〜フラン達のスキュレー戦の数日前…狐尾紅茶館〜


魔理沙「かごめ…やっぱりあんたもいたのかよ」
かごめ「ああいたさ文句あるかコラ。
   まあ、聞きたいことも言いたいことも山ほどあるだろうが…あたしも実はあるんだがな、そこのめうめうとか。
   とりあえずいるものはしゃあねえ、みんな何も言わずにまず適当に座れ」
ヤマメ「だったら私も解放していただけますか(しろめ」
かごめ「うるせえてめえはそのままだ(キリッ
   …あたしたちがあえて名前を偽って別行動してたのもそれなりに理由あってのことだ」
文「理由ですって?
 あんたがこうやって、こそこそ今までやってたのが急に表に出てくる時なんて、大概ロクなことにはなってないじゃない。
 今回は出てくるのが早すぎるんじゃないかしら?」
かごめ「てめえも本当にいい口利くようになったじゃねえかこの鴉。
   …反論はできそうにねえけどな。多分、ずっと以前にお前に言った事を大きく予定変更してもらわにゃならん」
文「変更?」
かごめ「ああ。
   もう、遺跡探索をフラン達だけにやらせる余裕がなくなってきた…ということか。
   それとそもそも、遺跡の謎を解く必要がぶっちゃけなくなった
文「…なんですって?
 どういう事なの、それ?」

かごめはレジィナに料理を注文すると、カウンターの席にどっかりと腰かけ…困惑半分、訝る顔半分の面々を見降ろして告げる。

かごめ「あの遺跡に関する資料が、マイクの持つ膨大なデータの中から見つかった。
   もっと言えばな、天邪鬼のアホが暴れて完全崩壊したグラズヘイム中枢部に、データサーバがひとつ奇跡的に生きていてな…そのデータを持ち帰って、教授とリッキィに解析させて解った事さ。
   あの遺跡…ギンヌンガは来るべきフォレスト・セル覚醒に備えて、そのフォレスト・セルを駆除できる生命体を作成、及びその戦闘訓練を行う研究施設だってことがな
魔理沙「ちょっと待ってくれ。
   セルの駆除だと…エトリアのセルは既に、リッキィと旅したハイランダーが、モリビトの力を借りて討伐して…その残滓も、少名針妙丸と融合した世界樹諸共グングニルで消滅したはずだよな?」
つぐみ「ううん、リッキィが言ってたんだ。
   「世界樹」には必ずセルが生まれるって。
   この世界には「世界樹計画」で植えられた世界樹の、同じようなものが何本もあるって聞いたよ
魔理沙「えっそれマジの話か?」
てゐ「私ぁ聞きかじりの話になるけど、タルシスの「殿」の底にいた奴もセルの一種だってんだろ?
  まあ、正確には「殿」の妖蛆ってのは、まさしくそのフォレスト・セルを喰わせるために生み出されたってことらしいがな。
  生み出した連中の目論見通り、妖蛆はセルを喰らい尽したはいいが、結局そいつはまるっきりセルに乗っ取られちまって、さらに手をつけられないバケモノになっちまったわけだが」
魔理沙「ウソだろ…あんなのが他にも何体もいるだって…!?」
つぐみ「うん、そうなるよね。
   アーモロードの世界樹だけ少し毛色が違うみたいだけど…」
かごめ「アーモロードのは少し特殊だが、あれも一応元々計画で植えられた一本で間違いはないさ。
   当然、この地の世界樹にもセルはある…ただ、寒冷気候だったために育ちが悪く、なおかつ他の大多数のように「世界樹の根元」じゃなくて、「世界樹の上」で悪さしてた馬鹿がいるからな。
   その「上の馬鹿」が復活しようとしていることが、回収されたデータで解った
フラン「それって…」
てゐ「恐らく、公国のいう「天空城」にいるんだろうな、そいつぁ。
  そいつが目覚めると一体何が起きるっていう?」
かごめ「正直、そこから先は憶測にすぎん。
   だが、恐らくは「暗国ノ殿」の科学者たちとは異なる方法で、対フォレスト・セル用の戦闘生命体の研究をしていた可能性がある…その熟れの果ての一つが、キマイラだろう。
   近年になって、唐突にキマイラの戦闘能力が格段に上昇したという話も聞いたしな」

てゐは僅かに眦を釣り上げる。
かごめは一拍置いて、さらに続ける。

かごめ「フラン達には、世界樹の上…「天空城」を目指してもらいたい。
   樹上に潜む何者かまでは解らんかったが、そいつが狂気におちいってる可能性は非常に大きい…かつてのエトリアの長ヴィズルや、「暗国ノ殿」で研究を繰り返してた連中がそうだったようにな。
   今現在は多分、マイクのようなスーパーコンピューターが研究を続け、その結果キマイラのような一部の、明らかに人工的に生み出された魔物や…その他、樹海で脅威とされた魔物も進化に手をくわえられていると思われる。
   早いところ何とかしねえとヤバいかも知れん」
文「ヤバい事が解ってるんだったら、私達だけでなんて悠長なこと言ってないであんたが出張ればいいでしょうに。
 それに、紫はどうしたのよ。エトリアの時と違って、あいつが万全の状態で控えてる筈でしょ?」
かごめ「無論、あたしはそのつもりだ。
   だが紫は…リリカ達の方もだいぶ、ヤバい事態になってるらしいってんで…そっちのサポートに回ってる。
   あっちもカタつき次第、リリカやこいし、あとあいつらの面倒を見てるレティをこっちへ駆りだせるだろ。
   それまでは、あんた達で出来得る限り上まで、天空への道を切り開いてもらいたい」
つぐみ「私達もそれを手伝えばいいの?」

いや、と首を振るかごめ。

かごめ「つぐみ、お前はまず美結達を連れてギンヌンガへ入れ。
   あの施設では、先にも説明した通り、対フォレスト・セル用の生体兵器の研究・開発がおこなわれていた…美結に透子、めうの力をこれまで以上に引き出してやる場としてはうってつけだ。
   …最悪、天空城の主の復活とセルの覚醒が同時に起こる可能性もある。もし、そいつがグングニルに類する兵器か、それに匹敵する殲滅能力を持った生体兵器を有し、それを「機動」させた場合、ハイ・ラガードも発掘都市ゴダムと同じ末路を辿るだろう。
   あたしが天空に昇るか、地下に降りてセルの相手をするかは…これから遺跡で美結達がどうなるかによって決めたいと思う

つぐみたち四人は顔を見合わせる。

かごめ「だがまずは、美結。
   お前は一度元の世界に戻って、精密検査を受けてもらう…あの様子を見る限り問題はねえと思うが、一応はな。
   既に信用できる所に約束を取り付けてあるし、二、三日ほどでこちらに戻ってこれるようにスケジュールを組んである」
美結「…はい」
かごめ「あと3人だが…お前達は好きにしてろ。依頼事でも受けて樹海に行くなら行ってもいいが、二層より上に入るなよ。
   だが、今回からは先、かなり長丁場になるし、生きて帰れる保証も勿論ない。元の世界でやりたい事があったら、あたしと一緒に来て今のうちに済ませておく事だ。
   特にめう、お前本気でこれに参加する気ならまり花達にはちゃんと伝えとけ。藍から聞いたが、お前あいつらに黙って出てきたそうじゃねえか。
   あいつらだって馬鹿じゃねえし、お前にそれだけの理由があるなら、止めはしねえだろうよ」
めう「…解ったお」
かごめ「で…あたしは美結の検査が終わり次第、こっちへ戻る。
   そうしたらお前らには、改めて説明する。あたしからは以上だ」



「狐尾幻想樹海紀行 緋翼の小皇女」
第十六夜 街景 少女達の見る果てなき空




静葉「まいど、静葉さんです」
諏訪子「( ̄□ ̄;)あるぇー!!??
   ちょっとまてかごめどころかさとりまで一体どうした!?」
静葉「あーまあ色々ややこしいんだけどねえ。
  まず、狐野郎が某札勇儀シリーズ動画見てるのは知ってるわよね?」
諏訪子「おい字が違う字が。
   余りにここ最近の、あの動画のさとりのゲスっぷりが酷くてかごめがこっちのさとりをからかう材料にしてるよな。
   えーと現在の最新話だと」
静葉「あのお空の結末を見て半狂乱になったさとりをかごめが全力で止めてるわ」

さとり「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおくうううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう!!!><
   許さん許さんぞあのクソロリがああああああああああこの私の手で絶対に八つ裂きにしてくれるわあああああああああああああああああああああああああああああ!!ヽ(# °Д °)ノ 」

かごめ「(さとりを羽交い締め)待て落ちつけこらって言うかあれも一応お前だ別世界線のお前自身なんだからっ><
   ヤマメ!何してやがるさっさと鎮静剤持ってこい!いやシロナガスクジラ止める程度の睡眠薬だ早く!!」

諏訪子「…確かにアレ、あのさとりの指示だけど、そういう風にお空の調整したのはあの動画だと私ってことになってんだよな。
   そのうち私にまであの矛先向かって来そうでぞっとしねえぞ…」
静葉「ご愁傷様(チーン」
諏訪子「( ̄□ ̄;)ちょおま私を死んだ扱いにすんな! っていうか薄情過ぎるだろ!!」








〜その翌日 狐尾紅茶館〜


透子「えーっと…とりあえずこのグリモアとかいう奴を使う事で、自分がなっている職(クラス)とは別のスキルを使う事ができる、と。
  でもってあたいはテキトーに決めてくれって言っちゃったから正直自分のクラスもよく把握できてねえんだよな…こういうのって誰に訊けば手っ取り早いんだろうな」
つぐみ「あのさ…とーこ先輩。
   先輩はどうして、急に樹海に来る気になったの?」
透子「んー、ああ、魔理沙にはしたけどあんたには話してなかったっけ。
  まあ、裏取引だね
つぐみ「裏取引?」
透子「あたい今年で高校卒業だろ?
  正直、この時期に他の学校に編入って言われても微妙だからさ、夏ん時に日向美学園の大学部に入れないかって話を軽くしたと思うんだが」
つぐみ「うん」
透子「今編入する高等部の授業と言っても期間がたかが知れてる。
  だったら、今通ってるとこを留学という形で離れて、そのまま日向美大学の枠へ滑り込める裏技かなんかないかって話をしたわけよ。
  …つまり、ここで樹海探索に加わるっていうのが「留学」ってことになるのかな」
つぐみ「( ̄□ ̄;)そんな理由でぇ!?
   とーこ先輩、しつこいようだけどここめっちゃヤバい場所だってほんとに解ってる!? 解ってるの!?><」
透子「来るときにもそれ、早苗とリッキィにも散々言われたんだけどな。
  まあ、そればっかりが理由じゃないんだけどね。命が惜しいなら、素直に編入の件を蹴って超高倍率の入試受ける道を取るさ。
  …あたいはな、将来…「蛭の森」に飲まれた生まれ故郷を取り戻したいんだ
つぐみ「えっ…」
透子「これもあんたには詳しく話してなかったよな。
  あたいが生まれた場所って、実はもう、妖精国の地図には載ってないんだ。
  あたいが物心ついた頃…「氷精の隠れ里」と呼ばれたその場所は、「梟」の持ちこんだ「街殺し」で全滅した…あたいを除いて。
  あたいの記憶は…村のみんなが自殺を図った時、連れ出されるあたいに笑いかけて…自分の放った火で燃える村の中へ戻っていく父さんの姿から始まってるんだ」

寂しそうな表情で笑う凍子。

つぐみは思い返していた。
夏に、倉野川を舞台に妖精国の過激派組織「森の梟」と、それを利用した蛭の森の真祖「墨眼」との戦いの時、透子は「梟」に対して凄まじい怒りを…否、深い深い憎悪を示した事を。

透子は妖精国でも忌避の対象であった氷精の一族であるが、家族の話をしようとするとそれに触れられたがらないような態度を見せる。
故につぐみも深くは触れなかったが、透子が生まれた頃に母親と、そして幼いころに父親と死に別れ、天涯孤独の身になっていたことは知っていた。
そして…氷精の血筋を引く以上に、極度に透子が炎を恐れるその理由を、彼女はその時初めて知った。

透子「あたいは悔しかったんだ…何もできずに、ただ逃げることしかできなくて。
  やがて、妖精国でも同じようにして周りから忌み嫌われる魔性の末裔が集まる月森地区に移り住んで…川瀬と仲良くなったのも、それからすぐのことさ。あいつの家族も、住んでたところを追われて来たからさ。
  妖精国が、争いもない楽しく平和なだけの国だなんて、まるっきり嘘っぱちだってあたい達は知ってる。
  …むしろ、どいつもこいつもガキみたいな思考の持ち主ばっかりの国だ…人間が人間を迫害する方が、まだよっぽど理性的に見えるレベルだよ」

つぐみは初めて、目の前のその少女が背負ってきた暗い過去の一端を…妖精国の抱える闇を、垣間見たような気がしていた。

透子「あたいは、チカラが欲しい。
  あの国で生きていけなくなった…生きられないようにされた連中を護る力を。
  あの国が闇へ葬った、あたいの生まれ故郷のような場所を…これ以上生み出させない力を
つぐみ「だから、お母さんの言い分を?」
透子「…こんなところでくたばっちまうようなら、あたいにそんなことを成せるだけの力は生涯持ちえない…それだけのことだからさ。
  かごめさんに言わせれば、これでも大サービスだ、ってことらしいんだけどね」

恐らくかごめも、透子の意思を大いに嘉し、今回の機会を与えたという事であろう。
かごめのやることは一見滅茶苦茶ではあるが、見所のない者に対して無茶振りをするようなことは決してしない。樹海行きを許可したのも、かごめ自身が透子の能力を高く評価し、その上で彼女の覚悟を試そうという事なのだろう。

つぐみも、ようやく凍子につられる形で微笑む。

透子「年齢上はあたいの方が先輩だけど、樹海に関してはつぐみの方が先輩だからね。
  美結達が帰ってくる前に、少しでも冒険に慣れておかなきゃ、だな。
  つーわけだ、よろしく頼むよつぐみ先輩」
つぐみ「うん、わかったよ。
   じゃあ、とーこさんが今何をできるのか、色々把握しておかないとね」








さとり「(死んだ魚の様な目をしている…どうやら薬が効いているようだ)」

ヤマメ「ふーやれやれ一時はどうなる事かと。
   これもうウカツにあの話題引き合いに出せねえな、こいつ何しでかすかわからん」
諏訪子「確かになあ、私だって自分と同じ顔した奴があんなことしてたら正直発狂しそうになるよ。
   今後アレの話引き合いに出すなよ、お空回りの伏線見てると私がまずあいつに八つ裂きにされそうな気がするわ。
   …っていうかかごめの奴は相変わらずいねえのか」
静葉「ああ、さとりが止まったから出番もあるしよろしく、だって」
諏訪子「なんだまたあいつが話に絡むのか?
   大体にしてロクな予感しねえんだけど、あいつが絡むと」
ヤマメ「いや、あいつが本格的に絡むの次以降っしょ。
   今回はインターミッション回、つぐみと凍子によるシステム回りの確認回になるね」
諏訪子「あ、本編じゃねえのか。
   まあ、ストーリー的には三層も終わってみたいなところはあるからタイミング的にはいいんだろうが…っていうかなんでこういう暗い過去話みたいなのをぽんぽんと生み出せるんだ?
   つか中途半端に入れるからややこしくなるんだし、やるんだったらもう生田美和(射命丸メモ:「サガフロンティア」スタッフの一人です。アセルス編の設定をやった人、と言ったら解る人もいるでしょうか)ばりに徹底的にやれよと」
静葉「そこまでやろうとした末路が現在のリリカの話になります(しろめ+口からエクトプラズム
諏訪子「( ̄□ ̄;)あっ…いやそのなんだ…なんか済まん」








〜冒険者ギルド〜

マリオン「なるほどな。
    見たところ、お前は術師(アルケミスト)のようだが…大元は王族かそれに類するものの技能者、という事になっているようだな。
    …というかそれ普通自分で申告するものだから、当人が把握してないという事自体がそもそもありえないんだがなあ(呆
透子「すんませんねえ、あたい初心者ですから(ぷー」
マリオン「まあ、お前達「狐尾」が色々その辺の常識の尺度で測れるようなギルドではないことは、私も知ってはいるがな。
    その様子なら、ベースになったプリンセスの特性もあまり理解してはおるまい」
つぐみ「そう言えば…単純にバフ職の一種としてしか聞いてないような」
マリオン「王族としての高貴な血筋から来るカリスマ性を力とし、それを体現する「号令」でパーティの能力を高めたり、あるいはその血筋に秘めた祝福の力で、弱体状態などの呪いに類するものを解除することなどに長けているクラスとされる。
    遠く海都アーモロードで、海や樹海の豊かな資源を元手に家の再興しようとする没落貴族の子弟が、冒険者としてのアイデンティティを追求する上で生まれたクラスと言われるな。近年では、ハイ・ラガードでも数は少ないが見かけるようにはなった。
    アーモロードに集まった者達は全体的にバランス型の能力を持っていたが、この近辺ではやや術師寄りの身体能力を持つ者が多い傾向にある。儀礼的な教養を多く身につけているゆえか、騎士(パラディン)剣士(ソードマン)の着るような重装甲を身につけることができる分、一般的な術師よりは頑丈にできているようだな」
透子「ふーん、あたいにはそんな特異な血筋はないんだけどねえ」
マリオン「あくまで基礎能力がプリンセスに近い、というだけで、お前は間違いなくアルケミストだ。
    アルケミストに転職したプリンセス、というべき存在だな。生粋のアルケミストほどの魔力は持たないが、前衛が足りなければ前衛に立てる程度の耐久能力がある、といったところか
透子「なるほどねえ。
  確かにあたいは術師だけど、どっちかというと中衛向きだって師匠にも言われたねえ」
マリオン「普通の術師より打たれ強い事を活かすのであれば、ミズガルズで最近開発されたという「術掌」の技術を鍛えてみるのも一興かも知れんな。
    元々打たれ弱さには定評のあるアルケミストでありながら、性質上接近戦を余儀なくされる術掌使いはいまだ数も少ない。それ故に研究は進んではいないが、ここで一人第一人者というべきものが生まれれば今後より発展が望めるやもしれんカテゴリと言えよう」
透子「それは暗にあたいに、まだ数は少ないからモニターになれ、って言ってるように聞こえるんだけど?」
マリオン「ふふ…その受け取り方はお前に任せるとしよう。
    簡単な術掌に関する説明であれば、資料はここの図書室にもある。興味があるなら読んでおくといい。
    無論、多少打たれ強いだけの後衛術師に徹するのもお前の自由だ


〜ギルド 図書室〜

透子「術掌、ねえ。
  なーんか地味に乗せられてる気がすんだけど気のせいかな」
つぐみ「か、考え過ぎだよとーこさん^^;
   そう言えば、エトリアで会ったミズガルズの子で一人錬金術師(アルケミスト)が居たっけ。あの子もそう言えば、術式で物理的な破壊力を生みだすっていう近接戦闘用の術式を使ってた気がするよ」
透子「リッキィの言ってた「アホの子」だっけか?
  そう聞くとますますなんか、信用できる実験台が欲しい、みたいに聞こえるんだけどねえ」
つぐみ「でで、でもこの説明だと、三色の属性全部に対応してるって書いてあるよ?
   その子の近接術式は、確か斧や杖のような打撃の性質しか持ってなかった筈なの。
   それにプラスで、近接戦闘に対応しやすい受けの術式技能があったと思ったんだけど…この説明を見る限り、なくなっちゃってるみたい」
透子「ふむ、そうするとこれを見る限りでは、より近接攻撃に特化した研究がされていた、という事なんだろうな。
  術掌で付与された属性が、次に繰り出される攻撃の属性を術掌の属性に塗り替えるという特性と、繰り出した術掌と同じ属性の魔力余波でダメージを与える「加撃」、それが相手の弱点であれば魔力の余波で周囲もまとめてなぎ払える「拡散」。
  グリモアで範囲攻撃技や、一体多に向くような技能、追加効果の優秀な技能をカバーすれば面白いかもしれないな」
つぐみ「お母さんの話だと、てゐさん達が集めたグリモアでも使ってないのがあったら見繕って使ったり、紅茶館に来る他の冒険者と交換したりして好きに使っていいって言ってたよ。
   私も手伝うからやってみようよ!」
透子「…そだな。
  ものは試しってやつだ」








諏訪子「なんだこれ本当にただのインターミッションなのか」
静葉「そーね。
  術掌アルケミにしたって話は触れたけど、その術掌アルケミって今ひとつよくわからないところも多いし」
ヤマメ「前作でアーサーによる単独セル撃破にも使われた光掌二種と光撃が今回削られたのが非常に痛いんだよな。
   あれがあったらもうちょっと選択肢としてアリだったと思うんだが」
諏訪子「その光掌がイカレスキルだったからだろが。
   前作の「握壊の術式」の延長線上かと思えば、術掌は術掌で変わった特性がある。
   とりあえず特徴を少しまとめてみるぞ」

1.前列のみで使用できる近接攻撃
2.次に使用するスキルの属性を、使用した術掌の属性に置き換えて威力を上昇させる。
3.依存部位が腕

諏訪子「前列のみ、というのが撃たれ弱いアルケミにしてみれば厳しい条件だが、注目すべきは二つ目の効果だな。
   ちとわかりにくいが、SQ4で例えるならチャージエッジに近い効果だ。倍率はそこまででかくはないがな」
静葉「あったわねーそんなの。
  普通にサブモフにして羅刹チャージ積んだ方がよっぽど運用が楽だった説もあった」
ヤマメ「私そのころ絡んでないから普通にその話題おいてけぼりなんですがねぇ(しろめ
   しかし、属性を置きかえるってことは…」
諏訪子「通常攻撃は勿論、例えばヘヴィストとか持ってるなら、スタン付与や行動速度補正は持ち越したまま属性だけ壊属性から術掌の属性に変わる。
   ただし、属性そのものが変わるってことは、大部分のマスタリーが持つ「その武器を装備した時に“物理”攻撃力が上がる」と書かれた効果の恩恵は受けられなくなるな。当然、物理攻撃ブーストも乗らない」
静葉「術掌そのものも加撃の術掌の存在を考えれば、TPに比べて恐ろしいぐらい燃費のいいスキルではあるけど…そう考えると善し悪しよね」
諏訪子「ただし単体攻撃だからペネトレイターが、属性は変わろうが通常攻撃を繰り出せばフェンサーやダブルアタックが乗る。
   それに、次の攻撃を術掌の属性に塗り替えるという事は、全体術式やTEC依存の全体攻撃をひとつもってれば、三色の術掌と組み合わせることで三色どの属性にも対応しちまうんだ。
   つまり、相手の属性弱点に対する広範囲攻撃も容易にカバーできる。これが術掌の強みだな」
静葉「そもそも、アルケミなら属性攻撃ブースト振るものね。そっちは問題なく乗るんでしょ?
諏訪子「まあな。
   あと杖装備なら、実は巫剣マスタリーの攻撃力アップだけは乗る。なにしろ物理だけじゃなく属性攻撃力も強化されるって明記されてからな。
   異常は美結の他、めうも撒こうと思えば撒けるから、誰かに異常を撒かせたら美結のトランス霊攻大斬にプラスで術掌霊攻大斬という追撃も可能になるな。属性弱点を持つF.O.E.相手には定量分析を絡めると、これはこれでかなりエグい破壊力が出る」
ヤマメ「なるほどねえ。
   グリモアでのサポートはいるが、確かに面白そうではある」
諏訪子「だが、メンツ的にガード役がいないメンツだからな。
   透子は最低限の火力補助として巫剣マスタリー、スキュレーから取得したアイスブラッシュ、あとは盾マスタリーと三色ガードを持たせてある。
   最終的には巫剣マスタリーと大斬、範囲攻撃、盾マスタリー、三色のどれか、術掌上乗せみたいな構成になるんじゃねえかと思う」

ヤマメ「というわけで話は今回はインターミッション的な話というかただの茶番なんでこんなあたりで」
静葉「それでは、次回は」
諏訪子「実はちょっとギャグ路線で前半が進行します(しろめ
ヤマメ「おいィ…」








〜再び紅茶館〜

透子「というわけでトレードしてくれそうな人を探そうか。
  結構モンスター技の高レベルがそろってるし、前衛に立つのに役立ちそうなパッシブがあると心強いね」
つぐみ「流石に素早さブーストとか盾マスタリーとか、便利そうなのは大体限界突破用にみんな使われちゃってるからね。
   幸い、お母さんが出がけにお店の新メニュー宣伝してってくれたおかげで、パラディンやバードらしき人達もいっぱいいるから交渉してみようよ」

「これは可愛らしいお嬢さんがた。
パラディンとバードのスキルが欲しいというならば奇遇。
どうかなこの私めとお茶でも飲みながら楽しいひと時を過ごしつつ交渉しようではないか?」

透子「なに話しかけてるわけ(キリッ
詩人の男「ふふ…そう邪険にしないでくれたまえ。
    ヘs…ではなく私の愛しき人も私に対して一見冷たい態度を取るが、それも私に一層気を使わせようとわざとそうしているのは解っている…いや全く、この私の美貌はその存在自体が罪ですらある…このようなうら若き乙女たちすら魅了してしまうなど…!」
つぐみ「(うわあこの人なんかアタマがイタそうなアカン人だ^^;)
   ってあれ? そう言えばあなた、何処かでお会いしたことがあったような」
詩人「むむ!?
  なんと、君のような将来性十分の可憐な乙女、一目見れば忘れることなど…………むむむ?
  そう言えば私もなんとなく、その顔立ち、特徴的な跳ね髪…何処かで見た事があるような…」

「あーっアポロンさんこんなところで何してんですかー!!><
私見たままミルフィーユさん経由でヘスティアさんに報告しますよー…って、もしかしてそこにいるの、つぐみさん!?」

つぐみ「あ、フェデさんだ…って。
   ( ̄□ ̄;)あーっこの詩人さん思い出した!! この前の対戦の時、おかーさんをしつこくデートに誘おうとしてフルボッコにされてた人だ!!
アポロン「( ̄□ ̄;)な、なんだとおおおおおおおおおおおおおお!!?
    まさか君はかごめ様の…あいやそのこれは誤解だ何卒このことはお母様には内密に(ガクガクブルブル」
フェデ「あーすいませんアポロンさん、ログ取りましたんで(キリッ
   そっかあ、こっちは「狐尾」の暴れてる側の世界なんだっけ。
   あの神様から「たまには知り合いのとこいってグリモアでも交換して来い」とか言って有無言わさず連れてこられたんですけど…よかったぁ、知ってる顔にこうして出会えると安心しますね〜」
透子「そう言えばミルフィーユさんから聞いたなあ、うちのお嬢にしつこく付きまとう「アルマムーンの種馬」みたいな男がいる、って。
  あんたがそうなのか?」
アポロン「ごご、誤解だっ!
    ミルフィーユ君はそうやってすぐに我が愛しのヘスチーにあることないこと吹きこんで、私と彼女の恋路を露骨に邪魔しようとしてくるのだ!
    …まったく…そのミルフィーユ君もだが世に魅力的な女性は星の数の如しといえど、我が心は常にヘスチーのそばにあるという事を何時になったら解ってくれると
フェデ「あーはいはいそれはいいですから。
   そーだ! 今小耳に挟んだけど、つぐみさん達パラディンの盾スキルとか探してるみたいですね。
   そんなに突飛なレベルのはないかもだけど、良かったら私達のと交換しません? 私達は特に選り好みもしませんからなんでもいいですし^^」
透子「お、そりゃあ助かるな。
  というかそもそもうちらにどんなのがあるのかあまり把握できてねえんだけど」
アポロン「いやちょっと君たち、少し私の話を聞いてもらえないものかな(しろめ」





〜翌日〜

かごめ「よーお前ら元気してたかー?」
つぐみ「あーうん、まあね^^;
   ちょっと思ってもない顔に会ったんだけど…なにも変わったことはなかったよ?」


アポロン「すんませんマジすんません本当に何卒あの事はご内密に><
    この盾マスタリーレベル8とファイアガードレベル7をセットでご献上しますので(土下座
フェデ「( ̄□ ̄;)いやそれ魔人攻略用のわりと重要な切り札じゃないですか!!!
   はあ…でもなんかミルさん「魔人殺ったしこんなんイラネ」とか言ってたしいいのかなあ(呆」


透子「(小声で)黙っといていいのかい、アレ?」
つぐみ「(小声で)いいよ、実際なんもされてないし。それになんか可哀想になってきたし^^;」
かごめ「まあ別に何もなきゃ、なんか優男をズタズタにしなきゃならんような気もしてたが別にいい事にしとくか。
   ああ、美結の方は何ともねえし、めうの野郎もあとで連れてくるよ。
   ……正直、そのまま帰らせるつもりでいたが……あいつはあいつで、このままこっちで冒険させてやった方がよさそうな感じだしな
つぐみ「じゃあ今あの子何してんの?」
かごめ「どうせしばらく帰ってこれないのは解ってるし、みゆゆがハイラガ戻る前に今開催してるイベント全部終わらせてくるめう!だってよ。
   今回も多機種に渡る貢ぎ系のイベントの筈だが、一日二日で消化しきれるもんなのかなそりゃ」
透子「さあなあ…あいつウワサだと、宇宙戦争イベントを1日で全解禁したとかそんなバカなことを仕出かした前科あるらしいし(射命丸メモ:「ミミニャミクプロパステルくんのみんなで宇宙戦争!」のことですね。全要素解禁まで最低150クレ以上かかると言われる近年最悪レベルの貢ぎイベです。このイベントに関するめうの行動についてはピクペディアのめうの項目で語られてますので参考までに^^;)」
つぐみ「私達にはとてもついてけない世界だね^^;
   それじゃあ、お母さんの試験は予定通り、私達四人でやるってことで良さそうだね」
かごめ「ふふん、気勢は十分じゃないか我が娘よ。
   言っとくがあたしの試練はHARDだぞ、覚悟はできてるね?」
透子「勿論さ。
  ここで引き下がるつもりは、あたい達にはないからね。
  …で、試験の内容ってまだ明かさないの、かごめさん?」

かごめは溜息をつくと…目の前の二人にそれを告げる。
ふたりはただ、そのあまりにシンプルな、思っても見ない内容に、ハトが豆鉄砲を喰らったような顔で硬直する。


「お前ら四人でこのあたしと戦い、あたしに「参った」と言わせてみせろ。
それが試験だよ」