竜の一柱を制したことにより、自分たちのさらなる資質を引き出させることに成功したリリカ達。

しかしながら、赤竜の言葉から他の二柱の居場所こそ明らかになったが、捜索の甲斐もなく竜の姿を見出すことは出来なかった。
古書館の資料にも、その存在と、出会うために何らかの神器が必要であることまでは突き止められたのだが…その手がかりさえも見つからぬまま、一週間の時が過ぎようとしていた。


そんな折、次の戦いに備えての修練と情報収集を続ける「狐尾」の元に、ひとつの情報がもたらされる。
赤竜の試練を得て間もなく、遠く海を隔てた国から積み荷に紛れて侵入した怪物「アルルーナ」を死闘の末に撃破したリリカ達を尻目に…単身、白亜の森へと進入し何かを探しているようだという、一人の女戦士がいる、という。

先だって、多少調子に乗った上で森を舞台に大暴れしていたグートルーネは…元老院やギルドからその実力を認められたという条件の元ではあったが、特に樹海の探索経験がない他国の冒険者や武芸者に対しても矢鱈滅多に「紋章」を発行しまくっていたため、非常に多くの人間が白亜の森に立ち入ることとなっていた。
とはいえその大多数は実力不足から森の凶暴な魔物達に返り討ちに遭い、あるいは、グートルーネ自ら叩き潰して回るなどで淘汰されていくこととなり、現在では「狐尾」を筆頭とするごく一部の強豪冒険者のみが活動するにとどまり、再び静寂を取り戻しつつあった。
その中でなお、しかも単身でこの森を捜索するということ自体異様なことであるが…このどさくさに紛れて何かしらの目的の為、森の探索を進めるということがそもそも不可解であった。

そして、気になる情報もある。
女戦士が、竜に類する何かがいないか、聞いて回っているということを。



「つまり、その女戦士の足取りを追え…ということで良さそうね。
せめて名前でも解れば、探しようもあるのだけれど」
「んとね…リリカ達が深都に行ったのと入れ替わりぐらいかな…アーマンの宿に、それっぽい人が結構長く宿泊していたみたいだよ。
でもあそこの男の子に聞いたら、なんかここ四日か五日ぐらい、帰って来てないんだってさ」
「…灯台下暗し、とは言ったものね。
こいし、そいつの名前は分かる?
あと簡単な人相というか、特徴でも解ればなおいいのだけど…あなた確か、今は『第三の眼』も使えるのでしょう?
「んとねー、確か…今思い出す」
「あー…まあいいわ、ここに『複写(うつ)して』頂戴。
その方が手っ取り早いし」

こいしからの『情報』を得た静葉は、一枚の符を取り出すと、空へと解き放った。
鳥の式神が飛んでいく先は、リリカたちのいるだろう…白亜の森。


「でも宿を出て一週間近く経って、しかも一人でだよ?
私や静葉さんならともかく、もうどこかで死んじゃってるかもよ?
あそこの狐と蟷螂、めっちゃくちゃ強いし」
「それならそれで仕方ないわ。
手がかりがない以上、ほんの少しでも情報があれば、それを確かめるしかない」

空を見上げるその表情は、険しいままだった。


ちなみにアルルーナに関してはだが、この魔物自体が媒介者となる恐るべき死病である「緑死病」を振りまくこともあり、深都専属の治療士を務めるアンドロの協力を得られたのが「狐尾」だけだったこともあるのだが…この強大な魔物とガチバトルしようと息巻くグートルーネを止めるために多くの腕利きギルドが駆りだされ、結果この恐るべき魔物に対抗できそうなギルドがリリカ達以外にいなかったから…という笑うに笑えない事情があったからとか、なかったとか。




狐尾奮戦記その23 「制竜者(ドラゴンスレイヤー)



白亜の森。
静寂を取り戻したその「禁足地」で、この日もリリカ達は注意深く探索を続けていた。

「鏡の森」の異名を持つこの森は、彼女たちにも馴染みのある魔力的な結界によって守られ、歪んだ地脈と方向感覚を失わせる領域によって、侵入者を阻んでいる。
その中から、ほぼ何のヒントもなく、竜の痕跡を探すということがいかに過酷な話か、想像もつかぬことだろう。



「困ったわね…確かに以前は無我夢中でこの森を駆け抜けたから、じっくり探索できているわけでもないけど」
「あの赤い竜さんは、この森にも竜が待ってる、みたいなことを言ってたのにねえ」

風通しの良い一区画で休憩を取りながら、うんざりしたようにルーミアがつぶやく。
この森に入って三日、未だ何の手掛かりも見つかっていない。
灼熱洞の要石とは逆に、妙に力を持つ石を…魔物の妨害を蹴散らしながらなんとかであるが…壊しては見たものの、赤竜の出現した時のような感覚はなかった。


「うーん…ひょっとすると、この森の結界のせいなんじゃないんでしょうか。
元々、この森には王家の者以外入ることが出来なかった、ってフローディアさんも仰ってましたし。
それ故に、結界を無効化する何らかの手段…例えばフカビトの印とか、ザイフリートさんから頂いた「王家の紋章」のようなアイテムが無いと出入りできなかったなら」
「成程、この森に湧いて出たモンスターが、森の外に出てこれなかった理由もそこにあるってことか」
「それもありますけど…むしろ」
その「竜」の存在自体が、結界の大元であった…そういう可能性だってあるよね」

ポエットが何か言いかけたとき、不意に、その声が背後から聞こえて来て少女たちは思わず振り返る。
そこには、妙に人懐っこい笑顔の印象的な…一人の女戦士が立っていた。

突然の闖入者に、わずかに警戒を強めるリリカ達であったが、その時、鳥の式神がリリカの肩に停まる。
それがほころびると、リリカの脳裏に何らかのビジョンが過り…そして、目の前の女性を見やり、リリカは驚愕に眼を見開く。
そんな彼女を意に介した風もなく、女戦士は淡々としゃべりかけてきた。


「見たところ、あんた達はひとかどの冒険者とお見受けする。
あたしも先日、海都元老院から許可が出て、ここに立ち入ることができてね…理由は知らないけど、この森に立ち入る資格があまりにもハードル高いって聞いてたのに、拍子抜けするほどあっさり立ち入れさせてもらってね。
でも、君たちは何か『違う』ようだね

表情は笑っているが、その無骨な作りの鎧に、見事な装飾の施された無骨な剣を腰に差すその女性からは、只ならぬ雰囲気が感じられた。
今のところ敵意はない、そう判断したポエットがリリカに視線を送ると、彼女は頷いて返す。


「あなたは?」
「あたしはウェアルフ。
ちょっとしたいわくつきの家に生まれてね、その目的を達するために修業がてら世界各地を冒険している、しがない冒険者さ」
「目的?」

鸚鵡返しに聞き返すルーミアに…ウェアルフは躊躇うことなく「ああ」と答え、そして。


「空中庭園に鎮座するエルダードラゴン。
その命を享けて、各地に三柱一組で配される竜神を討伐し…『制竜者(ドラゴンスレイヤー)』になるっていう、ね。
『制竜の一族』の一員として、代々課せられてきたその使命を果たす、そのためにあたしはこの地に足を踏み入れたんだ」



リリカ以外の全員が、その時冷や水を浴びせられたような戦慄を覚える。
そして一瞬だけ、ウェアルフの視線に殺気が混ざったように感じられた。


「盗み聞きするつもりはなかったんだが、丁度君たちの話声が聞こえてしまってね。
となれば、私達は同じ目的のためにここを訪れた…いわば「ライバル」ということになるのかな…?」
「そうですか。
私たちが探していた『手がかり』も、もしかしたら今目の前に『ある』…そう言っても、いいかも知れませんね

ポエットはさらに思いもよらぬことに、驚愕の表情でリリカの方へ振り返る。
ごめんね、という風に一度目を伏せると、彼女は一歩進み出て、女戦士と向かい合わせの格好となる。


自分達には関係ない、そう言っても見逃すつもりはない。
ウェアルフの鬼気迫る雰囲気からはそういう意思のようなものを感じ取れる。
だが、それはリリカとて同じことなのだ。



「私達にも、エルダーの試練を超えなきゃならない理由があるんです。
そのために、この森の何処かに眠るという竜を探している。
先だってその試練を制した時…『偉大なる赤竜』が遺した言葉だけを頼りに!」
「…なんだって…!?
君らは、既に…『竜』を…!?」

想定外のことだったのだろう。
彼女は、はっきりと驚愕の表情をあらわにした。

そして、何かを確かめる素振りをし…不意に表情を緩める。


「…そうか。
確かに、君たちからは『制竜者』に特有のなにかを感じる。
私が最初に『感じ取った』のは、ここに眠る竜にではなく…君たちにだったみたいだね」

危ない危ない、と、何処かお道化た様に肩を竦め、彼女は振り返った。

「君たちの実力は、侮れないのも事実だし…『竜を討つ権利』は誰かの所有物でもないからね。
それに…君の言葉を聞く限り、君らもこの森の何処に竜が眠っているのかは知らないようだ。
仕方ない、やっぱ地道にテクテク探しますか!
邪魔して悪かったね、お互い目的を達することが出来るよう頑張ろう」

それだけ言い残すと、ウェアルフは踵を返し、森の奥へ向けて歩いて行った。
その姿が見えなくなったところで、ようやく緊張の糸が解かれたか…五人は、大きく嘆息した。


「かなりできるわね、彼女。
『制竜の一族』…口先のハッタリではない、実際にそう名乗れるだけの実力は感じる。
幻想郷でいえば、霊夢や早苗、魔理沙に匹敵するレベルの戦闘能力を持っている…ううん、恐らくスペルカードルールという制約が無ければ」
「魔理沙たち以上の実力者…っていうこと?」
「そう見て間違いないわ。
私達とて、マトモにやりあっても勝てる保証はない。
出来るなら、あれほどの手錬とはケンカせずに済ませたいところね…ところで」

レティの視線を受けて、リリカは頷く。

「静葉さんからの式神が来たの。
こいしの読み取った記憶も乗ってた…今の人、ウェアルフさんで間違いない。
多分あの人が、この森に眠る竜と関係してるって」
「彼女は竜を探す手がかりを持っているようね。
厄介だわね、こっちには基本頭数しかアドバンテージがないってのに」

ううん、とリリカは頭を振る。


「ザイフリートさんが、新しい情報を見つけてくれたみたいなんだ。
一柱でも竜と出会うか…あるいは、制することができれば。
その竜の導きで、他の竜と出会うことができるって



四人は顔を見合わせる。

「そういえば」

チルノはきょろきょろとあたりを見回すと、飛び跳ねるようにして通路へ躍り出て指さす。

「あたいあのねーちゃんと話し始めたとこから、なんか向こうの方にムズムズしたの感じてたんだ。
これって、もしかしたりなんかしないかな?」

リリカはレティに視線を送る。
他の少女たちとも互いにアイコンタクトを送り、頷く。


「こういうことを言い出した時のチルノは『強い』わよ。
どのみち手がかりはないのだし」
「だね。
いっちょ、のっかってみましょう!」

にぱっっと笑って、駆け出す氷精の背を追い、一行はその場を後にする。








瑞香「なんなのあのひょうりゅうとかいうのまじきらいむかつく(死んだ魚のような目」

百合花「知ってたけどキツネチャンこういうの好き嫌い多すぎやしない?
   てか瑞香結構わがままだよね、意外と食べ物も好き嫌い多いし」
香澄「あらあら困りましたわねえみずかちゃんにいろいろ聞かないと解説できないのに。
  仕方がありません、奥の手を使いましょう」
百合花「奥の手?
   あーそういえば香澄、瑞香の所でちょっと世話になったことがあるとか言ってたっけ
香澄「うふふ、葛葉のおじさまは私の剣の師でもありますから。
  
みずかちゃんお手!!>ヮ<

SE:びしぃ!!

瑞香「
( ̄□ ̄;)はっ!?
  あああたしはなにをっていうかすみ姉さんいつのまに!!
  っていうかあたしは犬じゃありません!!あんな下等生物と一緒にしないでください!!><」
百合花「いやいやいやボクたちがいるのもそっちのけで呪詛吐き散らしてたのかよキミは」
香澄「みずかちゃんよくできましたね飴ちゃんあげますよ〜♪」
瑞佳「わーい飴ちゃんだー飴ちゃんだいすk…ってちがうううう!!!><
百合花「カンペキに餌付けされてんじゃん…まあいいや、解説しよっか。
   エルダーとの会話イベントで竜が解禁されて、直後に第五階層に行くと一回だけ会話イベントが発生するよ。
   正直この森を単独でうろつきまわってるって時点で、このウェアルフって人尋常じゃない系のなんかなんだけど」
瑞佳「ぐぬぬ既にすみ姉さんのペースだ…確かに森にはとてもつよい狐さんたちがいるのでマジで只者ではない系の戦士と感心しますがそれほどでもないです!」
香澄「実際に、このウェアルフさんという方が、この森に眠る竜の手がかり、ということなのでしょうか?」
百合花「そだね。
   普通に道なりに進んで、B17Fでカマキリ3体が出現するイベントが起きる区画に行くと、またウェアルフさんに出会ってイベントが進むよ」










「やあ、また会ったね」

チルノに導かれるまま、ある広間に進み入ったリリカたちは再び、ウェアルフと名乗ったその女騎士と再会する。
彼女は相変わらず笑っているように見えるが…その眼差しは全く笑っておらず、むしろ敵意のようなものすら感じられた。


「…地道にテクテク探した結果…どうもこの辺に竜の気配を感じるんだ。
そういうわけだから、ここはこれから戦場になる。
君たちもここにいては危険だ…後は『専門家』に任せて帰った方がいいよ?

穏やかな口調だが、その瞳から放たれる殺気と敵意…それが、否応なしにリリカ達の介入を拒絶する。
しかし、リリカはその威圧に気圧されることなく堂々と返す。


「嫌です」

きっぱりと言い切るその少女に、ウェアルフは驚きよりも敵意の色を強める。
しかし、リリカは引き下がるつもりなどない。
気圧されるどころか、あべこべに強い意志をあらわにし、はっきりと己の意思を告げる。


「私達だって…遊び半分にエルダーの試練を受けているわけじゃないんです。
私達が育った場所が、ある強大な敵の手によって滅ぼされかけている。
でも…今の私達の力では、どうすることも出来ないんです…!
だから…だから私達はもっと力が欲しい…!
大切な人たちを助ける力を…大好きな場所を護るために…私達はエルダーの試練を超えなきゃならないの!!」

毅然と言い放つリリカと、同じように強い眼差しをもって目の前の女騎士に対峙する少女たち。
双方譲らぬその睨み合いを…その均衡を崩したのは意外にもウェアルフの方だった。



「参ったな。
竜と戦う前に『人間』となんか戦いたくないんだけど…ううん、どうやら私のカンは、君たちが『人間ではない何か』だと告げている。
確かに迷宮は私の土地なんかじゃないし、ましてや竜は私の所有物なんかでもない。
お互い、譲れぬ理由あって竜を追っていることには変わらない…なにより、一人だけで戦う必要だって


そう言って笑うウェアルフは…突然何かを思い出したかのように自分の荷物入れを漁りだす。
そして、ハッとした表情で大げさに叫ぶ。


「…しまった!
肝心の『竜殺しの槍』…ドラゴンキラーを海都の宿屋に忘れてきてしまったか…!
アレが無いと、仮に君たちと共闘するにしても竜を倒せないよ!」

突然のことに呆気にとられるリリカ達。
だがウェアルフは、そのことを意に介した風もなく…畳みかけるようにしてオーバーリアクション気味に頭を振り、矢継ぎ早に告げる。


「うーん困った困った…今日は下準備のつもりだったし、この森の他の魔物くらいならドラゴンキラーでなくても十分事足りたからなあ。
竜と戦うかも知れない成り行きなんて想定していなかったし…そうだ、君は…えっと」
「あ…リリカっていいます。
一応、ギルド『狐尾』の代表者ということになっていますが」

ウェアルフは一瞬だけ、本当に心の底から驚いたような表情を見せるが…すぐに気を取り直して、同じ調子でまくり立て始める。

「なんてこった…君たちが音に聞こえた海都最強ギルドだったっていうのか!?
成程…やはりタダ者ではなかったんだな…でも、それでもあの槍が無ければ竜を制するのは難しいことだ。
君たちの力を見込んで頼みがある。
私はここで待ってるから、宿屋に戻ってドラゴンキラーを取ってきてくれ!頼む!」

一瞬だけ真剣なまなざしを見せるウェアルフに、リリカは一瞬戸惑ったが…仮にも『制竜者』の一族を名乗る彼女がそう言うのならば、その『ドラゴンキラー』が必要なモノであるとリリカも思ってしまった。
リリカは二つ返事で快諾してしまい、すぐに戻ると言い残し…訝むレティを説得して「帰宅マスター」で街へと戻って行った。


そのことを確認したウェアルフは、一瞬…ほんの一瞬だけ、申し訳なさそうな表情を見せる。



「ごめんよ…君たちにものっぴきならない事情があることは解る。
でも、こいつだけは譲れない…!!


ウェアルフは腰の宝剣を抜き放ち…複雑な呪文を唱え始める。
それに反応し、宝剣に埋め込まれた宝玉が反応して淡い光を放つとともに、にわかにその大地が鳴動し始める…!


「『制竜の一族』の宿命なんだ…こいつは」

そして、部屋の中心から巻き起こる、殺意を帯びたすさまじい寒波が吹きすさぶ…!


「私一人で倒さなきゃならないんだッ!!」





〜海都アーモロード アーマンの宿屋〜

「成程ね。
…悪いけどリリカ…あなたもしかしたら、そいつに一杯食わされたかもしれないわ」

事の次第を聞いた静葉は、難しそうな表情でそう告げた。
そこへ、こいしが戻ってきて頭を振る。


「うーん…ウェアルフさんって人が借りてる部屋に忍び込んでみたけど、パーペキにもぬけの殻だよ。
もうこの宿には戻ってくるって感じじゃなかったねー。
あと宿の子に聞いたけど、最初に来た時からその人、槍っぽい武器もってなかったってさぁ」
「そんな」

仕方ない、と言わんばかりの表情でこいしは肩を竦める。
ウェアルフの態度に訝しいものを感じてはいたが、それでも、彼女と共闘できる可能性があるならばと…リリカは、あまりにもあっさりと相手を信用しすぎたことをこの時後悔した。

騙され、出し抜かれたことをではなく…あのタイプは、必ず自分の意地を通そうとしてくる。
強力な冒険者であることは解ったが、赤竜の戦闘能力を考えても、決して一人で立ち向かえる相手ではないことをわかっていただけに…ウェアルフを一人で竜に対峙させたら、悲劇的な結末を招くだろうという漠然とした予感が、彼女にはあった。


「やっぱり、ウソだったわね。
おかしいと思ってたわよ、『槍』って言ったし彼女」
「どういうことです?」
「簡単よ。
世界に竜を討った伝説は数多いし、関わる武器も有名よ。
八岐大蛇を斬った天羽々斬、ファフニールを斬り斃したグラム、ベオウルフが海の邪竜親子を斬り殺した黄金の剣エトセトラエトセトラ。
変わり種としては四海竜王の息子を殺した時にナタクの使った宝貝・乾坤圏かしら…まあこれも刃物よね、広い意味では」
「んー…斬ったってことは、みんな剣っぽいね?

こいしが首をかしげると、そうよ、と静葉が告げる。

世に神槍の類は数知れず、然れども『竜を討った』槍はないわ。
レティ、そのウェアルフって戦士は、剣のようなものは持ってなかったかしら?」
「んー…腰に差してた一振りあったけど、アレがそうだったりするのかしら。
灼熱洞の要石だって、刺さってる時はそれ自体何の変哲もない石柱だったけど…何かしらのトリガーで真価を発揮する類のものだったりすれば、見ただけじゃ解んないかも
「可能性はあるわね」
「…っ。
でも、どうしてウェアルフさんはそんなウソを」

顔色を変えるリリカが、呻くようにつぶやく。

「さあてね。
どうも建前でそう言ってたように、私達を危険に巻き込みたくはなかった、という風じゃないわね。
どうあっても…一人で竜を倒す、そんな気迫のようなものを感じたわ」
「じゃああのねーちゃん、もしかして一人で!?
無茶だよ!
その竜があたいたちが戦った赤竜と同じくらい強かったら…一人でなんて!!」

チルノが言いかけたその時、凄まじい戦いの気が白亜の森で発していることに少女たちは気づく。
一拍遅れて、凄まじい殺気の波が駆け抜け…居合わせた全員が凄まじい冷気を感じ取る…!

「な、なになに!?
今何が起こったの!?」
「…白亜の森の方だわ。
途轍もない力を持った何かが…ううん、赤竜は言ってたわね。
『氷嵐の支配者』が白亜の森に眠っていると
「ひょう…らん?
氷と、嵐の竜…?」
「そういうことよ。
急ぎましょう!」

リリカ達は駆け出してゆく。
その戦いの気が発せられている元へ。




リリカ達を欺いてまで一人で戦おうとするウェアルフの身を案じ、リリカは祈るような気持ちで白亜の森を駆ける。
戦いの場所がその一歩ごとに近付いていることを示すかのように…森の奥へ進むにつれ、吹きつける風は冷たさと殺意を強くしていくのをリリカは感じていた。

そして、その死の冷気が吹き付けるその起点…竜の広間に駆け込む。
するとそこには荒れ狂う吹雪の中、剣を杖にして巨大な蒼い影と対峙するウェアルフの姿があった!


「ウェアルフさんッ!!」

纏った鎧は無残に砕かれ、遠目からでも満身創痍と解る彼女の元へ、リリカは駆け出す。


「君たちは…く、来るなッ…!
…こいつは………ケタ違いだ!
…早く…逃げ…」


駆け寄るリリカを目の端に捉えたのか、ウェアルフは今にも消え入りそうな声でそれを制しようとする。
しかし…言葉を言い切る前に氷龍の無慈悲な一撃を受けたウェアルフは…胸元から鮮血を散らしその場に力なく崩れ落ちる…!

リリカは一拍遅れて、その名を叫んだ。
だが、その答えはなく、目の前に立ちはだかる蒼い影の主が、総てを凍てつかせるような恐ろしい咆哮を上げた。






♪BGM 「神々への挑戦」/伊藤賢治(ロマンシング サ・ガ ミンストレルソング)♪

その吹きつける凍気を割って出てきたのは、三対の金色の瞳を持つ三つ頸の、全身を蒼く美しい鱗に覆われた竜。
リリカ達は瞬時に、その竜こそが氷竜…エルダーの眷族が一柱「氷嵐の支配者」であることを悟った。

氷竜は、リリカ達の姿を認めると再び咆哮する。
それとともに、その巨大な体から殺気を纏った猛烈な吹雪が巻き起こる…!


「彼女は『逃げろ』と言おうとしてたみたいだけど…どうする?」
「聞かれるまでもないよ。
有頂天の謙虚なナイトいわく、牙を剥かれたら剥き返すということで何処もおかしくはにい!
…あたいはこないだは最後まで立ってられなかったけど…最強のあたいは、二度も敗れはしないって見せてやるっ!!
「…愚問だったわね」

チルノの言葉に、苦笑して並び立つレティ。
レティはそこからさらに一歩進みでて、使い慣れたその盾を掲げて氷の竜に対峙する。
あいさつ代わりに放たれた死の吹雪を、レティがフリーズガードでいなすと同時に、めいめいの獲物を携えた少女たちが氷竜の試練へと挑む!









香澄「えっ?
  竜を討った槍ってありませんでしたっけ?」
百合花「ないみたいだねえ。
   カミサマが持ってる槍はいっぱいあるけどねえ、最メジャーどころだと北欧神話のグングニル。
   ヨルムンガンドを無理矢理竜と言い張るとしても、あいつを斃したのは雷神トールのバケモノハンマーミョルニルだし…って瑞香は?
香澄「飴ちゃん一杯上げたら満足してどこかへいってしまいましたけど
百合花「いやだめじゃん誰か説明してくれるんだよこれ」
操「…いやもーなんとなくgdgdになる予感がしたし私がやるわ。
 というわけで、氷竜こと氷嵐の支配者はこんな感じの基本スペックよ」




第五階層特殊ボス 氷嵐の支配者
HP25000 氷無効、雷弱点
アイスブレス(頭) 全体氷属性極大ダメージ
竜乱錐(腕) 3〜6回ランダム突攻撃、スタンを付与
アイスクラッシュ(腕) 全体壊属性攻撃、頭封じを付与
アイスシールド(頭) 3ターンの間雷、斬、壊、突属性攻撃耐性を得る(ほぼ無効にする)
氷河の再生 3ターンの間ターン終了時に自身のHPを回復する(1回の回復量は1700前後

百合花「あー良かったこういう時にみーがいてくれるとマジで助かる…ってなんかおかしいスキルが最下段に2つほどあるんですがなんスかミーサンこれ(真顔
操「ドシンプルに書いてあることそのまんまの効果よ。
 この手のバフって打ち消す手段、全然ないからね。
 一応アイスシールドはアームズやミスト同様耐性バフだから、実はミストでも上書きできるわ」
香澄「あら、ミストって味方側にしか付かないものではないのですか?」
操「結構勘違いしているボウケンシャーもいるんだけど、ミストの効果範囲ってシリーズ通して『場の全員』。
 つまり敵味方全員にバフが付与されるのよ。
 だからこっちが突攻撃メインなのに、相手の突属性攻撃がキツいからと言って安易に耐突ミスト撒くと酷いことになるよ」
百合花「うええ結構扱いどころ難しいんだねこれ。
   じゃあ一応、ミストで打ち消せるんだ」
操「ラウダナムは高額だし、リセポンは速度補正もないからQOとセットにしないと厳しいけど、とーこさんにリセポンしてもらうにしても私たちが一度攻撃の手を止めるか、つぐみ先輩の手も潰してしまうかの2択になるからね。
 ミストでも耐氷ミストならラウダナムの3分の1以下の値段だし、こいつ相手に氷属性攻撃なんてわざわざ使わないからね普通は。
 なんだかんだでキツネチャンはうちのメンバーで最速、しかも火力面でそこまで期待もできないから、こういうアイテム投げさせる役目は適任よ。
 ただめんどくさいことに、こいつ結構な頻度でブレスのターンにも氷河の再生かアイスシールド使いやがるの。だからものっそいダルい」
百合花「…成程瑞香じゃなくてもこいつウゼってなるかこれ…」
香澄「このタフさで持久戦を挑んでくるとは…やはり古竜というものは侮りがたい力を持つのですね」
操「まーそんなこんなでさあ、どうしても最終的にラウダナムも足りないし火力的にも押し切れなくて、結局最後に回したのよコイツ。
 リリカさん達二番目にこいつ狩ったみたいだけど、よくよく聞いてみたらポエットさんルーミアさんチルノが確か70前後、あと二人が60くらいだったらしいわ。
 というか高火力出せるちるみゃコンビがレベル70超えてんならそりゃあ火力で押し切れるだろっていう」
百合花「あー、我流と一騎当千かあ。
   そりゃ一気に火力出るし、リミット三色もあるよねこのメンバーだと」
操「こっちはもうシールド使われるだけでてんやわんやだったわ。
 それでもレベル68で何とかsageたけどしんどいなんてもんじゃない、60ターンは超えてたわね」
香澄「リリカさん達が30ターンとのことでしたから、倍ですね」
操「ちな例によって私たちのデータしか残ってないから、こんな感じよ。
 装備は赤竜戦と同じだから割愛するわ

つぐみ ファランクス/プリンセス
ガーディアン8
盾マスタリー★(10)
槍マスタリー4
ラインガート1
ファイアガード★(10)
フリーズガード★(10)
ショックガード★(10)
ディバイドガード1
ブリッツリッター1
リバイブ★(5)
リィンフォース3
王たる証5
防御の号令3
予防の号令1
エクスチェンジ1
リニューライフ1
クイックオーダー1

明夜 ウォリアー/バリスタ
常在戦場★(10)
剣マスタリー★(10)
アベンジャー3
ブレイク3
ラッシュ5
ブレイドレイヴ★(10)
狂戦士の誓い5
チャージ★(5)
ウルフハウル8
正射必中★(5)
エクステンド1
TPブースト★(10)

透子 プリンセス/モンク
王家の血統★(10)
リィンフォース★(10)
王たる証5
攻撃の号令5
防御の号令5
ファイアアームズ1
フリーズアームズ1
ショックアームズ1
エミットウェポン1
リセットウェポン1
予防の号令1
覇気の号令5
庇護の号令1
リニューライフ1
クイックオーダー★(5)
行者の功徳3
血返しの法5
行者の功徳1
ヒーリング2
バインドリカバリ4
リフレッシュ4
リザレクト3

操 バリスタ/ゾディアック
ジャイアントキル★(10)
弩マスタリー★(10)
正射必中★(5)
エクステンド1
ヘビーショット1
ファイアバラージ1
アイスバラージ1
サンダーバラージ1
特異点定理★(5)
炎マスタリー★(10)
氷マスタリー5
雷マスタリー9
リターンエーテル★(5)
エーテル圧縮★(5)
ダークエーテル★(5)
TPブースト1

瑞香 シノビ/ファーマー
煙りの末★(10)
短剣マスタリー★(10)
潜伏★(10)
軽業4
首切2
影縫3
飯綱7
鷹乃羽1
忍法含針3
忍法水鏡3
忍法撒菱5
忍法陽炎3
忍法分身★(1)
忍法招鳥1
忍法猿飛3
忍法雲隠3
収穫マスター1
探知マスター3
帰宅マスター★(1)
アメニモマケズ1




操「実際赤竜からそんなに大きな変更はないんだけど、実はレベルが58、62の時にも何回か戦って、全ッ然削り切れなくて負けたのよね。
 意外とコイツブレス以外はそこまでぶっ飛んだ火力はしてないから受けきれないほどじゃない、でも放っておくと速攻で立て直し利かなくなる程度には攻撃力あるのに、HPが減ってくると矢鱈とシールドと氷河の再生繰り返しやがるのよ。
 そうなってきたらもうどうしようもないから、つぐみ先輩もうんざりしたらしくて何度ブレスターンに盾放り投げたか知れないけど、そういうときに限って氷河の再生してきやがってマジでもう(しろめ」
百合花「あーうん落ち着いてみー。
   いやこれ、瑞香が死んだ魚のような目で呪詛吐き散らすわけだわ」
つぐみ「追加情報というかSSQ2のログ見て貰えばわかるんだけど、こいつSSQ2だと低確率ながら呪いが効いて、しかもペットなんてトンチキな能力持ったクラスがいたからそれを使って呪いカウンターで瞬殺できるわ、DLC装備込みでブレスに完全耐性持ったまま戦えるわでマジでクソザコナメクジだったんだけどね…歴代氷竜で最悪にめんどくさいのは間違いなくコイツだよ。
   あと純粋にヤバいのはWで全体即死をひっきりなしに撒いてくる奴かな(しろめ」
操「別に聞きたくもなかった追加情報ありがとうございます先輩(しろめ
百合花「全員もれなく闇落ちしてんじゃんどうなってんのさホント(真顔」
香澄「強いてポイントを上げるなら、強化解除のためにリセットウェポンに振られているのと、雷マスタリーを伸ばしている点でしょうか?」
操「(しょうきにかえった)あー、んまー、そだね。
 実際ここまで上がってくれば特異点とアームズ込みでも300程度は変わってくるから、だいぶ楽だよ。
 一応アイスシールドは炎だけ素通しだから、シールド張られてもいいようにファイアアームズで殴るっていうヤケクソ手段もあるにはあるわよ。
 火力はさっぱりだけど」
香澄「今更ですが他のゲームだと氷タイプには炎、というイメージなのに、雷弱点なんですよね氷竜。
  アイスシールドで炎だけ防げないというのもそのためでしょうか」
操「ポケモンで言う水タイプって側面もあるかもね。
 氷竜戦に関しては、こんなところかしらね」
百合花「ラストは金竜だね。
   リリカさん達は最後に回したけど、こいつもどうなってることか」
操「んあー、それなんだけど次はインターミッションだから、何気に昔のログでは解説してなかった第六階層の話ちょっとしとけってさ。
 どうせキツネチャン呼んできてもにぎやかし程度の役割しかないから、基本私達で進めるわよ」
百合花「実際助かる(キリッ」










♪BGM 「傷心のアイシャ」/伊藤賢治(ロマンシング サ・ガ ミンストレルソング)♪


死闘の末、倒れ伏した氷龍の体が粉雪と変わり、やがてそれは蒼く輝くひとつの宝玉となってチルノの手に収まった。
リリカ達は体の底から湧きあがるような力を感じるが…そのことを実感する間もなく、氷龍の放った雪と氷に閉ざされたその間の一角に倒れ伏している満身創痍のウェアルフに駆け寄り、彼女の体を抱き起こす。


「ウェアルフさん…どうして」

まるで氷のように冷え切ったその顔に、生気は残っていない。
見れば、彼女の肩口から反対側のわき腹にかけて、深く抉られている…この極低温のおかげで出血はなかったものの、その傷はどう見ても…致命傷だった。
彼女は力なく君たちに笑いかけ、手探りで拾い集めるかのようにゆっくりと言葉を紡いでいく…。


「…騙してごめん、リリカ…ドラゴンキラーは槍じゃなくて剣なんだ…。
ましてや…これが眠れる竜を呼ぶカギになるのに…私の言葉を鵜呑みにするなんて、キミも御人好しだな…」

そう言うと彼女は、力なく握った、美しい紋様が刻まれた剣を指し示す。
かすかに魔力を感じるその剣は、まるでリリカ達に宿った竜の力に共鳴するかのように淡く輝いていた。


「だったら…どうして!
姉ちゃんがいくら強くたって…あんな奴に一人でいどむなんて!」

チルノはその手を取って、しっかりと握りしめる。
今にも泣き出しそうなその表情に、ウェアルフは自嘲気味に笑う。


…『制竜』の家系は、どれだけ修行して…どれだけ強くなっても…竜を殺さない限りは…認めてもらえない。
…私は竜を倒すことで……父様や母様を見返す…いや…褒めてほしかったんだろうね…ははっ…

「でも…でも!
あんな強い奴をやっつけられるんだったら…あたいたちと力を合わせて戦ったからって…別にいいじゃないか!
姉ちゃんがあたい達と一緒に戦って、みんなで一緒に頑張ったから倒せたって…それで…!!」
「…はは…うん…そうだよね。
でも…私にはそれは許されなかったんだ…ううん、一人で戦いたいというのは…私の意地だった…。
もっと素直になれば…こんなザマに…ならずに、済んだのかも…ね」

彼女は、ゆっくり瞳を閉じる。
その目の端から、一滴、涙がこぼれた。



「…君たちは…本当に、御人好しだ。
見ず知らずの…自分たちをだましたヤツに…自業自得で死ぬようなヤツの為に…!
…だけど、強い…な。
…君たちこそ…真の…………真の『制竜者』だ…!」



最後に力強くそう呟き…その左手から彼女の愛剣…『竜殺しの剣』が零れ落ちる。
呼びかける少女たちの泣き声に、彼女はそれきり応えることはなかったが…その表情は、穏やかだった。






翌日。
リリカは静葉達と…そして、ザイフリートら数人の、海都の猛者達も伴って、再度その場所に訪れていた。


「…口に合うか解らないけど…私たちの世界の酒よ」

鮮やかな緋色の服を纏った秋の神が、その場に酒の瓶をひとつ、供えつけた。
それは、ゲートが閉じる数日前、たまたまこの世界に遊びに来ていたかごめが置いていったものだった。

最前列にいた少女たちが、墓前に黙祷をささげると…居並ぶ猛者たちも、それに倣った。


小高く盛り上がった土の山に、既に輝きを失った剣を刺したそれは…単身、竜に挑むも力及ばず敗れた、勇敢なる女騎士の墓標。

ウェアルフの最期を看取ったリリカ達は、彼女をその地に葬ることにした。
教わった彼女の故郷はあまりに遠すぎたため…せめて、彼女が追い求めた竜の居た、その地に葬ってやろうと思ってのことだった。
ザイフリートはその申し出を快諾し、対価として自分たちもその墓前に参列させよ、と同行を申し出た。


「人間って、どうしてこうなんだろうね」

チルノが寂しそうな表情でつぶやく。

「どうして…どうして意地を張って…そのために命を落としてしまうって解っていても…そうしちゃうなんて」
「余もまた、そうであった。
あのまま、世界樹の声に従い…『魔』と戦い続けていたならば…(いず)れ彼女と同じ運命を辿っていたやも知れぬ。
だが」

王の言葉を受けるようにして、視線を向けられたリリカは頷いて、続ける。

「…そう、ですね。
でも人間は、私達妖怪よりもずっと短い時間…限られた時間しか生きていられないから…その中で、精一杯生きようとする。
例え報われることが無くても…それでも一生懸命輝こうとする。
少なくとも、このひとはそうだった。
そうやって戦い抜くことができたんだと思います


そう呟いて、リリカはその墓標に花の輪を添えた。
王も、その答えを是とするかのように頷き…そして、己の使命を果たせずとも、その運命に殉じた戦士の墓標へ…栄誉を讃える徽章を手向けた。



「行こう、みんな。
残る試練はあとひとつ…残された時間もわずか。
私達は…私達の行くべき道へ!」


振り返るその表情は悲しみに満ちていて…だが、前を見据える強い意志をも秘めていた。