〜ギンヌンガ B3F〜




四人はかごめの指示の元、ヤマメと死闘を演じた広間の先にある部屋へとたどり着く。
その部屋の中心部には、蒼く不思議な光を放つモニュメントが鎮座していた。

一応あたしと戦えとは言ったが、何しろ本来は五人パーティのところ、四人でっていう条件を付けてある。
人数が揃わなかったっていうのもあるがまあ、こっちにもこっちの思惑ってのもあってな。
…一応そこに、戦闘には参加できねえが案内役を用意してある。あたしと戦闘をする前に、本来ギンヌンガで生み出される強化人間「ファフニール」、その適性テストに類する試練をやってもらうぞ。
テスト中は遺跡からは出ることもできねえから、準備はしっかりして来い。もっともどういう理屈かは知らんが、その場所にいる限りは腹も減らねえしトイレに行きたくもなくなるみたいだから、その辺りは安心していいよ」

出がけにかごめから言われた話が脳裏をよぎる。
四人は顔を見合わせ、透子が口火を切る。

「腹も減らないトイレにも行く必要ないって、まるで柱の試練みたいだな」
「うみゅみゅ? とーこもジョジョ解るめう?
めうもそれ一番に思ったお。めうもイブブも第二部派めう!」
「あたいは圧倒的に一部だね。けどまあ、二部は確かに読みごたえはあったよね。神砂嵐とか柄にもなく練習してみたりもしたっけか」

他愛ない会話を交わしながらも、その厳かな雰囲気の中、辺りを見回す透子。
言うまでもなく、かごめのいう「案内人」を探しているのだろう。

「そういえば…案内人の方、いらっしゃいませんね。
その方が戦闘に参加できない、という事は、その方も守りながら進めという事になりますけど」
「うんまあ、あまりそれ考えないことにしてたんだけどさ。
そうなると厳しいな、つぐみはともかく、ある程度戦い慣れてるとはいえあたい達は基本的に初心者に近いわけだし。
いざとなれば一人でも安全な場所に逃げててくれるほどのひとであってほしいんだが」
「……多分、その心配いらないんじゃないかな」

何かに気が付いたらしいつぐみが、部屋の隅へおもむろに歩いていき、しゃがみこんで笑う。
その行動をいぶかる透子も、その視線の先にいる「人物」の姿に理由を悟り、苦笑する。

針ちゃん先生めう!
「どうやら待ちくたびれて眠ってしまってたみたいですね」

部屋の片隅に、かごめがあつらえたのだろうジーンズとデニムジャンパー姿の、人形のような姿と大きさの少女…少名針妙丸が、壁に寄り掛かって気持ちよさそうに寝息を立てている。
恐らくはここで彼女らを待つよう指示されたのだろうが、待ちくたびれて眠ってしまっていたのだろう。

つぐみはそっとその肩を揺らす。

「起きて、針さん」
うにゅ……はっ!!( ̄□ ̄;)
ごめんなさい私すっかり」
「謝るのは私達の方だよ。
ごめんね、待たせちゃって」

寝ぼけまなこをこすりながら慌てて飛び起き、平謝りする針妙丸に一同も苦笑を隠せない。

「そっか、針妙丸さんだったらしょうがないか」
「このサイズでめうたちといっしょにバトルしろといっても無理難題にも限度ってあるめう。
でもいざとなれば、誰かの服のポケットの中に逃げてもらう事もできるめう」
「じゃあ、針さんが案内人ってことでいいんだよね」
「あ、はいそうです。
見ての通りすいません、戦闘のお手伝いはできませんが一応、皆さんの試験の見届け人も申しつけられてます。
私の方でもこの先については色々調べてきましたんで、その都度アドバイスはしてもいいということですから…はわっ」

つぐみはその小さい身体を掬い上げると、かごめが普段そうしているように彼女を、上着の右ポケットの中へと納める。

「多分このメンバーだと、私後衛になるだろうから針さんは私と一緒に行くことにするよ」
「ですね。
私達もそんな防御面に自信があるわけじゃないけど」
「めうも前衛にいくお。
3人で前に立つから、つぐみんの回復スキルが頼りになるなりよ!」
「うん、まかせといて!
私が後ろにいる限り、誰ひとり落伍者なんて出させないから!

何時か、幻想の世界を束ねるその賢者が言ったセリフを…つぐみは勝気な笑顔で告げる。


頷きあう四人は、そのモニュメントへ手をのばす。
次の瞬間、四人は磁軸に触れた時のような浮遊感を一瞬覚え…そして、その場から姿がかき消えた。

場に残るのは、静寂に包まれ、光を失ったそのモニュメントのみ……。



「狐尾幻想樹海紀行 緋翼の小皇女」
第十七夜 ギンヌンガの試練




諏訪子「どーもいつもの諏訪子さんです。
   …おい、とうとうこれすらやる奴いなくなっちまったじゃねえか。さとりとか本当にどうなったんだ?」
静葉「まだ原点復帰してないみたいだし、ヤマメが付きっきりで様子見てるわよ。
  正気に戻るたびに暴れ出しやがるから、いっそこっちのお空を連れ出して鎮静させるしかないんじゃない?」
諏訪子「あの連中なら事情を話せばお空寄越してくれるかも知れんけど、それはそれでかえって面倒なことにしかならん気はするよな。
   まあいいや。今回はメインというかギンヌンガなんだけど」
静葉「本家ストーリーだと、ベルトランの過去が全てわかる重要なあたりよね。
  オープニングムービーでベルトランをクロエが追いかけるシーンがあるじゃない、実はあそこがこの場所みたいよ
諏訪子「というかこの長い道のりを回復抜きで踏破しろというあたり、シリーズ通しても類を見ないくらいの鬼畜仕様だな」
静葉「回復どころじゃないわね、中断セーブを除けば、セーブもできないわよ。
  挙句このシナリオを終えて、街に帰った時に流れるムービーが終わりきらない瞬間にフリーズする事例も多く報告されていて、多くのボウケンシャーが精神的にhageたとか
諏訪子「おいそれ笑えねえぞ」
静葉「一応、3Fを踏破して樹海時軸まで辿りつけば、そこでセーブは可能よ。
  だから、その後のイベントからボス戦に備えて、磁軸では確実にセーブしておくことね。何しろ報告が多数挙がってながら要因不明、いつなんどき起こるかわからないばかりでなく、年末のver1.1への追加パッチでも修正されてないそうよ(射命丸メモ:2015年2月にver1.2も配信されてますが、それでも修正されているかどうかははっきりしていないようです)。
  フリーズが起きてもいいように、セーブできるタイミングでしっかりセーブしておけ、ということね」
諏訪子「ただでさえFF3の最終ダンジョンめいてる場所だというのにか…わけわからんな。
   もっともクラシックなら関係ないんだろ、そもそも、四人で突っ込む必要性だって薄い場所だよな?」
静葉「というかちゃんと五人パーティで挑めるから、直前のスキュレー戦に比べるとそれこそオアシスみたいなもんよ。
  というか今回も今回でスキュレーが十分過ぎるほど狂ってたしね
諏訪子「そりゃあそうだろ、居る場所が明らかに場違いな事に定評があるボスだからなあいつ。
   おハルさんことハルピュイアの影を薄くしまくってるのは主にスキュレーとジャガーさんなんだし」
静葉「同じ四層ボスで鳥なのにイワォロペネロプとの差は何処でついてしまったのかしらね」










「…ここは?」

つぐみ達が気が付いた時には、別の広間だった。

先に進む扉が確認できるものの、そこには他に出口めいたものはない。
そこは不思議なオーラが立ち込め、まるでこの世の場所には思えない雰囲気を醸し出している…。


-お前達か。
異界より来た、人ならざる者達とは。
人間も僅かに混ざってるようだが…まあそんなことは今はどうでもいいことか-



その時、フロアの何処からともなく声が響く。
厳かな、女性の声にも聞こえるその声に美結が返す。

「あなたは?
それと、一体ここはなんなんです?」

-私は「黒の護り手」。
ここは…ファフニールの揺り籠。本来なら、印持たざる者が足を踏み入れること許されぬ禁断の施設だ。
…なれど、それも過去の話。もはやこの地はその役割を既に終えておるのやも知れぬ-


「どういう事めうか?」

-今から百年ほど前、この地で新たな「ファフニール」を生まれさせる儀式が行われるはずだった。
しかし…権と力に毒された人間達は、己の欲望のままに儀式を不完全な力で終わらせ、結果この施設で育まれるはずだった「ファフニール」を生みだす力も、大きく失われてしまったのだ。
それまで、周囲の魔物を侵入させないようにされていた機構も既に機能しておらず…それどころか、この施設の持つ力で、住みついた魔物たちをより凶暴化させる始末…その事が解れば、今の人間達であればこの施設を破壊することで禍を避けようとするだろう-


その声は…何処か憂いを帯びてるようですらあった。
声は、なおも言葉を続ける。

-異界の娘らよ。
印を持たざる汝らは、我が待ち続けし者ではない。
だが…その印を持たずとも、今だ目覚めぬ強い力を…「ファフニール」をはるかに超える力を、その身に宿しているような気がする。
汝らより前に、この先を越えていった者のように-


少女達は、それがかごめの事を言っているのだろう事を理解する。

-その者は言った。
これからこの地へ、四人の娘がやってくる。
その娘たちの力を見定めて欲しいと。
これも何かの縁であろうと思う…汝らがこの地で何を見出すのか…もしかしたら、失われし希望の光が、再び灯される事があるかも知れぬ-


やがて…正面の扉が独りでに、重い音を立てて開かれる。


-この地には結界が張り巡らされており、汝らの異能の力をもってしても、この地から外へ出ることはできぬ。
この試練を越えねば、汝らに待ちうけるは絶対の死…この場に来た事は、その覚悟ありと受け取ろう。
進むがよい…そして、我にその力を見せてみろ…!-



四人は顔を見合わせると…透子の差し出した手に次々と手を重ねていく。

「試練はここからが本番だ。
何が待ちうけているかは知らねえが…」
「こんなところであっさりと死んでしまうのなら、折角、人間としての死を放棄した意味がなくなってしまいます。
それに」
「…めうも知ってる。閣下は、ヤメメさん以上の強敵めう。
こんなところでゲームオーバーになっているようじゃ、きっとあの目の前に立つことすらもできないなりよ…!」
「今の私達四人でも、毛ほども勝てる気がしない相手だけど…でも、お母さんはずっと待ってるんだ。
自分を越えていく若い世代の力を。

だから、私達がどれだけすごいのかを、行って見せつけてあげなきゃね!」

つぐみの手を伝って、針妙丸もその小さな手を重ねて告げる。

「参りましょう!
あなた方の戦いは、僭越ながらこの少名針妙丸が見届けさせていただきます!
「応ッ!!」

そのフロアに力強く響く、四人の気合の入った掛け声が、それに答える。
そして、針妙丸をローブのポケットに納めるつぐみに続いて、四人はその先へと駆けていく…!

試練は、幕を開けた。



だが…。



透子「勇んで出てきたところいきなりで悪いけど…」

透子は通路の一角、十字路めいたその場所を指差す。




透子「なんですかね、コヤツは^^;」
めう「こんなあからさまなトラップ系FOEも珍しいめうね。
  きっと多分、このFOEが正面を向いてる方向に壁めいて存在してるんじゃないかと思うめう^^;」
美結「壁に擬態してるFOE、ですかね。
  一応、こっちには気づいてないみたいだし仕掛けてみます?」
めう「…めうもあまり言えた義理ないけど、戦略的撤退のできない状況でいきなり未知のFOEに挑むのは難易度たけーめう…。
  というかみゆゆー、なんかあの日から少し性格変わっためう?」

透子は苦笑しながらも、別の角を目指そうと少女達を促す…が、つぐみは袖を引っ張られる感覚がして、針妙丸を見やる。
彼女が真っ青な顔で一行の背後を指差すほうへ、振り向いたつぐみの目にもそれが飛び込んできて絶句する。

そして…それに気付いた全員が振り返る。




♪BGM 「戦場 一重向こう側の死」♪


全員「( ̄□ ̄;)なんかきたあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!???」


そこには猛烈な勢いで突っ込んでくる、目の前にいたイモ虫めいた巨大な魔物であった!

狩り立てる圧壊者のヒキョウなアンブッシュ!
狩り立てるイモ虫めいたなにかは目玉がいっぱいついててこっちにガンくれてきてるから逃げられる気配はにい!!
こいつ絶対忍者だろ…汚いなさすが忍者きたない…!


透子「結局戦わなきゃならないんですね、わかります(しろめ」
美結「っていうか逃げられないのまでは聞いてないですから!!><
  なんですかこれ!? 一体何なんですかこれ!?」
めう「アーケードの選曲は一度決めたら変えられない、基本めう(キリッ
つぐみ「そんなの今関係ないでしょーが!!><」








諏訪子「なんだいこの急転直下な」
静葉「でも配置によってはこういうギャグみたいなこと、実際起きるからここ。
  一応このFOE、普段は壁になりすましてるけど、背を向けると正体をあらわして二倍速で突っ込んでくるわ。
  索敵範囲はかなり広いみたいで、その正面に当たる路地に侵入した時点からこっちに反応して、扉や抜け道を通って別区画に行くまで追いかけてくるわ。でも、こっちが相手と向かい合わせになってると、動きを止めてしまう性質があるの」
諏訪子「基本が追尾・強でプラス特殊行動が混ざるタイプか。
   後ろ向きで逃げようとすると確定で奇襲を喰らうってことね」
静葉「それどころじゃない。
  このFOE、ある特定行動のターン以外は逃げることもできないっていうおまけつきよ」
諏訪子「なんだそれ?」
静葉「特殊パッシブらしいものを持ってて、逃げようとすると「千の監視で逃げられない!」って出て、必ず失敗するの。
  威力高めな全体近接壊攻撃の「押しつぶし」しかしてこないけど、何の対策もしてないと2回も喰らえばパーティが壊滅するわね」
諏訪子「つまりこいつを避けながらなんとか進んでけってことか?
   捕まったらその時点でhage一直線じゃねえか」
静葉「一応角鈴や、猛進逃走を使えば逃げることは可能よ。
  あと、3の倍数ターンにリフレクトガードっていうカウンター攻撃を使うけど、そのターンも特殊パッシブ「千の監視」が発動しないから逃げることができるの。
  HPはおよそ9000、物理は通りが悪いけど属性攻撃全般に弱いわ。戦う気ならば防御の号令や聖なる守護の舞曲で防御力を上げて、リフレクトガードの反撃を避けながらダメージを重ねていくことね。勿論全体回復も必須よ」
諏訪子「あえて聞くが、リフレクトガードのターンにうっかり攻撃するとどうなん?」
静葉「ダメージはすべて無効化された挙句、攻撃された回数分威力が増す全体無属性攻撃で反撃されるわよ。
  勿論決して小さいダメージじゃないっていうか、発動すれば確実に壊滅するわね」
諏訪子「うんまあ、知ってた(しろめ」
静葉「まあそんなこともあって流石に最初の踏破だけは、ピクニックで乗り込んだわ。
  一応踏破して街に帰れるようになってからエキスパで狩ったけど、エンカウント写真はその時のものね。透子にはこいつのドロップから作れる盾を装備させたけど、そのお陰でなんとかhageずに終わったというか…やることは単調なんで実はそんなに狩るのは難しくないわ。
  むしろ、このフロアに登場するザコ…ぶっちゃけ、アホロートルの存在が非常に面倒くさい
諏訪子「アホロートルって、ウーパールーパーのことだっけ?」
静葉「確かにそうだけど、っていうかあなたがそんなボケを返してくるなんて珍しい事もあるものね。
  能力も低く何もしてこない上、大体一撃で倒せるけど、こいつを倒すと死に際に「破滅の光」を使ってフォースゲージを消してしまうの。
  街に戻れない環境でフォースゲージがなくなる事が如何にヤバいかなんて、説明の必要はないと思うけど」
諏訪子「えっじゃあこいつと当たったら逃げるしかねえじゃん」
静葉「ところが、何もしないでいるとそのうち「祝福の光」を使って勝手に自滅するのよ。
  で、その祝福の光の効果は、破滅の光と逆でフォースゲージを無条件復活させるの。
  勿論、別の要因でフォースゲージを消してしまっていた時もよ
  つまり…」
諏訪子「ストーリーならある程度戦ったらわざとアリアンナのブレイクを使って、アホロートルにエンカウントしてフォースゲージを復活させるのか
静葉「御名答。
  ファフニールのウェイブとフォースブレイクを使って圧壊者を蹴散らして、アホロートルに回復してもらうという抜け道もしっかり用意されているの。多分、それを駆使していかないとなかなか探索が進まないと思うわ。
  勿論、このフロアの雑魚、御馴染のカマキリとかカボチャとか、見た目だけで精神的hage余裕、戦えば普通にhageさせてくるような連中も多数出てくるから」
諏訪子「どっちにしてもHARDには変わらないんですね解ります。
   ああそうだ、ちょっと気になってたけど配置によっては圧壊者にバックアタック仕掛けることもできるよな?
   その時も「千の監視」はトリガーされるの?
静葉「されるわよ。狐野郎は実際試したけどターンの無駄になるとすぐに覚ったわ」
諏訪子「ですよねー(しろめ」
静葉「話は戻るけど、狐野郎はアホロートルの特性を知らないで片っ端から倒して回ったから、探索中はずっとフォース抜きで踏破したみたいよ。
  ピクニックでなかったらと思うとゾッとするわね。
  透子の超核熱、美結のトランスからのローズプリズン抜きでよくもまあやったと思うわ」
諏訪子「つかこの四人揃いも揃ってフォースが超強力だからな。
   アホロートルをうまく使えばもっと楽に進めたんじゃねえのかな、こりゃ^^;」










つぐみ達は入り組んだ迷路の中、時にナゾの両生類めいた生物の所為で必殺技を封じられたり、圧壊者に追いかけ回されながら四苦八苦の末、ようやくもう一方の行き止まりめいたフロアへとたどり着く。
そこには…樹海で良く見られた不可思議な装置、樹海磁軸がそびえ立っている。



-帰ることのできぬ試練の間をよくぞ潜り抜けたようだな。
危ういところもあったが…その力、見せてもらった。
故に禁足を解き、現世に戻る事を許そう-


何処か呆れたような、そんなトーンの声が響いてくる。

めう「ふぃー…これにてようやく第三部完ッ!めう…」
透子「お前本当にジョジョ好きだな…でもそれ死亡フラグだからな?^^;」

-お前達がいかな理由でこの地へ足を踏み入れたかは解らぬ。
いつか来た、翼持つ闇の少女の如き力でなくば…と思ったが、汝らはそれに十二分に匹敵するか、ややもすればそれ以上の力を有しているのかも知れんな-


つぐみ「…それって、まさか」
針妙丸「多分…フランさんの事だと思います。
   フランさんは、確か紅のドラゴンハートを宿している筈…この遺跡で生み出される「ファフニール」とは、世界樹ユグドラシルの根元に住まい、巨人族の財宝を護る知恵ある悪龍の名前。
   英雄アキレウスはその血を浴びて、くるぶしを除く全身の不死性と、人ならざる者達の言葉を理解する力を得た」

-その通りだ。
この施設の真の目的は…いずれ世界樹が生み出す「禍」を、人を越えし龍の力を宿した者の力で討ち果たす為にある。
もし汝らがそれ以上の秘密を知りたいと思うのなら…この先へ進み、汝らを待ちうける者と戦うのだ。
…その時、この施設の役目は終わりを告げる。
そして、知るであろう…汝らに課せられる使命を-


美結「使命…か。
  本来なら今頃、私はもう何もわからない状態になって…迫りくる死を待つだけだった。
  折角この先もずっと生きてくチャンスをもらっておきながら、いきなりそれを捨てに行くつもりになってるとか。
  本当に、どうしちゃったんでしょうね、私」

振り返った美結は困ったように笑う。

美結「ううん、私はずっとこういうの、夢見てたんじゃないかって思う。
  もしずっと、この先も生きていけるのなら…大好きな友達を守れる力を身につけて、その子達を守っていきたいって。
  …でも現実は、何時だって残酷なもの。そんな力が持てたって、みんな怖がって近づかなくなって、私はひとりぼっちの恐怖とずっと、戦っていかなきゃならなくなることだって
つぐみ「そんなこと…ないよ!
   美結ちゃんがどうなったって…美結ちゃんは私の友達だって変わらないんだから

つぐみがその手を取って諭す…が、重ねられた手はその一つではなかった。

透子「あんただけじゃないだろ。
  あたい達も、だ」
めう「イヤだって言っても、めう達はそんなのお構いなしなのだ。
  いこう…私達四人で、この先へ! かごめさんだって待ってる!!
美結「……はい!!」


覚悟が定まった四人…そして、針妙丸も、そのまま重ね合わせた手を磁軸へのばす。







辿りついたその場所は、先程と同じような何もない部屋だった。
違いがあるとすれば…目の前にそびえる樹海磁軸。

そして…目の前の扉の向こうから、少女達がよく知るその魔力が感じ取れる。



♪BGM 「決戦 世界の行く末」(SSQ)♪


「待ってたよ、あんたたち」

その扉が厳かに口を開け、その向こうに立つのは…つぐみ達もよく知るその声の主。

「おまたせ、お母さん」

つぐみはその女性に微笑みかけると、ポケットにいた針妙丸をそっと、その床へと解放する。

「針さん、ちょっと離れてて。
知っての通り、お母さんが全力で動きだしたら…私もただでは済まないと思うから」
「つぐみさん…」

哀しそうな目で見上げる小人の少女に、つぐみは諭すように笑いかけ、頭を撫でる。

「見届け人、お疲れさまでした。
でも…まだ、針さんにはこの戦いも見届けてもらわなきゃだから…ね、どうせさとりさん、いるんでしょ?
針さんの事、よろしくね」

その言葉に応えるように、背後にゆっくりと、黒いローブを身につけたさとりが姿を現す。

「あなたも本当に、タルシスからさらに力をつけてきていますね。
…私もその為に此処であなた達を待っていたのです。
美結さん、透子さん、めうさん…そして、つぐみ。
見せてください、あなた達が…幻想界最強の力を越えるその瞬間を!


針妙丸を抱き上げると、さとりは穏やかながら、強い意思を秘めた表情で四人に告げる。
四人は頷いて、そして…かごめの方へ向き直る。


「ここからは、もう引き返しができないね…!」
「イベントはもう終わらせてきたお。
もう今のところやり残したことはないけど…コンマイだからどうせ次のイベントはやってくるめう。
だからめう達の冒険はこんなところで終わらないっ!終わらせないっ!」
「力持つ先人は、必ず若い力にどんどん追い抜かれていかなければならない…お母さんの、口癖。
でも、お母さんはデタラメなくらい強いから。
…そのデタラメを、何時までもデタラメなままにしてなんておけないから…お母さんも、それを待ってる!

各々の武器を構え、呼応するようにその場の者達の闘気が高まっていく。


美結は目を閉じる。

この短い間に起こった様々な出来事が脳裏に去来する。
その暗転した意識の先に…何時か夢の中で出会った、蒼い髪の浪人風の男が笑いかける。

-どうだい?
俺の言ったとおりだったろ。
オメエは死ぬ運命になんてなかった…否、死ぬ運命を覆して今そこにいるんだ。
…もう、オメエを縛るものなんて、なんもねえ…目の前の馬鹿野郎に、お前の抱えてきた思いを総てぶつけてやれ!-


美結は笑って返す。


「ありがとうございます、六さん」


呟いて目を開けた先には、新たな道しるべとなる偉大なる先達。
振り上げた腕の先に、彼女の力が紅い刃となって顕現する。


「行きます!」


紅い刃を纏う少女が、かごめの抜き放った刃と散らす火花と共に…未来を託す者と託されるものの戦いが幕を開ける。









静葉「というわけで次回に続きます(キリッ」
諏訪子「あいつ何時デミファフニールになったんだよ(しろめ」
静葉「いや多分まともに考えたらそれよりずっとタチ悪いんじゃないかしらねこいつ。
  ああ、この子達のスキルとデミファフニールのデータについては、次に触れるけど…ここでは、B4Fの解説もしておこうかしら」
諏訪子「えっすぐ戦えるわけじゃねえのか」
静葉「ええそうよ。
  因みにストーリーでも、B3Fを突破して「境の扉」…B4Fに行ける磁軸があるフロアの前にある扉の前で発生するイベントの後に街に戻ることができるわ。ただし、すごく長いイベントの後、ベルトラン抜きでB4Fの探索をさせられる羽目になるけどね」
諏訪子「それはそれできっついな、メンバー一人減らされてそれがよりにもよってタンク役か」
静葉「イベントに関する話はここでは割愛するけど、デミファフニールと戦う間に入るために、フロア中央部の四つの「鍵」のポイントを調べる必要になる…しかも、一個解放するとカボチャFOEが登場してくるわ」
諏訪子「あ、雑魚でだけじゃなくてFOEのカボチャもいるんだ(しろめ」
静葉「流石に「ハイラガの悪夢」と呼ばれた乱入祭りはない、純粋な巡回型なんだけど…壁があると壁の先へワープしてくるという厄介な性質があるわ。
  もっと言えば、HPは6000弱と昔のそれよりもはるかに高い分、面倒な耐性は持ってない。混乱が効くから、先手取って混乱させるのがいいわね。
  ランダム壊攻撃とか、全体腕・脚封じとか面倒な攻撃を仕掛けてくるから、あまり長引かせても危険よ。ただ、こいつと戦う頃には美結のミラージュバイトを伸ばした挙句霊攻大斬を持たせてたから」
諏訪子「トランス霊攻大斬か…」
静葉「レベル40くらいになってたけど、エキスパでも1600くらいのダメージが出るから相当な破壊力よ。
  ここまでになってれば普通に狩って進んだ方が速いわね。こいつの素材からはそこそこ威力の高い弓が作れるけど、第四階層に入ってじきにもっと強力な弓が作れるようになるから、要らないって言えば要らないっていうか…うん、まあその辺は次に回しましょうか(露骨に目を逸らす
諏訪子「いやもう、大体何が起きてるのか予想つくんだけどな…あえてわめき散らすのは次にしといてやる(しろめ
静葉「というわけでカボチャを蹴散らす…もしくは避けて総てのポインヨを調べ終わると、磁軸の近くに会った開かずの扉が開いて、ボスであるデミファフニールとの戦闘よ。
  ストーリーは此処から佳境に入っていく。ベルトランに過去何があったのか、ファフニールの騎士やそれに関わる儀式とは一体何なのか、ギンヌンガの真の目的はなんなのか…そのすべてが明らかになって、最高に盛り上がるところね
諏訪子「で、バグによる精神的hageも待ちうけているポインヨでもあると」
静葉「うんまあそうなんだけどさ。
  じゃ、今回はここまでよ。次はまたしても茶番重視になるんじゃないかしら」
諏訪子「まただよ(しろめ」