ポケモン対戦ログ(2014.10.3) その3



最終ラウンドめう!

我の手持ちですなwww
マミゾウ(ゾロアーク@物知りメガネ)/ぬえ(メガクチート)/こいし(ロズレイド@突撃チョッキ)
控えですぞwwww:今冬環境に氾濫予定のボーマンダ、ドクロッグ、ウインディ
相手の手持ちですぞwwww
ミルフィーユ(チラチーノ@命の珠)/ローズマリー(キノガッサ@鉢巻くさいけどどうなんだろう)/フェデリーニ(メレシー)
控えですぞwwww:ムウマージ、サメハダー、鍵束


かごめ「誰が最終戦だからってヨタ話を入れると思ったか!!!( ゚д゚ )彡」
諏訪子「∑( ̄□ ̄;)うわお前帰って来たなら来たって言えよ!!
   …っていうか見事に目が据わってるというか、きっちり正座してるが打ち上げって酔い方じゃねえよな」
さとり「(完璧に目が据わっている)いくらなんでもここまでなんか色々言われなきゃならない謂れだって私達にないですよおかしいですよカテジナさん!!!><ノシ」
諏訪子「うわおいこのさとりも一体どうしたんだよ!?
   つか誰か事情を知ってる奴どうにかしろよっていうか兎詐欺何処行きやがった肝心な時にトンズラこきやがって!><」
小町「あー…やっぱり拾って来なきゃよかったねえ^^;
  なんか魔法の森の近くで三人して半狂乱で飲みながら延々と対象不明の罵詈雑言並べ立ててたから、流石に放置もできなくってさ
諏訪子「じゃあ無縁塚(おまえんとこ)持ってけよ!
   かごめといいお前といいなんでまずうちなんだわけわからんわ!!><」
紫「(何故か素面)まあ許して頂戴、色々あったのよ^^;
 あ、子供たちはてゐに頼んで下がらせたわ、流石にこの二人を絡ませたら色々良くない系の事が起こりそうだったし」
諏訪子「あーもう…まあいい、その話後にしてここの解説さくっと終わらせてくれ。
   どうせその時の話をおまけにするんだろ、私ぁあの馬鹿共をどうにかして片づけてくる><」
紫「察しが早いようで。
 あ、私は実際飲んでないわよ。私だけ素面でいたらかごめに潰されるかと思ったから、境界を操って」
小町「ああ、なんとなくさとりがあの有様な理由が解った^^;」

紫「前のラストで触れたように、一見威嚇パに見せかけてゾロアークでひっかきまわすメンツよ。
 勿論、相手が物理に厚そうなら、実際に威嚇三枚並べるのもアリなんだけど」
小町「やるんかい。
  相手は珠チラチから入ってきたけど、見た目がぬえなのを嫌ってトンボから入ったね。結果的に相手の行動が大当たりだったんだけど」
紫「威嚇が出なかったから怪力バサミとでも思ってくれたのでしょうけど、それ以前に有効打がないのは初手トンボからでも明らかかしらね。
 ただ、こっちも向こうに壁を張る余裕を与えてしまったから、正直マミゾウの技はもうちょっと見直してもいいかもしれないわ。
 不意打ちを折角持ってるんだし、足も速いから放射か草結びのどちらかを挑発でもいいんじゃないかしら」
小町「気合玉でもいいんだろうけどね、範囲を取るなら。
  ただ、こっちも「本物の」ぬえと交代して挑発、ステロを撒かれるのまでは防げたね。
  アイアンヘッドをぶち込んでいくんだけど、死に出しからキノガッサが殴って来たね。というか、格闘技当倍だからごり押せると思ったんだろうけど、こっち普通にじゃれついて行けるよね」
紫「でも狐野郎は粉を警戒してこいしを出したはいいけど、マミゾウをクッションにする意味があったかどうかは薄いわね」
小町「どうだろう…B低いからね」
めう「こいししはH24B31のロズレだから意地っ張り鉢巻ガッサのテクニマッパでやや低乱寄りの中乱2めう。
  相手のキノコが持ち物不明だけど鉢巻と見たら後出し難しいめう」
小町「∑( ̄□ ̄;)うわっとお!!
  なんだこういうところでそういう系統の情報入れるのてゐの役目じゃないのかい?」
めう「うさうささんはまりりに捕まっためう(ノД`)
  …ああなったら暫くまりりの成すがままめうから代わりに行ってくれって言われためう」
紫「此間藍も捕縛されて丸一日仕事にならなかったみたいねそう言えば(しろめ
 けど向こうも有効打がないとみて引っ込んだから、交代先のチラチにヘド爆叩きこむことができたけど…今その子が言ったように、基本的に物理紙耐久のロズレイドが珠チラチの一致スキリンスイープなんて耐える道理もないと」
小町「そこでリフスト撃てる度胸があればね。
  チラチがH4振りならトンボしたときの珠ダメを考えなくてもきれいに確定一発だ。まあ、ヘド爆でもチラチのHP8割前後持ってけるから、あとは完全にぬえちゃん劇場だったけどね」
紫「メガクチートの火力はタワケてるからね。
 さて…(チラッ」


かごめとさとりは諏訪子諸共潰れているようだ…


紫「…本当に仕方のない連中だわ。
 無茶苦茶をやるのは私達だってそうだけど、流石に向こうも一筋縄で行かなくて、正直途中でどこまで同いじっていいのか解らなくなってそのうち面倒になって来たから大筋のバックボーンをいじるのやめたのよ。
 何しろ、本気で全てを一から提示通りに修正するとなると、エトリアの話自体がなかったことになるわ。そうなると、かえってややこしい事になって収拾つかなくなる事態にしかなりえないのは火を見るより明らか、下手をすれば私と地底の連中で戦争する事態にもなりかねないもの。
 …あの子達の事を知った今でなら、感情的にも勿論のことだけど…そもそもヤマメやパルスィの能力は私でも防ぐのが極めて困難、出来れば「敵」として相手したくないしね」
小町「えっ、それじゃあ結局何も変わってないのかい?」
紫「いいえ、それはあくまで「向こうの本来の都合に合わせた歴史の改変」をしない、ってだけの話よ。
 ただ、どうしてもいじくっておかなければならない話は、にんじんの扱いよ。
 アレに関する解釈を一からやり直す為に、にんじんに関わる部分の歴史「だけ」を変えてきた…メタい話をすれば「のび太と鉄人兵団」のクライマックスみたいな事をしてきた、と言えば解るかしらね」
小町「…………どういうことだい?
  アレだと確か、攻めてきた別の星のロボット兵団の歴史を変えるために、最後その原初のロボットが作られた時代に行って、本来組み込まれずに終わった良心回路を、開発した博士の代わりに…って話だったよね。
  確か現状にんじんの設定はアリスが作った…あれ? どうだったっけ…?」
紫「あなたのその記憶が曖昧になりかけているとしたら、私達のやってきたことは成功したという事よ。
 確かに、狐野郎のプロットでは、元々は幽香を殺そうとしたあのロストナンバー。
 ただし…あそこまで痛烈な怒声を持ってそれを良しとされなかったのなら、その根本を変えてくる必要があったわ。
 ………ならば、今ここで「にんじん」と呼ばれる人形が、「アリスの手によって作られた人形ではない」という歴史にしてくるしかない。
 かごめは意地を通してそれだけはやり遂げたわ、その為に幽香とアリスがどういう結末を迎えることになるのかとか、その齟齬が生まれていないことも見届けた上で、ね。正直、一番面倒だったのがそこだったと言ってよかったわ」
小町「じゃあ結局、にんじんは誰が作ったんだい?
  あたいの記憶でも、今この時点であいつはかごめのところでいつも通り庭先掃除して…あれっ!? そう言えばあいつ、普段全く動けないはずだったんじゃ…
紫「というわけで、ここからはその顛末の話になるわ。
 対戦は以上よ。あとは興味のない人は素直に引き返してくれると助かるわね」
















~今から一年半前の世界 神綺の王宮~


「……話は解ったわ。
正直、そんな未来の事を聞いてしまった以上、私はそれを阻止するべきなのかどうか、迷うところではあるけれど」

広間の玉座で、頬杖をつきながら眼下の面々を睥睨する魔界の神。

「けれど、もし今、私がアリスに届けようとする「素材」がなくなれば、その…アリスが「死」と名付けるその人形のような、それほどまでに強大な力を持ったイレギュラーが自然に生み出されるものなのか、そこが気になるわ。
あの子は錬金術師じゃない。それ故に、恐らく生涯この先も「生命を持った人形」を生みだせないと思う…私と同じ事が出来るようになったと仮定すれば、あの子に生み出せるのは「人形」ではなく…「魔界の民」になる
「あたしもそこまで考えがないわけじゃないさ」

かごめは傍らに置いていた風呂敷包を開ける。
そこから現れた、ソフトボール大の黒い球体を目にした瞬間、神綺は息を飲み、驚愕に眦を釣り上げる。

「あなた……そんなシロモノを何処で!?」
「これを見つけるためにエビルマウンテンに潜ってたのさ。
かつて、全世界を支配しようとしていた魔界の邪神ミルドラースが、地上天界を殲滅する為に作成を命じたものの、その前に勇者レックスにより滅ぼされたことで、開発実験途上で放置された特別仕様のキラーマシン…そのコアをな。
より多くの魔力をコアに貯蔵し、従来のキラーマシンの五十倍近いエネルギー出力と稼働時間を実現するため…コアの素材に「黒水晶」を用いたというそれを
…コアに「核晶」を用いたキラーマシンの話なら聞いた事くらいあるわ。
まさか、そんなモノが実在するなんて思っても見なかったけども」
「現在は完全に製作技術が失われたオーパーツ中のオーパーツ、なおかつ奇跡的に無傷で残っていた唯一品だ。
これほど魔力の影響を受けやすい物質なら、同じようにしてアリスの感情を吸い上げてくれるだろう。
あたし達は対峙したことはないが…うちの親父様だのゆうかりんさんだのが言った「ロストナンバー・(タナトス)」のデタラメ過ぎる戦闘能力を再現するとすれば、これ位デタラメな出力が叩き出せるコアがなきゃ話にもあるまい」

神綺は溜息をついて、どっかりと玉座に身を預ける。

「解ったわ。
例のものは宝物庫にある…私はこれを、アリスが製作している件の人形のコアと、入れ替えてくればいいのかしら?」
「いや、そっちは紫たちにやってもらう事にするよ。
あたしは、貰ってったものをもう一度、人形として作りなおすため…会ってきたい奴もいてな。
…無茶を聞いてもらった以上、あんたをその玉座から動かすような苦労をかけさせるわけにもいくまい」
「そう言うならば、私の我儘も一つ聞いてくれることにしてもいいんじゃないかしら?」

かごめは僅かに嫌そうな顔をする。
神綺は何処か悪戯っぽい笑みを浮かべながら、玉座から立ち上がって告げる。


「そんな嫌そうな顔をしなくてもいいじゃない。
……私は何もしないわ。
ただ…あなたがこれから何をするつもりなのか、それを間近で見届ける権利ぐらいは、あるんじゃない?



幕間「雨人形の帰還」



それから数刻の後、冥界最下層。
「辺土」と呼ばれる、地獄に最も近い、十王の裁きを待つ特殊な死者が繋がれた牢獄の世界…その奥まったところを、かごめと神綺は目指している。

数年前、別件で訪れた時とまるで変わらないその陰鬱な世界の一角には…いまだ修繕されることなく、激しい戦闘により崩落した牢獄もある。
それはおそらく、かごめがかつてこの世界から解放しに行った、騒霊姉妹の姉達が囚われていたその場所であろうか。

「いつ来ても、ここの空気には慣れないわね。
こんなところに数年もいれば、如何な悪人といえど気が触れてしまうでしょうに」

神綺は溜息を吐く。

「そんな世界で、それこそ何百年単位で繋がれていた者達は、いったいどんな思いで正気を保て得たのでしょうね。
…いえ、まあ、あの子達ならそのくらいはできるのでしょうね。
あの子達の絆の強さは、実際に目にした私も知っている」
「四季映姫曰く、あれほどまでに自我を保て得た例はないんだそうな。
もっとも…その「次の例」は、今もなおそこに繋がれちゃいるがね」
闇の人形師ジズ…あなたの世界で、かつて史上最強最悪と言われた魔性真祖、ね。
聞いた話では、既に釈放されている筈の彼はいまだに裁きを待ち、この世界に繋がれたままだと聞いている。
あなたは彼に会って、それをどうしようというの?」
「その理由はわざわざあたしに訊くまでの事じゃないと思うがね」

その空気がさらに変わったことを感じ取ったのか、ふたりの会話がそこで途切れる。

その奥から、絶望や狂気とも違う、負の感情なのかどうかすらも解らない独特のオーラを感じ取れる。
最も近いイメージがあるとすれば…それは恐らく、深い深い悔悟の念

「久しぶりだな。あの時以来か」

かごめはその、深く鎖された闇の奥へと声をかける。

暗闇に目が慣れてくると、神綺もその姿を認識する。
黒いローブに包まれたまま無骨な鎖に全身を戒められ、俯く仮面の青年。

彼はゆっくりと…顔を上げる。

「懐かしい顔だ。
…ですが。今更何の用事ですか?」

その言葉には、何の生気も覇気も感じられない。
ただ、そこには深い後悔の色しかなかった。


神綺もかごめの過去を知っている。
故に、目の前のこの青年が、永劫にも思える長い時間、かごめを絶望の中に捕え続けていたことも。
今更、彼に会う事でわざわざなにをしようとしているのか…その予想はないわけではなかったが、やがてかごめが発した言葉に、神綺は目を見開いた。

「単刀直入に言うよ。
この人形を、作り直してほしい」

かごめがかざした手の先に境界が生まれ、ふたりの眼の前に横たえられた人形。
五体は砕かれ、修繕すらままならないその人形を見た時に、仮面の奥の瞳が細くなる。

雨人形壱ノ妙。
かつてジズが作り、かごめとの戦闘を強いらせた人形。
その素体に使われた「もの」で、かごめに深い絶望を味あわせるために作られた…忌むべき存在だった。

「…あなたは、本当に残酷な事を言う。
願うならこれ以上、私に罪をかぶせないでほしい…あなたはそれが、如何なる目的で作られた人形かを知っている筈」
「あんたが本当に救われたいというなら、だったら、この人形をあたしのために作り直すべき義務があるはずだ。
「あたしの母さんの紛い物」じゃなくて、「あたしの新しい娘」として。
あたしがあんたをとうに許していることを解ってくれないんだったら、あたしが思った方法で無理矢理にでも償わせる。
それを償いにさせてやる。それだけの話だよ」

かごめは懐から、ひとつの鍵を取り出す。
彼女が元来た時間軸の、四季映姫から借り受けたこの戒めを解く鍵。

彼女がそれを、胸元の錠前に差し込むと…重い金属の音が響いて仮面の人形師が解放された。


「もう一度言う、ジズ。
この人形を作り直すんだ。
あたしの、新しい娘として」



成り行きを見守る神綺にも言葉はなかった。
そう宣告するかごめの姿は、戦いの時に見せる野獣の如き凶暴さはない。

だが、有無を言わせぬ鬼気めいた空気と、一方で何処までも悲しげな、悲痛さに満ちた雰囲気がその場を支配している。


人形師はしばし、無感情な眼で目の前の少女を見上げていた。
まるで永劫にも思える、沈黙の時間をジズが破る。

「これも、天命なのでしょうか。
私の存在が程なくして消え去るであろう前に、私がこの子に新たな命を与えてやるチャンスがもらえたというのなら…甘んじて、それを受けましょう」

静かに、その手から妖気が放出される。
それは、今にも消え去りそうな蝋燭の火のような、最後の一瞬の輝きをも思わせる。

「私の呪われた知識は、私とともに消え去る運命とします。
しかし、その前に、その知識の総てを持って、私は最後の作品をあなたへ遺しましょう」


かごめは頷き、神綺を伴ってその場を後にした。





それから一週間の後。
かごめは神綺の王宮に滞在しながら、紫とさとりよりアリスと幽香の戦いが同じような決着を迎えた事を知り、神綺を含めた三人を伴い、再びジズのもとを訪ねた。


「お待ちしておりましたよ、かごめ」

燐光に包まれた、仮面の人形師。
その姿はほとんど実体を失いかけており、その存在すらあいまいになっていた。

霊の死。
存在の完全なる消滅。

彼がその時を迎えようとしていることを、かごめ達は悟った。

その薄れかけた姿のまま、彼は何処か寂しそうに笑う。

「そう…きっと、私はあなたがこうして、もう一度私の元へ来てくれることを願っていたのかもしれません。
私が「罪の意識」で此処から動かなかった…それすらも、きっと何処かで、私がそう願い続けていたことへの口実に過ぎなかった。
…あなたに託すのではなく…この子を、もう一度私の手によって、蘇らせるために

その前には、ぼろぼろになっていた筈の衣装を仕立て直した着物を着せられた、子供ほどの背丈の人形が行儀よく座らされている。
それは、かごめもよく知るその人形と、寸分違わぬ姿であった。

「無論、これはただの私の自己満足でしかない。
あれほどまでに永い時、あなたを絶望の檻に閉じ込め…否。
私はあなたの母親をその手にかけ…そのことだけでも、あなたが私を憎み、滅するだけの理由になった筈。
…それでも…あなたは私を許そうと…私の心を汲んでくれると、そう言ってくれるのですか…!


薄れゆくその仮面の下から、涙が零れ落ちていく。

「言っただろ。
あたしはもう、とうにあんたを許してるんだ。
むしろ…こんな形でしかあんたを解放してやれなかったあたしの方こそ…あんたは許してくれるかい?」

その人形を大事そうに抱き上げ、一瞬見えたかごめの表情も穏やかだった。
朧に消えつつあったその手を、彼女はそっと取り上げる。

あんたが過去やってきたことも、その所為であたしに残った心の傷も、きっとあたしが生きてる限りなくなりゃしない。
でもさ、それでいつまでも悲しみと憎しみに囚われ続けていたら、あたしもきっと前には進んで行けないと思う。

だから…もういいんだ。これで、いいってことにしていてやるよ…!」

零れ落ちた涙の雫が触れる前に、その手が光の粒子となって消えていく。
それを見るジズの表情も、穏やかなものだった。

「かごめ…最後に一つ、私の頼みを聞いてもらえますか…?
その子を、あなたの手で…起動させて見せてください。
…私も知らないわけではない…あなたが…己が身に宿していた永遠の破片を消すべく、私の「工房」を訪れていたことも。ならば」

かごめは涙をぬぐうと、頷いて人形を立たせ、魔力を送り込む。
その魔力をきっかけにして、人形はゆっくりと目を開ける。

ジズは満足そうに頷く。
そして、自分の最後の「子」に、それを告げた。


「あなたは…私の最後の作品。
命ある人形としてこの世界を見、そして学び、あなたの意思で生きていくのです。
これが…私が与える、最初で最後の命令です。いいですね?」



人形はゆっくりと頷く。
それを見届けた彼は、満足そうに微笑むと…そのまま光の粒子となって消えていった。








~それから半年後…現在より一年ほど前の世界~


その人形を伴い、神綺はかごめの元を…無論、その時間軸の、であるが…訪れていた。
あの日、交わした約束通りに再び訪れたかごめから、ジズの忘れ形見となったその人形を受け取り、「この時間軸のかごめ」に「彼女」を手渡す為だ。

神綺はかごめに言われた通り、金剛神界を通じて別次元へ旅立とうとするアリスから人形を託される段になったとき、「この子達はあなたの娘も同然。旅先で野垂れ死ぬ事も厭わぬ覚悟があるのなら、この子達を置いていくという事は道理に合わない。ならば、あなたとこの子達は運命を何処までも共有すべき」と説き、アリスはその母親の言葉通りに人形達と共に旅だった。
無論、その中には件の「死」もいる。


そして娘の旅立ちを見送った彼女は、「この時間軸のかごめ」に人形の経緯を説明する。
最初は驚いた表情をしていたかごめだったが、何か納得するところがあったのか、その人形を手渡され寂しそうに笑う。


「そっか…あいつが納得して、それで消えちまったのならあたしはもう何も言わない。言えることなんてある筈がない。
でもなんで、今更になってそんな事を?」
「アリスが暫く居なくなるだろうから、私も寂しくてね。
せめて傍で相手してくれる人形が欲しくなったはいいけど、別にそれならあなたと組んでしばらく悪さをすることにしたっていいと思ったのよ。
まあこの子は…そうね、その為の手土産というべきなのかしら」
「随分な手土産もあったもんだな…まあ、例えばあの「死」だっけか? あんな見境のないじゃじゃ馬みたいなのを持ってこられても流石にあたしも困るしな。
というか、こいつ本当に動くの? 飾り物の人形だったら、置くトコなんてないよ?」
「試して御覧なさいよ。
あなた…ジズの人形の動かし方、知ってるんじゃなくて?
…ロキから聞いているわ。あなた「破片」を消す為に探し当てたジズの工房から、彼の残した人形制作の雑記…持ちだしてるんでしょ?

それもそうか、とかごめは溜息を吐く。

かざした手から放たれる魔力を通じて、コアに魔力的なロックがかけられていること、そして、初期稼働に必要な分の魔力が蓄えられていることを…最後に残したジズの遺志が、そこに残っていることを感じる。
そこに残されたメッセージを、かごめは読みとった。


-かつて、あなたが交わしてくれた約束を、果たしていただく時が来たようです。
再び生命を宿すであろうこの子のことを…どうかよろしくお願いします-



鍵の外れるような音がして、人形はゆっくりと目を開ける。
そして、ゆっくりとした動作できちんと正座すると、ゆっくりとした動作で首を垂れる。

「お父様から命ぜられました。
あなたを、僕の使役主(マスター)として、見聞を広めよと。
至らぬところあるやもしれませんが…何卒、よろしくお願いします」
「ああ。こっちこそ、よろしくな。
…ところで神綺さん、こいつ名前あるの?」
「あ…そう言えば私全然聞いてなかったし、考えても見なかったわねそこまで。
別にかごめちゃんで考えてもいいんじゃないかしら?」
「うわそれも無責任な話だなオイ…。
どうすっかな、そのまま壱ノ妙って呼んでもいいのかな、それとも壱ノ妙Mk-2とか」
「あなた意外とセンスないわねえ…大昔詩作で喰ってたとは思えないわ」

やかましいわい、とかごめは手酌で湯呑になみなみと酒を注ぎ、口につける。


「そうだな…「にんげん」になりきれなかったもの、「にんじん」とでも呼ぶか。
正式名称はまあ多分、ものが一緒なら「雨人形壱ノ妙」でいいだろうが…呼びづらいからね」


そのはるか上の空から、スキマから身を乗り出すようにしてかごめ、その後ろに立つ形で紫、さとりもその光景を見守っている。
全てを終えた彼女たちは、そっとその境界を閉じ…己があるべき世界へと帰っていく。


この改変劇の記憶は、恐らくその多くの者がそれを知らず終わることだろう。
ただ、これを実行した三人と、それを容認した四季映姫、そして…神綺のみの記憶に留められ、やがてこの世界から消えゆく幻想の一つとなるのだから。










~現在~


その時間跳躍の長旅を終え、かごめは母屋の軒先をくぐる。
既に辺りは夜の帳に閉ざされ…恐らく、何時もの如くであれば愛娘のつぐみと、その世話係(という名目ではあるが実際はどうなのか…)の鈴音、針妙丸…そして、離れに居候している豊姫が眠りについている頃合いであろう。

かごめは彼女らを起こさぬよう、同じようにして隣家に戻ったであろう紫でも誘って一杯交わそうと思い立ち、そろりそろりと足を忍ばせ、買い置いていた酒を取るべく台所へ向かおうとした…その廊下の所に人形が仁王立ちしているのに気付いた。

「暫く居なくなるとだけ聞いていましたが、こんな夜遅くにこそこそ何をしてるんですかあなたは」

咎めるように、僅かに怒気を含んだ語調のその人形に、かごめは一瞬目を丸くするが…すぐに全てを悟ったのか、ふっと溜息を吐く。

「…こんな夜遅くに帰ってきたところであいつら驚かすだけだろが。
今日は八雲家にでも厄介になって、明日出直すつもりだったんだよ。そのくらい察しろ」
「相変わらずですな。
つぐみが言っていました、お母さんがみょんな時間にみょんなタイミングで帰ってくるなど日常茶飯事だから、別に気にしないでって。
本当に、出来た娘御だ。自由奔放に過ぎて周りにジャイアントスウィングかましまくってるような母親は、爪の垢を煎じて飲んで欲しいものです」

かごめはまるで…ずっとそんなやり取りをしていたかのように、自然と「彼女」と話をしていた。
その言葉の選び方から物言いに至るまで、もう何年も、パートナーとして暮らしていたかのような錯覚に陥る。


かごめも何処か観念したのか、開き直ったのか…すたすたと台所に潜り、一升瓶を一本と茶碗を持って出てくると、「彼女」を促して縁側へと歩いていく。


♪BGM 「東方緋想天」♪


「あなたも懲りない方だな。
そもそも食事も摂らぬ僕を傍に置いて、一人で飲んでて楽しいのですか?」
「…っとに、口の減らない奴だ。
別にあんたが飲んでようがいまいが関係ねえよ、話し相手がいるって事の方が重要だ」
「僕の話し言葉はほとんどつぐみが教えてくれたようなものです。
今なら解ります…あなたの言動を真似ていたら、いったいどんな「僕」が完成していたことやら」

呆れながらも、その人形も何処か嬉しそうな表情をしていることは、かごめにも解る。
彼女は…何処か意を決したようにして…問いかける。

「あんたは…自分を生みだしてくれた奴の事を、覚えているか」
「その問いに何の意味があるのです?」
「他意はないよ。
ただ、からかってるだけだ。
…とはいえ、そんな黒い冗談を返すような奴には「育ってねえ」とは思いたいんだけどな…万が一、アリスの名前が出てきたら戦争の準備だ」
「本当に何を言い出すのか…。
いくらなんでも、会ったこともない方の事など、僕に語る口はない。
僕を生みだしてくれたのは」

すとんと、軽やかな動きでその人形は…「にんじん」は、月光に照らされた庭先へと降り立った。
そして、振り返ることなく、煌々と夜空に浮かぶ月を見上げ、言葉を続ける。


「僕の創造主は「闇の人形師」ジズ。
そして、ジズの忘れ形見である僕に名をくれたのは…藤野かごめ、あなただ」



かごめは満足そうに頷く。
そして、その背に向けて告げる。

「アリスのアホが帰ってきたら、忙しくなるぞ。
ヤツの肝煎りの人形共と、ジズの遺したあんたが…一体どんな競演を見せるのか」
「それは人形遣いとしてのあなたの腕の見せ所というところだろう。
僕は、あなたの意に従うまでだ。それが、お父様が僕に遺してくれた最後の道標でもあるのだから

月明かりの下、振りかえる影が、恭しく首を垂れる。
あの日と同じように。


何かを感じたらしく、起きてきていたつぐみはその意味も知る由もなかったが…彼女は二人に気取られぬよう、そっとその場を後にした。