夜半未明からのブロート追撃戦開始から既に12時間以上経過し、森の「抗体」との死闘を繰り広げながらつぐみ達はついに迷宮最深部へと突入する。

その頃には多くの者達が戦線を離脱し、つぐみと行動を共にするのは明夜ただ一人。
他のメンバーとは時に合流し、情報確認を行う度に離脱者が増える一方だ。

幸運にも、誰一人死者が出ているわけではない。
だが、離脱した者もほぼ戦闘継続が不可能な状態で、美結や一舞、そして再会を果たした魔理沙といった強力な攻撃役すらも重傷のために戦線を離脱してしまっている。
その上に、もう一日近く消息の知れない紫やリリカがどうなったのか、その手がかりすら掴めないままだった。

不安そうに見つめ返す明夜を励ましながら、つぐみはついにそこへ辿り着く。
見覚えのある、開けたその空間…中心に、ぴくりとも動かぬ人影がある。
己の中の全血液が逆流するような感覚を覚えながら、それでもなかば反射的に、飛び出そうとする明夜を制するその視線の先に倒れるのは…八雲紫そのひとだ。


「ねえさん…なんでっ!?」
「わかってる…わかってるよっ…!
でも、こんなあからさまな罠で…ッ!!」

つぐみの声も動揺か、怒りか、そのために震えている。
感情よりもギリギリで、理性が勝ったのだ。
それほどまでに、目の前の光景はあからさまに過ぎ…まるで自分たちを嘲笑い、挑発する意図を隠そうとすらしていない。

これまでの道中で、「抗体」達にはほぼ殺気と呼べるものがなく、例え奇襲されても攻撃の瞬間までほとんど察知できないことは解っている。
それを、これまで多くの迷宮を踏破してきた経験則と直観でつぐみは察知し、それが彼女をここまでに至らせることが出来たと言っても過言ではないのだ。
彼女の年齢においては、このことは異常とも言えるだろうが…幻想郷・幻想界において並ぶ者なしとされた大妖ふたりから受け継がれた資質の賜という他ないのだろう。

そして、殺気は感じずともそこに気配ははっきり存在する。
周囲を取り囲む「抗体」の存在は、自分たちの存在などとうに察知し、その動向をうかがっている事も。

つぐみに取れる方策はいくつかある。
包囲攻撃されるのを承知の上でこのまま突入し、紫の身柄だけを確保し撤退するか。
詳しい時間は把握できていないが、恐らくは回復を終えているだろうかごめが来ることを信じて待つか。
あるいは…現時点で一時撤退し、他の者に状況を伝えてから対応を考えるか…。

だが、状況は予断を許さぬものであった。
つぐみがそれに気づいたときには、既に詰みの状態だったと言って良かった。

上空の視界を覆う、黄金の翼。
猛然と降下するイワォロペネレプの爪が、彼女の頭目がけて迫るのが見える。
叫ぶのも忘れ、見上げるだけの瞳に映ったのは、氷の魔力を巨大な刃と変え、巨鳥の脇腹目がけて突っ込んでいく少女の姿。




~新・狐尾幻想樹海紀行X~
その29 怒れる恋の眼




♪BGM 「戦乱 荒れ狂う波浪の果て(SQⅤ)」♪

それまで別行動を取っていたはずの、まり花の奇襲を受けたイワォロペネレプは、彼女諸共縺れるようにして広間へと転がり込んでいく。
その瞬間、周囲から森魔や森鬼といった「抗体」たちが、体勢を立て直そうとするまり花目がけて飛びかかっていく。

このタイミングまでまり花が何処で何をしていたのか、何故このタイミングで飛び込んでこれたのか。
そのようなことは何一つ解らずとも…そこに居るのが紛う事なき「山形まり花当人」であることのみが理解できた以上、たちどころにその覚悟を決めた。
つぐみは現時点での突入を決意し、雷の魔法を解き放つ。

「めーやちゃん!まりかさんのサポートを!!」
「了解ですっ!!
とりゃあああああああああああ!!!


神速の踏み込みが、少女の「残影」を生み出し、同じような軌跡を描いて複数体の森魔を散らす。
拳を振り上げ迫る森鬼の攻撃から逃れつつ、その脳天に一撃加える…鍛え上げられた森鬼はその痛烈な一撃に怯むことなく、頭上の明夜に拳を振り上げた次の瞬間、構わずに振り抜かれた砲剣の軌跡が雷を呼び、数体の森鬼・森魔を巻添えに降り注ぐ。

その隙を逃さずまり花がつぐみの元へ飛び退くと、痛烈な一撃を受けながらも金色の鳥はその翼を広げ、威嚇するかのように金切り声を上げた。

「なかなかしつこいね、狐尾。
霊堂への封印を解くまで、あとわずかだというのに…邪魔をされては困る」

イワォロペネレプの足下に、ブロートが姿を現した。
奇襲をいなされ、両者距離を取って向かい合う格好になるが…明らかに多勢に無勢、ましてつぐみ達は大なり小なり手傷を負って万全とは決して言い難い状態だ。

それでもつぐみは、普段の彼女からは想像も出来ぬような、なおかつ母親譲りとも言える獰猛な笑みを作り、威圧的に誰何する。

「邪魔をしたつもりなんてないよ、身の程知らずに身の程を弁えさせてやってるだけ。
普通ここまでされれば、大抵心が折れてくれるもんだと思うけど…あんたがそこまでやり続けようとする論拠って何よ」
「滑稽だ、私を追い詰めたつもりになっているのか。
随分手間取ってしまったが、霊堂への道は…ヨルムンガンドの最後の封印までの道のりは、今まさに開く。
…だが、こちらもこれ以上無駄なリソースを割くわけには行かなくなった。
これも、試練というものか」

踵を返すブロート。

つぐみも気がついていないわけではない。
重傷を負ったかごめとともに戻ったるり達は、ブロートが呪言で意識を封じたペルセフォネ姫と共にいたと告げていた。
ここにブロート一人しか居ない理由…ペルセフォネは一体どこに居るのか。

次の一手を模索しようとするつぐみを嘲笑うかのように、ブロートが掲げる手の中で鈴が鳴る。
その手先に堕ちた金色の鳥が、飛び立とうとした次の瞬間だった。


「どおおおおおおおおおおおおおおおおおりゃああああああああああああああああああああああ!!!」


枯れた森の一角、イワォロペネレプの頭上。
陽光を受けた黒い刃が、鉄槌となって堕ちてきた。

轟音、そしてエネルギーの発散が黒い花びらとなって周囲へ飛び散る。

「何ッ!?」

流石に想定外の事態だったのだろう、ブロートは驚愕の表情で振り返り、質量を持つ黒薔薇の刃を切り払う。
その中を割って飛び出してくる二つの影…ひとりはリリカ、併走するもう一人は、萌葱色のブシドー装束を纏う、薄緑の髪の少女。

繰り出される剣閃と突きが、ブロートへ迫る。
しかし、その傍らに座していた「抗体」が、あと一歩のところでそれを阻む。

「うえーやっぱりこいつら反応早すぎるよー修正されろー!!」

喚きながらも彼女は、当たり前のように死角から迫る森鬼を、そちらへ一瞥くれることすらなく真っ二つに切裂いてのける。
さらに、その背後へ迫る森魔の爪が届くより前に、正中線の急所数カ所をリリカの槍が貫いた。

「馬鹿言ってるヒマがあったらアレを止めろっての!
…って邪魔なのは確かだけど!!」

息つく暇もなく、さらに新手の「抗体」を迎え撃つリリカの肩から、雀色のなにかが飛び出して後方へ飛ぶ。
呆気にとられるつぐみ達だったが、それは一瞬のことだった。

リリカがどうやってこいしを連れ戻したのかなど、今はさして重要ではない。
ミスティアが目指す先にあるのは、二人が叩き伏せたイワォロペネレプ。
土煙に覆われたそれは、頭上からの奇襲攻撃で一時的に行動不能になる程度にダメージを受けたが…殺気はまだ消えていない!

だが…これは、転機。
しかも紛れもなく、自分たちにとって絶対のプラスになる、天与だ。
つぐみの明晰な精神は、かごめ譲りのその天性のカンが、この期を逃すまいと限界を超えて、思考を巡らせる。
そして、明夜とまり花は、その思考へ言葉よりも先に…以心伝心を超えた速度で応える!

「まりかさん、紫さんをお願い!
めーやちゃん!!」
「まかせてっ!!」
「了解ですっ!!」

森鬼の間を縫うようにして先行するまり花、一拍遅れて大地を蹴るつぐみに追従する明夜。
目指す先には怒りに眼を染め、再び飛び立とうとするイワォロペネレプ。
紫電を纏う翼を広げ、猛然と迫る夜雀を突き殺そうとしたその瞬間…つぐみの巫術の支援を受け、最大稼働し強烈な冷気を撒き散らす砲剣を、大上段に構えた明夜がその眼前に踊り出る…!

「ちぇえええええすとおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

サンダーウイングを繰り出そうとした巨鳥は、カウンター気味のフリーズドライブを正面からまともに受け、再び轟音を伴い大地に叩き付けられる。

舞い踊る羽の中に、一枚だけ毒々しい気を纏う紫の羽がある。
さらに加速する夜雀はそれをついばみ、その勢いのまま舞い上がった。

群がる森鬼、森魔の群れを明夜、つぐみが迎えうち、手ひどいダメージを受けながらも体勢を立て直す巨鳥。
だが、それが飛び立つことは、二度と無かった。

「ようやく、元通りだわ。
今までのぶん…」


深い紫の妖気が夜雀のシルエットを、見慣れた妖怪の姿に変えていく。


「まとめて熨斗つけて叩き返してやるッ!!
歌い狂え、“歌神迦楼羅”!!」



燃え上がる紫の炎を纏う翼を広げた、宵闇の神鳥の揮う双握剣の無慈悲なる一撃が、哀れにも本来の使命を忘れた金色の鳥へ叩き付けられた。








アリス「そういえば、美結って子の連れてた緋色の鳥とかいうのが朱雀だと言うんだったら、ミスティアは一体何なんだって話になってた気がするんだけど…そっちに飛んだのね」
輝夜「あら、お帰りなさい随分遅かったわね。
  早苗ちゃんの様子は?」
アリス「ばっちりよ、ゴルシの木魚ライブでようやく復調したわ(キリッ
神奈子「いやここお前らの家じゃないからなっていうかお前ら一体早苗に何してくれてんの(真顔」
輝夜「今浪さんじゃあるまいし、あの状態の早苗に荒療治もいいところだわね」
アリス「基本的にハジケリストだから問題ないと思うけどね。
   ところで、ミスティアが迦楼羅とはまたえらい大物になったものね。ここでのミスティアは何故か炎属性だから丁度良いのかしら。
   ところで歌神ってなんだったっけ」
天子「緊那羅(キンナラ)の事でしょ、仏教ヒンドゥー教共通の歌の神」
アリス「おk把握(サムズアップ
   それにつけても今更だけど、えらい大所帯になったわねここ」
神奈子「一応私が家主だからなーおーい?
   …一体早苗何されたのかしら…ちょっと見てくるか」












輝夜「ということで軍神様は離脱したけどアリスも復帰してきたところで、イワォ戦の補足とかリリカ楽団()の解説に移るわよ。
  もう装備についてはツッコミ不要で」
アリス「なんかさっき国崩し使わねえみたいなこと言ってた割に、魔理沙のヤツがしっかり装備してんのね」
輝夜「一応この時点では最強銃ですんで。
  で、一応イワォの条件ドロップが麻痺状態撃破なんだけど」
天子「なんでみすちーは麻痺投刃一切振っていないんですか?(現場猫
輝夜「ほんそれ…というのは簡単だけど、実際ここは麻痺の香使ってるのよね。
  実は狐野郎はこれまでの世界樹各作品で、香や縺れ糸ってほとんど使ったことがなかったのよね。
  ところが異常付与アイテムは使い捨てである分、スキルよりもずっと付与率高いのよ。ついでに抑制攻撃ブーストの補正も乗るわ」
アリス「石化なんかはだんだん付与できるスキルが減ったせいもあったし、石化香は結構使った記憶はあるけどねえ。
   わりとホイホイ決まる印象はあったけど、そういうメリットもあるのね」
輝夜「ダメージが絡まないからギリギリまで削って香を投げる使い方もあるけど。
  あとは前提分程度ではあるけどグッドラックもあるから、それ込みでミスティアと魔理沙が香を投げればわりと決まるわ。
  あ、あとスプレッドスローは地味に異常付与率も補正してくれるからこれも併用できるのよ」
アリス「かごめ達に比べればまあマシな構成なのかしら。
   あとこいしに介錯振り切るのは
輝夜「お約束(キリッ
アリス「まーたムイシキが首を飛ばすのか(真顔
輝夜「まあ案の定ヤツがイワォをカイシャクして終わりましたが」
天子「はいはいムイシキムイシキ」
アリス「実際クッソ便利なのは確かね。
   今回も入らないの、精々ラスボスと裏ボスぐらいじゃなかったっけ?
   ラスボスに入らないという辺りは3より弱体化してるのかしら」
輝夜「元々スキルレベル8だったのが4になったのもあって感覚が違ってくるけど、一応マスターした場合の判定発生HPと成功率は変わってないわね」
天子「あと何気に3だとラストアタックまで封じてくれたけど、クロスの介錯だとラストアタックまでは防げなくなったそうね。
  地味に腕依存のパッシブっていうのも忘れられがちだけど」
輝夜「ただし素手でも発動するわよ、今も昔も」
アリス「あからさまにニンジャね」
輝夜「まあ介錯の仕様は置いといて、リリカ達は単純明快よ。
  めるぽが属性アームズ付与してムイシキが五輪ぶん回しながらリリカチャンがスピアインボルブでねじ込む、以上
天子「単なる脳筋じゃない」
アリス「一応異常撒いたり封じしたりはするのね。ところで回復は
輝夜「リィンフォースと英雄の詩で(真顔
天子「異常は申し訳程度のドラッグバレットでいいとしても封じどうすんのよこれ?」
アリス「ウワサに聞くけどクロスは不屈がバグでどのレベルでも食いしばり100%発動するらしいから、それでカバーするとか言うんじゃないでしょうね…?」
輝夜「そのつもりじゃないかしらね。
  実は後に触れることになるだろうけど、ミスティアが後にサブヒーロー、魔理沙がサブセスタスに変更されてるわ。
  より封じ率を上げたり、回復性能を向上させてたりはしてるみたいよ」




輝夜「そうそう、一応だけどイワォから先手を取る順路の一例も載せておくわ。
  予めFOEは排除してあるけど、居てもやれないことはないわよ」
アリス「これだとマップ左側からになってるけど、右はどうなの?」
輝夜「逃げ場が一個しかないから、必然的に難易度が跳ね上がるわね。
  ただし右側からの侵入は、3体いる貴婦人を1体以上事前に潰しておく条件は必要だけど、安全にイワォにバックアタックを仕掛けることが可能よ。
  左側からの侵入でのバックアタックは姫君を2体とも潰しておく必要があるから、事前にパープルレギンスを狩り尽くしておきたいならそっちでもいいけど」
天子「どーせ降魔の小手狙うんだろうし姫君も貴婦人も全部潰しておくんでしょ、あいつらのことだし」
アリス「森鬼は放置安定ですねわかります」
輝夜「そもそも上のカットだときっかり始末済ですもんね。
  どーせカラドボルグ持ったイッヌがいつものショックスパークd」
アリス「そのイッヌ、本当にそんな程度の武器で済ませてると思う?
輝夜「【えっ】」
天子「そーいえばそこの明夜君、随分前から砲剣ドライブぶっ放してるみたいだけど」
アリス「んまー余裕でセプテンメラムは付けてるわメイン武器は富嶽だわで
輝夜「
パッカじゃないの!?マジでバッカじゃないのこいつら!?><
アリス「よくよく考えてみれば岩窟のカメェをショックスパーク2発で飛ばすアホ火力ですものね、富嶽級の狂った火力なきゃ無理よね実際。
   ちなみにこのレベルからだと石化したシルルスに、バフ無しのショックスパークで2万近い追撃ダメージが出るわよ」
天子「謙虚じゃないわねえその火力…むしろ無法すぎんでしょ」
輝夜「ぐ…ぬぬ…今更だけど洩矢の諏訪子神がなんでここまでブチ切れるのか改めて思い知らされたわ。
  こいつらの中に、如何に限界まで縛ってとは言わなくても、適正でどうにか挑戦してどうにかしようという精神はッ…」
アリス「ないから途中で放り投げるわ、一年以上経ってからしれっと再開できるんでしょー?(なげやり
   実際の所砲剣は剣スキルも使えるから、ソードマンやヒーロー、マグス、シカ辺りは純粋に火力向上になるんでしょうけど…重量補正で速度が殺される、盾は持てるけどサブウェポンが持てないといろいろデメリットもあるんだけどねえ」
天子「サブペリ取るとしても、砲剣スキル使わないんだったら取れるのはHPブースト、属攻ブースト、コンバーター、アベンジャーぐらいしかないからいっそ持った方がいいとかいう?」
アリス「つか結構色々あると思うんだけど、抑制防御ブーストはノーカンなのね。
   それに一応リアガードもあるんだけど、砲剣絡まないスキル」
天子「武器スキルはー?」
輝夜「はあはあ…今作はマイマイザーの「マイマイ音頭」がトチ狂った睡眠付与率だけど、それ目当てで長く使うかといったら微妙…かしら、はあはあ><」
アリス「睡眠香投げろ案件(キリッ
天子「範囲とかいろいろ優秀なスキルはあれど、サブウェポンが持てないのが足引っ張る感じかしら。
  イッヌは完全に火力だけを取ってるのね、サブペリで」
輝夜「…それが正しい運用法ではあるわね…炎属性の瞬発火力が欲しければフレイムドライブでいい…あーチクショウ本気で脳溢血起こすところだったわ怒りで」
アリス「どうせ脳溢血起こしても死なないしいいじゃないあなた(真顔
輝夜「冗談じゃないわキングが一流を証明するまで私は死ぬわけにはいかないッ…!!
天子「あーやっぱりそこは詰まってるのね。
  敢えて聞くけど何処で終わってる?」
輝夜「URAは行った(キリッ
  高松宮記念は楽勝」
天子「∑( ̄□ ̄;)ウッソだろお前!!
  ちょっと一体どんなサポ使ってどんな育成したら安定するのよあれー!!!」
アリス「脱線も甚だしいしウマの話は後回しになさいな。
   というわけで、十一迷宮はここまでかしら?
   次どうなるのかしら?」
輝夜「ストーリー的にはいよいよ佳境、次で一気にブロートとの直接対決から、ラストまで基本ノンストップよ。
  ここまで出てこなかった、いくえ不明組もどしどし出てくることになるわ」
天子「あ、小迷宮はクリア後に回すんで?」
輝夜「実際狐野郎は無理矢理話組み立てようとして断念したそうよ。
  本編にも基本絡まないし、多分シヨンの傑作選モードになるんじゃないかしらね」
天子「またかい(真顔」
アリス「結局他の連中も戻ってこないわ早苗は死んでるわで、続けるんだったら場所移したほうが良くない?」
神奈子「勝手に殺すなうちの巫女を…なんかバクシンを連呼してて心配ではあるけど、しばらくそっとしておくしかないわねあれ。
   んまー今更追い出すつもりもないし、好きにしてなさいな」
輝夜「と言うことで家主様の許可が出ましたので(キリッ」
アリス「私も言えた義理ないけどちっとは自重なさいよ」








放たれた天の焔渦巻く儀式の間。
追い詰められたと思われたブロートはすぐに、次の手を打っていた。

死んだように動かぬままの八雲紫…彼女は遡ること数時間前、追随していたヤマメが撤退しようとも歩みを止めず、単独でいち早くこの中心部へと到達し得ていた。
闇雲にただ森の迷宮最奥を目指していたわけではなく、かつてエトリアの地で知り得ていた「枯レ森」のシステム、その「抗体」の動きを封じることでブロートの計画を根底から打ち崩すべく…彼女はその「核」と共にある守護鳥が居ないことを知っての上で、首尾良く侵入を果たしたのだ。

その目論見に狂いを生じたのは、そこで目にした「ブロート」の秘密。
彼女はその前に屈することとなり、停止させるはずの抗体を、さらに活性化させる術式に組み込まれてしまったのだ。

彼女はすぐさま自身を仮死状態にし、魔力の流出を最小限に抑えた上で、小さな式神を解き放った。
それを偶々受け取ったのが、傷ついた一舞や咲子を庇い、森を抜けようとしたまり花だった。
彼女は二人の身をレティに託すと、式神が導くもっとも安全なルートを辿り…そして、イワォロペネレプが最深部に戻ると同時に、戦いに介入することが出来たのだ。


その事情を総て知るのは、現在は紫を除けばまり花ただ一人。
乱戦の中、それを十全に伝えうることは不可能に近い。
そして何より、「ブロート」は既に紫の状態を解明しており、それを解き放とうとしていた。


「ブロート」も知っている。
八雲紫という妖怪が、かつて全能に近しい力を有しながら、その多くを失った現在でも、なおも強大な力を有した存在であることを。
「ブロート」がリリカから奪い取ったのは、その力のみではなかった。

だが…「ブロート」は…かつて同じように紫の力のみを欲した鬼人正邪のように…あまりに甘く見すぎていた。



「みつけたよ」

無邪気な、それでいて魂を氷の刃で鷲掴みにされるような…少女の声が、耳に届く。
振るわれた刃を、もうひとつ割って入った刃が受け止め…「ブロート」は確かに見た。
鮮やかな金の髪と、どこまでも深い狂気の影を落とす、碧の瞳を。

返せよ。
お前が掠め取りやがったそのチカラは…私の友達のだ


その少女の表情が、狂気の笑みから…憤怒へ変わる。



そして、美しく残酷に、この大地から去ね!!」


その口から発した言葉に、こいしと…紫の声が重なる。
それは、「ブロート」がその計画のため、踏みにじり利用してきた者達、すべての怒りを体現するかの如く。

黒薔薇の刃が、阻む刃を砕き散らし、その喉元目がけて…奔る。