〜ある日の狐尾紅茶館〜
魔理沙「なんか久しぶりに此処へ戻ってきた気がするなあ。
というか、そもそも戻ってくるの何時ぶりだったっけ(しろめ」
みとり「それもう考えるの禁止(しろめ
ところでこの樹海キュウリってないのかって今頃思ったんだけどそのへんどうなんだ」
魔理沙「至極どうでもいいな。
おい文、フラン達は何処行った?」
文「( ̄□ ̄;)ビクッ!!
あ、え、ごめん、なんだって?」
魔理沙「………………何キョドってんだおい」
文「あ、そうそう明日の天気ね、明日はえーと(目がバタフライ」
みとり「誰もそんなこと聞いてない。
…ああ、そう言えば文、お前ここまでずっと使ってた弓はどうした」
文「( ̄□ ̄;)(ぎくーっ!)
あ、ああアレね、随分弦の張りも弱くなったからちょっと工房に調整を」
魔理沙「じゃあこの弓は一体何なのぜ(#^ω^)」
文「( ̄□ ̄;)あやああああああああああああああああ!!??
待って何時の間にあんたってちょっとごめん黙ってたのはごめんそれめっちゃ高かったから返してえええええ!!!」
…
文「すいませんお金使いこんですいません(アクロバティック土下座」
てゐ「あー、うん、そのだな。
確かに後列支援役でも良いものを装備して火力上げるっていう趣旨は私も悪くないと思うんだ。
だからって43万エンも黙ってつぎ込むとか流石に私のシマでもノーカンだわ(#^ω^)」
ヤマメ「あ、うん、そのね。
私もそういうのはよくないんじゃないかなーって(後ろ手に何かを隠している」
かごめ「……お前もあとで裏口に来いやコラ……(#^ω^)ビキビキ」
「狐尾幻想樹海紀行 緋翼の小皇女」
第二十夜 氷樹海の向日葵
ヤマメ「(返事がない…スマキにされて軒先に吊るされているようだ…)」
諏訪子「おいあいつ何やったんだ?」
さとり「ああ。
なんか私達の知らない間に資金ちょろまかしてクリムゾンイーター買ってたみたいですよ」
諏訪子「……なんかもうどっからツッコんでいいのか私にもわからんな。
新芽クエストの報酬額が異常なのはわかるがどいつもこいつもヤンチャし過ぎじゃないか?」
さとり「あ、どうやって魔人を1ターンキルしたのかとかそっちはどうでもいいんですね」
諏訪子「簡単だろ、ピクニックなら静葉のパワーゲインが決まれば一撃必殺なんだろうし。
…さて、今回も一応クエストとかなんだけど、正直めぼしいものがいっぱいあり過ぎるのも問題だよなあ。
ムベンガクエストは簡単に触れたけど」
さとり「あとは美食王、祭りのトリガーになるクエストとかは?
「新規メニュー開発依頼」と「祭りの前に」でしたっけ」
諏訪子「前者は前提として渡される「洋の三章」の全メニュー完成、後者は四層伐採レアを10個も持って来いって奴か。
前者はアレだな、ネックになる食材は巨眼の涙。虚空を見る邪眼のドロップ食材だな」
さとり「要は三層で作れる洋食を全部完成させろっていうものですけどね。
何気にこの依頼人の喋り方が腹立つというかなんというか」
諏訪子「まあいいじゃないか、実際は肉好きの気のいいおっちゃんみたいだし。
なお大体最後に残るだろう発酵怪魚パニーニ、四つ葉茶ほどじゃないが経験値アップの効果がある。控えメンバーのレベルを余計に上げたくない時には十分有効だな。そもそもあの目ん玉そんな強くねえっていうか、こいつ元々第一階層通常敵だったイビルアイだからな。
もっとも、イビルアイはラフレシアと並び称される第一階層のトラウマのひとつだったんだが」
さとり「四層伐採は…まあ、トレードで高レベルの野生の勘を押さえてあったので、あとは新芽茶で一気でしたね。
ミニイベントでゲットできる個所もありますし」
諏訪子「ただこの伐採レア「花枝の材木」は強力な鞭の素材にもなる…が、まあクリムゾンイーターもDLCあれば結構簡単に買えるからな。
素材を取るのが面倒なものの、五層入ればじきにクイーンズボンテージもこさえられるし、ダクハンのTP不足を補えるクリムゾンイーターと、比較的高速で再トランスの準備ができるクイーンズボンテージとどっちがいいのかは私にもわからん」
さとり「うーん…確かに、悩ましいところではありますよね。
一応スキュレーのレアドロが最強鎧の素材、五層で場合によってはすぐに戦えるしっこくさん(漆黒の魔騎士)のレアドロが最強小手の材料で、クリア前に最強の品目がなから揃う鞭ダクハンとは本当に一体何なんでしょう」
諏訪子「何気にかごめの野郎が取る気満々だけど、一応アグネヤストラもクリア前にゲット可能だよ。
たぶんその時はまたお前さんに頑張ってもらう事になるだろうが」
さとり「えーめんどくさっ(´Д`)」
…
〜棘魚亭の奥部屋〜
貴族「どうやら依頼を果たしてくれたようデプね。
流石、ダンフォード様が目をかける超一流冒険者は格が違ったデプ」
幽香「どうでもいいけどその喋り方どうにかならないのかしら(#^ω^)」
透子「まあまあ抑えて抑えて^^;;;
でも…あんたはいいのか?
何処の国を見ても、結局国家上層部なんてのは要人連中の足の引っ張り合いだ」
貴族「君は、歳のわりには鋭いところを突いてくるデプね。
ワタクシはただ、美味しいものを食べたいだけだし、皆にも美味しいものを食べてもらいたいと思っているだけデプけど、残念ながらそうは思ってくれない者もいるデプ。
もしこの依頼を公にしてしまえば、ダンフォード老のご迷惑になることは勿論、レジィナお嬢様も痛くない腹を探られ御不快になられることは火を煮るより明らかデプ。
だから、あなた方もこの件は内密にお願いするデプ。ああ、勿論報酬の心配はいらないデプよ、店主には申しつけてあるデプから、遠慮なく受け取るデプ」
店主「話はついたみてえだな。
まあ、なんだな…俺みてえな市井の酒場の親父からすりゃ、ちといけすかねえしゃべり方をするが肉好きの憎めねえオッサンなんだけどな…お偉い人達も、色々抱えてるってことなんだろうな」
透子「…そういうもんだろうか」
店主「俺も長いこと、カウンターからいろんな奴を見てきたが…嬢ちゃんくらいの歳で、同じぐらい色々と抱えてきただろうって奴だって何人も見てる。
…九割方、樹海からは帰ってこなかったがな。
だがよ、そいつらと違ってあんたには、頼れる仲間が居るんだ…その事を、忘れちゃいけねえぜ」
透子「……うん」
店主「っと、なんか柄にもなくしんみりとした話になっちまってたな。
とりあえず、今のところ他に依頼になりそうなところはねえが…」
幽香「肝心なところで役に立たないわねえ。
…こういう気分の時は、後先考えずにひたすら暴れ回りたいものだわ」
めう「えーあれだけ氷樹海でFOE狩りしてきたのにまだやるめうか…?(しろめ」
店主「っはっはっは!姐さんらしいちゃらしいな。
でもま、平和が一番だぜ何事も…」
美結「…あれ?
でもここに張り紙が一枚」
アントニオは慌ててそれを隠そうとするがゆうかりんさんは一足早くそれを破り取った…。
幽香「どれ…何よこれ。
娘の病状が良くないので、氷樹海の空気の良い所に連れて行ってくれる冒険者募集中…ナニコレ?」
店主「ん、ああ…見つかっちまったか。
それなあ、ある意味ではかごめの姐御に読んでもらいたかったんだがなぁ」
つぐみ「お母さんに?」
店主「ああ。
あの姐さん方、ほとんどフロース専属の冒険者みたくなってるところあるからな。
あのオバはんとこの娘、昔っから身体弱くてな。これまでは薬で誤魔化してたが、やはりというかどうしても空気の良いところへ連れて行ってやって、そこにしばらく置いてやる必要があるみたいなんだわ。
その絶好の場所が氷樹海にあるってんで、当然それなりの実力がある護衛が必要になるわけだが…色々あって、これまで氷樹海をメインに活動していたエスバットが現在行方不明、狐尾のメイン探索部隊は立橋から戻ってきやがらねえ。他にそのくらいの実力があるのは間違いなくあの姐さん方…「森狼」だけなんだが」
幽香「聞き捨てならないわね…かごめの実力は私も認める所だけど、あいつ以外に人なしとは言ってくれるじゃない。
いいわ、その護衛私達で受ける」
美結&めう&透子「ゑっ」
つぐみ「えちょ待って幽香さん。
確かフロースの宿の子って…一度会ったことあるんだけど、結構人見知り激しくて、うちのお母さん達くらいにしかヨソ者には心を開かなかったって、宿の女将さんが」
幽香「つぐみは会ったことあるんでしょ?
じゃあ、問題ないじゃない。あなたならどこぞの黒髪のアホと違って、初対面の女の子にやれ破壊神だ魔王だなんて無駄に恐怖を煽るような紹介しないでしょ?」
美結「(あ、実は気にしてるんだ…^^;)」
つぐみ「まーそりゃそうだけど…お母さん結構自分達の話とかしてるって言ってたからなあー」
…
〜六花氷樹海〜
クオナはつぐみの後ろに隠れたまま怖がって出てくる気配がない…。
つぐみ「うん、まあ、知ってた(しろめ」
美結「私もそんな言えた義理ないですが…って幽香さんが暗い!!( ̄□ ̄;)」
幽香「(暗い表情でぶつぶつ呟きながら氷の塊を殴り続けている)」
めう「第一声でいきなり魔王呼ばわりされたらそりゃあショックめう」
透子「あたいも確かに一番最初はかごめさんに色々吹きこまれた気はしたな、そういや。
…けど最近になってようやくわかってきたんだけど、意外と子供受けは悪くないらしいんだよな幽香さん」
幽香「意外ととかいうな意外ととかー!!><(透子の口の両端を滅茶苦茶に引っ張っている」
美結「( ̄□ ̄;)うわああああああとーこさんの顔がわりとえらい事に!!」
めう「やめるめう!これじゃ余計に怖がらせるだけめうー!!><」
クオナ「(((´Д`)))ガクガクブルブル」
つぐみ「だ、大丈夫だよただあのひとじゃれてるだけだから! 怖くなんてないから!!><」
めう「じゃれるといってもディノゲーターさんと一緒のレベルめ(ゆうかりんさんにヘッドロックで捕まる」
つぐみ「( ̄□ ̄;)あんたも目の前で追加の地雷を踏み抜くなあああああああああああ!!!」
美結「ああもう収拾がつかないよう('A`)
…あれ? あんな所に魔物の群れが」
よく目を凝らして凝視すると雪にまぎれて魔物の群れがH体でいいところを謙虚ではないようで10体ほどいるようだった
おもえらチャンスだから魔物に奇襲しても良いぞ?
美結「チャンスとか言われてもなあ」
つぐみ「大抵の魔物は幽香さんひとりでどうにかしてくれるからいいけど…クオナちゃんを連れているところでこの数は正直相手したくない所だよね」
美結「そうですね…気がついてないようですし、こっそり離れれば」
ところがおもえらが謙虚にも大人の対応をしようとしたら背後からヒキョウにも不意だましかけてきた雪の塊がいた
どうやらここはコリブリみたいにこの雪人間英語で言えばスノーマソの無限湧きポイントらしかった
なんにしてもこの数が一斉に不意だましかけてきたら危険が危ないなんてもんじゃないこいつら絶対忍者だろ(ry
透子「囲まれた!?
くそっ、見えてたのはオトリか!」
つぐみ「一角を切り崩して逃げよう!
クオナちゃんは私からはな…」
幽香「待ちなさい。
ここは…一か八か仕掛けるわ。
あなたはその子を護る事だけに専念なさい!」
つぐみ「幽香さん!?」
しかしゆうかりんさんはおもわず見えそうになる歴戦の猛者のオーラを全開にしてスノーマソ共の前に立ちはばかった!
アワレにも数をたのみに一斉不意だましようとしていたスノーマソどもは「このままじゃ勝ち目はにい」「やはりナイトがいないとダメ」とばかりに今度は合体して巨大スノーマソになったようだった
美結「( ̄□ ̄;)ちょおま」
めう「ま、まるでキングスライムめう」
透子「いやそれあたいも思ったけどすでにそのネタ通過してっからな、結構前に」
それでも我らがゆうかりんさんはそんなししおどしなど効かぬ媚びぬ顧みぬといったように百戦錬磨のメンチを切っている
このおれもかつては北海道の不良の頭をしていてリアルではモンクタイプとして裏世界で伝説を作ってきたが
実際このゆうかりんさんの方が実際えごいと思った(リアル話
美結「というか…周りの気配も全部消えた…?
まさか、この周辺にいた魔物も全部合体したんじゃ」
つぐみ「じゃあ、単純にあいつ一体になったってこと?」
美結「だと思う。
もしかしたらあの図体だから…今なら簡単に逃げられるかも」
ところがゆうかりんさんは一歩も引くことなく大マサカリを肩にかついでメンチ切りながら魔物へと近づいていく
この迫力には流石におれもビビッタしきっと目の前の巨大スノーマソはおれ以上にガタガタしていたにちがいない
Hai!経験値ロストこわいですはやくあやまっテ!!
透子「…あいつら…どうやら幽香さんがあの行動に出たのがよっぽど想定外だったらしいな」
めう「どういうことめうか?」
透子「あたい半分氷精だからかな、あいつらの言葉までは解らないけど、大体何を考えてるか伝わってくるみたいでな。
あいつらはあいつらで、最初はあたい達を襲って食うつもりでいたみたいだが…あいつらもバカじゃない、目の前の幽香さんが、自分たちが束になっても勝てない相手だと思ったとたん、驚かして追い払う方向に方針転換しやがった。
でも…それがきっと幽香さんの逆鱗に触れたってことを、あいつらはやっちまってから気づいたんだな。仕掛けたのはあいつらだ…自業自得だよ」
ゆうかりんさんはパワーブレイクの構え!
巨大スノーマソのある一点を突いた瞬間アワレにもバラバラに引き裂かれて元の数十体のスノーマソになった…
幽香「…今回は見逃してあげるわ。
さっさと行きなさい」
その言葉を受けたスノーマソ達は自分たちの行動を恥じたのか裏テルもしないでそそくさとログアウトしていった…
透子「たった一撃かよ…相変わらず空恐ろしくなるな」
めう「…?
でもやっつけたわけじゃ…ない?」
幽香「遊んでるヒマはないわ、先急ぐわよ」
幽香は何処か寂しそうにゆっくりと道の先を歩いていく。
気付けば、僅かに苦しそうな息をする少女に気付く一行。
透子「…幽香さんの言うとおりだな、いくら空気がいいといっても、この寒さは…」
美結「もしかして…幽香さんはこの事に気づいて?」
透子「そうかも知れない。
あのひとは普段あんな感じだけど…見た目よりもずっといいひとだって、チルノは言ってた。
…あたい達もあのひとの事を誤解してた…んや、不必要におっかながり過ぎてたのかもしれないな」
真っ青な顔をした少女を庇いながら、少女達も幽香の後を追い始める…。
…
…
さとり「進行中のクエストは「差し伸べる手、尊き命」です」
諏訪子「……今まで気にしない事にしてたけど、こいつなんでこんな淡々と機械的な話し方なんだ?」
ヤマメ「(スマキから)ああ、だってこいつ今現在もダウナー系のクスリ大量投与してるから。じゃねえとお空呼んでこない限りこいつ止まんねえよ」
諏訪子「なんだお前生きてたのか」
ヤマメ「勝手に殺すなよう(´・ω・`)
確かに黙って買ったのは悪かったよ、でもどう考えたって戦力アップになるんだから大目に見てくれよ」
諏訪子「クイーンズボンテージまで我慢しろ、ってのも簡単だけど、お前基本的にはさとりの呪鎖&スティグマコンボから3点エクスタシーの一点突破に賭けるコンセプトだからな。TPの息切れ懸念もあるから攻撃力4の差でもクリムゾンイーターの方が相性いいかも知れんわな」
ヤマメ「あ、解ってたけど薄氷の蔦鞭って選択肢はないのね」
諏訪子「装備ボーナスは正義(キリッ
ところで話は戻すが、これはまあ宿屋の続きものクエストだな。
っても道中のイベントだなこれ。11Fの滑る床地帯の片隅にひっそり起きるスウォームスノーと戦えるイベントだ」
さとり「一部イベントモンスター、クエストモンスターは登録されませんが、これやジャムクリーパーは登録され忘れる事が稀に良くあるそうです。
図鑑コンプを目指すなら無理にでも戦いたいイベントです」
諏訪子「聞いて納得はしたがカーナビ相手に喋ってる気分だなあ」
ヤマメ「薬の配分調整難しいんだよ妖怪相手は特に。
私から補足すると、スウォームスノーは行動も能力もビッグスノーと変わらないな。乱れ雪つぶてに耐えられるなら、炎の通りは滅茶苦茶に通りいいから倒すのはさして難しくないよ。というか」
諏訪子「ここではピクニックで進めてるけど、そもそもエキスパなら、マップ埋めの片手間で考えてると雑魚戦ですら次の瞬間当たり前のように壊滅してるなんてチャメシ・インシデントだからな。
少し探索して戦闘したらきっちり回復して進む、世界樹の基本だな」
さとり「必要に応じて逃げろ、と言っても、スタンダート以上の逃走失敗率はさほどではありません。
基本的に戦闘は避けられないなら戦うのがベストなのだから、まあレベルを抑えたいとかいう信念を持ったボウケンシャーでないのなら、素直に敵は蹴散らして進むのが良いでしょう」
…
…
白銀に閉ざされた森の奥地で、その場所だけは木漏れ日が程良い気温の場所を作っている。
凍りつくような空気に支配されたその森においては、異質な位に穏やかな…そして、何処までも澄み切った空気が満ちているのが解る。
敷物の上に、苦しそうに息をする少女を横たえると、美結達も思い思いの場所に陣取って一休みすることにした。
だが、寒気に長時間晒され、一向に容態の安定しないクオナのことが気になって、すぐにみなその傍へと集まってくる。
困り果てた一行の元へ、何時の間に何処へ行っていたのか、幽香がひとつかみの草の束を持って戻ってきた。
「それは?」
「多分この近辺にあるかもと思って探して来たのよ。
結構匂いにクセがあるけど、これ以上苦しい思いをするよりかは幾分マシよ」
そう言うと彼女は、手にした植物…恐らくは薬草を、持っていた道具ですりつぶすと、それを彼女の口元へあてがう。
苦しそうに一瞬顔をしかめるクオナだったが、やがて、その息遣いは落ち着き始めていた。
その様子に顔を見合わせ、ほっとしたように表情を緩める一同。
そしてつぐみは、クオナの呼吸が落ちついた事を見計らって、ハンナから聞いたようにゆっくりと深呼吸をさせる。
その時。
猛烈な殺気と血の匂いをまき散らし、フィッシュマンに似てより巨大な魚頭の魔物が、怒りに染まった目をぎらつかせながらこの区画へと近づいてきた。
「ちっ…こんな時に。
…でもあいつ、あの魚共となんか違うぞ」
「下がってなさい。
あの魚野郎は…多分私を狙って来たんでしょうよ」
「どういうことです?」
訝る美結に、幽香はゆっくりと二人より前に進み出て、背にした大斧を構える。
「あなた達の所へ来る少し前、私はかごめと一緒にこの森へ来たわ。
あいつが請け負った依頼の手伝いでね。
ラガード衛士楽隊に最近入隊した詩人の娘…その婚約者を喰い殺したっていう、この魚野郎の仲間を八つ裂きにするっていう依頼よ」
顔を見合わせる美結と透子。
「今その子に使った薬草は、その婚約者が病に倒れた彼女の為に持ち帰ろうとしたものと一緒。
そして、それはこの連中…「ムベンガ」の縄張りにしか生えない。
奴らはこの草が人間にとって有用な事を知っていて、それを採りに来た人間を襲撃していたぶり殺すのよ」
「じゃ、じゃあ幽香さん、こいつを…!」
「道中4、5匹叩き切って来たわ。
こいつらにもなけなし程度にプライドがあったようね…こいつはきっと、群れのボスだわ。
…離れてなさい、この落とし前は私が付けなきゃならない」
幽香が大斧を構えると共に、さらに数体のムベンガがわらわらと姿を現した!
舌打ちをする幽香の傍らに、雷の術掌を発動させる透子が進み出て笑いかける。
「だったら、幽香さんはあのボスを直接狙ってくれよ。
露払いはあたい達に任せて、さ」
「生意気を承知で言わせてもらいますけど、幽香さんも今は同じパーティで戦う仲間なんですから。
だから、少しくらいは私達をアテにしてくれなければ、困ります」
にっこりと笑いかける美結の言葉に、幽香は一瞬呆けたような顔をしていたが、微かに微笑むと大斧を振りかぶり殺気を全開に放つ。
「…言っておくけど、私は藍や静葉ほど器用な戦い方はできないわよ。
巻き添えを喰らったら、それはあんた達の自己責任だからね!」
「上等!」
幽香が無造作に振り卸す斧が手前のムベンガを一刀両断にするのと、その隣のムベンガが透子の術掌で黒焦げになるのはほぼ同時の出来事。
さらに美結がその前にいるムベンガへと紅い刃を振るって斬り込んでいく。
「つぐみんはその子の傍にいて。
あの3りだけに任せておけないめうよ」
めうもまた、その熱に充てられるかのようにすっと立ち上がり、つぐみの返事も待たずに弓を番えてその後へと続いていく。
つぐみは、呆れたように溜息をついてその後姿を見守っていた。
…
…
諏訪子「実はドンムベンガの出現地点は11Fの中央部左寄りの小部屋、このクエストの目的地は13Fの中央辺りの小部屋なんだが」
ヤマメ「そういえば直接は関係ねえけど、ムベンガってSSQ2の新モンスターなんだねえ」
諏訪子「んだな。
一応wikiにも記載されているゴライアス・タイガーフィッシュの現地名が元ネタだ。
ピラニアやネオンテトラなどを擁するカラシン目の、アフリカのコンゴを中心とした地域に住んでる大型肉食魚だ。体長は大きいもので150cm、コンゴでは人を襲って食ったなんて例が報告されている。アフリカ版ラットフェース・カンディルだな」
ヤマメ「そこはピラニアじゃないんかい」
諏訪子「ピラニアはあくまで弱った大型動物を群れで襲って食う、カンディルは見境なしだから、その意味ではカンディルの方が近い気がするがな。
なお人食いナマズとして知られるラットフェース・カンディルはカンディル科の魚じゃない。これ豆な」
さとり「カンディルは小型のナマズですが、大型の魚の体内を喰い破る習性があるため、人間でも肛門や女性器に入られて、最悪死に至ることもあるそうですね。現在でも生息域の女性は川や沼地に入る際、性器保護目的の貞操帯を身につけるそうですよ」
ヤマメ「本ッ当にどうでもいい豆知識だな。
HPだけで見れば階層ボスクラスなんだけど、ドンムベンガ」
諏訪子「全体氷+脚封じの大氷河の尾びれが面倒なくらいで、ありとあらゆる状態異常がまんべんなく効くから苦戦のしようがないけどな。
しかも尾びれは他の魚共と一緒で脚技、脚縛りも簡単に入るわ盲目もかかりやすいわで、しかも耐性らしい耐性もないからな。氷の効きが悪いくらいか、心配ならフリーズガードまで持ち込んでもいいけど、そうなりゃ本当に完封どころか完全試合レベル」
さとり「まあ、雑魚ですね(迫真」
諏訪子「ドンムベンガと戦えるクエスト「後進を導くは先人の義務」受領中は、11Fに出現する魔物が全部ムベンガになる。
ムベンガ15体以上撃破でイベントが発生し、ドンムベンガが出現すんだが…実はそのムベンガ自体もフィッシュマンに毛が生えた程度の能力しか持ってない。ドンムベンガの出現する小部屋では衛士がいて3回までは回復してくれるから、ムベンガを12、3匹狩ったら回復してもらえば万全だな」
諏訪子「というわけで今回はここまでだな。
次回はいよいよメインの物語は佳境、第四階層のイベントから例の四層ボス(笑)に挑む事前準備とか色々な」
ヤマメ「もう文のザミエルボウの時点であまりいい予感はしてねえんだけどな。
っと、そう言えばそろそろさとりにクスリを…ってやべっ( ̄□ ̄;)」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおくうううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう!!!ヽ( °Д °)ノ」
諏訪子「…なんかもう放っておけよあいつ、面倒くさくなってきたぞ」
ヤマメ「いやいやいやそういうわけにいかねえから。
面倒くせえけどそのうち核熱とかぶっ放し始めるからやべえんだって><」
諏訪子「その割には緊迫感ねえなあ。
まあいいや。次回に続いとけー(投げやり」
…
…
〜鋼の棘魚亭〜
この日はいつものメンバーは何処にもおらず、店仕舞いをする店主を余所に、幽香が一人カウンターで酒を煽っていた。
そこへ、もうひとり見慣れた顔が腰をかける。
「珍しく、嬉しそうな顔をしてるじゃない。
あの子達は疲れたと見えて、早々に自分たちの部屋へ引っ込んでしまったというのに」
何処かからかうような静葉に、そっぽを向くようにして幽香は視線を逸らす。
「…あなたなら知ってるでしょう、かごめのアホが何処にいるのか。
正直あいつだけは出会い頭に2、3発ぶん殴ってやらないと気が済まないわ」
「そうやってすぐに過剰反応するから、あの子おもしろがるんじゃない。
まあでも…そうでなきゃ幽香らしくもないか」
「馬鹿にしてるわけ?」
僅かにむっとした表情で幽香は静葉へと視線を戻す…が、無駄な事は解っているのですぐに表情を緩め、グラスを一口煽る。
そこへ、静葉は何か、首飾りのようなものを幽香の元へ差し出す。
見ればそれは、昼間クオナを休ませてやっていた辺りに生えていた、ツメクサで出来た冠飾りのようだった。
雪の中でも青々とした葉を茂らせるこの草で編まれたそれを、幽香は訝しげに手に取る。
「クオナが、あなたにって。
この地方では、ツメクサの首飾りは旅の安全を護り、幸運を呼ぶという言い伝えがあるそうよ。
それと…あなたの事、すごく優しくて格好良かった、怖がったりしてごめんなさい、って」
幽香は不思議そうに、手の中の飾りと静葉の顔を交互に見る。
静葉は笑って続ける。
「あなたの優しさって、純粋な子にほど、よく感じ取れるのよ。
チルノ達は言うまでもなく…透子たちにだって」
幽香は一瞬、どうしていいのか分からずにそれを見つめていたが…やがて、目を細めてふっと笑うと、その飾りを自分の懐へと収める。
「私は…私なんかで、本当にいいのかしら?
私は自分の力を、ただ力任せに揮う事くらいしか能がない。
今ですらたまに、自分の中のケダモノが抑えられなくなる時だってあるというのに」
「かごめが今回の件をあなたに任せた事は、私も正解だと思ってるわ。
師もまた弟子に学ぶものだと、かつて魂魄妖忌はそう言っていたわ。
彼にとって心残りは、自分が妖夢から何も学ぶことができなかったからだと、そう言ってはいたけど…あなたには彼と違って、十分な時間はある。
…私も可能な限りフォローするし…つぐみなんて、かごめの娘にしては出来過ぎた子だわ。あの子が、色々フォローもしてくれるだろうしね」
「うん」
心得たものなのか、アントニオは無言で料理をふたりの前に差し出し、見慣れたシニカルな表情で笑う。
幽香もまた、その心遣いに与ることにし…そして、問う。
「…マスター、私の留守の間に何か面倒事は起きてないかしらね?
そんな面白そうな事、私に黙ってたりしたら承知しないからね?」