そのことに気づいてしまったとき、彼女はその手を止めてしまった。


強大な世界蛇と言えど、その動きは大きく制限され、放たれた雷も、巨大な尾の一撃もこちらを捉えるに至らない。
生命力はその巨大さに見合うものがあったのかも知れないが、守りを固めるほどの力は取り戻せていなかった。

だが、その身が傷つくたび、少しずつ…弱まっていくのだ。
世界蛇もその度に、緩慢だった動きは速度を増し、狙いも定まっていく。
雷のブレスも、先見術を仕掛けなければならなくなってきた。

つまり、それは…世界蛇を押さえている二人にも、ダメージの影響が出ていることに他ならない。
二人の意識が弱まっていくのに連動し、自立兵器であるヨルムンガンドそのものの意思が現出し始めているのだ。


そればかりではない。
『ブロート』の干渉が無くなったことで、彼女たちの戦闘能力を制限するものは何も無い。
それどころか、これまでの戦いで抑圧された中で、闘気も魔力も、おそらくはこの世界に比肩する者など存在しないぐらいまで上昇しているはずだ。

それこそ、『今の』世界蛇であれば、瞬く間に機能不全に持ち込めるほどの力を、彼女たちは有していた。


明夜もこの戦いの中で、幾度とそれを見ていた。
掛け値ない全力の攻撃を受けながら世界蛇はまるで堪える様子もなく…否、それが纏う異様な力場を、脱皮するかのように脱ぎ捨てて幾度も元の姿へ立ち返る。
これこそ『ブロート』が、砂粒ほどの命を糧にして、この世界に遺した最後の悪意であることを、彼女は、気づいてしまった。

この力場は、秋を司る大神格である穣子の、神格としての存在そのもの。
そこに『世界蛇の核』となったペルセフォネに関連付けられている。
この力場を強引に剥がすことは、彼女たちの存在すらも危うくすることを。

このまま、攻撃を続けたらどうなるのか。
仮にこのまま、この超兵器を制することができても、中の二人は。


その迷いが剣を止め、彼女は大地をも引き裂く、その一撃を受けてしまった。


時が、止まる。




~新・狐尾幻想樹海紀行X~
その39 神喰の娘




「あれ…」

気が付くと、彼女は見覚えのない場所にいた。


見慣れた石造りの壁。
精緻な装飾の施された天蓋を持つベッドの上で、彼女は眩しさに目を細めながら、ゆっくりと上体を起こす。

窓から見える、曇天を知らぬかのような青い空と、それ以上に蒼く深い海の景色がどこまでも広がっていて…吹き込む風が、潮の匂いを運んできた。



「気が付いたかな」

柔らかな、男性の声。
どこか懐かしく、そして、どこか憂いに満ちた声。

聞いたことのある声だった。
不快さを感じるどころか、安心感さえ覚えるほどに。

「僕もずっと、こんな穏やかな暮らしを望んでいたんだと思う。
愛すべき家族と、大切な仲間と、時に笑い、時に悲しむ、なんでもない日常を

その空が、海が、黄昏とは別の、禍々しさすら感じる赤に染まる。

立ち込め始める、血と油と炎の臭い。
今目の前に広がる景色は、ある国の終焉。
そのことを理解するのに、然程時間はかからなかった…なぜなら。

「…ねえさんは、このばかばかしいくりかえしを、おわらせられるといいました。
そんなことが…わたしたちにも、できるんでしょうか」

振り返れば、そこに一人の青年が立っている。


見るものが見れば古代ペルシア人とわかる出で立ち。
無造作に伸ばした銀髪から、どこまでも澄んだ…深い悲しみの色を滲ませる、蒼い瞳。
初めて見る存在なのに、彼女は、その男に懐かしさを感じていた。



男は瞠目すると、ゆっくりと、その問いに答える。

「僕も、かつてそう思っていた。
どんな星の下に生まれても…誰もが何時か、解り合える日が来ると。
例え…この思いが何百…何千回、裏切られようとも


男は、彼女をそっと、抱き寄せる。

「僕たちは、それを信じ抜けたのか、わからない。
キミをあんな姿にしたことも、僕には止められなかった。
こころとからだを無理矢理に分けられて…僕は、なにもしてやれなかった」

蒼い瞳から、涙がこぼれ落ちてくる。
彼女は、それを優しく拭い取った。

「おもいだせたきがします。
あなたは、きっと…わたしのおとうさんなんですね。
わたしは、もう…あなたの娘では、なくなってしまったのかも知れません。
でも」

立ち上がりながら、その姿は急成長し…そして『犬神』の姿へと戻っていく。
握りしめた拳に、戦火の焔が、熱が、鎧や衣装となってその身を覆う。

「あなたからもらった『こころ』は。
まだ、諦めないって言ってるんです。
何千回でも、何万回でも…私、頭が良くないから…絶対に、諦めたくない!」


振り払われた右手に紅蓮が走り、使い慣れた重厚な刃が大気を切り裂く。
その瞳には、一点の曇りもなく、強い意志の光を宿していた。

「行っておいで。
キミの…生きていく世界へ」


青年…『崇高なる者』は、一条の光となって、彼女を包み込んでいった。
その意識が、急速に覚醒する。


♪BGM 「僕らのスペクトラ」/きただにひろし(「ウルトラマンブレーザー」)♪


「まだ、だっ」

押し潰されたかに見えた明夜の剣が、大地をえぐり続ける恐るべき尾の重圧を受け止め続けている。
否、それどころか、徐々に。

「まだ、諦めたくない…!
こんなところで…こんな、ところで!」


陽炎のように立ち上る橙の気が、やがてその腕に、足に、顔に、燃え立つ焔の如き文様を刻みこんでいく。
世界蛇の尾が、止まる。

「絶対に、みんなで帰るんだッ!!
黒き(そら)に吠えろ、神喰天狛(かみぐらいのあまついぬ)!!」


膨れ上がる刃が、天を衝くほどの火柱となり…群狼の尾の軌跡を描いて、天衝く火柱を蜻蛉に構えた明夜は跳ぶ。


「吠えろ、私の剣、私の魂!
ちぇすとおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」



爆風と閃光が、視界を埋め尽くした。








かごめ「ついに来ましたね、社台馬が…じゃなくてこのログの一区切りのところが」
静葉「ジャンポケやネオユニも想定外だったけどまさか
Season3放映と同時にドゥラメンテまで解禁とかマジ完全な不意打ちで…じゃなくて」
諏訪子「いや驚いたのは私も同じだけど、いい加減そっから離れろよお前ら。
   そういえばゆかりんはどうした? この我々にナメタ口利きやがった少女臭は」
かごめ「…つぐみが別室に強制連行してった、あとは言わなくてもわかるな?(しろめ
諏訪子「アッハイゴメンナサイ(しろめ
静葉「大賢者ともあろう者がこういう時こそ詰めが甘いのよねえ(プヒー
  とりあえず仕置きがすむまでにログを片付けましょう、我々はかしこいので」
てゐ「んまー本当に賢いってんだったら、最初からつぐみの逆鱗を完全対策しとけよお前ら。
  折角始祖共のヒマつぶしだのまさかの凱旋門賞挑戦だのが解禁されてステが天元突破できるようになったってのに、データ消されでもしたらどーすんだ(真顔」
三人「アッハイゴメンナサイ(しめやかに吐血」



かごめ「そんなわけでいつもニコニコ現金一括払い、今回のログでスタメンを務めましたかごめさんと愉快な仲間たちでお送りいたします…ってもなんか何時の間にか当たり前のようにつぐみたちがメインで挑んでるわけなんだが」
諏訪子「ホンッと今更だけどその前置きマジでなんなんだよ」
静葉「それにつけてもこのパティーン、フランが主役かと思ってたら何時の間にかてゐが主役になってたSSQ2を思い出すわね」
てゐ「しつこいようだけどあれ、私自身が一番わけわかってねーからな。
  どうせ狐野郎のこったし、いろいろ道中の話捻じ曲げまくってるうちに、最初の主軸が誰だったか忘れちまってるいつものパターンだろ」
静葉「っても漠然と私達同士で敵味方に分かれてなんかする、みたいなラインは最初から変わってなかったみたいだけど」
かごめ「それがすべての元凶だったんだろうなあ、今更だが。
   おかげで最初にログを始めてから、ここまで来るのにどんだけ時間が空いたことか」
静葉「ポケモンなんて世代変わってるしねー」
てゐ「大ッ体ウマ娘のせいだろどう考えても。
  現実にはこのログの開始時点ギリギリでサトノダイヤモンドが現役だったんだぞ
かごめ「マジっすか…サトイモどころかマカヒキも最近ようやく引退した(美結注:最近とか言ってますが2022年11月、もう一年近く経ってるんですけど…直前の京都大賞典が実質引退レースになりました)んだけど…つーかマカヒキの七年ってマジで長いな」
静葉「トーセンジョーダンが六年走ってるわね。
  ついでに年末(2022年12月)やっとこ引退したオジュウチョウサンが八年走ってるわ」
てゐ「春川の芽生さんがぱかチューブの柵太郎やら、ぱかライブの天然ムーブの数々やらで大暴れしてるからそればっか印象に残って忘れがちだけど、ワンダーアキュートの中の人もウルトラマンR/Bにゲスト出演してたって何人が覚えてるんだろな。
  第3話だけのスポット参戦だと思ってたら劇場版R/Bにもイカロスは登場してんだぞ
諏訪子「やめろその話…競馬云々より単純な年月の経過がヤバすぎるわ」
てゐ「んまあそもそもにして最初に世界樹に触れてから十年ぐらい経ってんだがな。
  こうなっちまうとマジで信じられんが、丁度ケロ様と穣子ちゃんがタルシスを駆けずり回ってた頃、まだ私ァアリスと組んでたんだよなあ。
  しかもなんか気づいたらハイ・ラガードでは実質主役を張らされてたとか、こんなん海のリハクでなくたって読めてたまるか(しろめ」
かごめ「ゑっもうそんな前になるのアレ(口から砂」
静葉「そういえばてゐ以外でここにいるの、あの時神樹狩りに行ったメンバーよねそういえば」
諏訪子「うわあ限界だ…懐かしすぎて泣けてくる…(しわっ
   そーいやあの頃からずっと、キバガミもうちらのログではセミレギュラーみたいなポジになってるよなあ」
かごめ「大昔からの付き合いだと思ってたらガチで大昔からの付き合いだった件。
   まーあいつ、思考ルーチンがあたしら寄りだからとりま男役で起用してなんやかんやさせるのにちょうどいいのだろうなあ」
てゐ「ハドラーと親衛騎団の立場がまるでねえな。
  読み返してみるとSQ3ログの頃、ポケモン対戦のもこういう解説役配置するんじゃなくて、地の文=サンみたいなのもいたよな」
諏訪子「あったなー、あれもポジ的には誰の当たり役だったのか」
かごめ「わっかんねえ。
   少なくともブロント語でみょんなナレんショん入れてたのはムイシキってことにはなってるが」
諏訪子「安定のムイシキ…というか、基本ここのこいしってデップーとかどこぞのピンクメンポニンジャとかみたいな扱いではあるしな。
   あれから踏破してきたシリーズの集大成を考えると、クロスの要素がアホみたいに膨大なことになってるのも、まあ納得すべきところなんかな
かごめ「お、きれいにまとめたなケロ様」
静葉「流石は一級土着神と関心するけどなにもおかしいところはなかったわ」
諏訪子「やかましいぞスットコドッコイ共。
   んで、これなんかPTにしれっとレティいるんだけど、最初4りでやるんじゃなかったのかこれ?」
かごめ「なんかもうこの時点ではダルさが天元突破してて、とりまサクッと攻略するために結局5りにしたっていう経緯が」
静葉「装備品やスキル見てももう普通にそんな必要ないでしょどう見てもこれ」










諏訪子「うわあ(しろめ」
てゐ「流石の私もこれはやりすぎ以外のなんでもねーと思うんだけど」
かごめ「あたしも正直思った(キリッ
   ついでに前回つぐみがいろいろ御託を述べてたが、実際にそんな行動パターン把握して先見術置いたりとかそんな器用なことぁ一切してねえ。
   ウェポンと号令でひたすらミユサンとめーやちゃんを強化して、バ火力で殴って、そんでおしまい。
   ぶっちゃけ黒幕居なくてもよかった」
てゐ「実際レベルさえ足りてればごり押しでもどうにでもなるからなあ、実際マジで弱いんだよなヨルムン。
  私の経験談って形で話すけど、正直SSQ2のバーローの方が数倍強かった。
  HPはバーローがヨルムンの3分の1ぐらいなのにな」
諏訪子「んまーなんだかんだあいつ手数もめちゃくちゃ多かったからな、巷じゃ弱いとか言われてっけど実際無印SQ2と同じだと思ってたらマジで痛い目見る。
   にしてもこのイッヌ、もうヒーロースキルで殴るっていう選択肢ねえのか」
かごめ「いーや平時はそれでも脳死でショックスパークぶん回して、なんだかんだコスパのいい凍砕斬やミラージュエッジでとりま分身出すとか結構使うよ。
   とはいえボスとかFOEは基本砲剣振り回してるだけで解決するのがなんともな。
   あと相変わらずインパルスエッジがクッソ便利で」
静葉「でもインパルス残像なんて出ても基本うまくないわよね、残像自身のTP回復する意味ないんだし」
かごめ「まーそんなふざけたもんが出たらシャドウチャージで消せば良いんだし。
   本命はドライブ残像出ることだわな。これが出るとマジで火力が段違いで、本体と併せてヨルムンのHP10000ぐらい軽く削る
諏訪子「レジメントレイブの存在意義ねえな、実際振ってねえけどよ。
   ただそう考えると平時はヒーロースキル時々インパルスエッジで、ボス戦とかではドライブの高火力を押し付けるのか。
   理にはかなってるんだな」
てゐ「それにミユサンは結局なんだかんだで死の鎌使うのか…サブはきっちりシングルデボートと剣士の心得以外振ってねえし…」
諏訪子「あと振るとしても精々抑制防御と物理防御ぐらいか?
   まー霊魂固着とか優先するんだったら話別だろーけどよ」
かごめ「なんか後々サブ変えたみたいな話してたけど、殴ることだけ考えるんだったらこれでいい気がしなくもないんだけどねえ。
   なんだかんだ一番迷走してるのはミユサンだなあ」
てゐ「ひとつナゾなんだが、不屈って1振りでも100%食いしばるんだろ?
  なんでわざわざこれに振ってんだ?
  散々SSQ2の金竜戦でテラー付与に悩まされたんだし抑制防御に振る選択肢なかったのか?」
かごめ「食いしばったときに回復するHP量が多いのもそうだけど、忘れがちだが号令スキルは1振りだと行動速度補正が小さすぎて先制されることも多いからな。
   まあなるたけ初手で撃ちたいし」
てゐ「だったら杖装備じゃなくて突剣装備でいいだろそんなもん…回避バフスキル持ちのゴーム・グラスだのTP上昇つきのコリシュマルドだのAGI上昇のパニアードだの色々あるんだし。
  杖の行動補正ってマイナスになる奴結構あるぞ」
かごめ「(イラッ)だったらんなのつぐみ本人に聞いてくれやあたしが知るか。
   大体貴様らなああああたしがガバやると総掛かりで叩きに来るくせにつぐみ達に対しちゃその辺甘かないんですかねえおおん!?(´゚д゚`)
てゐ「ここまでの行状考えても根本が悪ぃんだろがどう考えても!私が言えた義理じゃねえけど!!><
諏訪子「あーいいわかったわかった私らも悪かったしそこのてーもその辺にしとけ、話進まねえし(かごめに酒を投げつける)」
つぐみ「(スキマから)いちおー平時は巫剣使う気でいたのの名残なんだけどね、使わなかったけどめんどかったから変更してないだけだよ。
   つか呼応まで貼ると手が空くから、マスタリ活かして殴る役割もあるにはあったからね一応(スキマアウト)」
諏訪子「……さよか。
   それにつけてもマリカチャンも意外にぶれねーもんだな、こいつはニンポを使う余地あんのか?」
かごめ「(飲み干した酒瓶を吹き飛ばす)さーな骨砕きを使うかどうかじゃねえのんなもん?
   こいつぐらいのLUCあれば、雑に含み針撒いてるだけでも眠らせられそうな気はするけどどうなんだろね。一応ヨルムン眠り通るし」
静葉「(手酌)前置きを考えると、そこまで考えて動いてるかも疑問ありそうねえ」
てゐ「(手酌)何したかって話に言及されない時点でどーせこいつ、前後の証言から先見術とかこざかしいことしてるわけじゃない以上、圧縮連星術連打してるだけの気がしなくもない」
諏訪子「せやろな(真顔)
   で、こいつは結局なんなんよ」




かごめ「実際こいつのやること単純そのものだしな。
   挑発かかって突っ立ってるだけで殴られるたびに何故か回復する」
諏訪子「タゲ取って立ってるだけで仕事が成立するニートパラディン状態かよ。
   それでも十分強いんだが、こいつサブヒーローにしてシールドアーツとかさせとく選択肢はなかったんかね?」
かごめ「そんなにアグレッシヴに動くタマかこの黒幕?
   というかそんな動き方するんだったら常時フロントガードかヒールガードでいいだろっていう」
静葉「まぁね。
  そもそも狐野郎のことだから、先見術と三色両方構えて閃雷とシールフレイム両方やりすごす肚だったんでしょうけど、そもそも行動ループ把握してたとは考えづらいわね」
てゐ「そもそもクリティカルなのはシールフレイムの方なんだし、終盤はまず脳死で炎の先見術だけ張っときゃいい説」
諏訪子「
それなあ!!(゚д゚)(CV:山根綺
   閃雷のデバフなんてつぐみでもマリカチャンでも解除できんだろんなもん」
静葉「どっちみち引退ボーナスは乗ってるし、装備も自重してないからゴリ押しなんでしょうね。
  行動パターンをwikiガン見しながらやってたのなんて、今のところSSQ2の幼子ぐらいじゃないかしら」
かごめ「いちおー神樹の時も行動パターンガン見しながらやってたんですけどね(真顔
   あれは弱体化してたせいもあって一発でsageましたが」
諏訪子「パズルボスってパターン割れたらつまんねーからな、ゴリ押すのもどうかとは思うけども」








降り注いできた瓦礫を押し除け、傷ついた五体を叱咤しつつ立ち上がろうとするつぐみは、確かにそれを見た。
紅蓮の火線と化した明夜渾身の一撃を受けた『蛇』が、額を派手に焼き焦がしてのたうち回る様を。

力場が、剥がれない。
挙句に鱗に纏われた世界樹の力が…穣子から奪い取られた力が、急激に失われている。

そして、荒い息を吐きながら、不格好に構えていた明夜は…あべこべに禍々しくすら思えるオーラを放ち、『世界蛇』に収束していたエネルギーを侵食し始めている。
普段の彼女から想像も出来ないような、怒りと殺気に眦を割き、窄まる瞳が、そこに刻まれた『紋章』のようなモノが、異様な光を放っていた。

もし、ネットミームに至るまでの古今東西の雑学に詳しい者…例えば美結がいれば、即座にその正体を言い当てたかも知れない。
本来『それ』が忌むべきモノの証であることを知っている彼女であれば。

だが、明夜自身にとって、それは決して忌まわしきものではない。



-取り戻せたんだね、あんた自身を-

だれかの声がする。

-あんたは、生まれてからすぐに、あたし達から取り上げられ…そして、肉体(うつわ)から取り出されちまった。
だが何の因果か、行き場を失ったあんたの魂は…全く別の存在になりかわって、そのおかげで、戻ってこれたんだ。

どいつもこいつも、めちゃくちゃやりやがって…ヒトの娘を、一体、なんだと-

怒りと悔しさすら滲ませるその声は、別のよく知る『だれか』によく似てる気がしていた。

-今更のこのこ出てきて、母親面するのもおこがましいとは思うけど…いい、家族ができて良かった。
今のあんたは、自分自身のチカラを、完全にコントロールすることができる。
誰も傷つけずに生きていける弱い存在にも…世界を滅ぼす怪物になることも…選べるんだよ…!
-

彼女は、ふるふると首を振る。

「わたしは…まもりたいんです。
あなたたちがかつてそう思ったみたいに。
わたしがしってる、私の眼に映る…大切な、ひとたちを」


-勿論、できるさ。
あんたの…あの『母親』のように-

はい、と頷き…そして。

「ありがとう…ほんとうの、おかあさん。
わたしは…私は、この力で…絶対に、護ってみせる!!」


紅い髪の女性が…自分のよく知る同じような、勝ち気な笑みを返した。


憤怒と憎悪で爛々と光る眼を、焼け焦げた顔から向ける『世界蛇』と相対する彼女は、既に肉体のダメージを完全に回復させていた。
その髪や尾はまるで別個の生物のごとくざわざわと蠢き、逆立ち、その毛先は焔を灯し、解き放たれた咆吼と共に燃え盛る業火と化した。

「いっくぞおおおおおおおおおおおお!!」

極大の一撃を解き放った反動により、赤熱したままの刀身を振りかぶって明夜は跳ぶ。
蜷局を巻けば島とも見紛うかの巨体が鎌首をもたげ、空気をも腐らせる吐息を台風のように吐き出しながら迫る顎にひるむことなく、彼女は縦横無尽に刃を走らせた。

赤熱した刃が高速で空間を走る軌跡が、『世界蛇』の毒息と反応して派手に炸裂するが、明夜はその爆発を推進力としてより高く、深く斬り込んでいく。
鍛えた刃もロクに通さないその外皮に刃を突き立てると、苦悶か怒りか、雄叫びを上げるかのようにして天を仰いだその外皮を、力任せに引き裂きに掛かる。
その悍ましい絶叫すらも飲み込むような咆吼と共に、高まる闘気と魔力に呼応して燃える髪が勢いを増すと、血のような緑の瘴気を噴出させながら徐々に、傷が裂け目となって『世界蛇』の表皮に走る…!

次の瞬間、『世界蛇』は高高度から取り付く明夜を遙か下の地面へ叩きつけにかかった。
急加速の強烈なGがかかるそのわずかな時間で、彼女の瞳の文様がより強い力を解き放つ。

「血の螺旋、身喰らう者の鎌、薔薇の王冠、穿たれし心臓よ。
…脈打ち、渦巻け、花開け…『崇高なる者』の娘として、彼の名の下に命じる!!


紡がれる呪文に呼応するかのように、露出する彼女の四肢から頬にまでかけて、赤黒く輝き脈動する文様が展開されていく。


「偽りの繁栄、その象徴たる世界蛇を、たたき斬る!!
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおりゃあああああああああああああああ!!」



振りかぶる右腕が、赤熱する肉の組織と巨大な刃を繋ぎ、禍々しき太陽の紅焔と化す。
天地を揺るがすような咆吼と共に、偉大なる魔術王の娘が振う紅蓮の鉄槌が、生命の摂理を超えた忌むべき蛇へと叩きつけられた!





肩で荒く息を吐くキバガミ、そしてウィラフ。
共に魔物たちを圧倒せしめ、切り伏せ、圧し潰し、退けながらも…雲霞の如く押し寄せる魔物たちの前に、次第に劣勢に追い込まれていた。

「何という数よ…キリがない…!」
「単純かつ、無慈悲…ううん、いつか必ず、果ては来る…!
聞いてるわよ…かごめ達が、ギンヌンガの全部の魔物を追い散らしたって話ぐらい。
その程度の芸当ができなきゃ!!」

うむ、と頷くキバガミだが、互いに限界なのは解っている。
最後の力を振り絞り、駆けだそうとするも…彼の足は、自然と頽れる。
肉体も、精神も、とうの昔に限界を迎えていたのだ。

ここまでか。
冷たい大地が、彼の巨躯を迎え入れようとした、その刹那。

「無茶しやがって。
だが、良く生き残ってくれやがった」

燐光に包まれ、驚愕に目を見開く彼の見上げた先には、緑の気を暴風のように纏う少女の姿。

考えてみりゃ、私達ぁ『世界樹関連の力』を完全に馴らしてたっけな。
どーりで思ったより疲れねーと思ってたんだわ」
「そういうことね。
私達土地の縁に基づく神にとっては、それが唯一最大のアドバンテージですもの

無数に走る緋色の閃光が、穢い酸毒を今にも吐き掛けようとしていた軟体巨獣も、その禍々しい形状の角で吶喊を仕掛けようとしていた四足獣も、歪な骨を纏う暴竜も…瞬く間に肉片となり、ぶちまけられた強酸の液に腐食される。
諏訪子は「やれやれ」と嘆息すると、悪戯っぽく相方の女神に告げる。

「穣子ちゃんはこれ終わったらかごめにしこたまどつかれると思うが、その辺どうお考えかな静葉殿よ?」
「流石の私でも今回は頭来てるし、私が一発ぶん殴る分残しとけって言っといたから、まあそんなひどいことにはならないでしょうよ」

その言葉とともに、再び魔物達に確実な死をもたらす緋色の線が、周囲を走る。





『世界蛇』の中で、彼女は再び『自分』を取り戻していた。
振り返ると、取り込まれていたもう一人が、驚愕の表情で『それ』を見つめていた。

視線の先には、どこまでも朱く広がる黄昏の景色。
それを侵食している…否、「侵食されている」ようにすら見える、黒く悍ましき影。

「こういうことばかりしやがるから、あなたのような殿方には虫酸が走るのですよ」

対峙するは、緋色の翼を広げる、薄桃色の髪を持つ少女。
冷酷かつ高圧的に、少女は悍ましき影へ吐き捨てる。

「『羅喉』の報い、あんた一人で勝手に滅びていれば良いものを。
しつこくしつこくつきまとって、挙句に私の尊敬する人も、大切な友達もみんな傷つけやがって。
あんたがどんな目に遭ったかとか、そんなの知らない。知りたくもない。
だから」


朱い刃が、柳生天の構えに振りかぶられる。

「その魂の一片たりとも、私はあんたの存在自体を許さない。
美しく残酷に、そして可及的速やかに!
この大地から去ね!!


赫怒の雄叫びを上げ、『緋色の鳥』と成った美結が、影を駆逐すべく飛ぶ。





雪。
雪が舞っている。

-絶対に…護ってみせる…!-

はっとして見開いたその視線の先で、過去の記憶がオーバーラップする。
幼かったあの日、夢と現の境目で見た光景。
彼女の脳裏に色褪せず残るその記憶。

あの日と同じように薄紫の髪を靡かせ、渾身の凍気を盾に。
振り返るその瞳も、あの日と同じ、深い悲しみの色に染めた光を灯し…否。

-いっしょに、かえるって…約束-

思わず手を伸ばしそうになって、まり花は唇を噛む。

なにをやっているんだ、わたしは。
こんなところで、ねてるばあいじゃないのに!

天を衝くように振り上げ、固く握り合った拳を中心に、雪は吹雪となって渦を巻き、冷たく輝く死の光へと収束する。









諏訪子「実際問題このあたりの話も後付け設定ではあるんだよなあ。
   そもそもあの黒幕がコーヒーに造詣があるって、発祥はゆっくりだったっけ?」
静葉「そーね。多分それでシャノワールと関連付けられたと思うんだけど」
紫「マリカチャンのイメージカラー確か山吹色だし、性格的にも氷属性ってタイプではないと思うんだけど、そのへんはどうなんですかごめさん?」
かごめ「雷だとつぐみどころかいぶぶとどっかぶりするからじゃねえの?
   かといって光だとアバウトすぎる、炎だとイッヌともあたしともかぶる、大地は地味。
   消去法でそれなりに強そうな属性っていうとまあ氷?みたいな」
てゐ「⑨は
かごめ「実際基本は⑨の扱いではあるな(真顔
諏訪子「ひ♪民に刺されそうな発言してんなー…っていうのは簡単だが、放送局や「あのね!」のキャラ付けだと否定しきれないのがなあ。
   ところでふいんき()的には咲子とりんりん先生がおもっくそかぶってる気がするがそこもどうなん」
かごめ「んまー狐野郎のことだからそこまで考えてはねーというか、公式的にも大差ねえ気がするんだよねえあの二人の扱い。
   ただSSHだと何となく凛は地で咲子は光と闇が備わり以下略、っていう気がしなくもない」
てゐ「…混ぜっ返すようで悪いが心菜もかぶらねえかそれ?」
かごめ「あいつは水か風で説明つくだろ、ニンジャだし(真顔
   結論から言うと狐野郎的にはまりか氷、イブ雷、エロサイドテールは光、さきき地、りんりん先生闇、なっちゃん炎、ココナァ風って扱いにしたいらしい
諏訪子「まあ…ポケモンログ番外編でもゴルディオンハンマーぶっ放してたからな、あのハンコ屋。
   ポケモンでも基本その方向性で考えてるみたいだけど」
てゐ「現状めうめう(デカヌチャン)が設定上りんりん先生(アーマーガア)の天敵になってるみたいだが」
かごめ「大体そんな感じで合ってる気もするけどなあいつら。
   話は脱線したけど、実際黒幕の過去設定ももっとシリアスにまとめたかったのもあって、レティ関連で定番のチルノはあたしの話で過去に使っちまったからじゃあそれっぽい誰かを当てるならまりりしか適任もいなさそう、ゆっくりレティもコーヒー持って仲裁に出てくるし、奴がシャノワールに入り浸ってた光景も想像しやすいから丁度いいやって感じで配線がつながったんだろな。
   ちなみにプロット決まってこの辺の展開が一番最初にすんなりできたんで、実はあれありきで考えてたっていうのはある
諏訪子「結果SSQ2のてー並みにマリカチャンとレティの設定大魔改造がされてしまったと
かごめ「補足するともっとド派手に敵味方分かれてなんやかんやしたかったけど、ゲーム自体が長すぎて飽きてきたというか。
   あとマリカチャン周りがすんなりいったからほかにも似たような因縁…意外に形になりかけてた静葉とリグルを中心に最終戦考えてたけど、こっちは恐ろしいほどイメージがうまくいかなかったから結局放り投げて終わったという背景もあって」
てゐ「穣子ちゃんがラスボスに絡んでることもあって土壇場で寝返らせる理由づけもあったからなあ、静姉の場合。
  補足すると相手もりぐるんじゃなくてかごめかケロ様みたいなのもあったしでまとまらなかったんだよな、そこ」
静葉「んまーそれは別にいいんだけど、伏線らしきものだって海嶺で私とあの子がタイマンしてた程度しかなかったし、最終的にそっちの理由づけがめんどくなったってのもあったんでしょどうせ」








ある種の神楽を思わせるような、優雅にも思える動き…苦戦を強いられるマルコ達の前に現れた老銃士が、縫うようにして魔物の群れの中を通り抜けると、その軌跡に無数の閃光が走る。
さらに一拍遅れて釣瓶打ちしたかのように連続して銃声が響くと、急所とおぼしき場所から夥しい体液を撒き散らして魔物達が斃れた。

しかも一発一体どころではなく、明らかに音の数と倒れる魔物の数が合っていない。
一発の銃弾で複数の魔物を葬る、達人芸とも言える凄まじい技量を見せつけ、老銃士は放つ殺気で魔物達を完全に尻込みさせていた。
さらに驚くべきことに、傷つき力尽きかけていたマルコとオリバーを庇うように立つ彼は、まるで息一つ切らすことなく。

だが魔物の中にも狡知なものがいて、仕込んだ弾薬を使い切ったと見て取るや、その隙を逃すまいとさらなる攻勢に出ようと構えた…が、一頭の大型犬が、襲い掛かる魔物の喉笛を最小限の動作で確実に深く、鋭く噛み裂き、唸りを上げて魔物の群れを威嚇する。
その段までになって、ようやくオリバーは、感嘆の息を吐いた。


「すげえ…!」
「これが…ハイ・ラガード最強を謳われた、エスバットの『魔弾』…!」
「知っているのかマルコ!?」

この緊迫した局面の中で、場違いにも見えるふたりのやり取りに苦笑し、老銃士…ライシュッツは苦笑する。

「フ…ワシの如き老兵の曲芸に驚いておるようでは、まだまだぞ。
…ここからは我々から征くぞ、ジュニア」

ジュニアは、応えるかのように一度短く吠え、再び鋭く魔物の群れに切り込んでいく。
その着地点を狙った魔物は、牙を突き立てるより先にライシュッツの精密射撃で上顎ごと持っていかれ…それどころか、ついでのように顔面の大半を爆ぜさせていた。

「噂には聞いてたけど…まったくもって、敵には回したくない御仁だな。
それじゃ」

無造作に短く切られた銀髪を揺らし…放熱を終えた『砲剣』を再び稼働状態にして構えるは、北方帝国が誇る『大騎士』ローゲル。
その背後に、人に似て人ならざる、異形の術師が仏頂面のまま静かに陣を広げる。

「背後は任せよ。
貴様の腕は認めるが、貴様らの技は大味すぎる」
「ご配慮、痛み入ります…ウーファン師。
こちらも攻めに転ずるとしますか!!」

領域を広げる『方陣』が触れた魔物達の動きを奪い、最大稼働する『砲剣』の一撃がそこへ炸裂し、一瞬にして数体の魔物が跡形もなく蒸発する。
それにより体の半分を消し飛ばされながら、なおも残った側の鎌を振りかぶる蟷螂は、『方陣』の光が収束する『破陣』の一撃でチリと化した。

「かごめちゃん達もホントさあ、私たちの知らないところでどんだけヤバい人たちと一緒になっていろいろやらかしてやがったのかしら」

傷ついたレオ、ロブ、カリスの手当てを終え、憤然と葉菜が立ち上がる。
看護師を務めた若い頃に取った杵柄にすぎぬ、と本人は言うが、彼女の応急治療術も既に人間の辿り着けるような領分を逸脱しつつある、見事な手際であった。

彼女だけではない。
比較的軽傷だったこともあり、かごめとるりを除く『雨虎』の面々も、そこに姿を見せていた。

「るりちゃんまで戦えなくなった以上、あたしたちが一層踏ん張らなきゃいけないわね。
ほらそこのアンナ、さっさと次の撃ちなさいかごめちゃんの代わりに私がひっぱたくわよ」
「うええ…あの黒髪いなくても私に人権はぬぇんですかぁぁ…」

ロブ達に混ざって疲弊したフリをしていたアンナが、ふらふらと立ち上がって気怠そうにするが、葉菜が威嚇代わりに血塗れの棍棒を突きつけると「ぴゃっ」と悲鳴を上げて即座に魔法の詠唱に入る。

「ひぇぇええっ契約により我に従え理(ことわり)を説く者天界の門衛っ来たれ破滅の豪雷穢れなき威こ…うわあああああ詠唱間に合わねーって!!」
「ああもうすぐそうやって雑に大魔法使って楽しようとしやがってこんにゃろ!さゆちゃん!!」
「いやーもー先輩も人使い荒いんだからー…はいよっと!」

棍棒をつっかえ棒にして魔物の牙を受け止めつつ、さらに別の魔物に強烈なストンピングを繰り出しながら叫ぶ葉菜に応え、対峙していた魔物に盾をぶん投げその顔面を叩き潰しつつ、アンナと魔物の間に滑り込んだ佐裕理が、そのままの体捌きで流れるように中段の回し蹴り、裏拳、上段蹴りの連撃を繰り出して魔物を怯ませる…どころか、綺麗に正中線に並ぶ四カ所の急所に致命の一撃をもらったその魔物は、全身の重要な骨を悉く砕かれ、自重に抗えず頽れた。
その瞬間、アンナがいろいろな属性の中級魔法をほぼ無詠唱で打ち込んで、さらにそれを連射しはじめ…葉菜達があしらった魔物達を次々火達磨にし、凍結させ、切り裂き、感電死させていく。

「うわあああああああああもうどうにでもなりやがれええええええええええ!!
…っとそのスキにー、遅延術式解放っ先輩とさゆちゃんどいてー」

しれっと言い放つその足元に、何時の間に仕込んだのか強大な電荷を放つ魔法陣が展開され…苦虫を噛み潰したような表情の葉菜と、それを宥めるかのように苦笑いする佐裕理が同時に射線上から飛びのく。

「おらあ行けえ、『千の神雷』ッ!!」

視界を埋め尽くす閃光とともに、さらに多くの魔物が塵と消えた。

「なんて…戦い方…!」
「オレ達が今まで見てきたのも…その真の力の、ほんの一部でしかなかったなんて…な。
つくづく、オレは…恐ろしい人達に、ケンカを売ろうとしてしまったもんだ…!」

呆然とその光景を眺めつつも…震える脚を叱咤し、再び闘志を取り戻したロブも立ち上がって構える。
それに倣うように、レオ達もまた。





影自体の戦闘能力はオリジナルより数段落ちる…はずだった。
それは、対峙する全員にも漠然とわかっていたことだろう。

しかし、それは実態を持たぬ模倣。
痛みも感じず、それどころか腕を断ち切ろうが、胴を切り裂こうが、すぐに再生して襲い掛かってくる。
切り口を凍らせようが、焼き切ろうが…粉微塵にしてしまおうとも…時間はかかれど、復元を繰り返す。

堂々巡りからの、緩慢な消耗を強いられる戦況を打破したのは。


「こんなつまんないやり方で、無駄な労力を強要してくるなんて。
あのブロートとかいうやつ絶対忍者だよね。
汚いなさすが忍者きたない」

くすくすと笑いながら、漆黒の闇の中に紅い双眸が妖しく光る。
そこを中心として伸びる強大な滅びと闇の気は、雑多な影が再生を始める前にぐずぐずと崩壊させていく。

「でも、残ったあいつらはそういうわけにもいかないみたいですね」

さとりは、ハイ・ラガードから持ち帰っていた妖鞭を、威嚇するかのようにして引き延ばし、乾いた音を響かせた。
満身創痍のカスティルと対峙する、黒髪の剣姫も剣呑な視線を送る。


海兵やマギニア衛兵を模した影は、ルーミアを中心に生み出された影に飲まれて消えた。
しかし、一部の影は強固に存在を保ち、それどころかその元になった人物を思わせるような、強大な闘気を放ってすらいる。
そんな影は、不思議なことにある程度一舞やカスティル達よりも上位の力を見せつけていながら…決して、致命となり得る一撃を繰り出しては来なかった。

それはまるで…彼女たちの能力を見定めるかのように。
明らかにその行動は『ブロート』の制御下にない。それどころか。



「…余に助力は要らぬぞ。
漸く、此奴の太刀筋にも慣れてきたわ…!
…限界のその先、このような武の引き出しが、余自身にあるとは思いもよらなんだ…!!」

まるで鏡合わせのようにして、影の剣姫を同じような構えを取り…そして、より脱力され洗練されたフォームで。

さとり達にも理解できた。
その影には明らかに、先に戦線離脱したかごめの残留思念のようなものが宿っている。

…否。

「さとりと申したな。
此奴は言っている。
娘の心配は要らぬ、退屈凌ぎに、余に稽古をつけてやるとな…不遜極まりないッ
!」

先に仕掛けたかごめの刃を撥ね除け、その勢いのまま、最小限の動きで切り返しながら、勇猛なる王女は獰猛な笑みを浮かべて吐き捨てる。

「なればこの機に!
アルカディアの地でも伝説となったその神技の髄!
貴様を制した栄誉と共に…この世界の手土産として貰い受けるぞ、詩姫ッ!!」


そして別の空間では、やはり丁々発止の攻防を繰り広げる氷精と、魔導士二人…そして。

「出来ればあの時の決着、本人とつけたかったんだけどね…!」
「結局師匠からは一本も取れなかった…こいつが例え仮初の影でも、だったらなおさら負けるわけにはいかないっての!」

土蜘蛛の影と一舞、そして巫姫の影と夏陽。

これら一際濃い影たちは、再生することなく…それでいて、同じようにしてどこからかエネルギーを吸い上げているかのように。
そして、チルノと闘う影は…禍々しい形状の翼を持ち、そして蛍の触角をもつ二刀の剣士へと、姿を変え始め…そして、二つに割れた。

「なるほど」

さとりは嘆息する。


どういう機序によるものかは不明だが、かごめ達はこの影のコントロールを強奪し…そして恐らくは、ヨルムンガンドへ集められるはずのエネルギーを横取りする形で存在を保っている。

彼女らもまた、こうした形で戦いに介入しようとしているのだ。
ただでは転ばぬ、そう言うかのように。
もっとも、アンナが半ばだらけていたのが、ここの影とリンクしながらカトリーヌ相手に大立ち周りを演じているからだということは、葉菜たちの知る由もない事だろうが…それはそれで、恐ろしい話ではあるのだろうが。


ルーミアに視線を送ると、彼女も肩をすくめる。

「じゃあ、私はチルノからどっちかの相手もらおうかな。
さとりさんどうする?」
「そうですね」

目の前の緋色は、彼女が敬愛する存在の一人と言える、大賢者の姿へと変貌していく。

「…少しばかり、私もその厚意に甘えるとしましょうか。
それもまた、全体的な勝利の布石となるのでしょう。
病み上がりと言えど、お気遣いなく…貴女の全力で来ねば、一瞬で終わらせますよ…八雲紫ッ!!

影の口角がわずかに歪むと、無数の境界が開き、式神光弾が放たれる。
鞭を投げ捨てたさとりも、全く同質の弾幕嵐を展開し、激突させた。








かごめ「というわけでいよいよ次回で表は決着、といってもまだ未消化の伏線もゲーム的には一杯残ってるんだけど」
静葉「実際この後、書くの?」
かごめ「それ本当になあ…とりまキリいいところまでは何とかしたかったから表クリアまでってことだけは考えてたけど、この時点でSSQ2より長くなってるしねえ。
   そしてこっちどうにかするぐらいなら、しつこいようだけど禍神を触手討伐抜きで狩る手法を知ったんでそっちでなんかやりたいなぁみたいな。
   実際SQ3ログって尻切れトンボになってるわけだし」
諏訪子「うげぇ…そこは私も知ってたけど正直放置しておきてえ案件だなあ…」
てゐ「あんたからそんな発言飛び出してくるとか世も末だなァ。
  私は降りるぞ、ここ数作ずっと出ずっぱりでいい加減に疲れた(プヒー」
紫「私もパース」
かごめ「んまーいいんじゃないか、当初からつぐみに押し付けることにはしてたんだし。
   だがケロ様、あんたは多分逃げられんからそのつもりで」
諏訪子「なんでやねん!!!
   はっ…待てよそういえばSQ3って早苗が一時期絡んでたような…」
かごめ「思いっきりヤグルシぶん回せるよ!やったねケロちゃん!!(しろめ」
諏訪子「おい、ばかやめろ。
   そのログは早くも終了するべきそうするべき」
静葉「3ならオランピアも動き出すだろうしね。
  実はあいつ関連のネタも無きにしも非ずだったりとか、アンドロの扱いに慣れるべきでもちょうどいい逸材ではあるし。
  というわけで、今回はここまで」