〜常緋の森〜
「見ない顔ね、冒険者かしら?」
一面、燃えるような紅葉に支配されたその森の入口。
それに負けないくらいの緋一色の服を身に包んで佇む女性へ、黒を基調とした
「ええ。
故あって、タルシスからこの樹海へ来た者よ」
紅い服の女性…秋静葉は、ゆっくり振り返り応える。
術医師の女性は「へえ」と、何処か感心したように目を見開く。
「タルシス、ね。
ここからずっと西…確か「狐尾」っていうとても有名なギルドが拠点としている街じゃない。
…いや、そう言えば最近、この街にもその新人部隊がやってきたなんて噂も聞いていたけど…あなたがそうかしら?」
黒の女性は表面上、人懐っこそうな笑みと明るいトーンの声を崩さずに話しかけてくる。
しかし、静葉は…この女性の瞳の奥にある激しい鬼気のようなものを…悲壮な決意を込めた光を正確に捉えていた。
「想像に任せるわ。
少なくとも、今ここであなたと事を構えるつもりはないわ…ギルド「エスバット」リーダー、アーテリンデさん」
「あらやだ、私も有名になったものね。
別に隠すつもりもないけど。それに、何か勘違いさせたらごめんなさい。
最近、古くからの知り合いのギルドが、このすぐ下辺りに降りてきた魔物に全滅させられたって話を聞いてたから…あなたが冒険者なら、まさかあなたがそいつを倒した、とか?」
「それは違うわね。
私がここへ来たのも、キマイラが討たれたすぐあとの話よ」
静葉もまた努めて淡々とした口調で受け答えする。
樹海の中で遭遇した冒険者同士の会話、と片付けるのは簡単だが…そう言いきってしまうにはあまりにも、静葉とアーテリンデの間には、ちょっとした刺激でも炸裂しそうな爆弾を目の前に置いたかのような緊張感に支配されている。
「まあいいわ。
見たところ
爺、その物騒なものをしまいなさいな。冒険者同士でつぶし合う理由も、そんなことする利益もないでしょうよ。
邪魔したわね。あなた方なら問題ないとは思うけど、この森の魔物は近づこうとすると火を吐いて威嚇してくる奴もいるわ。散歩のつもりなら、それを避けて進むことをお勧めする。ええと」
「私は静葉。御忠告、痛み入るわ。
お互い、気をつけましょう」
じゃあね、と手を振り、アーテリンデがその場を立ち去ると、先程までのプレッシャーがウソのようにその一帯から消え失せる。
アーテリンデ自身も相当の手練であることは、静葉も一目で見抜いてはいたが…それ以外にも、彼女が立っていた物陰から、凄まじいまでの殺気が向けられていたことも彼女は見抜いていた。
「気を抜いていたら…あの子が言うところの「爺」にハチの巣にされていたのかしら」
「そうかも知れませんね。
ギルド「エスバット」のエースアタッカー…「魔弾のライシュッツ」、噂に違わぬ実力者と見ました。
その辺に
物陰をがさがさと揺らし、黒いローブを身に纏い、ローブの帯がわりに「第三の眼」を撒きつけたさとりが姿を見せる。
中空にかざしたその掌に、周囲に散っていた霊魂のような式神たちが集まってきてその魔力の一部に戻っていく様子を見ながら、さとりは溜息をついた。
「あの老人、正確に私だけに照準を絞っていたみたいです。
いえ…むしろ、私とあなたと一発だけで仕留める照準を探していたようですね。呪言で直に狙ったら、まず私の額に風穴開けられてたかもしれません」
「こういうときこそ、あなたの「眼」を使うべきタイミングじゃないのかしら?
…もっとも、あの子達と戦うのが私達の目的ではないのだけれども」
「そういうことです。
ですが」
さとりと静葉は、エスバットの二人が去っていった先を見据えている。
「フラン達との戦いは避けられそうにない…かしら。
あの子たちもまた…「盤座」に眠る「上帝」の被害者に過ぎないのに」
呟く静葉の瞳は、哀しみに満ちていた。
「狐尾幻想樹海紀行 緋翼の小皇女」
第八夜 緋の森と緋の衣と緋の亜竜
ギンヌンガ調査の報告のため、公国宮を訪れたフラン達は、人払いされたダンフォード大臣の部屋で、新たなミッションを申し渡されていた。
「キマイラの撃破…そして、ギンヌンガ第一階層の調査。
僅かな期間でここまでの成果を上げられたこと、流石、噂に違わぬとこの老体も感激を隠せませぬ。
…故に…今まで秘しており申したが…そなたらにこそ、お頼みしたい事があるのですじゃ」
「あやっ、と申しますと?」
ふむ、と、老大臣は頷き…そして、少女達の眼をはっきりと見据えて、その事実を告白する。
「我らがラガード大公様は、聡明な方故この国の民草にも信望厚く、カレドニアを初めとした周辺諸国からも一目置かれておる名君であらせられますが…実は、数年前から、重い病に冒されておいでなのですじゃ。
この事実は、我ら執政部でも一部のものと…そして、ごく一部の腕利きかつ信用に値するギルドにしか明かしておりませぬ」
「どうしてですか?」
「聞くまでもねえだろ。
名君と呼ばれ周辺諸国にもにらみ利かせらせるような国のトップが、明日をも知れぬ病状だと知ったら、これまで大人しく尻尾振ってた連中もいっせいに掌返してくるなんて想像に難くねえモンな」
憮然と言い放つてゐに、ダンフォードもやむなし、といった風に頷く。
「仰るとおりです。
故に、秘密裏に多くの医術師や術医師にも頼ったのですが…皆、匙を投げてしまった。
その理由の一つが…大公様の病に効くという、特効薬の材料にあるのです」
「なんでえ、そんなものがあるのかよ?
なんでじゃあ、今まで手をこまねいて、大公様とやらの病気を放っておいたんだぜ?」
「それが…その材料とは、数年に一度「常緋の森」中腹部に巣を構える幻獣「サラマンドラ」の羽毛なのです。
火の大トカゲであるサラマンドラは、その身体の一部に羽毛を有しておるのですが…その巣に近づくのも困難、そもそも、サラマンドラ自体が数年に一度しかこの付近に姿を現さぬこと…そして何より…サラマンドラは亜竜であり、生半可な実力の冒険者では歯が経たぬほどの強さを持っており申す。
数年前に現れた時には…当時実力のあったギルドの多くが帰らぬものとなった…そして羽毛も手に入らぬまま、サラマンドラはこの地を去っていったのです」
「いやちょっと待てよじーさん、巣からいなくなったら、そこに羽毛って残ってねえのか?」
「その可能性にすがってみましたが…サラマンドラの羽根は、生まれたばかりの仔がすべて食べてしまう事が解ったのです。
それ故…大公様はもう何年も病に苦しめられ、今は大公様の代わりに公国を背負って立つ公女様も、心を痛めておられますのじゃ。
公女様は物心ついて間もなく母君を亡くされ、父である大公様のために、樹海探索を推し進めておられるのです。
この街に古くから共に寄り添いながら、多くの解かれぬままの謎を有する世界樹…そこに、大公様の病を治す手掛かりがあればと…樹海の恵みを元に多くの病人を救ってきた初代女王の資料を唯一の希望としてすがり…この老体に出来ることは、せめても、剣を持ち自ら樹海へ乗り込まんとする公女様をおとどめし、あなた方冒険者に託すほかないのです…!」
「身勝手な話だな。
その為に、冒険者がいくら犠牲になってもいいっていう風に聞こえるが」
てゐは眉をひそめ、刺すような視線を老大臣へ向ける。
言葉には出さなかったが…みとりや文も、同じようにして剣呑な視線をダンフォードへ向けていた。
「そう受け取るも結構。
我らに出来ることは、ただ吉報を待ち、報償をもって報いることのみ。
国を預かる者として…その覚悟ならとうに出来ておりまする…!」
しかし…老大臣はその視線にも臆さず、毅然とした態度で返す。
その瞳には一点の躊躇もなく、その覚悟を見てとれた。
最初に表情を緩めたのは…その悲壮なまでの覚悟と信念を見てとった文だった。
「…私個人としては、気に入ったわ。
どのみち、この件が決着がつかない限り、私達の冒険はここまでのようだろうし」
「正気か?
どこの誰とも解らない奴のために、命を張るっていうのか?」
「別にそのサラマンドラと戦う必要はないんだろう、じいさん?」
然り、と老大臣は頷き、てゐも口の端を僅かに釣り上げる。
「文献に残っているのなら、サラマンドラの特徴だって何処かに記されてる筈だ。
行動生態のある程度の部分だろうが…四方や、それすらも見せないという事はあるまいね?」
…
…
〜帝国軍最新鋭気球艇「樹皇」 ブリーフィングルーム〜
かごめ「どうもいつものかごめさんです」
ヤマメ「これから樹海に乗り込持って奴の態度じゃないくらいのくつろぎっぷりだなオイ。
大丈夫か、こんな体たらくで」
かごめ「というか黒の字、あたしゃ思うんだよ。
今回本気で位攻めしていっても許されるんじゃねえかってさ。っていうかスタンダートで良くね?(´ω`)」
ヤマメ「まだ第二層だってのに何盛大に心折られてんだよあんたわ。
…まあでも、解らんでもない。
真相が明かされれば明かされるほど、あからさまにファフニール基準の調整だもんねえ色々(ペペロンチーノもぐもぐ」
諏訪子「そんなことより本題だ本題。
ここから第二階層なんだけど、八階に辿りつくまでこれと言って変わったことなく進む…進まねえか」
ヤマメ「おもにFOEだね。
6階には巡回型FOEの螺旋の水泡樹、7階には固定型FOEのベビーサラマンダが居るんだけど」
諏訪子「水泡樹はまあ、典型的な移動パターンのFOEやね。
例によってというか、まあこいつの巡回上に宝箱が配置されてたりして」
かごめ「中身は先の先Lv3。
解りやすく言うと、SQ4ソードマンの先駆けの功名とまったく同じスキルだね。
こいつはブシドーで取得できる」
諏訪子「で、例によってこいつは狩ったのか、着て早々に?」
かごめ「んなわきゃねえだろ(きっぱり
こいつHP5000近くあって、一応炎弱点なんだが物理含む攻撃かますと回り出して、その次の瞬間スピンドライブとか言う高威力の全体壊属性攻撃をぶっ放してくる。
近接攻撃なんだが、適正レベルの後列ですらエキスパだと150前後のダメージが入る。前列なんか言わずもがなだな」
ヤマメ「このPT純属性攻撃持ちいねえんだしどうすんのよ。
こいつを狩って来なきゃいけないなんてクエストだって発注されるじゃねえか、どうせあのピンクトリオにやらせんだろうが」
かごめ「そんでも23で狩れましたけどねえ。
水泡樹は回すもの(キリッ」
諏訪子「そもそもスピンドライブ使わせなきゃいいって言っても、こいつ通常攻撃も結構痛いダメージ貰うからねえ。
初回撃破でフランと魔理沙が吹っ飛んでた気がするが気にしたら負けなんかね」
ヤマメ「何気に生き残る兎詐欺(キリッ」
かごめ「何気にキマイラの時も最後まで残ってたのてーさんという謎のサバイバビリティ」
諏訪子「しぶといなさすが兎詐欺しぶとい。
そもそもキマイラにトドメ刺したのもあいつだったしな。そして最後まで生き残らなかったのは魔理沙、と」
ヤマメ「金髪の子かわいそうですねわかります(しろめ
まあ、てゐの場合行動順もあるしね。マグスは基本的に足遅い」
諏訪子「あいつ前衛のど真ん中にいて、範囲攻撃喰らってもHPの関係で直撃食らうのは右にいるみとりか左にいるフランだから、あいつだけさしたるダメージ喰らってないことも多いしな。
まあそれはいいや、通常モンスターはジャイアントモアがキチってるな。SQ4だと第二迷宮FOEだったとかそんなことは知らん(キリッ」
かごめ「あいつの近接全体壊攻撃は本当にどうしろと。
一応、グリモア化はできるんだがな、ヘビィスタンプ」
ヤマメ「でも第二層とギンヌンガで壊属性ってどうなん?」
かごめ「特別通りがいいってわけでは…ないな(遠い目
因みにレベル20代前半だとピクニックでも結構スピンドライブ痛いダメージが出るよ。余程こっちのレベルと装備が良くない限り、とっとと弱点突いて落としてった方が無難だろう」
かごめ「ひとつ上がって7階は今度、道中にベビーサラマンダが陣取っているフロアになる。
こいつ自身がフィールドダメージトラップの起点になってて、索敵範囲に入ると炎を吐いてくる。
炎に当たるとダメージを受けた挙句索敵範囲外まで吹っ飛ばされて、しかも炎は2歩進むくらいまで残るという嫌がらせつきだ」
諏訪子「一応炎の上も進めるんだけど、連続してぶち撒いてくるからあまりお勧めはせんな。
この炎のダメージで死にゃしないが」
ヤマメ「そう言えばこの炎ダメージってモード無関係に固定なんかね?
ダメージ床のダメージ、エキスパだと10ダメージ喰らうのにピクニックだと2ダメージだったような」
かごめ「炎の直撃とかもピクニックだけはがっつり下がるよ、エキスパとスタンは一緒だけど。
因みにこいつなんだが、ニチリンソウの条件ドロップで炎の守りが作れるから、それ装備して後はみとりちゃんのフロントガードフル回転だ。
HP6000近いが、そこはまたてーさん大活躍と」
諏訪子「えっそこはサポシ魔法使いとフランじゃねえの」
かごめ「キマイラの時も触れたじゃん、フランTPすくねえ上にインボルブ速攻でマスターしたから4発も打てばガス欠するんだよあいつ」
ヤマメ「ハイランダーのTP不足はもう前作からの宿痾だからなあ。
実際あれだろ、てゐのやってることって初手フォースブーストからの霊攻衰斬霊防衰斬おまけの霊攻大斬だろ」
かごめ「実際それが一番安定するから困る。レベル1でも衰斬の効果は7ターンもかかるからねえ。
マグスのこの辺りは純粋に改善点であるんだが」
諏訪子「だな。昔は状態異常ごとにトリガーがあって、なおかつこういうわかりやすい付加効果もなかったはずだし。
マグスの巫剣スキルはわかりやすく、かつ単純に上方修正されてるのは間違いあるまい。
ただ昔の巫剣は斬属性じゃないというか、なんつったらいいのかな、全部アクセルドライブみたいなそんな感じだったし(さとり注:現在も斬属性耐性どころか物理全般通らない相手にも普通に通るそうなので、斬+無の複合なのは一緒のようです)」
かごめ「それもひっどいな。
まあ、ベビーなんだが初手に霊防突っ込んで、フラン魔理沙共にリミットレスからの三色インボルブでおおよそ800くらい持ってけるかなって感じか」
諏訪子「そういうときこそ文の野郎にオイル残影で追撃すればいいんじゃねえのか?
一応200くらいは入るだろ」
かごめ「………………すいません忘れてました(´・ω・`)」
諏訪子「うんまあ、知ってた。
お前本気でFOE狩りするんだったらそこまで用意してからやれよ…耐性とかそういうのは入念にやる癖に…」
ヤマメ「もう今更のパターンだねえ。
一応避け方としては、吐く前に予告出るからそのまま横切るってのがオーソドックスなんだけど…階段間際に3匹の射程範囲が近い位置にいて、なおかつ2匹が向きかえられる辺りかね。
2匹目が斜めから近づけるから、まあ一匹狩るんだったらそいつだろうな」
かごめ「というか初回撃破はマップ左中ほどにいる一匹だな。
あいつ3方向に向きかえられるけど、バックアタックがしかけられる。範囲炎攻撃と頭縛り攻撃を同時に貰うと盾役も吹っ飛ばされるから、レベル4ファイアガードと合わせ技で防ぐと手っ取り早いんだな」
諏訪子「このすぐ上の階層とか、階層ボスからも炎技ガンガン飛んでくるからな。
まず、パラディンいるならファイアガードに振るのは基本だなこの階層」
かごめ「吸収とか、中途半端に無効まで振ると逆にTP消費がでかくなりすぎて逆に使いづらくなるんだけどな。
何しろFOEもボスもHPが意味解んないことになってるから長期戦必至でしょ。オススメは4止めか、逆に8か9まで振るかだな」
…
…
魔理沙「なんだぜこのフロア…すげえ熱いぞ」
てゐ「気をつけな、ここはもうサラマンドラの巣の中だ。
この炎のオバケトカゲは、律儀なことに必ず同じ場所で営巣するそうだ。
サラマンドラの羽根、というが…実際は、産卵期に入ったサラマンドラの脱皮した抜け殻なんだそうだな。
そいつは極めて発火性が高いが、空気中でチリチリと光を放つ様がまるで羽毛のように見える…故に、サラマンドラの羽根」
文「永遠亭の蓬莱ニートが、かつて都の馬鹿貴族に探すよう命じた「火鼠の衣」と同類のものだそうね。
そんなもので薬を作れるなんて話、聞いたことないけど」
てゐ「私も知らん。
サラマンドラは英語でサンショウウオのことも言う。
例えば…外の世界では希少種となったオオサンショウウオも、その分泌する粘液は強壮薬になるとも言うがな…さて、そろそろやっこさんと対面だぞ」
急激に上昇する気温と共に、果たしてその広間の中心に巨大なトカゲの影が見える。
それは爬虫類特有の無機質な眼に、ただ、巣に侵入した者に対する敵意のみをむき出しにしてこちらを睥睨しているように見える…。
みとり「道中見た火トカゲと似ているが…あいつら、まさかあのデカブツの子供とか言うんじゃないだろうな…?」
文「かもしれないわね。
そうすれば…同じようにして火を吐いてくるのかしら」
次の瞬間、魔物は大きく息を吸い込む…!
フラン「わわっ…!」
てゐ「動くな!
ここまでは届かねえ!」
思わず飛び出しそうになるフランを制した次の瞬間、目の前に高熱が紅蓮の壁となって押し寄せる。
一瞬、何が起きたのか解らず…魔物が、こちらへ向けて灼熱の炎を吐きかけてきたこと理解した時には、眼前にはその残り火が今だ勢いよく燃え盛っている。
茫然とするフランとみとり、そして、魔理沙はその勢いのすさまじさにその場へへたり込んで、滝のような冷や汗を流す…。
魔理沙「ふ…ふざけんなよ…!
いったい…こんな奴にどう近づけっていうんだ…!?」
フラン「炎…そうだ、みとりさんの結界で近づくことは?」
みとり「無理だ。
本来の力ならまだしも…この世界では盾を媒介に一瞬展開するのがやっとだ。あれほどの炎、悪いが長くは受け止めきれない」
文「そうね。
巣というからには、脱皮した皮もあいつのすぐ近くにあるはず…けどこれじゃ、とてもじゃないけど近づけないわ。
…てゐ、どうするつもり?」
てゐ「4人で囮になり、やつを引きつけよう。
その隙に、足に自信のある奴であいつの懐近く、巣の近くへ飛び込むんだ。
あいつはこうして、侵入者が近付くと巣の近くの見晴らしのいい場所に陣取り、近づく者にああして炎を吐きかけるそうだ。
だが…4、5発撃つと、息切れして動きを止めることがある。僅かな時間だろうが、その隙を見計らって巣に侵入するしかない…!」
みとり「誰が行くんだよ、それ」
てゐ「私が行く」
あっさり言い放つてゐは周囲の驚いた顔も気にすることなく飄々とした態度で、爪先で地面を叩く。
魔理沙「お、おいちょっと…こういうスピード勝負の時って普通は」
文「まあ、順当にいけば私の役周りの気がするわよねえ。
私達のまとめ役を買って出たことといい…なんか、樹海に来てから向こう、あんたのやることなす事が一番意外性にあふれかえってるわね。
…なんかのフラグにでもなってんじゃないかしら」
てゐ「不吉なことになりそうだから余計なことは言わないことにしておくさ。
あんた達はあのデカブツの気をひたすら引いてくれ、行くよ」
…
…
かごめ「初回、8階に到達すると毎度おなじみの衛士に止められて、公国宮でミッションを受けてくることになる。
そうして初めてサラマンドラの巣に侵入できるんだけど」
ヤマメ「まーなんというか、目的地の配置が本当にいやらしいのなんの。
というかこれ、どうあがいても炎の直撃しないといけなくね?」
諏訪子「そもそもこういうフィールド罠で死ぬことは絶対ないから、直撃食らいながら行った方が手っ取り早いことは確かだよ。
因みにサラマンドラの炎は全員に50ダメージ喰らうどころか、範囲もサラマンドラの視線の先7×幅3マスという鬼畜な範囲。後々、サラマンドラと戦う際にはこれを如何に掻い潜りながら近づくかが問題になるな。
因みにこいつ、4回炎を吐くとぐったりして動かなくなる。その隙に、サラマンドラの羽根のある区画に侵入して後はそこから出たり入ったりしてわざと炎を吐かせて、そしてエンカウントするといいな。別に後ろ向くタイミングで飛び出してってバックとってもいいけど」
かごめ「戦う云々は今はいいとして、まあ、普通に炎撃たなくなるまで炎に撃たれた方が手っ取り早くはあるわな。実際面倒くさくなってそうしたしな」
…
…
暫く火炎の息を吐き続けていたサラマンドラが、突如糸が切れた人形のようにその場にうがっくりうなだれたその刹那、てゐは長年培ってきたという「逃げ脚」を活かしてその懐へと飛び込んだ。
そして、再びサラマンダーが首をもたげ、炎を吐こうとしたその瞬間、彼女は間一髪脇の区画へと転がり込む。
その中心には、まだ真新しいと思われる…虹色の光沢を輝かせる羽毛のようなものが横たわっている。
それが「羽毛」と呼ばれる、サラマンダーの抜け殻であった。
てゐはその一部を、特殊な呪法を掛けられた箱の中に納めると、溜息を吐く。
「行きはよいよい、帰りは怖い…ってか。
さて、ここからどう帰ったものか、そこまで考えてなかったな。どうしよっかな」
彼女は注意深く周囲を探る。
区画から顔を広間に顔を出すと、明らかに不機嫌そうなサラマンダーが大きく息を吸い込む姿が見える。
「やべっ」
てゐが飛びのくと同時に、その目の前に灼熱の波が行きすぎていく。
「本当にどうしたもんかな。
行き方は考えてたけど、帰り方忘れてたなんてマヌケの極致じゃないか…荷物もあいつらに預けてたからなあ。
…フラグってのは口に出さなくても、思っただけでアウトなんかな」
「らしくないわね。
出口なら、こっちにあるわよ」
てゐは思ってみ見ない声を聞き、ばっと振り返るが…そこには既に誰もいなかった。
だが、そこに…小柄な彼女一人であれば、なんとか通り抜けられそうな木々の隙間の獣道が見いだせる。
てゐは微かに笑う。
「秋神様のお導きって奴か。
私ぁ何処まで行っても、神様の世話になりっぱなしだな…有難く、頂戴しておこうか」
彼女が立ち去ったその後に、一片の紅葉が舞い落ちた。
…
〜公国宮〜
「まこと…見事というほかない…!
その機智、胆力…是非とも我が国の臣として迎え、衛士を鍛えて欲しいものですじゃ」
サラマンドラの羽根を受け取り、老大臣は感動に撃ち震えたという様子でそれを天に掲げる。
「約定通り、すぐに報償を用意させましょう。
まずはゆるりと休まれるとよい…じゃがの、そなたらに告げるのは心苦しいことじゃが…」
「なんとなくわかってるつもりだよ。
多分、材料それだけじゃ足りねえよな」
しれっとした態度で告げるてゐに、老大臣はもとより周囲の少女達も顔色を変える。
「何故、そうだと」
「そうよ、あんたなんでそんなことが解るのよ?」
「現物見て思い出したことがある…かつて師匠…八意永琳が作ろうとしていた薬の材料に似てるんだ、それ。
本人に会ったわけじゃないから何とも言えねえが、この国の大公が冒されたのは恐らく、私達の知る限りの医術では根治不可能な難病…大昔、師匠はそれを治療する為に命懸けでその材料を取りに行ったことがあった。
それまでのつなぎとして作った薬で症状をある程度遅らせることはできるだろうが、もう何年単位でってことになるとさほど長くはあるまい」
てゐは真剣な表情で、大臣の真意を質そうとしてかその目をじっと見つめる。
ダンフォードは観念したかのように、溜息を吐いて、その事実を語り始める。
「…その慧眼、真、恐れ入ると申し上げるほかありませぬ。
仰る通り、もう何年も病と闘っておられた大公様の容体からも、恐らく半年持たぬだろうとどの医師も言うのです。
それ故…もう一つの材料である、六花氷樹海の「氷の花」を一刻も早く手に入れなければなりませぬ」
「六花氷樹海?」
「左様、常緋の森よりつづく上層部…サラマンドラをはじめとした炎の魔物が多く棲む常緋の森と異なり、年中酷寒に支配された永久凍土の森。
その中層部には、氷の如く薄く透き通った花びらを開く氷の花が咲くとされまする。
この花は四か所、いずれも凶悪な魚人の支配するその地域に咲き捜索も困難なのですが…」
老大臣は少女達を見廻し、そして言葉を続ける。
「常緋の森から氷樹海に向かう最後の境目には、炎の魔神と呼ばれる魔物がすみついておるのです。
この魔物は不死身の怪物であり、エスバットや在りし日のベオウルフなど、ごくわずかのギルドのみが撃破してその先を進んでおりますが…彼らの手をもってしても、氷樹海の探索は困難を極めており、今だ成果も上がっておりませぬ。
そして…魔神は最近また蘇り、氷樹海への道は閉ざされておりますのじゃ」
「つまり…そいつをズタズタにして、氷樹海の探索を進めてくれというわけだな」
「左様。
他多くのギルドが成せなかった氷花の入手…何卒、お願いしたいのじゃ…!」
深々と頭を下げる老大臣に、てゐは背後の少女達を振り返る。
「やりましょう、てゐさん。
折角ここまで来たんです、それに」
「どっちみちこの先進むには、その魔神って奴をぶっ倒さなきゃならねえんだろ?
だったら、行くしかねえじゃん」
フランと魔理沙の言葉に、あとの二人も頷く。
てゐは老大臣に振り返って応える。
「聞いての通りだ。
報酬は、はずんでくれるんだろうね?」
…
…
かごめ「まあこの間にはまだ色々あるんですけどね(´・ω・`)」
ヤマメ「ちょい先のネタばらしになるけど、実際炎の魔神撃破のミッションを受けて、それ報告するとすぐに「氷の花取ってこい」ってミッションも発令されるんだよね。
だけどまあ、ログ書く為とはいえこのあともだいぶレベリングに費やして色々やってたよね。例えば引退とか」
諏訪子「( ̄□ ̄;)また引退させたのかよ!!
というか普通引退とかゲーム一周終わってからやるもんだろが何考えてんだ!!><」
かごめ「そりゃあやることなければ普通にグリモアマラソンしたりFOE狩りしたりだしなあ。
第一、休養するくらいだったらどうせFOEは狩りまくるんだし、引退してSPボーナスとかもらった方がお得な気がしねえかなって」
ヤマメ「旧作ならいざ知らず、新だとちゃんとFOEから経験値もらえるしね。
…っていうか、旧SQ2だとベスト盤含めてFOEから経験値貰えないって聞いたんだけど、それマジなの?」
諏訪子「真面目も真面目、事実だ。
つまりこのずっと先に、多くのボウケンシャーをナマス切りにして来たジェダイ(第五階層FOE・緋緋色の剣兵)もベイダー様(同じく第五層FOE・漆黒の魔騎士)も、苦労の割に素材落としやがらないこともあるからもうコンチクショウというかなんというか」
ヤマメ「倒してもメリットと言えば行き来が楽になるとかその程度?」
諏訪子「そう読み換えてもいいな。
FOEが膨大な経験値をくれるだけでも本当にこれ以上ないってくらいの改善点だよ、本当に」
かごめ「しょっぱい話はその程度にしとけ。
次はまあ…インターミッション的な話を先にしようかね。ついでに、めうめう達の出番は現時点での予定は第三層までだ」
ヤマメ「えっそうなん」
かごめ「まあね。
多分、美結だけ残る事になるというか…第三層より先は、攻略をあの連中に任せることになると思う。
その代わり、遺跡探索はフランの役目という感じで」
諏訪子「それじゃあこのサブタイトルあんまり意味を成さなくなるんじゃねえのか、これフランのことだろ普通に考えると」
かごめ「これじゃあタイトルに反してフラン何もしてないじゃん!!みたいなツッコミ入ること必至なんだが…実は、このタイトルに相当するやつはもう一人居る事に狐野郎の中にはなっているらしい。
多分大多数の言う「まさか」な奴だよ」
ヤマメ「もう本当に嫌な予感しかしませんな。
…というか、私の出番も実は大分近づいてるんだよね。というかあんた私を殺す気かい?(しろめ」
かごめ「何を言うヤマメ者。
お前さんも「通りすがりの1ボス」だの「ああ、陰陽鉄だとブロントさんに軽くスルーされてましたねwww」とかそんな語りだけで終わりたくはあるまい?」
ヤマメ「確かに嫌だけどだからってそれに救いがあるなんて私にも思えねえっての!!><
というか、またお前某林檎先生のネタに中途半端に乗っかって無駄なHATE稼ぎ上等みたいなこと仕出かすつもりじゃないだろうな!?」
かごめ「というわけで次回は8、9階のFOE解説を兼ねたミッション回になります(キリッ」
ヤマメ「話聞けえええええええええええええええ!!!><」
諏訪子「じゃ、今回はこれで。
そろそろ降りるぞ、続きはまあ、道中で殴り合いでもしてろお前ら(しれっ」