「この「はじまり島」の北方に謎の遺跡…だと」
慌ただしく衛兵が行き交う司令部。
大小様々な出来事を報告する衛兵と、それに対し逐次指示を下すペルセフォネへの謁見が許可されたのは、その衝撃的な報告があったからに他ならないのだろう。
「ああ。
少し野暮用の次いでもあって、コイツがその地図だよ」
かごめが差し出した地図…結局逃げ回ってばかりのアンナに任せていたものでは話にならない代物であったため、戦闘中でも比較的余裕のある葉菜が手がけたそれを受け取り、ペルセフォネは唸る。
「ついでに、奥の区画に磁軸らしきものがあったよ。
通常の世界樹迷宮であれば、樹海迷宮と麓の街を繋ぐものだけど…このレムリアはそもそもの事情が違うと聞いたんでね。
幸いにも元の遺跡の磁軸と、出た先の磁軸は双方繋がってるようではあったけど」
「出た先の、磁軸は何処に?」
「元の遺跡らしい建造物が東側に見えたな。
断層で区切られてたが、あんたたちが「幽寂ノ孤島」と呼んでる場所だと思う。
そのエリアはマギニアから見て西にあるハズ…地図をくれた街の子から聞いたことが正しければ、だけど」
険しいペルセフォネの視線と、外見上は飄々とした体のかごめの視線が交錯する。
そこへ、痺れを切らしたのだろうか後ろについていた衛兵が声を上げる。
「姫!
孤島のベースキャンプの件ですが」
「ミュラーを呼んでくれ。
私はしばし、この者と話がある。
良きように図れと伝えよ。後続の者もそのように」
幾人かの衛兵達は困惑した風に顔を見合わせ、はっと承諾の意思を伝えて礼を取ると、そのうちのひとりが司令部を慌ただしく退出していく。
頷いたペルセフォネに促されるがまま、かごめはその後に続いて悠然と歩を進める。
…
ふたりは無言のまま、司令部中枢から離れ艦橋区画へとやってきていた。
そして…かごめが初めてこの街へ姿を現した時と同じように…その場所で、ふたりは並び立つ。
その視界の先には、先日とは異なる快晴の元、変わることなく聳える巨木が見える。
「私も思い出すのに時間が掛かった。
貴君は覚えておらぬだろうか?
そのとき、私は偶々カレドニアを訪れていた…政治的な事柄であり、かつ些細なことであったが」
ペルセフォネが淡々と話す。
「北方帝国にその人ありと称された、大騎士ローゲル卿の従者を装い…その実、理路整然たる口上を述べ、当時ラガード公国にかけられた嫌疑についての申し開きをするだけと思えば、当時公国で「儀式」の名目で半ば放逐状態にあったアリアンナ姫の正当なる亡命を認めさせてしまったその姿…この目に焼き付いていたはずであったのにな。
あの時の、権の毒に耽溺し脂ぎった顔共が、ぐうの音も出ぬほどに言い負かされた姿は、この私とて胸が空く思いであった」
「ローゲルが言っていたんだよね、そういえば。
今回の主賓のなかに、無謀とも思える「秘境への旅路」に挑もうとする酔狂なる姫がいた…って。
…どうするんだい?
今からでもあたし達を断頭台にでも送って見せしめにでもする?」
悪びれもせずに言い放たれた無法の言葉にも、ペルセフォネは軽く息を吐き、頭を振る。
「彼女らが何に行き着いてしまったのか、知る由はない。
恐らくは、我々が求めるそれが、大いなる災いを呼び寄せようとしているのか…その予感を覚えすらもした。
まだ詳しいことは話せないが…彼女らが持ちだした「それ」は、我等がレムリアへ訪れるその切欠に直結する」
「察するに…古代から伝わる何らかの伝承、その類だね。
まいったねえ。
まあ下手人があのひとだとすれば、そういうことなんだろうかね」
かごめは困ったように、肩を竦める仕草を取る。
「察するに、貴君等の目的も、それを知ることなのだろう。
「狐尾」は、この町に現れてから瞬く間に七つの迷宮を踏破した。
その道程で何を知り、今回の件を起こすに至ったのか…いまや、彼女らが切り拓いた三つめのエリアまで行く手段はおろか、「幽寂ノ孤島」の果てに行く道すら失われてしまった。
その道程にあった膨大な成果のみを残し、いまやそれに辿り着くことすら適わぬ」
そして、ふたりの視線が交錯する。
「蓮子…否、「狐尾」ギルドマスター・藤野かごめ。
貴君が発見したその遺跡こそ、恐らくは本来、断層に別れたエリアとエリアを繋ぐ階と言うべきものだろう。
偶然にせよ、必然にせよ…貴君が此処に現れ、それを見出したことは天佑であると、私は考えている。
姿を消した「狐尾」の面々の捜索、そして…彼女らが何を知ってしまったのか、私にも知る義務があり、その権利がある。
故にこのミッションを、貴君等に任せたい」
「なるほど、ね」
かごめは嘆息し、そして、告げる。
「断る理由はない。
ただし…何らかの真相を明らかにするまでは…あたし達は「雨虎」であり、あたしは「宇佐見蓮子」として動く。
その条件の上で、ギルド「雨虎」は謹んでその大役、引き受けさせてもらう!」
ペルセフォネもまた、頷いて答えた。
そして…何時の間にか姿を見せていた、後方に控える一人の冒険者を手招き…かごめはその姿に目を見開く。
「おじさんやローゲルさん達の心配も杞憂で済んだみたいだね。
とりあえず、久しぶりって言っておいて良いのかな。
…次の迷宮は、多分あなたも知っている場所によく似ている場所だけど…いろいろ異なる所もあるからさ」
~新・狐尾幻想樹海紀行X~
その3 時を超えるかごめ
かごめがその冒険者…ウィラフを伴って「クワシルの酒場」へ戻ってきたのは、昼過ぎのことであった。
彼女が戻るまでの数時間、常に顔面蒼白で失神と起床を繰り返していたアンナはともかくとしても、他の面々も大なり小なり不安のまま帰りを待ち続けていたようであり、その姿に胸を撫で下ろすと共に…半ばクワシルを脅すようにして空けさせた個室で、かごめはペルセフォネから下された「密命」を居並ぶ面々に告げる。
「つまり私達は…あの子達が意図的にせよそうでないにせよ、ふさいでしまった道を辿りながら…あの子達から真相を聞き出さなくてはならない、と」
溜息を吐いてその内容を反芻するるりに、かごめは頷いて返す。
「多分そういうことをしでかせるやつが居るとすれば、先に行ったメンツの中だとてーさんでほぼ間違いないだろ。
マギニアがくる前からこっちに忍び込んでるカエル野郎なら、まずあたしんとこにすっ飛んでくるし。
もっとも、ケロ様やつぐみ達までいるなんて、てーさん達も知らないとは思うけど」
「そこよ、そこ。
何気に今まで気になってたんだけど、かごめちゃん今アルカディアに居るはずじゃなかったの?
確かに紫さんとかから、あの世界だと少し時間の流れがちがうみたいな話は聞いてたんだけど、それにしてもてーさん達が居なくなったって聞いた時点でそれから1日も経ってないし」
るりの一言に、かごめはわずかに困ったような表情で肩を竦める。
見回す葉菜や佐裕理も、言葉にはなかったが同じような疑問を抱いているのだろう。
「なんだか込み入った事情があるみたいね。
私もただ、おじさんからあなたたちが何らかの事件に巻き込まれた可能性があるし、マギニアと危険な関係になる前にその真相を突き止めてくれって言われて来ただけでさ。
なーんか気づいたら、タルシスにあった樹海と似たような迷宮が出現した、なんて話になってあれよあれよという間にガイド役にさせられちゃったんだけどさ」
かごめと同じような表情でウィラフも溜息を吐く。
かごめは、仕方ないと言わんばかりに頷いた。
「まあ、もうここまで来たらヘンなタイムパラドックスも起きようないだろうしな。
確かに、今此処に居あるあたしは、正確には現在アルカディアにいるあたしより、少し先の未来から来てる。
ただし…最初に辿り着いたのは、この時点から二年前の倉野川だった、ってだけで」
その言葉の意味するところが解らず、るり達は顔を見合わせる。
「ちょ、ちょっと待ってまるで意味分かんない」
「言葉通りだよ。
あたし達はアルカディアで、3ヶ月前に倉野川でいろいろしでかしてくれやがった「
タチの悪いことに、そこで「多元宇宙渡り」の連中を食いちらかしてた「星喰」とかいうのをあいつらの黒幕が食っちまったわけだ。
んで、それが倉野川へ強引に戻ってこようとしたんでなんとかぶっ倒したわけだけど…場所が良くなくてさ。
何しろ次元間のスキマみたいなところで戦ってたし、「星喰」消滅のエネルギーがでかすぎて、そこがみんな吹っ飛んじゃった反動で居合わせた奴ら全員が過去の倉野川へふっ飛ばされってわけ。
実際に戦ってたつぐみたちは一年ぐらい前に、次元間空間を維持してたあたしとケロ様は二年前のところへ吹っ飛ばされたんだ。
あたし達本当は紫が捕まえてくれたんだけど…つぐみたちを放ってはおけなくって、さ」
「えーちょっと待ってじゃあ何、今ここに居るかごめちゃんは、現時点でアルカディアに行ってるかごめちゃんと遭遇したらいろいろあるからその何、雲隠れしてたっていうこと?
つぐみちゃんとかも?」
「理解が早くて助かるよ、そういうこと。
だからもしその間で、本来居るはずのない場所であたしの姿を見てたとすれば、今ここに居るあたしだったかも知れないねーって事で。
…いやほらつぐみたちも探さなきゃいけなかったし、美結や明夜はまだしも倉野川のご当地アイドル連中…ぶっちゃけるとまり花と咲子なんだけど…道連れにしちゃったのもあったし」
「ちょっとあんたマジで何させてんのよあの子達に!!!!」
「それだけで済みゃまだいくらでもどうにか出来たんだけどもなあ…なんかあのエロサイドテールがなんかしやがったらしくて、残ったうち3人プラス何故か魔理沙までつぐみたちと同じ時間軸まで遡ってきて合流して来やがったらしくてさあ。
魔理沙はまだしもあのめうめうばっかしゃマジで侮れん…あいつマジで人間じゃなくて
呆れ顔と怒りと困惑の綯い交ぜになったような葉菜が、感情のやり場もないといった風に口をぱくぱくさせているのも何処吹く風、かごめはひとり腕組みして唸っている。
「まあ兎に角だ。
あたし達は下手に動いて「あるべき歴史」を変えるのもウマくなかったし、つぐみ達をとっ捕まえるまでの一年ぐらいはまあ…ちょうどアリスが金剛神界の果てへ行ってた時期とも重なってたから、神綺さんトコで匿ってもらったりしてさ。
んで、ちょうど一年前にあいつらとめう達が、倉野川のとある場所へ落っこちてきたんで、奴ら全員をとりあえずタルシスに放り込んだんだけど…そこでレムリアにまつわる伝承をあいつら見つけ出したんでさ。
おもしろそうだからケロ様保護者にして行ってこいって向かわせたのが、今から半年ちょい前だったかな。
今でもまり花のヤツが時々通信式神でスイーツメール送りつけてきやがるから、100%無事なのは間違いなかろ」
「あーもういい、もうわかった。
兎に角かなり無茶苦茶しでかしやがってるって経緯はわかったわ。
まさか今「狐尾」の他の子達がマギニアへくることになった元凶も、まさかあなたじゃないでしょうね…?」
じろりと睨む葉菜にかごめも苦笑いを隠せない。
「いやあそこまであたし悪さしてねえって。
その件はさ、どうもあたしの留守中に、静姉がハイ・ラガードのダンフォード爺から提案を受けたらしいんだ。
ハイ・ラガード世界樹の謎を解き明かした「狐尾」に、是非ともマギニア主導のレムリア探索に参加してくれって。
穣子だのチルノだのが大乗り気だったらしくてどうにもならんって静姉言うしさ、ちょうどあたしもアルカディアにいたタイミングだったんで、じゃあ幻想郷に残ってる連中でヒマこいてるヤツら全員送ればいいんじゃねって言ったんだよな。
まさかさとりの野郎がおりんくう揃って放り込むまで思ってもなかったし…おかげで「神食信奉者」相手に戦力不足になるなんて予想だにしてなかったけど。
SCP-610の群れとかお空でどうにかしろって言ったらさとりが半べそで「だったらお空までやるんじゃなかった」とかほざいてたしな。
アレも大失策だったのか必然だったのかよくわからんな」
「ああ…あの時はそれでかごめちゃんとんぼ返りしてきたんだと思ってたけど、あの時倉野川に居たのが、今ここに居る「未来のかごめちゃん」だったわけね。
そこも地味に気になってたのよねーどうやって異世界の出来事察知してたんだろって」
「一応手段はいくつかあんだけど、それ経由でなんかあたしがそっちにもいるって話は聞いてたんだよねえ。
これなんか絶対あとで歴史の必然としてあたし過去に吹っ飛ばされるんだろうな、って気はしてたんだけどねそん時も」
その後も何か言いたげな面々を制するように、まあとにかくだ、とかごめは机を叩く。
「そんなこんなで、まあおおっぴらに行かないにせよ、あたし達は正式な「マギニア所属の冒険者」としてあのスットコドッコイ共をとっ捕まえて、知ったことを洗いざらい吐かせる、という特命を受けることになった。
ギルド名は当面「雨虎」のままで、公的にはしばらくあたしも「藤野かごめ」じゃなくて「宇佐見蓮子」ということになる。
奴らが商店に卸したレア素材で誂えたような高額の品物を買うだけの援助も受けようと思えば受けられるだろうが…」
「それ!!認可されたんだから当然認可されますよねそうでs」
「ダメに決まってんだろあの連中とっ捕まえてからだ」
それに一縷の望みをかけていただろうアンナの言葉はにべもなく一蹴された。
「現時点このミッションは公にできるもんじゃない。
なんだかんだで結局、迷宮の秘宝なんぞよりもっと近くに居る「お尋ね者の首」のほうが手っ取り早くまた価値がある、と思ってる連中もごまんといる。
聞けば、タルシスやハイ・ラガード経由で来た連中には、既に「狐尾の類縁」として冤罪で捕まっただのいうふざけた例も後を絶たないんだそうだ。
…あたし達は「タルシスから来た冒険者」だ。
それが「司令部が知り得ない迷宮を、来て初日で発見してなおかつ完全踏破してのけた」。
その意味を、まずは思い知るべきだと思う」
わずかながらでも、アンナの言わんとしてることに同意しかけていた他の三人も、かごめの言わんとしていることを理解して目を伏せる。
「本当…参ったわね。
やればやるほど、嫌でも目立つのは仕方ないとしても」
「場合によっては、私達は樹海の魔物以外も相手しなくてはならない…という事ね」
真剣な表情でるりと佐裕理が呟く。
最早泣きそうなのを通り越して、顔面が青くなったり紅くなったりしながらおろおろするだけのアンナを、葉菜は一瞥して呆れたように嘆息する。
「面白いじゃない。
なんで、わざわざ私達を選んだのか、ようやく解った気がするわ。
それは…私達に対する信頼の表れだと…そう思って良いのね」
それは…かごめすらも久しく見ていなかった、葉菜の表情だった。
かごめは、まるで我が意を得たり、とばかりに口の端をつり上げる。
「当然だよ。
あんた達とあたしのつきあい、一体何十年単位だと思ってんだい。
あたしの勘違いだったら、好きなだけこのあたしをぶん殴って今すぐ抜けてもらっていい!」
「冗談じゃない!
あなたをぶん殴ってでも、絶対にあなたひとりで行かせるつもりはないわよ!
嫌だとぬかしても無理矢理についてくからね!!」
同じような表情でその手を握り合わせるかごめと葉菜、そこへさらに二つ、手が重なる。
「いいじゃない、こういう
最近白玉楼のみょん吉もいじりがいがなくなって退屈してたところだわ」
「アンナさんのストレスで胃壁の寿命が天元突破するのと、目的達成のどっちが先かしらね。
…私達の事なんてすっかり忘れられてた感もひどいし、その落とし前もついでに、つけてもらえるんでしょうね?」
「うえええええええええええええんどうあがいても逃げ道なんてないんだうわあああああああああああああああん!!><」
その中に強引に引きずり込まれ大袈裟に泣きわめくアンナ。
そんな光景を機から眺めつつ、ウィラフも苦笑を隠せずにいる。
「なんだか解らないことだらけだけど…兎に角、これからなんかとんでもないことが起こりそう予感しかしないわね。
私も次の迷宮「碧照の森」で可能な限りあなたたちのサポートに回るわ。
かごめ、あの迷宮の熊共、その性質はタルシスのものとほぼ一緒。無闇矢鱈、出会い頭に切り倒せばいいとは限らないわよ?」
「それだけ解れば十分だよ。
道を作らせたら、残らず熊鍋にしてやる」
…
…
諏訪子「なんだ随分早くにとんでもないこといろいろ暴露しやがったなあのタコ。
まー確かに大変だったよ。
あんた達を回収するまではお互いをお互いでPクラス記憶処理()しまくる一年だったからな、実際」
美結「つぐみちゃんのセリフじゃないけどマジで一体何してたんですかあなた達も^^;
そもそも何がどうなってめうめう達まで私達に合流することになったのか、私達も今ひとつ理解できてなかったんですけど」
諏訪子「安心しろ私にもあのファッキンエロピンクが何しでかしやがったのか全く理解できてねえ。
そもそも当人が何したんだからわからんとかほざいてる時点で、神のみぞ知るってヤツだ。
しつこいようだが私個「神」はわからんが」
美結「そんな投げやりな^^;
そういえば話は変わりますけど、これがわかるのはかなり後の話になるとして…本来は断層で区切られたレムリア島のエリアを行き来するのに磁軸が必要なのに、明らかにかなり前から探索していたマギニアやその冒険者達が、東土ノ霊堂の存在を知らなかったというのもなかなか不思議ですよね」
諏訪子「その辺ぶっちゃけたいならぶっちゃけてもいいんじゃないか?
正直マヌケすぎだって」
美結「そ、そんなストレートに…いやまあぶっちゃけ正直それは思いましたよ思いましたけど^^;
どんな手段であれ、幽寂ノ孤島側にあった磁軸ポイントが全く発見されなかったのも不自然ですし、仮に発見されていたらそこから東土ノ霊堂に行き着く可能性もあったと思うんですけども」
諏訪子「多分だろうが、磁軸は冒険者に認識されることで初めてその機能を発揮するような感じだったと思うんだよねいままで。
霊堂側が「入口」、孤島の磁軸が「出口」だとすれば、「入口」側を起動しない限り「出口」側も起動しないというようなインターロックが掛かってた、と考える方が自然じゃないかな。
孤島へは恐らく、何らかの抜け道があったのか、あるいは人為的かつ強引に開いたのか…それが他のエリアまで続く余力を生まなかったか、あるいは状況に応じてマギニアそのものを移動させるなんかの手段を用いていたのかもわからん。
レムリアは名前の元ネタはともかくとして、マギニアが通った航路の描写を考えるとラピュタめいたものを感じるからね。
少しでも外海に出ると、ラピュタを護る「竜の巣」めいた大嵐を都度相手にする必要があって、一度に移動できるのははじまり島と孤島の間ぐらい…という解釈でいる。
「司令部に認められない冒険者」にはそこまでやってやる義務はない、ということなんじゃないかと思うんよ」
美結「言わんとしていることはわかりますが…まあメタ的には展開の都合上、というやつなんでしょうけど」
諏訪子「ミもフタもないなあ(呆
そして今回は、てゐの大馬鹿野郎が孤島の先…まあ「孤島にある霊堂」でなんか知っちまったか事件があったかで、その真相を探るべく霊堂の存在を伏せてなんかしてた、そして結果として絶賛雲隠れ状態になったという辺りをふんわり感じてもらえれば、今はそれでいい」
諏訪子「で、第二迷宮「碧照ノ樹海」だが…ここに今いるメンバーで馴染みがあるのは私と魔理沙、あとつぐみだな。
まさしくSQ4第一迷宮の名前であり、概ねこの迷宮名を見てしまえば熟練ボウケンシャーにはもう誰がボスとして待ち構えてるかとか、FOEがなんなのかすらも一発で解ってしまうんだろうな。
ただまあ…ここには一つ、その先入観を逆手に取ったらしい展開がある。
本当にクマーが迷宮のボスなのか?というな」
美結「そ、そこはまだ伏せておいて良いのでは^^;
とりあえず、まずは上層部からの探索になりますけど、えっと、なんかかごめさんと顔見知りみたいな人が居ますね」
諏訪子「さもあらん、SQ4ログを見てもらえば解るだろうが、かごめの野郎はこのウィラフと組んで、第二大地「丹紅ノ石林」を根城とする「雷鳴と共に現る者」を撃破してやがるんだ。
当時の金竜はSSQ以降みたいな「三竜の一番手」ポジションではなく、主に「呪われし遠吠え」の仕様もあって大体最後に挑む方が良いとされていた超強敵だからな」
美結「うわちょっと止めてくださいよ諏訪子さん私達かなりのトラウマ植え付けられてんですけどSSQ2のそいつに!><」
諏訪子「実際SQ4金竜は歴代最強の金竜と言っても過言ではないが…まあその話したら長くなるからね、いずれまた触れる機会もあるだろうしその時に回すか。
ともかく、まずは司令部からの指示で幽寂ノ孤島にあるベースキャンプへ赴き、実質的な最初の迷宮である「碧照ノ樹海」へ向かうことになるよ。
あ、今更だけど今回は完全にインターミッション回、あとは次の本格的な迷宮探索話への引きにして終了だよ」
美結「本当に今更ですねその話。
ところで諏訪子さん、私の縛弱込みでもクリンチ3点縛り成立したの一回もなかった件は本当どうします?(しろめ」
諏訪子「実際スマンカッタ(しめやかに吐血」
…
…
~碧照ノ樹海~
葉菜「で、ここが例の樹海というわけね」
かごめ「せやね。
というかマジでタルシスの最初の樹海そのまんまだな。
…なんだこりゃ、流石にここまでそのまんまなのは想像してなかったんだけど」
サユリ「ということは、住んでる魔物とかその…FOE?
それも全く同じのがいるとかそういうこともある?」
かごめ「それは探してみないとわかんないけどなー。
でもまあウィラフがそう言ってんだしまず間違いなくクマーだろな。
あいつら相手なら多少レベル差があっても大体余裕だろうが」
アンナ「FOEは蹴散らす前提って考え捨ててくださいようえええええええん!!><」
るり「あーごっめーんちょっと後ろから何か来たよー」
しれっとるりがかごめとアンナを突き飛ばしたそのタイミングで、鎧を着た大男が割り込むようにそこで蹈鞴を踏んだ…
「おおっとまたぶつかっち…まってねえな」
「ッたくもう少し前を注意しろとあれほど。
すいません、うちのでかいのが」
かごめ「なんじゃいなおまえら、つーかマジでぶつかる前提で突っ込んでくるとかわざとか貴様天狗ポリスに通報してやろうか(キリッ」
サユリ「いや確かにあなた被害者になってたかもだけど意味わかんないってそれ^^;」
かごめのよくわからない難癖に鎧の男はさして気にした風もなく、その相方と思しき術士の男が困惑半分で首を傾げる。
術士「え、ええっと…まあうちの連れは本当にでかくてそそっかしいもので、実際済まない」
るり「んまー特に怪我もしてないから気にしてないけど」
アンナ「ええそうよねあんたが私達を突き飛ばしたんだもんねこのやろう!!><」
術士「あ…はは…そ、そういえば君達はこの辺りでは初めて見る顔だね。
つい先日、新たな一団が連絡船で来たと聞いていたけど…なんでも、その中のギルドが新しい迷宮を発見したとかそういう話も聞いてるね。
確か…「雨虎」と聞いていたけど」
かごめ「んまあその「雨虎」ってのがあたし達なんだけどな。
偶然も偶然、街の見習い薬師の釣れ探してるうちに偶然迷い込んであれよあれよってうちに、そいつの地図まで描き上げちまう有様でな」
かごめは憤然とした風を装い、ふたりの様子を伺う。
言うまでも無く、その二人組に敵意があるかどうか…あるいは、他の賞金首狙いのように、格好の標的として近づいたかを確かめるためだ。
大男はその言わんとしていることを理解できずきょとんとしている一方…術士の男は、どこか得心行ったというように頷く。
「そうか。
警戒させてしまったのであれば、それは誤解だ。
僕は
君らのことはウィラフさんからも聞いているよ、最近はタルシスやハイ・ラガードから来たというだけで…闇討を受けたりいらぬ嫌疑をかけられたりということが常だからね」
「おお、あいつの知り合いだったか!
なら相当なやり手だって事だなあマルコ!」
そうじゃないだろ、と窘めるマルコに、オリバーと呼ばれた大男は唯々豪快に笑う。
かごめはこのやり取りのあいだで、ふたりに害意はないことを「能力」で感じ取れたのだろう、他の面々に頷いて示す。
そこで、マルコはわずかに表情を曇らせて告げる。
「それ故に…というべきか、大きなお世話かも知れないが…君らがこの迷宮に挑むのは、少々時期が悪い。
そうした連中も含め、今多くの犠牲者を出してる案件がこの迷宮で進行中なんだ。
司令部のほうでも対策を検討しており、僕らは先達として指令を受け、この先へ冒険者がむやみに立ち入らぬよう監視し、忠告を行っているんだ」
「どういうことだい?
確かに、タルシス樹海を知ってるあたしからしても、この森はあまりに似過ぎているな。
…すると、森の主もまさかベルゼルケルと言うまいな?」
その通りだ、とマルコは答える。
「タルシス碧照ノ樹海…その主である「獣王」ベルゼルケル。
それに類する、逆立った赤毛と強大な爪を武器とする巨躯の熊が、複数体目撃され…実際に襲撃も受けた者も多数居る。
司令部は冒険者や衛兵部隊へ出ている被害の規模を鑑み、ミッションを発令するか検討中なんだ。
…故に…僕らはそれまでの間の探索ポイントとして、冒険者達にはこの近くにある果樹林の探索を推奨している」
「へえ。
つまり司令部が答えを出すまで、そこほっつき歩いていろと」
「そうだなあ大して強くもないシカの魔物がいる森だ、俺達には多少退屈でな。
俺達は2人だが、俺達のチカラは単純に1+1じゃねえぞ、。
知恵のマルコと、パワーの俺! ふたり合わせてそのチカラは倍だ!!」
「…えっと…それだとどっちみち5人パーティより足りてないのでは^^;」
困惑したような佐裕理の一言を受け、今更みたいにオリバーは「うおお確かにそうだぞ!?」と大袈裟に狼狽する。
最早誰もが苦笑を隠せない…が、かごめは嘆息し、踵を返す。
「ここではあんた達が先輩だもんな。
ま、それなら少し退屈しのぎに果樹園とやらに行ってみるってモンだな」
「え、えちょ…れれ蓮子さんっ。
シカってもしかしてもしかしなくても」
狼狽するアンナの、三つ編みの一本を無言で引っ掴んでかごめはふたりに手を上げてひらひらと振ると、他の三人もマルコ達へ会釈したり手を振ったりしてその後に続く。
その後ろ姿を見送りながら、腕組みしたオリバーがまだ今ひとつ事情をわかってないかのように笑いって相方に告げる。
「小気味良い嬢ちゃん達だな。
まあ、俺様は少しあの蓮子ってヤツのことが気に掛かるが」
「そうかも…知れないね。
…いや、もしかしたらあの連中よりも…彼女のほうが数倍危険なのかも知れないが」
「どういう意味だ?」
難しい顔をしながらかごめ達の背を見送っていたマルコは、気にするな、と頭を振ると、オリバーを伴ってその場をあとにする。
彼の抱いた一抹の「予感」は…その斜め上をすっ飛んでいくような結果を生むなどということは、この時には夢想すらも出来なかっただろうが。