~第四階層 B16F~
落とし格子と落とし穴の迷宮のごとき祭祀殿の奥、リリカ達はついにその部屋へとたどり着く。
広間を突き進んでいく彼女らが目にしたのは、微かな光を放つ不思議な装置と…。
「来てしまったようだな…招かれざる者たちよ」
オランピアを従えた深王の姿。
装置を前にしていた二人は、少女たちの姿に気づき対峙する。
狐尾奮戦記その13 「真祖の願い」
「深王…ザイフリート…!」
「…一歩、遅かったみたいね」
溜息を吐く深王。
その表情は落胆と失望の色が濃く、視線には侮蔑の光すらあった。
「…何故、汝らがその名を知るかは知らぬが…それはどうでもいいことだ。大した問題ではない。
それよりも…卿らには失望した。
人ならざる身である汝らには、かつては一個の「ヒト」であった余の言葉は届かなんだか」
「あんたは…もう人間じゃない…!
世界樹って言うバケモノに支配された、可哀想な人形だッ!」
その蒼く冷たい瞳に、怒りを燃え上がらせる氷精に対してすら…冷め切った鉄面皮のまま、絡繰の王は言い放つ。
「云うに事欠いて、愚かなことを言う…それに、卿らには伝えたはずだ。
海都の危機、人類の危機を…余は、世界樹の言葉に従って、その危機を退けんとしているに過ぎぬ。
汝らこそ、汝らのごとき冒険者を多くの贄として樹海に沈めた、あの海都の姫を装う魔に踊らされているのも解らぬか…!」
機械の王は再びその装置へと向き直り、手をかざす。
すると、それに反応するかのように装置はまばゆい光を放ち始める…!
「それを放置するのであれば…否、あくまでそのようなまやかしに汝らが踊らされているというなら、我が自らの手でその災いを狩ろう。
海都は…海都は我が愛する祖国であるのだから…!」
その光の洪水が収まった頃には…もう深王の姿はどこにもなくなっていた。
転移装置を使い、ここではない何処かへと転移したのであろう。
「っ…待てえっ!」
「危ないっ、チルノ!」
一瞬遅れてチルノが装置めがけて駆け出す…が、ふいに凄まじい殺気を感知したルーミアがチルノの体を自分の体ごと直角にターンさせた!
次の瞬間、チルノの視界の中心に入ったのは…戦闘態勢に入っていたオランピアが、ほんの一瞬前まで二人がいた空間に、鋭い刃を突き立てている姿…!
「…『狐尾』。
やはり、あなたたちを深都に受け入れるべきではなかった…!
あなたたちの存在そのものが…世界樹の…ザイフリート様の計画の障壁となるッ…!」
彼女の人ならざる体…その両腕の肘からは冷たく光る長大な刃が伸び、その恐ろしく光る目は君たちを捉えたままゆっくりと近付いてくる。
「オランピア…どうして、なんだよ」
「私は…世界樹の命によりあの御方を護るモノ。
元々海都の王であられたザイフリート様に、人間を害する意思はない…人間としてこの世界に現れたあなたたちも、同じように。
でも…私は違う。
私は…私はあの方の為に、あの方を阻む総ての危険を取り除くッ!!」
オランピアは茫然とその姿を眺めるチルノとルーミアめがけ、刃を振りかざし猛然と迫る!
リリカ達が駆け寄ろうとしたその瞬間…!
「待たせたか、フォックステイルよ?
こいつは…俺に任せろ」
二刀の名剣を抜き放ち、人ならざる者の一撃を受け止めていたその青年は…見慣れたその皮肉めいた笑みを見せる。
「くっ…邪魔を…!」
「お前たちは先へ行け。
深王を姫様の所に行かせる訳にはいかん…それに、俺はコイツに借りがある。
衛兵隊の多くが第二階層で犠牲になったのだからな…!」
裂帛の気合を放ちながら、人ならざる少女と鍔迫り合いをするその青年から伝わる凄まじい気迫に、少女たちは飲まれそうになる。
しかし…。
「クジュラさん…解りました!
行くよみんな!
ここで深王を行かせてしまっては、総てが無駄になってしまう!」
「ええ!」
「チルノちゃん!ルーミア!走って!
ここはクジュラさんに任せて、私達は私達の成すべきことを!」
茫然とした表情のチルノを、ルーミアが促す。
そして、二人が立ちあがり、駆け出そうとしたその瞬間。
「一人犠牲者が増えただけ…まとめて海の藻屑と化せばいい」
普段通り冷静な声でそう告げる少女は、鍔迫り合いを続けつつ甲高い不思議な音を奏で始める。
「来い、雷をまといし獣よ!!
我らに仇なす者、悉くに死を!!」
オランピアの声にあわせ、装置の前に恐ろしい雷獣が出現する。
角とたてがみを持つ天馬のごとき神獣が、少女達に威嚇の咆哮を上げる!
「…これが…キリン!?
クジラさんの言っていた…雷と炎を纏うケモノ…!?」
「ルーミア!
何やってんの、来るよ!」
立ち止まるルーミアの目の前で、神獣は天高く嘶いた。
その反響は忽ち紅蓮の波と化し、神速の炎となって少女達を飲み込む…が。
「……えっ!?」
「全然、熱くない…何これ!?」
かすり傷すら負うことなく、困惑するリリカ達。
ルーミアはその光景に、あの日ケトスから聞いた言葉を思い出した。
-奴は一定の周期で、その周囲の気を炎に変えて打ち出してくる。
干戈を交えたばかりでは大した威力は持ってはいない。
しかしその炎…「報いの炎」は、奴が傷つけば傷つくほど…その威力を加速度的に増していくのだ…!-
「…リリカ、これだよ!
クジラさんが言ってた「報いの炎」!
こいつが弱れば弱るほど、どんどん強くなるって!」
「…そういうことか…!」
小手調べ…そう言わんばかりに神獣は、蹄を打ち鳴らす。
リリカは構えを改め、目の前の神獣に対峙する…!
…
…
明夜「実は私のモデルも麒麟だといわれています」
瑞香「ウソこきやがれです犬、お前の首は長くないです( ˘ •ω• ˘ )」
操「いやーそれキリン違いじゃないのかな。
えっこの組み合わせ大丈夫なの?
マジで不安要素しかないんだけどもさあ…」
つぐみ「んまー放っといていいと思うよその二人。
第四階層はB17Fからは今度、落とし穴を介して下のフロアと行ったり来たりする階層になるよ。
だからB17Fに入ったばかりだと思ったらすぐ下のフロアに落とされて、いきなりクエストが増えるという」
操「ところでウインディのモデルが麒麟って何処情報なんですかね。
確かになんとなく似てますけど」
つぐみ「のちに変更されてるけど、赤緑の図鑑説明に『中国の言い伝えにある』と書いてあるのと、一日で10000kmを走破するという記述、『ウインディ』という名前自体が風を連想させるからそういう考察がある、ってだけだね。
ヒスイウインディがそっちに寄せたデザインになってるから、元のウインディも狛犬やシーサーがモチーフじゃないかって言う説もあるね」
操「どっちにせよ神獣由来ってのは一致した考察なんですね」
つぐみ「と言うわけで脱線したけど、B16Fの行き止まりぐらいの場所にいるとイベントが発生、ザイフリートが転移装置の先へ行くから追いかけたところで立ちはだかってきたオランピアを、クジュラさんが止めたところで、キリンが召喚されてくるわけで…」
海都ルート第四階層ボス キリン
HP12830 雷無効/即死・石化・スタンと全箇所の封じ以外全ての状態異常に弱い
劈く嘶き(頭) 全体に近接突属性攻撃、頭封じ付与
テイルボンデージ(脚) 全体に近接斬属性攻撃、腕封じ付与
桎梏のダンス(脚) 全体に近接壊属性攻撃、脚封じ付与
帝王の誇り(依存部位なし) 構えた状態になり、無属性以外の全ての攻撃に対して全封じ付与のカウンターを行う
神罰(頭) 全体遠隔雷攻撃、対象の封じ箇所に応じダメージが増加する
報いの炎(頭) 全体遠隔炎攻撃、キリンの現在HPが低いほどダメージ増加
操「全体攻撃がやたら多いんですよね、コイツ」
つぐみ「基本的には封じを撒いてくるタイプのボスだね。
付与率はそんなに高くはないけど、そのせいで何故か『キリンからの封じ付与は累積耐性を無視する』とかいうトンチキな事がwikiに書かれてるけど、もしかしたら累積耐性が上がりにくい仕様なのか検証した人()が単に戦闘不能になって耐性リセットされてるのを忘れてるだけじゃないかと思うよ」
操「いえ先輩、そもそも解ってるていで累積耐性とか言ってるけどなんなんですそれ?」
つぐみ「…そーいえばその話してなかったかも。
世界樹独特のシステムで、同じ戦闘の間に同じ封じや状態異常を複数回受けると、その異常や封じに対する耐性が上がっていく仕様だよ。
Ⅳ以降は新世界樹を含めて、敵味方共に10ターン前後でリセットされるけど、Ⅲ以前はその戦闘中永続なの。でも味方側は戦闘不能になったり、ゲートキーパーみたいに形態の変わるボスとかは形態変化すると耐性は即時リセットされるよ。
基本、ボスやFOEには異常や封じをかけるチャンスが少ないと思っていいね」
操「ほへーそんなのあるんですね。
でも、コイツの場合は仕様なのかこっちの耐性が上がりづらいのかみたいなのがあるんですね」
つぐみ「そゆこと。
で、ダメージはないけど攻撃に対して全封じをぶち込んでくるカウンター技と、その直後に使ってくることが多い神罰のコンボでこっちを壊滅させてくる。
神罰は封じを受けてなくてもそこそこ痛いけど、1カ所だったとしても頭が封じられてると大ダメージを受ける。
TEC依存攻撃はこっちのTECが低いとダメージも大きくなるけど、頭封じには地味にTEC半減のデメリットもあるからね」
操「私腕さえ封じられないと困ることあまりないけど、そういうデメリットもあったんですね」
つぐみ「で、あとは報いの炎。
これは最初のターンと、以降5nターンで必ず使うよ。
最初は全く痛くないんだけど、キリンのHPが半分を切ると50~70ダメージぐらいになってくるからかなり痛くなってくるね」
操「HPをある程度減らしていったら、そこからは速攻する必要があるんですね。
弱点を突いて速攻で…って、そういえば弱点ないですねキリン」
つぐみ「そこがマジでめんどくさいのよね。
ついでに雷は一切通らないよ。耐性らしい耐性もないし、お決まりの剣虎も通るっぽい」
操「もうビーキン速攻で剣虎極めて開幕召喚で良くないですこのゲーム?(真顔」
つぐみ「ま…まあ反論できないんだけどそこは^^;
ちなみにコイツなんだけど、実はそんなことしなくてもものっそい弱い」
操「…マジですか?」
つぐみ「マジです(キリッ
基本的に凶悪なのはHPを減らしたときの報いの炎と封じ喰らったあとの神罰だけ。
基本ダメージ絡みの攻撃は全て全体攻撃だけど、封じの付与率は低い。
帝王の誇り()に突っ込んでっても、余程ヘンな低レベルでもない限り三点封じられるって無いと思うよ。というかみずかちゃん程度のLUCでも無傷とかザラ」
操「ええ(困惑」
つぐみ「そもそも炎と雷が来ると解ってればミスト投げれば良いし。
というかそんなもん使わなくたってわりと耐えられるくらいコイツ火力低いんだよ。
まあリリカさん達はミスト使って、どっちのミストにもかぶらない絶対零度でごり押ししたみたいだけど」
…
…
アンナ「これでとどめよ!
契約により我に従え、眠りへ誘う者、冬の女王。
来たれ常しえの極光、永遠の氷河。
大地閉ざす凍土と氷雪、総ての生あるものに等しき滅びを…極光の氷獄ッ!」
アンナはリミット技「絶対零度」を発動ッ!
エーテル圧縮によって高められた破壊力ばつ牛ンにもほどがある最高最大の一撃!!
ルーミア「そしてついげきのグランドヴァイパー!!><」
ルーミアは一騎当千で追い討ち!
キリンをズタズタにした!
オランピア「くっ…ここまでの強さとは計算外。
そして雷獣すら討たれるとは…」
ルーミアの刀が雷獣の巨躯を深々と抉り、その断末魔の咆哮を聞いたオランピアは驚愕の表情で振り返る。
激闘を制したリリカ達が見た先には、互いに手傷を負いながらも尚戦いの気を発し対峙するクジュラとオランピア。
だが、リリカ達がキリンを倒したのを見たオランピアは、己の不利を悟り一歩退く。
クジュラ「…勝負はまだ付いていないぞ。
それに、俺はお前を逃がすつもりはないっ…!」
オランピア「………でも、時間は十分に稼げた」
オランピアが小声でそう呟いた瞬間、突然激しい光が部屋を埋め尽くす!
しばらくして目の調子が元に戻ると、もうそこにはオランピアの姿は確認できなくなっていた。
…
「やられたな…逃げるが勝ちともいうが…」
クジュラは片膝を突く。
リリカ達は慌てて駆けつけようとするが…彼女達もまた、激しい戦いの為その足取りは弱く…みな激しい痛みをこらえている様子だ。
そんな自分達の身も顧みず集まろうとする少女達を、クジュラは制して告げる。
「…連中を止めねばならんが…まず深王が転移装置を使ったことを元老院へ伝える必要がある。
お前たちが報告に行ってくれ…頼む」
「でも」
「俺は…少し休んでから戻るさ。
だから気にせず行ってくれ…!」
クジュラの真剣な眼差しに、リリカは頷く。
そして去り際、彼はひとつの鍵のようなモノをリリカに差し出す。
「戦いの最中…あの女が落としていった物だ。
何故こんなものを落としたのか…あるいはもしかしたら、誰かに渡そうとしたのか…何かの役に立つかもしれんぞ」
その鍵を受け取った時、リリカの脳裏によみがえるひとつの記憶。
(これは…確かあの時!!)
リリカはその鍵をしまいこむと、少女達を伴ってその場を後にした。
しかし…彼女の向かった先は…。
…
~第三階層 断罪の間~
リリカ達は手に入れたカギを使って、以前にも訪れた灼熱の部屋…「断罪の間」に足を踏み入れる。
するとそこには以前と同じように人に似て、そして非なる生物…フカビトの真祖が少女達を睥睨する。
「誰かと思えばお前達か。
またここに来るとは…僕と話をしたくてきたのか?
物好きな連中だな」
そう告げてからかうように笑う真祖だったが…不意に、何か思い出したように真剣な表情を浮かべる…。
「…リリカといったな。
僕が求めていたものを、お前は手に入れることが出来たようだな」
「ええ。
海都にあった玉碗…そして」
リリカは宝玉のようなそれを差し出す。
真祖はそれを見て満足そうに頷く。
「…確かに、これは星海の欠片。
あの異世界の真祖…炎の詩姫が告げたことは確かだった。
お前たちが僕の望みを叶えてくれるということなのだな」
まるで地の底から響くような、しゃがれた割れる声が驚くべき内容の問いを告げる。
「詩姫は僕に告げた。
もしおまえが望むなら、自分が送りこむ娘達に心を映せと。
かつて僕が、ある人間の娘にそうしたように、と」
真祖の、心まで見透かすようなその紅の澄んだ瞳。
その瞳に、リリカの真剣な表情が映り込む。
「今こそ問おう…異世界の貴種、リリカ・プリズムリバー。
この世界において、魔の眷族たる我らフカビトと呼ばれし者にとって、人は餌。
それ以上でも、それ以下でもない…人にとっては脅威であろう。
されど…それだけであろうか?
人とフカビトが理解し合う事…友となる事はできるであろうか?」
思いもよらぬその言葉に…瞳をじっと見返しながら、リリカは思い返していた。
…
~数日前 深都・天極殿星御座~
リリカ達は一抹の後ろめたさを感じながら…ゲートキーパーを撃破した暫し後、深都の中枢へと訪れていた。
そこには深王の姿はなく、見慣れたアンドロの少女がこちらを冷たく見据えていた。
「お前たちか。
深王様はおっしゃった…卿らには、失望したと。
約定は約定、今後もお前たちが深都の施設を使うことは許可するが…深王様はお前達には会うことはないだろう」
「…そう。
確かに…先に約束を破ったのは私達の方。
だから、むしろあんたに会えてよかったと思ってる」
オランピアは怪訝な表情でリリカの顔を見返す。
「私はね…昔は調子良く、いろんな人にウソついたり、そそのかしたりして…そんなことばっかりやってた。
でもさ、私もそんなに図太い性格はしてなかったみたいで…あとですごく後悔することもあっただから…理由はどうあれ、あんたを騙す格好になったことを一言謝っておきたかった。
それだけだよ」
感情の窺えない機械の貌で見据えるオランピアの答えを待つことなく、リリカは踵を返す。
「じゃあね…私ももうここへは来ないと思うから」
「待って」
初めて会った時の、場違いに響く高いトーンの声…その面影を残す声に、リリカは驚いて振り返る。
「…これを…受け取って欲しい。
それが、きっと…深王様のためにもなるはずだから」
表情がないはずの機械兵…その能面のような貌のままだったが、リリカはまるで、オランピアが酷く悲しそうな表情をしているように思えた。
思い詰めたように、彼女は暫しの沈黙を挟み…オランピアはひとつの宝玉をリリカに手渡した。
「あの御方は…かつて「白亜の供物」を探しておられた。
大切な人との約束だから、手に入れなければ…と」
「白亜の…供物…!」
リリカは確信したように、その言葉を繰り返す。
オランピアは頷いて、言葉を選ぶように続けた。
「白亜の供物は、星の結晶からなるもの。
総ての生きとし生けるものをいやす、命と希望の輝き。
深王さまはフカビトとの戦いの合間それを集めておられた…これは、そのカケラのひとつ」
リリカがそれを受け取ったことを確認すると、オランピアは寂しそうに笑い…そして踵を返す。
「…けれど…それは過去の話。
深王様は…ザイフリート様は全てを忘れ、戦いに没頭されている。
だから、それはもういらない…けれど…本当はきっと…ザイフリート様はそれを渡したかったんだと思う…あの御方の一番大切な存在に…!」
オランピアの声のトーンは変わらない。
しかし、リリカには何故か…彼女が泣いているようにも思えた。
「だから、持っていって。
私からの話はそれだけ」
オランピアはそれきり、こちらを向こうとはしなかった。
立ち去ろうとするリリカは、ふと、足を止める。
「…そうだ。
私の名前、教えてなかったっけ。
私、リリカっていうんだ」
その言葉は、最後まで届いていただろうか。
「…もし、もし私達のやってることが、あなた達と解り合える未来へつながっていたなら。
そのときは…あなたも…私達と同じ道を行ければ良いな」
…
「…私、さ。
前もこうして、同じようなことを質問されたことがある。
私は…その時答えることが出来なかった。
私のわがままで、大好きなお姉ちゃん達が消えてしまうかも知れない時に…傍に居ることすらしなかった私に、そんなことに答えるだけの理由が…資格があるのかな、って。
でも」
悲痛な表情で、俯く瞳に涙が溢れ始める。
しかし…彼女は強い意志を持って、その想いを言葉にする。
「私はただ…自分にとって大切なものが何かとか、友達ってどういうモノなのか、解らなかったんだ。
だけど、あとで一人になった時…それまで一緒にいた大切な仲間たちがいなくなった時、とても悲しかった。
ああ、いなくなってこれだけ悲しいひとたちのことを「ともだち」っていうんだな、って…そう思った」
泣き笑いのような表情が、ヒト為らざる姿の紅き瞳に、反射する。
「私には、今はあなたがどういうひとなのか、正直よくわからない。
でも…あなたが「いなくなって悲しい」と思う人がいれば…そのひとがあなたを受け入れてくれたのなら…!」
彼女に、恐れなどはなかった。
手を伸ばした先に、ヒトなどたやすく斬り殺せそうなツメを備えた異形の腕を取り…真祖も、それを受け入れた。
「人も妖怪もフカビトも、深都のアンドロだって関係ない…絶対「ともだち」になれるよ!
だってここにいるみんなも…今は別行動を取っているこいしや葉菜さん、早苗さん、コーディやレティさんだって…ううん、今まで知りあえたいろんな人も、私にとってはみんな大切な友達だから!」
成り行きを見守っていた少女達も…安堵の溜息を吐いて、それに続くように。
「…リリカ…!
うん、あたいもここにいるみんなのことが大好きだ!」
駆け寄ってきた氷精の少女を受け止め、抱き留めたその表情も…勝ち気な泣き笑いだった。
「私も…ひとりぼっちだった私を最初に受け入れてくれたのも人間だった。
私もその人のことが大好き…勿論、かごめも、此処にいるみんなも…元の世界で知り合ったたくさんのひとたちも、みんな大切な友達。
その誰かがいなくなったら、私も悲しいよ」
真祖と同じぐらい、深紅の瞳を涙に歪める少女の表情も、同じように。
コートの少女は、もう一つ深く溜息を吐き…困ったように笑う。
「そうね…色々あっていがみ合ってはいたけど…ううん、私が一方的に嫌ってただけだけど…私だって決してマタンさんのことが嫌いってわけじゃないんだろうね。
腹は立つけど…腐れ縁っていうのかしらね、こういうの」
「大好きな人がいて、それを大切に思うことに理由なんかいらないです。
だって…これだけ生まれも種族も違うひとたちが…みんな解り合うことだって出来るんです!
あなたさえよろしければ、あなただって今から私達の友達なんですから!」
真祖のもう一方の手を取り、笑顔で言い切る天使の少女。
その答えを聞いた真祖は、何処か苦笑めいた表情を浮かべ…穏やかな口調で返す。
「お前たちなら…きっとそう答える気がしていた。
なのに問いかけた…解りきった答えを。
僕が本当は期待していたのであろう…その答えを。
……リリカ、その玉碗と欠片を渡してくれ」
リリカは頷き、真祖にふたつのアイテムを手渡す。
受け取った真祖も頷き、そして、何か聞き取れぬ妖しい呪言を唱える…すると、星海の欠片と空の玉碗が突如宙へ舞い踊った!
「この空の玉碗は、元々僕の手にあったもの。
この世のモノでないモノを、この世に保つための力を持つ冠だ。
そして…星海の欠片はこれによって留められた、幻想に消えた星の輝き」
そして…欠片が玉碗に収まるとまばゆい光が放たれ、その灼熱の間を包む。
「…さあ、その『白亜の供物』を泣き虫の姫に渡してやってくれ。
魔なる者の真祖たる僕から、百年越しの届け物だとな」
淡く優しい光は少しずつ小さくなり…ひとつの光を放つ玉器となってリリカの手に収まった。
「急げ、リリカ。
あの、世界樹に憑かれた王と遭遇すれば…それに逢いたい一心で我らが力を得た姫には悲劇的な結末しか訪れない。
お前たちがそこに供物を届けることで、あの二人の事態は好転するであろう。
僕の目論見の一つは潰れるが…それでも悪い気持ちではない」
真祖は、少女達からゆっくりと距離を置くと…目を閉じゆっくりと壁にもたれ座る。
「…ただし、努々忘れるなよ。
僕が再び全能と化すとき、人は最も絶望に近くなる…。
その手に印を与えおく。
供物を届け終えたら、急ぎ来い…姫の未来の為にもな」
真祖の声と同時に、リリカは手のひらにわずかな熱を感じる。
そこには…わずかにフカビトと同質の力が宿っている…。
「総てが済んだら、祭祀殿に来るのだ。
あとはその「異海の印」がお前達を導くだろう。
そこで……総てが決着する」
その言葉の意味を、リリカ達は確信する。
頷き…進む先は、決戦の地。
…
…
葉菜「ここでつぐみちゃん達とは、完全にルートが違ってくるわね。
条件を満たして深都でオランピアから『星海の欠片』、海都でクジュラから『空の玉碗』を貰い、キリン戦直後に入手できる『月の鍵』を使って真祖に会いに行くと、真EDルート突入の最後の切符である『白亜の供物』が手に入るわ。
その上で深都・海都両方の最終ミッションを受領せず、第五階層最深部に行くことで特殊イベントが発生し、真祖ルートが確定するの」
つぐみ「マジで一週目からでも行けるんですねこれ。
こう言うの、普通二週目以降とかそんな感じですよね?」
葉菜「気にしない気にしない。
にしても、私達の認識でもキリンって強敵だと聞いてたんだけどつぐみさんその辺はどうなんです?」
リリカ「ぶっちゃけると私達シロガネカガシ狩りとマンティコアへの逆襲に躍起になってた副作用でバカみたいにレベル上げたのは認めるけどさー。」
葉菜「前衛3りがスラッシュドメイル装備かつ介護陣形があったって時点でもうなんというか」
つぐみ「いやさすがに介護陣形は私達も取りましたけどさー…リリカさんが居てクエスト3挑んだんだったら正直レベル38もあれば余裕だと思うんですけど?」
リリカ「ぐぬぬ実際やってきた子に言い切られると反論できねえ('、3 _ヽ)_
…てかつぐみ、レベルいくつなのあれ…?」
つぐみ「今回手違いで戦闘前の装備写真撮り忘れてたんですけど…見えますかねこれで?」
リリカ「∑( ̄□ ̄;)アイエエエエエエエエエエエエエエエエエエエレベル41!?
レベル41ナンデ!!!??」
葉菜「えっマジで41でキリンsageたの!?
これ引退ボーナスとか」
つぐみ「あるわけないですよSQの穣子さん達じゃあるまいし。
これでも一応休養して調整してるんですよ、フカFOE狩りでレベル上がり過ぎちゃったし。
ああついでに言っておきますけど装備品はリリカさん達とほぼ同じ程度、第四階層で入手できる最高レベルのものですよ」
葉菜「これはなんともまあ…とりあえず、スキルだけ比較しますか」
リリカ プリンセス/ファランクス
王家の血統2
ロイヤルベール5
王者の凱歌5
キングスマーチ1
リインフォース4
王たる証5
攻撃の号令5
防御の号令5
リセットウェポン1
予防の号令2
覇気の号令5
庇護の号令3
リニューライフ1
クイックオーダー1
盾マスタリー1
槍マスタリー4
ラインガード2
ブリッツリッター1
リバイブ1
HPブースト1
ポエット モンク/ウォーリアー
錬気の法★(10)
血返しの法2
ヒーリング4
ラインヒール5
パーティヒール1
リフレッシュ6
バインドリカバリ6
リザレクト2
鎚マスタリー★(10)
アームブレイカー5
ナインスマッシュ2
HPブースト1
TPブースト1
チルノ パイレーツ/ファーマー
トリックスター★(10)
突剣マスタリー★(10)
銃マスタリー★(10)
我流の剣術★(10)
インザダーク1
ハンギング1
ミリオンスラスト1
イーグルアイ1
収穫マスター1
探知マスター3
キャンプマスター3
帰宅マスター★(1)
アメニモマケズ2
HPブースト1
TPブースト1
ルーミア シノビ/ショーグン
煙りの末★(10)
潜伏5
軽業1
首切5
忍法含針3
忍法水鏡3
忍法撒菱5
忍法陽炎3
忍法分身★(1)
忍法猿飛3
忍法霧隠3
遁走の術1
刀マスタリー1
食いしばり3
血染めの朱槍3
精神統一3
一騎当千1
TPブースト1
アンナ ゾディアック/バリスタ
エーテルマスター★(10)
氷マスタリー5
炎マスタリー1
雷マスタリー1
炎の星術1
氷の星術1
雷の星術1
氷の連星術1
特異点定理★(5)
リターンエーテル★(5)
エーテル圧縮★(5)
ダークエーテル★(5)
弩マスタリー5
正射必中3
ファイアバラージ1
サンダーバラージ1
アンブッシュ1
TPブースト3
つぐみ「あの…リリカさん…あのポエットさんは一体」
リリカ「…言わないで…それ以上は言わないで私もいかにアホなことさせたか解ってるから(吐血」
葉菜「ここまで来てようやく煙りの末を振り切ってきたから、雑に一騎当千使っていけるのは強いわよね。
ぶっちゃけそれ以外の強みがこのPTにないと」
つぐみ「…あえてトドメ刺しますよリリカさんなんでそこまでして頑なにアームズ振らないんですか(キリッ」
リリカ「∑( ̄□ ̄;)グワーッ!!」
葉菜「∑( ̄□ ̄;)もう止めなさいリリカのライフはとっくに0よ!!
…うんまあ…言いたいことは解る…チルノとルーミア両方にアームズ付与すればまあ止まらないよねこの編成なら」
つぐみ「絶対本来の総合力でいえば私達よりずっと攻防に優れてますよね。
裏返せば、アンナさん含めてこれでも火力押しつけて大抵の相手に殴り勝てると。
…まあ私も鬼じゃないからこれ以上は追い打ちしませんけどね…?(´゚д゚`)」
葉菜「ちなみにこのレベルでもペンギン狩りは失敗して、そのくせ剣虎乱数固定知ってたからスキュレーは狩ってるのよね。
まあ初回は乱数使ってなくて正攻法で勝ったけど」
つぐみ「それはそれですごいと思うんですけど…ペンギンドチャクソカンタンですよ…?
ネローナさん達と組んでこっちは補助に回れば良いだけだし」
葉菜「うんまあ事実は重く受け止めるわ…。
あとどうせピクニックにしてキリカゼ道場使ってるんだろうし、これ本当に最高効率の金稼ぎでしょ、パサラン狩りと違って準備特にいらないし」
つぐみ「そりゃあまあ。
初回はピクニックしないけど、それでも40ターンぐらい粘ればキリカゼさんがペンギンしばいてくれますし」
葉菜「チルノはまあハンギングを雑に使ってるだけなんだけど、トリック★スター積んだんだったらミリオンスラッシュぐらいは取ってもよかったわね。
最後までそれも取らなかったけど」
つぐみ「何に振ったんですか一体…」
葉菜「この時点でようやくバフデバフの有用性を理解したらしくて、イーグルアイ振るつもりみたいでいたようだわ。
まあ攻撃スキルじゃないからトリックスタートリガーしないけど」
つぐみ「コメントしづらいなあ…。
じゃあとりあえず、こっちはスキルだけ」
つぐみ ファランクス/プリンセス
盾マスタリー★(10)
槍マスタリー4
ラインガート1
ファイアガード1
フリーズガード2
ショックガード★(10)
ディバイドガード1
ブリッツリッター1
リバイブ★(5)
リィンフォース1
王たる証5
防御の号令3
予防の号令1
エクスチェンジ1
リニューライフ1
クイックオーダー1
明夜 ウォリアー/バリスタ
常在戦場★(10)
剣マスタリー★(10)
アベンジャー3
ラッシュ5
ブレイドレイヴ4
狂戦士の誓い1
チャージ★(5)
ウルフハウル3
正射必中★(5)
エクステンド1
TPブースト1
透子 プリンセス/モンク
王家の血統★(10)
リィンフォース5
王たる証5
攻撃の号令5
防御の号令5
ファイアアームズ1
フリーズアームズ1
ショックアームズ1
予防の号令1
リニューライフ1
クイックオーダー1
行者の功徳3
血返しの法3
ヒーリング2
バインドリカバリ1
操 バリスタ/ゾディアック
ジャイアントキル★(10)
弩マスタリー★(10)
正射必中★(5)
エクステンド1
ヘビーショット1
ファイアバラージ1
特異点定理★(5)
リターンエーテル★(5)
エーテル圧縮★(5)
ダークエーテル★(5)
瑞香 シノビ/ファーマー
煙りの末★(10)
短剣マスタリー5
潜伏★(10)
首切1
影縫3
飯綱1
忍法含針3
忍法水鏡3
忍法撒菱5
忍法陽炎1
収穫マスター1
探知マスター3
帰宅マスター★(1)
アメニモマケズ1
リリカ「…むしろなんでこれで勝てるの…?_:(´ཀ`」 ∠):_」
つぐみ「んまーどう考えても明確に失敗したのはエクスチェンジなんだよねー。
これは本当に使いどころがないっていうか使ってるタイミングなくって」
葉菜「いや、どう考えてもターンが決まってる報いの炎止めた方が良くないこれ?」
つぐみ「ああこれ、既に深王戦見越してますし。
その話は次辺りでするつもりですけど」
葉菜「つまりキリンはほぼ『攻略という感覚では無かった』と(キリッ」
つぐみ「だってマジで弱いですしおすし(キリッ
一発でsageましたよ、苦戦する要素ないですし」
葉菜「王家の血統のTP回収も馬鹿にならないからねえ…でもこれ、バインドリカバリだけで間に合う?」
つぐみ「テリアカは大量に持ち込んだけど、でも5つか6つで済んだ気がしますね。
付与率自体は低いの本当かもです。
あとはチャージレイヴとヘビーショットで殴り倒した感じで…どっちも普通に500~700くらい出るし」
葉菜「報いの炎はほとんど喰らってないのね、つまり」
つぐみ「そゆことですね。
あとできれば戦力強化になるから水溶液割りたかったけど、キツネチャンで削るつもりが勢い余って殴り倒しちゃったんで(真顔」
瑞香「_:(´ཀ`」 ∠):_」
葉菜「ご愁傷様としか…って、水溶液をわざわざ切るってことは、条件は」
つぐみ「呪いダメージ反射」
葉菜「どーすんのよ確かにそれ…火力低いなら尚更…」
葉菜「というわけで今回は以上。
この時点で狐野郎はポケモン買うつもりではいたけど、初回版はバグだらけの法則とかいってこざかしい知恵を回してBWの次ロットが出るのを待つ気でいたみたいね」
つぐみ「まるで意味わかりませんて。
次は真祖戦の導入部分だけど、どうしますかね。
私達の装備とか深王戦の話しますかね?」
かごめ「あーそれなんだけど、一応こいしの話も連チャンでやるからプロローグ的に次の話の後、お前らで適当に新編進めてくれると」
つぐみ「ええ(嫌そうな顔」
リリカ「まあ先の話すると深王戦は完全に解説すらしてないし、そこはなんかしてもらえると」
つぐみ「ここぞとばかりに復活して追い打ち掛けてくる…いやらしい…」
葉菜「というわけで物語も一応は佳境ですが…状況的にどうなることやらです(*^ー^;)
それでは今回はここまでで^^ノ」