「そなたらが持ち帰ってきた翼は、紛れもなくキマイラのものと確認いたしましたぞ。
かつて…フロースガル殿が持ち帰ったものとは大きさは比べ物になりませんが…」
公国宮。
事の顛末を報告すべく、てゐと文は、フランの怒り任せの殺戮劇の中でなんとか原形をとどめていたその魔獣の翼を回収し、それを携えてダンフォードの元を訪れていた。
「流石は、音に聞こえた強豪ギルドの働きと、この老体も感激を隠せませぬぞ!
公国の政を司る者として、然るべき報酬を用意いたしましょう。
して…あなた方二人、ですかな?」
「ああ…あとの連中も、流石に無傷じゃ済まなくてな。
あんたが料理店と併設してくれたギルドハウスで、あとの連中は治療中だよ」
そうでしたか、と老大臣は溜息を吐く。
「なれば、後ほどギルドハウスの方へ、報償を送りましょうぞ。
キマイラの脅威が取り除かれたのであれば、再び、常緋の森への探索隊を出す事もできます。
あの森への道が開かれたのであれば…ああ、申し訳ござらぬ、年寄りの独りごとじゃ。
そなたらも、今はゆっくり休まれるとよい。キマイラを討てるギルドなど、エスバットやベオウルフを除けば、そなたらくらいのもの」
大臣がベオウルフの名に触れた時、文は表情を曇らせる。
老大臣にそれを告げるか、文が逡巡しているうちに、てゐは淡々とその事実を報告する。
「フロースガルは…キマイラに討たれたよ。
私達が奴に挑む一週間前だ。
…済まねえ爺さん…私達はあいつとクロガネのお陰で、九死に一生を得て再戦のチャンスを得たんだ」
「なんとっ…!」
ダンフォードは驚愕に目を瞠る。
てゐの言葉には、嘘がひとつだけあった。
言うまでもなく、彼女らがフロースガルに救われたという事だ。
そもそも…彼女はフロースガルの最期を見ていない。
だが、クロガネの無言の瞳が、その悲しそうな鳴き声が…彼がいかに戦い、そしていかに死んでいったかを想像させるに十分過ぎた。
彼は、最後までクロガネの盾となり、聖騎士らしく「仲間を最後まで護り」死んでいったのだということを。
てゐは、まだ柄に血の跡が残るその剣と、クロガネが託したその首輪をダンフォードへ差し出す。
老大臣はそれを恭しく受け取ると、彼らの遺品を天へ掲げながら黙祷を捧げる。
てゐと文もまた、それに倣って静かに黙祷する。
「一個の冒険者としてではなく、聖騎士として、人間としても素晴らしい男じゃった。
そなたらに感謝こそすれ、恨みはすまい。
…この剣と首輪は、託されたそなたらのものじゃ。共に携え戦うも、彼らの代わりに葬るってやるも…そなたらの自由」
「解った。
この迷宮にいる限り、「彼ら」の力を借りられるなら有難い」
てゐは再び、老大臣から恭しい礼をもって剣と首輪を受け取る。
そして、それを納めていた腰の鞘へ収め、クロガネの首輪を首飾りめかして身につけると…一礼して、その場を後にした。
…
「…あんたにも、ああいう嘘の吐き方はできるのね」
公国宮の外で、溜息の後に文はそう、何処か呆れたように話しかける。
文は、てゐの過去の事をそこまで知っているわけではなかっただろう。
だが、それまで口先三寸だけで世渡りしてきたようなイメージが付きまとう彼女を、かごめが信頼を置いているのは知っている。
そして何より…彼女の見せた後姿は…その真実の姿の一端を、文は見出している。
それだけでも、目の前のこの兎の妖怪が、十分信頼に値する存在であるいう確信をもつことができていた。
「最初にキマイラに挑もうとしたあの一瞬…いったい何を体験したのか知らない。
でも、それを思いとどまらせる何かが…あなたがその悔しさを耐えなくてはならないほどの何かが、起きていたんだってぐらいは、解るわ」
「……ふん、知った風な口利いてんじゃねえよ。
私の言葉なんて、他愛もないウソとして相手にしないでおくのが身のためだ」
「私たち全員が生き残る事を第一に考える…そう言ってくれたことも、嘘だって言うの?」
てゐはその時初めて、背後の文へ振り返る。
何処か寂しそうに、それでいて、普段の文でもよく見せるような、何処か悪戯っぽい笑みだった。
てゐもそれに釣られるように、ふっと笑う。
「フランには悪いが…少し、棘魚亭にでも寄るか」
「そうね」
二人は、沈みゆく夕日と街の喧騒を背に、大通りへと紛れていく…。
「狐尾幻想樹海紀行 緋翼の小皇女」
第五夜 小さき者たちの決意
あの後、フランは動かないその小さな亡骸を、クロガネを埋めてやったその傍に埋めてやった。
そのまま、彼女はギルドハウスにあてがわれた自分の部屋に閉じこもっていた。
樹海で感じたその濃密な死のイメージに中てられたのではなかった。
そもそも、かごめと共に旅したシンオウも、三竜に挑んだアーモロードでも…その直後に戻ってきた幻想郷でも、それと隣り合わせの戦いをしている。
彼女の恐怖は、自分自身の中にあった。
怒りのままに解き放たれた純粋な破壊の力は、キマイラを…それが手負いだったとはいえ、何の抵抗もさせずに物言わず肉塊へ変えてのけた。
飛び散る魔獣の血で真っ赤に染まる視界は、あの日、紅魔館で見たその凄惨な景色を否応なくフラッシュバックさせる。
狂気の金切り声とも、哄笑ともつかぬ奇声を上げ、大切な存在の血に塗れた爪を振るうその妖怪と、先刻のように、ただその存在に対する憎悪に任せて力を振るう自分自身が。
「なあんだ。
あなたも嗤っているのね。
結局私もあなたも、この世に要らないノケモノ仲間なんだよ!あきゃきゃきゃきゃ!!」
その妖怪の笑い声が、今も己の狂気の一部になって、心の奥底に巣食っているのだと。
それが解き放たれた時の恐怖が、フランをそこから動けなくしていた。
「フラン、入るよ」
ふと、ノックの後に…小さな音を立ててドアが開けられる。
その声は、聞き覚えがある声だ。
この冒険に旅立つまでは、ほとんど聞いた事もない声の一つ…地底の紅い河童、河城みとり。
シンオウの旅路を共にした谷河童・にとりの心の闇から生まれた「もうひとりのにとり」というべき存在。
みとりはフランの言葉を待たず、ベッドの上でうずくまったままのその傍らに腰をかける。
フランは、同じパーティメンバーにいても、この紅い河童の事をほとんど知らない。
紅魔館へも、時折チェレスタやグランドピアノの調整に訪れるリリカと親しい妖怪、という程度の認識だった。
否、もう一つ…彼女が触れたくないところで、深いつながりのある妖怪であることも知っている。
見た目よりもずっと聡い彼女は、そのことをきっちりと割り切れているはずだった。
そう、思っていたのだ。
「自分のこと…怖い?」
しばしの沈黙ののち、みとりはそう問いかけてきた。
フランはその質問の意図を測りかね、恐る恐る、その顔を上げる。
「…私は…まだ自分の事を総て受け入れきれたわけじゃない。
今でこそ、にとりやちゆり…それにリリカやさとり、いろんなひとと、こうして話す事に抵抗がなくなってきたけど。
それでも、時々自分の事が何処までも恐ろしくなる時がある」
フランは、レミリアに少しだけ聞いた、この紅い河童の話を思い出す。
ありとあらゆるすべてを「禁止」する力。
事象の否定という、低級妖怪に当たる河童の眷族としては、持ちうるはずもない神格級能力。
かごめやリリカを永く苦しめ続けた「永遠」に由来する生まれがもたらした、忌むべき禁断の力を持つ存在であると。
そして、フランもまた知っている。
彼女の心に巣食う狂気の記憶の源に、この紅い河童がいた事を。
「解ってるさ。
私は本来、こんなことをあんたに言えた義理はないと思う。
私の所為で、こいしが壊れて…そのこいしが、あんたの大切なものを傷つけた。
その事実を消す事は出来ないんだってこと」
「でも…あなたがやったことじゃない。
こいしさんだって、きっと」
「取り繕う必要はないよ。
あんな馬鹿なんて、二、三発全力でぶん殴りたい奴は、そうしてやった方がいいんだ。
………あいつ、あんな感じだけど………本当は、あいつ自身も、そうされた方が、ずっと楽なのかもしれないのにな」
みとりも、同じようにしてベッドの上で膝を抱える。
「私も、知りたいんだ。
この私の忌まわしい力が、何のために残っているのか。
どうやったら受け入れられるのか。
シンオウでかごめさんのために、全てを擲って、最後のチャンスを護りきったにとりみたいになれたら…それが、解るんじゃないかって」
「だから…聖騎士の道を、選んだんですか…?」
頷くみとり。
「…クロガネが見たフロースガルの姿は、私がなろうとしている姿じゃないのかもしれない。
もし…私がこの樹海で死んだとき、多分あの「異変」の犠牲になった奴は、因果応報だって言うんだろうな。
泣いてくれる奴がいるとしても、きっと、にとりくらいじゃないかと思う。
リリカだって…本当は心の奥底の何処かで、私を憎んでるんじゃないかって…だってそうだろ、あの子は、その所為で…!」
フランには何も言えなかった。
今、湧きあがった感情のまま、その言葉を吐いても、みとりは淡々と受け入れるだろう。
頭で解っていても、感情だけはどうにもならないという事…だが、フランは、それを解き放ってしまったら、二度と戻ってこれないのではないかと…その事に対する恐怖が、かろうじて「感情の暴走」にブレーキをかけていた。
だが、果たしてそれだけだったろうか?
自分の過去に向き合う覚悟を、みとりは確かにもっている事を…フランは理解しつつあった。
理屈ではなく、その瞳の奥に宿る、哀しみを内包しながらも強い光を。
そして、そんな強く悲しい瞳を持つ存在を、知っている。
「じゃま、したね」
彼女は立ちあがると、ゆっくりとした足取りでその場を後にする…。
…
〜鋼の棘魚亭〜
てゐ「まー取り合えずだよ、色々事情があって今動けそうなのが私とあんただけなわけだけどさ」
文「何よ本当に唐突ね。
一応あの白黒も五体満足よ。確かにキマイラを倒せたは倒したけど、正直このまま次の階層進めるのかしら?
あの白黒は樹海知ってるって大口叩いてやがるけど、現実問題ズブの素人以下よね色々」
店主「なんでえ姐さん方よ、おめえさん達がキマイラを討伐したっての、こっちでも持ちきりになってるぜ?
公国の瓦版で知ったんだけどよ、あんたたち実はタルシスとかでも有名なギルドだって言うじゃねえか。
まさかそんな大物ギルドがこんな辺境まで出張ってくるなんて思ってもなかったしよお」
文「その辺りで暴れてたのは私たちじゃないんだけどさあ。
ねえてゐ、本当にかごめの馬鹿この世界で本当に何しでかしやがったの?」
てゐ「解らんもんは私にも語れんわい。あ、親父こっちワイン追加な。
お陰で大分面倒事が私達を名指しで入ってきてやがるなんて話を聞くんだけど、どういうことなん?」
店主「そりゃそうだろ、エスバットの連中はどの辺に居るんだかわかりゃしねえし、ベオウルフも帰って来ねえしな。
そうなりゃ、今この街にのうのうとしてる実力者にお鉢が回ってくるのもとーぜんではあるわな。
っと、ほいよワイン」
てゐ「世知辛い話だなあオイ…つか、差し当たって直近の奴って何があるのさ?」
店主「色々あるぜえ。
先ずあれだ、北区域にある薬泉院の、薬の材料調達」
文「なによそれ。
薬草摘みだったら専門の採集隊ぐらいいるでしょ普通?」
店主「その材料ってのが、古跡の森にいる角鹿の角だとすれば、薬泉院の頭でっかちなだけのもやしどもにどうにかできる代物だと思うかい?
まあ、そういうこったぜ」
てゐ「おいおい…
文「あんたが言うと嘘にしか聞こえないんだけどねえ。
で、他には?」
店主「あとなんか、魔物に復讐したいから手ェ貸してくれって奴らもいたな。
その馬鹿知ってるから言うけどよお…別に復讐っても、やられた奴は生きてるし今頃ぴんぴんしてるんじゃねえかな。もう半月以上経ってるし、やられたって言ってもその魔物自体より、その姉ちゃんが術式使おうと思って後ずさった時に足滑らせて、偶々運悪く石畳に頭ぶつけて気を失っただけだしなあ」
文「なによそれ」
店主「楽をしたいってならこんなのもあるぜ?
あんたら最近公宮のジジイがおったてやがった料理店に一枚かんでんだろ?」
文「それがどうしたってのよ、営業妨害だからくんなっての?
あのレジィナって子、なんか妙にそういうところくそ真面目だから、酒置こうとしやがらないし」
店主「だろうな、あいつはそれで有名だからな。
だから住み分け考えなくても心配はいらねえかと思ったんだけどよ…あそこで鹿肉料理出された時にだけちぃっと話題になっただろ?
あれ、本気で流行らせてくれねえかっていう依頼がな」
文「誰のよ、それ」
店主「俺様に決まってんだろうが。
あれにあやかってこっちでも鹿肉調達したはいいんだけどよ、どいつもこいつもあの角鹿だって聞くとそれだけで尻込みしやがるんだよ。
あいつの声まともに聞くと頭おかしくされるだろ? そんな肉食ったら気が触れちまうんじゃねえかってんで、採算が合わなくなっちまってなあ」
文「それを捌こうっていうの? あっきれた。
大体、その話半月以上前よ? 腐ってるんじゃないのそれ?」
店主「塩漬けにしてあるからその辺は問題ねえよ。
俺もたまぁにつまんでるんだが、塩漬けをちぃと焙るとこれがまたいい酒のつまみになってなあ」
文「だったらあんたでそれ自分で宣伝すりゃいいじゃない!!><」
店主「だから薬泉院のと抱き合わせでいいからついでに新鮮な奴の調達もだな。
勿論ただじゃねえぜ? 宿屋のオバハンみたいにしけたことは言わねえ、好機のスカラベっていう貴重品を出すぜ? 要らなきゃ売ればそこそこいいカネになるしよお」
てゐ「スカラベか、かごめの野郎がグリモア生成促進に役に立つとかぬかしてやがったなそう言えば。
鹿なら狩れねえわけじゃねえ、行ってみるか」
文「ちょっと正気!?
フルメンバー揃ってるならまだしも、魔理沙だって何してやがるのか最近見ないし」
魔理沙「………おう、魔理沙さんのお帰りなのぜ(しろめ」
文「( ̄□ ̄;)あやああああああああああああ!!??
ちょっと何よなんでそんなにズタボロなのよあんた!?」
魔理沙「色々あったんだよ畜生。
まあ、お陰でいいもんが見れたけどな。こんな樹海にも移動湖があったなんて知らなかったぜ、規模的には池だがな」
店主「なんだと!?
じゃあの嘘つき野郎の言葉は真実だったってのか!?」
文「どういうこと…?」
てゐ「さあな。
ひょっとすると、キマイラがいた階層の奥に、水がないのになんか水底みたいにミズゴケが広がってた場所があったが…」
魔理沙「そこ、気温の差なのか水の流れのせいなのか知らんが、夜の間だけ地下水が染み出すらしくて、滅茶苦茶きれいなんだぜ。
水自体に魔力でも含んでやがるのか、あそこで暫く景色眺めてるだけで魔力がかなり補充できたぜ」
てゐ「へー石清水もそうだけど、そういうポイントもあんのな。
まあそりゃいいや、おい魔理沙それ終わったならどうせヒマだろ、鹿狩り行くぞ」
魔理沙「( ̄□ ̄;)さらりと流した挙句何言ってんだテメッコラ!?」
文「あんたねえ…さっきも言おうと思ってたけど、5人でもやっとこ倒せるようになった鹿を3人で狩ろうなんて。
フランはあれっきり部屋から出てこようともしないし、河童も何がどうしたのかついてきやがらないし」
てゐ「それなんだがなーお前ら耳貸せ」
〜少女説明中〜
てゐ「…という事で、一度でも狩ったFOEは狩りやすい処置にしてくれるらしい」
魔理沙「えーそれ本当の話か?」
文「まあ、そいつの反応が正解と言えば正解なんだけど…今朝枕もとにかごめの字でそういうこと、書いてあったのよね。
とりあえずやってみるだけ試してみるってのはどう?」
てゐ「鹿の角切るんだったら斬属性技いるわな。
まあ、私にも策はある。そいつの試し打ちもしてみてえと思ってたところさ」
…
…
かごめ「どうもいつものかごめさんです」
ヤマメ「えっちょっとなにこの展開っていうかまたこいし絡みの案件かよ!!!><」
かごめ「そういやmaimaiでお燐の地獄亭追加されてた(2015.1.8追加)けど、アイコンのラインナップから見事にこいしだけハブられてたな」
諏訪子「そりゃあの無意識妖怪、一人だけ店も手伝わんと早苗の隣でのうのうと食ってるからだろ(さとりメモ:ムービー参照)。
自業自得だ、自業自得。
つかそんな話どうでもいいよな今」
かごめ「あれの紫11は騙り過ぎだよな、へたすりゃ違法行為より簡単だぜアレ」
諏訪子「至極どうでもいいわそんなこと!!><
つかクエストの話しろよその話なんだろおうあくしろや!!」
かごめ「祟神のチャンネーせっかちめう(プヒー」
諏訪子「(大上段に邪眼の鎚を振りかぶっている)」
ヤマメ「諏訪子殿殿中でござる、殿中でござる。
つかこいつのこういう喧嘩買うのなんて蒟蒻を斬鉄剣で切ろうとするくらい無駄な行為だから」
かごめ「とまあ今回はクエスト特集でまいりましょうかね。
解ってると思うけど、ここで触れるクエスト全部、キマイラ討伐前にやった奴だから」
ヤマメ「まあ大体第一階層で出来るクエストばっかりだとは思うがね、このタイミングで触れるとなれば。
最初に兎の触れてるのはアレだね、「薬泉院の依頼1」。
鹿の角一本持って来いって奴」
かごめ「SSQで施薬院がなくなったのと同様薬泉院がなくなってツキモリ先生が絶賛★超★失踪状態な今日この頃、施薬院のキタザキ先生がミズガルズ図書館のエロい人もとい偉い人にジョグレス進化を遂げていたという話も聞くんだが」
諏訪子「だからそんなのどうでもいいだろマジで」
ヤマメ「一応、古くからのボウケンシャ達は「キタザキ先生何やってるんスかwwwww」状態なわけだがな。
そんなこんなでツキモリ先生もSSQ3が出たらこっそり出てくるんじゃねえか説もちらほらと」
諏訪子「(無言で静かに邪眼の鎚を振りまわしている)」
かごめ「そろそろやめとこうヤマメ者、スワ者が色々限界だ(しれっ
薬泉院の依頼はまあ…発注されるのが4F到着。流石にその頃になればレベルも9以上にはなってるだろうし、余程の事がなければガンナーかアルケミストのような属性攻撃ができるクラスか、レンジャーのような突攻撃主体のクラスはいるだろうし、鹿くらいは狩れるだろ。
問題は鹿を斬属性攻撃で仕留めなければならないという事だが」
ヤマメ「鹿はHP半減したあたりから狂乱の咆哮よりかちあげを多用し始めるしね。
かちあげの破壊力は、エキスパだとHPブーストも物理防御ブーストも振ってないレベル9パラが8割持ってかれる程度かね」
諏訪子「…その論拠ってなんだよ」
ヤマメ「みとりちゃんが実際そのくらいもらった(迫真」
かごめ「よっぽどヘンな構成及びヘンなスキル振りでもなきゃ、9あれば十分狩れるよ。
実際レベル9で誰ひとり落とされずにsageたしな、再生がうまく回転したお陰でもあるが」
諏訪子「あえて聞くが、それ以前に挑んだことは?」
かごめ「レベル8で同志討ち祭したのちにかちあげでしめやかにhageた(しろめ」
諏訪子「極端すぎるだろそれ…いくら、伝統仕様でレベル低いと被ダメージが跳ね上がるとはいえ…」
ヤマメ「私も経験あるから言うけど、鹿の対処は序盤の狂乱の咆哮でどれだけ混乱に泣かされないかだと思うんだよね。
実際、8前後で挑んだときは嫌がらせかってくらいてゐと魔理沙が交互に混乱させられて二進も三進も行かなくて」
諏訪子「ああ? あの兎詐欺野郎そんな速攻で転移抑えたのか?」
かごめ「そもそも巫術マスタリ上げてくと自然習得するだろが、昔と違うんだからよ。
もっともてーさんはおいおい結界とってもらう方面ではいたから、乱疫と転移は結界の前提には振ってあるし」
諏訪子「いやだがちょっと計算合わないんだが。
あの口ぶりだとあいつ、巫剣取りに行ってた感じじゃねえの?」
かごめ「そうでもあるしそうでもないと言えるな。
まあ、種明かしはここからだ」
…
…
♪BGM 「鉄華 初太刀(先制成功バージョン)」♪
狂乱の角鹿がエントリー!
角鹿は卑怯にもアイサツもせず狂乱の咆哮=ジツを使ったが、このようなベイビー・サブミッションにかかるようなサンシタなどこのPTにはいないのだ!
魔理沙「頭やられた奴はいないみたいだな」
文「その言い方やめなさいよ、なんか別の意味に聞こえるわ。
まあ、これだけレベルも上がってきたし問題はないと思うけど」
てゐ「角鹿の弱点は知ってるだろ、お前ら両方とも突けるんだし。
とりあえずちゃっちゃと削ってくれや、流石に今の私だと一撃は無理だ」
文「いやちょっと本当に何を企んでんのあんた?」
てゐ「説明はあと。
少なくともキマイラ前に、この階層のFOEは全種類ぶちのめしてやったから、ピクニック状態なら4割まではもってく自信はあるが…さて、どうかな」
魔理沙「(小声)どういうことなのぜ?
てゐの奴がそんな大それた火力技持ってるなら、キマイラの時に使っててもよさそうだが」
文「…多分それだけ燃費の悪い技である可能性もあるわね。
キマイラ戦では使ってるヒマがないくらい、回復に追われてたってことなんでしょう…まあ、この状態なら極めて死ににくくはあるようだし、何をやるつもりなのか…とりあえず、あいつの言うとおりにしてみましょう」
〜少女戦闘中〜
狂乱の角鹿は最早爆発四散寸前まで追い詰められている。
文「…この程度ならいけるでしょう。
てゐ、どうするの!? 盲目でも入れときゃいいの!?」
てゐ「十分だ、自前でどうにかする!」
てゐはチャドー呼吸から巫剣の力を解放する!
これは術医師と呼ばれるドクトルマグスの巫剣効果を相手の状態に関わらず発動するユニーク=ジツだ! ゴウランガ!
そしててゐはかちあげ=カラテを無様にも回避された鹿に対する絶好の間合いへと飛び込んだ!
てゐ「喰らえ…巫剣・霊攻大斬ッ!!」
てゐの剣がジェダイ騎士のライトセイバーめいた強い光を放つと共に鹿の身体をきれいに真っ二つに切り割いて斬殺!
これぞ巫剣カラテ奥義霊攻大斬!
文「な…!?」
魔理沙「ちょっと待て…400ちょっとあった鹿のHPを、ピクニックとはいえ一撃…だと!?」
文「いやいやいや驚く所ちょっと違うわよ。
一体どういう事なの? あんた、巫剣にはほとんど振ってない筈…確かスキルツリー上、霊攻大斬は巫剣マスタリーマスターが習得条件の筈だし」
てゐ「意外によく把握してるじゃねえか。
その割には……グリモアトレードとか私に任せきりだった感じがするがな」
文「トレード…ですって!?
じゃ、じゃあまさか、キマイラに挑み直す時に持って来てた守護の舞曲のグリモアって!」
魔理沙「そう言えばリミットレスも持ってきてやがったな、フランが作れる筈もないレベル7の奴とか…まさか、それもか?」
てゐ「なんでえ、結局どいつもこいつも私のやることなす事鵜呑みにしてたんかい。
まあ、言うまでもなくその通りだな。
グリモアトレードは常に等価交換だけが成立するんじゃねえ、レベルの低いグリモアでも、数積めばある程度いいグリモアと交換してもらえるからな…もっとも、私が手に入れた霊攻大斬(こいつ)と巫剣マスタリはまた特別製なんだが」
魔理沙「…スキルレベルが…マスター!?
お前、どうやってこんなモノを!?」
てゐ「まず、黙ってたのは謝るよ…実はな、青恐竜の麻痺牙、マスター2つほどガメてたんだ。
出たのは偶然だったし、どうせ麻痺牙なんてマスター取ったところで大して使いものにならねえし…いずれいいトレードの機会来るまで隠しておこうと思ったんだが、それが思ったより早いうちに来ちまったんでな」
…
〜数日前、狐尾紅茶館〜
てゐ「さぁーって…そろそろキマイラに挑むに丁度いいころ合いだと思うが…」
てゐは手の中にある二つのグリモア…すなわち、先日偶然手に入れたマスターレベルのグリモア2つをもてあそんでいる…。
因みにてゐは先の言葉の中で一つウソをついているんだ実は麻痺牙は一個でもう一つのマスターグリモアは自前の巫術マスタリだったんだぜ!
てゐ「うるせえよ地の文=サン余計なことしゃべんな(戒め
どうせあの連中に渡したところで巫術マスタリなんか使いこなせねえだろ。一応再生の効果上がるし自分で使うか…ちったぁ、みとりが生き残る確率もあがるだろ」
「その巫術マスタリグリモア…あなたが作ったの?
あなたも術医師?」
てゐ「なんだなんか急に話しかけてきた>術医師
私は由緒正しき因幡の素兎であり一応ここでは術医師をやってる。
やっすいゴミのようなグリモアでこの一級のマスターグリモアを巻き上げようという魂胆はヨミヨミですよ天狗ポリスに通報されたい?(キリッ」
術医師の少女「問題ない…私も同じの、もってる」
そう言うとその三つ編みで眼鏡っていう如何にもな感じにあざとい少女は自慢するみたいに自分のグリモアを見せびらかせたってわけよ。
焦るのはむしろ兎野郎の方だったさ!
てゐ「だからやかましいぞそこのピンクメンポニンジャ、ミーミー召喚されたくねえなら黙ってやがれ。
…こいつぁ…まさかこの巫剣マスタリや霊攻大斬、自前なのか!?」
少女「うん。
私、これなら自分でも作れるし、ちょっと変わったスキルのグリモアがあったら欲しい。その麻痺牙とか。
同じマスタースキルだから、レートは釣り合う。うさぎさん…換えてくれるなら、その巫術と麻痺牙のセットと、私の巫剣と大斬セットで換えてあげてもいい(きらーん!」
てゐ「いや待て…願ってもない話だが…お前さんこんなクソスキルのグリモアで本当にいいのか!?」
少女「問題ない(サムズアップ
…私の名前はクロエ…暫くこの街にいるつもりだから、他に面白そうなマスタースキル持ってきたら…他の換えてあげてもいい。
あとできれば、このお店の美味しそうなメニューをおごってくれればうれしい(じゅるり」
…
魔理沙「そう言えば…そんな奴、観たことあるぜ。
たまに棘魚亭とかでも一人フードファイトしてるピンク髪の奴だ。一瞬、何処のめうめうがエントリーしてきやがったのかと思ったぜ…」
てゐ「お陰で財布の中身もだいぶ喰われたがな、比喩的な意味で。
はっきり言うが、今思えば、今の私たちじゃ束になっても勝てる気がしねえ系統のアトモスフィアを漂わせてやがった。
ギルドカード登録させてもらったんだが…正直、自分のとこのギルカ見せるのを躊躇っちまったよ」
文「っていうかあんた超高レベルグリモアをガメてるとかちょっと調子に乗り過ぎじゃない?(#^ω^)
…まあでも、その子があんたと同じドクトルマグスなら、マグスのスキルしか持ってないでしょうけど」
てゐ「他にも物理攻撃ブーストとかあったし、そのうちマスターがもっと簡単に作れるようになったら頼んでみるのもいいかもな。
まあとりあえず、鹿茸も手に入ったし戻るよ」
…
…
ヤマメ「どういうことなん?」
かごめ「いやなんか…狐野郎が年末蒲田に突っ込んだとき、すれ違い通信で偶然ギルカ拾ってきやがったんよ。
そしたらストーリーメンツで、明らかにもうなんか三竜狩ってますよみたいな感じのレベル79クロエが登録されてあった。
因みにてーさんが自前で巫術マスターと麻痺牙マスター作ったのは事実だ」
諏訪子「実はメディックに新設された杖マスタリーもそうなんだが、巫剣マスタリで剣装備するとTP増えるんだよな。
キマイラ戦の前にトレードで取ったんだし、実は挑み直した時にてゐの奴フロなんとかさんの剣装備してたんだから、巫剣マスタリ持たせとけばよかったんじゃねえの? 少なくとも再生が使えるだけでも十分息切れしねえと思うんだが」
かごめ「…気づいてなかった!!( ゚д゚ )」
諏訪子「お〜ま〜え〜なぁ〜(;^ω^)」
ヤマメ「というか杖マスタリはまだしも、巫剣マスタリの剣装備でTP増えるって付加効果は絶対見落とさせる筆頭候補だよね。
因みに杖装備だと攻撃力が飛躍的にアップするけど」
かごめ「こっそり巫剣技は斬属性だけど、杖装備でも使えるというのがミソなんよね。
杖も便利な付加効果持ってるやつ多いし、実際どっち装備させるか迷う事もあるが…巫剣使いなら剣かねえ」
かごめ「というわけで今回はここまでだな。
次回はいよいよ、本当に奴らの出番だ(キリッ」
諏訪子「うわーここまでナチュラルにメインメンバーで引っ張って来たからジョークで済めばと思ってたのに(しろめ」
ヤマメ「それじゃあ後語りに入って、どうぞ」
…
…
〜ギルドハウス〜
てゐ達が戻ってくると、そこにはフランとみとりの姿がある。
テーブルの上には、単純に美味そうなものから、SAN値を削りそうなよくわけのわからないものまで色々陳列されている…。
「やっと戻ってきたな、放蕩兎詐欺」
「…フラン、お前」
みとりの軽口も意に介した風になく、何処か茫然としたような表情でてゐはフランに呼び掛ける。
彼女は、まだ少し弱々しくもあったが…微笑んで答える。
「ごめんなさい、みんな。
私は、もう大丈夫だから」
「そうか」
てゐも文も…魔理沙もそれ以上は深く詮索せず、みとりに目をやると、彼女も何か思うところあるのか、ふっと一瞬だけ笑って目を逸らせた。
「つーかなんだよこの料理。
快気祝い?というにはなんかよくわけのわからないものが並んでるんだが…」
「あんた達が留守の間に、私とフランで食材を集めるだけ集めて…今現在、揃った分のレシピの料理をレジィナに再現してもらったんだ。
洋の一章だけじゃなく…和と中華のレシピの一部も、手に入ったからね」
「マジか!?
っていうかこの明らかにゲテモノっぽいのは…まさか、毒アゲハ…!?」
「まあイナゴの佃煮だってあるし、同じ昆虫なら佃煮にもできなくはねえわな。どれ」
珍しくも、最初に必ず他の誰かを犠牲にしようとする行動を取るてゐが、いの一番にいかにもゲテモノにしか見えないそれを口に放りこむ。
「…………ほう、こりゃ意外と」
「えっそれもマジで!?
っていうかなんか意外な奴が意外な行動を取りやがったー!!??( ̄□ ̄;)」
「ったくもー…一気にレパートリーが増えてくれたものね本当に。
宣伝記事書く私の身にもなって頂戴っての…あら、これ本当にいけるわね」
こちらも明らかにゲテモノにしか見えない、森マイマイのエスカルゴを一つ口に放りこみながら、愚痴る文もその意外な味に思わず顔をほころばせる。
樹海の過酷な体験を、今日だけは忘れたかのように…少女達の笑い声でハイ・ラガードの夜は更けていった。