まり花と別れ、つぐみ達は迷宮の奥へ奥へと進む。
理由は知らずとも、彼女と剣戟を交えているだろうレティを除けば、彼女たちの行く手を阻む者はなかった。
一舞達が、迷宮を渦巻く「海流」の源を見つけた、と知らせてきてから、かなりの時間が経過している。
それきり、どのチームの状況も判然としない。それは、いずれも待ち受けていた「敵」との交戦状態に入っていることを意味する。
「私達を、まさかレティさん一人に押しつけるつもりだったというなら…だいぶ甘く見られてるっていうことなのかしら」
軽口を叩く美結の表情も硬い。
口ではそう言って見せるものの、美結とてレティ=ホワイトロックという大妖怪が、それだけの実力がある強力な妖怪であることを、知らないわけではない。
とはいえ、現在二十存在する「魔性貴種」の中で、序列第八位とされる冬と寒気の妖怪は、これまでの樹海探索行における行状から「守りに強い妖怪」としてのイメージがどうしても先行する…他の妖怪達のように追撃から強襲してくるよりも、行く手に立ちふさがっているイメージのほうが強いだろう。
違和感が無いわけではなかった。
「冬を象徴する」妖怪というだけ、特定のコミュニティも持たずただ守りに強いだけの妖怪というだけであれば、贔屓目に見ても特別指定級であり、貴種というにはその要因が著しく欠ける。
そんな彼女の疑念を払拭するような一言が、神妙な表情のつぐみの口から告げられる。
「藍さんから聞いたんだ。
レティさんの元の名は…レティシア=リーゼロッテ=シンウィンター。
かつて「森の悪意」ラプンツェルと並び称された、アイルランドの一部を永久凍土に閉ざした大魔女。
欧州最強最後の二大魔性、その一角を担っていたって」
「レティシア…「永久氷壁」のレティシア?
レティさんが?」
つぐみは頷く。
「歴史の上では、冬の魔女レティシアが突如として姿を消した時期…それが、お母さんが吸血鬼の力に目覚めた時期と一致するの。
その理由は、ルーミアの暴走で崩壊しかけた幻想郷の基盤を安定させるために、強大な冬の魔女の力を必要とされたから。
魔女レティシアと、八雲紫の間でどんな契約が交わされたか解らないけど…双方の利害は一致し、冷酷非道と謳われた大魔女は…幻想郷の冬の象徴レティ=ホワイトロックとして、幻想郷に移り住むことになった」
~新・狐尾幻想樹海紀行X~
その19 悲しき氷の魔女
♪BGM 「戦場 悲しき氷の守護者」♪
「私自身もその時、あれほどまで欲していたこの力を…すべてを氷の世界に閉ざす事の出来るこの力を、疎ましく思い始めていた。
こんな力を持っていても、私は独りだった。
私はただ、私の生まれ育った地を…大切な家族と仲間を、護りたかっただけだったのに」
海流すら凍てつく大寒波の中心。
ダイアモンドダストと化した飛沫が、まるで、その涙のように見える。
「紫は言ったわ。
既に私自身でも制御できなくなるほど膨れあがり、敵対するあらゆるすべては勿論、護るべき者達すらも無差別に氷に閉ざすこの力を、新たな「幻想の境界」に組み込むと。
私自身の「死の概念」すらも凍らせたこの力を、私から引きはがす最後の手段として用いることが出来ると。
代償は…私が故郷を捨てること」
無数の切り傷と、凍傷を全身に刻み込み、満身創痍のまり花はなおも…立ち上がろうとする。
一瞬、彼女は表情を険しく歪め…なおも、言い聞かせるように続ける。
「破格の条件と言えたわ。
唯一の心残りは、私が愛したスコットランドの地を…忌々しい森の魔女の力を盾に踏みにじろうとした英国の連中から守り抜いた、ロバート王の意思を…私がもう護ることができないことだった。
でも、それももう過去の話よ。
私にできることは、護るべきものはなくなった。そんな力など本来持ち合わせていないのだから」
「…でも…あなたは…レティさんは…!
あなたはあの日、わたしを…!」
「そうよ。
迷い込んできた「翡翠蛭」諸共…あなたを殺そうとしたのよ。
隠し続けてきたこの正体を、隠すために」
「違うッ!!」
彼女ははっきりと、否定する。
「確かに、寒くて、冷たくて、目の前が真っ暗になった。
でもそれは」
「違わないわ。
私の力は、ありとあらゆる生命を奪い尽くす、厳冬そのものの体現。
私自身に害をなすものも、そうでないものも、この力の前では無為にその命を凍らせて終わる…近づいたものですら。
そうね。
私も結局は、何処に行っても独りにしかなれない…私には「大切な何かを護る」なんて、出来やしないのよ。
だから、あなた諸共」
「うそだああああああああああっ!!」
覚束ない脚のまま、まり花は絶叫する。
「そんなの…わたし、わたし絶対に信じない…!
だったら、あなたが樹海の冒険でその、とってもこわい力を使わないで…誰かを護るための盾を持った理由は何!?
それに…」
傷だらけになったその頬に、あとからあとから涙が流れ落ち、海嶺の大地に吸い込まれていく。
「わたし、わたし見てたんだ。
必死になって、わたしのことを助けてくれようとしたあなたのことを。
だから」
「もういい」
訴えかける悲痛な叫びを払いのけるように、突き出された掌から、無慈悲なる凍気の奔流が放たれる。
大樹の如き珊瑚の幹に叩き付けられ、一度は項垂れるものの…それでもまり花は、鬼気迫る表情のまま立ち上がろうとする。
「もう終わりにしましょう。
かごめからは、誰一人として死人は出すな、とは言われたけど…無理そうね。
あなたを黙らせるには、死んでもらうしか無いみたいだわ」
ゆっくりと、掲げられ合わさったレティの掌に凄まじい凍気が収束する。
「アンナ・スプリングフィールドがその力を会得するより前、氷の奥義魔法を扱えるのはたった一人しか居なかった。
その一人が、私よ。
その力を得て、私はアイルランド最強の魔導師となり…そして、魔女として君臨することとなった。
せめてその五体が腐らず残るよう、永久に氷の中で眠らせてあげる」
「ちがう…!!」
紅い飛沫の混じる咳で途切れさせながらも、彼女は三度立ち上がり、否定の言葉を放つ。
険しい表情のまま、魔女は眉をひそめる。
「あなたは…あなたは確かに、あの日私を護ってくれた。
あなたがいなければ、今の私は居なかったんだッ…!」
「それが過ちであったというなら、今ここで断ち切ってやると言っているのよ!!」
いらだつようなレティの声が、大魔法の余剰として生まれた冷気を突風に変え、まり花へ吹きつけさせる。
しかし。
覚束ない脚の震えは止まり、力強く上げられたその瞳に、強い意思を持った言葉が紡がれる。
♪「INDETERMINATE UNIVERSE」♪
「だから…だから、今度は…わたしが、あなたを。
あなたを閉じ込める「呪い」から…「終わりのない冬」から、助けてだしてみせる」
その言葉に困惑する魔女と、少女の視線が交錯する。
このこはいったい、なにをいっているのだ。
わたしがいったい、なににとらわれているだと?
「言葉だけで届かない想いなら。
私が持たされた力に、意味があるとしたら。
きっと、それは」
瞠目し、見開かれた目の異様に、そして、同時に解き放たれた強大な魔力に、魔女は初めて戦慄した。
その力の発露に連動するかのように、左の瞳からは白の、右の瞳は青い光を放ち…荒れ狂うオーラは、咆哮を上げる竜と虎の如く。
-そうだ、お前の想いを貫き通せ!
俺達の力は、そのために在る!!-
渦巻く蒼い奔流が、握りしめた右手に握られる蒼い刃に。
-ねこはいつでも、あなたとともにあります。
あなたが抱くその強き願いに、僕らの力が応える!!-
振りかざされる左手に、白い稲妻が純白の拳甲として装着される。
ふたつの光に応えるように頷き、構え、そして彼女は叫ぶ。
「あの日の約束を!
わたしが「悪い魔女」をやっつけて、わたしの「大切なお姉さん」を助ける!
それが私が果たすべき、約束なんだよっ!!」
…
…
輝夜「話は盛り上がってきてるけど皆様お待ちかねボス解説の時間よ」
天子「∑( ̄□ ̄;)あんた空気読まないのも程があるでしょ何唐突にぶった切ってくるのよ!?」
輝夜「いいのよどうせ茶番には変わりないんだし。
というか強引にねじ込まないとその余地もないし」
天子「ええ…(困惑
大体にしてここの黒幕、来歴が意味不明すぎるんだけど。
ロバート王ってまさか、スコットランド独立の英雄ロバート1世(ロバート・ブルース)の事とか言わないかしら」
輝夜「狐野郎の裏設定ではこのログ時点では明治維新の三百五十年後らしいんで、あの黒幕少なくとも八百年から生きてる計算になるわね。
そもそもどこぞの捏造記者天狗が四ケタ生きてるみたいだし、些細なことかも知れないけど」
天子「些細な話なんだ…。
まさかあのふとましいの、トラファルガーでホレーショ・ネルソンと組んでフランス・スペイン連合艦隊相手にヒャッハーしてたりするのかしら」
輝夜「スコットランドでゆっくりしてたんだったらイングランドに協力してたとは思えないけどもねえ。
むしろ悪さしてるとすればポジション的にもバノックバーン(藍注:前述のロバート1世がイングランド軍を撃退し、実質的なスコットランド独立宣言にあたる「アーブロース宣言」を行うきっかけになった戦争があった地だな)でしょうに。
大体にしてこの世界観ではその辺も微妙に同じ歴史を辿ってたり辿ってなかったりだったし、魔法や妖怪は当たり前にいる世界だから、例えば「不生えのダヴー」(美結注:ナポレオン麾下最高の名将とも言われる「鉄元帥」ルイ=ニコラ・ダヴーの事ですかね? 確かに若ハゲの挙句ド近眼の冴えない風貌の人ですけど…^^;)がふっさふさのグッドコーディネートなイケメンだったりする可能性だってあるだろうし」
天子「最早意味がわからないわ(しろめ
私確かにヒマだけど、それでも中世ヨーロッパ最強ショボーンフェイスの話聞きに来てるわけじゃないし?」
輝夜「スペースの無駄遣いしてないでとっとと行くわよ。
さて、アーモロードでは地味にトラウマを残しまくったクジラ野郎がここのボスよ。
早速解説に入っていくわ」
海嶺ノ水林ボス 海王ケトス
レベル52 HP20546 炎弱点/即死無効、呪い・混乱・腕封じ・スタン耐性、石化に弱い
オーシャンレイヴ(腕) 全体近接壊攻撃、高威力だが命中は低い
グランドベリー(腕) 近接貫通壊攻撃、麻痺を付与
凍える引き波(脚) 遠隔一列氷攻撃、脚封じを付与
太古のうねり(脚) 3ターンの間自身(ケトス)の命中率を上昇させ、全体の回避率をダウンさせる
大いなる調べ(頭) 全体に眠り付与
潮吹き(頭) 3ターンの間自身(ケトス)の回避率を上昇
天子「なんかここの裏設定だと守矢神社裏の湖に沈んでるんだっけこいつ」
輝夜「今回ひさしぶりに触れられていたけど、そのアーモロード産ケトスと違ってこいつは特に会話も無いし、通りすがりのボスモンスターって感じでいきなり襲いかかってくるわ。
SQ3では登場前から声のみでボウケンシャーを威嚇してきたり、いざ戦ってみればほぼ確定で睡眠を付与する大いなる調べからのオーシャンレイヴという容赦ない攻撃を仕掛けてくることで、多くのアモロ民を恐怖のズンドコに叩き落とした深都前のトラウマよ…といっても、今回のケトスは非常に残念なボスに成り下がったともっぱらの評ね」
天子「そりゃまあ、出てくる時期もそれなりに遅いから体感的に、って事はあるんじゃない?」
輝夜「ところがそればっかりじゃ無いのよねえ。
一番残念なのはこいつの行動パターンが固定されてるせいで、兎に角然程効果的な状況でなくてもオーシャンレイヴをぶっ放してくる事かしら」
天子「決まってるの?」
輝夜「初手は潮吹き固定、その後HP残り75%で太古のうねりからオーシャンレイヴを使うまで、4ターン目にオーシャンレイヴ使ってそれ以降は5ターン経過するごとにオーシャンレイヴ確定使用するわ。それ以外は通常攻撃とグランドベリーをランダムで使うけど、ほぼ交互に使うと言われているわ。
75%を切るとランダム行動に凍える引き波が混ざる」
天子「オーシャンレイヴは命中率ものっそい低いらしいけど」
輝夜「先に言うと、こいつを混乱状態で撃破した条件ドロップで作れる最強の砲剣「禁制砲剣"富嶽"」の武器スキルがそれなんだけど、そのデータによれば命中補正-50%で倍率400%だそうよ。
素でも全く当たらないわけではないけど、ケトスから飛んで来る奴は素だとほぼ当たらないわね」
天子「実際スキル構成を見ると、基本はその低命中をなんとかしてぶち当ててくるわけね。
自分の命中上げながら相手の回避を下げてくるとか、麻痺とか脚封じとか眠りとか」
輝夜「基本的には行動パターン変わっても、5ターンおきにオーシャンレイヴ確定。
HPが50%を切るまでは、大凡4ターンごとかつオーシャンレイヴに被らないタイミングで潮吹きを使うわ。
50%を切ると大いなる調べを使い、以降はランダム行動に雑ざってくる。
最後に25%を切ったところで太古のうねりからオーシャンレイヴを使い、ランダム行動にもオーシャンレイヴが混ざってくるけど」
天子「けど?」
輝夜「オーシャンレイヴを低命中まま矢鱈滅多に連打してくるなんてマヌケなことをし出すのよ。
SQ3では鬼の所行をしてくることで知られていただけにあまりにも残念と言わざるを得なくて、凍える引き波を連打される方がまだおっかないという酷い有様よ」
天子「そ…それは酷いわね」
輝夜「ちなみに潮吹きの回避補正も然程高くなくて、適正域では砲剣ドライブでも必中ゴーグル装備してるならほぼ外さないわ。
ボーナス行動に近いけど、それでも忘れた頃に回避されるし出来れば解除しておきたいわね」
天子「ええ…本当に残念ねこいつ…」
輝夜「多少レベルは高かったけど、実は一周目もつぐみ達4りでこいつ片付けてて、さして苦戦もしなかったわ。
今回は何故かつぐみ達4人にるりを加えて、既に購入済のクレイドルやセプテンメラム、常闇の装束等々すべて封印して適正時期の装備で挑んだんだけど…うんまあ、るりの英雄一騎当千どころか明夜君の残像を封印しても楽勝で勝てるんじゃないかってぐらいの楽勝ぶりで」
天子「なにをか況や、かしら。
ところで、こいつ条件ドロップの条件なんなの?」
輝夜「混乱状態撃破。
耐性持ってるから、適正域だとLUCがっつり盛って虚弱とカオススクリーム込みの驚忍★でもなかなか入ってくれないわよ。
余談だけどSQ3の時は初手撃破だったわ」
天子「で、その見かけ倒しを倒したときのスキルもここで触れるんでしょ」
輝夜「そりゃ、次はもう第九迷宮の解説にかかるしね。
装備とスキルはこんな感じね」
輝夜「ついでだし今回のサブクラスの仕様についての話も少ししておくわね。
といっても、基本は4と一緒よ。
サブで付与されたクラスのスキルは本職の半分まで、かつ「野生の勘」を含めた採集系スキルは習得できないわ。
ついでに物理攻撃ブーストとかは重ねて習得すると加算方式で効果が上乗せされていくわよ」
天子「あ、あの輝夜さんちょっと。
なんかキャラ名の下あたりにかっこい…いや中二病大爆発な表示があるんですけどそれは」
輝夜「5にもあった「二つ名」システムが何故か続投してるのよね。
ちなみにサブクラスの付け直しには休養が必要だけど、二つ名だけはギルドでいつでも変更可能よ。
二つ名を付けない場合上にメイン、下にサブのクラス名が表示されるし、あとからそこへ二つ名を設定することも可能になってるわ。二つ名を設定しておくと、QRイベントで登場したときに二つ名も名乗ってくれるので、ロールプレイ大好き勢にはたまらない仕様ね」
天子「なんとうらやま…うらやま…痛々しい(ギリギリ」
輝夜「メチャクチャ本音出てるじゃない。
狐野郎の書く裏設定でもこういう痛々しい(プークスクス)二つ名がいろいろ出てきてたりするから、興味があったら狐野郎のサイトの裏設定置き場でも探してみるといいわ。
…約二名ほどSCP界隈にとってはトラウマを呼び起こさせるようなワードが使われてるけど、些細な事かしら」
天子「緋色の鳥なんかあからさまだけど、「黒き月は吼えているか」でお馴染みSCP-1739もApollyonに片足ツッコんでるレベルですものね。
それはおいといて、これメインの動きどうなってんの?」
輝夜「基本的にはアームズで属性付与して、英雄の戦いから一騎当千するハイランダーを軸にしているわ。
英雄の戦い抜きでも、脈動や鼓舞である程度一騎当千の反動を緩和できるんだけど」
天子「追撃ごとにHPを固定数値消費するってかなり痛いわね。
SQ3では相当猛威を振るったらしいけど」
輝夜「詳しい仕様はggってもらえば良いけど、リニューバグを利用した一騎当千は裏ボスも軽々しばき倒せる狂った仕様だったからね。
あと直近でSQ5の三途渡しが濫用されまくったせいもあってか、一騎当千の制約が大きくなるのも致し方ないところだわ」
天子「三途は狂ってたわね確かに。
基本的には相手を石化させて祈祷で属性付与して使うのが普通だけど」
輝夜「引退ボーナス込みとはいえレベル50も要らなかった気もするくらいよ。
残念といえば残念なのは、オーシャンレイヴ以外は普通に当たってくることもあって意外とサブシノの軽業が活きなかった事かしら。
単純に潜伏の回避率補正が低いのか、はたまた実はバグがあるのか、そもそも本職でもそんな回避しないけど」
天子「汚い忍者のチート回避補正が適正に変更された結果と感心するけどそれほどでも無かったわね(キリッ」
輝夜「ついでにいうとここのまりかちゃんはシノビの強みをすべてかなぐり捨ててるんだけども。
一体何のためにいるのかしらねこのシノビ。
マジで普段は後列でネクタルを舐めて過ごしてるんじゃないかしら」
天子「いやそこは…煙の末で燃費良くなった全体星術を最速で撃つって事なんじゃないの?」
輝夜「今作火力がさほどでも無くて、三色攻撃枠としてすら三色チャージ解禁されたガンナーに食われかけてるゾディの火力補強に繋がるレストアエーテルのうま味を完全にドブに捨てることになるわねそれ。
取ったところでサブだからたかが知れてるけど。
実際のところメインサブ逆でもいい説はだいぶあるけど、それでも道中は含針と驚忍が超優秀だからねシノビは」
天子「聞いた話だとシノゾディって、ブンシン・ジツで片一方にダークエーテル使わせてもう片方が撃つメテオの消費TPを蹴っ飛ばすなんて荒業もあったとかなかったとか」
輝夜「SQ3とダークエーテルの効果が違ってしまってるというか、仕様変更もあって大幅に弱体化してはいるけども、それがシノゾディの強みではあるわね一応。
大体にして分裂しまくるヒーローがいるPTになんで分身してナンボのシノビがいるのか、そもそもなんでこのスイーツアホがニンジャなのかツッコミどころしか無いような気もするんだけども」
天子「こういうメチャクチャも今に始まったことではないけどね。
そういえば装備品、特に防具って結構前の迷宮でも揃うようなものが多い感じよね」
輝夜「実際防御力の数値よりも装備効果の高いもののほうが若干有用だしね。
特にFOEから取れる素材で出来たものとか、条件ドロップ絡むやつは一つ二つ先の迷宮まで十分実用的だし。
そもそも狐野郎がやたらAGIの上がる装備をありがたがって使い続けるのもあるんでしょうけど」
天子「飛鼠の甲掛は優秀なわりに簡単に量産出来るしね。
というかそもそもさあ、重鎧って鱗竜の通常ドロップからもっといい奴作れたはずよね?」
輝夜「狐野郎はマヌケなことに素でそれを忘れてて、気づいたのはクジラを殺ってからよ。
ケトスは腕封じ仕掛けてくるわけでもなし、水竜の鎧だって普通に第十迷宮まで通用するレベルですもの。明確に強力な軽鎧はないからキュイラッサーはいいとしても」
天子「あとラッシュガードってそれ水着の上に切るヤツでは…」
輝夜「一時流行ったわね、東方キャラでラッシュガード描くの。
これはうずまきフグを麻痺状態で撃破した条件ドロップが素材なんだけど、氷耐性もあってケトス相手にも噛み合うし、防御力的にも十分だから狐野郎はこれで第十迷宮までまかり通したぐらいには優秀な服だわ。
フグに麻痺が入りにくいから実はかなり量産するの難しいんだけど」
天子「フグの通常素材って呪いの香だけじゃなくて靴の素材にもなるわね…って、それがコインローファーってあんた」
輝夜「ラッシュガードにコインローファーとかどんだけフェチ心をくすぐる組み合わせなのかしらね(真顔
あとクッソどうでも良い余談だけど、英語以外の成績はからっきし、挙句運動神経も切れてるクセに水泳だけは大得意らしいわね、このスイーツアホは(一舞注:一応公式設定なんだよねえそれ。あとこれも余談だけど、めうはまりかと逆に水泳だけが苦手だったりするよ)」
輝夜「こんなもんかしらね。
次回はストーリーも少し足を踏み入れることになる、第九迷宮の話を始めるわね。
かごめ達が本当は何を企んでいるのか…このあとすぐ明らかになるわね」
天子「はっや。
巻き進行だって聞いてたけどちょっとこの辺雑すぎない?」
輝夜「ゲーム自体が長すぎて狐野郎もダレてきてるんでしょうね。
次の更新もいつになることやら」
天子「ええ…」
…
…
「さて」
最下層を離れ、紫やヤマメとも別行動を取るかごめは、海嶺の一角で立ち止まり振り返る。
「いつからいたんだ、お前。
紫め…気づいてたんだったら先に言いやがれってんだ」
忌々しげに吐き捨てるその影法師の先、まるで闇から切り出されたかのような漆黒の髪を翻し、そこに彼女はいた。
生来の、深く昏い緑の瞳…その片側だけは、妖しく昏い紅の光。
かごめとて知らない顔ではない。
そして同時に、この場に居るはずもない少女。
だがしかし、彼女が纏う独特の空気は、かごめの記憶にあるその少女…霜月凜の持つモノとは、まるで異なるものだった。
「答えろ、凜。
口を割らないって言うんなら、マジでこのままレティのアホごとまり花を叩き斬りに行ってもいいんだが?」
「脅しにしては随分短絡的ね。
私の知る詩姫…真祖・藤野かごめであれば、もっと洒脱に富んでなおかつ聞く者の心胆を磨り潰すくらいのことを、即座に言い放てるはずだわ。
私の知らないたった二年が、あなたを腐らせるには十分すぎる時間だったということかしらね」
かごめはわずかに眉をひそめる。
「簡単な話よ。
東雲心菜が「比翼鳥」の力で、めうのこじ開けた次元の穴を…過去に続くトンネルを再び開くのには成功した。
だからこそあの子達は、一舞達の辿り着いた過去の、まるで違う場所に降り立つことが出来…私はそこから更に、過去へ飛んだ。
今の私のままでは、恐らくは誰の力にもなれない。己の力のルーツを知り、高めるために」
「二年なんてもんじゃないな。
凜、あんた一体どこまで」
「十年も前の魔界であれば、丁度戦乱の直後で荒廃しきっている。
荒事のタネにはまるで事欠かなかった…我ながら、馬鹿なことをやったと思うわ。
けれど…あなたたちを相手取りながら、あの子達を見守っていくとなれば、マトモな手段とやらが一体どれほど役に立つというのかしら?
お陰様で、私は半ば、人間を辞めたような格好になったわ。恐らく、私の姿は生涯このままなのでしょうよ」
自嘲気味に笑う凜。
かごめは呆れたように頭を振り、肩を竦める。
「らしくないことを…独学か誰かに習ったわからんが、あんた「捨食」をやったのか。
勘弁してくれよ本当、さな姉だけならまだしも、安吾にまで殺されちまうぞあたしゃ。
……本気、なんだな」
「ええ。
あなたの動向は、ずっと追い続けていたつもりよ。
その目的も、概ね理解は出来ている…倒すべき真の敵も」
その一瞬後、かごめの顔が交錯するふたつの刃越しに、互いの息づかいすら感じられる位置に。
いつの間に抜き放たれたのか、それが、いつ構えられたのか…当人同士でなければ、把握すら難しかっただろう。
「十分だ。
あんたはまり花の戦いを、見届けてやって。
なんでだろうな…あの子、どうしてもあたしには、負ける結末が見えてこないんだ。
だから…迎えはあんたに任せる」
「あなたは、どうするつもり?」
刀を納め、かごめは海流の渦巻く一角を見やる。
「誰か、海流に巻き込まれたか…いや、めうめうあたりの仕業かなあれ。
あたしはあれを辿って、一足先に次の霊堂へ行ってくるよ。
そこでなんか決着つくようだったら…そうだな、そいつらにでもスマキにされてマギニアに戻るさ。
それより」
そして、視線は最深部の別の一角へ。
凜も、そこに凄まじい戦いの気を見出す。
「どうやら、本命が来たか。
るりのアホを勝手にさせといて正解だったかもな。
あれは…可愛い娘達と腐れ綿飴にでも丸投げするか」
…
「あーらら。
なんとなくそんな予感してたけど、かごめちゃんの目的の本命、こいつかしらね」
迷宮の終着点、次の迷宮である「霊堂」へ続く回廊。
るりは嫌がるアンナを無理矢理引き連れ、行き着いたときにそれに出会った。
眼を凶暴な紅い色に染め、獰猛な唸り声を上げる巨大な白い魚…否、海の王たる白鯨の姿に、わざとらしく困ったような素振りで肩を竦めるるりに、アンナは驚きを通り越して既に諦めの混じった盛大な溜息を吐いた。
「私こんなのまっっったく聞いてないわよ。
どーすんのよるりちゃんこんなの。
別に私達でコレ片付けたって良いけど、もしつぐみ達の誰かとも鉢合わせたら収拾つかないわよこんなの」
「おやおやアンナ君いつもの臆病風が出たかね?」
「うっさい黙れ」
「そして曹操の話をすれば曹操が来たわねえ」
この緊迫した状況でも、何が面白いのかクスクス笑うるりの指さす先、やはりというか状況をよくの見込めていないだろうつぐみ達三人の姿がある。
アンナは目眩がしそうな頭を抑えながら、空いた右手に炎の魔力を収束した火球を生み出す。
「おやおやアンナさんホエルオーには炎技効きませんよ~?」
「やかましい、私はあいつを知ってんのよ。
見た目は完全に海王ケトス、そうよね海嶺でボス級が居るならこいつですもんね。
こいつの弱点は炎、ポケモンの常識がこっちで通用すると思ったら大間違いよ」
「あららそりゃ失礼。
そーねー、そんじゃま」
るりはつぐみ達を振り返り、場違いなまでの脳天気な声で呼びかける。
「つぐみちゃーん、ちょっと休戦ってことにしとかない?
とりあえずあいつやっつけてから、私達の方を解決するってどうー?」
「あんたねえ…」
あからさまに嫌そうな顔で相方をにらみつけるアンナ。
受け取った側のつぐみ達三人も顔を見合わせる。
「…どうします?」
「どうしますって…言われてもねえ。
あのるりさん、かごめさんに負けず劣らずのクセモノだし」
「うーん」
難しい顔で首を傾げるつぐみ。
「まあ…いいんじゃないかな。
あのクジラ、邪魔なのは確かだし。
見た目はそうでも、ケトスさんと違って話通じないっぽい感じだし…少なくとも、会話が可能そうな相手につく、ということで」
「その言い草」
呆れながらも、美結は静かに緋色の領域を広げ始める。
るりとつぐみ、双方が目配せして意思を伝え合う。
己の魔装たる空色の杖を展開て構えたるりが、檄を飛ばす。
「さあ、おじゃま虫にはさっさとご退場願いましょうか!!!」