符の十七


ルナサ「…やったの…?」


パルスィは気を失っている…


諏訪子「…殺すまではしないよ…腹は立ったけど、加減はしたつもりだ。
   それにこいつも、一時的にアオギリの力に中てられて、正気を失っていただけかも知れない。
   野放しにはできないけど…」
椛「…文様が戻ってこられたら、紫様に連絡を取って処遇を決めましょう。
 それが最良の手だと思います」
穣子「けど…手足を縛ってもこいつの能力で心を掻き乱されたらどーするよ?
  まさか、何時までも見張ってるわけにもいかないし」


「じゃあそいつは、あたしが預かって行こう」


♪BGM 旧地獄街道を行く♪


椛「星熊様!」
勇儀「天狗に連絡を受けて、後詰めとしてあたしが送られて来たということさ。
  あの記者天狗は頭も回るし性格も強かだから大丈夫だとは思ったが、念のためと紫が言ってな。
  それに…その橋姫は知らん顔じゃない。何故か私はこいつの能力をまったく受け付けんし、監視役にはうってつけだろう?」
神奈子「…怪力乱神…嫉妬心よりもさらに規模の大きい混沌を操る鬼か…」
諏訪子「任せた方がよさそうだね。
   少なくとも、このまま逃がしてアクア団に戻られるよりはいいだろ」


リリカ「お姉ちゃん!」
早苗「ルーミア!大丈夫!?」


静葉「…一時はどうなるかと思ったけど…一件落着かしらね」
雛「しかし…彼女、水橋パルスィは決して力も心も弱くない妖怪です。
 それを狂わせてしまうなど…この世界の神は、一体どれほどの力を有しているのでしょうか…」
穣子「どうだろうね。
  見てて思ったけど、アレはむしろ当人の暴走に見えた。
  野放しにできないのは同感だけど…まだ何かやらかしそうな気がするよ…」


ルナサ「…どうやら助けられてしまったようだな。ありがとう」
早苗「礼には及びません。それより、お怪我は」
ルナサ「大したことはない。
   それに、私達姉妹は騒霊。霊気が集まれば傷はすぐに癒える」
神奈子「…そいつは羨ましいこった。
   あたし達ぁ信仰がなければこの様だからねぇ

リリカ「良かった…本当に良かったよぅ…;;」
メルラン「あんたこそ元気そうで何よりだよ。
    やはりあたし達は三人そろってこそのプリズムリバー三姉妹。
    あんたがいないと、今一つ調子は出ないねえ」
リリカ「うん…でも、私」
文「おお、その話ですがリリカ殿。
 今回の取材、貴女を此処の専属レポーターとして送り届けるという目的もあったのです。
 落ち着き次第基材とスタッフをこちらへ送る手配になります故、そうしたら天気予報のコーナーをお任せすることになるでしょう」
リリカ「ええ!?そんな話…」
文「危急の事態ゆえ、お話するタイミングがなかったものでしてな。
 元いた研究所のスタッフもこの騒動で暫く戻ってこないでしょうから、それまで姉妹水入らずでお過ごしなさい」
リリカ「…うん…ありがとう、文さん」

諏訪子「(ひそひそ)おい天狗、本当のところはどうなんだい?」
文「(小声で)野暮なことをいうもんじゃないですって^^;
 確かに彼女を欠くのは痛いですが、その方がこの子達にとっては良いでしょう。
 まぁ、天気コーナー担当の席が空いてるのは事実ですし、それはそれでやってもらうことになるでしょうけど^^
神奈子「あ、そのへんはちゃんとそういう目的があるってことね^^;」





天気研究所 仮眠室


ルーミア「…(深い眠りについているようだ)」

椛「私はお医者さんじゃないけど…ひとまず命に別条はないと思います。
 ただ、精神的なダメージが大きいから…」
静葉「私もこの様だからね…せめて元の姿なら、此処の森林の気を吸い取って与え、回復させることもできると思うけど」


穣子「しっかし、私むしろどうしてこいつが急激に力をつけてきたのか、そっちの方が気になるわ。
  確かにこいつ昔、途轍もない力を持っていたとは思ったけど
椛「そうなんですか?」
穣子「うん、今から四、五百年くらい前だったと思うけどね。
  博麗神社周辺の妖怪でも、こいつは生まれて間もないにも拘らず、夢幻館の主・風見幽香や悪霊王と言われた魅魔と並び称されるほど強大な力を持つ妖怪だったはずだ。
  それこそ、あの紅魔館のひよっこコウモリだとか、地底の馬鹿鴉だとかとは比べ物にならないほど強い力を持ってたはずよ
静葉「初耳だわそれ。まぁ、私自身そういう噂には興味ないから聞いたことないだけだろうけど」
穣子「私だって今までは信じてなかったわよ、そんな与太話。
  けど、本来の闇の力を失っても、信じられないほど強い力をコイツから感じ取れるようになった。
  …単に、今の私がポケモンで、こいつがトレーナーであるからという理由なのかも知れないけどさ」

ばさばさ…

雛「…いいえ、その認識は正しいです…穣子さん。
 勿論ポケモンとトレーナー云々は関係ない、この子の純粋な力についてです。
 確かに昔に比べて、さらに強大になったように思える」
穣子「何よあんた、急に何処からともなく飛んできて私の背中に乗らないでよ」
雛「失礼、なんか止まりやすかったので

静葉「昔…ってことは、あなたはこの子の昔のことを知っているの?」
雛「ええ。
 何しろ彼女がつけているリボン…正確にいえば、それは彼女の強大な力を結果的に封じる為の呪布。
 それは、私が作ったものだからです
穣子「なんですって!?」

雛「この子の存在が確認できたのは、今から四百年ほど前だったでしょうか。
 人間の赤子のようでしたが、瞳は既に狂気の紅に染まり…何より強大な闇を纏っていました。
 光を捻じ曲げるほどのその強い力の暴走を危惧した当時の神々や妖怪達は、すぐにその力を封じることにしました」

雛「私が纏う、厄を吸い取る力を持った衣。
 それを妖怪の山の神泉に浸すこと十年。
 そして、私は八雲紫に依頼し、その呪布にある複雑な術式を組み込んだ」
穣子「術式?」
雛「ルーミア自身と、その力の境界を定め、その関係を分断する術式です。
 この呪布が完成するまでの間、私は彼女の力を抑えつける形で封印した…しかし、思った以上にその力は強く、呪布の完成はその封印の限界が来るのとほぼ同時だったといってよかった」
椛「つまり…彼女の力を彼女自身から引き離した、ということですか?」
雛「ええ。
 しかし、封印によって抑えられ、膨れ上がったルーミアの闇はあまりにも強大でした。
 天狗や河童の協力を得て…それでも多大な犠牲を払いながら、何とか彼女の髪に呪布を結いつけることができた。
 そのあと、ルーミアはそれとは知らず、付与された術式の作用により博麗神社の周辺から動かなくなりました。
 それ以降の博麗の巫女や、神社周辺の妖怪は紫の依頼もあってその力が暴発しないよう、それとなく監視をする役目も負っていたのです」

雛「…この子の本来の力は、四季映姫とは別ベクトルで八雲紫の力を機能不全に陥らせるほどの力。
 闇を操るのは副次的なものでしかない。
 …本来は、ありとあらゆる境界線を破壊する混沌を操る力なのです…」

静葉「…この子、思った以上に物騒な奴だったのね」
雛「とはいえ…これまで抑えられた封印も、この世界で八雲紫の力に制限がかかった影響で、徐々に…本当に徐々に、影響を失い始めている。
 早苗さん達から聞いて解ったのですが、彼女は、最初から比べて少しずつ変わり始めているようです。
 恐らくは、さらに強大に膨れた本来の力の影響が、彼女自身へ影響を及ぼしている」


「しかし、それは幻想郷の妖怪としてはあってはならない変化。
あるいはこの不可思議な世界に最も影響されてしまったのは…この子なのでしょう」


♪BGM 夜が降りて来る 〜 Evening Star♪


椛「八雲様!」
紫「私の一度の移動距離もここまでか…。
 参ったわね、此処まで影響を受けてしまうとは」

穣子「…何時も唐突に現れる奴と思ったけど…一体何処からここまで移動したってのよ」
紫「キンセツから…距離にしてほんの十数キロに過ぎないわ。
 そして恐らく、今日はもうこの力も使えないでしょう。
 明日には…恐らくもっとこの力を使用できる回数も、距離も制限されてしまう
雛「…そこまで…力が弱まっているのですか…!」

紫「私のことはどうでもいい。
 問題はむしろこの子。
 真に懸念すべきは…この子の変化にあった。
 神が消去されるよりもむしろ、妖怪が本来妖怪としてあるべき姿を失ってしまう…そのことこそ、真に恐れなくてはならなかったこと

紫「失策だった…気づいたときにすぐに動きを封じるべきだった…!
 あるいは…このままひと思いに!」
早苗「やめてください!」
紫「…口出しは不要です、守矢の巫女。
 いい加減空気を読まぬ貴女とて、幻想郷がその変らぬ姿を維持していく仕組みについては理解し始めているはず。
 妖怪は人を襲い、人はそれをさせぬために妖怪を退治する。
 外の世界で失われた者達がその存在を維持していくには、その決まり無くして手段などありはしない!」
早苗「…妖怪だから、人に危害を加えなくてなならないのですか!?
  人は、妖怪を追わなくてはならないと!?」
紫「それが互いの正しき在り様。
 妖怪も神も、そもそも人の怖れと信仰から生まれしもの。
 人間と妖怪や神が手を取り合うことなどあってはならないの。
 人妖と神々…そこにあるはただの力の差、その質ばかりではない!!
早苗「そんなことっ…!」

紫「…本当は解っているのでしょう、東風谷早苗…?
 貴女自身、外の世界ではその力ゆえ…奇異の目で見られていたはず」
早苗「それは…っ!」


紫「八坂神奈子が、僅かに残った信仰をかなぐり捨てて幻想郷へやってきたこと…。
 彼女が貴女を悲しませぬため、己の存在を保つため…それもあるでしょう。
 しかし…本当の理由は…


「…もう、いい」


紫「…貴女…!!」
早苗「…ルーミア…」

ルーミア「…もう、たくさんだ。
    幻想郷のことがすべて…その在るべき姿を守ることがすべて…?
    そのために…戦いたくないのに戦わなくてはならないの…?」


ルーミア「そのために、幻想郷のすべては仕組まれていたというの!?」


紫「…それが、摂理よ。
 貴女自身、人が最も恐れる闇と混沌を司り生まれた者。
 その呪布は…貴女自身がそれを理解できずとも、無意識的にその摂理に従うようにする術式も組んでいた。
 その力が失われ、本来の力を取り戻しつつある貴女は幻想郷の者としてそれを自覚しなければならない!」
ルーミア「そんなの知らないよ!
    あんたたち、力の強い妖怪は何時だってそう!
    総て解った気になって…ありとあらゆる総てを己の思い通りにならなければ気が済まないだけだ!!
紫「貴女っ…!」


ルーミア「気に食わないなら…あんた自身の手で私を退治してみなよ…!
    …出来ないんだろう?
    今の力云々じゃなくて…あんた自身が定めたルールを護るうえで…!


諏訪子「…成程ねえ…それが本当の意味での幻想郷のカラクリって奴かい。
   なんで何か騒動起こるたびに、あんた達が出張らんで巫女や魔法使いが動くかと思ったら…」
紫「…からかっているのかしら…?
 そこの青巫女はともかく…貴女は解っていると思いましたが」
諏訪子「理解することと納得することは全くの別次元の話だと思うがね。
   それに…あんたは本当に、なんの変化も望んでなかったのかい?」
紫「何…!?」


諏訪子「知ってるかい?
   あんたが危険視していた地底の連中でも、この世界の本質に馴染むのは早かったよ。
   その反動があの橋姫と言うなら言えなくもない…だが、あいつも自分自身も変われることを知って戸惑っていただけだと思う


諏訪子「それに、何時だったかあんたが言ったことだろう。
   幻想郷は…時に残酷なまでに、あらゆる総てを受け入れる世界だと。
   あんたくらいの力があれば、幻想郷に来たばかりで十分な力を得てなかった私達を即座に消滅させることもできたはずだろう?
   どんな思惑であれ、私達を受け入れたあんたが…今更その子の変化を受け入れられないってのは何か違うだろ?」
紫「…参りましたわね…。
 私自身、力を失い始めていたことで余計な恐怖心に捕われてしまった結果だと…そういうことなのでしょうか。
 好ましい変化も、好ましからぬ変化も…如何な残酷な結末となろうと、私はそれを見届けねばならない。
 …邪魔をしてしまったわね…」


穣子「…結局あいつ…何しに来たんだか」
雛「確かに…幻想郷は危ういバランスの上に成り立った、閉ざされた世界。
 僅かな歪から、簡単に壊れてしまう…その危惧も解らなくはない」
早苗「でも、私達を受け入れ、変化し続ける強さは確かにあるはずです。
  私は…それを信じたい」


早苗「…ルーミア、あなたはその傷が癒えるまで大人しくしていて。
  そして、いずれ必ず」
ルーミア「待って、早苗!
    ひとつだけ…その前にひとつだけ、お願いがあるの」



天気研究所前広場


♪BGM Devil's Go Through the Night♪


リリカ「…あらましは解ったけど…何故このような事態に」
椛「う、うーん…私にもさっぱり」
ルナサ「だが…つい今さっきまであいつは目を覚ます気配すらなかった。
   本当に…戦えるのか…?」


早苗「…本当に、いいのね?」
ルーミア「うん。
    ポケモン一体同士で良い…私のやってきたことを、早苗にも見て欲しいんだ」
早苗「…解った」


穣子「…んで、私らはまたギャラリーですかそうですか('A`)」
静葉「そう腐りなさんな。今の場はあの子達が主役
神奈子「…いい面構えじゃないか、ふたりとも。
   こんなことにもならなきゃ、早苗だけじゃない…あいつともジム戦をやって見たかったねえ」

穣子「んなことより、あの白いポケモンってあいつの手持ちだったん?
  私てっきり、騒霊のポケモンが橋姫の力で頭ヒットして持ち主に襲いかかったもんだとばかり
諏訪子「おおっとそこにまだルーミアの強さを認めてやらない意地っ張りがまだ一人」
メルラン「というか、私や姉さんが育てようとすると大体のポケモンが何時の間にかいなくなっちゃうしねー。
    特にあの…サーナイトだっけ?
    ああいうエスパーポケモンとは相性最悪なのよねー」
ルナサ「私はグラエナ…メルランは普通ドゴームかプクリンを連れてることが多いわね」
リリカ「メルランお姉ちゃんは躁の音、ルナサお姉ちゃんは鬱の音を操るから、気持ちポケモンであるラルトスとは特に相性悪いと思うよ〜」
雛「…感情にかかわる音ですものね…確かに」
諏訪子「ドゴームの特性は音波系の技を受け付けない防音…確かに、そのくらいじゃないとこの姉妹のポケモンじゃいられんか^^;」


諏訪子「サーナイトは全ポケモンでも屈指の特攻の高さが売りのポケモンだ。
   あれだけのポケモンと意思を通じ合わせることができる…けっ、紫の奴実は嫉妬してたんじゃねーのか?」
静葉「ふふ…案外そうかもしれないわね」


早苗「行け、アゲハント!銀色の風!!」
ルーミア「迎え討て…サーナイト、10万ボルト!!」



強烈な衝撃波が周囲を薙ぎ払う!


煙がはれて視界がはっきりしてくると…ルーミアのサーナイトがゆっくりと崩れ落ちる…


諏訪子「…勝負あり、かな」
神奈子「……電撃が放たれるタイミングが僅かに遅かったよ。
   回復はされたとはいえ、完全に本調子ではなかったということだろう」

ルーミア「ごめんね…ありがとう、早苗。
    …私、次に会うときはもっと強くなる。
    誰にも文句を言われないくらいに…この子達のトレーナーとして、相応しい自分になれるように
早苗「うん。今の貴女になら、必ずできるわ。
  …そうだ、神奈子様」
神奈子「……あんた、そのためにひとつ余計に持ってきたんだろう?
   あたしに異論はないさ。
   あんたが認めたのであれば、そうすればいい」
早苗「はい!」

早苗は取り出したバランスバッジをルーミアのバッグに取り付けた!

ルーミア「…これ…!」
早苗「…貴女は…最後まで自分自身と戦って…打ち勝ったでしょう?
  今の貴女には、これを受け取る理由は十二分にある」
ルーミア「でも…私…早苗に負けちゃったのに…」
早苗「…だったら、これは貸しにしておくわ。
  何時か、私と戦って…勝った時までに」
ルーミア「…うん!」



文「…本当に良かったのですかな、紫殿」
紫「正直言って…承服出来なくはあるわ。
 しかし、これは言うなれば私の我儘みたいなもの。
 それをうまく取り繕うことができなかった以上、仕方ないじゃないの」
文「おやおや…」

紫「この世界に来て、私の力にも制限がかかっているのであれば、私の術式によって成り立つあの呪布の効力が落ちてくるのも道理。
 しかし、それだけ大きな力であればすぐに中和されてしまう。
 ルーミアの心の変化は…間違いなくポケモンによってもたらされてる

紫「生まれた時、忌み児とまで言われたあの子の心の成長をもたらしたのは…間接的には洩矢諏訪子のお陰みたいなもの。
 将来起きうる一つの懸念材料を、新参のアイツに潰されたののは実に癪だわ」
文「確かに…あの戦いで多くの同胞を失った私としても、あの惨劇はもう二度と御免です。
 スペルカードのルールがあっても、正直相対したいと思いませんわ」
紫「貴女にしては随分弱気な発言ね」
文「そりゃあそうですよ。
 当時ですら、山を去って間もない鬼の四天王と同等クラスの力を持っていたのが、現在では恐らくそれを大きく上回ってましょう?
 そんなモノと正面切ってぶち当りたくはないですな。
 まぁ、あの性格であればこちらから下手に手を出さぬ限りは、問題もないでしょうし」

紫「これもまた、受け入れるべき一つの変化…か。
 …あの子のことに問題がなくなった以上、私のやるべきことも一つ。
 文、貴女は引き続きヒワマキのジムを任せますよ」
文「申し訳ないが…アレを見てしまった以上、手は抜けませんよ。
 あのふたり、何れを相手にしても」
紫「むしろ私もムカっ腹立って仕方ないから、いっそどっちもぎったぎたにしてやっておしまいなさい、文
文「…おお、怖い怖い。
 というか、ぶっちゃけどっちもなんか戦うの嫌だなぁ^^;」



ヒワマキシティ


♪BGM フォールオブフォール 〜 秋めく滝♪


早苗「此処が…次の街(?)ですか?」
穣子「いや、その(?)って何よ。
  気持ちは解らんでもないけどさー」
静葉「これって…ひょっとして、木の幹をそのまま住居にしてるの…?」
諏訪子「いやー現物で見ると迫力あるねー、此処のツリーハウス」
神奈子「外の世界…バオバブの樹をくりぬいて住居にすることもあるって聞いたこともあるけど…。
   やっぱりこの世界、幻想郷以上に複雑怪奇な世界だねぇ」

椛「えと…私の御役目はここまでですね。
 この先に進むのであれば、これをお持ちください。
 この地には時折、姿も気配も視認できないポケモンというものが出てきて、道をふさがれることもありますので」

デボンスコープを受け取った

神奈子「姿も気配も…そりゃあ何処の古明地の妹だい?
諏訪子「あんた攻略本見てたんだろう…。
   カクレオンだよ。攻撃を当てる度にその技のタイプになっちまうという厄介なナマモノだ
早苗「というと…FFのカオスみたいなものですか?」
諏訪子「そこまでひどくない。って喩えがいちいち渋いよ早苗^^;
   基本、カクレオンはノーマルタイプ。
   けど、炎タイプの技を当てれば炎タイプに、岩タイプの技を当てれば岩タイプに…という風に変化する。
   その戦闘中、こちらがカクレオンを使ってるときに入れ替えるまでは有効だよ」
神奈子「バリアチェンジは属性吸収だからねぇ」
諏訪子「…あんたも知ってんのかよ…。
   まぁ、速攻で倒すなら格闘技かまして一発で落とすのが賢いかな。
   逆に、捕獲したい場合は」
早苗「同じタイプの技に抵抗性のあるタイプの技を使い、それを連続で使って体力を調整する…でしょうか。
  例えば、吸い取るのような威力の低い技を当て、同じ技で少しずつ削ると」
諏訪子「よくできました。
   それさえ解っていれば対応は難しくないよ。
   割とタフなポケモンだし、捕まえにくいかも知れないけど」

諏訪子「あとは…この街のジムだな。
   おいそこの白狼天狗、あんたの上役はしょっちゅうこの街に来てるんだろう?
   誰がリーダーなのか、知ってるかい?」
椛「え!?
 え、えっとー…それはその…文様からなるべくなら伏せておくようにと仰せつかってまして…御免なさい。
 で、ですが今から挑戦なさるならご案内しますけど…」
諏訪子「ふうん…まあいいや。じゃあ案内だけ頼むよ」
椛「は、はいかしこまりましたー…」


静葉「…匂うわね」
穣子「な、何よ姉さん!今の私が水に弱くて温泉にも入れないからって…
静葉「…何を言ってるのよあんたは…。
  あの天狗の態度よ。
  何か、知ってそうだと思わない?」
雛「…確かに、あの慌てぶり…厄いわね」
穣子「あいつがジムリーダーの正体を知ってたからって、何か問題でもあるの?」
静葉「別に…でも、おかしいとは思わない?
  何故、あの記者天狗があれと別行動をとらされているのか」
穣子「あいつら…何か企んでるってこと?」
雛「そう見た方が妥当ね」



(続く)