その広間の中心に待ちかまえていた炎の魔人は、そのテリトリーへ踏み込んできたフラン達を即座に敵と認識し、その名に相応しい火勢を武器に猛然と攻撃を仕掛けてきた。

並の冒険者であれば…あるいは、この樹海に来たばかりの頃の彼女らであれば、瞬く間に消し炭にされていたか無残な圧死体にされただろう強烈な一撃も、みとりは先刻のやり取りで溜まった鬱憤を晴らすかのように捌いては弾き返し、そこへ生じた隙にフランが斬り込んでいく。
てゐの放つ巫剣がその守りも火力も殺ぎ落とし、魔理沙の放った属性弾の魔力をも巻き込んだ必殺のスピアインボルブが魔人の急所を貫くと、流れ出た可燃性の血液が、力なく崩れ落ちる魔人の肉体を炎上させていく。


「…勝負あり、だな」
「そうね。
あのスライムみたいなやつがいきなり自爆した時には正直どうしようかと思ったけど

文が、肩で荒く息をするみとりの方を見やって、続ける。

「あの子のお陰で、バーベキューにならずにすんだわね。
単純に力の制限が解かれてる以上に、あの子自身がメイン盾として適切な対応を取れるようになってきてるってことなのかしらね」
「へっ、さっきのエスバット相手にじゃねえけど、頭に血が上っちまうと見境なくして飛びかかるようなメイン盾なんて、まるで緋想天にいるブロなんとかさんみてえじゃねえか。
まあでも…私達のメイン盾としちゃそのぐらいがちょうどいいのかもしれねえな」

魔理沙の軽口に「そうね」と肩を竦めて苦笑する文。

「お疲れさま、みとりさん。
さっきは、助かりました」

その様子をわざと気にしないようにしていたみとりが、憮然とした態度で剣を地面に突き刺すところへ、フランがねぎらいの言葉をかける。
みとりは少しだけ気恥しいのか、わざと憮然とした態度を崩さずそっぽを向いて答える。

「それが私の役割らしいからな…礼を言われるほどじゃない」
「素直じゃねえ奴だな相変わらず。
まあ、今のお前も限界は来てるだろ。この次の階層は基本的、解ってないことの方が多いし、磁軸を見つけたらすぐに街へ戻ろうや」

てゐは飄々とした態度のまま、みとりの背中を叩いて促すと、ふらふらと次の階層へ続く道の先へ歩いていく。

「あいつ…今日ずっとあんな感じだな」
「…そう、ですね。
元々あんな感じだったような気もするんだけど、それでも、今日のてゐさんちょっとおかしいかも。
朝のあの様子とも関係があるんでしょうか?」

その背中を追い掛けていく文と魔理沙から一歩遅れて、みとりとフランはその背に続きながら会話を続ける。

戦闘中も、てゐは事前に立てていただろう入念な戦略をもとに的確な指示を飛ばし、そして自らも要所要所で巫剣を揮い、危なげない立ち回りで魔人討伐に貢献している。
生来荒事向きではないと自称する彼女が、まして能力の使えないこの環境においてはギリギリの駆け引きを常に強いられていることは確かなことだろう。
だが…そうでありながら、現在のてゐの姿は何処か「心此処に在らず」な雰囲気を漂わせている。

「あいつの言葉を何処まで鵜呑みにしていいのかは、今の私にもわからない。
誰かが言っていたな。
幻想郷で八雲紫に次いで、因幡てゐの言葉はど鵜呑みにできないものはない…口を開けば出鱈目しか言わないような嘘吐き兎だと
「私達、考えてみたらあのひとのこと、まだ解ってる事が余りにも少ないです。
けど…今なら少しだけ、私たちが知らないくらい、辛いことや悲しい事をいっぱい抱えて生きてきたような、そんな気がします

その、見た目以上に小さく、寂しそうに見える背を見やり、哀しそうな表情のフランに「そうだな」と、みとりは相槌を打つ。

「…私が言えた立場じゃないかもだけど…幻想郷に集まってきた奴は、そんなワケありの奴ばっかりなのかもしれないな。
そして…いまひとつひとつ、誰もがその過去と向き合っていかなきゃいけない時が来てるのかもしれない。
…あの「目覚めの異変」で…かごめさんがそうだったように」

そうつぶやくみとりの瞳は、何処か強く哀しい光が宿っているように、フランには思えていた。
それは…キマイラとの戦いののち見たのと、全く同じようにも。





〜フロースの宿のとある一室〜


てゐは、その事実を淡々と美結へ話して聞かせていた。
傍らで必至に涙を堪えながら座っているつぐみに対して…当の美結は、一度眼を閉じると…寂しそうに笑う。

「そう、ですか。
やっぱり、私はもう…そんな長くは生きられなかったんですね
「心当たり、あるみたいだね」

てゐの問いかけに、美結は頷く。

「前々から、兆候はあった気がします。
中学校に上がってじきの頃から…突然、意識を失って倒れることが多くなったって…担任の先生から聞いてました。
お父さんもお母さんも、心配はないよって…一年生から生徒会やってて、一生懸命頑張り過ぎだからだって言ってたけど…でも、自分の身体だから、解るんです。
時々、胸が塞がるみたいに苦しくなって、脈の間隔がおかしくなってるって。
病院の先生だって、本当のことは言ってくれなかったけど…とっても、申し訳なさそうな顔してるの、知ってました」

てゐはその独白と、彼女の顔色から…その正確な死期までをなから割り出す事が出来てしまっていた。
そして、美結自身もそれを悟っていることも理解した。
てゐは躊躇せず、その所見を彼女に告げる。

「この樹海に来てから数日、鳴りを潜めてはいるようだが…かごめの話から総合すれば、不整脈発作の回数と間隔から見ても…恐らく、あんたはもう一月もしないうち…早ければ一週間経たず、今の生活が維持できないレベルになるだろう。
そして……もうそれを回避する手段はほぼ、絶無だ
「はい」

その残酷すぎる宣告を受けても、美結は寂しそうな表情のまま、粛々とそれを受け入れたように頷く。
感情を抑えきれなくなったつぐみの瞳から、涙が零れ落ちそうになるかどうかの刹那…先に声を荒げたのは、意外な者だった。

「何故だ!!
どうしてお前、そうやってあっさりとこんな理不尽を受け入れられる!?
いや! それ以前に私がどんな奴かだなんて話、藍辺りから聞いてるだろう!?」
「勿論です。
でも…だからこそこうして直にお話できて、よかったと思います。
……他人の評価はどうあれ……本当のあなたが、不器用だけで心の優しい妖怪(ひと)だってことが、解ったんですから。
だって…自分が嘘吐きだって言われてるのを承知で、包み隠さず私の本当のこと、話してくれたのは…あなたの言葉がデタラメだって私が思えば、私が何も辛いことを知らずに、苦しまずに死ねるからって思ったからでしょう…?」

てゐは驚きと困惑が綯い交ぜになったような表情のまま、二の句を告げず固まってしまっていた。


目の前の少女は、その生まれが特異なだけで、ちょっと変わった力を持っただけの普通の女の子だと思っていた。
だが、だからこそ…そんな美結に自分の心がはっきりと見抜かれた事に、彼女はこれ以上なく混乱していたと言っていい。


「だから…その真実が全部はっきりした今なら、私はすべてを受け入れて、なんの後悔もなくなりました。
遅かれ早かれ、人は皆いずれ死ぬ…私はただ、それが他の人よりもずっと早すぎるだけだから…ただ、それだけの事だから
「おまえ…お前本当にそんなんでいいのかよ…ッ!」

てゐ自身も気づいていなかったのかもしれない。
自分の声が震えていた事を。

「そんなのってないだろ…!
私みたいなどうしようもねえロクデナシが、何千年もおめおめと生き続けてるのにっ…!
なんで…なんでそんな簡単に、たった十数年ぽっちしか生きられねえってわかって…なんでッ…!!」

自分の頬を、何時の間にか温かい雫が伝わり落ちていることを。


♪BGM 「風を待った日」/折戸伸治(Kanonより)♪


てゐはなんとしても、この目の前の少女を助けてやりたいと思い始めていた。
自分に本当に、幸運を呼ぶ力があるというなら…その力を総て失ってでも、今その目の前の少女に使ってやりたいと。

だが…その方法がそれしかないことは、彼女も知っている。
てゐは乱暴に涙を拭い、美結にもつぐみにも、背を向けた恰好で…涙声のまま告げる。


「美結。
このままいけば、間もなく訪れる絶対の死…「人間として死ぬ」という当たり前のことを放棄する方法がたったひとつだけある。
それは…あんたの血の中に眠るかごめの因子を目覚めさせ……吸血鬼真祖として覚醒することだ


背を向けた彼女に、美結の表情は解らない。
沈黙を守る美結がどのような想いでそれを聞いているのか…てゐには確かめる勇気はなかった。

だが…それでも、聞いて欲しいと願いながら…この方法に縋って欲しいと願いながら…彼女は告げる。


「あいつの因子は強情だ。
恐らく、死と隣り合わせの戦闘でしか…あんたの生きる意思と魔力が最大限に高まって、それでもなお、それが起こる可能性はコンマ1パーセントにも満たないはずだっ…。
もし…その方法に賭けるつもりが僅かでもあるなら…もしわずかでも「生きたい」と思ったなら…かごめの課す試練を受けるんだ。
私に言えるのは…それだけだッ…!」



「狐尾幻想樹海紀行 緋翼の小皇女」
第十一夜 八雲藍の樹海特別教室最終日




諏訪子「( ̄□ ̄;)えっこのなんかシリアル()な流れでインターミッション回すんの!?
   しかもなんだこのタイトルコールの位置!!」
かごめ「いやだってほら…なんかサブナンバリングがまだ四時間目しかないじゃん(震え声
静葉「確かに四時間目とか中途半端なところで止まってるのもアレよね」
諏訪子「そんな体裁なんかどうでもいいだろが!!><
   第一ここまできといて何の話するんだよ!? 例のクエストはどうせお前がやるんだろ!?」
かごめ「そりゃまあなあ…多分この近辺で死ぬほど重っ苦しい話来るし、あたし達がバカやらなきゃみたいなのありますし。
   つかこれ、前回の静姉の予告通りよ。美結回というかヤマメ回というか
諏訪子「なんなんだよわけ解んねえよなんだよその組み合わせわー!!!><」
静葉「まあ、ヤマメな理由は解るんじゃないかと思うんだけどね…今回はギンヌンガB2Fの話だし」
かごめ「インターミッション回と思ったら実は本編だったという事実(キリッ」
諏訪子「もうわけがわかんねえええええええええええええ!!!><
静葉「そんな「日常」のみおばりに怒り狂わなくたっていいじゃないの、落ちつきなさいな。
  大体にしてしょっぱい役回りだったらタルシスでもあなた散々やったじゃない」
諏訪子「はあはあ…ああもう確かに今更だからしょうがないのは解ってる解ってるけどなあ」
かごめ「ついでに言うが装備回りのデータは例によって残ってねえのでそこだけはホント済まない(´・ω・`)」
静葉「まただよ(呆
  というかそもそもそのボス戦の写真すら残ってないわよね。ケジメ案件どころの騒ぎじゃないわよ」
諏訪子「(怒りで顔を真っ赤にしながら酸欠の金魚めいて口をパクパクさせている)」
かごめ「まー簡単に説明するとだなー、レベルは確か全員33だ。
   装備はほぼ魔人戦と変わってない…と言い切りたいところだが、とりあえず氷樹海のミッション攻略する前にやったから、一部12Fで揃う装備にはなってる。ぶっちゃけ11Fの狼狩ってから挑んだしな」
静葉「えっ着いて早々狼狩ったの!?
  あいつら見た目はスノードリフトの取り巻きだけど、強さそのものはスノードリフトの数倍強いわよ!?」
かごめ「そのスノードリフトもDLCクエストにいるんだがなー…まあいいやそれは。
   狼こと潜伏の白狼のHPは8715、ほぼ魔人と変わらない。
   こいつはこちらが一歩進むごとにマップの表示が点いたり消えたりを繰り返すんだ。視界に入る位置にまでくれば解るが、立つとFOEアイコンが点灯、伏せると消える。
   一度伏せて立ちあがって向きを変え、また伏せて、立ちあがって向きを変え…で時計回りに視界を変えて、あいつの正面側3×2マス内に入ると行動パターンが追尾に変わってこちらを追い掛けてくる。
   細い交差点やその近辺に陣取ってるから、視野の外から動きを見てバックアタックを仕掛けることは一応可能だよ。っていうか普通に初回はバックアタック仕掛けたが」
静葉「ところがこいつバックアタック仕掛けても決して油断できないからねえ…というか、FOEってみんなそんな感じじゃない。
  行動パターンは呆れるほど単純、奇数ターンに通常攻撃、偶数ターンに遠隔貫通氷攻撃のフロストファングを使うわ。フロストファングはSTR依存の氷攻撃だけど、第三階層では氷あまり通りよくないからあっても嬉しくないわね」
かごめ「単純に通常と氷攻撃の繰り返しだけかと思いきや、ターン終了時に時々アタックハウルとかいう自己強化してくるな。通常攻撃やフロストファングを使ってても別個に発動するし、打ち消そうにも適正レベルのレンジャーでもあいつの先手取れるか取れないかだ。
   フロストファングの前ターンに使われてると、下手したら盾役ごと後列も持ってかれるから本当にやめてほしいんだが」
静葉「まあそこはね、33まであがってればフリーズガードもそれなりには振れてるからね。
  炎弱点だからバーストの前提に振ってあったチャージフレイムとインボルブの合わせ技でガンガン削っていけるわ。あとはてゐの回復と最終手段に文がネクタル持って構えて撃破。
  アタックハウルもグリモア化できるから、こちらは持ってるとなかなか便利よ」
かごめ「流石にこいつのレアドロップまで狙ってる余裕はなかったけどな。かなり優秀な杖ができるんだけど。
   っても通常ドロップでも三層最強槍作れるから、実際こいつを狩った最大の理由がフランの火力アップの為だからな」
静葉「氷属性付与はおまけみたいなもんだというか…第三層で氷通る奴って13FのFOEだけですものね」
かごめ「氷塊ぶつけると即死する目玉ですね解ります。
   ああ、流石に邪竜には手をだしとらんよ。というか普通に瞬殺されたわ(しろめ
静葉「それでも挑んだってところがもうなんというか…たまにはFOEから逃げる努力したら?」








<HR 藍しゃま先生の連絡事項>


〜狐尾紅茶館〜

藍「…というわけだ。
 つまり、これからお前達が行ってもらうミッションを最後に、今回の実戦訓練の総仕上げとしてもらう。
 これの成否に関わらず…明日で元の世界に帰ってもらう事になる。
 
悔いの残らないように実力を揮ってもらうぞ」

リップ「そっか。
   そう言えば、この旅もあたしにとっては、戴冠前最後の自由な冒険になるんだって、お父様も言ってたもんね。
   儀式が前倒しになるなんて聞いてなかったけど…仕方ないかぁ」
めう「うみゅみゅ…めうももう少し、リップやみゆゆ達と一緒に冒険したかっためう。
  でも、めうにとってはバンドもとってもとっても大切なことだから、仕方ないお」
藍「名残惜しいのは解るが、聞きわけないようなら強引にでも連れ帰ることになるからな。
 出来ればそんな手間になるようなことはしてくれないでほしいな。
 …ああ、美結とつぐみも、特に理由はないが、いいタイミングだしお前らと一緒に帰させることにするよ。
 あいつらには、別途で伝えてあるからさ」
リップ「わかった。
   でさ、その最後の仕上げって、何してくればいいの?」
藍「うん。
 つぐみ達もじきに来るだろうし、そうしたら説明するよ」





〜同じ頃…ギンヌンガ遺跡第二層〜


「ひとまずこんなもんだろう」

かごめが刃にべっとりと付いた体液を払うと、鍔元から青白い炎が奔り、刀身に残ったそれも完全に焼きつくされる。
その眼前には…一体が仔牛ほどの大きさもある蜘蛛の魔物が、何体もその胴を斬り割かれたり真っ二つに切り割かれたりされた状態でその屍を晒していた。

その背後にはさらに…ひときわ巨大な蜘蛛の胴体に、無残にも半身を斬り落とされた女性の身体を据え付けている異形の死骸がある。
その傍らには、鮮やかな山吹色の髪を無造作に結わえた、ジャンパースカートの女性が立つ。

「上は猪の巣、すぐ下には蜘蛛どもの天国と来たか。
大昔の研究者がここでなんの悪さをしていたのか知らんが…まあいい、舞台はこれで整ったってことだ」

かごめは背後の女性…ヤマメへ向けて声をかける。
しかし、彼女はかごめに背を向けたまま、沈黙を守ったままだ。

「…なんでえ、バケモノとはいえ同族殺しは気が引けるとか、今更そういう事を言うつもりじゃねえよな?」

かごめはその態度に僅かな違和感を持つが、普段と変わらない調子でなおも話しかける。

否…かごめは彼女の不穏な気配を察し、その出方を伺うためにわざと挑発的な言葉を選んだ。
ある程度割り切りのできているというより、軽いアイサツ程度のニュアンスになりつつある諏訪子へのカエル呼ばわりとは異なり、この手の揶揄をヤマメが好まないことはかごめも知っているのだ。
かごめは一見そうしたノリだけで会話しているように見えて、その実他者のこういう感情には非常に敏感なのだ。故に、普段と同じように接するつもりなら決して、このような言動をヤマメに対してはしない。

かごめはその異様な雰囲気に、鞘に納めないままでいた刀を構える手に力を込める。


「…悪いな、かごめ。
ここから先は私の一存でやらせてもらう!


一瞬だけ刺すような殺気が、振り返ったヤマメの眼から奔る。
かごめは誰何より前に、上段に構え一足飛びにその眼前に踏み出そうとした刹那…ようやく異変に気付いた。
斬った筈の蜘蛛の数体が、一斉に投げ放った強靭な糸が、その四肢に絡みついて完全に動きを封じる。

そして。
かごめの意識が暗転する直前に見たのは…ヤマメの放った貫手が、己の鳩尾に深々と突き刺さるその光景だった。








諏訪子「えっこれどういうことなの…ってかごめいねえし!!( ̄□ ̄;)」
静葉「そろそろ出番だから後は頼むってさっき出てったわよ(しれっ
諏訪子「いやいやなんかあいつとんでもねえ事になってるけどこれマジで大丈夫なの!?」
静葉「それよりもまずギンヌンガ2Fとボスの紹介するわよ」
諏訪子「いやお前ちょっとひとの話をだな」
静葉「(無視)11階に侵入すると、クラシックだとクエスト「遺跡の脅威を排除しろ」が受領できるわ。
  バジリスクを倒してもその先の階段ではメッセージが出て門前払いをくわせられるんだけど、このクエストの受領でやっと先へ進めるようになる。
  で、ここのFOEは天井を這いまわる蜘蛛なんだけど」
諏訪子「…聞いちゃいねえし。まあいいや。
   この蜘蛛どもは、フロアの所々にある糸の塊のところに行き「燃やす」を選択すると勝手に落ちていなくなる。
   この辺は10階の覇王樹水泡樹とかと一緒で、この方法で焼き落とした蜘蛛も復活周期まで復活しないんだが…こいつに下手に近づこうとすると、こいつがフィールドに吐く糸に絡め取られる。
   糸に絡まれると3歩分身動きが取れなくなるが、蜘蛛は近づいてくる。で、奴が接触すると全個所縛り喰らった状態でFOE・束縛する毒蜘蛛との戦闘になるぞ」
静葉「実際はレベル31にもなって乗り込んだもんだから、蹴散らすのは簡単だったわよ。むしろ縛りから入っても全然楽勝だったわ。
  こいつの使うスキルで厄介なのは全体突ダメージに全個所縛りの効果がある捕食の糸だけど、何しろこっちが戦闘開始時に縛られてるもんだから、解除される頃には累積耐性付いたからたいして怖くもないという」
諏訪子「抑制防御振ってればなおさらだな。
   こいつは縛りがほとんど入らない挙句毒は効かないが、それ以外の状態異常はまんべんなく入る。麻痺がよく効くので、手段があるなら入れちまうといい。HPは6000近くあるが炎王に比べると比べるまでもねえくらいのザコだ」
静葉「まあ面倒くさいから1匹狩ったらあとは全部焼き落としたけどね(しれっ
  ついでにこいつのドロップは服の素材だけど、AGI補正があるからガンナーとの相性が抜群にいいわ。基本ガンナーなんて後列だし、三層ならこれでまかり通してもいいんじゃないかしらね」








<五時間目 ナゾの遺跡の最終試験!>


あんた達のやるべきことはひとつ…ここからやや北に位置するギンヌンガ遺跡で、あたしの知り合いと真剣勝負をしてもらう。
誰が待ってるかはあえて言わない。
初見の相手とどのくらいあんた達が戦えるか、そこを見たいんでね」


出掛ける前…かごめが言い渡した最終試験の内容についてあれこれ話しながら、少女達は生きるモノの気配もない迷宮を奥へと進んでいく。

「真剣勝負っていうけどさあ。
それって、私達四人でもそうそう勝てないひとが相手をする、っていう事?
正直、私達の知ってるひとって、かごめさんを筆頭に心当たりがあり過ぎるんだけどなあ」
「アバウト過ぎて予測も困難めう。
なんだか新しい曲のEXH出したら13とか14とか微みょんなレベルなのに、フタ開いたら逝ってよし安定だったなんてぼるるにはよくあることめう。
それが松戸譜面なら危険度はさらにうなぎぎ昇りめう

「いやそれはよくわかんないんだけどさあ。
…どしたのつぐみ、さっきから元気ないよ?
やっぱり、これで終わりとか思うところがあっちゃたりする?」

それまで暗い表情で沈黙を守っていたつぐみは、リップの何気ない言葉にびくっと身体を震わせて立ち止まる。


終わり。
恐らく、これが…美結と一緒に冒険ができる最後の時間。

その事を、強く意識して涙が零れ落ちそうになる。


リップ達にはとても話せる内容ではない。
話してしまったら、リップとめうならたとえどんな無茶な方法でも考えて実行に移そうとするだろう。
だから、それを覚られるわけにはいかない。


涙をこらえようとするつぐみに代わって、美結はフォローのつもりなのか、困ったように笑いながら二人に返す。

「つぐみちゃんは私達とは別に、かごめさんから申しつけがあるみたいなんです。
私達と違って経験も豊富だから、極力手を出すな、みたいなことを言われてるんですって。
だから…心配で寝不足になっちゃったみたいで」
「えーちょっとそれ本当なのー!?
実質私達三人で戦えってことじゃないそれ」
「大丈夫ですよ。
別に、私達は勝つことを要求されてるわけじゃなくて…私達が力を合わせてどう戦うか、それを見るのが目的だっていう趣旨なんだし
勿論、別に勝ってしまっても構わないお?

そのくらい雰囲気を少しでも払拭しようというのか、アニメのワンシーンをモノマネするめうの姿に、リップも美結も笑う。

「無茶振りだねえ」
「でも、そのくらいが私たちらしくていいでしょう。
…っと、そろそろ目的地ですね。この扉の向こうでしょうか」

何時の間にか、少女達は遺跡の最奥部まで来ていた。
その閉ざされた扉の向こう…そこから、殺気や闘気とは違う何かが伝わってきている。

「なんだろう、すっごく息苦しい感じ」
「お相手もきっと本気めう。
形から入ることはゲームでも一緒ナリよ…ここから先は遊びではいかないという事めうね…!」

その意味を知らずとも、リップもめうも鋭敏な感覚の持ち主だ。目の前の異様に不可解なものを抱き始めていた。
そして、この独特の重苦しい空気の答えを知っているものがこの場にいる。


あまりに濃密な、死の匂い。
つぐみはその気を放つ者の正体を知っている。


そして…その中で起きている異変にも、いち早く気がついた。

「お母さんっ…!?」

つぐみは逡巡するめうやリップよりも早く、扉を開け放つ。
それは、予想をはるか斜め上を行く光景。


♪BGM 「邪聖の旋律」/伊藤賢治(ミンサガより)♪


「来たね、つぐみ。
あんたには悪いが…」

広大な広間全体に張り巡らされた蜘蛛の巣。
その中心には、蜘蛛糸に絡め取られながらぴくりとも動かないかごめ。

そして…強大な妖気と共に、濃密なその死の気配を纏うのは。

「ヤマメさん…どういう、ことなの!?
どうして…いったい、なんのつもりでこんなことッ!!」
残念だが、計画は変更だ。
かごめにその意思がないというなら…私が無理矢理にでも引きずり出させてやる。

…もしドジをふんだら…ここであんたたち全員も皆殺しにして…あとでかごめに大人しく斬られてやることにするよ」

その瞬間、美結の背後から…ヤマメの蜘蛛糸に操られるままの蜘蛛の魔が襲いかかってくる。
しかし、間一髪割り込んだリップが、付け焼刃ではあるもののパラディンの盾捌きでそれをいなした!

だが…受け止めきれずに二人はもんどりうって床へと転がり込む。

「…痛つつー…!」
「リップ!みゆゆ!」
「…大丈夫、なんとか…でも」
「理由は解らない…あのひと、本気だ。
本気で私たちを殺すつもりなんだ…!!

リップはそれを確かめるように呟き、戦慄する。
その時になって彼女達も理解した。


「さあ! 大人しく殺されるつもりがないなら、精々抗って見せな!
この私の…(あやかし)も鬼も仏も悉く喰らい尽す、土蜘蛛の牙に耐えられるのならな!!」



幻想郷でも古豪と呼ばれたその妖怪の放つ、あまりにもはっきりと感じ取れる死への誘いを。








静葉「某氏はそんなトンチキな設定はあまりしたくない系のアトモスフィアだったけど、狐野郎にそういう常識は全く通用しないわ。
  ヤマメの序列は魔性貴種第六位、実はレティや勇儀よりも上位にランクされてるそうよ」
諏訪子「いやいやいやそれ比べる相手がよくわからん」
静葉「参考までにいわゆる6ボスEXボスと呼ばれてる連中の序列だと…えーとフランは前何処かで十五位って話した気がするわね。
  無意識妖怪が第十四位、ぬえが十八位、馬鹿鴉が十二位、芋もとい萃香が五位、マミゾウが四位、藍が二位…だったかしらね。
  っていうか6ボスはほとんどが真祖かその同等レベルだった事を今思い出したわ(さとり注:あくまで狐野郎の脳内妄想です
諏訪子「っていうかそもそもナチュラルに藍やマミゾウの方が序列上じゃねえか。
   まあ、奴らと同等クラスの扱いだっていうのは解ったしその時点で十分トンチキなことは確かだよな。
   …つーかあいつこいしより強いん?」
静葉「あくまであの序列って、単純な強さのバロメーターというより、その影響力やら能力的に広範囲かつ致命的な被害をもたらすかどうかで決まるんだけど…残念ながらヤマメの場合、真祖になれないのは「特定のコミュニティを有してないから」その一点だけであって、戦闘能力自体はかごめやゆうかりんさん、超人状態の聖白蓮なんかとガチで互角以上の殴り合いできる程度あることになってるそうよ。
  能力も原作時点ですでに致命的なもの持ってるからね」
諏訪子「なんだこのヤマメ推し状態…つか、ここまで全く攻略に関わるシーンがないけどそのへんどうなんよ」
静葉「というわけで後編に続きます(キリッ
諏訪子「( ̄□ ̄;)えっこれ続くの!?
   これ今回完全に茶番で終わったな本当に何がしたいんだよ…」
静葉「そんなの狐野郎に訊いて頂戴。多分「刻の涙が見える」とかわけのわからないことしか言わないから。
  次回は解決編というか、そんな感じよ。
  ギンヌンガ2Fボスの話もそっちでするわね」