♪BGM 「戦乱 神話の後継者」/古代祐三♪




キツネノボタンは巨人の目の前へとやってくる。
瘴気を孕んだ緑の風が、そのひと息ごとに吹きつけてくる中、レミリアがその懸念を指摘する。

これだけ接近し、尚且つ長いこと触れていながら…私達の誰も「呪い」を受けた者はいないみたいね
「…そう言えば」

穣子達は目の前で見ている。
諏訪子が、呪いに苦しむイクサビトの子に触れた途端…その呪いに飲まれてしまった姿を。

まして、たった今、同じ呪いを受けていた筈のバルドゥールと剣を交えて来たというのに…彼女らの誰にも、異変は起きていない。
まるで、呪いが彼女らを避けているような…そうにも思えた。

「私達は、あなたと戦う資格があるから猶予をもらったのかしら?
それとも…」

レミリアは目の前の巨人へ、そう問いかける。
既に、その腕の届く範囲内には余裕で入っている…最早、相手にその意思があれば、既に戦闘に入っていてもまるでおかしくはない…そんな距離で、巨人はじっと少女達を見つめている。

-おねがい、みんな。
このこを、もうねむらせてあげて。
わたしが、まだわたしでいられるあいだに-


ふと、そんな声が聞こえた。
幻聴などではない…この声には、皆聞き覚えがあった。

穣子は剣を抜き放ち、構える。

「…このセリフ、あんたに聞かせた事あったっけな…シウアン?
こういう時にいう、私のセリフはたったひとつしかないんだ」

そういって、口元を吊り上げる。


「いたいけな少女の望みを叶えずして、何が神だ!
行くぞみんなっ、これが最後の戦いだあっ!!!」




-狐尾幻想樹海紀行2-
最終話 「そして穣りの詩は流れ往く」






かごめ「これが正真正銘、本編最後の解説になるのかな。
   後で気づいたんだけど、実は巨人の上半身としか戦ってないんだよねこれ」
静葉「本当にどうでもいい事に気付いたわね。
  まあスキルを見ればわかるでしょうけど、踏みつけとか体当たりとかそういうのを示唆する名前のスキルもないからねえ」
紫「そんなの前作各ルートのラスボスだってみんなそうだったじゃない」
かごめ「いやまあそうなんだけどさあ…まあ、こまけーことだしいいか。
   ここからは簡単にラスボス戦の流れに触れつつ、色々と反省点とか挙げていこうって感じで」
静葉「つかツッコミどころしかない感じだけどね。
  呪皇戦のスキルとか」
かごめ「その辺については宣言通りラストに入る前におぜう、みすちー、ほむらは休養させてスキルを振り直してある。
   おぜうはアクセルドライブとフィニッシャーに全振りした以外は総て切って、その分ガードマスタリをマスター、残りは物理防御ブーストとHPブーストへ半々に振った。
   ほむらも衝破をレベル1にとどめた残りの分を、スコールショット1振りまで取得、残りは物理攻撃ブーストに振った。
   みすちーはバーストセーブをマスターして、残り霞の舞かな」
静葉「つかブースト何もってったんだっけ?
  確か何時もの武息と、イージスの護り、ヒギエイアの杯、ジオインパクトまで覚えてるんだけど」
かごめ「普段はそこにホーリーギフトと、イージスの代わりに全力逃走が仕込んであるんだけどな。
   …実はそこだけ何気にメモ取るの忘れてたんだけど…逃走はイージスに差し替えて呪皇戦に突入したののまんまだったから…レベル振り直しに使ってたホーリーギフトがそのままはまってた可能性もあるなあ…
静葉「せめて電光石化か太古の呪縛という選択肢はなかったの…」
かごめ「呪縛は…使いどころあんのか?
   まあ精髄にかましてターン経過で導き手に戻る行動をキャンセルさせるのには使えるかも知れんが」
紫「地味にその行動って依存部位頭なのよね。
 精髄状態でこっそり頭縛っておくと、5ターン経過して6ターン目に戻ろうとしても頭縛りされているっていうアナウンス出て、縛りが解除されるまで戻らなくなるらしいわ」
静葉「うっわ、そんな荒技が使えるなら使いなさいよ本当に」
かごめ「地味にテンパってたんだろうなあ…(´Д`)
   しかし、実は一番使いでがあったのはやはりというか信頼と安心の武息だったというオチがあって」
紫「前作でセットしたキャラ限定だったリミット技にもかかわらず、それでも地味に便利なスキルなのよねあれ。
 パーティ共用というバーストスキルと化してから、ここぞと言う時の緊急回避手段としては異常な使い勝手になってるわ」
かごめ「感覚としてはアレだ、サガフロ2のLP消費回復感覚だったな。
   あれほど常時使えるようなものじゃないけど、それでも割と四六時中殴ってるからヤバくなったと思った頃にはゲージ2、3本あったりすることも多いし、少なくとも早苗が潰されてなければ武息で早苗とおぜう復活、ディバイドで庇ってる間に立て直しとかそういう局面もあったし」
静葉「ヒギエイアの杯ってなんだったんでしょうね」
紫「あとミスティアのビートダンスを、ダンスマスタリ前提と割り切ってダンスマスタリ取っても良かった気もするわ。
 発動が不安定なバーストセーブは1だけとりあえず振っておいてもそれなりに発動するというか、そもそも振り切っても確定発動じゃないもの。
 それだったらダンスマスタリ取った方が本当によかったかも」
かごめ「本ッ当それも今更な話だよな。
   そもそも強化枠みっつ潰してまでロマンを求めなきゃいけない局面ってないから、とりあえず捨てスキルにしたって別によかったんだよな。
   あとトリックサンバも地味に使いどころなかった、今思えば」
静葉「解りきってはいたけど、後からたたけばたたくほどいろんなホコリが出てくるものね。
  とはいえ…他の連中はなんだかんだで無駄がない感じではあったわね。
  早苗なんかむしろ、ボス戦用としてだけでも凍牙の印術でも持たせといても良かったんじゃないかしら。どうせ杖でTEC補正入れるんだし」
かごめ「それはマジで考えた。
   そもそもあいつ、御神渡を起こすような神様の巫女だから、氷技を持たせ易いんだよなポケモンでも」
静葉「今のあの子はあまりに常識にとらわれなさ過ぎだけどね。
  流石の私でもオムスターはないと思った」
紫「すいすいオムスターは凶悪なんですけどね。
 いやまあそういう問題じゃないのは解ってますけど^^;」
かごめ「後はそれなりに期待どおりって感じかな。
   具体的にいうとほむらの羅刹チャージインパクトが強い強い」
静葉「アレ下手すれば腕一本諸共に持ってくからね。
  3ターンに一度しか使えないのが難点だけど、その間はシルバーアローもあるし」
かごめ「羅刹チャージインパクト→チャージシルバー→チャージインパクト…というローテーションだしな。
   そして穣子がヴァンガードとリンクプラスを張り直している隙にみすちーがアムリタUを投げると」
静葉「レミリアはレミリアで挑発から自家発電するしね。
  挑発があるとガードマスタリが本当にウマい」
紫「ルーンの盾やソードブレイカーもあるから、なんだかんだでかなり攻撃無効にしてタダでTP回収してやがった感じがするわ。
 実際、ほぼ何もしなくてもTPは常に満タン状態だったような」
かごめ「穣子や早苗もたまにTPカット発動して、特に早苗がパーティヒールする時にやたら発動して本能に何事かと思ったわ。
   手が空いたからとりあえず一発だけ始原撃ったらそれもカットしやがったし」
静葉「はいはい運ゲ乙運ゲ乙。
  実際、連発できるなら両腕いっぺんに持ってける可能性もあるし、手の空いた時に使ってくなら意外と悪くはなかったのねアレ」
紫「コストは重いけど、腐っても無属性全体攻撃。
 前回ログでも触れたけど、雑魚全体に500前後出せるならかなりいい火力よ」
かごめ「まあ本家ルンマスじゃないならそのくらいが関の山だろうがな。
   早苗も大体必要な部分は振り終わった感じだし、クリア後は凍牙取得でも問題なく行けそうだな」




かごめ「結局撃破までに精髄化を2回要したわけだが、一回目は腕を一本残しちまってたんだよな。
   この腕にして見ても、後から思えば左から潰すべきだったとは思う」
静葉「状態異常は無効化できれば実害は少ないけど、なかなかそうもいかないからね。
  まして、精髄にしたら可及的速やかに削りきらなきゃならないというに」
かごめ「まったくだ、もう元に戻られて腕がにょきにょきし出してマジでgdってきてなあ(´Д`)
   それでも回復技がないのがまだ救いであって、なんとか腕を潰しきったターンで精髄化、そしてそこからは早苗に始原、レミリアにもドライブから普通に殴らせるといった文字通りの総攻撃でなんとか戻る直前に撃破完了。
   最後はほむらの羅刹チャージインパクトで3000ちょい叩きだして終了だ
静葉「( ̄□ ̄;)えっそんなに出るの!?」
紫「精髄は全属性弱点…そもそも、クリティカルすれば導き手状態でも2000オーバーする程度の破壊力があるわ」
静葉「え? あ…そうか、クリティカルしたのね…。
  にしても、一発でほぼ3割持ってくって尋常じゃないわね」
かごめ「もしこれにルーンの導き乗ったらもっとえらい事になるんだろうなあ。
   前作のバリスタはジャイアントキル全振り+特異点+エーテル圧縮からの三色バラージで三龍にすら2000前後のダメージが出たが…スナイパーは三色ない代わりにクリティカル補正がアホみたいに高いから、一発当たると割ととんでもねえことになるという好例だな」
静葉「そうするとインパクトアローって、前陣迫撃砲術の調整版なのかしら」
紫「うーん…でもそもそも性質が違うから、どうなんでしょうね」
かごめ「戦闘前の食事は雲上竜鯉。
   wikiではオススメが極毛ゴート、もしくは煮頃銀ブナって書いてあったが…魚で三色耐性つけるなら素早さを上げる鯉の方が有効だ。
   つかラスボス戦で素材入手率上げてどうすんだって言うか、そもそも耐性補正率も鯉の方がいいに決まってんだろうが」
静葉「雷耐性を聖印でつけて、七香銀アユという選択肢もありっちゃありね。
  もっとも聖印で半減くらいにできないとありがたみないけど」
紫「ゴートはいい選択肢ですけどね。
 HPの補正率は落ちるけど、第三大地特殊食材の氷晶ザクロもTPに補正がかかって継続戦闘能力の向上にもなる。
 けど、HPにいくらテコ入れしても、受けるダメージが変わらないなら気休めという感じも」
かごめ「TPはもう、兎に角文庫に潜ってひたすら睡蓮の浮葉かき集めて、アムリタUを大量に用意しろよとか。
   もしくは羅刹と羅刹解除みたいな自家発電手段を持たせるかだな」
静葉「そういう意味ではサブナイトシーカーのインペリアルでチャージクール繰り返して残滓発動を狙うと、火力の向上にもなるわね。
  どっちかと言えば短期決戦型になるけど」
紫「そういう場合ももちろん、三色耐性の方がおススメになるのでしょうね」
かごめ「んだなあ。物理より明らかに属性の方がきっつい。
   あと地味に素早さにテコ入れしとけば、状況によっては相手より先に治療スキルが通ることもある」
静葉「そう言いながら実は、呪皇戦でゴートのほうを食べてたわね。
  もっともアレは属性より物理の方がきつかったから、HP底上げした方が有効かもだけど」
かごめ「てな訳でおよそ30ターンほどかかったが、無事に精髄まで叩き潰して試合終了。
   クリア後の話をすると、いくつかの重要なクエストと、お約束の裏ダンジョン第六迷宮が解禁される。
   まあここまで読んだ人間はネタバレも承知の上と解釈した上でいうが…第四大地には都合、迷宮が3つも存在するということになるわな」
静葉「もっといえば、第六迷宮は金鹿図書館の開かずの扉の先にあるのよね。
  ちょっとだけ触れるともうなんというか…BGMの時点でもうこっちを余裕で殺しにかかっているという
紫「それでも十分に育てたPTなら、一階で総崩れになるという事はないでしょうけど。
 …あ、いやあいつらがいたっけ…水溶液量産工場の皆さんが」
静葉「( ̄□ ̄;)なんてこと言いやがる!!
  あ、いやまあ、強ち間違ってもいないけど」
かごめ「今まで地味に気付かなかったけど、半減アイテムは突氷が第二迷宮、斬炎が第三迷宮、壊雷が第四迷宮で入手できるドロップ品でつくられてんだよね。
   地味に突半減護りだけ見当たらねえなあと思ってたら、なんのことはないとうに解禁されてるから気がついてなかっただけという」
静葉「それマジでどうでもいい話よね。
  第三大地の頃に触れたワニ公の丸かじりだって、誰かが調べたのか壊属性って判明してたし。これもどうでもいいけど」
紫「でもどっちにしてもダメージがよくわからないくらいkskしてくから半減したところであまり意味もない気がするんだけど。
 というか、もう話題が尽きたわねひょっとしなくても」
かごめ「まあなあ…先にも触れたけど、ぶっちゃけこいつフカビト真祖より弱ぇし…つか下手すれば呪皇の方が数倍面倒くさい」
静葉「単発火力も段違いだしねえ。
  確かに、アレがラストでも納得はいく」
紫「ところで、今度裏ボスどうするんです?
 前回は結局何もせず終わったんだけど」
かごめ「一応六層最下層まではいったんだけどね。
   触手おっかけるの面倒くさくなってやめた
静葉「あー、確かに」
かごめ「今回は二周三周やる意味がほとんどないからねえ。
   しかも周回引き継ぎは所持金とギルドメンバー、装備品、あとレベルキャップ解放情報と図鑑以外はそれこそ全部リセットされるらしい。
   しかも図鑑とマップは任意引き継ぎだったかな。
   だからうっかり引き継ぎで最初からやったりすると、また全部のクエストを受け直してやらにゃならんと」
静葉「まあだから初回カジュアルでやって、ノーマルボス全撃破称号欲しきゃ強くてニューゲームというか、ほむらプレイをしろと」
かごめ「もしくは唯一品集めかな。
   地味に、再戦及び代価品のない「限定砲剣“烈風”」も実質唯一品みたいなものだし、これがもう一挺欲しければ最初からやり直せと」
静葉「確かに強力な砲剣だけど…そこまでやる?」
かごめ「一挺で十分かな…因みにラスボスだが、クリア後にシウアンの具合がすぐれないって話を聞いて、ウロビトの里に彼女を訪ねて、会話の選択肢で特定の選択をすればいつでも再戦できるくらい常に滾ってるそうな。
   この再戦も何度かやらんと、全ボス撃破称号つかんそうな」
静葉「ああ…道理でラスボス撃破のお約束(デュランダル)に不自然な空きスロットがあると思ったら…」
かごめ「つーわけで、表編のクリアでこのお話も便宜上最終回となる。
   以降のネタ話はまあ気が向いたら番外編で、というところかな。
   …あの無意識妖怪がまたしても暴れたがってるようだから、出来れば静姐にも逝ってもらえると助かるんだが(チラッ
静葉「えちょ勘弁してよそんなの。
  どうせ諏訪子も復活するんだろうしあの子に押し付けときゃいいじゃない」
紫「毒を以て毒を制す、じゃないけど…なんなら藍でも貸しましょうか?
 あの子最近自分の式神にかまけて仕事しやがらんのよ」
かごめ「収拾付かねえよそれ。
   しゃあない、あたしが行くことも考えるか
静葉&紫「【ゑっ】」
かごめ「まあ最初のうちは、どうせあの無意識がそういう馬鹿をやりだせばリリカが黙っちゃいねえだろうから、まああいつになんとかしてもらうけどな。
   つか先手を打ってむしろリリカには話をつけてある。
   どうせまだ対戦をやる機会もないだろうしな、キバガミさんの参戦できる環境が整ってねえし…あと向こうにやれる奴がいるとすれば、精々緒莉子くらいか?
   さとりでもいいけど」
紫「狐はなるべくなら東方成分減らしていきたいみたいですけどー?
 そうすると、地霊殿を取り仕切る用事があるさとりだと難しいかも」
かごめ「だから今回キャラとしては用意してなかったんだよな。
   レミリアもクリア後はレティに差し替わる予定だし、そうすると自然と砲剣装備枠が一個減らせるんだ…やっぱあたし行こうかな…面白そうだし…
静葉「やーめーなーさい!!><
  あなたがいったらマジで赤竜倒さないうちにニューゲーム(★)やりそうな気がしてならんわ」
かごめ「まあ兎に角表はこれで一応終わり。
   後は何時も通りの駄文で最終幕。この後の番外編はやるかどうかわからん。以上」
紫「お疲れさまでしたー^^」













タルシスの街から、幽谷の里から、イクサビトの里から…その雲突くような巨人に猛攻を仕掛ける少女達の戦いを、誰もが固唾を飲んで見守っている。
周囲に稲妻や爆発が巻き起こるのが遠目にも見え、その戦いの激しさを物語っていた。
辺境伯は窓の外に広がる、暗雲立ち込めるその空のもと、いまだ動こうともしない巨人を見守り続けてた。


彼は思い返す。

初めて、彼女達が統治院のこの部屋へと赴いて来た日の事を。
自分達が異世界から来た、人ならざる者である事を打ち明けてくれた日の事を。
皇子を止められず戻り、悔し涙を流したその姿を。


思えば、胸に去来するのは彼女らと過ごした短い時間の積み重ねであった。
何時しか、彼女達が胸を張って未踏の大地から戻り、その道中の冒険譚を聞かせてくれる事を何よりも楽しみにするようになった。
腕の中にいる、妻亡き後の伴侶とも言えるマルゲリータも、寂しそうに鼻を鳴らす。

「そうか…お前も心配か。
だが…我々にできる事は、彼女達が…“狐尾”の諸君が、戻ってくる事を祈るだけしかないのだ。
…それに…私も信じておるのだよ」

腕の中の愛犬を、辺境伯は愛おしそうに撫でる。

「彼女たちなら…必ず帰ってくる、とな」



戦いの最中、それに気づいたのはほむらだった。

巨人はその場から一歩も動いていないとはいえ、その攻撃は時を経るにつれ苛烈さを増し始めている。
彼女はふと、眼下のはるか下…巨人の足元を見やり、顔色を変える。

蛍の光が、薄くなっている。
気づけば、ごくわずかではあったが…自分の腕にもコケのようなモノが張り付き始めている…!


それは、今までこの巨人の力を抑えていたシウアンが限界に近付いていることを如実に示していた。

「穣子さん!!」
「んなこたわかってる!もう時間がねえッ!!」

激しく振るわれる右腕の攻撃を避け、甲板に着地した穣子は一喝する。
その頬にも樹皮のようなモノが付着している…穣子も、いや恐らくは、他の誰もが全員その事に気づいている。

飛び退く前に斬りつけていたのか、ミスティアの多段斬撃と共に紫電が走り、その右腕を使い物にならなくさせると、それまで祈るように精神を集中させていた早苗も攻撃へ移る。
この世界で「印術」と呼ばれる中でも、最高峰に位置する禁呪に姿を変えた彼女の「秘術」の一撃が、ついにそれを露わにさせた。

さらけ出された巨人の精髄。
その中心部にある、シウアンの姿を。

「ほむら、巨人の「心臓」の位置…わかる?」
「えっ」
「あいつの力が一番集中しているところ…多分そこが「心臓」だと思う。
あいつの動きを一時的にでも止めるには、そこをフルパワーでぶち抜くしかねえ!」

ほむらは注意深く、その瘴気の流れを探る。
もっともそれが集中する場所、脈打つように流れるその場所は…巨人の左胸。
頷いて矢を番えると、穣子は「上出来だ」と言わんばかりの顔でにっと笑う。

「私達が時間を稼ぐ!
止めはあんたに任せる、頼んだよほむら!!」

言うや否や、再び穣子は剣を構えて飛翔する。


♪BGM 「コネクト」/ClariS♪


の後姿を眺め、息を整え矢を番えると、そこに魔力を集中させながらほむらは、これまでに起こった事を思い出していた。

思えば、多くの出会いがあった。
自分が過去に巡ってきた、数多くの絶望に満ちたその繰り返しとは違うのだと、そう何処かで気づいていながらも…ずっと受け入れることを拒絶していたのかもしれない。
自分の中に渦巻くこの葛藤や苦しみを話す相手もなく、彼女は孤独だった。

何時しか、自分が守ろうとしていたその「大切な友達」とさえ、距離を置くようになってしまった。


しかし、今は違う。

樹海を共に旅した四人の仲間がいる。
いや、それだけじゃなく…旅の途中で出会い、あるいは旅路の中で新たに加わった仲間たちもいる。
そして…なによりも、元の世界には自分の変わった姿を見せたい人たちもいる。

自分でも驚くくらい、彼女は前向きに今の自分自身を受け入れられるようになっていた。
それは、樹海の獣王を制したその夜、早苗に自分の胸の内を吐きだせたからだろうか?


いや。
きっと、旅立つきっかけとなったその日…自分の思いをきちんと言葉にできたそのときから、萌芽した変化なのだろう。
だからこそ、今こうして、信じた友の為…信じてくれる友の為、この弓を引く事ができる。



「天翔け穿て、銀蛟雷上動。
今こそすべての想いを紡げ!!


展開される生命の樹。
そこにありとあらゆる世界から、彼女を取り巻くすべての絆が集い、矢へと集束されていく!

その力の大きさに、僅かに驚きたじろぐほむら。
しかし、気づけば大きな腕のオーラが添えられ、彼女を支えている…その姿は、キバガミ。

-臆するでないぞ、ほむら殿!
拙者を制したお主の力と想いは、この程度で押し潰されるほど弱くはあるまい!!-


そして、ぶれそうになる軌道は、魔法陣の中心から伸びる導線で目標へ導かれている。
傍らで同じように構える、魔法使いの少女は…魔理沙。

-今の私にできるのは、精々このくらいだなんて悔しいけどな。
これで、熱砂龍の事はチャラにしてくれよな!-

二人ばかりではない。
多くの想いがオーラとなり、その力を受け止めきれずにいる彼女の身体を支えている。

感謝の言葉を一言告げ、しっかりと狙いを定めるその背に、オーラが翼となって広がる…!


「“絆の煌矢(サギタ・ノードゥス)”!!」


閃光と共に放たれた矢が、巨人の左胸に大穴を空ける。
一瞬の出来事だった。

巨人は完全に動きを止め…爆発的に放たれた緑の瘴気が霧散する。


♪BGM 「君たちの冒険は終わった」♪

それとともに、巨体のいたるところから枯れた蔦とも樹の若枝ともつかないモノが無数に生えはじめ、その巨体を覆い始める。
巨人はゆっくりと、機能を失っていた筈の手をキツネノボタン号へ向かって差し出し始めた…その手の中には。

「シウアン!」

その姿に気づき、穣子はそこへ向けて舞いおりる。
そこに、まだ空中にいた3人と、気球艇にいたほむらも駆け寄ってくる。



巨人の姿を見守っていた諏訪子の身体の周囲にも、多くの蛍火が舞い始めた。
その光は渦を巻くように彼女の周囲を旋回すると、やがて巨人のいる辺りへ向けて飛び去っていった。

「これは…まさか」

それとともに、諏訪子が身体に感じていた違和感がなくなっている事を感じていた。
完全に癒えるまでまだ時間がいると思われた、深く残っていたそのダメージが癒されたことを、彼女は理解する。
そして。

「あいつら…やったんだな…。
わたしも…霊夢も…樹に変わったみんなも、これで…!」


眼を覚ました魔理沙の身体からも、樹皮のようなモノがすっかり消え去っていた。
起き上がる力こそなかったが、大粒の涙を流す彼女も呪いから解放されたのだ。

「ああ、そうだ!
今のあんたが動かぬ証拠だ!
やりやがったんだよあいつら!!」

諏訪子が思いっきりその体に飛びついた。
その光景を、こちらもその余波で回復したと思しきキバガミが、穏やかに微笑んで見守っている。



「魔力の乱れが収まっていく」

雲が晴れていく空を眺め、さとりが呟く。
そして、柔らかな微笑みを浮かべる。

「恐らく、この世界に眠る謎はこれですべて解決したわけではないでしょう。
ですが…それでも脅威が去ったことには変わりありません。
…それはそれとして、また忙しくなるやもしれませんが」

振り返り、手をかざすと一個のスキマが生まれる。
彼女は頷く。

「いずれはゆっくり、一人の冒険者として旅に来たいものです。
…今は叶わぬかも知れませんが」

ゆっくりとその姿がスキマへと消え、やがてそこには誰もいなくなった。



差し出された手の中で眠る少女を揺り動かすと、彼女はゆっくりと眼を空ける。
歓喜の表情を浮かべる少女達に、シウアンは微笑む。

「ありがとう、みんな!
私、みんなが来てくれるって信じてたよ!」
「言ったでしょ…私は元々神様なんだからさ。
でも、私一人じゃここまでできなかった。
ここにいる誰がいなくても、あんたを助けてはやれなかった」

穣子は泣き笑いのような表情で振り返る。

「全くよ。
そもそも止めを決めたのはほむらじゃない。
まあでも…それでもあんたとミスティアがいなければ、そこまでこぎつけられたか解らないしね」
「そうでもないよ、レミリアさんがあいつの攻撃を止めて、早苗がバックアップしてくれたおかげだよ。
…まあなんだその、誰か一人でもいなかったらここまで出来なかったよね

照れ笑いのミスティアに、レミリアも苦笑を隠せず「そうね」と相槌を打つ。

「それだけじゃない…今はこの場にいない諏訪子様やキバガミさん達がいなければ、そもそもここまでたどり着けなかったんだと思います。
この旅に関わった誰ひとりが欠けても、今の私達はいなかった
「そうだね。
さ、これで全部終わり…といいたいところだけど」

穣子はシウアンと顔を見合わせると、頷く。
そして気球艇は、姿を変えつつある巨人の足元へとゆっくり降下する…。



誰かがその名を呼ぶのが聞こえて、彼は幽かに目を空ける。
死んだのか生きているのか解らないその感覚の中で、少しずつ視界は開けていく…。

眼を空けた彼が最初に見たのは、満面に喜びの表情を露わにするシウアンだった。

「…!
良かった…バルドゥール!!」

助け出された黒衣の皇子を抱きしめ、全身で喜びを表現するシウアン。

気づけば、多くの者が彼を覗きこんでいて…その誰もが、彼の無事を喜んでいる。
中にはお互いに抱きあい、涙しつつその喜びを表現する者達すらいる。

しかし、そこにいたのは穣子達に、タルシスの兵士や帝国兵ばかりではない。
彼がこの計画の為、その命を犠牲にしようとしていたイクサビトやウロビト達の姿まであったのだ!
皆、戦いの終わりを知り、がれきに埋もれた彼を助けるべく、力を尽くしてくれたのだ。


バルドゥールは、ゆっくりと確かめるように自分の右腕を上げる。
そこには、彼を蝕んでいた「呪い」はなかった。
巨人が倒されたことにより、彼の呪いもまた、浄化されたのだ。


「もう…もう怖い事はしないでね?
そして、何だっていいから話して?
あなたはもう、孤独(ひとり)じゃない…みんなも、わたしも、一緒にいるから。
これからどうしたらいいのか考えようよ」


声を震わせ、訴えかける少女の姿に、眼を細める皇子。
その表情には険はなく、うっすらと空けた瞳は澄んでいる。

言葉を紡ごうにも、潰された喉にその力は残っていない。
彼は…その想いに突き動かされるまま、持ちあげた腕を彼女の頭まで持って行く。

その表情は、穏やかだった。



「これで、一件落着かな」

呟く穣子の表情は、どこか寂しげでさえあった。

異変が解決した以上、最早この世界で自分たちの成すべき事はなくなった。
それは、この過酷な、そして多くの出会いと思い出に彩られた旅路の終わりを意味する。


「ちょっとさみしいけど、私達はこれでお別れしなきゃならないんだね」
「そう…ですね」

早苗も寂しそうな声で相槌を打つ。

恐らく、この顛末を報告したら、見知った顔に暇乞いを告げなければならないだろう。
その事を考えると、少し気が重くすらあった。
しかし、始まりがあれば終わりもある。
未練があっても、自分たちには帰らねばならない場所…帰るべき場所はあるのだ。

その決意を固め、お互いに頷きあったそのときだった。

「お前ら、まさかこれで終わりだとかそんな事は考えてないだろうな?」

聞き覚えのある声がして、二人が振り返るとそこにはすっかり元気を取り戻したらしい諏訪子がいた。
鎧姿ではなく、それは現在の早苗と同じ…この地方特有の医術師の格好だ。

「す、諏訪子様!?
もう動かれても…」
「シウアンの奴が余計な気を利かせてくれたおかげで、この通りさ。
あんたも知ってるとは思うが早苗、この世界にはまだまだ巡るべき場所があるぞ。
…元の世界とは自由に行き来できるようになった。ゆっくり、向こうとこっちを行き来しながら少しずつ、この世界の謎を解いていきたいとは思わないかい?」

意味深な言葉を意味深な表情で投げかける諏訪子に、一瞬顔を見合わせる少女達だったが…。

「空気を読まなくて恐縮だけど、紅魔館がどうなってるか心配だし私は帰らせてもらうわ。
フランとパチェに任せとけば安心だけど…主に咲夜がどうなってることか」

残念そうな表情で、苦笑しながらレミリアは告げる。
まあそれはしゃあない、と苦笑で返す諏訪子や他の面々。

「そうね…レミィにはそういう事情があるけど」
「面白そうだよ!
私もうちょっと、この世界の謎を調べてみたい!」
「むー…今はてゐさんもいるし、私もお言葉に甘えさせてもらおうかなあ…」
「みんながいくなら、私も行ってもいい」

その言葉に、諏訪子は満足そうに笑う。


この不思議な冒険は、まだまだ続きそうである。