「ああんもうかごめちゃん一体何考えてやがるのよ!
ぶっちゃけあの番台のクソガ…女の子全く交渉もへったくれもないってのに!!」
「そういうのまで全部マルナゲにしようとしてもかごめさんがヘソ曲げるだけじゃない…てか先輩めっちゃ本音出てましたよ。
だけど、流石にちょっとこればかりは」

酒場から戻らぬかごめに不審なものを感じ、彼女たち一行がクワシルから「かごめが人捜しに行った」と聞きつけたのはそれから二時間ほど経ってからのことだった。
未だ戻らぬ薬師見習い・ビルギッタが向かったという採集地への地図をひったくるようにして、佐裕理と葉菜、それから半歩遅れる格好でアンナとるりも続く。

そして、昼に山羊を放牧した草原を超え、山峡の開けた場所まで辿り着いた一行は信じられない光景を目にすることになる。


錆びた金属と肉の匂いがない交ぜになったわずかな臭気、切り刻まれた筋肉質の巨大な虫めいた魔物の死骸、その傍らにはたして、かごめは居た。
彼女の腕の中には、ひとりの少女が介抱されている。


「…っ!
かごめちゃんこれ、一体どういうことよ!?」
「おー、なんだあんた達も来たのか。
まあ、あの腹黒ジジイ何考えてるんだか…普通他のモンへすぐ伝えに行くだろうがよ。
別にひとりでも余裕ではあったが」

軽口でそういうかごめであるが、左の肩口は魔物の一撃を受けているのか、大きく切り裂かれている。
腕の中の少女も、何処かを打ったのだろうかぐったりとしたまま起きる気配がない…。

「馬鹿言ってんじゃないわよ!
診せて、すぐに治療するから」

溜息を吐いて差し出された腕を、憤然とした表情のまま葉菜が治療に掛かる一方、動かぬ少女をるりが抱える。

「…この子も、気を失ってるだけみたいね」

言うやいなや、軽口を叩くかごめに葉菜が平手打ちを食わせると同時にるりは少女に気付けの一撃を加える。
泣き出さんばかりの葉菜を宥めながらも、かごめは咳き込む少女の元へと歩み寄ってくる。




「気がついたみたいだな。
ビルギッタ、ってあんたのことでいいのか?
「あ、はい…あっ、えっと、すいません、助けて頂いて…!?
大変、あなたも怪我を!」

葉菜からの一撃をもらった頬を指さして驚く少女…ビルギッタに、かごめは苦笑しながら頭を振る。

「あー、その、多分コイツはあまり大したことは無いというかな。
そいつはおいとこう、クワシルとか言うふざけた親父にいわれてあんたを探しに来たんでな」

そうだったんですか、と申し訳なさそうに目を伏せるビルギッタは…次の瞬間、顔色を変えて辺りを見回す。




「…そ、そんなっ…ライカ…!」
「なんだ?
あんたの連れか?」
「あ…は、はいっ私にとって妹みたいな存在で…!
確かに難しい依頼ではあったけど、危険はそんな無いと思って連れてきたのに…!!」

かごめは今にも駆け出さんばかりのビルギッタを制して、見守る面々に無言で視線を送る。
それを受けた葉菜が…むっとした表情のまま告げる。

「どうせ探しに行く…って言い出すんでしょ。
あなた一人で行く気なら、今度はぶん殴ってでも止めるわよ」
「いやー解ってるってそんなに何遍もビンタ食らう案件増やすほどあたしもマゾじゃないし」
「なんか違いませんそういうの?
…確かに、ちょっと放っておけないかな。けど、多分ライカって子」

呆れたように溜息を吐き、佐裕理は森へ続く草むらの一角を指さす。
そこはなにかが、パニックになって押し通っていったようになぎ倒されているのが見て取れた。
それを見て、腕組みしたままるりが呟く。

人間…じゃないわね。
サイズからすれば、犬…大型犬かしら

あ、はいっ…ライカは、犬なんです。
頭が良いけど、ちょっと臆病だから…森にいる魔物には、やられてないと思いたいんですが…」
「それも何処まで当てになるかわからんしな。
時間的にはそう遠くまで行ってないだろ、じゃあ、行くか

かごめの言葉があまりにも予想外だったのだろう、ビルギッタは目を丸くする。

「あんたの大切な妹分だろう?
見殺しには出来まい、探してきてあげるよ」
「へっ…あ、ありがとうございます!
でしたら、私も一緒に連れて行ってください!
その…戦闘は出来ないからお邪魔になるかも知れないけど…見習いでも薬師なので、お怪我したら治すぐらいのことは出来ますから…!

再び五人は顔を見回し、そして頷く。

「そうね。
犬だと解っても、それが魔物かライカちゃんかわかんないし私達は
「そういうことだな。
そいじゃ、行くか」

よろしくおねがいします、と頭を下げる薬師見習いの少女を引き連れ…一行は、夜の森を進む。






そして…ライカのつけただろう足跡を辿っていった先に、一行は巨大な遺跡を見いだした。
かごめは、傍らのビルギッタへ視線を送る。

その意味するところを察したのだろう、彼女はふるふると首を振る。

「こんな遺跡があったなんて…最初にマギニアがこの地へ降り立って以降も、この辺りはほとんど探索されていなかったですから…」
「マギニアが停泊してるのはこの区画のはずだろ?
確か探索が始まってもう一年以上経つはずだが」
「この区画…あ、えっと、このレムリアが断層によって、エリアが区切られていることは御存じですか?
マギニアが始めに降り立った、ということでこの区画は「はじまり島」と呼ばれてるんです。
この次の区画である「幽寂ノ孤島」には偶然往き道が見つかって、司令部の認可を受けた冒険者さん達は、ほぼそちらを探索しているんです

「つまりこんなもんがあるとか誰も知らなかったと。
灯台下暗しとは良く言ったもんだ」

かごめはそう言いながら、遺跡へと歩き出していく。

「足跡は明らかにこっちへ続いてる。
行くしか、ないみたいだね」
「えっ行くってかごめさん、私達迷宮の地図なんて持ってないからどこに居るかとかそんなの全くわかんな」

これ以上の探索に尻込みして、逃げを打とうとするアンナの制止を遮り、ビルギッタは恐る恐るといった感じでかごめへ一巻きの巻物を手渡す…。




「あ、あの、地図をお持ちでないんだったら…これ。
わ、私予備にもう1本持ってますから」
「…ありがと、助かるよ」

ふっと笑うかごめが、がっしりと肩を掴みつつアンナへそれを押しつける。

「死にたくなかったらしっかり地図を描け解ったな。
途中で逃げたら地獄の果てまで貴様を追い詰めて惨たらしく【編集済】( #^ω^)」
「アッハイ」

魂が抜けたような表情のアンナを、苦笑するるりが促し…一行は謎の遺跡へと足を踏み入れる。



~新・狐尾幻想樹海紀行X~
その2 東土ノ霊堂




♪BGM 「イブの時代っ!」♪

一舞「やっほー! みんな元気してる?
  ここからはこのイブ様が解説してやるから心して聞いてくし!」
めう「(頭にたんこぶ)うみゅみゅ…めうはなーんも悪いことしてないのにこの仕打ちはあんまりめう><」
一舞「黙れ(キリッ
  っと、今回はアレだね、いよいよ本格的な遺跡探索になるよ。
  最初のほうでつぐみが言ってたけど、今回は従来のシリーズに比べて倍以上の迷宮もあるし、基本巻き進行でいっちゃうよ!」
めう「今回は本当にボスラッシュめう。
  というより、最初の迷宮でFOEよりも先にボスが出るとかなかなか無いことなのだ」
一舞「いちおー、SSQだとボス戦がFOEより先にあった気がするけどね。
  まあそこはいいでしょ、最初の迷宮と言うこともあって、フロアはひとつだけ。
  ビルギッタ、っていう子を探しに来ただけの依頼なのに、彼女が探しているライカ、って子を探していたらここに来ちゃった、っていう流れなんだよね」
めう「ほんとーなら「ライカを探してクエストクリア」「マギニア司令部に新迷宮発見の報告」「いつもの地図書きミッション受領」…なんだけどー、ここでは物語の展開上進行にアレンジが加わるめう。
  そしてどうもここで、肝心なことをバラす予定でいるみたいめう」
一舞「あたし達の話も棚上げになったまま進んでるしね。
  で、最初の迷宮は「東土ノ霊堂」。
  ボス戦が存在するけどFOEがいない、小迷宮程度の規模だけど一応ここが第一迷宮の括りになってるよ。
  で、ここに入ってすぐのところで、ビルギッタから地図をもらう事も選択できるけど」
めう「一応あとで強制的に渡されるとはいえ、なかなかルナティックなのでさっさともらう方が良いめう」
一舞「魔物はビルギッタのクエストでも登場するマッシブーn…もといマッスルフライ、そしてヤギのクエストに登場した肉食コアラに加えて、霧吹きスカンクとアードウルフっていうモンスターが出現するね」
めう「マッシブブンさんは蚊がモチーフのポケモンだけど、マッスルさんは一応ハエだと思うめう」
一舞「そういうどうでもいいことはよろしい(キリッ」
めう「そのマッスルさんは実際危険なタックルで前衛をぶっ飛ばしに来るめう。
  さらにー、スカンクは世界樹名物毒吹きアゲハさんの代わりに、世界樹の毒の恐ろしさをいきなり思い知らせてくるめう。
  どっちも紙装甲だったりHPが低かったりすると一気に持ってかれるめう…なんまんまいだめう…><」
一舞「ほんとだよねー。
  毒吹きアゲハなんて、その鬼畜ぶりを知らしめた無印や2だと、大体2階から通常出現なんだけど…今回は最初の迷宮からいきなり、スカンクが通常の魔物としてじゃんじゃん出現するもんねー。
  だけどこのスカンク、物理攻撃でトドメを刺すと条件ドロップを落として、それが三色オイルの素材になるんだよっ」
めう「プリだのゾディだののいないPTでは実際重宝するオイルのために頑張って狩るめう。
  特に序盤はTPがカツカツになりやすく、通常攻撃で弱点を突きやすくなるオイルは対強敵用に実際有用なんだめう!
  …んでいぶぶ、
CV照井晴佳さんは」




一舞「そのけもフレ民のトラウマ抉る発言やめえ(#^ω^)
  アードウルフねえ…けもフレの解説知ってる人も多いと思うけど、本来は昆虫食性の大人しい生き物なんだよ。
  それがなんで世界樹世界だと、たっかい攻撃力から貫通攻撃で前後衛一気に薙ぎ払ってく凶暴生物になるんだか」
めう「いわゆるヤマネコポジションめう。
  氷には弱いけど、HPも他の魔物の倍、220ぐらいあるからきちんと防御を固めながらゆっくり対応するめう。
  …フロアが進むと複数体出てくる件については知らんめう(キリッ」




一舞「ここでも特筆べきフロアイベントはいくつかあるけど、注意が必要なのはそのアードウルフと強制戦闘するイベントと、くっさい水を被るイベントだね。
  被ったメンバーの装備を外すかどうかの選択があるんだけど」
めう「発売前ニコ生でファユム(村瀬歩)がわざわざ全員の装備を外していたけど、実は対象になった3りだけでいいめう。
  ちゃんと地の文=サンもそう言ってためう。
  ちなみに装備を外すとコアラ3匹から奇襲食らって危険がアブナイめう!」
一舞「かごめさん達は装備を外さないで行ったけど、そうすると対象3人がほぼHP・TPを空にされるものの3歩移動するとそれ以上何も起こらず終わるんだ。
  ちなみにその近くの区画にキノコを食べるミニイベントがあって、このイベントで瀕死状態になっても一気に回復もできるね」




めう「逆にやると地獄の宴めう(・ω・)
  ちなみに脱臭に酢が効く、という話が台詞で出てくるけど、本当のことめう」
一舞「で、アードウルフはその前に、ひび割れた壁に潜んでいた「匂いを放つ魔物」と戦うか追っ払うかのミニイベントがあって、その後に戦うことになるね。
  ひび割れた壁のところで「棒で突っつく」だと霧吹きスカンク×2と戦闘、「壁を蹴り飛ばす」だと、戦う事なくイベント終了だよ」




めう「かごめ閣下が蹴って追っ払ったんだめうな(目を逸らす
一舞「うんまあ…かごめさんだからね(目を逸らす
  で、アードウルフはアンナさんが吹っ飛ばされたけどこちらも最後はかごめさんがナマス斬りにしてたよね。
  …明夜じゃないけど、まあ確かにハイ・ラガードのことを考えるとねえ(後ろの気配を敢えて無視する」
めう「それ以上リサリサ=センセイのトラウマを抉るのは止めるめう(震え声
  というわけでー、フロア左側重点捜索すると先の区画へ行く扉の前で、無事ライカに再会できるめう。
  本当ならここで一端帰還…めうけども」










「ライカっ!!」

迷宮の奥まったフロア、魔物とは異なる影が物陰から飛び出し、尻尾を振りながらこちらへ向かってくるのが見える。
ビルギッタはその正体に気づいて、同じようにその名前を叫びながら駆け出し、その影を抱きしめた。

ビルギッタと然程、サイズの変わらない程の大型犬が、主人と再会できたのが余程うれしいのか、千切れんばかりに尻尾を振っている…が、すぐに彼女は、ナニカの気配を感じ取ってビルギッタの影に隠れようとする…。
それと同時に、刺激を伴う腐臭があたりに漂い始め…一行は顔をしかめる。

あ…あの…臭いです、よね?
「そうね。
苦手なのよね、こういうクレゾール系の刺激臭」

しかし…るりは軽口で答えながらも、槍を一閃して構えを取る。
かごめは既に抜刀の体勢を取り、威嚇の剣気を既に前方へ放ち始めていた。

「かごめちゃん、これって」
何か来るな。
ビルギッタ、その子と一緒に少し下がってな。
普段の装備なら多分大したことない相手だろうが」

佐裕理もその傍らに立ち、視線を送る。
かごめが頷くと同時に、先にライカが飛び出してきた区画から巨大な影が刺激臭と共に踊り出す!!




♪BGM 「バトル2」(FINAL FANTASY Ⅳ)♪

名状しがたい金切り声を上げ、赤い蕾のような頭を持つ植物の魔物が、巨大な蔦触手を振り上げ立ちはだかる!

ひぃいいいいいいいいいいいなんでこんなところにボス級の魔物があああああああああああああああああ!!?∑( ̄□ ̄;)
「本当にそれよ!
なんでFOEより先にこんな奴が出てくんのよ、聞いてないわそんなの!?」
「四の五の言ってる場合じゃねえ、とっとと始末するよ!
先輩はビルギッタの面倒を!
そこの馬鹿アンナは炎星術を撃て、るりはそいつを直接あいつの体内にぶち込んでやれ!!」
「りょーうかーい!」
「うええええええええええええそそそんなこといったってー!!><」

わめくアンナの尻を葉菜が蹴飛ばすと同時、振り回される蔦触手の1本を佐裕理が受け止め、間髪入れずかごめがそれを斬り飛ばす。

「早く炎撃ちなさいよこのスットコ三つ編み!
先にあんたのドタマに風穴開けるわよっ!!」
うええええええええんちくしょうどおにでもなれええええええええええええ!!><

ヤケクソになったアンナも巨大火球を投げつけ、それを受け止めたるりが紅蓮の穂先を花獣の胴体へねじ込み、体内で大爆発を起こさせる。
かなりのダメージを与えたことは確かだろうが、それでもなおも花獣は、名状しがたい咆哮と共に刺激臭の花粉をめちゃくちゃに撒き散らし始めたではないか!

追撃に斬りかかろうとしたかごめはそれをもろに受け、バックステップでその範囲内から逃れると同時に膝を突いて激しく嘔吐く。

「げぼ、げほッ…っんの野郎っ…!」

猛毒を受けたのか、真っ青な顔で膝をつく彼女の元へ葉菜が駆け寄り、治療に掛かる。
それを狙う蔦触手を受け止めながら、佐裕理がかごめに次の指示を仰ごうと振り向く。

「悪ぃ、ちと油断した」
「…まだ、大丈夫ね。
どうするのかごめちゃん?」

かごめは震える足を叱咤して立つと、ゆっくり抜刀術の体勢を取る。

「くっそ、あの花粉火力系に影響するデバフだな…手先シビれて力入れにくい。
るりと協力して、アンナの星術であいつを後ろ向かせて。そこを叩き斬ってやる」
「わかったわ。
るりちゃん!」
「オッケー聞こえてるわ、任せといて!
ほら馬鹿アンナ、ちゃんと星術撃たないとあとでかごめちゃんの制裁が来るわよ!!」

手負いになって凶暴化した花獣の蔦触手を半べそで逃げ回りながら、アンナはヤケになったような絶叫と共に火球を打ち出し、それを先回りしたるりが花獣の頭や先の傷口へと槍の穂先で器用に射線を変えさせる。
そして、るりを狙う蔦触手を、強引にそらさせる佐裕理…それによって、無防備な花獣の背がかごめの方を向いた!

「かごめちゃん!」
「問題ない、コイツで終いだ!!
チェストオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

かごめのダメージを気付け薬で癒やしていた葉菜が飛び退くと同時に、かごめは鞘に収めたままの刀を大上段に振りかぶると、そのまま大地を蹴って猛然と花獣の背へ迫る!


次の瞬間。
その抜刀のタイミングさえ、誰にも捉えられずに抜き放たれた刃を煌めかせ、かごめがるりと佐裕理の間に着地すると…断末魔の悲鳴を上げることなく真っ二つに切り裂かれ、まるで血のような赤い樹液を撒き散らしながら、魔物はその場へ崩れ落ちた…。




「すごい…!」

その瞬く間の出来事に、ビルギッタは呆然と呟く。

恐らくは初めて見るだろう強力な魔獣を、見事なチームワークで一切の犠牲も払うことなく、彼女たちは制して見せた。
ビルギッタは見習いとして、いくつかの冒険者と行動を共にさせてもらうことがあったが…「雨虎」と名乗った彼女らは、そのいずれにも比べられぬほど強力な冒険者集団…否。

「そうだ、狐尾…!
狐尾の皆さんも…こうやって」
「知ってるの、あなた私達のこ…あっ!」

驚いた葉菜が口を押さえる。
困惑するビルギッタは、葉菜とかごめを交互に眺め…かごめが溜息を吐いたそのときだった。




-きみたちも、あのこたちのなかまなんだね。
あのこたちといっしょで…やさしくて、ゆうかんなんだね-



「誰だ?」

周囲を見回し、恐らくはビルギッタ以外がその声を聞いているのだろうことを確認し、かごめは誰何する。


-あのこたちも、ヒトじゃないこをたすけてた。
あなたたちも…それがヒトでも、たすけるの?-



険しく虚空を見やるかごめの声に応えることなく…その声は、聞こえなくなった。








一舞「というわけで、ボスの紹介行ってみよーっ!」


東土ノ迷宮ボス 大いなる花獣
レベル4 HP2863 斬・炎属性弱点/即死無効、眠り・盲目・脚封じに弱い
頭/腕/脚絡みのツタ(腕) 近接一列壊攻撃、それぞれ頭封じ/腕封じ/脚封じを付与
怪しい花粉(頭) 全体に毒を付与+3ターンの間全ての攻撃力を低下(与ダメ50%程度低下)


めう「ひかえめにいってミタ・メ・ビオランテめう
一舞「まーそれはきっと誰もが思うよね、わかるし…っていうかMOTHERシリーズのタコシリーズとかそっちの方が解りづらいし。
  最初のボスだけあって然程攻撃力は高くないよ、アードウルフどころかマッスルフライのタックルのほうが痛いまであるね。
  けどコイツが厄介なのは、ほぼ毎ターン使ってくるツタの縛り付与、そしてHPが少なくなってくると4ターン程度おきに使い始める怪しい花粉。
  毒の付与率はそこまで高いわけでもないようだけど、兎に角物理も属性も攻撃力が下げられちゃうんだし」
めう「火力ダウン系デバフはやっかいめう。
  テンポががっつり狂わされるのはモチのロン、TPに対して火力が出せないから息切れするめう」
一舞「そうそう、それだよねー。
  一応、プリンスやプリンセスがいるなら、攻撃の号令で打ち消せるけど」
めう「忘れられがちだけど、実はゾディのエーテルの輝きでも打ち消しできるめう。
  実際最後はアンナナがエーテルの輝きで打ち消しためう」
一舞「意外と盲点だと思うんだよねー、それ。
  んまあ、号令のほうがコストが安いっていうのもあるからなかなかね。
  それにエーテルは物理には乗らないからあまりかごめさん達には普段必要ないしね」
めう「閣下はブシドーなので何気に卸し焔とかには乗るめう。
  あと、三色オイルが付与されてるなら通常攻撃にも何気に乗るめう
一舞「あ、そ、そうなんだ…(マジでかそれ)」
めう「実際レベル1でも撃破した報告がいくつもあるけど、基本的にはレベル4くらいで挑むのが適正めう。
  このパーティは炎属性の他にも、強力な刀技を使う閣下がいるので楽勝めう」
一舞「今回もレベル4で挑んで、わりと楽勝だったし。
  かごめさん達の装備とスキルは、こんな感じだよ」












めう「実は4形式のステータス画面だから写真一枚で済むのがラクチンめう(*´ω`*)」
一舞「まーねー。
  基本はかごめさんが構えて、強力な空刃で斬っていくのをアンナさんの星術にるりさんのインボルブを合わせてく感じだよ。
  実はまだテリアカαもバインドリカバリも未解禁だから、腕封じは自然回復を待つしか無いんだけどね」
めう「あとはもうさゆゆがフロントガードしてるだけで防御はばっちりなんだめう。
  最後は閣下が一閃でばっさり斬り捨ててゲームセットめう」
一舞「というわけで、これでミッション終了。
  次の迷宮から、フロアも大幅に増加して長丁場になっていくんだしっ」
めう「しつこいようだけど道中は結構端折っていく予定めう。
  小迷宮とかはまあ…面白そうな話なら取り扱うし、そうでなかったら多分めう達でさっと片付けて終わるかも知れないめう。
  おつぎはー」
一舞「物語的には少し、真相に迫るとか迫らないとかそんな感じに引いて終わりだね。
  じゃ、今回はここまで!またねー♪」








~湖の貴婦人亭~



「本日定休日でーす」

かごめ「おいそこの葉菜先輩、これ一体どういうことなのか説明してもらえるんだろうな?(イラッ」
葉菜「もーこの子昨日からこの調子なのよ。
  他の人居ないのかといえばこの有様だし、正直どうしてみようもないからあなたを呼びに行ったらあの有様だし…」
かごめ「ったくもーあんたらマジでそういうとこ役立たねえなあ。
   おい嬢ちゃんこっちは客だ、大体定休日の札出てねえだろ起きて仕事しろ!
少女「えーやだーめんどくs
ネコ「
フシャー!!!!(φωφ)

少女の頭に乗った猫はみだれひっかきの構え!!




少女「ぎゃわああああああああ!!?∑( ̄□ ̄;)
  わかった、わかったマーリンさん!
  開店、今から開店しまーすー!!><」



~少女交渉中~


「にしても葉菜さん、失言にも程があるわよ正直。
あの子は黙っててくれるとは言ったけど、クワシルの親父結構クセモノだわ本当。
あいつとか本当は私達、というかかごめちゃんのこと知ってる感じするわよ?

かごめが番台の少女…ヴィヴィアンといろいろな交渉を行っているのを傍目で眺めながら、渋い顔のるりは葉菜に言う。
バツの悪そうに頭を掻きながら、葉菜も返す。

「あーもう、失言でしたってば。
こういうときこそ本当、倉野川でかごめちゃんがどっかから持ってきた記憶処理剤とかあれば便利なんでしょうけどねー」
「まあそれはなるようにしかならないと思うし…それより、迷宮の件はどうするの?
マスターは私達が直接行ってこい、の一点張りだし」

はっ、とるりは忌々しげに吐き捨てる。

「もー間違いなくあのジジイ完全に一枚かんでるわね。
ったく、本当にあの子達マジで何しでかしてくれたのよ。
来て早々異世界でブタ箱送りとか勘弁して欲しいんだけど」
「うーん…これ今回の新迷宮発見の件でどうにか猶予期間でももらえないかなーって」

困り顔の佐裕理の一言に、なおもるりが返そうとしたとき…かごめが戻ってきて告げる。

「よっし、交渉済んだぞ。
向こう半年、部屋を一つ借りれることができた。
その代わり、一週間後にまず最初の一ヶ月分をまとめて払え、とさ」
「さっすがかごめさん手際の良いことで」

佐裕理とハイタッチを交わすかごめの視線の先、どんよりと暗い表情のアンナが膨れ面で毒づく。

「んなの…どうせじき私達捕まって終わりでしょ。
嫌ならさっさと逃げる算段しましょうよ。
もう最悪だわ…いっつも私貧乏くじ引かされるのに巻き添え食らって」

かごめは嘆息すると、アンナに一通の手紙を叩き付けるように宛がう。
そして、不満げに見つめ直す彼女へ、読んでみろとばかりにかごめは顎をしゃくる。

果たして、その内容とは…。

-彼女ら「雨虎」は私の信任を受けて送りし冒険者である。
「狐尾」の一件については我が不徳の致すところであり、孰れ日を選び、直接出向き謝罪を申し述べたく思う。
だが、そのために「雨虎」ならびにタルシスから送られた他の冒険者達へ、あらぬ疑いの目を向けぬよう願いたい。
賢明なるペルセフォネ殿なればそのような事をなさらぬと信ずるが、もし根拠無き嫌疑により彼らが不利益を被る事あれば、我が主・バルドゥール以下勇猛なる帝国騎士達も是非に及ぶこと辞さぬであろう。-


「かごめちゃん、これ…!」

目を丸くする葉菜に、かごめはニッと笑って答える。

胡散臭いジジイだが、クワシルは…否、恐らくミュラーを筆頭とするマギニア上層部も、恐らく連中の行動に何らかの事情を考慮してることは間違いないだろ。
ビルギッタの件の依頼書が二重になってんのに、あの筋肉バエ共を蹴散らしたときに気づいてさ…タルシス辺境伯のおっちゃん、あの人もずっと気にかけてくれたみたいだね。
そんなおおっぴらには出来ないけど、一応冒険者としての活動は認可されてるってこった。
新迷宮の件、堂々と報告に行こう。そうすれば、必ずあの連中をとっ捕まえられる…それに」

かごめは頭を振り、そして、宿屋の門をくぐる。


「まあ今はいいか。
とりあえず行ってみよう、司令部へ」