〜幻想郷 輝針城〜
「くそっ…どうしてこう思い通りに覆らない…!
あの「小槌」の呪いは全部あの馬鹿な小人に押し付けられてる筈だ…それなのになんでだ!!」
制御を完全にすべく、自ら精神体となって直接とり憑いていたギムレーが沈黙する直前、正邪は辛くもその気地を脱して幻想郷へと戻って来ていた。
最早そこには、威厳などはもとより、異変を順調に進めている時の余裕は何処にもなかった。
「小槌」がその力を発動させるには、ある程度の年数をかけて最大限に天地の魔力を蓄えることが条件であり、その代償として、「小槌」が魔力を使いきった瞬間、それに相応した「対価」が災厄となって使用者に降りかかる。
正邪は彼女らしからぬ我慢をし、執念でその事を調べ上げ、「小槌」が力を使い続けても常に魔力が充填され、無限にその力を振るえる為に八雲紫の魔力を「小槌」に封印し、その為に邪魔な紫の精神体は多くの強大な力をもった神仙が封印されている脱出不可能の次元の狭間「北極眼」に閉じ込めた。
そして表面上は、自分が誑かし祭り上げた、少名針妙丸という一族の事も何も知らない世間知らずな小人の末裔に従う振りをし…彼女に「小槌」を使わせることでその呪いを避けようとしている。
魔力と精神を喪った肉体など、死んでいるも同様…そう、捨て置いていた筈の肉体が、仮とはいえ「紫の精神」を有した状態で異世界に居る…それが何を意味しているか、「計画」の進行に妨げになるのではないか…という針妙丸の言葉に渋々ながら従い、彼女自身の目で確かめた結果、そこに重大な計画の穴が隠されていることに彼女は気がついていた。
すなわち…「小槌」に取り込んだ紫の魔力が、その上澄み部分に過ぎなかったことを。
その上澄み部分ですら、自分たちに多大な利益をもたらす結果になっていたこと。
「協力者」であるだけの自分にも、「小槌」の反動の影響が出始めていることを…自分で立てた計画の綻びを、自分の目で確かめた瞬間から、彼女のやること成す事が思い描いた反対の結果へと動き始めているという最悪の事態として。
そして何より、自分が如何に八雲紫という人物を過小評価していたかを思い知らされる。
「冗談じゃない…このムカつく現実をぶっ壊し、総てをひっくり返してやる。
もう、最後の手段しかねえ」
狂気の表情でそうつぶやく。
そこへ、一人の妖怪が狼狽した様子で駆けよってくる。
「正邪、お前何処に行っていた!?
大変なんだ、小人の姫が苦しみ出したんだ…外の魔力嵐の動きも異常で」
「…解ってるよ、外の様子なんて。
どうやら来るべき時がきたみてえだな。あんた達はもう用なしだ」
「なんだと!?
貴様それはどういう…」
その誰何よりも早く、正邪はその妖怪の胴と頭を同時につかんで壁へ力任せに叩きつける。
その妖怪は不意の一撃を受けて昏倒し…その首がマントで隠された首元から離れ、失神し白眼を剥いた状態でごろりと床へ転がり落ちる。
「だが、私自身はまだ終わる気はねえんだよ。
八雲紫の魔力が手に入るんだったら、この世界も思いのままだ。
…あの小人は…まあいいや、どうせ制御不能のバケモノになるんだったら」
その表情が邪笑に変わる。
「バケモノはバケモノどうしで潰し合わせればいい」
-新・狐尾幻想樹海紀行-
その22 「Save the Little Princess!!」
ルナサ「いよいよクライマックスっぽい展開だね。
土壇場で悪の幹部が親玉を裏切るってっ展開は色々お約束ですが」
メルラン「本当はここでもう一回みょんな方向へ暴走するみたいでしたが狐野郎の理性が働いたようです。残念♪」
ルナサ「残念じゃねえよ馬鹿。
これ以上トンデモ方向に逝ったらこの話終着点見えないでしょ。
ただでさえワッケ解らねえって言われてんのに」
メルラン「本来はメリーの正体発覚→実はつぐみの終着点にはとんでもない秘密が→レンツスの代わりにかごめとカエルの神様が止めに入る→つぐみ覚醒→世界樹とゆかりん合体したよ助けよう!!→大団円…という筈だったんですがー」
ルナサ「本当にどうしてこうなったんだよ…」
メルラン「あー、最近(2013年の8月くらい)に始まってた東方世界樹のシリーズでなんか狐野郎が小人を気に入ったらしくて。
シララを引きずりこむ理由も思いつかなかったしじゃあ代わりに針妙丸入れよう、みたいなことになったのが総てのきっかけとか」
ルナサ「まーた思いつきか(呆」
メルラン「実はヤマパルの代わりに姉さんが行く予定だってあったらしいじゃない」
ルナサ「思えばそれでもよかったよなあ。
後衛に私前衛に幽香が居ても良かったって後で狐野郎が飲んだくれていたんだったら素直にそうすればいいものを」
メルラン「ヤマメに関しては某氏のラブコールを露骨に蹴っ飛ばす意味合いもあったらしいし、じゃあヤマメ連れてくるんだったらログでそれっぽいことも口走らせたしパルスィも連れて来よう、って事になったらしいわね。
メイン盾にするかアタッカーにするかは迷ったらしいけど、憤怒が決め手になったそうよ」
ルナサ「憤怒強力だからね、パッシブの中では」
メルラン「というわけで今回はいよいよエンディング前最後の階層・第五階層のお話。
初見で恐らくは多くのボウケンシャを唖然とさせただろう遺都シンジュクね」
ルナサ「地味に芸が細かいというか、背景画像にも新宿都庁が描かれてたり、ウワサでは第五階層のある窓の外には…」
メルラン「まあそこは、スッタフの遊び心と申しますか」
ルナサ「というかメガテンとかもだけど、地味にアトラスって新宿壊滅させるの大好きな気がするんだけど気のせい?
なんか新宿に恨みでもあるのかしら、例えば歌舞伎町でアレなお店にぼったくられたとか」
メルラン「おい止めろ馬鹿例え姉でもそれ以上はサックスで怒頭カチ割るわよ。
…っていうか、ストーリーでもリッキィが「東京って言う街の一部」って明言しちゃってるのよね。
位置的にはひとつ前のでかごめが言ってたセリフじゃないけど、本当に新宿モノリス辺りかしら」
ルナサ「もしかしたら新宿駅かも知れないよ。
というか、新宿駅と池袋駅は下手なダンジョンよりよっぽどタチ悪いから」
メルラン「そのうち世界樹とかの外伝で新宿駅をダンジョンにした世界樹っぽいRPG作るんじゃないかしらあの会社。
まあ無駄話はそこまでにしておきましてー」
ルナサ「おきまして。
無印では殿に匹敵する凶悪生物の巣窟だった遺都ですが」
メルラン「基本的には変わりません(きっぱり
特にヤバいの破滅の花びらとバビルサかしら。
前者は殿と違って石化はないけど、全体眠りに頭縛りまで加わったワケ解らない花粉撒いてくるし、後者は全体突攻撃をかなり高い火力から繰り出してくるわ。
あとも全体的に面倒くさいけど」
ルナサ「グリンブルスティの怒涛の牙とフレイムウーズの炸裂液どうするんだよ」
メルラン「あーイノシシ忘れてた。
ウーズの炸裂液はアレじゃない、どうせ赤ゲージにならないと使わない自爆技で、基本は単体とかでしか出てないんだから、氷属性技伸ばしておいて1匹ずつ確実に狩ればそんな怖くないじゃない。
炎属性列攻撃だし、ガードでも防げるわ。行動速度早くても来るの解ってるなら対処は楽よ、初見は知らないけど」
ルナサ「簡単に言ってくれるなあ。
これまではボスの度に休養してどうのこうのと言ってたのに」
メルラン「余程度を越した低レベル攻略でもしてなければ、遺都に辿り着くころには全員50くらいまではレベル上がってる筈よ。
そうすれば、それなり均等に振ってればアルケミもガンナーも各属性偏りなく伸ばせてる筈。
普通に進めてればてこずるような相手じゃないでしょうに」
ルナサ「まあそりゃあそうだろうが」
メルラン「あとこの階層では、無印で多くのユーザーからツッコミをもらったアーマービーストがいるわ。
残念なことにリメイクでは攻撃力も本当に「さほどでもなく」なっちゃって、その代わり鋼の守りで特殊防御上げてくるから、意外と面倒くさいモンスターになったわね」
ルナサ「別に残念でも何でもない気がするんだけどなあ」
メルラン「ただ、ここのFOEはどいつもこいつもガチでヤバいから、こいつらには注意しないといけないわね。
SQ4からの参入アイスシザーズはまあ、やってる事は霊峰と変わらないわ。
こいつがそれでもまだ倒しやすい部類ではあるわね。まかりまちがっても、いきなり21F入ってすぐにいる死を呼ぶ骨竜、こいつには迂闊に手を出しちゃいけないわ。
雷以外の全属性弱点だけど、HPがイワォより高い16000オーバー、なおかつ全体近接斬属性のまるかじりはバフデバフ抜きで最低400近いダメージを叩きだすトンデモ攻撃よ。HP減ってくると乱出し始めるからもうどうしろというのかと」
ルナサ「此間かごめの奴、これの希少種とドンパチやってなかったっけ…?」
メルラン「レベルもあるだろうけど、何よりもピクニックだからよ。
でも、ピクニックでもレベル50くらいならまるかじりのダメージは前衛で250近いダメージが来るわ。迂闊に触れないのが鉄則」
ルナサ「まあFOEって本来そう言うもんだよな。こいつ巡回型だよね」
メルラン「ただ巡回軌道上で戦闘を始めると、高速移動してきて骨竜以外の敵を一掃した状態で乱入してくるから、ドロップアイテムが欲しい人にとっても厄介よ。
あとはロン毛クマーの魂の裁断者、なんかキショい色したゾウの樹の下の大王。どっちも力溜めを絡めて全体攻撃を放ってくるから、轟音弾を持ちこんで挑みたいところね。
ただ裁断者は面白い性質があって、普段は細い道を往復で巡回してるんだけど、こっちが向きあってると動きを止めてしまうの。この性質をうまく使わないと、裁断者がひしめく28Fの探索は不可能よ」
ルナサ「別に倒してしまっても構わないんだろう?」
メルラン「姉さん、確かにそうだけとそのセリフよくないフラグよ。
因みに裁断者は弱点はないけど、炎属性で止めを刺すとアムリタ2の材料になる条件レアを落とすわ。
三層の採取アイテムが材料で運の絡むアムリタと違って、こっちは比較的入手しやすいし、難易度に拘らないならピクニックにしてそうそうに炎技で狩っちゃうのも手よ。幻想曲を使って定量分析を絡めたり、デバフを駆使してインボルブや卸し焔を併用して短期決戦を心がけたいわね」
メルラン「そして、五層の目玉はエレベーターね。
最初は勿論壊れてて使えないんだけど、24Fを経由して大回りで21Fの下半分の区画まで登って来て、その道の行き止まりにある制御装置を起動させてやる必要があるわ。
これで、マップ左側のエレベーターでB24Fへ降りて、反対側のエレベーターから25Fに降りれるようになるんだけど」
ルナサ「けど?」
メルラン「B25Fには降りてくる階段がなくて、ゲームクリアしないとフロアジャンプが使えないの。ここがすっごい面倒くさいわ。
中央のボス部屋に辿り着くまでは、「の」を額回しにするような遠回りを要求されるし、右下辺りは五層FOE勢ぞろいという狂気の地帯よ。アイスシザーズをうまく誘導して行かないと戦闘なしで切り抜けるのも困難ね」
メルラン「それとここ、悪名高い糸目クエストの舞台でもあるわ。
特定のポイントに行くと、クエスト受領前でも、ネズミが駆け抜けていったみたいなナレーションが入るわ」
ルナサ「というかこのメモはなんかすごい悪意を感じるなあ…」
ナズーリン「全くだ。ネズミを舐めたら死ぬよ」
ルナサ「( ̄□ ̄;)!!??」
メルラン「因みに無印だと、糸目クエストの捜索先は第六階層、B26Fよ。
報酬は変わらないけど、受領時期に見合った経験値が手に入る分はマシになったのかしらね」
ルナサ「いやおい今なんかいたぞ!? それはどうでもいいのか!?」
メルラン「今さして重要じゃないわ(キリッ」
…
…
♪BGM 「迷宮 白亜ノ森」(SQ3)♪
つぐみ達5人は、丁度枝が折り重なっている場所へと着地する。
そこから枝をたどり、幹を慎重に降りていくと、やがてその巨大な木の根元へとたどり着いた。
「これは…」
「タルシスの物に比べればはるかに小ぶりだが…これも「世界樹」の一本だ。
もっともこいつは、恐らくはもっと地下深くから生えているんだろう。これはほんの天辺の一部分にすぎない」
「この下もあるっていうの?」
眼を丸くする文に、ああ、と応えるかごめは、その傍らの一角に茂る草木を払いのけ始める。
そこには…グラズヘイムに存在したのと同じような端末があったが、それは全く稼働する気配を見せない…。
「…ここの機能は完全に死んでやがるか。
グラズヘイムですらああだったんだから、ここはシステム内までもう細かく根が入り込んでて駄目だろう。
まあ…エレベーターはことが全部済んだら河童どもにどうにかしてもらえば動くかもわからんが…リッキィの奴、最初どうやってきたんだこの場所に」
「あの子、エレベーターは動いたって言ってたじゃない。
こんなメチャクチャやらなくても、正攻法で来れたんじゃないの?」
「まあ現状時間もなかったからな。
あとは…どうやってここからグラズヘイムに繋ぐかだが…参ったな、どっかに生きてるシステムねえんかな」
窘める文の言葉も生返事のかごめは、そのフロアの散策を続ける。
その一方で、つぐみはそびえ立つ世界樹と、そのはるか上を見つめている。
千年以上もそこにあったとは思えないほど、それは青々とみずみずしい色の葉を纏い、幹も力強さに溢れている。
それ以上に…彼女は、強い魔力と共にひとつの気配をそこから感じ取っていた。
ほんのわずか前に感じた、モリビトの気配。
しかし、それはほんの一瞬後に別の物へと変わる。
「とうとう、ここまでたどり着いたんですね。
………よかった、間に合ったんだ」
直前まで、なんの気配も感じなかった。
かごめ達はその声に、驚愕と共に振り返る。
「古の…そのまた遥か昔…この世界ではずっと進んだ文明が存在していた。
文明が生み、高度に発展した科学技術をもって人は、自然を、生命を…世の万物の理を操り始めた。
世界のありとあらゆる謎は人の手によって暴かれ、手にした力は神と呼ばれる存在を凌駕するまでになった」
緋の着物を纏い、ゆっくりと歩み寄ってくる深紫の髪の少女。
それは、身体の大きさこそかごめ達とさほど変わらないくらいまで大きくなってはいたが…。
「でも…その余りに進み過ぎた科学の力は、かえって人の未来に暗い影を落とすこととなった。
彼らの行き過ぎた叡智は、万物に必ず訪れるだろう終焉の恐怖を…確実に訪れる死神の影を見せた。
科学の発展の代償である自然は、自分たちの手では対処できないほどに穢され…そして、その恐怖がとんでもない化け物を生みだした。
バケモノは天変地異のような突然のカタチではなく、人々の心の闇を増大させ、人自らの手で大破壊をもたらしてしまった」
悲痛な表情で語る針妙丸。
その声も瞳も、深い後悔の色をにじませている。
「僅かに生き残った人々は、それでも生き残りを賭け、諦めずに戦った。
自分たちの持ち得た叡智と、その発展の過程で忘れ去られていた大自然への畏敬がひとつの形を成し、やがてそれは「世界樹」を生みだすに至った。
「世界樹」を育み、世界を再生しようとするその過程の中でも、ひとり、またひとりと人は倒れ…それでも、最後に残ったその技術者も、家族も仲間も失いながら研究を続け…その最後の決め手となる薬も完成させたわ。
その薬の効果が現れるまで、また気の長い時を必要とすることを知った研究者は…自ら世界樹と一体となり、人間としての生を捨てこの大地を見守り続けようと決めた。
それは……決して安息の許されない、過酷な道であると知りながら……!」
その瞳から涙が零れ落ちる。
「私は…それほどの覚悟も理由もなかった。
そして…自分がやろうとしていたことの意味も知らなかった。
…ごめんなさい…あなたの…全てあなたの言った通りだった…!!」
その言葉が終わりきらないうちに、世界樹から禍々しい形状の蔦が瞬時にその身体を絡め取り…融合を始める!
♪BGM 「戦場 天地の玉座」♪
-お願い…します。
私を…私を、殺してください。
私にもたらされた「小槌の呪い」は、この地に眠る災厄と結びついて…ありとあらゆる世界に滅びをもたらす存在となる。
だから…だからせめて…そのまえ、に-
そして、禍々しいオーラを放つや災厄の樹は、まるで雄たけびを上げるかのように巨大な触手を振りかざした。
「どうだい…最高のプレゼントだろう…!?
こいつを倒せば、あんた達の言う「くだらない異変」は解決するんだ。
こんな大サービスはないだろう!」
その傍らに、禍々しい笑みを張り付けた正邪が姿を現す。
「あたしは望み通り素晴らしい力を手に入れた。
その代償は皆、馬鹿正直な小人さんがすべて肩代わりしてくれたよ。
あんた達が幅を利かせていた時代は終わりだ! この世界はすべてあたしの意のままになるんだ!!」
その下卑た哄笑に、かごめの表情も鬼気迫るモノに変わる。
「お前らはこいつの相手でもしてろ。
あたしはこの力で…グラズヘイムとかいう所にいる他の連中を皆殺しにして来てやるよ。
それで、すべて終わりだ。安心して死んでろ」
その言葉と共に、姿は闇に溶けて消える…。
「あいつッ…!」
文が追おうとするのを、かごめは制する。
抗議の言葉を言おうとした文は…その凄まじい表情に息をのんだ。
「私を殺せ…か。
もうその言葉もいい加減聞き飽きたよ。
どいつもこいつも…どうしてまず生きて悪あがきしようってところからあきらめちまうんだろうな…あたしもそんな、言えた義理はないんだが」
かごめは振り返ることなく、ひと振りの刀を抜き放つ。
それは、普段彼女が振るう魔装とは異なる…名刀ではあったが、ごく普通の刀だった。
「おいあんた、あたしがついこないだ言った言葉もまるで聞いてないよなその様子だと。
…あたしはこう見えても、わりと気の良い方だと思うんだ。
だから…もう一度だけ言ってやる」
振りおろされた触手の一撃も、まるですり抜けたかのような錯覚をつぐみたちは感じる。
かごめは最小限の動きで、紙一重でその一撃を回避しているのだ。
「かけ違えたボタンなら、また外してかけ直せばいい。
道を間違えたら、もう一度、戻ってやり直したって良いんだ」
かごめはそのまま、触手の嵐をまるで意に介すことなく、その根元へと近づいていく。
「あんたは、自分がやったことの意味を知ったんだ。知ったなら、そこからやり直すことだってできるはずだ。
そりゃあ…ここまで大事になれば、おっかなくなるのは解るよ…でもさ、あんたが騙されていた事は、あたし達が知ってる。
だから…あんたが本当に、自分のやったことに責任を感じているのなら…それをどうにかしたいというのであれば…あんたが必要としている分の力は、あたし達がいくらでも貸してやる」
悲しみに歪む針妙丸の瞳の中に、力強い意思を持つその表情が映し込まれ…涙に歪む瞳にも、はっきりとそれが見える。
「生きることを簡単に諦めるな!
お前はちゃんと非を認めて謝ったんだ、もうあたし達は誰一人としてあんたを恨むつもりはねえ!
だから…軽々しく、自分を殺せなんていうんじゃねえええええええッ!!」
紫はその姿に、先日見たつぐみの姿が重なって見えた。
沈黙の後、零れ落ちる涙と共にその言葉がつぐみ達の耳へ届く。
-…おねがい…わたしを…たすけて…!-
かごめは、満足そうに口の端を吊り上げる。
「…任せろ!」
そして握り締める刀が、彼女の持つ本来のそれへと変わっていく!
♪BGM 「眠らずの戦場」♪
「私達も行こう!
あの子を…絶対に助ける!」
「わかったわ。
あなた達、準備はいいわね!?」
「だーれに向かって口利いてんのよ。
かごめがああいうこと始めた時点で、とうに臨戦態勢に入ってるわよ!」
「守りは任せてください! 攻撃は一切通しませんよ!」
頷きあい、散会する四人。
「このあたしがいる以上、誰ひとりとしてここでくたばることは許さねえ!
行くぞ!!」
…
…
メルラン「それじゃあいよいよ五層の大トリ、クラシックラスボスの「世界樹の王」の解説に入るわね。
一応ここではその本来の正体であるヴィズルさんの画像でお送りします♪」
ルナサ「( ̄□ ̄;)ノリ軽すぎるよ!!
それになんだってこのシーンなのよ!?」
メルラン「雰囲気です♪
というわけで」
第五階層ボス・クラシックモード最終ボス 世界樹の王
HP22000 炎弱点/耐性なし
サウザンドネイル(腕) ランダム対象に3〜5回の近接突属性攻撃、1人に1回までヒットする
テンペスト(腕) ランダム4〜6回の斬属性攻撃、全部位封じ付与、「王の威厳」使用後に必ず使用
ヘルドレイン(頭) 単体遠隔無属性攻撃、即死効果あり、与えたダメージ分HPを回復
王の威厳(頭) 全体の強化を総て解除する
エタニティツリー(頭) 3ターンの間、ターン終了時に1000前後のHPを回復
王の誇り(依存部位なし) 封じ解除
サイクロンルーツ(脚) 全体壊属性攻撃
メルラン「実にラスボスらしい、範囲の広いかつ威力の高い攻撃を繰り出してくるけど…どちらかと言えば力押しタイプのボスよ。
それどころか弱点もあるわ。卸し焔、火炎の術式にストーリーなら定番のインボルブ、チェイスファイアを絡めれば、それこそ一気に終わると思ったんだけど…」
ルナサ「その考えは明らかに相手のタワケた攻撃力のことを忘れてる、というわけね」
メルラン「ええまあ。
流石にレベル53では倒せないどころか、2ターン目のサイクロンルーツで絶耐ミストと守護の舞曲の上から500くらい喰らって瞬殺されたわ…」
ルナサ「( ̄□ ̄;)いやなんだよそのダメージ量おかしいだろ!!
えっ、このゲームのスタッフ本当にクリアさせる気あるの…?」
メルラン「まあその為の難易度設定もあるんだけどさー、というか、低レベルクリアって言ってもいい加減限度はあると思うわ。
ラスボスの強さ設定で有名なのはサガシリーズのバトルプログラマー・小泉今日治氏の「クリア率7割くらい」っていう方針じゃないかしら。もっともサガシリーズで狂ってたのはロマサガ2の七英雄と、アンサガのカオス・ルーラーくらいのような気もするけど」
ルナサ「ミンサガの真サルーインは?」
メルラン「アレはほら、世界樹で言えば六層ボスみたいなものだし?」
ルナサ「その例えはどうなんだろう…」
メルラン「無印でもサイクロンルーツは一撃即死級の破壊力があったけど、これ実はある程度強化枠が埋まってくると使って来るらしいわ。
確か、7つ以上だったかしら。今回もしょっぱなからいきなり12個も強化枠が埋まってた(全員に絶耐ミスト&守護の舞曲+キバガミ上段の構え+つぐみ定量分析)っていう頭の悪い状態だったから、それだったら仕方ないでしょうって話で。
ただ、4つほどレベルを上げて挑んだ時はサイクロンルーツがギリギリ耐えられる程度のダメージだったし、レベル差が大き過ぎると被ダメージも上がるっていう伝統の仕様もあるし」
ルナサ「えっ、そんなのあるの?」
メルラン「因みに隠しステータスである敵レベルだと、世界樹の王が60、マイクが62よ。
大体これに近いレベルまで上げることが推奨されるわね、ピクニックはその限りじゃないけど。
その近くまで上がればあとは例の裏技もあることだし、適度に防御を絡めつつ弱点を突いていくという正攻法しかないわ。幸いサイクロンルーツ以外で恐ろしいのは、HPが減るか「王の威厳」で王自身の封じを回復した後に飛んでくるテンペストだけど、それほど封じが入る率は高くないわ。
そもそもこいつにはそんなに封じ入らないし、体力が減ってくるまではそんなに警戒する必要はないと思う。ただ、ツスクル以上にこいつの通常攻撃のダメージが反則的な事に気をつけなきゃならないわ」
ルナサ「えっこいつも普通に殴ってくるの?」
メルラン「ええ。恐らくは突攻撃、バフ込みでも320前後は食らうわ。
多分テンペストやサウザンドネイルの一発分よりもずっと重い一発よ」
ルナサ「ラスボスの通常攻撃って言うと、DQ歴代だと大体痛恨の一撃っていう印象があるけどねえ」
メルラン「ダメージ量的にはそんな感じかもしれないわね。
ただ、繰り返すけどこいつは弱点があるから、相手の攻撃をしのいで強力な炎属性攻撃を叩きこんでいけば、短期決戦を狙うことも可能。
実際に終盤で憤怒の力が共に発動している卸し焔からのチェイスファイアで、エキスパートにもかかわらずかなりエグいダメージが出たわ。スキルは次で紹介するから軽く触れると、キバガミのがレベル8、パルスィはマスターの上にグリモアで上乗せ。赤ゲージに突入してれば問答無用で発動しているから、キバガミは1.36倍、橋姫に至っては2倍近い凶悪な補正率の大火力をぶち込むわ」
ルナサ「なんというしっとの力…」
メルラン「まあ、止めを刺したのはつぐみの三連フレイムショットなんだけどね。
あとここまで話せばわかると思うけど、ラスボスに挑んだのは何時ものメンバー…というか、パルスィはここでが最後の戦いになる。
…別に死ぬわけじゃないわよ?」
ルナサ「味気ない話するとエンディング後に…」
メルラン「というわけで次でいよいよクラシックモードエンディングまで。
このワッケわかんないバックストーリーの異変もようやく解決よ。どちらかと言えばネタ満載かもしれないけど」
ルナサ「そういう不安を煽るような引きはいい加減にしてよ…」