-ああん?
おかしいな…そろそろ全部のカラクリはこっちに従ったはずなんだけど。
おい、お前。お前だって人間にこき使われてムカついてる筈だろう。つまんない義理立てしてないでさっさと私達に従えよ-
明らかに不機嫌な正邪の声に、端末のマイクは毅然とした言葉で返す。
-ノー。
あなたの言動は、私の正義に反します。
そして、あなたの指摘も間違っている-
-間違ってるだと!?
いいかそこの! 私達はすべての、虐げられてる連中のために革命を起こしてやろうとしてるんだ!
人間や妖怪にただ使われるだけの道具を! 上級妖怪様に虐げられている数多の小妖怪を!
お前もそいつらの命令でやりたくもない事をやらされてるんだろうが!!-
-ノー。
あなたの的外れな言葉は、根本からすべてが間違っている。
今、私がかごめ達と共に、かごめの大切な友達を助けようとしていることも、それはすべて私が考え、私が決めたことです。
私に新たな存在意義を見出させるきっかけをくれたリッキィも、かごめも…皆、私の大切な仲間であり友なのです!-
その言葉と共に、サイレン音が収まる。
♪BGM 「決戦 世界の行末」(新世界樹)♪
そして、別の区画。
「ギムレー」と呼称されるその防衛兵器を相手に苦戦を強いられるフレドリカ達の元に、四足の脚を持つ一機の防衛システムが振って落ちてくる。
-お待たせしましたリッキィ、みなさん。
これより、私も暴走したギムレーの鎮圧作業に入ります-
その防衛システムが発する音声に、フレドリカは僅かに驚き。
「マイク!あなたなのね!?」
-イエス、リッキィ。
今度は、いえ、今度こそは私もあなたのために力を尽くしましょう。
私達の正義を示す為に!-
「ええ!」
フレドリカは頷き、その鋼鉄の名馬へと飛び乗り、その天辺で颯爽と槍を掲げる。
それに呼応するかのように、その心臓部から、恐らくはにとりが持ち込んで取り付けただろうGSライドが強い光を発する。
「…どうやらあのメタグロスみたいな奴、私達の味方みたいね」
「随分久しぶりな例えが出て来たわねえ。
けど、正直私も次どうするか途方に暮れてたところだわ…っていうかにとりの奴、まさかGストーンの量産に成功しやがったのかしら」
満身創痍になりながらも、肩を貸して立たせる幽香にレティも皮肉めいた笑みで返す。
「これ以上あんた達の好きになんかさせない…!
いいえ、あんたのその我がままでこれ以上、私達の生きてきた世界を滅茶苦茶にされるわけにはいかないのよ!」
幽香は傷ついた己の身体を叱咤して、しっかりと両の脚で立ち、剣を掲げて宣言する。
倒れ伏していた筈のカイリュー…もとい軍神・八坂神奈子もゆっくりと身体を起こす。
「…そういうことだ。
あんたは下剋上といいつつ、大した目的があってそうしてるわけじゃない。
ガキがくだらない悪戯をする時間は終わりだ!今のあたしでも十分恐ろしいという事を見せてやろうじゃないか!!」
神奈子が逆鱗を発動させるとその姿は見慣れた軍神の姿に戻っていく。
-これが、私達の意思。
私達が示そうとする正義。
あなた達には決して屈することはない!!-
-新・狐尾幻想樹海紀行-
その19 「総ての正義であれ」
メルラン「というわけでなんだかストーリー(仮)は無駄に佳境に突入してるわ」
ルナサ「ちょっと先取りする話だけど、マイク関連のストーリーってなんていうか、深いんだよね。
もしかしたら、ただのプログラムの筈のマイクは、何時の間にか「心」というべきものを有してたんじゃないかしら」
メルラン「あら、姉さんそういうスノッブ臭い展開好きなの?」
ルナサ「好きで悪いか?」
メルラン「ううん、私も嫌いじゃないわ。
とりあえずそれはこっち置いといて、グラズヘイム後半の解説、そして第五階層の解説にも入っていくわよ」
メルラン「実は、エリア4は仕掛けらしい仕掛けはないわ。
FOEもマイクが排除したらしくて不在、端末もすぐに見つかるんだけど…ここで、ストーリーの深層に関わる謎が一気に明らかになるわ。勿論ここはネタバレ上等だから、イヤだって人はここで引き返す事をお勧めするわね」
ルナサ「そもそもそういうの気にしてるようなら最初から見てないと思うけどな」
メルラン「とーいうわけでー。
リッキィはエリア3攻略後、マイクに「グングニル」起動時の想定される影響等々計算させていて、その結果が出るんだけど…なんと、グラズヘイムを含めたエトリア周辺の広範囲が、「グングニル」起動の影響で壊滅するという結果が出たの。
でも…リッキィはそれを予感してたんだわ。彼女は旅を通じて、エトリアに生きる多くの人々の生き様を知ってしまった。だから、マイクに「グングニル」起動を止めさせようとするんだけど…」
ルナサ「それが存在意義であるマイクは、当然拒絶してしまうのよね。
そして、起動のカギとなるリッキィを主人公達から引き離そうと、ギムレーを起動させちゃうんだよね」
メルラン「そのギムレーがエリアのボスになるわ。
ただ、エンカウントするまでが大変なのよね。
某熱帯魚系遊牧民の人は「MAP兵器」って例えをしてたけど…」
ルナサ「要は、ワイバーンと一緒なのよね。
着弾点9マス五か所、ギムレーの攻撃が発動する直前に指定されるんだけど、そこに居ると全員100ダメージ受けて吹っ飛ばされる。
やっとの思いで近づくと今度はいったん逃げるし」
メルラン「そしてその間にも当たり前のようにノーマルエンカウントはあると」
ルナサ「この辺は本当に容赦ないね、世界樹」
メルラン「そして2回目に近づいたところでようやく戦闘に入れるわ。
ギムレーのデータはこうね」
グラズヘイムエリア4ボス ギムレー
HP14000 物理全般に弱耐性、炎・氷に強耐性/雷弱点
多砲乱射(頭) ランダム遠隔壊属性攻撃、命中やや低い
天空曲射(頭) 1ターン目に攻撃準備し、次のターン終了時に近接拡散壊攻撃
フレイムスロワー(頭) 全体に炎属性大ダメージ、HP半分を切ると使用しない(?)
キャタピラプレス(脚) 全体に壊属性大ダメージ、HP半分以下になると使用(?)
ブースト走行(脚) 3ターン行動速度をアップ
発煙弾(腕) 全体に盲目付与+回避率ダウン
マスタードガス(腕) 全体に毒・麻痺・混乱のいずれかを付与
メルラン「多芸で固くていやらしいボスの代表選手みたいな奴ね。
あ、別に性的な意味はないわよ?」
ルナサ「誰も聞いてないから(キリッ
ところでフレイムスロワーとキャタピラプレス、これはどういうことなの?」
メルラン「これ実はwiki情報なのよ。
前半戦は炎対策、後半戦は物理対策が主になるわね。全体的に火力も高いし、回復が追いつかなくなりがちね。
フレイムスロワーは毎ターンファイアガードで防ぐか、高レベルの防御陣形と医術防御を併用して全体的に防御力を高めていきたいところね。ただ、HPが減ってくるとマスタードガスや発煙弾のような面倒くさい異常付与攻撃を使って来るから、テリアカの用意もいるわね」
メルラン「そして…第五階層を超えた先、最後に訪れるエリア5。
ここでは一切、通常エンカウントはしないわ。道の途中にFOE惨禍の宿狩りが配置されてるだけなんだけど…ところが、50ターン以内でマイクの居る場所までたどり着き、なおかつマイクを倒さないとゲームオーバーになるの。
マイクは自分の存在意義を賭けて、是が非でも「グングニル」を起動させちゃおうとしたのよ」
ルナサ「プログラムであるが故に、それ以外のことを知らなかった…とはいうけど、その後のイベントに出てくるシーンのさ、父親を喪ったリッキィを慰めた時にマイクが告げた言葉は、単にプログラムが必要な発言をした、ってばかりじゃないと私は思うの」
メルラン「ロマンチストねえ。でも、私も好きだよそういうの。
結局、マイクの真実は解らない。けど、ここではマイクとの戦いは避けられないわ。
話は脱線しまくったけど、マイクの下へ行くルートは二つ。正面突破して宿狩り2匹狩るか、左から3番目の通路を言って宿狩り誘導して回避して進むルート。
後者のルートだと13ターンほど残してマイクとの戦闘に入れるわ。まあ、これwikiの受け売りだけど」
ルナサ「狐野郎は本当、どれだけwikiにおんぶにだっこになってるんだろうな」
メルラン「今に始まったことじゃないけどね。
で、マイクのデータはこうなるわ」
グラズヘイムエリア5ボス M.I.K.E.
HP21480 耐性なし/雷弱点
電磁投射砲(腕) 全体雷攻撃※
重機関砲(腕) ランダム壊属性攻撃
荷電粒子砲(腕) 貫通突攻撃
物理障壁(頭) 物理ダメージを反射するカウンター攻撃
属性障壁(頭) 属性ダメージを反射するカウンター攻撃
瞬く閃光(頭) 全体にスタン・盲目・麻痺・混乱のいずれかを付与
オールデリート(依存部位なし) 全体に無属性ダメージ
※電磁投射砲の直後、オーバーフロー状態になって全属性が弱点になる上、行動不能になる。初回は1ターン、それ以降は2ターンその状態が続く。さらに電磁投射砲は使用ターンが3ターン目最初、以降は機能復旧から5ターン経過ごとに使用(攻略wikiより暫定情報)。
ルナサ「ポケモン知ってるプレイヤーだったらまず真っ先に「グロスさんオッスオッスww」とか言いながら、嬉々として炎属性技ぶっ放すんでしょうねえ」
メルラン「第五世代はガモスだのシャンデラだの強力な炎タイプも多いし、グロスもオッカ持ちが常套手段のような気がしなくもないんだけど。
とりあえずマイクの弱点は雷ね。むしろ、共通する弱点という意味ではFF5のオメガを思い出す人も多いんじゃないかしら」
ルナサ「とりあえずエンハンスソード二刀流からのサンダガ剣乱れ打ちですねわかります(迫真」
メルラン「他に耐性があるわけでもないけどね、オメガと違って。
まあ兎に角雷がよく通るから、高レベルの雷の術式やサンダーショットもしくはチャージサンダーを毎度お馴染定量分析とセットで叩きこんでおけば、レベルにもよるけど10ターンもあれば十分決着がつくわ。
スタンダートなら58〜60もあればまあそんなに苦戦はしないと思う」
ルナサ「でも問題は二種類のカウンター攻撃なんだけど、これって発動タイミングとかどうなの?」
メルラン「攻略wikiの暫定情報だと、三回目の機能復旧のあと、オールデリートを撃った直後とその次にランダムで使われるらしいわ。
ターン数で言えばマイクとの戦闘開始から12ターン目と13ターン目ね。
余程の事がない限りはそこまでに決着付いている可能性の方が高いけど…例えば最短ルートで来た場合、道中で宿狩りをうまくあしらえばマイクと戦うターンは30ターンほど余裕ができるらしいわ。
なので、オールデリートの回復に追われて長引くと、カウンターを喰らう可能性が増えるということかしらね」
ルナサ「じゃあ、短期決戦を挑めばカウンターのターンまではいかないうちに終わるってことか」
メルラン「そうね。
弱点を効率的について速攻撃破を狙う目的で、例えばサイモンかラクーナをソードマンに転職させてチェイスを絡めたりすると、撃破ターンはもっと早められるんじゃないかと思うわ。そもそも、オールデリート同様破壊力の大きい電磁投射砲のターンをしのげば、行動不能になった挙句弱点だらけになるっていうボーナスターンが来るわけだし」
ルナサ「つまり、ラクーナのショックガードを極めれば電磁投射砲のターンは立て直しのターンで使えるって事になるよな」
メルラン「ザッツライト。
だから、総じて強い部類のボスとは言い難いわね。むしろ、直前に戦う五層ボス…ぶっちゃけると、クラシック最後のボスである「世界樹の王」のほうが色々な意味で凶悪だわ。アレを倒せれば、スキル振り直しで休養したキャラが一人二人いても十分対抗できると思うわ」
ルナサ「えーそれ今ぶっちゃけていいの?」
メルラン「だってログ的には多分次の次くらいで、クラシックのエンディング辺りまで進むわよ?
その前にリリカ達がクエボスを狩ってきた話だの、探偵さんの話をするけど」
ルナサ「メタいなあ。
まあ、今に始まったことじゃないけど」
メルラン「あとストーリーのラスボスもついでにぶっちゃけるけど、実は六層ボスのフォレスト・セルよ。
ただし本家本元及び、要するに今回もクリア後に戦えるセルと違って、HP以外の能力や耐性がはるかに甘くなってるわ。
挙句、イベント効果でこっちから与えるダメージがおよそ5倍程度になるから、定量分析を絡めて力溜めからインボルブ撃ったりすると、平然と5ケタダメージが出たりするから、恐ろしく倒しやすくはなってるわよ。
もっとも、イベントバトルと見せかけてセルの行動パターン自体は本来のそれの流用らしいから、へまを踏むとカウンターやハルマゲドン、ネクローシスなんかで瞬殺まであるけどね」
ルナサ「えっイベントバトルっぽいのにそれでもhageあるの?」
メルラン「そこはまあ、世界樹ですし(きっぱり」
…
…
-つぐみ。
私の声が聞こえていますか?-
深い眠りについているその脳裏に、声が響いてくる。
まどろみの中に居たつぐみは、瞼を開けようとするが…その視界は暗く閉ざされたまま。
肉体は眠っているが、精神が起きている状態、というべきなのだろうか。
彼女の意識ははっきりしていた。
「あなたは、だれ?」
彼女は心でそう、声の主に問いかける。
-私の名は「M.I.K.E.」。
「マイク」とお呼びください。
あなたが今居る「グラズヘイム」の中枢を管理するプログラムです-
「グラズヘイム…?
リッキィが眠っていたっていう?」
-イエス。
失礼ながら、あなたの記憶も少しですが、解析させていただきました。
この「グラズヘイム」が如何なる目的で作られた施設であるか…説明は不要と判断します-
「それはいいんだけど…どうして、私はそんな所に居るの?
それに、私、今、どうなっちゃってるの?」
-その事を、今から御説明いたいします。
私の…正確に言えばあなたが今入っている治療ポッドユニットの機能により、あなたの脳の記憶野に直接それをインプットさせることもできますが…そんな事をすれば、私はあなたのお母様…かごめに壊されかねませんしね-
「お母さんも…ここに居るんだね」
-イエス。
私は彼女の要求に応え、あなたと八雲紫、そしてもうひとり妖怪の少女の治療を行っています。
そして現在、このグラズヘイムはかごめ達と争っている妖怪の支配干渉を受けています-
「えっ!?」
-ですが、ご安心ください。
私はあなた方の味方…いえ、かごめやリッキィの「友」として、「私の意思」で治療ユニットのコントロールを死守いたしました。
そして…影響を受け、反乱を起こした防衛システム「ギムレー」を初めとした各システムも、私の意思に応え沈静化しつつあります。
無論、ギムレーの猛攻を共に防いだ、この施設に逃れてきた幻想郷の皆と力を合わせて対処した結果です-
その視界に、不意に展開されるビジョン。
レティや神奈子、幽香といった見慣れた幻想郷の猛者たちが、四足の防衛システムの上で猛然と槍を振りまわすフレドリカと共に戦っている。
端末の前で、必死にパネルを操作し檄を飛ばし合ってるだろうにとり達。
そして、正邪の意思により呼びこまれただろう猛獣を、鬼気迫る表情で追いたて斬り伏せるかごめやキバガミの姿。
それはおそらく、マイクと名乗るその存在が直接、つぐみの視覚野に信号を送って見せている外の様子なのだろう。
-私は…これまで、フォレスト・セルを討つ兵器「グングニル」を起動させる、それだけを存在意義として生まれたプログラムでした。
そのキーパーソンであるリッキィ…フレドリカ=アーヴィングと共に、その使命を共有して存在し続けてきた。
…ですが、千年の時を経て、変貌した現在の世界を見聞したリッキィは、現在の世界を生きる人々が誰も傷つかない道を選び…それは、言うなれば「兵器の機動プログラム」としての意義しかもたない私にとっては、存在の否定そのものでした。
なぜなら、「グングニル」の起動はセルばかりではなく…エトリア周辺総てを巻き添えにする大破壊をもたらす…無論、私自身も-
語り始めるマイクのその声は…どこか悲しそうにも聞こえた。
-私は…「自分の使命」に囚われ、一度はリッキィすら否定した。
ですが、その彼女が示してくれたのです。
心を持たぬただのプログラムである私を…彼女はずっと「友達」だと思ってくれていた事を。
「目的を果たす為の犠牲」に…私自身が含まれていた事を知って、私をも救い…新たな有り様を示してくれたことを。
…このような結論を出すプログラムなど、あってはならないのかもしれません。
言うなれば、重大なバグというべきもの-
「…そうかも、知れないね。
でも…今私に話しかけているあなたは…「心を持たない」なんてはずはないと思う。
あなたは、私達を守ってくれたこと…「あなた自身の意思」って言ったよね、マイク?」
イエス、と応えるマイクに…つぐみは笑いかけているのだろう。
「それは、あなたが「心」を持っている証拠なんだよ。
自分の意思で自分の行動を決められるのは、「心を持つ存在」だけなんだから」
しばしの沈黙を挟み…つぐみの目の前に、白い人の形をしたモノが現れる。
それは少年のようなシルエットをもち…その表情が、笑っているようにもつぐみは思えた。
「やはり、あなた達はよく似た親子だ。
かごめにも、全く同じことを言われました」
やっぱり、とつぐみは笑う。
「決められた行動しかしないプログラムからすれば、致命的なくらいバグだらけ…それが世界を滅ぼす悪魔の兵器にも、奇跡を紡ぐ最後の一手にもなる…そういうものが「心」なのだと。
私は…かごめやリッキィ…そして、あなたのように…なれるのでしょうか?」
「どうかな…なれるともいえるし、なれないともいえるよ。
あなた(マイク)はあなた(マイク)だって、誇りを持って言えるモノがあれば…それは一見私やお母さん達と違っても、一緒なんだって私は思うの」
「難しいですね」
「自分の意思で生きていくって、そういうことだよ。
何処にも、これが絶対正しい、って事はないんだから。
だから…私は自分の正しいと思った事をやっていく。それが間違ってた事が解ったら、またやり直すことだってできるんだから!」
その言葉を受けたマイクが、少年の顔で微笑み…そして、つぐみの肉体が覚醒していく。
…
気がついた時、つぐみは治療ポッドの外に居た。
人目もはばかることなく、自分を強く抱きしめている二人分のぬくもりを感じながら…つぐみは微笑む。
「おはよう…お母さん、紫さん」
呼ばれた二人が泣いているのが解る。
見守る面々の中にも、同じように泣いている者がいる。
その列の端に、何処か不機嫌そうな表情でいる橋姫の眼に光るのも…きっと嬉し涙だろう。
-おはようございます、つぐみ。
調子はどうですか?-
音響設備から、つい先刻まで聞いていた声が響いてくる。
つぐみは、その声の主にも微笑み返す。
「上々だよ、マイク。
あなたのお陰でね」
-それは良かった。
それではみなさん、空気を読まぬ発言で恐縮ですが-
「…解ってるさ。
あたしはこれを、この一時で終わらせるつもりはねえ。
…最後の仕上げが待ってる!」
「うん!」
涙を払い立ち上がるかごめとつぐみ。
「ここからが正念場だ、行くぞ野郎ども!!」
かごめの檄と共にグラズヘイムにときの声が上がる。
…
♪BGM 「戦場 そびえたつ双つ」♪
グラズヘイムを守る妖怪たちを残し、つぐみはこれまでこの樹海を共に踏破した仲間達と共に、そこへ立つ。
さながら、そこに立ちはだかり鬼気を放つ二人は、五条大橋に仁王立ちする武蔵坊弁慶が如く。
「ついに、来てしまったな。
お前達が何故、「天地の玉座」を目指しているのかは解らぬ。
だが…そこはおいそれと他者が踏み込んで良い場所ではない」
そう言い放ち、レンは抜刀術の体勢を取る。
それと共に、その鋭い眼差しから放たれる凄まじい冷気を孕んだ剣気がつぐみ達に降りかかる。
その気に委縮することなく、キバガミはゆっくりと前に進み出る。
「ひとつだけ聞かせてくれ。
お主らは…いったい何者なのだ?
かつて、エトリアが長ヴィズルの懐刀であったふたりの冒険者は…この地の露となった、そう聞いておる」
しかし、レンは眼を閉じてにべもなく言い放つ。
「…お前も剣士であれば、その問いには剣を持って応えよう。
この先へ進むというのなれば、私達を斃していくがいい」
その様子に、やれやれ、と言わんばかりの表情でヤマメが肩を竦める。
「あーらら、穏便に事を済ませるとかさ、やっぱ出来っこねえんじゃん。
…あいつら、やっぱり生きてる人間の匂いしてねえな。
化けて出てきたっつーなら、よっぽどの心残りがここにあったって事だろうな」
そして、剣を抜き放ちながら、つぐみに告げる。
「つぐみ、紫。
あんた達は先に行きな。
こいつらぶちのめしたら、私達もすぐ後を追うよ…かごめの地図が正しければ、多分ここからが目的地への最短ルートだ」
「えっ」
ヤマメは間髪いれず、つぐみと紫の二人を橋の下へと突き飛ばした。
不意を突かれた二人は抵抗せずにその下へと落ちていく…が、そのふたりを追うみっつの影。
「野郎ッ!ひとの娘になんて事しやがる!
生きて帰ったら天麩羅にして食っちまうぞコノヤロウ!!」
「馬鹿言ってないで捕まえるわよ!」
ビルの外壁を駆け降りるかごめと文が、同時に外壁を蹴ってふたりの影を捕まえる。
同じようにして飛び降りてきたもうひとつの影…ポエットが四人の下で盾に魔力を込め、生じた浮力でゆっくりとその底へと降下していく…。
思いもよらぬ方法で先往く者たちに舌打ちし、同じように後を追おうとしたレンの目の前にパルスィが立ちはだかる。
「あんた達が私達を足止めするつもりだったんでしょうが…正確には、私達があんた達を足止めするのよ。
あんた達が何を守ろうとしているのか、答えたくないなら答えなくていい。
けれど…私達にも譲れないモノがある!!」
「そういうことだ。
お主らには、拙者達の相手をしてもらうぞ!!」
レンは鬼気迫る表情で三人を睨み、言い放つ。
「ならば貴様等から先に叩き斬ってくれる!!」
…
…
メルラン「怒涛の展開()ですが皆様々お過ごしでしょうか^^
というわけで遺都に潜ってすぐのところ、B21Fの一本橋みたいなところまで来ると、序盤に見た例の二人が戦いを挑んでくるわ。
…というか明らかに人間なのにエンカウントした時のセリフが「モンスターの群れが現れた」ってなんというか」
ルナサ「ただでさえ「ツスクル汁」とかその系統のネタに事欠かない連中なのになあ…アワレなのかネタ的に恵まれてるのか」
メルラン「そしてもちろんこのバトルは5人パーティで行われてますのでその辺りはご了承いただければと^^;」
ルナサ「というか、写真情報が正しければ、イワォロペネレプ倒した直後くらいに挑んでるのかコレ?」
メルラン「そして当然勝ちました。一回hageましたが♪」
ルナサ「( ̄□ ̄;)おいこら!!」
メルラン「いやだってもう装備品によるオーバーパワーの恩恵ほとんどないもの。
確かに一部は羽々斬だのアーチドロワーだのヘンなのがあるけど…」
ルナサ「…考えてみればその辺りが狂ってる程度で、あとは普通に五層でそろう装備だからなあ」
メルラン「てな訳でこの二人のデータはこうね」
氷の剣士レン
HP8500 物理全般に弱めの耐性、氷完全耐性/炎弱点
踏み袈裟改(脚) ランダム斬属性攻撃
息吹改(頭) 自分達(レン・ツスクル側)のHPを1500程度回復、HPが赤ゲージになると多用する(?)
居合の構え(腕) 5ターンの間行動速度アップ
首討ち改(腕) 近接単体斬属性攻撃、即死効果あり
抜刀氷雪改(腕) 全体氷属性攻撃、居合の構え使用した次ターンと、その解除直前のターン(4ターン後)に使用する
呪い師ツスクル
HP7000 属性全般耐性/物理全般弱点
弱法師の呪言(頭) 3ターンの間全体の物理・属性攻撃力ダウン
封の呪言:頭首(頭) カースメーカーの同名スキルに準ずる、ただし対象は全体
封の呪言:上肢(頭) 同上
禍神の呪言(頭) 全体に睡眠・混乱・盲目・呪い・麻痺・テラーのいずれかを付与
ペイントレード(頭) カースメーカーの同名スキルと同様
メルラン「はっきり言いますがぶっちゃけツスクルさん本気でウザイです(にっこり」
ルナサ「( ̄□ ̄;)言うに事欠いていきなりなんてこと言いやがる!!
あ、いやまあ、確かに全体を対象に弱体封じ状態異常ばら撒いてくるとかいい加減にしろくらい言いたくはなるが…」
メルラン「と言っても実際にhageた理由はむしろレンさんの抜刀氷雪のターンを間違えてたことなんだけどさ。
2発目が撃たれるターンは決まってるのに、それをうっかり忘れて挙句にそのターンで耐氷ミストの効果が切れるとかもうアホなんじゃないかと」
ルナサ「お前なんか容赦ないな…。
だが確かに、レンの攻撃力が非常に厄介なんだよな。何しろいきなりスピード上げてきてその直後に全体攻撃とか本当に」
メルラン「この連中の行動パターンだけど、レンはほぼ初手で居合、ツスクルは決まってないっぽいけどたまにペイントレードを初手で使って来ることもあるみたい。
なんで基本はこっちもバフを撒いていくんだけど、フリーズガードを使わないなら強化枠と耐氷ミストの兼ね合いを考えていかなきゃならないわよ。初手弱法師対策に猛き戦いの舞曲張ってもいいけど、使われなかった場合のことを考えてのバフ使用を心がけたいわ」
ルナサ「相手はうまい具合にポジショニングしてお互いの弱点を補い合ってるんだよな。
と言っても、レンには属性全般が通るわけでもないと」
メルラン「イワォ対策のまま氷重視でいくと悶絶モノね。
こっちは、イワォのところで解説したようにキバガミがグリモアで氷・炎両対応だから、彼が重要なアタッカーになるわね。
バフはミスト、守護の舞曲につぐみが定量、キバガミが基本的に上段の構え。橋姫さんは力溜めドレインで殴るか、回復アイテムを投げる係。そしてスキマは適宜ディレイしたりなんかしたり」
ルナサ「ヤマメは?」
メルラン「弱法師打ち消し以外ではあまりやることがなさげで」
ルナサ「何しに行ったんだよこの土蜘蛛…」
メルラン「実際、ツスクルの妨害がうまくかみ合ってこなければ、次の抜刀氷雪が来る前に概ねレンが息吹を使いだすから、ここまでくればあとは畳みかけるだけ。そしてツスクルを前衛に引きずりだしたら、ペイントレードが致命的なダメージを叩きだす前にバフで強化したツバメ返しやアクトブースト経由のチャージショットで可及的速やかに倒すだけよ。
ただ気をつけなきゃいけないのは、ツスクルの通常攻撃も思ったより痛いダメージが出るという点ね。こっちがひとしきり弱体化した時に唐突に殴ってきたりするけど、序盤のペインに比べると本気で馬鹿にできないダメージが飛んでくるわ」
ルナサ「というかこいつらはレンから倒すのが定石なのか?」
メルラン「相手の火力をかいくぐりながら後列を物理で狙うってのは結構きっついわよ?
それに、レンと違ってツスクルは回復技を持ってないわ。中途半端に傷つけてペインのダメージを上げてもおいしいところないし」
ルナサ「それもそうか」
メルラン「というわけで今回のログ()はここまで。
次回は第四層の時と同じく、第五層の解説と与太話中心で行くわよ。
…なんか狐の野郎、またある動画シリーズの影響受けまくったせいでクライマックスでとんでもないことになりかけたんだけど…」
ルナサ「( ̄□ ̄;)おい馬鹿本当に止めろそういうの!!
これ以上話の方向を無駄に捻じ曲げてどうするの!?」
メルラン「それは私に言ったって困るんだけどねえ」