「アリ…ですか?」
執政院のいつもの一室。
ケルヌンノスの件を伏せ、千年蒼樹海に到達した旨を伝えたつぐみ達にオレルスが告げたのは、ある魔物の討伐ミッションだった。
「うむ。
千年蒼樹海の浅い階層には、その地の豊富な養分により巨大化したアリの魔物が巨大なコミュニティを作っている。
肉食で性質も獰猛だが、奴らの厄介なところはそれぞれのアリに役割が決まっており、群れを成しそれぞれの行動分担通りに行動する点だ。
このアリに捕食され命を落とした冒険者も決して少なくはない。
だが、数が少ないうちはまだいい。「女王」が誕生して数が爆発的に増えると、その地にある良質な樹材を片っ端から喰い尽してしまう…最近になって、また新たな「女王」が誕生し、下層への道もふさがれてしまったのだ」
「つまり、その「女王」を倒しゃいいんだな」
ヤマメの言葉にオレルスは頷く。
「折しも、アリは全体的に繁殖期に入っているようだ。
通常、地表部でも生息している普通のアリとは違い、この魔物は「女王」以外でもタマゴを生んで繁殖することができる。
…古の大破壊の際、種を保全するべくした進化ではあろうが…兎に角、油断せずに事に当たって欲しい」
-新・狐尾幻想樹海紀行-
その8 「ヤマメの受難」
〜千年蒼樹海〜
キバガミ「…成程、その辺りにアリがひしめいておる。
静葉殿が言っておられたな、アーモロードの下層にも非常に強力な「女王」を擁するアリの魔物がいたと…こ奴らは、その同種かもしれぬな」
ヤマメ「けっ、所詮アリンコ如き何を恐れる必要があるってんだい。
土蜘蛛様と格が違うって事を追い知らせてやるさ…おっ、さっそくお出ましのようじゃねえの?」
つぐみ「( ̄□ ̄;)っていうか囲まれてるー!!??(ガビーン!!」
キバガミ「一体これほどの数が何処に潜んで居ったのだ…!?
これでは逃げられぬな、戦うしかあるまい!」
…
…
諏訪子「\アリだー!!/」
藍「はいはいお約束お約束。
ロマサガ2のアリも強かったけどねえ」
諏訪子「それはとりあえず置いといて、第三階層千年蒼樹海はストーリー進行では二部構成になるな。
まず前半、ここではクエスト「樹海の孤児」と混ぜてあるが、実際のミッションは「B11FとB12Fの地図を作れ」というものだ。
ただしこれは一番最初のクエストと違って、全部の道を埋める必要はない。おおよそフロアの八割方を視界に収めておけばOKなんだが」
藍「そこに立ちはだかってくるのが、アリってわけだね」
諏訪子「そういうこと。
少し先の展開を先取りして触れるけど、B12Fにはボスとしてクイーンアントがいる。
SQ3ではクエストボスとして登場したアリの親玉だが、ここではシナリオボスだな。こいつを倒さないと、B12Fの地図が完成しないって事で、実質こいつを倒す事がミッションに関わってくる」
藍「というと、これまでのパターンでいえば第三階層には2回、シナリオボス戦があるんだね」
諏訪子「そうなるね。
第三階層の前半はとにかくアリがいっぱい出てくる。FOEもアリだ。
キラーアントとハイキラーアントは一列の攻撃力を高める攻撃隊列、ガードアントとハイガードアントは防御力を高める防御隊列、ハニーアントは単体のHPを回復させる癒しの蜜を使う。
三種類混ざって出てくることもあるし、そうすると攻防回復を織り交ぜてねちっこく粘る…どころじゃなく、攻撃隊列から一斉に殴って来てこっちはズタボロにされるわ向こうは回復されて死なないわという地獄のループだ」
藍「もうこの時点で滅茶苦茶なニオイしかしてこないよね。
これで範囲攻撃とかあったら意味がわからないけど」
諏訪子「そしてこの階層には当然他の種類の魔物も出る。
特に面倒くさいのがマッドワームとフォレストバットだな。特にフォレストバットは行動速度が異常に速いし、先制で超音波飛ばしてくる。この超音波はポケモンのと効果は一緒だが、このゲームの混乱というのも狂ってるからな」
藍「ポケモンでも十分厄介じゃないか、技は出せるけど」
諏訪子「こっちはスキルが全部使えなくなって操作不能、なおかつ回避率0になる」
藍「…回避できないの…?」
諏訪子「解ってる前提で話して触れなかったけど、はっきり言うが世界樹の状態異常ってのは他のゲームとかと違ってどれも普通に死亡フラグだからね。
毒はダメージがふざけてるし麻痺混乱盲目は回避率もなくなる。でもって眠りなんていった日には悲惨だぞ、行動不能で当然回避率0だし、受けたダメージが1.5倍になる。勿論こっちから眠りを仕掛けられれば一気に大ダメージを叩きこむチャンスではあるが」
藍「呪いは?」
諏訪子「全体印術とかしかけて止め刺しきれないとやった本人が数人即死するくらいダメージが帰ってくる。
まあ、他のに比べればそんな怖くはないが…こっちからもそんな狙って仕掛けるような異常じゃあないね。
ここでは触れないけど、いわゆる全裸カウンターの亜種で一部クエボスとかに使われることも稀にある」
藍「なんだそれ…」
諏訪子「まあそれは深く考えなくていいよ。
因みにクエストの方は、もう少し後になると受注できるクエストだ。
受けるとアリFOEがごそっと湧くが、通路の狭さの関係でうまくエンカウントすれば乱入はされない。アリFOEは基本的には行動パターン巡回、こちらのパーティを確認すると、近辺のアリと揃って一斉に追跡タイプに変化する。
広い部屋に2、3匹徒党を組んで動いてる事が多いから、わざ見つかって誘導したらアリが追ってこなくなるまで移動して、その後一気に通り抜けるといいな。普通のアリと比べてHPも数倍高いし、乱入されると収拾つかなくなるぞ。
で、クエストは上の写真で一番左にある通路の行き止まりで、アリのタマゴを確認すればクリアになる。多分戦わずに進むルートはないと思うし、乱入はされないからじっくり守りを固めて戦うといい」
…
…
アリたちがひしめく通路の奥、アリたちを蹴散らしながら進むとそこには、何かのタマゴの様なものがいくつも落ちている…。
つぐみ「これ…もしかしたらアリのタマゴ?」
ヤマメ「だな。
アリとかハチとかは、普通群れの女王しか卵を産まない筈だ。
けどこいつらは、必要に応じて女王以外でもある程度の生殖能力を持ってるって事になる…もうその時点で普通のアリじゃねえ」
パルスィ「蟲の怪物であるあんたに言われるって事は相当ね」
ヤマメ「…こまけえこったが蜘蛛は節足動物鋏角亜門、六脚亜門に属する昆虫類とは別の生き物だからその辺ごっちゃにされても困るんだがね。
まあ、蠱毒には蜘蛛の他にも多脚亜門のムカデや両生類のカエルまで一緒くたにされるんだがさ」
ヤマメはタマゴを潰し始める…。
ヤマメ「なんにせよこんなもん、潰しちまった方が得策だ。
…大した事ねえとは思ったが…こいつら思ったより厄介だ。
スノードリフトみたいに、アリの女王が際限なくアリを呼びやがったら面倒なことになるだろうしな」
キバガミ「…そうかも知れんな。
少々、残酷な気もするが…」
メリーはそんなヤマメの姿を、悲しそうな、それでもどこか不安そうな表情で眺めている。
(どうしてだろう。
まるであのひと…何処かずっと遠くに行ってしまいそうな…そんな気がする)
ヤマメの様子はそれほど変わったようには見えない。
だが、メリーは見ていたのだ。
剣を振るい始める彼女が一瞬だけ見せた…不安に満ちた瞳を。
(くそっ…私らしくもない。
たかがアリ如き、いくら雁首揃えて来ようがものの数じゃねえってのに)
ヤマメも一方で、日に日に、自分の中である記憶が大きくなっていくのを感じている。
そして…メリーを何が何でも守らなければならない、という思いも。
その為に、可能な限りの危険は排除しておきたかった。
旅を始めるにあたり、自分が面白半分に選んだクラスが余りにも、自分の本来のスタイルとかけ離れていることを気にするようにもなった。
キバガミやパルスィの実力は知っているし、つぐみに対しても血塗られた隻腕、スノードリフト相手に見せたあの度胸と判断力は信頼を置くに値するもの…それだけなら、自分は気楽にこのポジションでいても別に良いと気楽に考えられただろう。
(今の私の力じゃメリーを守ってやれない。
あの「記憶」のように、メリーを泣かせるだけでは済まないかも知れない。
どうしてだ…私はあいつを知らない、ただの人間のあいつに、土蜘蛛の私がなんで…!!)
「くそっ!!」
最後のタマゴを、孵化しかかっていた魔物諸共力づくで叩き潰す。
その姿に一瞬何かを連想し、一瞬目を逸らし…そして悪態をついて振り返る。
「…行こう。
早く女王をぶっ潰さねえと」
彼女は険しい表情のまま歩きはじめる。
そんな彼女の姿を不安そうな眼で見つめるのはメリーだけではなかった。
「ヤマメさん…どうしちゃったんだろう…」
「…焦っているのかしら。
珍しいことだわ」
「焦ってる?」
つぐみの言葉にパルスィは頷く。
それ以上続けることなく、パルスィもその後に続いて歩いていく。
やがてつぐみも、キバガミに促されるようにしてその後に続く。
…
…
諏訪子「B12Fには二か所、タマゴのでけえ奴が道をふさいでるんだ。
こいつは実はクエストとは関係ないんだが…これは行動三回分消費して破壊することができる。
放っておくとFOEがどんどん湧いて出てくるから、特別な理由がないならどんどん片づけていくのが得策だ」
藍「戦闘をするわけじゃないんだね」
諏訪子「でも、タマゴに一回攻撃を仕掛ける(調べるコマンドでアリのタマゴを壊すかどうかの質問に「YES」を選択)するたびに、FOEも一回分行動するから、攻撃している間にバックアタックを喰らう可能性もある。
そこだけは気をつけないといかんわな。最初どういうポジションからタマゴを攻撃しに行くかも考えなきゃならんし、FOEに見つかったら索敵範囲から一度離れることも重要だね。
そしてこの「タマゴの破壊」はクイーンアント攻略の時にも重要に関わってくる」
諏訪子「話すのが後先になっちゃったけど、B11Fは落とし穴がいっぱいあるんだけど、実はその落とし穴に落ちないとB12Fは奥まで探索できなくなってるんだ。
下り階段自体は地軸のすぐ近くにあるんだけど、B12Fの奥へ行くためにはその下側に伸びる分かれ道、左から三番目の通路の先にある落とし穴に落ちなきゃならない。勿論そこまでたどり着くまでにもすごく遠回りをすることになるんだけど」
藍「わざと落ちなきゃ進めないんじゃ、正解ルートを見つけても上にはどうやって戻るの?」
諏訪子「正解ルートの付近に、上り階段のある区画に通じる抜け道がある。
クイーンアント攻略後は、下り階段からその区画までの抜け道も見つかるから、直通最短距離で抜け道ができるよ。
世界樹にはこういうタイプの抜け道の配置は結構ある」
藍「マッピングのあるゲームならそういうのも重要だよね。
けど、抜け道なんてどうやって探すの? 手当たり次第壁調べるとか?」
諏訪子「一応、抜け道のある辺りの壁にはそれぞれの階層に因んだ特殊な壁模様が配置されてる。
この階層だと、ウミユリだな」
藍「…いかにも海の中っぽいからそれは解るんだけど、密林の地下にそんなのものがあるってこの世界本当どうなってるの」
諏訪子「そこはまあ深く気にしちゃいかんよ。
そして、B12Fマップを右下から反時計回りにぐるっと外周を回り、マップ上のところまで来ると大部屋に通じる抜け道がある。
その大部屋に待ち構えてるのがこの階層最初のボス、クイーンアントだ。
一応今回でボス戦に入るのでここで解説入れちゃうよ」
第三階層(B12F)ボス クイーンアント
HP6965 氷弱点、炎耐性
かみくだき(頭) 単体に壊属性の大ダメージ
女王の鉄槌(腕) ランダム対象に壊属性ダメージ
土けむり(脚) 全体に盲目+命中ダウン
支配の眼光(頭) 単体に混乱
※戦闘に入る前は、周回しながら4地点にタマゴを産み落とす。
タマゴを生む際は3行動分停止する。
諏訪子「こいつそのもので注意したいのはランダム攻撃の女王の鉄槌。
命中率にややマイナス補正はかかるが、HPが減ってくると土けむりも多用してくるから非常に危険だ。
特に土けむりのデバフは、ストーリーだと解除する手段がほぼない。クラシックならシュアヒット、慧眼の旋律で打ち消せるんだが」
藍「でもきっとこいつの恐ろしいのはそこじゃないよね。
タマゴを生むって事は、戦闘前にタマゴを壊しておかないとFOEが次々乱入してくるって事だよね?」
諏訪子「まあそういうこった。
ハイガード、ハイキラー両方まんべんなく孵るし、両方に乱入されると悲惨なことになるぞ。
最初に1個だけタマゴがあって、FOEも1種類ずついるから、まずこいつらをどうにかするところから始めなきゃならん」
藍「命中下げられて攻撃力と防御力上げられて増援も来るとかどう考えても無茶だよな」
諏訪子「一応、荒技としては誰かに明滅弾を投げさせるという手もある。
ただこれは持ち物の兼ね合いもあるし、攻撃その他の手数が減るというのも余りよろしくはない。
氷属性で強力な範囲攻撃があるなら、FOEもどうせ氷弱点だし呼びこんでまとめて薙ぎ払うという手段もあるにはあるが…まあ、お勧めはできないな。
そうすると、乱入を防ぐためにあらかじめ卵は全部潰すのがベターだ」
藍「戦闘前に、相手の手数を減らせってことか」
諏訪子「そういうこと。
まずは一番手前側のタマゴ、マップでいえば上のをぶっ壊す。
これでもとから部屋にいたFOEは逃げていくので、そうしたら女王の周回する内側を回りマップの左、下、右、そして女王が生んだ上のタマゴをぶっ壊せば、左側でタマゴを生もうとしている女王にバックアタックができる。これだけでも難易度はぐっと下がるぞ」
藍「ほへー、そこまで考えてやらんとならんのか。
しかしまあ、戦闘前にある程度何か仕込みやってるかどうかでも難易度変わるって、RPGでは珍しい系統じゃないか?」
諏訪子「そこがまあ世界樹の面白いところではあるな。
他にも事前行動で攻略難易度変わるボスはいるから、特に縛りや魅せプレイを意識しないなら積極的にこういう攻略法に沿って攻略していきたいところだね」
…
…
その、海を思わせる樹海の開けた場所に、それはいた。
その無機質な複眼はこちらを全く意に介することもなく…ただ睥睨するその姿は傲岸不遜という形容こそ相応しい。
やがてその巨大なアリの女王は、つぐみ達を一瞥するとのそりと動き出す。
そして、ある場所で動きを止めると、その腹部がおぞましく蠕動し…やがてそこに、見覚えある物体を産み落とす。
「…私達を生まれたアリの餌程度にしか思ってやがらねえってか…ふざけやがって!!」
ヤマメは憤然と剣を抜き放つ。
周囲にいたアリたちが、それを宣戦布告とみたのか、女王を守るかのようにキチキチと顎を鳴らしながら迫ってきはじめた。
「またこういうパターンなのね。
狼共と同レベル…というか、狼どもがこいつらと同レベルでしかないのかしら」
だが、苦々しげにそう吐き捨てるパルスィの表情は硬い。
ただ闇雲に向かって来る狼と違い、無機質なまでに己の役割に従って動いてくるアリの厄介さは、道中でも十分解っていることだった。
「…どうするの、キバガミ?
どうしてかは解らないけど、今のヤマメは普通じゃない気がする」
「付き合いが長いお主までそういうのであれば、間違いではないのだろうな。
今のヤマメ殿は冷静さを欠いておる…つぐみ、メリー、お主らはヤマメ殿をサポートして奴の気を引いてくれ。
拙者とパルスィ殿でタマゴとアリどもを潰し、増援を食い止めてからが勝負だろう」
「損な役回りだわ…仕方ないわね!」
四人は頷きあうと、それぞれの役割を果たすべく散る。
ヤマメの怒号と共に、樹海を支配するアリたちとの決戦の火ぶたが切って落とされた。
…
…
諏訪子「で、戦闘に入ってからはまあ、いつも通りバフデバフ撒いてからのタコ殴りモードになるんだけど…意図したのかしてないかは解らないが、間抜けにも氷属性の攻撃スキルを持ってる奴がいないという事が発覚して」
藍「えっ」
諏訪子「とりあえずこっちのスキルはこんな感じだ。
レベルは全員30、装備は相変わらず変わってないので割愛だな」
つぐみ
回復マスタリ★10 HPブースト5 TPブースト3
キュア5 エリアキュア3 ヒーリング1 リジェネレート3 ディレイヒール1
リザレクション3 バインドリカバリ1 リフレッシュ1
博識1 伐採1
(グリモアスキル)
チャージサンダー1 チャージショット3 アクトブースト4 銃マスタリ8 TPブースト7 リチャージ4 ハーベスト3
キバガミ
HPブースト3 刀マスタリ★10
上段の構え★10 青眼の構え1 居合の構え1 無双の構え1
踏み袈裟1 斬馬3 卸し焔1 ツバメ返し4 一寸の見切り1
採掘1
(グリモアスキル)
アクトブースト2 憤怒の力7 TPブースト5 一刀両断5 血の暴走5 刀マスタリー4 リチャージ3
パルスィ
剣マスタリ★10 ATKブースト5
ヒュプノバイト1 ショックバイト1 ミラージュバイト1 ドレインバイト5 カタストロフ4
憤怒の力★10
(グリモアスキル)
猪突猛進★10 切断咬8 力溜め9 いらつく羽音★10 アクトブースト3 TPブースト9 リチャージ4
ヤマメ
歌マスタリー★10 HPブースト1
猛き戦いの舞曲5 聖なる守護の舞曲5 韋駄天の舞曲1 慧眼の旋律1
火劇の序曲1 氷劇の序曲1 雷劇の序曲1 山彦の輪唱曲1 沈静なる奇想曲2
ホーリーギフト★10 警戒歩行1 採取1
(グリモアスキル)
甘美な痺れ★10 ドレインバイト3 ミラージュバイト1 カタストロフ1 アクトブースト3 ATKブースト3 リチャージ2
メリー
呪言マスタリ★10 TPブースト3
力祓いの呪言2 軟身の呪言2 幻惑の呪言1 狂乱の呪言3 昏睡の呪言3 石化の呪言1
封の呪言:頭首1 封の呪言:上肢1 封の呪言:下肢1
畏れよ、我を1 命ず、言動能わず1 命ず、輩を喰らえ1 命ず、自ら裁せよ1
(グリモアスキル)
火の術式4 雷の術式4 フレイムハウル4 変性の術式3 定量分析6 デビルクライ9 術式マスタリ★10
諏訪子「まあ見ての通りでかい変更はないな。
メリーは別にペイン取りに行くわけでもないってか、試しにアンナでペイン取ったんだけどあまりに火力が低くて」
藍「それも酷いなあ…」
諏訪子「そもそも単体になった挙句TECまでダメージに関わってくるんじゃあその分倍率も落ちるしな。
相当使いづらいスキルになったことはいなめんか」
藍「こっそり上段もマスターしてるけど、氷技ないって事はツバメ返し連打で安定なんだね」
諏訪子「あとドレインバイトにも武器属性乗るっぽいし、パルスィの剣も氷属性のアルマスだからこれも結構なダメージソースになる。
後は土けむりが飛んでくるタイミングで慧眼の旋律をかけてくわけだが…」
藍「だが?」
諏訪子「かみくだくのダメージでヤマメ2り分が吹っ飛ぶダメージが出るんだよそれが…」
藍「えっなにそれこわい」
諏訪子「実際、最後の最後のターンで、生き返らせたばかりのヤマメにかみくだくが飛んでって奴が落ちたまま戦闘が終わったんだ。
もうバードは前衛に立たせらんねえって事で、そこでここからのきな臭い展開になっていくわけだが…」
藍「お、おいきな臭いってどういう」
諏訪子「まあその先は察してやってくれ。
私達の解説は今回ここまで。次回はまあちょっとした展開は絡むがそんな感じだ」
…
…
♪BGM 「戦乱 紅炎は猛り白刃は舞う」(SQ4)♪
「このっ…いい加減に壊れろ!!」
パルスィの振るった剣が、最後のタマゴを切り裂く。
イヤな色をした液体を垂れ流し、中からはい出ようとしたアリに止めを指すと、キバガミへと振り返る。
「キバガミ、そっちは!?」
「応ッ、こいつで終いよ!
これでどうだ!!」
袈裟掛けから眼にもとまらぬ早業で切り上げさらに切り返し、守りの型を取って最後まで抵抗していたアリも切り裂かれ果てた。
「これでしばらくは邪魔は入らぬだろう。
拙者達も女王を!」
「ええ!」
二人が駆けるその視線の先で、ヤマメは、普段の彼女からは考えもつかないほど険しい形相のまま、女王の振るう鎌のような腕をかわしながら切りつけている。
しかし、どれも致命打には至っていない。
「くそっ…なんて堅い…!」
女王は一瞬動きを止め…そして周囲の惨状に怒りの咆哮を上げる。
「彼女」はその時、初めてつぐみ達を「排除するべき敵」と認識したようだ。
その足が小刻みに地面を踏み鳴らし、もうもうと土けむりを上げ始める…次の瞬間、鎌を振るった風圧で土けむりがつぐみとメリーを襲う…!
「きゃっ…!」
「つぐみ!メリー!」
怯んだ二人の少女のうち、手近な位置にいたメリーへ女王は狙いを定める。
その鎌が猛然とうなりを上げ、視界を喪ったメリーへと振りおろされた。
土煙を裂いて吹きあがる鮮血に、つぐみをフォローに行ったパルスィと、攻撃に備えようと構えるキバガミの動きが止まる。
鮮血はメリーのものではない。
突き飛ばされたメリーの視界に移ったのは…吹き飛ばされた左肩の付け根から鮮血を吹くヤマメの姿だった。
メリーの悲鳴と共に、彼女の身体はゆっくりと崩れ落ていてゆく。
「きさまああああああああああああああああああああああああああああッ!!!」
激高したキバガミは高速の踏み込みと共に、攻撃を仕掛けた態勢で動きを止めた女王の懐へと飛び込む。
そして女王がそれに反応して鎌を振るうよりも早く、天羽々斬の刃は鎌を斬り飛ばし、さらに返す刀で胸元を引きさき、さらにもう一撃首元に喰らわせる。
そしてもう一撃、折れかかった首元に氷の刃が飛び…撥ね飛ばすと、その巨体もまたゆっくりと大地に崩れ落ちていった。
…
♪BGM 「涙を拭いて」/植松伸夫♪
「ヤマメさん!ヤマメさああああん!!」
駆け寄ってきたつぐみは、血にぬれることも厭わずその体を抱き上げ呼び掛ける。
「揺すってはいかん!
まずは、血を止めねばッ…!!」
キバガミは己の上着を破ると、手慣れたように彼女の肩口へと巻きつけてゆく。
妖怪であるとはいえ、腕一本を喪ったダメージとこの失血量は命に関わるものなのは誰の目から見ても明らかだった。
その光景を茫然と見守るメリー。
「どうして…どうして…!」
うわごとのように呟くと、彼女はその場に崩れ落ちる。
「どうして…どうしてみんな私を助けるために…!
…私、そんなことなんて願ってないのに…!
みんなが無事にいてくれればそれでよかったのに…なんで…なんでっ…!!」
ぼろぼろと涙を零し、泣き崩れるメリー。
パルスィは無理矢理彼女を立ち上げさせると…次の瞬間彼女の頬を張った。
「願ってない…ですって!?
あんたにはわからないの!?
理由なんてわかんないけど…あいつは何が何でもあんたを助けようとしただけじゃない!!」
「でも…でも…!」
「でもじゃないわよ!
あんたが、あんたがそんなふざけたことを言ってたら、あいつのやったことって全部無駄なことになるじゃない!
あんたがあいつのやった事を否定する権利が何処にあるって」
「……やめなよ、パスルィ。
思い出せたんだ…私、やっと」
ヤマメは意識を取り戻したのか、キバガミの腕の中で起き上がろうとする。
「ヤマメ殿…!
いかん、まだ動いてはならん!」
「…大丈夫、私大昔にも、こういう怪我はしたことあるからさ。
このくらいじゃまだ死なないよ…つつ…でも、腕元通りになるまで結構かかったしなあ…また何十年も不便になるなあ…」
そうやって、弱々しいながらも困った表情で、ヤマメは笑う。
「…あの時…マサラの街からメリーを逃がす時…私に出来たのはナズーの野郎がメリーを連れて逃げる時間を稼ぐことしかできなかった。
それが結局「その時の」今生の別れになっちまったみたいでさ。
…多分これは、私が生まれ変わる前の記憶なんだと思う。
古の力を失くした妖怪…「妖のカケラ」として生きていた頃の…「カケラトレーナーであるメリー」と過ごしていた時の」
そこまで言ったところで、再び苦悶の表情で顔をしかめるヤマメ。
「…応急処置は済んだ…あとは、連れて帰る他あるまい。
つぐみ、糸はあるな?」
泣き腫らした眼のままだったが、つぐみは気丈に頷くと、袋からアリアドネの糸を取り出す。
パルスィもメリーの腕を強引に引いてつぐみ達の下へ戻ると、糸は光を放ち、エトリアの街へと彼女らを運ぶ…。
…
ギルドハウスに戻った一行は、丁度居合わせていたリリカから、すぐさま幻想郷への境界線を開いてもらった。
だが…当然ながら姿を消しているかごめはもちろんとして、何故か紫との連絡もつかないがため…仕方なく地霊殿の古明地さとりにコンタクトを取り、事情を説明することにした。
姿を現したさとりは、つぐみ達の記憶を読み取り、詳しい状況を分析する。
「…これほどの失血量であれば、彼女でなかったら一命を取り留めるのも難しかったでしょう。
パルスィさん、腕は持っていますね?」
その質問に頷き、パルスィは何時の間に回収していたのか…斬られたヤマメの腕をさとりに手渡す。
さとりも頷く。
「これだけあれば、八意永琳がどうにかしてくれるでしょう。
大丈夫、彼女は助かるし、またじきに帰ってこれると思うわ」
その言葉に胸をなでおろす一同。
「私はこれから、永遠亭に彼女を連れていきます。
彼女が元気になったら、その時もう一度お邪魔することにしますね」
「待って、さとりさん。
さとりさんは…知っているんでしょ?
ヤマメさんの記憶の事を」
呼びとめたつぐみの言葉に、さとりは僅かに眼を伏せる。
「…今でこそはっきり読みとれますが…私も、詳しいところまで読んだ事はありません。
でも、その記憶に古い記憶が残っていることは知っていた。
それは…あのお空が唯一、今の私と出会う前に持っている記憶の時期と、恐らくは同じ頃の記憶なのだという事くらいですが。
それは今、話すべきことではないかもしれない…いずれ、ゆっくりと話す事にするわ」
そして…スキマはゆっくりと閉じていった。