〜無縁塚特別収録スタジオ〜



♪BGM 「聖徳伝説 〜 True Administrator」(東方神霊廟)♪


小町「さて、ここでいつもの番外編になるかね。
  まずは2戦分見せ合いを紹介しようか」


EX1
狐野郎
ニドクイン@ゴツメ ハッサム@鋼鉄プレート サンダース@光の粉
控え:ニョロトノ ニョロボン ロズレイド
先生側
スカタンク ヤミカラス ドレディア
控え:ノクタス キリキザン ヤミラミ


小町「まずは第一ラウンドだね。
  余談だけどこれに似たような構成で潜ってる所を捕えられた対戦が、動画で見つかってねえ
神子「えっ」
小町「統一パと見せかけてドレディアだけいるというところでなんとなくそうじゃねえかと思ったというか、プレイヤー名で確信したというからもうアレだよねえ。
  案の定出てきたドレディアが色ドレディアで
神子「珍しい事もあるモノですねえ」
小町「某有名実況者にも捕まった事があったって言ってたし、やっぱり対戦数はかなりこなしてるってのが伺えるね」
神子「それより、色違いってそんなホイホイ出るモノじゃないですよね確か」
小町「この先生乱数使ってないみたいで、国際孵化でやってるとはいえ…それでも1/2048だっけ、まあよくやるというかなんというか。
  めざ炎70とかめざ岩70とかなんでってくらいいっぱい持ってるみたいだし…これはないらしいけど、能力自体はかなり高水準だったはずだね」
神子「もし色違いでめざ炎70とかだったら、どんだけ天文学的な確率なんですかねそれ」
小町「考えてたら頭がおかしくなって死ぬよそんなの><
  それはいいや、先発はスカタンクとニドクイン。実質的なニドクインの初戦はこのラウンドだね。
  スカタンクとか本当に見ないポケモンだからマジで何をしてくるのか」
神子「能力も平均的ですが、炎技も使えるしそこそこのスピードから挑発もできるみたいですね」
小町「弱点も地味に地面しかないしね。
  クインの耐久なら弱点も突かれにくいって安易に思って、突っ込んでみたらヤミカラスに交代された挙句大地の力をオウム返しされるという体たらくで」
神子「後続を考えれば毒づきが正解でしたねこの場合」
小町「キザンが後ろに居る可能性を考えると毒づきも撃ちにくくはあるがね」
神子「効かないんでしたっけ?
  酸の攻撃もあるから、一見効きそうな気がするんですけどねえ」
神子「アシッドボムとかグロスに効いたところで追加効果も出ねえけどね。
  ハッサムに交代してバレパンで押しにかかるんだけど、麻痺を受けても基本的にあまり支障もないので、そのまま殴れるだけ殴って後はダースのシグビで終了。
  あまり速さに振ってなかったらしくてドレディアが舞ってもダース越せてなかったね。多分その分耐久に回って120族とか125族抜きになってるのかもしれないが…」



EX2
狐野郎
ミミロップ@光の粉 ウインディ@パワフルハーブ ゴルダック@神秘の雫
控え:オコリザル ドリュウズ ドレディア
先生側
ゴチミル@進化の輝石 ヒヒダルマ
控え:チラチーノ ドレディア ミルタンク ブルンゲル


小町「これがもうなんというか傑作だったね。
  具体的にいえばゴチミルだね。あいつ耐久特化させて輝石持たせるとあんなに止まるとは」
神子「こっち色々それ以前だったという話も聞くんですけどねえ。
  ミミロップの恩返し実は最大威力じゃなかったとかなんとか」
小町「それ大分経ってから気付いた事だけどまあ。
  元々火力のあるポケモンでもねえし、くすぐられてもいたから大したダメージは期待できないけどそれにしたってどう見ても確定5、6発みたいな程度で本当にどうしようかと」
神子「そして圧巻はヒヒダルマですね。
  まさか途中で姿ががらりと変わるポケモンがいるとは」
小町「ポワルンの天気屋、チェリムのフラワーギフトもだけど、ダルマモードとかほぼ見かけないね。
  そもそもダルマモードはフォルムチェンジの条件が途轍もなく面倒な上、そこまでして発動させるメリットがないネタ特性だし」
神子「フォルムチェンジ後の耐久かなりすごいことになってますけど…実質、その半分以下ですものね」
小町「ダルマは力づくフレアドライブとかいう頭の悪い技でひたすら突貫するのが正直一番わかりやすいしね。
  というか重要なのダルマじゃないしね、むしろゴチミル1体だけでもう何が何だかわけのわからないことになって」
神子「ハイポンを華麗にミラコされてましたねー^^;」
小町「アレが本当に一番のハイライトシーンだったね。
  どうせ特殊型なんだからくすぐるアンコしちまえばよかったんだと思うけど、そしたらチラチとか控えられてると地獄絵図だからね」
神子「もっとも、ゴルダックに対してゴチミルのミラコを狙いに行ったという事は、後続にゴルダックを受けられるポケモンがいなかったのでしょうか?
  ドレディアやブルンゲルとかいたらタイミング的に出てきても良かった気もしますが」
小町「どうだろう…ゴルダックのアンコが何処まで有名かは解らないけど、狐野郎の性格的にとりあえず殴ってくるとでも思われたのかねえ。
  実際その通りにして返り討ちにされたわけだけど」
神子「ここでゴルダックを失ってしまっては、それこそダルマに「どうぞ好きに暴れてください」って言ってるようなものじゃないですか。
  そもそもゴチム系統に遺伝技でミラコあるのは知ってたはずでは…どこぞの祟神がジュエル雨ハイポンをゴチルゼルにミラコされた酸っぱい記憶があったような気もするんですが」
小町「大分前にルーミアの奴が暴れまくった時にあっさり倒したから考えてもなかったんだろ。
  ひょっとしたらあのときだって急所いってなければ返り討ちにされたんじゃないのかね(編注:ゴチミル輝石+H252D4補正なしでC252振りゲンガーのシャドーボールは確定2)」
神子「この時は結局3体目までは引っ張り出せませんでしたが、何だったんでしょうねえ。
  通りも良く受けやすいからブルンゲル辺りでしょうか」
小町「可能性は高いね。
  こっちから決め手になりそうなのは精々ドレディアだが、ダルマか、あるいは舞狙いでゴチミル繰り出して潰すつもりだったのか…ダルマにゴルダック合わせても貯水で無償降臨とか十分にあり得そうだし」



ラスト
みのりこ(バクーダ@気合の鉢巻) ミスティア(チルタリス@先制の爪)
控え:サザンこぁ、マニューラ、ドSバナ、ふとましい何か
相手
マヤ(シャンデラ@炎ジュエル説濃厚) Cジョリー(サメハダー@これもジュエルっぽい) ミノ(ケンタロス@拘り鉢巻)
相手控え:オオスバメとかエーフィとか犬とか


神子「………………もうツッコみませんよ?」
小町「あー、うんまあ、別にいいよ…。
  これも何度か触れたかもしれないけど、環境が移って間もなくの頃にもあの秋神がなんかしたという話があるね。
  実はそのときとまた個体が変わってたりするんだこのバクーダ」
神子「えっそうなんですか」
小町「うん、何故かここまで全く触れられてなかったんだけど。
  去年の暮れにポケモンを総入れ替えした時に、もののついでみたいに粘ったらしいけど…BW2から変わらずの石による性格確定遺伝、メス側の特性高確率遺伝と、仕様の変更された爺前固定要素があるとかそのときになってようやく知ったのが、実は直接の原因だったらしい」
神子「爺前固定というのは?」
小町「おっと、あんたはその世代からいたわけじゃないから知らないか。
  第四世代での育て屋は、タマゴが出来た時に性格・性別・特性が決定されて、育て屋爺さんから受け取った時に個体値が決まるという仕様だったのさ。だから、目当ての性別・性格・特性が揃った状態でセーブしてタマゴを受け取り、後は望みの個体値が出るまで孵化させてはリセットを繰り返す。
  これが俗にいう「爺前固定」って奴だね。遺伝技の中継点として…あるいはまったくの趣味でイーブイや御三家のメスを粘る時には非常に有効で、この方法で生まれたポケモンもうちには結構いるよ」
神子「成程、「お爺さんの前」で「目当てのポケモンを固定」するから、爺前固定ですか。
  とすると…現在のそれは個体値の決定とそれ以外の決定の順序が逆になっているわけですね?」
小町「正確には違うんだが…受け取った時点では性別だけ決まるんだ。
  BWはタマゴを受け取った瞬間に全部決まる挙句、特性ごとに発現のしやすさがあったらしくて、特にプクリンの夢特性とかものすごく出にくかったという話をちらと聞いた事があるよ。
  もっとも、今回でも実はモグリューの型破りがまあ本当に出が悪くてねえ…まったくなくなったわけではない仕様だと思うけど」
神子「ですが、個体値が固定されれば後は性別を粘るだけとなれば、むしろ古来の爺前固定よりは精神的な負担は小さくなってるのかもしれませんね。
  メス比率の少ない御三家やイーブイとかでタネ親を作るのには有効でしょう」
小町「それに今作はジョインアベニュー、もっというと保育所の存在あるからね。
  一日に限度はあると言っても、ほんの数分でタマゴが孵るからかなりの時間短縮になる。仮に店8軒総て保育所のレベル10なら、一日に40個のタマゴを即座に孵す事が出来るって寸法さ。
  もっとも、そこまでするのも膨大な時間かかるし、そもそもアベニューの店には花屋とか他に有用な店舗もあるからそれ全部潰してまで保育所で埋めるなんてそんなアホらしい話もないが」
神子「ふええ…本当に便利になったモノですねえ」
小町「とまあ話は大分脱線したけど、元々それなりに能力が高かったこのイモ臭い神を、何を思ったかもう一度育てなおそうとしたらしいのさ。
  そしてら生まれたのが意地っ張りハードロックの4V1U、個体値合計が180を超える怪物ドンメルだったらしい
神子「何処かでマミゾウさんも仰られてましたが…そこまでやりますか普通?」
小町「あたいに聞かれてもねえ。
  兎に角まあ、個体能力が意味解んないことになったのにやってる事が変わらない秋神が今回のシメに登場してきたわけだよ」





リリカ「ぐぬぬ…どのみち守られるならさっさと交代しておけばあんなことにはorz」

輝夜「というか選出そのものから問題あったと言わざるを得なかったんじゃないかしら。
  まあ今更なのは百も承知なんだけど、見せ合いの時点で明らかにオワタ臭してた気もしたし」
メルラン「今更なのは解ってるわよ解ってるけど」

「ええいごちゃごちゃうるせー!!
ここはこの私が華麗に全員叩きのめしてきてやるから大船に乗ったつもりでいなさいよっ!!」


輝夜「(無視)しかし個性的なメンバー多いわねえこっち。
  これだけ厨ポケの類手を出してながら肝心なのが色々いなかったり」
メルラン「(無視)明らかにメタグロスとかポリ乙とかの厳選面倒だし、メタモンだってそもそも必要なのがいなくてねえ」
輝夜「その割にケンタロスいたりとかまあツッコみたいところはあるんだk」

「おいこらそこ!!あからさまに無視して進めんじゃねーよ!!><
…ふんいいもんいいもん、だったら私で勝手に始めてきてやるし!いくよみすちーついてきなさい!!」
「( ̄□ ̄;)えちょ私も行くの!?」

すたすたすた…。


輝夜「………放っとく?」
メルラン「かごめがぶん殴ってでも止めるんじゃない?
    相手しても疲れるだけだもん、面倒な時は全部あの黒髪に押し付けちゃえばいいわ。
    …ほらリリカ何時までorzしてんのよ次のメンバー考えるわよ」


〜それからしばらく〜


メルラン「( ゚д゚ )」
輝夜「( ゚д゚ )」

かごめ「なんじゃいないままでなにしてたんだお前ら。
   なんか面白そうだから穣子の好きなようにやらせといたぞ
メルラン「( ̄□ ̄;)ちょまておま!!
    相手何がいたか解ってるじゃない!!というかトレーナー抜きで始めるとかどんだけ」
かごめ「穣子嗾けといて困るのはせいぜいサメハダーぐれえだ。
   サメハダーは決定力そこまで大したことないしこぁがどうにかできるだろ、加速にタスキをセットで持ってたらそんときゃそんときだ」
メルラン「だからってええええええええ!!><」

穣子「だっからごちゃごちゃうるせーって言ってんのよ。
  見てらっしゃい、この私をコケにした事」

穣子はヴァンガードを使った!
ロックカットの効果ですばやさがアッポする!!

穣子「思い知るがいいわー!!!m9( ゚д゚ )」

穣子は地震の構え!
破壊力ばつ牛ンの一撃!マヤは吹っ飛ばされた!


テトラ「な、何でしょうなんかずっと以前にもこんなことが…?」
ユルール「いいいいや多分きっと気のせいまだロッカ積まれて素早さが倍になっただけだから(動揺
テトラ「( ̄□ ̄;)その挙動不審っぷりがいらん不安を掻きたてるんですってば!!
   ぐぬぬ…裏に幽香さんとかいると正直どうにもならない気がするけど」
船長「……俺の、出番か」


穣子「誰が出て来ようと同じッ!
  あんたも吹っ飛んじまえー!!」

穣子は地震の構え!
しかし相手の海賊はその地震をやり過ごしている…。

穣子「……んん?」
船長「成程な、こんな攻撃を喰らったらひとたまりもねえやな。
  俺が「生きてた」時代にはこんな猛者もごまんといた…あの頃の海は良かったなァ」

船長の身体から不思議なオーラが湧きあがっていく…。

「おォ、そうだそういえば、少し前にもすげえ女がいたなァ。
まだ小娘ぐれえだったが、肝の据わった大した魔導師だった。
なんだかよくわけのわかんねえ奴のいいなりで戦わされて…それが本当にムカついたが、愉しい戦いだったぜ…だから」

その爆発的に湧きあがるオーラで船長の身体が加速する!!


♪BGM 「戦闘!ホワイト・ブラックキュレム」/一之瀬剛(BW2)♪


「オメェがもう一度見せてくれ!俺様に本当の戦場って奴を!!」


船長はハイドロポンプの構えで突っ込んできた!!


かごめ「守るで加速を発動させた…タスキ持ちじゃねえのか、ヘルガーがいたという事はそれが持ってる可能性が高いな。
   穣子の生き残る確率も低いし残す理由もあるまい、死に出しからこぁの達人チャージビームで十分崩せるだろ」
輝夜「それでしくじったらどうやって勝ち筋を作る気でいるのかしら。
  やらせたのがあんたなら当然責任も私達にはない筈よね」
かごめ「まー別にいいけどさー。
   …………でもな」


リリカ「穣子さん!右斜め45度にバックステッポ!それでダメなら私知らないから!!><」
穣子「よっしゃあそのギャンブルのってやらあ!そぉい!!!><」

ハイドロポンプの一撃が左に逸れていくと同時に穣子が右へ移動する…その先には何故かコーデリアの姿がある。

大妖精「( ̄□ ̄;)ひゃあああああああああああああああ!!?

逃げる大妖精をハイドロポンプが追いかけていく…。

大妖精「いやあああああああなんでどうしてええええええええ!!?」
かごめ「おちつけーお前自分の特性何だったか思い出せー(しれっ
大妖精&メルラン&輝夜「………あ、そういえば」

大妖精にはハイドロポンプは効いていないようだ。
それどころか何故か特攻がアッポしたようだ。

テトラ「………………ゑ!?(;^ω^)」
ユルール「あれこれってまさか……呼び水?
テトラ「いやいやいやなんで場にも出てないのに特性発動してるんですかおかしくないですか!!><」


船長「へェ…こういうこともあるのかい。
  成程、今日の俺は運に見放されてたようだな…」
穣子「そゆことだ!
  せめて、チョーシこいてた真っ黒竜の怒頭叩き切った私の必殺剣をくれてやらあ!><ノシ」

穣子は閃刃の構え!
致命的な致命傷!
船長は海の上でひっそりと幕を閉じた…。


輝夜「( ゚д゚ )ポカーン」
メルラン「( ゚д゚ )ポカーン」
かごめ「…時にこういう事が起きるから面白い。
   運ゲーと言っちまえばそれまでだが、穣子のようにここまでなんか持ってるって奴も珍しいと思うんよ」





小町「確率80は案外アテにならない(迫真
神子「えっハイドロポンプってそんなにしょちゅう外れるモノなんですか!?」
小町「なんか知らんがやたら外れる印象があるんだよなアレ。
  肝心な時にやたら当たるチルノの吹雪とはそこが対照的でもある」
神子「あ、そこ使い手限定なんですか」
小町「別にルーミアの気合玉でも構いませんが(迫真
神子「あれ特定の相手にしかチート補正かからないと聞きましたが(迫真
小町「…むむっこの短い時間の間にそういう返し方を身につけてくるとはやるなお主。
  結構重要なタイミングで流星群が外れるとかもわりと見かける光景だけど、特にハイポンとエッジのワロス率はもう異常なくらいだからねえ。エッジなんてどうでもいい時は良く当たるのに肝心な時には急所どころか外れやがるしね」
神子「無情なモノですねえ。
  ここぞというときは安定命中技を使いたいところですが、でもやはり一致高火力の決定力を考えると悩ましいところです」
小町「そもそもサメハダーはA高い部類だけど水悪の物理技に高火力なし、Cも高いけどハイポンに頼ってもまだ決定力不足と悩ましいところが多いしね。
  まあそれはいいや、今回も何時かの時とは形は違えど、見事に止まらなかった秋神暴走でこぁまで回らず終了。流石にケンタロスまでは倒せなかったけどこいつはみすちーの流星群で始末してそれまでだったね」



小町「というわけで今回の解説はこれで終わりだね。
  ちと尺が余ったが、残り枠は例の子の話の続きみたいだね」
神子「今まで報われなかった分、これからの彼女の行く手には希望のあらん事を。
  そして今日は色々勉強になりました、また呼んでくださいね」
小町「楽しんでもらえたなら何よりだよ…って四季様? 何だろ今頃メールなんt」

-小町。
少し話がありますので明日朝一番で閻魔庁へ来るように。
あなたにはより一層の反省が必要のようですね(#^ω^)-


小町「\(^0^)/」
神子「あ、その、えーっと…今回はここまでです!!><」








氷海が部屋を立ち去り、ふたりに言葉もないまま時間だけが過ぎていく。
その沈黙を破ったのは、レミリアだった。

「あら、ここに居たのね。
リリカが呼んでたわ、次はあなたも出ろ、だそうよ」
「あ…はいすぐ行きます…」

蕾夢は立ち去ろうとし、立ち止まってカーテン越しに見える愛子へ振り返る。
軽く肩を叩かれて振り返ると、レミリアは僅かに微笑んで頷く。

その表情に何かを感じ取ったらしい蕾夢は「お願いします」と小さく会釈すると、そのまま退出していった。


-幕間 「風を待った日」-


レミリアはそっと、カーテンを押しのける。
そして…ベッドの上でうずくまり、ただ声を押し殺して涙するその少女の側へ、背を向け腰掛けた。

「……月並みな事を言うつもりはないわ。
こういうときには何を言われても辛いだけだってことくらいは、私も知ってるから」

これまでの愛子であれば、恐らくはヒステリーを起こし、強く当たり散らしていたかもしれない。
他人の優しさはすべて憐れみと蔑みとしてしか受けられないほど…周囲の冷ややかな視線と態度は、それほどまでに長い間容赦なく、この少女の心を踏み躙り、切り刻んできたのだ。

だが…愛子は戸惑っていた。

「わたし…わたし、どうすればいいの…?
もうなにをしていいのかわからない…わたしはいったいなんなのっ…!?」


絞り出すようなその声に、レミリアはゆっくりと答える。

「…ひとつだけ確かに言える事があるわ。
愛子……あなたはあなたが言うほど、何も出来なくはない。
少なくともあなたは、自分の可能性を試そうと家を飛び出して、そしてあの幽香に挑んで見せたと聞いてる。
幻想郷の誰もが避けて通るあの怪物に喧嘩を売って、理由はどうあれ命を拾った…あなたに注目していた者は意外に多いわ」
「………わたし、あのひとを守ろうとした子を傷つけて…怒らせただけだった。
あの時に死んでしまえばよかった…」
「そう。
でも、あなたが死んで悲しむ子がいることだって…本当は気がついてたんじゃないかしら?


♪BGM 「街景 時を失くした王」/古代祐三♪


愛子は答えない。
いや…答えられなかった。

彼女自身もとうに気がついていたのだ。
本当は、自分がどれだけ蕾夢の事が好きだったのか。


両親以外で唯一、飾りのない言葉と態度で接してくれるその少女の事を。


「あの氷海という娘…私の見立てが確かなら、今のあなたよりずっと格上の相手よ。
私は無理だと思ってた。正直、かごめはあなたを潰す気でいたのかと思ってたけど…」

レミリアはそのとき初めて愛子の方へ身体を向け…そして、そっと抱き寄せる。


「あなたを見縊っていた事、謝らなくちゃならないわね。
あなたは私の「眼」にも見えない何かを、確かに持っている。
…だから、何も出来ないなんて言わないで。あなたは、私なんかよりずっと素晴らしい才能をもらって生まれてきたんだから


不思議そうな、涙でぬれた目でその吸血鬼の少女を見つめる愛子。

「こんな話は聞いてないかしら?
幻想界が誇る最強の吸血種に牙を剥いて、盛大にそれを折られた挙句生き方まで変えてしまった情けない吸血鬼の話を。
それはやがて、自分の本当に大切なモノを守るために…己の唯一のアイデンティティであった、運命をも操る強力な力まで失ってしまった」

寂しそうに笑うレミリア。

「けど…そうなって初めて、その吸血鬼にはやるべき事が、目指すべきモノが見えてきた。
自分自身が自分自身を縛っていた枷から解放されたの。
そして…本当に心のままに振る舞う事が出来るようになった」

愛子にも、それが誰の事を言っているのかに気付く。


彼女はきっと、自分にはないモノを持っている。
本来はこうして話す事すらできない…むしろ戦い殺し合う魔性という存在である筈なのに。


「(このひとも…きっと、私と同じ。
 今は違うけど…このひともきっと、理想と現実のギャップにずっと苦しんでいたんだ)」



少しだけ。
ほんの少しだけ、心に光が差し込んでくる事を感じながら。


「…私も…私も、なれるのかな?
あなたのように、自分の心のままに歩けるように」
「それはあなた次第よ、愛子。
あなたは自分の弱さと強さを知る事が出来た。
…あなたが望むなら、あなたをもっと高みへ導く手助けは、私達がしてあげる」

愛子へ手を差し伸べるレミリア。
その手を、愛子は少し戸惑いながらも、同じようにして取り返す。


「…かごめ、パチェ。
どうせ見ているのでしょう?
この子は紅魔館で預かるわ。パチェだって本当は、弟子の一人も育ててみたいと思ってたんじゃない?」



その言葉に、舌打ちとともにゆっくりと、カーテンの外で人影が立ちあがるのが見える。


「…なーまいきな。
どうせお前が面倒を見るわきゃねえとは思ってたがな」
「そうね……露骨に面倒事はすべて私預け、いやらしい」

先ほどまでいた筈のその吸血鬼真祖と、見覚えのある大魔導師。

「…でも、ナメタ連中もいたことを聞いて私の怒りも有頂天だわ。
これほどのすばらしい原石を預けられたことは光栄に思わねばならない…」
「面倒事を押し付けたのはどっちよ。
自分では気の利いた事も言えないからって、露骨な態度でチラチラ見て来たのは何処の紫もやしだったかしら。
…魔法の的役くらいは買ってやるわよ。私にとってもいい修行相手になるし」
「互いに乗り気だったならあたしも言う事はねえよ。
…どうする愛子? こいつらについて行ってみるか?
あまりヘンな事身につけさせられたりすると、正直タマちゃんに合わす顔ねえんだがなあ」

かごめの言葉から一拍置いて、愛子は乱暴に自分の涙を拭う。
そして、深々と頭を下げる。


「お願い、します…!
わたしに…私に何ができるのか…私はそれを知りたい!
お父様やお母様………蕾夢や氷海さんに、これが私なんだって、胸を張って言える自分になりたい!」



三人は顔を見合わせて頷く。


「…私の修行はHARDよ…しっかりついてくるといいわ」
「あんたその言葉似合わないわねえ…。
そういえばこぁはもうほとんど北方公閣下に取られちゃってるわね、話し相手がいなくなって退屈してたんじゃない? 最近魔理沙も押し入ってこないし」
「一度言ってみたかった、反省はしていない」

その二人を余所に、かごめは愛子の肩を叩く。


「もう立てるだろ?
どうだ、今の蕾夢の姿を、少し見ておきたくはないか?
…もしかしたらあの空気読まない茶巻髪が暴れるだけ暴れて終わるかも知れんが」





自然界の気脈を操るという力を持つ、特異な一族の少女が放つ地脈の気の一撃を飛び退いて回避し、紗苗は悪態を吐く。

「よくもまあメブキジカなんてもんにスカーフ持たせる気になったわね…!
けど、それが命取りになるって教えてあげるわ!」

回避しきれないその波動に押され、後方へ吹き飛ばされながらも低い姿勢で踏みとどまり、それとともに解放した氷の魔力が高速で球状に集束されていく。

傍らのかごめに抱き寄せられた格好で、愛子はその光景を見ていた。
一目で遅延術式の解放と解ったその氷の球は、氷雪属性系の初歩の初歩と言える攻撃魔法。
しかし、紗苗の身体が周囲に放った冷気を巻き込むように空中で旋回するにつれ、その冷気球に尋常でない魔力が集束されていくのが解る。

「喰らえッ、エターナルブリザード!!」

全魔力を込めてくりだした蹴撃で、氷の球は一瞬のうちに巨大な氷柱となって相手の少女を氷漬けにしてしまった。
下手な上位攻撃魔法よりもずっと威力のある一撃だろう。

「( ̄□ ̄;)ひぃいいいいいいい何ですかアレえええええええええ!!?」
「さっきの氷海さんの魔法より威力あるんじゃないのあれ…?
かごめさんといいアンナさんといい、あの一族バケモノしかいないんですかマジで」
「むー失礼な、バケモノより怪物と呼びなさいよ」
「「( ̄□ ̄;)どっちも意味かわんないじゃないですかやだー!!!」」

まるで漫才のようなテトラ、ユルール、紗苗のやり取りを余所に、険しい顔の衛騎士(ファランクス)が紗苗の前に立つ。

「…及ばずながら、お相手願おう!」
「ふむ、なかなか強そうな人が出てきちゃったみたいね」

紗苗は僅かに二、三度、視線を動かす。
そのうち一瞬、愛子と視線が合うと、紗苗は一瞬でその懐から頭上へと飛び、凄まじい遠心力を加えた蹴りをその女性…プラリネの構える盾へと叩きつける。
その余りの衝撃の強さに表情を歪めるプラリネ。

「くっ…だが、その程度で私を制する事が出来ると思うな!」

返しの一撃が裂帛の気合と共に繰り出され、かろうじて直撃を避けるもののその強烈な余波で紗苗の体は大きく吹き飛ばされ…その傍らに、静かに魔装を解放する蕾夢の姿。
それとともに地面の亀裂が、複雑な波紋を描いて広がっていく!

「あなたには、何の恨みもない。
でも…私の全力を見せたい人がいる。
悪いけど、あなたもここまでですっ!!」
「賢しい事を!」

猛然と振り下ろされた槍を、蕾夢はその杖で受け、いなす。
その切っ先が鎧の鳩尾を捕えたその瞬間だった。


鎧に波紋が走り、次の瞬間粉々に粉砕される…!!


ギャラリーはその光景に言葉を失う。
粉砕されたのは鎧だけ、それほどの一撃を受けながらプラリネの身体は傷ひとつなく、そのままそこにあった。

驚愕の表情でしばし硬直して居ていた彼女は…構えを正す。

「…何故、その技を私の身体へ徹さなかった?
君ほどの力があれば、鎧と私の身体をあべこべにすることなど造作もなかっただろう」
殺し合いをする事が目的ではないんです。
けど、今の私に何ができるのか、それを示しておきたかった。

…気分を害されたのなら、謝ります。でも、あなたなら解ってくれるような、そんな気がしたんです」

哀しそうな、それでも真剣なその表情に、女将軍はふっと微笑んで返す。


「…………君の、勝ちだ。
これほどの力の差を見せつけられ、なおかつ殺気を持たない相手に逆上するなんて馬鹿をやるのはアテナやレモンだけで十分だろう。
いずれその技…私の力で止めて見せる


踵を返し、颯爽とその場を立ち去るプラリネに深く一礼して、蕾夢はその眼差しを愛子へと向ける。
これが今の自分にできることなのだと、そう伝えるように。


「“無限共振”。
あの子の持つ“波紋を操る力”で、あらゆる物体の固有振動を狂わせ崩壊させる大技だ。
…いずれあの子の才なら、大地の精霊王と出会う事が出来るかもしれない…地の奥義を装填させたあの技が、どれほどのモノに進化するかは見当もつかない」
「私に…私にもそういう力を、身につけられるん…ですか?」
「レミィも言ったろうが、それもお前次第。
身近な所に炎の精霊牛や気難しい雷の女神も居やがるが、お前さんの力だと残念ながら連中と相性は悪いだろ。
だが…もし“深森の隠者”か“翼の英皇”に出会えるのなら…あの連中なら力になってくれるかもわからんな」


かごめはその背中を力強く押す。


「見せてくれ、あんたが何処まで高みに登れるか。
そして…何時でも構わない、今度はこのあたしに喧嘩を売ってきな。
最近は骨のある魔性狩りも退治屋も居なくなって退屈だからな」
「……はい!」


まだ弱々しくはあったが、それはかごめが見る初めての愛子の表情。




その姿を、ふたつの存在が空から見つめていた。

「…どうだいアカツキ?
キミが昔会ったという女の子、少しは興味がわいてきたんじゃない?」

軽い口調の風の化身に、重厚な雰囲気を持つその精霊は応えない。

「この間、どうしてもというからあの吸血鬼の子にも文言を教えてあげちゃったけどさあ…まさか本当に使えるとは思ってなかったけど。
本当は居なくなり際の置土産でユルールにも教えてあげたかったんだけどねえ。
聞けばシグマの申し出も断ったというしさあ。あの理屈屋があっさりと奥義魔法の認可出してくるなんて珍しいってのに」

くるりと一回転するその姿は、道化のような態度を取りながら…束縛されぬ偉大な空の王としての気品さえ漂わせ。


「ユルールもだけど…あの子も、ボクは気に入ったよ。
そのうち、ボクの方から押し売りに行ってもいいかもね。
…その時はまた声をかけるよ、じゃあねアカツキ」


その言葉とともに、一陣の風となって飛び去っていくフィリ。
アカツキと呼ばれたその精霊は、じっとその少女を見続けていたが…ふっと微笑むと、そのまま風に紛れて消えていった。