「あら珍しい。
最近はあなた達に任せられるような依頼もなくってねえ」
あえて驚いた様子で、肩をすくめてみせるママさんに苦笑するかごめ。
「確かに里帰りはちょくちょくしてるがなあ。
それでも週以上は明けたことないじゃん今のところ」
「最近知ったけど、あなた達の元居た世界も結構魔法技術が発達してるみたいね?
本当は気の遠くなるほど遠くの世界に住んでるくせに、まるで隣近所の様に行き来してるじゃない。
…まあ、あなた達が常連である事は変わらないけどさ」
そろそろ付き合いも長くなったと見えて、特に注文をすることなく、ママさんはかごめの表情から大体どんな品が所望かと読み取って、それをかけつけに出してくるのも見慣れた光景になりつつあった。
その品を置きつつ、ママさんもかごめの傍らに腰かける。
「………実を言うとね。
先日、ひとつだけあなた達を名指しで依頼が入ったのよ。
…でも、それがヘンな依頼で」
「絶界雲上域北東の果て、縛鎖より解き放たれし忌むべき者を討つべし」
「えっ」
かごめが、知りもしない筈のその依頼の内容を一言一句過たず言い放った事に、ママさんは絶句する。
「…それは確かに、あたし達がらみの「依頼」だよ。
しかし、律儀なこった。本当に依頼を出してくるとは」
「どうして…この依頼出されたの、つい昨日よ。
ウワサになる様なものでもないどころか、そもそも意味がわからな過ぎてどうしようか迷っていたのよ。
…依頼を預かる者として、あまり意味のわからない、しかも名指しの依頼なんて本来張り出したくはなかったのだけど…依頼人、それしか言わないし」
かごめは恐る恐るそれを差しだすママさんから、依頼書を受け取る。
そして、出された品物を一杯の葡萄酒諸共飲み下すと、かごめは代金を置いておもむろに立ち上がる。
「これは、落とし前なんだ…あたし達の。
やり遂げて戻ってきたら、そのとき説明するよ」
…
♪BGM 「Decretum」 梶浦 由紀(さやかのテーマ)♪
夢。
夢を見ている。
この一週間、ずっと自分を苛み続ける悪夢を。
「さとり…こいし…駄目だ、それ以上はッ…!」
絶望的な状況になりながらも、なおも退く事を忘れたかのように剣を構えるその姉妹の姿も…その目の前で無残に切り裂かれ…!
「うあああああああああああああああああああああああああああああッ!!!」
絶叫と共に跳ね起きる諏訪子。
まだ癒えきっていない全身の傷が、その衝撃できりきりと痛みを走らせ、諏訪子は苦悶の表情で前のめりになる。
荒い呼吸と震えの止まらない体。
彼女の心を支配していたのは、本来祟りを成す存在にありえないモノ。
「絶対の恐怖」。
その漆黒の竜は…彼女らがこれまで見た竜よりもありとあらゆる面で格上に見えた。
偉大なる赤竜よりも強靭な巨躯を持ち。
雷鳴と共に現れる者以上の威圧感と存在感を持ち。
氷嵐の支配者を凌駕する神々しさを放っていた。
竜の王ともなりうる資質。
しかし…この竜の放つ、その破壊と殺戮を好む残忍な気が、その総てを台無しにしていた。
「私の所為だ…わたしの…!」
彼女は頭を抱えてうずくまる。
諏訪子に恐れを抱かせたのは、その存在ではなかった。
自分の、勝算なき蛮勇に巻き込んで、他者を傷つけてしまった事。
彼女の心に刻み込まれた、絶対的な無力感…それが、彼女を苛む恐怖の正体。
「信じてくれたのに…!
ついてきてくれたのに…!
ごめん…ごめんよ…ゆるしてよお…!!」
声をかみ殺してすすり泣くその姿は、何よりも無力だった。
-続・狐尾幻想樹海紀行2-
その10 「その忌むべき者を討て!」
♪BGM 「Chaos Labyrinth」/伊藤賢治(ロマンシング サ・ガ ミンストレルソング)♪
かごめは、諏訪子たちの敗れたその地へとやって来ていた。
黒き竜は相変わらず、そこにいた。
しかし、いったい何がそれをそうさせているのか…その場から動こうとしてはいなかった。
今その姿をじかに目にしても、かごめの脳裏には一筋の光明も見えてこずにいる。
諏訪子たちの記憶から見たその戦闘能力と、今の自分達を重ね合わせても勝てる要素は全くと言っていいほど見えてこなかった。
「こういうときは正攻法しかあるまい」
怪訝な表情で覗き込む早苗。
かごめはその方向を見ることすらせず、続けて口にする。
「古来よりよく言うだろう…よく解らないときは、力づくだ、ってな。
ヤツの攻撃で参るより前に、こちらの火力で押し切る。
流石のあたしもこれしか考えつかん」
「ですが…そんな火力をどうやって」
「リリカとあたしで弱点を突けば、概ね二割は持っていける可能性がある。
問題は、まだ完全に解け切れていない結界に結び付いた、あいつのおぞましい気でこちらの動きを総て封じられるその瞬間。
そして…相手の頭がフリーになった時に打ち出されると思われるブレス。
コレのタイミングを見極めながらだ。
解っているだけでも、シビアなんてもんじゃねえぞこれ」
かごめは幾度となく振るった砲剣をひと振りする。
その瞬間だった。
かごめはにわかに、後頭部に強い衝撃を受ける。
なんだ、と誰何の声を上げるより前に、倒れ見える地面には頭縛りの方陣術式。
不意を突かれた彼女の意識が暗転する…!
「…相手が概ね何をやって来るかが分かれば十分だよ。
諏訪子の仇は…私が取るっ!」
何時の間に乗り込んでいたのだろうか。
そこには闘志を満面に見せる穣子の姿がある。
他にもミスティア、ポエット、それどころか寝ている筈のルーミアの姿さえ。
かごめを昏倒させた方陣は、間違いなくルーミアのものだろう。
「穣子さん…みすちー…しかもポエットにルーミアまで…。
どうして」
「あのチョーシこいてるまっ黒くろすけをぶちのめす役は、この私が貰うって言ってんの!
…ったく…ちょっと神社へ戻ってる隙にこの有様だよ…気づいたらもう大体はこの連中で解決しちゃってるしさあ」
やれやれ、という風に肩を竦める穣子。
そして、真剣な表情で黒き竜を睨みつける。
「…解ってるよ、どんだけ危険な相手か。
でも…こいつは…こいつだけは野放しにしておいてはいけない。
そして何より、こいつは私の大切な友達を傷つけた」
「チルノが…私に力をくれたんだ。
私の負った怪我を肩代わりして…あたいじゃ多分役に立てないから、あいつをやっつける為にはルーミアの力が必要になるから、って。
大切な友達を傷つけられたのに、誰よりも悔しい筈なのに…」
眼を伏せるルーミア。
「私が…早くあいつの力の秘密に気づいていれば…!
だから、あいつの自由は私が許さない。
今度こそ…うまくやって見せる!」
ん、と鷹揚に頷く穣子。
そして早苗へと向き直る。
「そういうわけだ、早苗。
あんたはどうする?
別にそいつが心配なら残ってもいいよ?」
早苗の言葉は決まっていた。
「行きます。
あなた達だけじゃ、危なっかしいじゃないですか…だから、私くらいは付いてかないと!」
「へっ、なーまいきな。
…頼りにしてるよ、早苗!」
同じように笑いながら頷くと、早苗と穣子を先頭に、少女達はその恐るべき竜の元へと飛翔する。
…
…
静葉「というわけで解説できる落伍者が増えて正直どうにもならなくなって来たわね」
レティ「おかげさんで私たちすっかり解説ポジに落ちついたわね。
…そのうち富樫&虎丸コンビみたいな言われかたされるのかしら」
静葉「ちょっとそれシャレになってないわねー…冗談でも止して頂戴」
レティ「それでもまったく出番のない幽香よりもマシよ。
それはさておき、今回はいよいよ最後の竜「冥闇に堕した者」が相手よ。
前回ログでも概要は少し触れたけど」
静葉「実はこいつも2回hageてるのよね。
レベル平均77くらいあってそれでもどうにもならないってことは、単純に戦略に問題がある、ってことなんでしょう?」
実際最初の時も行動補正とか、あと単純に防御面ね、問題があったのは。
わりと運恃みに近いという言語道断な構成ではあったけど」
レティ「速度補正以前に何か違う気がしなくもないけどねえ。
とりあえず攻撃とか見てみましょうか。いつものごとく公式ガイド&wikiからの引用ね」
冥闇に堕した者 弱点・耐性なし HP40000
冥闇の呪縛(依存なし) 全体全縛り+全強化消去、ただし冥闇に堕した者自身も頭ともう一か所を縛る
スーパーノヴァ(頭) 全体に無属性極大ダメージ(およそ1000前後)、必ず5倍数ターンに使用
デッドクロー(腕) ランダム対象3〜6回低命中斬属性攻撃、たまに即死させる
ブラッドブレード(腕) 全体に斬属性大ダメージ
雷旋風(脚) 一列に雷属性大ダメージ+呪い付与
煉獄翔(脚) 一列に炎属性ダメージ+混乱付与
氷礫破(脚) 一列に氷属性ダメージ+眠り付与
レティ「はい、相変わらずおかしいですね。
なんのバフデバフなしだと、スーパーノヴァ以外でも400〜500は受けるわね。
ほぼ一撃くらえば大体戦線が壊滅するレベル」
静葉「それも確かにアレだけど…前ログでも軽く触れたとおり、こいつの攻略の鍵になるのは冥闇の呪縛と、スーパーノヴァ。
このふたつへの対応が攻略の前提になるわね」
レティ「前提ですか」
静葉「大前提ね。
まずは開幕に必ず飛んでくる冥闇の呪縛。
これは全体の強化を総て打ち消した挙句、全個所縛りをしてくるというモノ。実は防ぐ手段がほぼないと言ってよく、こちらは最低でも2か所以上は確実に縛られるわ。全員三点縛り、も当たり前に起きるわよ。
厄介なことに、ストレッチのようなスキルでの縛り対策はほぼ無視されるし、耐性なんてあっても関係なく入るそうよ。さらに相手はこの技を最速で使用する」
レティ「確実にこっちの行動は阻害される、というわけね」
静葉「そういう事。
因みにこの技、開幕の他ダメージがHPの25%、50%、75%を超えた辺りでも1回ずつ確定で使用する。
この竜と戦うに当たり、最低でも4回は受けることになるわね。
ウワサによれば、スーパーノヴァのターンの次にも使うと言われるけど…そんな事はなかったわね今回」
レティ「そのスーパーノヴァもやるターンは決まってるのね。
5ターンごとにほぼこちらが耐えられない攻撃が飛んでくるってどういう事なのかと」
静葉「レベルと防御力次第なら防御で生き残ることは可能らしいけど…その後の攻撃をどう防ぐのかといわれるとまあ疑問よね。
ただ、救いがひとつある。
冥闇の呪縛は、何故か冥竜自身も縛るのよ。頭は確定、プラスもう一か所必ず縛る。
これも冥竜自身の耐性上昇とは無関係らしくて、特に頭は他の手段でもわりと容易に縛られるから、頭は耐性上昇しないというウワサもあるわ」
レティ「この辺りは前作のエルダードラゴンの焼き直しかしらね。
あれも各種縛り耐性だけは上昇しないという説もあるし」
静葉「脚と腕はその限りじゃないけどねこいつ。
でも、呪縛の効果でいくら耐性が上がっていても、律儀なことに必ず脚か腕も縛られるわ。
頭の縛り耐性非上昇に関してもあくまで噂だから、どうしても鍵になるスキルがある…ミスティックの解魔の札、もしくはそのスキルが得られる呪術の墨、どちらかは必ず必要になる。
頭縛りの耐性かなり低いみたいで、レベル70くらいまで育ったスナイパーのヘッドスナイプで簡単に縛りが入る…逆に、ノヴァのターンがもう一度巡ってくる頃に縛りが解除されててうわあああああ!!みたいな事象も多く報告されているみたいよ」
レティ「状態異常と縛りの最大持続は5ターンだからねえ…こちらの戦闘態勢の準備、相手の攻撃に対する対応、ターン管理、どれが欠けても戦う以前の問題ね」
静葉「そうね。
だからこいつの攻略は大まかに言えば、二つしかない。
相手の無力な時間の間に可及的速やかに戦闘態勢を整え、可能な限りのダメージを短時間に集中させるか。
もしくはターン管理・ダメージ管理を駆使して相手の行動パターンで徹底的にノヴァ発動を潰すか」
レティ「それやり方が違うだけで、結局コンスタントに短時間で大火力を生み出せるか否かが前提になるのね」
静葉「一応即死と石化は相変わらず通るんで、そっちの方での攻略法もあるにはあるわよ?」
レティ「それ攻略法以前の問題じゃないの」
静葉「まあヤケクソ手段は置いておくとして。
まず確定で初手は冥闇の呪縛。これに対応する形で、足の速いキャラにダンサーやメディックの縛りを解除させて、1ターン目からリカバリー系のスキルを使うと立ち直りが早いわ。
実は呪縛で相手が自分を縛るパターンも決まっていて、頭は確定と言ったけど初回と50%切った時は脚、25%と75%の時は腕を縛るの。
基本的にはノヴァ以外の攻撃、縛られてない方依存の攻撃を基本的に使って来るから、フリーになってる残り一か所を縛るとサンドバッグ状態になるわ。
確証はないんだけど…実は攻略時の行動を見る限り、呪縛で縛る予定の部位の攻撃はどうも使って来ないみたい」
レティ「えっ、どういうことよ?」
静葉「25%を切った時に直前で脚を縛ってたんだけど…そのとき呪縛でもう一か所、脚じゃなくて腕を縛ったのよ。
で、脚封じは呪縛の直後に解けたんだけど、何故か脚依存の三色攻撃ばかり乱発してね。
ひょっとすると、そういうパターンなのかもしれないわ」
レティ「へー。
そう言えばこの三色攻撃、実はSTR依存らしくて腕縛り解けるとダメージが倍以上に跳ね上がるみたいね」
静葉「実は一番面倒なの、これかもしれないわ。地味に回避もしてくるから、脚は常に縛っといた方が楽かも。
むしろ腕依存の攻撃は…まあ、即死ランダムとかあるけど基本的に斬属性だけ。つまり斬撃護符があるとかなりダメージを減らせるわね。
ブラッドブレードの破壊力は、なんのバフデバフもなしだと、ナイトシーカーやダンサーなんて一撃でズタズタにされるし…狐野郎はそれに気づいて、三色は足縛りと雲上竜鯉でなんとかして、とにかく徹底的に腕依存攻撃のダメージを減らすところに重点を置いて、それが功を奏したみたいね」
レティ「穣子ちゃんとみすちーが居るってことは、基本はリンクでかりがり削って行くのよね。
ヴァンガ必須だから起点の穣子が潰されたら、その時点でおじゃんですものね」
静葉「そういうこと。
因みに開幕を含めた呪縛のターンは、ミスティアがリカバリ踊って、彼女よりも足が速いルーミアがミスティアにテリアカαを使っているわ。そのあと1人が防御して、残り2りが後衛の早苗とルーミアにテリアカを投げる。これで次のターンに体勢を整えるわけ。
開幕でないならルーミアは常に脚封方陣を張りながらターンに突入するし、呪縛のターンに空いたところも縛れると美味しいわね。実際それで前述した不思議な現象が起きたわけだし」
レティ「方陣は強化じゃないからねー、羅刹もだけど。
耐性上昇は解除された後に発生するらしいから、本音言うとルーミア以外に解魔使える子がいたほうが良かった気がするわね」
静葉「その辺を考慮すると、回復役はサブミスティックのルナサの方が優秀だったかも知れないわ。
ただ、早苗がいるといないとでは、リンクの最大火力を引き出せないケースも多々あってね」
レティ「最後はお約束の電光石火から…っていうか、間違えてルーミアに防御させたのよね。
水溶液投げつけようとしたのミスって」
静葉「本当にアレは痛恨の凡ミスだったわね…頭は縛られるてる場合多いからね、こいつ」
レティ「前作のイカ野郎みたいねまるで」
…
…
「痛っ…!」
かごめが意識を取り戻した時、キツネノボタンの甲板には彼女一人しかいない…筈だった。
気づくと、誰かの膝の上に自分の頭があることに、気づいたかごめはゆっくりと上を振り向く。
そこには、困ったような表情で笑うほむらがいた。
「………なんだ、穣子のアホの気配を感じたと思ったら。
あんたもハブられちまったのか、もしかして」
ええ、と頷くほむら。
かごめは一度眼を閉じると、ゆっくりと起き上がる。
「…考えがなかったわけじゃなかったんだ。
多分、短いターンに大ダメージを稼ぎだすとすれば、あたしよりも継続的な火力を維持できるあいつのほうが適役じゃないかって。
でも…あいつの力は、それ単体だとたかが知れてる」
「ええ…穣子さんの力は、後に続くひとたちがあってこそ輝く力。
あのメンバーで行くって、それ以外考えつかないって…穣子さん自身が、あのメンバーを選んだ。
…私はただの見届人」
「そか、残念だったな。
本当は一緒に、戦いたかったんだろ?」
軽く頭をなでられ、ほむらは少し寂しそうな顔で俯く。
相変わらず言葉に出す事は少ないが、この旅路で彼女が穣子達と結んだ絆の重さは、これまで彼女を取り巻いてきた多くの絆にも匹敵する、強く濃いものになっていたに違いない。
「でも…ルーミアの力になら、託せると思ったから」
頷くかごめ。
「帰ってきたら文句の一つでも言ってやろうかと思ったが…もう何も言うまい。
あたしも信じてやるよ…あんたが、あいつを八つ裂きにして帰ってくるってな!」
…
♪BGM 「Save The World」/伊藤賢治(秘宝伝説Sa・Ga2 God of Destiny)♪
-ばかな…ばかな…ばかなっ!
この、偉大なる竜王となる我が!
このような小さき者どもに後れを取るかも知れないだとおおおおおおおお!!?-
全身へ無数に刻まれた深手から、そのおぞましき色の体液を撒き散らしながら、忌むべき竜は怒りと悲痛の綯交ぜになったような咆哮を発する。
強力な結界は竜の動きをいまだ制限し続けていたが、その強力さ故近づく彼女らにも多大な悪影響を及ぼす。
所謂「封じ」という形で彼女らの動きを阻害するが、これもミスティアを回復薬でいち早く解除できるようにすると、その呪歌でいち早く自分たちの制限を解除する。
それどころか…。
「言ったよね…もうあんたの好きには絶対させない!」
漆黒の翼を広げるルーミア。
彼女はその封印術式に介入するという荒技で、解けつつある封印が竜の自由を許す残りの部位を封じ、その行動を徹底的に阻害している。
それは、今までその一端しか解放されていなかった、彼女の本来持つ力でこそ可能な技であった。
それでもこの強靭な竜は、苦し紛れに繰り出すその漆黒の爪や刃翼で少女達を薙ぎ払い、吹き飛ばそうとするが…ポエットの防護の結界が致命打を許さない。
穣子は補助の呪法が解けるや否やそれを素早くかけ直し、同じようにして飛び出したミスティアとの連携攻撃で見る間にダメージを重ねていく。
(駄目だ…まだ足りないっ…!
もうひと押し、もうひと押しあれば!!)
その想いは、穣子だけが感じていたわけではなかった。
穣子のリンクは、ミスティアの多段斬撃と抜群の相性を誇る。
しかし…ミスティアの多段斬撃は、彼女自身完全にコントロールできているわけではなく、ムラが生じることが多い。
(穣子さんの力をマックスまで常時引き出せれば…!
でも…でもどうすれば…)
追いつめながらもギリギリのこの状況で、早苗は唇をかむ。
そのとき、脳裏に過る…何時か聞いた諏訪子の一言。
-早苗。
あんたが神様になるとしたら、間違いなく私や神奈子の力を、正式に継ぐことになる。
私達ができるような事は、焦らなくてもそのうちできるようになる…でも御神渡くらい、今のあんたでも十分起こせると思うよ-
手の中には、一枚のスペルカードがある。
それは、彼女自身が…諏訪子の技を真似て生み出したスペル。
生まれて間もない、未完成の技だった。
「…私は…この技に賭ける!!」
ミスティアの剣が空を切ったその瞬間だった。
スペルを発動させた足元から展開される方陣から、凄まじい冷気が噴出する!
「吹き荒れろ、諏訪の山風。
湖面を割って走れ、神の渡りし路よ!
秘儀「グレイシャルロード」ッ!!」
術式の発動とともに、黒き竜の足元へ氷の道が走る。
そして、その真下まで来ると十重二十重と砕けた氷の柱が間欠泉のように吹きあがり、その黒き巨体にさらなる傷を刻む!
-ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!-
それどころではない。
途切れた穣子の炎が、その氷の切っ先に反応して再び燃え上がる!
「これ…諏訪子の…まさか早苗、あんたが…!」
穣子は驚いたような表情で、遥か地上にいる早苗を見やる。
ぐっ、っと親指を立てて笑う早苗の姿に、穣子も破顔する。
「あと一撃…これで決めるよみんなッ!」
穣子の構えた剣が紅蓮の炎に包まれる。
その太刀が黒き竜の巨体に届く刹那、ポエットの放った白馬陣の力がさらなる加速を生み、巨体をひときわ深く抉る。
「これがっ…!」
「…私達の!」
そこへミスティアの黒い幻の刃が走り、追い打ちをかけるように早苗の起こした神渡の氷柱が迫り、融合する。
-ばかな、そんな馬鹿な事があああああああああ!!!-
慟哭にも近いおぞましき怒号が雲上域に響き渡る。
「あんたが天を掴む事はないッ!
この一撃が…この私達の力の結晶だああああああああああああ!!!」
穣子の一撃がその頭蓋を真っ二つに切り裂き、断末魔の如く暗黒の力が周囲に解き放たれた。
…
無限にも思えるその竜の体力も、少女達の猛攻を受け止めきることができず…ついに穣子達はその恐るべき竜を葬った。
その瞬間、竜の体躯は他の竜と同様分解を始め、巨大な黒真珠のような宝珠になる。
だが、おぞましい気があふれたその宝珠は、それに触れることが禁忌とも言える気配を放っている。
「…どうしよう、これ」
困ったように、振り返る穣子。
「お姉ちゃんが諏訪子から借りてたゲームでさ、倒したラスボスが巨大な卵に戻るんだけど…それも触ることできないからって最後は剣で壊しちゃうんだよね。
剣も、その卵の硬さで折れちゃうんだけど…なんかそんな感じするよね、これ」
「…エッグですか…確かに、リアルにエッグがあったらこん感じかもしれませんねえ…」
困ったように笑いながら、早苗も小首をかしげる。
そうこうしているうちに、宝珠はにわかに光り、そのまますぅっと大地へと吸い込まれて…この地に刻まれていた封印の紋様が一度発光すると、それきり何も起こらなかった。
-それで正解だ。
もしあの宝珠を手にしていたら、君たちはあいつに支配されていただろう。
そうしたら、もう助けることは…-
何処からか声が響く。
-…あいつは死んだわけじゃない…いずれ、またこの地に姿を見せるだろう。
だが、封印は成された。
ここから飛び立つことは、もうできない。
もうあいつの所為で人も僕たちも苦しまずに済む…本当にありがとう、異界の少女達。
君たちの雄姿と戦いぶりは僕たちの中で語り継がれるだろう!-
それきり、その声も聞こえなくなった。
穣子達は戦いの終わった事をさとると、その場を静かに後にする…。
…
…
静葉「というお話だったとさ。
これでとうとう、クエストとバーストフルコンプ。
けど全ノーマル撃破はもう4、5回はシウアンのところへ行ってる筈なんだけど、なかなか取れないわね」
レティ「アレも正確にはどのくらい、って指標がないのがね。
もう平均レベルも平均レベルだし、大体どんな組み合わせで行っても普通に勝てるしね。
かごめとリリカがいるだけでそろそろ撃破10ターン切れるんじゃないかしら」
静葉「まああの連中ならねー。
そして、残る大物は6層ボスね」
レティ「正確に言うと第六迷宮ボスね。
これもどのくらい時間がかかる事やら、諏訪子のフラグも何処かで回収するんだろうし」
静葉「それはまあ次回辺りで」
レティ「( ̄□ ̄;)早っ!!」
静葉「というわけで、最後に挑んだ時の装備とスキルを軽く紹介しておくわね。
レベル高過ぎだろ! という方も多いでしょうけど、まあこのログでは低レベル縛りとかそういうのしてないしね。
なんかの参考程度になれば幸いだわ」
レティ「それじゃあ、今回はこれで」
穣子(ソードマン/ルーンマスター)
剣士の心得(★1) 剣士の極意(★1) 剣士の悟り(★1)
ソニックレイド(3) リンクフレイム(7) リンクフリーズ(6) リンクサンダー(6)
ヴァンガード(★6) 先駆けの功名(★8) リンクプラス(★8) リンクマスタリ(★6)
物理攻撃ブースト(★8) ソードブレイカー(★6) 攻防一体(5)
鉱物学(★1)
ルーンの輝き(2) ルーンの盾(☆2) ルーンの導き(☆3)
TPブースト(☆4) TPカット(☆3) 属性攻撃ブースト(1)
備考:ラストエストックはATC×4
ミスティア(ダンサー/ナイトシーカー)
踊り子の心得(★1) 踊り子の極意(★1) 踊り子の悟り(★1)
リジェネワルツ(3) リフレッシュワルツ(★4) リカバリワルツ(★4)
アタックタンゴ(3) ガードタンゴ(1) エナジータンゴ(2) ビートダンス(3)
カウンターサンバ(3) チェイスサンバ(★8) クイックステップ(★4)
扇の舞(★10) 剣の舞(★10) 霞の舞(★8) バーストセーブ(1) ダンスマスタリ(★8)
樹木学(★1)
アイスブラッシュ(1) ハイドクローク(☆2) スプレッドスロー(☆2) 盲目の投刃(☆3)
追影の刃(☆3) 先制クローク(☆2) 先制スプレッド(1)
備考:カラドボルグはATC×4
ポエット(フォートレス/ソードマン)
城塞騎士の心得(★1) 城塞騎士の極意(★1) 城塞騎士の悟り(★1)
ディバイドガード(3) ラインディバイド(3) オールディバイド(3) ディバイドモード(2) ガードマスタリ(★8)
ヒールウォール(4) 騎士の加護(★6) 聖なる加護(★4)
防御陣形(3) 防御陣形U(3) 挑発(★4) 先制挑発(★4) ランパート(★6)
鉱物学(★1) HPブースト(★10) 物理防御ブースト・フォートレス(6)
ソニックレイド(1) パワーブレイク(☆3) マインドブレイク(☆3) ヴァンガード(1)
ソードブレイカー(☆3) 物理防御ブースト・ソードマン(☆4)
備考:真竜の剣の空きスロはATC×3、残り3つは空き
ルーミア(スナイパー/ミスティック)
狙撃手の心得(★1) 狙撃手の極意(★1) 狙撃手の悟り(★1)
レッグスナイプ(3) アームスナイプ(4) ヘッドスナイプ(5) チェイスバインド(★8)
ロングショット(3) フランクショット(2) フルメタルアロー(2) シルバーアロー(2)
スコールショット(5) ロックオン(3) カモフラージュ(2)
正鵠の明(5) 物理攻撃ブースト・スナイパー(★8)
樹木学(★1) 鑑定眼(★1) 警戒伝令(3) スカベンジャー(2)
腕封の方陣(☆4) 脚封の方陣(☆4) 頭封の方陣(3) 解魔の札(☆2)
陣回復(☆3) 退魔の霧(☆3) TPリターン(☆3) 抑制ブースト(☆5)
地脈操作(☆2) 回復歩行(1)
備考:ザミエルボウの空きスロはATC×2
早苗(メディック/ルーンマスター)
医術師の心得(★1) 医術師の極意(★1) 医術師の悟り(★1)
ヒーリング(3) ラインヒール(3) フルヒーリング(2) パーティヒール(3) リザレクト(4)
リフレッシュ(★6) リカバリー(★6)
オートヒール(3) オートリザレクト(1) ヒールマスタリ(★8) ストレッチ(1)
薬草学(★1) 戦後手当(1) 危険食材の知識(★1) TPブースト・メディック(1)
炎の聖印(☆3) 氷の聖印(☆3) 雷の聖印(☆3) ルーンの輝き(2)
氷槍の印術(2) 雷撃の印術(2) 稲妻の印術(1) 凍牙の印術(☆4) 吹雪の大印術(1) 始原の印術(☆4)
TPブースト・ルーンマスター(☆4) TPカット(☆3) 属性攻撃ブースト(☆4) 印術マスタリ(☆4)
備考:鬼面金剛杵の空きスロはELM×2