-旧都某所-
♪BGM 「旧地獄街道を行く」(東方地霊殿)♪
さとり「さて、前置きは済んでる系の気配なのでちゃっちゃと行きましょうか」
勇儀「あいよー。
…おおそう言えばだ、二十八日と言えば気になる事がひとつあるな」
さとり「………ああ、あの件ですか」
勇儀「その件だな、さっきから華扇先生が頭抱えなすってる事だが」
華扇「…正直握りつぶせるならそうして欲しいんですけどねえ('A`)」
勇儀「だーかーらそこまで気にすんなって。
地震撃ったら回線落ったとかそんなの偶然だろ、そんなの今まで数限りなくあるんだし」
華扇「もう一年じゃないですか('A`)」
勇儀「だからそんなの気にしたってなー」
さとり「んまー責任感じるのは勝手ですけど、実はなにが引っ掛かるかと言えば、そのラウンドに関しては向こうが向こうの意思で負け認めちゃってる点なんですよね。
確かに選出の相性的に、かなり高い確率で済崩し的に華扇さんが暴走して終わる可能性はあったんですよね」
勇儀「そうかねえ…確かにあのサーナイト、影打ちもう一発ぶち込めばそのまま終わったくさいが。
しかしハッサムまでそのまま突破させてもらえるかねぇ?」
さとり「不一致等倍地震ですし、計算上は超高乱数で3発(98%、ハッサムH31B11のH極振りで計算)、逆にこっちも鉢巻テクニバレパン3発受けきれる計算ですが、チャージビームのダメージがある分高確率で押し切られるでしょう。
とはいえ流石の紙防御ブースターでも、攻撃特化鉢巻テクニシャンバレパンを一発は耐える計算です…まあ、ほぼ99%の超高乱数2ですが、死に出しからなら余裕でワンチャンあるので、与ダメージ量的にニトロチャージでも十分落とせる。
その上あの三つ編みが残ってるんだから負ける要素はほぼないでしょうが」
勇儀「現にお流れになっちまったからな。
でも実際に計算上でも超厳しいとはいえ、後から考えたら詰んでたっぽいから負けでいい、と言われても正直釈然とはせんなあ」
華扇「そう言えば、夜雀のところで飲んだとき萃香さんも言ってましたけど、無勝負になったんだから勝手に負け認めないで仕切り直ししろーとか言って、随分御機嫌斜めでしたねえ。
言い方はアレですが…確かに机上で勝ち筋が見いだせなくとも、実際無勝負で終わった物を負けと言われてしまっては」
さとり「勝負事に拘る鬼の皆様的な意見と関心しますがどこもおかしくなかったですね。
確かに、勝負は水物。こちらの選出は特に触れてなかった筈ですし、もし残りの選出が物理紙防御の二人だったら、華扇さんを急所2連発で退けてそのまま無双した可能性だってなくはないでしょうに、ロビンさんも少し可哀想な気がします…あのお姫様はまだそういうところが解ってないのでしょうか(溜息」
勇儀「いやお前が一番辛辣だよ、お前のそういうのがあたしゃ嫌なんだよ^^;;」
さとり「………………そうはっきり言われるとそれはそれで傷つきますね、泣いちゃいますよ?」
華扇「(アレ実はこのコンビ意外と息合ってね?)」
ラウンド5(1.28)
アンナ(エンペルト@シュカの実)、ナズーリン(ライチュウ@風船)、しずは(ハハコモリ@ヨロギの実)
他見せ合い…かごめ(ブースター@格闘ジュエル)、メルラン(エーフィ@不思議のプレート)、マミゾウ(オオタチ@拘り鉢巻)
相手(テトラ)
ベリゼさん(ペンドラー)、ルシェ(バルジーナ@食べ残し)、イカロス(エアームド)
勇儀「うわあこれかー」
さとり「これもむしろ傑作ネタの部類には入るんでしょうけどねえ」
勇儀「gdgdのkwmであることは間違いないだろうが」
……
…
♪BGM 「ヨシダさん」/Akira Yamaoka♪
ベルゼブブ「……余が言うのもなんだが……貴様らマジで大丈夫なのか……?」
「おっしゃってる意味がわかりませんわ〜陛下〜?」
「ふん!貴様ごとき下賎の者が僕の主人面していられるのも今のうちだ!
見ているがいい、この場で僕こそが真に万魔殿の主として相応しいのだという事を証明してくれる!!」
「すすすすいません陛下!わわ、私がんばりますから!!!><」
テトラ「えーと…デカ…えーとデカルチャーさん」
デカラビア「…貴様もそれをやるのか…まあ良い、もうアレを見られた以上四の五の言わぬわ('A`)
遺憾ながら、あれが地獄界の現状、最早古の姿の見る影もない。
我等が“偉大だった”女帝キュベリアに至ってはただの引きこもりに成り下がっておる、いったいどうしてこうなった」
テトラ「デカラビアさん苦労してるんですね^^;
でも皆さん、実力派の魔王様達なんですよね?そのはずなんですよね?」
デカラビア「さあなあ…ベルゼブブ陛下はあの通りのお方だからともかくとしても、後はどーなのか」
テトラ「そんな投げやりな^^;;;」
…
アンナ者「シュカの実おいしいです^q^(もぐもぐ」
テトラ「うわあまた面倒くさい量のHP残りましたよ…というかあの人なんかパワーアップしてません?」
ユルール「えっでも今までのも結構面倒くさくなかったですか?
以前のアレでフロンティア金シンボル制覇したとか聞いたんですけど」
マタン「( ̄□ ̄;)マジかよ!!!
ちょっと待ってそれからランク上がってるってどういう…その行為にいったい何の意味が」
ユルール「あの早苗さんは一見まともそうですがそんな常識通用しません(きっぱり」
「ふん!所詮メイド働きしか出来ぬ者ではこのくらいが関の山だ!
僕に任せておくがいい!!」
ベリゼさん「うわーんすいませんー><」
マタン「いや君は十分やったんじゃないかな……というかそこの王様ー、あの子強いのー?」
ベルゼブブ「…貴様聖書くらい読んだことはあるだろう…?
余を差し置いてアレが万魔の王などと書かれておる…名誉毀損も甚だしいわ(ぷいっ」
マタン「いやーボクもあんなややこしいの読まないしー」
ベルゼブブ「……おいィ('A`)」
かごめ「………いわく明けの明星、いわく最も神に近き者ルシフェル。
確かに魔道書の類では幼い男児の姿で描かれることも多いがー」
神奈子「ふむ、確かになんというかー…」
レミリア「かりちゅまの匂いがするわね、激しく(どきっぱり」
かごめ&神奈子「あんたに言われると相当だなwwwwwww」
レミリア「私もそう思うわ(キリッ」
静葉「…とはいえ耐久っぽいしそのまま代わるのも難しそうね。
仕方ない、私がクッション役になるしかないわね。後はナズーかアンナがいれば概ね何とかなる相手だと思うし」
早苗「むー…申し訳ありません><」
ルシェ「ククク…矮小なる異郷の神など物の数ではないが、獅子欺かざるという命ゼリフもある。
僕の全力を受けて死ねることを光栄に思うがいい!!」
ルシェは悪巧みからエアスラの構え!!
静葉「………早苗、かわせるならかわしてしまっても問題ないわね?」
早苗「【えっ!?】」
静葉「ごめん、見切れるこれ^^;」
静葉は高速移動の構え!
静葉のすばやさがすげえアッポした!!
その勢いでエアスラを全力回避した!!!
♪BGM いつもの「盆回り」♪
ルシェ「( ゚д゚ )!!!???」
全員「( ̄□ ̄;)えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!?」
静葉はバトンタッチの構え!
静葉「はいよ、ナズー(しれっ」
ナズー「まったくあなたという
マタン「見切られたwwwwwww見切られたwwwwwwっうぇwwwwwwww」
色欲さん「あーあーやーっちゃったわねぇーあのドジ^^」
ベリゼさん「( ̄□ ̄;)あわわわわ…」
ベルゼブブ「あ…の大馬鹿者ッ…(頭を抱えている」
ルシェ「ええい黙れ黙れ黙れえええ!!><
あの小生意気そうなネズミくらいこうしてくれるー!!」
ルシェはエアスラの構え!
不意を突かれたネズミの急所に当たった!!
ナズー「…っ…くっそ、なんでこんなものを避けてくれおったんだあの秋神は…。
まあいい、ならこいつを食らえっ!!」
高速で回転加速するペンデュラムの先端に蓄積される雷の魔力が激しく紫電を走らせる…!!
ナズーリンはラストスペルを使った!
迅雷「ライトニングペンデュラム」発動!
ルシェ「( ̄□ ̄;)なん…」
ナズー「落ちろおおおおおおおおおおっ!!」
ナズーリンは10万ボルトの構え!
破壊力ばつ牛ンの一撃!
相手の傲慢ちゃんはアワレにも体が痺れて技が出しにくくなった!!
魔王様s「……oh……( ゚д゚ )」
テトラ「えっと…こっちみんな^^;;;;」
…
……
勇儀「明けの明星(笑)^^;」
さとり「本当にそうとしか言いようなかったですからね…。
実は無補正性格らしいんですが、単純にスペックが馬鹿げてたみたいで、動きは止まったものの一致10万二発受けてまだ余力があったという。
その後ナズーリンは倒されるもののシザーで刻んで、残った無道は波乗りからアクアジェットでふっ飛ばして終了と」
華扇「というか高速移動バトン不要だった説もあるんですけど…そもそも100族最速なら80族のバルジーナに追い越されるわけがないですし、あの秋神結局なにしに出てったんでしょう」
勇儀「あれ……言われてみれば」
さとり「確かに」
さとり「そう言えば補足的な話をひとつ。
大罪イベントキャラのうち、怠惰と強欲以外はこの日全員出ているんですよ」
勇儀「ん?確かベリゼとか言う奴が怠惰じゃなかったのか?」
さとり「怠惰にあたるのは正確に言うとべルフェゴールですね。
ベリゼさんは本来ベルゼブブに当たるキャラだそうで」
華扇「それとは別個にベルゼブブと名乗る方がいらっしゃった気がするのですが…」
さとり「そこはアレですね。
ここでは、異説などでベルゼブブと来歴を同じくする魔王が幾人かいるので、先に出ていたベルゼブブは地獄界の王であるベルゼブブ当人、ベリゼはその別形態ともされる大公爵バエルだという前提で話進めてます。
因みにベルフェゴールも元々はベルゼブブ同様、バアル・ゼブルを貶めて生み出された悪魔と言われてますね」
勇儀「結局は、あのデカラビアとか言うヒトデ野郎とお仲間って扱いなのか」
さとり「そーなりますね。
今回は大罪イベント関連のキャラだけしか出てきてませんが、地獄界の有力な王にはベリアル、アスタロト、アバドンのようなメガテニストには御馴染の連中もいるので、興が乗ってくればそのうち出てくる可能性もあるんではないでしょうか」
勇儀「そうやって露骨にネタを振る…いやらしい」
ラウンド6(1.28ラスト)
こいし(エルフーン@大きな根っこ)、かせん(ヨノワール@力の鉢巻)、おりこ(サーナイト@曲がったスプーン)
他見せ合い…かごめ(ブースター@格闘ジュエル)、リグル(モルフォン@黒いヘドロ)、マミゾウ(オオタチ@拘り鉢巻)
相手(テトラ)
STAR(ラプラス)、(ムクホーク)、嫉妬さん(ミロカロス)
さとり「実質的な最終戦ですね。
あまりの回線落ちの多さにキレた狐野郎が深酒モードに入ってたせいかメモがわりとズタボロですね」
勇儀「そんなのも今に始まったこっちゃないけどなあ…。
こっちだってこの時の持ち物、実は合ってるわけじゃねえんだろ」
さとり「そうですね、とりあえず何時も持たせていたであろうアイテムをとりあえず書いただけですし。
リグルはひょっとするとヨロギかオッカだった可能性も高いし、緒莉子さんに至っては実は適当に強化系だろうと思って書いただけで、実際にはなにを持っていたんだか」
華扇「えちょ」
勇儀「自分の所でもこの有様だから、相手さんのNNなんてそりゃあ控えてるわきゃねえか」
さとり「ただ簡単に言うと、前半はこいしがいい感じにペースを握っていたのですが、不利なムクホークに対して突っ張ってしまった事が裏目になって、嫉妬さんが暴れて終わった感じになりましたね。
緒莉子さんが随分頑張ってくれたのですが、流石に単独で瞑想を積んで火力を確保するのは難しかったようでして」
勇儀「アシストパワーは初期火力なんてないに等しいし、仕方ねえ話だわな」
さとり「アシストパワーの使えるポケモンは耐久がやりやすいものの、絶対的な防御力はそこまで期待できるものでもない。
サーナイトは鬼火で低めの物理防御をカバーできる事は出来ますが、本来ならその上で食べ残しと願い事を併用してなんとかしたかったところですね」
華扇「そう言えば守矢の祟り神が言ってた気がしましたね、特定のポケモンで詰むのは致し方ないし、食べ残し持ちで金縛りと願い事でターン誤魔化して瞑想積むんでも良かったんじゃないか、って」
さとり「うーん…折角影打ち遺伝させたんだから何かの役には立つんではと思ったのですが…確かに単独のアシストパワー砲台に特化するなら、瞑想と願い事を繰り返して火力確保しても良いのかもしれませんね」
さとり「今回は一応ここまでですね。
何時もの如く結構回線落ちも多かったから、やはりというか取り上げられるラウンドも少なくなるのですが…」
華扇「しかし本当に、何時も狐その他が言っているように、サーバ側だけの問題なんでしょうか?
もしかしたらもっと根本的な原因を見落としている気がしなくも」
さとり「というかなんで仙人暮らしのあなたがそんな俗世の機械類わかるんですか^^;
…ぶっちゃけると、実はこの次のログというか、兎に角この翌月にちょっとした事件がありまして…そこでとんでもない事実が発覚しやがったんですよ。
これはまあ次回のログで詳しく語られることになりますね」
勇儀「そもそもこのログ自体……まあいいやそれはここでは触れまい。
さて、此処でログが切れるという事は、この後は何かあんのかい?」
さとり「そうですね、ちょっとした小話です。
ここからは完全な見物人になりますしー…たまには私もお酒に付き合いましょう」
華扇「では、今回はここまでと言う事でー」
三人「ノシ」
…………
………
……
…
「争い、淘汰することにより」
俺は…敗れたのか。
「“悪”の素質は、より純度の高いものに昇華する」
…俺は…消えてゆく…何も為さずに…
「お前が剣を振るい、“仲間”を傷つけるならば」
だが…俺は…
「私達は爪と牙で、お前の仲間を傷つけよう」
俺は一体………
なんの…為に…
-幕間 「還れ、この美しき大地へ」-
「あーったくなんでまた今頃になってこんな面倒な…確かに現状ヤタピもイバンもねえしジュカインに限度があった事は認めるよー認めるけどさー」
「まーそう言うなよー、元々あのポケモンは繰り出せる相手はっきりしてるし、特殊か物理か一方に絞ってピンポイントで繰り出してけば、抜き性能は兎も角としても十分仕事はできるしさー」
その屋敷の軒先で酒を煽りつつ、家主である黒髪の少女・かごめと諏訪子がそんなやり取りをしている。
かごめが難色を示したのも理由があることだった。
「第一あの芋神、元々参画した時もアレで全く何もしやがらなかったろうが。
…確かにあの頃は色々手探り状態で、尚且つ立ち回りや個々の能力でどんな役割が持てるかとか、そんなのも全然わからないままやりあってた事は確かだけど」
かごめはそう言って、並々と注いだ杯の酒を一息に飲み干す。
「逆にだ、色々と盤面の動きが解ってきたところで、果たしてあの馬鹿がバクーダなんてクセの強いポケモンになったところで、一体何ができるんだっていうんだよ。
正直あたしですら、自分のポテンシャルがどの程度活かせてるのか全くわかりゃしねえ。
ある程度は強豪と言われるウインディに対する理解度だってせいぜいこの程度だぞ」
そして酒を注ぎながら、大体、と言葉を続ける。
「一体なんだって急にそんな話を持ってきたんだ?
いくらあの我儘穣子の事だからって、そう良いぞ良いぞでは済ませてはおけねえって。
…………何か、
「ワケか、そうだねえ…」
諏訪子は、あの日見た出来事を総てかごめへ話して聞かせることにした。
…
…
その男が目をあけると、その視線の先には雲ひとつない空が広がる。
彼はその体を起こし、辺りを見回してみる。
森の中に開けたその区画、その背後には、まだ建てられて間もないであろう社。
空には、彼の知らない生き物…彼も見慣れたある生き物に似たそれが…群れを成して飛んで行くのが見える。
「ここは…?」
問う者の気配もないまま、彼は声を発する。
「…あら、迷い人かしら。珍しい」
不意に声がして、振り向いた先には一人の少女の姿があった。
ゆったりとしたつくりの紅い布の帽を被り、何処か素朴なイメージのある明るい色の衣装を身に纏う、ショートボブの山吹色の髪を揺らし、少女は物珍しそうにこちらを伺っていた。
「あの異変が過ぎてから、外の世界もこっちの世界も関係なくなってるとは聞いていたけど…でもあのスキマの話じゃ、結界はまだ生きてるから、全く別の世界からちょっと力の強い人間とかが落ちてくるかもしれないとは言ってたけどねえ。
…っと、あなた倒れていたみたいだけど、大丈夫?」
少女はそう手を差し伸べてくる。
彼は呆気にとられていたが、その手を取ってゆっくりと立ち上がる。
足はあった。
気づけば、死闘の最中ずっと感じていた、自分の身体が外側から消えていく感覚は何処にもない…。
「……ここは、一体」
「ここはかつて“幻想郷”と呼ばれていた世界。
そして…ここは私の社。
いや本当は私のお姉ちゃんが祀られてるんだけどー…まあ建前上は私達姉妹を祭る神社でもあるから間違ってはいないよね」
彼にはその言葉がにわかに理解できずにいた。
「社」に「祀られている」のは、即ち「神」と言うべきモノ。
彼が一度その身に宿し、荒ぶる魂のまま総てを破壊しつくそうとした存在と同じ…。
「お前は…神だと…いうのか?
グラードンや…カイオーガと同じ…?」
「えっ」
少女は目を丸くする。
「あなた……ポケモンを知っているの?
…守矢のカエルみたいにプレイしてたって感じじゃないね。
グラードンとカイオーガを知ってて、それを神なんて臆面もなくいえるあなたは…ポケモントレーナーなのかしら?」
トレーナー。
「…ちがう…」
彼の住む世界にいる不思議な生き物、
人に近しく、人を時に凌駕するその生き物を従え、戦わせ競わせる…それがポケモントレーナー。
「違うんだ…俺は…俺のしてきた事は…してしまった事はッ…!」
「あなた…?」
しかし…自分は本当にそう言えるのだろうか?
♪BGM 「たったひとつの願い」/伊藤賢治(ロマンシング サ・ガ ミンストレルソング)♪
自分は大地の少ないその土地で、地を広げ、その事を通して地方を意のままに制圧する野望を抱いていた。
その果てに、目覚めさせてはいけない超古代の怪物・地神グラードンを目覚めさせ…。
「俺は………そんな事をしたかったんじゃなかった………!
本当は…俺は本当は…住む場所のなかったホウエンのポケモンたちの為に…それだけだったのにッ…!!」
彼は、地に膝を突き、項垂れたまま拳を叩きつける。
慟哭の中、彼は本当な何をしたかったのか…その事を思い出していた。
彼の生まれ育ったホウエンの地は、古のカイオーガ・グラードンの果てる事を知らぬ戦いの末に一度海に沈み、大地は隆起し険阻となり、人も陸のポケモンも、住むのが困難な土地柄であった。
それでも人とポケモンたちは永い間力を合わせ、少しずつ山を切り開き、あるいは海の上をねぐらとし、山裾に居を構え、生み出した文化を連綿と伝えて歴史を紡いだ。
彼もまた、本来は地理学を治め、暮らしの困難な山村のポケモンたちの為、大地を広げ住みやすい土地に変えようという志を持っていた。
その理想を形にすべく活動を続けていた彼は、あるとき、伝説の神であるグラードンの痕跡を発見し…それを研究し、制御することで土地を広げる構想を持つに至る。
だが、古の荒ぶる神に触れる事は禁忌…彼はその理想実現を性急にするあまり、力を持ってそれを成そうとし…そして、歯車は狂っていった。
グラードンについて調べる内に、彼は少しずつ、この狂気の神に魅入られ始めていたのだ。
彼の支援者は、その狂気に引きずられていくかのように、ホウエンの大地を荒らしまわるようになる。
同じように…カイオーガに魅入られた総帥が率いる「アクア団」と共に。
それはさながら、グラードンに魅入られた自分と、カイオーガに魅入られた「アクア団」による、その飽くなき闘争本能を持つ二柱の、代理戦争のようですらあった。
「……あなたは、きっとすごく優しい人なのね。
でも…その為に自分の行くべき道を見失ってしまった」
彼ははっとして、その少女を見上げる。
「私達が出会えた事が、あなたにとって幸運だったのか解らない。
けれど…この大地は…『幻想郷』は、ありとあらゆるものを残酷なまでに受け入れる世界。
この世界を作った妖怪は、そう言っていた。
大地の神グラードンに関わったあなたが、豊穣神の私に出会えたこともきっと偶然じゃなかったのかもしれない」
少女はかがみこんで、彼の手を取る。
「私もさ、実はそのものに触れたわけじゃないから、あんまりポケモンに詳しくはないんだけどねー。
でもなんとなく…多分諏訪子やお姉ちゃんがいたら、大騒ぎだろうね。
なんとなくあなたの服装、なんか悪の組織の首領様、って感じだし」
少女は悪戯っぽく、そしてどこか寂しそうに笑う。
「…でも、あなたの言葉の底にあるのは深い後悔を感じる。
そしてきっと」
触れた手の先から、少しずつ自分が失われていく感覚。
「……そうか」
しかし、彼にはもう恐怖はなかった。
「…俺が求めた大地の神様も…あんたみたいな神様ならよかった。
俺は…取り返しのつかない事をしようとし…そして、もう戻れない。
こんな大馬鹿は、きっと死んでも治らないだろう…このまま消えちまうくらいで丁度いい…でも」
彼は消えようとするその左手で、腰にあったひとつのモンスターボールを差しだそうとする…が、その刹那、その手は光の粒子となって空中へ溶けていった。
だが、ボールは少女の空いた手におさまっている。
「この中にいるのは…俺の長年共にしてきた相棒。
…俺の馬鹿につきあわせちまって…俺より先に逝っちまったが…神様よ、願わくばこいつだけでも、この美しい大地に葬ってやってくれ」
彼の身体はそのまま、光に包まれて空へ散ってゆく…。
少女はその光景を…空へ散っていった彼の最後の表情を暫し眼で追っていた。
そしておもむろに、ボールのスイッチを押す。
姿を見せたそのポケモンはピクリとも動かず…傷だらけのまま息絶えていた。
「………穣子、あんたそれどうする気だい?」
少女…豊穣神・秋穣子はその声の方を一瞥する。
その視線の先には、まるでカエルをイメージさせる、目玉をつけた市女傘を被った小柄な少女が、何処か険しい表情で睥睨している。
「あんたの知った事じゃないわよ、諏訪子。
私は私の意思で、彼をこの地に受け入れたいと思ったからそうしただけ………今はどうか知らないけど、この山は元々私が住んでた山よ。
文句は言わせないわ」
「あいつがどんな奴かを、私の口から聞いても、同じ事が言えるかい?」
「知った事じゃないわよ!」
一喝してその言葉を遮った、穣子の瞳から涙が零れ落ちる…。
「私だって…私にだってわかるんだ。
あの人はきっと、とてもたくさん悪い事をして…でも、あの人の魂は救われなければならないって…!
そのくらいの事ができないで、なにが神様なのよ!!」
諏訪子はふと、その表情を緩める。
「そうだよな。
悪かったよ、余計なこと言った」
穣子は乱暴に涙をぬぐうと、横たわるそのポケモン…バクーダの身体を愛おしそうに撫でる。
「私、この子を自分自身として受け入れようと思う」
「えっ」
「この子はきっと、あの人の事を怨んではいない。
息絶えてもまだ、あの人の事を想ってる…あのひとが風になったこの地に、共にありたいって」
「だが…お前、そいつは」
背を向けて立ち上がる穣子には、驚く諏訪子の表情など見えてはいない。
しかし、どういう反応をしているかくらいは彼女にも解っていた。
「解ってるよ。
この子は…バクーダは、私が一度戦い方を諦めたポケモン。
かごめはきっと怒るんだろうな…でも、この子の気持ちは無碍にしたくはない…!」
泣き笑いのような表情で振り返る穣子。
「だから…お願い。
この子の本当の戦い方を教えて、諏訪子。
私………今度はちゃんと頑張るから」
…
…
「私はさ、目の前で静葉とギルガメッシュの一騎打ちを見たときも思ったんだよ。
きっと、そんな先入観では測れない何かがあるんだって。
だから、宝珠に魅入られた為に消えゆくあいつに、穣子が何かを感じ取ってそう言いだしたのなら…あいつの好きなようにやらせてやりたい、そう思ったんだ」
かごめは暫く何かを考えていたようだったが、やがて溜息を吐く。
「まったく…そう言う事は先に言ってくれ。
どうせならこの際だ、徹底的に面白い案を探ってみたいところだが…ってもアタッカーくらいしか思い浮かばないのがねえ。
せめて、どんな手段でもいいから先手さえ取れれば」
「先手、ねえ」
諏訪子の口の端がつり上がる。
「それだったら、私に策がないわけでもない」
…
「……と思ってたらこのざまか」
呆れるかごめと諏訪子の目の前、穣子は毒蛾の超音波攻撃をモロに食らい、目を回して大の字になっていた。
「まあ、こいつらしくていいと言えばいいけどねえ。
120族までは抜けるんだからロッカさえ決まればどうにかなる予定だったんだけど…あーあ、こいつじゃなくてあんたならもっとうまくやれたのかもなー」
「おいおい話の元はてめえだろうがカエル」
「カエル言うな、祟るぞ」
軽口の応酬をしつつ、「役目」を終えたその少女を「運搬」しながら。
諏訪子はふと見上げた空に「彼」が苦笑しているのを見ていた気がしていた。
(おしまい)