突如現れた、巨獣の振るう豪腕の一撃をかろうじていなすものの…かごめの表情に苦渋の色が濃い。
(おかしい…何故だ。
ここまで思い通りに動けないなんて…!!)
先の獣王相手でも、違和感を感じて居ないわけではなかった。
身体は一気に鉛の如く重くなり、思考に肉体の動きが全くついてこれていない…それでも、彼女は気の長くなるような年月で培った戦闘センスのみを恃みに、ケルヌンノスの動きを先読みし、致命傷を回避していく。
この異常な力の制限は、かごめだけが気づいているわけではない。
そもそも、元来わりと向こう見ずな性格のアンナが、これ程までに今回の探索行に対して過剰なまでに逃げを打とうとして歩いているのも…現在妖精国で最強の名を恣にする強大な魔力を有する彼女であれば、この異常な「能力の制限」の存在を真っ先に気づいていたからであろうことは、想像に難くない。
かごめがその「異常」を認識し、その存在を確信したのも、樹海に入ってからのことだ。
それでもなお、彼女は迫るケルヌンノスの拳…否、指の一本を目がけて正確に切っ先を繰り出す。
拳を指の一本、その最小単位から確実に潰すためだ。
かごめはそのときに初めて、それを知覚した。
微かに響く鈴の音を。
それを聞いた瞬間…さらに五体へと加重がかかる…!
かごめはかろうじて割り込んだ佐裕理諸共後方へ大きくはじき飛ばされ、葉菜とアンナ、そしてるりとも強制的に散開させられた状態となってしまう。
最早連携を取るどころの騒ぎではない。
誰もがその猛攻を凌ぐのに手一杯になっており、満身創痍の状態だった。
心配そうにかごめを見やる佐裕理も、困惑と苦渋が綯い交ぜになった表情だ。
かごめは再度、刀を構える。
勝ち誇ったような森王の咆哮に応えるかのように、茂みからアルマジロのような魔物がわらわらと集まってくる…!
そして、微かに聞いた鈴の音…先とは異なる音色のそれが微かに響くと、魔物達の目がさらに凶暴な輝きを増していく!
「思った通りだ。
裏で、糸を引いてるやつが居る」
「どういうこと!?」
かごめは頭を振る。
「はっきりとしたことはわからない。
でも…あたしたちの存在がそれだけ煙たいって事なんだろうね。
巫山戯たことをしてくれる…!」
しかし、かごめの表情から覇気は消えていない。
その口元が…凶暴な笑みで吊り上がる。
「何処の馬鹿だか知らんけど、喧嘩を売る相手は良く吟味すべきだよ。
このあたし相手に…トドメを刺す前から勝ちを妄信して姿を見せたのが、運の尽きだ!!」
その声に、応えるかのように…数発の銃声が遠く響く。
そして、遥か後方に、凄まじい雷の魔力が奔る。
さらに。
「間に合った!
みんな、受け取って!!」
駆けつけたウィラフが、かごめ達目がけて薬瓶を投げ渡す。
「あなたの言っていた「タルシス樹海の療水」!
確かに届けたわよ!!」
さらに、何もないように見えた中空から投げ入れられたそれを、全員が受け取る。
強引に受け取ったそれを、魔物の猛攻を躱しつつ飲み干すかごめたちの肉体に、一気に魔力が満ちる…!
鈴の音は、もうない。
その主は、彼女らもよく知るだろう銃声と雷撃の主により、撤退を余儀なくされたのだろう。
解き放たれた闘気と殺気が、謎の存在による支援を失った、巨獣達に叩き付けられる。
その異様に、今度はケルヌンノスのほうが、怯み後ずさる番だった。
「覚悟しろ、ケダモノ。
このあたしを舐めてくれた礼は、たっぷり熨斗つけて返してやる」
闘気を全開にする怒号とともに、かごめは一陣の風と化す。
~新・狐尾幻想樹海紀行X~
その6 再会
諏訪子「そんなこんなで引き続き碧照ノ樹海、ボス戦の話だ。
前回も触れたとおり、ここはベルゼルケルからケルヌンノスの連戦となる」
咲子「あれっ…そういえばまりささんは何処へ?
それになんだかとってもとってもネタバレのような展開さんが」
諏訪子「文中見れば解ると思うけど既にそれっぽい奴出てるじゃないか(真顔」
咲子「メタ発言にも限度があると思うんですよ、それ(´ω`)」
諏訪子「気にしたら負けだよその辺。
つーことで、樹海真のボス・ケルヌンノスの解説だよ」
碧照ノ樹海ボス ケルヌンノス
レベル13 HP5074 炎耐性、雷弱点/即死無効、毒・呪いに弱い
沈黙の瞳(頭) 全体に頭封じを付与
クロスカウンター(腕) 発動しているターンの間、物理属性を含む攻撃を受けると近接壊攻撃で反撃する
ファイアラッシュ(頭) 貫通炎属性攻撃
スマッシュコンボ(腕) 近接拡散壊属性攻撃
ハリケーンパンチ(腕) 全体に近接壊属性攻撃、麻痺を付与
※HPがある程度減ると後列にヒーラーボール2体を召喚する。
以後も一定以上ケルヌンノスのHPを減らすごとに、ヒーラーボールが居なければヒーラーボール2体を召喚する。
ヒーラーボール
HP123 斬・突耐性、属性全般弱点/睡眠、毒、頭封じ、腕封じに弱い
キュア(頭) 単体HP回復(主にケルヌンノスを対象として発動)
神秘のヴェール(頭) 3ターンの間、味方(ケルヌンノス・ヒーラーボール側)の属性防御力を上昇する
諏訪子「あんた達は初めて見る魔物だろうが、ケルヌンノスは無印世界樹やリメイク作の新世界樹でも第二階層ボスとして登場、なおかつ新世界樹2のDCLクエストでも二番手のボスとして登場した魔物だよ。
弱点はそのときと同様、雷属性だが、何気に炎属性耐性を得たり貫通炎属性スキルが加わって地味にパワーアップしてたりする」
咲子「ちょ、ちょっと待ってください諏訪子さん。
連戦なんですよね? 先程のクマさんよりもほんのちょっとだけどHPが多いような」
諏訪子「そこはまあ安心していいよ。
展開上、ここでウィラフが登場してるのも実はゲーム上の展開にあわせてるんだ。
獣王を撃破した直後、何の前触れもなくケルヌンノスがエントリーしてきて「知らなかったのか…森王からは逃げられない(キリッ」ってなってるんだけど…そこでウィラフが謎の水をぶっかけてHPTPは勿論フォースゲージまで復活させてくれる。
獣王相手に派手にフォースブレイクぶちかましていったのは、ここで回復できるからなんだけど、当然ながら消費したアイテムまでは戻ってこない。当たり前といえば当たり前のことだが」
咲子「街に戻ってヴィヴィアンちゃんに頼まなくても連続でボスさんと戦えるんですね(*^-^*)」
諏訪子「ついでにケルヌンノスと戦う直前にセーブまで出来るんだが…実はここは注意が必要なところでな。
全回復しているとはいえ、地味にメニュー画面を開いたりは出来ないから仮に獣王相手でレベルが上がっていてもスキルポイントの振り分けは出来ないし、当然装備を変更することも出来ない。
むしろこれは些事というか…ケルヌンノス相手をも考慮したPT編成でないまま突っ込むと、そこで詰む。俗に「死にセーブ」と呼ばれる一種の罠だな」
咲子「∑( ̄□ ̄;)ええっ罠なんですか!?」
諏訪子「なのでどうしてもレベリングし直したいとかいう場合は勿論、準備をしっかり整えてから望みたい場合は必ず、獣王とすぐ戦闘できる状態で街に戻り、宿屋でセーブしてそこからやり直すことになる。ここでセーブして挑むなら、SDカード領域の別スロットにセーブするのが賢明だな。
とはいえ、樹海を踏破してボス連戦に挑むころには大凡PT全体のレベルも14~15前後になってるから、ある程度ゴリ押ししても勝てなくはないんだが」
咲子「えっとえっと、ケルヌンノスさんは仲間の魔物さんを呼ぶんですよね。
ヒーラーボールさんはサポートが得意なフレンズさんなんですね」
諏訪子「急にジャパリパークめいてきたな。
んまあ、大凡ケルヌンノスを80%、50%、20%削ったところで何も召喚されていなければ、後列にヒーラーボールを2体召喚する。
この後列というのがまた嫌らしく、基本的には道中に出るボールアニマル同様壊以外の物理属性に耐性があるときたもんだ。
ケルヌンノスのHPを回復させるのは勿論、バフで自分やケルヌンノスの弱点をカバーしてくるのも非常にウザい。
雷の星術を絡めて早急に始末するか、あるいは道中で手に入るバタフライバレルの「いらつく羽音」でスキルそのものを封じてしまうといい」
咲子「雷…ということは、ケルヌンノスさんも雷に弱いから、ということですか?」
諏訪子「それもあるけど、雷の星術は星術では珍しくプラスの速度補正がついてるから、先手取りやすいんだ。
ついでにバタフライバレルの素材は、樹海にいるシンリンチョウを雷属性で撃破したときに手に入る素材から作れる。
いらつく羽音はシンリンチョウも使ってくるけど、今回はノービスで頭封じ仕掛けに行く手段が極めて限られていて、なおかつ即効性もある頭封じ手段も少ないのでバタフライバレルは長く使っていける武器だね。とくに後列でほとんど殴りにいかないファーマーはそれこそ最終装備にすらなり得たりする。
当然樹海では最強の銃だからガンナーがいるなら必ず取っておきたい」
諏訪子「ケルヌンノスの行動パターンだが、基本はランダム行動なんだけど、戦闘開始時に必ず沈黙の瞳を、以降5nターンに必ずクロスカウンターを使う。
勘違いされがちだが、クロスカウンターは最速行動でもなく、なおかつ属性のみのスキルには反応しない。
逆に銃や弓などの遠隔攻撃、物理属性を含むスキル…つまりリンク系スキルにはしっかり反応する。
反撃ダメージは固定だが、適正レベルならほぼ一撃で飛ばされるから注意が必要だな」
咲子「そういえば、セスタスのスキルにもクロスカウンターってあったと思いましたが」
諏訪子「あれとは別物だし、この時期のボスでカウンター行動に封じまでついてくるとか狂気だろ。
最も、物理で殴らなきゃいいとか、あるいはソニックレイドにアームズで属性乗せて殴れとかそういう抜け道はいっぱいあるけどさ。
それ以外は、ケルヌンノスのHPが80%を切るとハリケーンパンチが、50%を切るとファイアラッシュが解禁される。
HPが20%を切ると通常攻撃をしなくなるから、終盤は常に広範囲攻撃されるということを頭に置いておくといい」
咲子「正念場なんですねー。
みなさんとってもとっても必死ですもんね(*´ω`*)」
諏訪子「…まあそういうことにはなるな。
といっても、HPがある程度高くてもハリケーンパンチを連打してきたりする。
あと新世界樹とかと違ってわりと高い頻度で沈黙の瞳を使ってくるのも厄介だな。頭封じはこっちがされてもわりと困るが、それが全体だしな」
咲子「全体を麻痺させてきたり、頭を封じてきたりとか、見た目はとってもとってもパワフリャなのに意外とテクニカルなんですねー」
諏訪子「こっちのヒーラーがマグスにしてもメディックにしても、再生帯やラインヒールは早めに抑えておくのは勿論、道中でソーマも手に入るから使うならコイツ相手だな。
攻撃はこちらもクエスト報酬としても手に入る雷の起動符、あるいは、お化けフクロウを頭封じして倒した素材から作れるオウルスタッフのスキル「雷撃」の他、ショーグンがいるなら雷切を取っておくといい。
あるいはプリンセスにショックアームズを使わせ、ショーグンの残月居合陣で一気に削り落としていくのもいいだろう。アームズがないならショックオイルでもいい」
咲子「残月居合陣?」
諏訪子「今回ショーグンに新しく搭載されたスキルで、指定した味方ひとりが攻撃される度、同じ列の味方が通常攻撃で反撃するカウンタースキルだ。
対象になった奴も勿論反撃する。
コストパフォーマンスが良いスキルだし、序盤戦は勿論後半戦でもうまくタゲ取りできるならボス戦FOE戦で頼りになる強力なスキルだよ」
咲子「みんなで協力してお返しするんですね(*^-^*)」
諏訪子「んまーそんな感じだな。
では、かごめ達のトンチキを見てみようか…といっても、スキル構成とかを見る限りそんなみょんな事してない感じではあるが」
諏訪子「まあ見ての通り、毎度の如くかごめがかなりのガバ構成だ。
あいつマジでわざとやってんじゃないのか毎度毎度(#^ω^)」
咲子「えっえっ∑( ̄□ ̄;)
べべ、別にこのレベル域では十分問題ない振り方に見えますよ?(おろおろ」
諏訪子「一見、ベテランスキルにある強力なパッシブ「果たし合い」を取りに行ってる風に見えるが…正直このタイミングで最優先に満たす必要は無いんだよな(#^ω^)
どうせコイツのLUCで腕封じなんて狙いに行く意味ほとんどねえよ、無駄に小手打ち振ってるヒマあったらその分上段を極めて空刃に振れと」
咲子「あわわ…でもでも、スキルレベル5だと空刃さんの消費が上がるからじゃ」
諏訪子「だったらなおのこと何故上段をマスターしないんだと(#^ω^)」
咲子「アッハイ(しろめ」
諏訪子「いやまあおまえが悪いんじゃないから。
つかかごめのアホだけじゃなくアタッカー三人揃いも揃って微妙におかしいな。なんなんだこいつら全員スットコドッコイか(#^ω^)」
咲子「ううっ…私には何処が悪いのかさっぱり解りません(*>ω<*)」
諏訪子「しょうがないなー…。
まずるり、レギオンスラストは強力な技だが、何故か振ってないシングルスラスト同様、何故か敵前列のみにしか飛ばない。
一列対象じゃなく、「前列が対象」だ。
つまりこの戦闘ではヒーラーボールが狙えず、なおかつ現時点でレギオンバーストの前提を満たす意味が無いのはかごめと一緒だ。なんでコイツ、シングルスラストに振ってブラッドベールマスターしてねえんだおかしいだろ」
咲子「えっとえっと…シングルスラストさんは自分がダメージを受けるから、ブラッドベールさんの効果を自分で発動できるんですね」
諏訪子「そゆこった。
ブラッドベールはあらかじめ自分がダメージ受けてるという条件はあれど、マスターで34%も全属性の被ダメカットできるという頭おかしいパッシブスキルだ。
シングルスラストと非常に相性が良いな。
アンナはわざわざ連星術の前提を中途半端に満たしに行くなら、雷でケルヌンノスの弱点付けるんだしとっとと特異点定理マスターして残ったポイントは圧縮に使えと。
確かに今回、セスタスほどじゃないけどゾディアックも然程火力高くない。
ないとはいえ、特異点定理マスターすれば十分火力出るし、連星術をあわくって振るよりベテラン解放されたらまず前提のないエーテルマスター取りに行った方がいいに決まってる。
範囲は雷星術あれば補えるから火力をまず振らないと話にならねえ」
咲子「お、奥が深いんですね(;>_<)」
諏訪子「まーブシドーなんかはある程度テキトーに振っても戦えるんだけどもなあ。
特に今作は空刃と、フォースブレイクの一閃がアホみたいに強い。下手にツバメがえしだのを取得するより、さっさと空刃を極めたほうがコストパフォーマンス的にもずっといいというか、ぶっちゃけ上段は空刃と兜割り、あとは武器スキルかサブショーグンの明星などで範囲攻撃できればそれ以上の攻撃スキルいらねえぐらいだ。
あ、サブクラスについてはまた別に解説するよ。どうせ解禁されるのものすごく先だし」
諏訪子「そんなこんなでガバ構成のわりには、兎に角ロンスラ、空刃、雷星術でヒーラーボールを速攻で潰し、あとは様々な事情により何故か大量所持していたハマオとアムリタでるりとかごめのTPを補充しつつ、ちまちまと殴って危なげなく終了。
アムリタはクエストでも手に入るが、ハマオに関してはこの時点までに手に入れる手段はない」
咲子「HPとTP同時に回復させるアイテムですよね。
そういえば、司令部にアイテムやマップ、モンスターさんの図鑑を報告するとその数に応じたご褒美がもらえたような」
諏訪子「そこで思い出して欲しいんだが、今回のデータは表クリア…つまり、一度本編をクリアしたデータを所持金以外全て引き継いでる。
だがニューゲームにすると、司令部への報告は問答無用にリセットされている。つまりだ…」
咲子「もう一度同じご褒美がもらえる…ということですか?」
諏訪子「その通りだ。
ここでは獣王戦直前でモンスター図鑑分の各種アイテム、アイテム図鑑分の50万近い大金を一気に解放している。
金額的には既に解禁済のゾディアックやハイランダー、メディックの専用防具を買うことも出来るんだが」
咲子「買わないんですか?」
諏訪子「ああ、特にゾディアックは火力に直結するから一気にバランスが壊れる。
ただ、今回も存在する、新世界樹からもう定例となった資金調達系DLCの報酬が5万を超えた辺り…そうだな、第七迷宮か第八迷宮辺りまで来たら解禁でいいかな。
ぶっちゃけると最強槍が第十迷宮で解禁されるから、そのときにるりへそれを持たせるかどうかは考え中だ。
あ、ちなみにケルヌンノスの条件ドロップは全箇所封じ撃破、素材は最強拳甲ポリュデウケスの材料になる。今回はまあ、PT的に特に関係は無いな」
咲子「そういえば美結ちゃんが怒ってましたよ、諏訪子さんいい加減クリンチ全封じチャレンジ諦めてくれって」
諏訪子「あれは貴婦人と姫君の封じ耐性が地味に高いのが悪い(しろめ
実際、セスタスのブーストが封じ確率も上げてくれるから、縛弱カオススクリーム瞑想フルで乗せてブーストからクリンチすれば多少はまあ…つか今回はあまりにセスタスが悲しみに満ちていて、DLCで資金面を工面してやれば概ね第八迷宮くらいでポリュデウケスも解禁できるしそこまでやれば多少はマシにはなる。
もっともポリュデウケスのスキルであるハリケーンパンチ、性能は悪くないが微妙といえば微妙ではあるんだよな。どうしてこうなったんだマジで」
諏訪子「というわけで、わりと長丁場になったがあとは街に凱旋し、ミッションを報告することで次の迷宮である「原始ノ大密林」へ行けるようになる。
また、迷宮をクリアすると、その迷宮に応じた素材が採取できる最終ポイントがフィールドマップに出現するようになるよ。
ついでに言うと、そもそもケルヌンノスは元々「原始ノ大密林」のボスなんだ。
ここでそいつがわざわざ出張してきた」
咲子「ケルヌンノスさんのリベンジが待ってる…ということでしょうか?」
諏訪子「それはそれで面白かったかも知れないが、一応大密林にはもう一種類、ボスとして出てくるヤツがちょうど居る。
そこから先はまあネタばらしになるからここまでだな…まあ、ケルヌンが前倒しに出てきて大密林、と来れば経験者は概ね察してたみたいだが。
ちなみにケルヌンが復活して、なおかつ獣王とクマーを無視すると、なんとクマーが追尾状態ならクマーが、当然獣王がいたら獣王も途中で乱入してくる。再戦できる…というか、ポリュデウケス解禁目的で挑むころには獣王()がいた程度でどうって事もないだろうが」
咲子「獣王って一体…^^;」
諏訪子「言い忘れてたが、ケルヌンの通常素材は槍の素材。
ファイアラッシュは結構便利だし、大密林でも炎属性は通りがいい。第二階層クリアまで十分使っていけるいい槍だよ。
それじゃ、残りは与太話を挟んで終了だ」
咲子「そういえば、冒頭でもなんか裏があるような気配でしたね。
美結ちゃん達も出張ってきてるし、話も進展するんですか?」
諏訪子「さてね。
多分私達の出番も近いだろうが、まあ今回はここまでだ。
次回からは大密林の攻略に掛かるよ」
…
…
妨害がなくなったことで、一転してかごめ達は反撃に移る。
瞬く間に手下の魔物を一掃され、必殺のカウンターの構えを見て取ったアンナが、ケルヌンノスが苦手とする雷の魔法でその体勢を強引に崩させる。
さらには、防戦に回っていたはずの佐裕理も、盾での一撃を中心にケルヌンノスの無力化に掛かり始めたところに、アンナは詠唱を始める。
-契約により我に従え、理を説く者、天界の門衛。
来たれ、破滅の豪雷! 穢れなき威光!
大地を貪る穢れし者に、大いなる粛清もて滅びの宿命を!!-
展開した魔法陣が、凄まじい電荷を発し始め…周囲の空気を焦がし始める。
アンナのサポートについていた葉菜は、目を丸くする。
「アンナちゃん…その魔法っ…!」
「伏せてて、先輩。
私もこれ、使えるようになってそんな経ってないから…加減は一切出来ないわよッ!!」
天に掲げた腕に反応するように、天はにわかに雷雲が包み、高まる魔力に呼応し無数の稲妻が一点に収束していく。
かごめ達が、満身創痍となった森王の下から一斉に飛び退くと同時に…アンナはその、恐るべき威力の大魔法を解き放つ…!
「千の、神雷ッ!!」
天の怒りを体現するかのような、幾千幾万の稲妻を束ねた閃光が、森の暴を体現する魔物目がけ叩き付けられる。
視界が光の洪水で満たされ、一拍置いて大気を振るわせる程の轟音。
あまりの威力に思わず目を伏せ、防御の態勢を取った葉菜が、閃光が収まるのに合わせ恐る恐る様子を伺うと…クレーターの中心、いまだに帯電する二本の角のみを残し、ケルヌンノスだったものの五体はチリひとつ残ることなく消滅していた。
「雷の奥義…あなた、いつの間に…!」
「…ふふん、何時までも何時までも、私が水と氷の奥義しか使えないと思ってるその浅はかさが愚かしいわ。
炎は既にアーモロードのところで契約してあったのを強引に更新してやって…風はつい先日フィリの野郎をとっ捕まえてなんとかしてやった。
シグマの試練はキツかったけど」
得意げな顔で仁王立ちしていたアンナだったが、今の一撃はそれだけ多くの魔力を消費したのだろう…不意に体勢を崩して、慌てて葉菜がそれを支えた。
「ざっと…こんなもんよ。
今私が使える奥義は五つ、このぐらいやってのけなければ…私にだって、可愛い弟子がいるんだからね…!」
憔悴してはいたが、不敵に笑ってみせる。
呆れたような、安心したような…そんな表情でアンナに頷くと、葉菜はかごめに視線を送る。
かごめも同じように苦笑して、溜息を吐く。
「やれやれだね。
おーい、そっちも終わったんだろ?」
彼女が、後方の森へ向けて呼びかける。
様子を伺っていたウィラフも、るり達他の面々も…振り返った先の視界から紅い裂け目が生じ、そこから一人の少女がふわりと降り立った。
クリーム色のカーディガンを羽織り、その下には佐裕理達も見慣れた、日向美学園の制服を身に纏いながら…その背よりも長い柄を持つ巨大な揺籃鎌を背負う、薄桃色の髪を持つ少女。
ウィラフ以外の全員は、確かにこの少女を知っている。
「ご苦労さん。
でも、悪いがまだまだやってもらわなきゃならんことが山ほどありそうなんだ」
「解ってます。
あと…すいません。
さっきの誰か、あと一歩のところで取り逃がしちゃったみたいで」
「深追いする必要は無い、どうせ、また向こうからくんだろ。
何か他に解ったことはありそうかな、美結?」
美結は表情を曇らせ…わずかな逡巡の後、その事実を告げる。
「合流できてないうちでは…てゐさんと…あと、ヤマメさんとレティさん。
三人の行方だけはなんとか。
でも…行方がわからないうち…穣子さんとチルノは、何らかの別の事故に巻き込まれてる可能性が高いと。
リリカさんの話では、まるで誰かに操られているようだって…リリカさんは、チルノから受けた凍傷が酷くて…!」
かごめの目が一瞬、険しくなる。
「どういうこと…なの?
チルノが、どうして」
困惑が隠せないのは、アンナも一緒だった。
彼女の反応は至極当然のことだろう。
アンナは、リリカやチルノと共に、アーモロードの樹海行を共にした「仲間」なのだ。
美結は頭を振る。
「リリカさんは…鈴の音を聞いたと言ってました。
それに呼応するように、自分の力が抑えられ…あべこべに、チルノの力が増幅されるようだったと。
まるで、自分の力が奪われてあの子に無理矢理注ぎ込まれたみたいだって」
「なるほど、ね。
なら、今回も裏でこそこそなんかやってた奴も、呪言でごちゃごちゃやってやがったって事だ…!」
固く拳を握りしめると共に、奥歯も砕けんばかりにかごめは、内心の怒りを強引に押さえつけるように歯がみする…。
「後ろのほうでドンパチやってたの、つぐみちゃん達だよね。
あの子達は?」
その空気を割るようにして、るりは息を吐いて問いかける。
「もう撤収してますので、私もあとで合流するつもりです。
私が此処に残ったのも、あくまでつなぎのためですから」
「…美結。
あんた戻ったら、カエル野郎に言ってとりあえず全員マギニアに集めて。
リリカが居るんだったら、あたし達が名前を偽る必要性はほぼなくなる…そこで、これからの行動方針を考える」
「どゆこと?」
ウィラフと顔を見合わせ、るりは怪訝な表情で背を向けたままのかごめへ問いかける。
「何処の巫山戯た野郎だか知らんが…このあたし達に喧嘩をふっかけたことを、未来永劫に渡って後悔させてやるためだ!!」