからだったと思いますけど。
そのときのお礼に、って白蓮さんの口利きで仕事斡旋してもらったとか言って…結構いいお金になるんですよ?^^;」
みすちー「いやおまいら、そこは気にするところじゃない気がするんだが…?^^;」
(藤野一家控室)
♪BGM 「河童様の云う通りを何も考えずにアレンジして見た。」(引用元 要ニコ動アカウント)♪
ベッドに気を失ったままのルーミアを運んできたつぐみ達は、神妙な顔で畳の上に円を書くようなポジションで座っていた。
暫しの沈黙の後、口火を切ったのは意外にも…
「…こうなることは大体、予想は出来ていたわ。
正確に言えば「見えていた」と言うべきなのかもしれないけど」
何時になく神妙な表情で呟くレミリア。
チルノは俯いたまま、その胸中を口にする。
「…でも…酷いよ。
ルーミアだって必死だったのに…どうして」
「だからこそ、だったのかも知れないわ。
今のルーミアが一番恐れているのは、かごめの役に立てない事、その一点よ。
…一見非情な指示にも思えるけど、相手に対して何もせず犬死という結果を迎えれば…あの子は余計に傷つくでしょう。
気に病んだって仕方ないわ」
あの時ルーミアに全力の攻撃魔法を浴びせた形になって、思いつめた表情のつぐみの肩を、レミリアは軽く叩く。
「…解ってるよ。
かあさ…かごめさんは、そういうところもあるひとだから。
きっとルーミアも、解っていると思う。あの子は、見た目よりもずっと頭のいい子だから」
「でも…だとしたらルーミアは余計に心苦しい想いをするかもしれないよ。
…あたいは頭良くないから巧く言えないけど…かごめの言葉には、誤魔化したりとかそういうのってないから…だから」
「そうね、あなたの言う通りよチルノ。
かごめの言葉には何時だって「飾り」がない。
だからこそ…私もこうして、何の迷いも衒いもなくあなた達とこうして話したりできるようになれたのかもしれない」
立ち上がり、その周囲の面々を見回すレミリアの表情も…真剣だった。
彼女は意を決したかのように、その言葉を告げる。
「もし知らないのなら…あなた達には話しておくべきかもしれないわ。
この中で、ルーミアがどういう経緯で生まれたか、その出自を知ってるひとはいる?」
顔を見合わせる少女達。
「…そう言えば…あたい知らない。
元々、慧音先生のところで初めて見た子だったかも。
みすちー達が森で昔から見かけたって言ってたけど、何時からいたのかとか誰も知らない、って」
「当然、私達も今回の件に絡むようになってからですね…」
「私も」
「まあそうでしょうね。
…フランに関しては、私達の事情も絡んでるから…知ってたら、むしろ何処で知ったのか私が知りたいくらいだわ」
「でも、かごめさんは何か知ってるみたいだった。
多分、そんなに前からじゃあないと思うけど…」
つぐみの言葉に頷くレミリア。
「だったら、心して聞きなさい。
私もまた聞きの話になるけど…これは、ポエット達の世界にも関わることらしいわ」
ポケモン対戦ログ(2010.4.29・4.30)幕間 「我が親愛なる闇の天使よ(前編)」
数週間前、陽だまりの丘 藤野家邸宅
一体何カ月ぶりになるだろうか…真祖となって百数十余年暮らし続けたその家に、かごめは帰って来ていた。
幻想郷やシンオウでの暮らしは長かったため食料の備蓄はなかったものの、その件に関してはスノームーンの城下町に立ち寄って仕入れて来たので問題はない。
今頃はシンオウを駆けずり回っている佐祐理も、太陽の丘で向日葵の様子を見に行っている葉菜も、幻想郷へ遊びに行っているポエット達も居ない。
彼女は何カ月ぶりかになる一人の時間をゆっくりと満喫していた。
その静穏な時間を破ったのは…。
「御機嫌よう。
初めてくる場所だけど、随分良い居場所に住んでいるのね」
かごめは一瞬怪訝な顔をすると、明らかに嫌そうな表情を作ってその来訪者…紫を睥睨する。
「…一体どうやってここまでたどり着いた?
幻想郷からじかに飛ぶなんて、いくらあんたでも出来ないだろ」
「うふふ…私の力を甘く見て頂いては困りますわ。
時間はかかりましたが、あなたの妖気を次元世界中から探り当て、境界移動の座標に既に組み込んでいたのですから。
座標さえつかめるのでしたら、容易いことです」
「流石に本家本元かい…行ったことのある場所にしか行けないあたしとは大違いだな」
かごめは苦笑し、勝手に縁側に腰かけた紫を咎めることもせず、杯を渡してそこに酒を注ぐ
「…何か、話でもあるのかい?
ただ呑み相手が欲しいだけなら、そんな七面倒な手順を踏んでまであたしを探す理由があったとも思えない。
姐さんとからなら解らんでもないが」
「あらあら…まるで私が現れることそのものが厄介事みたいな言い方をなさらなくても…^^;
何時ぞやの件のお詫びもしようかと思いましてね」
しらじらしい、とかごめは一息に飲み干すかごめ。
「…まぁ確かにな、あんたの判断は正しかったと思うよ。
大将の魔力は“黒の核晶”の埋火に大分侵食されてたし、あれを切り離してしまわないと折角別の体に生まれ変われても、何時かは魔力が暴走して…良くても生ける屍だ。
大将努力家だし、失った分の魔力ぐらいはそのうち自力で取り戻しちまうだろうしな」
「ええ…アレは流石に残すわけにはいきませんでしたから。
だから、そろそろあなたのところにある最後の「問題」も、片づけなくてはいけない時かも知れません」
「…問題?」
神妙な表情の紫に、かごめは聞き返す。
「古明地こいしの暴走に端を発する、魔晶石の問題の解決。
プリズムリバー姉妹の解放と、冥界における貪欲なる永遠の残滓の消滅。
アリス=マーガトロイドと風見幽香の確執の解決。
そして…今アリス達が図らずも関わることとなった、魔界の反乱の気配。
最後の一件を除き、幻想郷に関わる懸念材料の大半は、あなたのおかげでここ数カ月でほぼ解決済みか、解決のめどが立ちはじめている。
私の手も出しようがなく…霊夢の手にも負えない問題を解決してくださったことには感謝の言葉もありません」
「そして…残る問題はただひとつ、ルーミアのみ」
「…ルーミアだと?」
かごめは鸚鵡返しに効き返す。
「…かごめさん、あなたは彼女の事について、どのくらいまで当たりがついていますか?」
「当たりも何も…考えてみれば、あたしはあいつのことをあまりよく知らん。
ただ、どんな過去を持っていようとも、今のあいつはポエットやフラン、レミィと同じように、あたしにとっちゃ可愛い妹みたいなもんさ。
…最近、思うように戦えなくなって悩んでるのが、不憫ではあるけどな」
「そう。
カンのいいあなたの事だから、既に正体について何らかのあたりがついているものと思っていましたが…」
かごめは一瞬、目を逸らす。
「…そうじゃない。
あたしは、あいつの正体について気にしないフリしてるだけだよ。
…あいつのリボンが何かの「封印」だってことくらいは、流石に気がついた。
ポエットですら、アレに触ることすらできなかったんだから」
そして再び、かごめは神妙な表情で紫と向き直る。
「紫、あんた本当はあいつの正体を始めから知っていたんだろ?
以前あんたは、あいつの出自について微妙にはぐらかそうとしたことがあった。
何故今更になって、そんな話を持ち出してきたんだ?」
真剣な表情で向かい合う二人。
「…それを今になって訊く、と言う意味では、裏返せばあなた自身がそれを問うべき時を理解していたということになりましょう。
私がわざわざ今頃になってその話を持ち出してきた、それ即ち最後の機が熟したということ。
私が…幻想郷の為、彼女に施した「封印」の効力が弱まり…再び、堕天使である彼女の封印が解かれようとしている今をおいて他にない」
思いもよらぬその一言に、血相を変えるかごめ。
「堕天使…だと?
あいつが…!?」
紫は頷く。
「あなたの過去の事は、るりさんからも伺っています。
今なお、冥界の最深部で自らの罪を償うかのように、己を封印している嘗ての大真祖・ジズにより運命に翻弄され続けたことを。
…そのさなか、あなたは堕天使となったポエットと…己の分身と戦っている。
それ以外にも」
「ああ…嘗てホワイトランドのノイグラード王家を滅ぼしたアンネースとも戦った。
堕天使と言う存在がどれだけ恐ろしいかくらいは、よく知ってる」
紫は僅かに目を伏せ、次の言葉を僅かに躊躇したが…やがて意を決したかのように言葉を続ける。
「…ルーミアは、そのホワイトランドの天使の中で、史上最強と言われる力を持つ堕天使…と言ってもいいかも知れません。
原初の堕天使であるアンネースを、はるかに凌駕するくらいの。
そして…彼女を生みだしてしまったのは…他ならぬ私なのです」
「何だって…どういうことだ!?」
「その事を語る上でも…私の過去の事を、あなたにお話しなくてはならないでしょう。
私も元々は、多少は魔力の高い程度の人間。
あなたとも、東風谷早苗の住んでいた世界とも違う…また別の、同じ世界観を持つ平凡な世界に生きていました。
…大切な友を、「
紫は寂しそうに眼を伏せる。
それは…幻想郷では誰も見たことがない彼女の表情であったかも知れない。
「私は、それまであなた方の世界にもある概念…大学で、友人と二人超常現象を研究する活動をしていました。
元々「物事の境界が見える」という能力を持っていた私は、ある場所の魔力溜まりから偶然、現在の幻想郷を覗き見てしまった事がある…。
そのことにより、世界を飲みこもうとする「渦」の存在も知ってしまった」
「「渦」は、魔力を持つ私を糧にしようと近づいてきました。
私はそれに気づかず…呑まれる寸前のところで、助かることが出来たのです。
…同じように強い魔力を持つ、友の犠牲によって」
「友の記憶は、それきり…私以外の総てから消えてしまった。
存在そのものが、「渦」に飲み込まれてしまったために。
…やがて、私もまたそれに飲み込まれてしまった…でも…そこで友の力を受け継ぎ、「境界を見る能力」を「境界を操る能力」に変え、「人間としての私」と、それまで住んでいた世界を共に失ってしまった」
「それから、私は同じように強い妖怪たちの集まる今の世界へたどり着いた。
この世界でも同じように「渦」が飲み込もうと狙っていることを知り…私もまた「渦」を討つべく、力をたくわようとしたのです。
同じようにして仲間を失った藍を式としたのも、この世界へ来てからの事です」
「私は、「渦」の狙う魔力の強い存在を匿い、その力を高める箱庭としての「幻想郷」を作ることにした。
世界からはじき出された力の強い存在を移り住まわせ、いずれ世界を飲みこもうとする「渦」を消滅させるための戦力として。
…あなたの存在を知ったのも、その最初の構想の段階での事」
「あなたと心を通じ合わせた小鳥の魂の半分は、ジズによってもたらされた理不尽な死への恨みに満ちていた。
私は、境界操作により小鳥の正の心と、負の心に分けて二つの存在としました。
…正の存在となった者は、そのままホワイトランド四大天使が長「天母」フォトンに宿り…今、あなたが最もよく知る天使となった。
そして…」
「その負の感情が、ポエットの誕生と共に変貌し…生まれながらにして堕天使となったのが、ルーミアなのよ」
「そん…な…!」
「どういう…ことだよ…?
だったら…ポエットと…ルーミアは」
「言うなれば、魂を分かち合った双子。
元は同一の存在から生まれたという意味では、河城にとりと河城みとりの関係に似ている。
けれども」
「堕天使として生まれたルーミアは、その場で強大な滅びの力を放ちはじめた。
強大な闇と混沌を操り、脆弱な雛型が出来ただけのその箱庭を一瞬して消滅させ…私は止むなく、彼女の力を別世界に隔離する強力な術式を組んだ封印を…当時集めた妖怪たちの多くを犠牲として、彼女に施し…今に至ります」
「あの子の封印は、彼女が自発的に力を求めるようになると弱くなっていきます。
だから、機も熟さないうちにその力が解き放たれてしまわぬよう…彼女には誰も近づかせないようにしたのです。
上白沢慧音という誤算はあったものの…それは封印に影響を及ぼすほどではなかった。
…あるいは聡い彼女の事、薄々その事実に感づいていたかも知れませんが」
話を終え、紫は喉の渇きを潤すかのように盃を傾ける。
「…じゃあ、あいつが元は人食いの妖怪だったってのは」
「知り合いの天狗…文達の力を借りて、私が撒いた流言に過ぎません。
…彼女は、人を襲った事はあっても、食らうどころか殺めた事もないのです。
堕天使の力が封じられたことで、その記憶と知性の大部分を失っても…天使としての本能がそうさせていたのかもしれません」
「あなたがシンオウへやって来ることになった時、私は彼女をあるべきところへ返す時が来たと思いました。
あの子があなたと旅をして、少しずつあなた達は心を通わせ…ルーミアは知性と力を取り戻し始めた。
そして…封印は加速度的に力を失い、それと共に、彼女は無意識のうちに、解放され始めた「堕天使」の力を自分の妖力で抑え始めたのです」
「…あの子が段々思うように力を振るえなくなっているのも、そのため。
パチェの見立てでは、恐らくあと一週間もたたないうちに、滲み出た堕天使の力に彼女の妖力が耐えきれなくなり…自我を失って暴走を始めると言っていたわ」
「そうなると…どうなっちゃうんだよ!?」
レミリアはポエットに視線を移す。
「…堕天使は、その暗黒の力を持って眼に映る悉くを滅ぼしつくし…やがて、メルトダウンを起こして消滅する運命を負っています。
天使として生まれた者が堕天した場合、その魂を一度砕き、浄化された魂をすべて集めることで再び天使として蘇る…私がそうだったように。
でも…そもそも堕天使と生まれたというなら、恐らくは魂を砕いた時点でルーミアに待っている運命は…!」
「…魂の浄化などあり得ない。
暗黒の力の放出は、その時点でのルーミアの死を意味する」
「そんな!」
チルノがレミリアに掴みかかろうとしたそのとき、背後の物音に気がついて、全員がそこへ視線を向ける。
そこに立っていたのは…気を失っていた筈のルーミアだった。
「私…もう助からないんだね…?
もう…みんなと…かごめと一緒にいることは…できない…!」
「ルーミア!」
チルノの制止の声も空しく、ルーミアはそのまま部屋を飛び出して行った。
そのままチルノとポエットもルーミアの後を追って部屋を飛び出してゆく。
「迂闊だったわ…ここで下手に見失ってしまったらどんなことになるか!」
「お姉様ッ…!」
「…これは私の責任だわ。
私もあの子達を追いかける!フラン、つぐみ、すぐにかごめ達を!」
「…もし彼女を救おうと想うのなら、その可能性がないわけでもない。
けれど、それは前例のないこと。
アンネースもまた、狂気から解放されながらも堕天使として死を迎えている…でも堕天使として存在を保ったまま、それで自我を取り戻させることができれば」
「可能性もなくはない、か。
だが…それは幻想郷そのものも危機にさらす事になる。
あんたはそれを承諾できるのか、紫?」
紫はその場に杯を置くと、立ち上がり歩みを進める。
丘を照らす月明かりが、その姿を照らし出している…。
「けれど…遅かれ早かれ封印が解かれる時が来る。
そうなれば、私にできることはあの子を殺すことしかない。
……僅かな可能性があるとすれば、あなたの決断が総てとなりますわ」
そのまま、紫は開いた隙間に溶け込むように姿を消す。
残ったのは、かごめ一人だけ…。
♪BGM 「ラストリモート」(東方地霊殿)♪
「…来るべき時が来ちまったみたいだね」
血相を変えたフランとつぐみから事の次第を聞いたかごめは、僅かに寂しそうな表情を見せる。
「済まない姐さん、文…多分飛びきりの厄介事だ。
経緯はあとで説明する。
だから、他の連中を送って、あんた達も…」
勇儀と文は笑う。
「ルーミアの事だろう?
…さとりの奴から聞いたよ。
あいつを救ってやるというなら、あたしも力を貸さざるを得んさ」
「水臭いにも程があるよ。
ここまで一緒にやってきた仲間じゃない。
文(ふみ)の時に受けた借りも、何時か返しておきたかったからね…!」
「…姐さん…文…いいのか?」
頷くふたり。
「それに、丁度準備も出来たようだしな」
勇儀の言葉に応えるかのように、スキマが開いてにとりとみとりが転びだしてきた。
「だああっ!ぎりぎり間に合ったぁ!><」
「ごめん勇儀さん!調整に思ったより時間かかっちゃった!
でも、頼まれていた品物、ちゃんと完成させてきたよ!」
そう言って、にとりはスキマからひとつの機械を引っ張りだした。
「それは!?」
「スキマ発生装置の簡易機能バージョン…空間歪曲装置だよ!
空間に魔力で形成した別次元空間を押し込んで、周囲の空間を押しのけるんだ。
この中でならどんだけ暴れても、元の空間に影響を及ぼさない優れ物さ!
名付けてディバイディンg」
「待て待て待てその先言うのいろんな意味で禁止だっ!!^^;
試作品だけど、霧の湖くらいの広さの空間を30分は維持できる…最悪、この空間の中に閉じ込めることで封印してしまうことも可能だ」
「私だけじゃ無理だったけど…技研のみんなと、みとりのおかげで何とか完成にこぎつけたんだ…!
あとは、みんなに任せる…必ず、ルーミアを助けてやって!」
両手で抱えるくらいの大きさの、巨大なマイナスドライバーを模したその機械を受け取り、かごめ達は頷く。
「…フラン、ルーミアをおっかけたのは誰だ?」
「え…えっと、最初に飛び出して行ったのはチルノとポエット…あと、お姉様もそのあとを追って行きました。
それに…!」
言いかけたその瞬間、凄まじい魔力の振動が周囲を揺さぶった。
「…かごめ、どうやら連中から座標を探る必要はなさそうだ。
この気は…!」
「ルーミア…なの!?
まさか…これほどの力を…!」
「臆したかい文?
死にたくなければ、此処で待っていても構わんぞ?」
「…御冗談!
行きましょう、かごめ!」
「ああ!」
文に促されるまま、かごめはスキマを開く。
そして…見守るフランとつぐみ、河城姉妹を残してスキマが閉じる…。
「…あとは…信じて待つだけしかできないんだね」
寂しそうにつぶやくにとり。
それはきっと、自分よりもフランに向けて放たれた言葉だったのかもしれない。
「ああ…でも、私達は見守ることしかできない。
でも、私とお前、それにリリカをも救ってくれたあのひとなら、きっと…!」
「始まってしまったようね」
博麗神社の境内。
翌日の打ち合わせと称して、家主である霊夢は当然のこと、強引に押しかけて来た魔理沙、それに引きずられてきたアリスや妖夢、文々丸といった面々もそこにいる。
そこに待ち受けていた紫が柄にもなく神妙な顔つきで待ち受けていたことで、アリス達も事の重大さを悟った様子だった。
紫は彼女らに、これまで裏で起こってきた事件の事…そして、これから起ころうとしていることの意味を総て明かした。
「なによ…この馬鹿げた妖気…ッ!!」
「これが…ルーミアの真の力だって…!?
あいつのの封じられた力とかそういうの云々、みんなお前らが言いだしたハッタリじゃなかったってのかよ!!」
「そう思いこんでくれた方が都合が良かったからよ。
幸か不幸か、この幻想郷において私の言葉を真面目に受け取ってくれる者が少ない。
…そういう風に振る舞ってきた事もあっただろうけど」
半信半疑だったアリスも魔理沙も皆、胎動を始めた堕天使の力の波動に…紫の言葉が紛れもない真実だということをさとらざるを得なかった。
「…紫、もしこれが巧くいかなかったら…幻想郷はどうなるのよ」
霊夢の言葉は、疑問形ではなかった。
彼女自身にもはっきりと予想が出来ているのであろう…あくまでその事実を紫から求める、その意思が感じられた。
「封印によって抑圧されたルーミアの力は、最早私の力でもどうにもならないレベルにまで達している。
今、封印が解かれた直後の力であれば、殺す事も可能でしょう。
しかし…かごめさんたちとの戦いの中で完全に解放され、その暴走状態のまま生き残ってしまったら…幻想郷どころか、この世界は終わりよ」
霊夢の返事を待つことなく、アリス達四人は頷きあい、地を蹴って走りだす。
「何処へ行こうと…?」
紫が制止しようとした瞬間、その腕が力を放つよりも先に霊夢の符が紫の頬を掠める。
次の瞬間、神社の境内は霊夢によって作られた四重結界に閉ざされる…。
「霊夢…結界を解きなさい。
あの子達が介入してしまえば、巧くいくものも行かなくなる。
これは…かごめとルーミアの問題よ…!」
「…私はそういうの、柄じゃないんだけどね。
でも、アリス達とはいい加減付き合いが長いもの。
あいつらの好きにくらいさせてやりなさいよ…!」
「……そう、あなたが私の足止めをしようと言うのね。
だったら…力の差を教えてあげるわ、霊夢ッ!」
ハクタイの森。
そこはかごめとルーミアが、初めて出会った場所。
その洋館の前に、一人の少女がたたずんでいた。
黒い衣装と対照的な、鮮やかな金の髪。
その頭には、ぼろぼろになった赤いリボン。
言うまでもなく、それはルーミア当人。
破れかかったそのリボンは、すでにその封印の呪力が限界に近い事を示していた…。
「…やっぱり、此処にいたのか」
ルーミアはその声に振り向こうともしない。
かごめはお構いなしに続ける。
「此処は、あんたと初めて出会った場所だからな。
なんとなく、此処まで来ているような気がしていたんだ」
「…どうして」
その声は、涙声だった。
「どうして…追ってきたの…?
私…私も自分で何となくわかってた…もう、かごめやみんなといられなくなるって…!
だから…」
「ルーミア!」
「…ってかごめさんまで…」
そこにチルノ達も現れる。
「ルーミア…こんな月並みな事はあまり言いたくないけどさ、あんたはもうひとりなんかじゃない。
だから、総て終わらせて戻ろう。
…今から…あんたの力の封印を解き放つ…!」
「えっ!?」
「待ってくださいかごめさん!そんなことをすれば!」
顔色を変えるチルノとポエット。
「駄目だよ…かごめ…。
今の力をそのまま解放したら…きっと、私…!
私…そんなのやだ…やだよ…!」
その瞳から大粒の涙をこぼし、少女は真祖へと訴える。
「だから…今私がこの力を抑えていられる間に…私が私であるうちに…私を、殺し」
「嘘を吐くなッ!!」
その言葉を遮り、かごめの凛とした怒号が森を振るわせる。
ルーミアばかりでなく…チルノやポエット、その場にようやく駆けつけたレミリアすらも身を竦ませてしまう。
険しい表情のかごめの顔と、泣きそうなまま驚いた表情のルーミアの顔が、お互いの瞳に映り込む。
「それだけは…あたし絶対に許さないって事、あんただって知ってるだろう!?
本当のことを言え、ルーミア!
あんたはまだ…こんなところで死にたくないだろう!?
折角あたしやみんなと仲良くなれたんじゃないか…だからこれからも一緒に過ごしていきたいって…そう思ってるんじゃないのか!!」
ルーミアも、チルノ達も…勇儀や文も、微動だにせずかごめの姿を見つめている。
かごめはそのまま、ルーミアの傍まで近づき…その小さな体を力強く抱きしめる。
「…あんたなら、きっと、自分の力を抑えることができる筈だ。
あたしがその力を直々に認めた弟子であり…ポエットやつぐみと同じ、あたしの誇るべき娘だからな…!」
ルーミアの瞳から、涙が零れ落ちる。
「…うん…!
私…まだ…みんなといたい…だから…!」
かごめは頷き、その居合の間合いまで身を引く。
そして、髪飾りを外し…振り下ろした腕に一振りの刀が握られている。
♪BGM 「The Extrame」/植松伸夫(FINAL FANTASY VIIIラストバトル)♪
「…姐さん、文…ここから後戻りはできないよ…覚悟はいいね!」
「何時でも構わねえ…やってくれ、かごめ」
「何百年ぶりかに本気で戦わなきゃならないわね。
足手纏いになったら、その時点で私を斬っても構わないわ…!」
三人は顔を見合わせ、堅い表情のまま頷きあう。
「ポエット、レミリア…あんた達は下がってな。
それと…そのHが暴発しないように抑えるつけておきな…!」
「かごめさん…!」
「解ったわ…でも、しくじったら許さないわよ!」
「っ…離せっ!離せよレミリア!
駄目だよ!そんなことしたらみんなが!」
反射的に飛び出そうとしたチルノを、レミリアはしっかりと抱きとめて離さない。
その戒めから逃れようとするチルノはもがくが、流石に吸血鬼である彼女の膂力から逃れることはできずにいる。
振り向いたかごめは、無理矢理に堅い表情で普段通りのニヒルな笑みで少女達を見やる。
「大丈夫だ、あたし達を…あたしが信じるルーミアを信じろ!」
再び視線をルーミアへ移すと、かごめはにとりから託された空間歪曲装置のスイッチを入れる…。
瞬間的に巨大な歪曲空間が生み出され、かごめ達四人の姿がその中心に取り残された形になる。
そして…
目にもとまらぬ早業で、かごめは千切れかかったそのリボンだけを正確に斬り飛ばす。
歪曲空間は瞬間的に暗黒の魔力に塗りつぶされ、森にチルノの絶叫が木霊した…。
(後半へ)