♪BGM 「戦場 朱色の雨」♪

「戦うはいいけど、あんたなんか策持ってんの!?
情報はあるんだし事前の準備とかいるんじゃないの!?」

矢を引き絞りながら文はてゐに問う。
てゐはその刃を石床へ突き立てると、手で複雑な印を素早く幾つも組みながら返す。

「問題ねえ!
ヤツの金切声なんか通らしゃしねえよ…何して来ようが、こいつの前では無力だ!

そこまでを見て、文は悟った。
てゐの組んでいる印の術式に覚えがあるからだ。

それまで悠然と構えていたハルピュイアは、魔理沙が銃を構えるよりも前に金切声をあげる…その刹那。


「天文密奏法ッ!!」


解き放たれた魔力が日月の文様を描く巨大な魔法陣となり、金切声の魔力がその表面を波紋となって逸れていく。

あまり知られてはいないが、「月の頭脳」八意永琳は薬学医術のみならず、結界術の名手でもある。
かつて永夜異変の際に、幻想郷の空をこの術で覆い、終わらぬ夜を作りだしたことすらあった…八雲紫の結界の中で、である。

てゐはその技術を直接学んだわけではない。
しかし、鈴仙よりも永琳と永い付き合いを持つ彼女である。
見知った術を、遍く盗み習熟した…というその言葉に、嘘は勿論ハッタリも存在しなかったことを、文は今更ながらに思い知らされる。

(本当に大した古兎だわ…!)

お得意の金切声を破られ、なおかつ攻撃を敢行する魔理沙の魔弾を受け、悠然と構えていた魔鳥は狼狽し後ずさる。
とはいえ、クァナーン達が「女王」と異称するだけあり、すぐさまその表情を怒りに染め、猛禽の魔物から取られたと思しき大鉈の如き爪を振りかざし、猛然とてゐめがけて振り卸してくる…が。

「悪いが、それ以上は進入禁止だ」

その爪とてゐの間に、流れる水の如く静かでなめらかな動きで、盾を構えるみとりが滑り込んでいた。
そこへ、近くの樹から、傲岸なる魔鳥の頭をフランの槍が捉える。

金切声ではなく、劈くような魔鳥の悲鳴がこだまする。

「これで有効ひとつだな。
頭でも封じてくれれば、もちっと楽になるんだが」
「だったらこれで十分でしょう!」

てゐの軽口を受けてか、高速でハルピュイアの側面に回り込む文の放った一矢が、着弾と同時の黒い羽となって魔鳥の視界を阻む。

「ああ、問題ねえ…なっ!!」

間髪いれずに、その懐へ飛び込んだてゐの繰り出す霊攻大斬が、目くらましを喰らったハルピュイアの土手っ腹を派手に切り裂いた。
再び悲鳴が上がる。

その時、てゐはようやくその異変に気付く。
女王たるハルピュイアの「号令」を聞きつけた、猛禽の魔物が何羽もこの場へと近づいていたのだ。

「あっちゃあ…あの鳥公、ここまでは言ってなかったぞ」
「奴にとっても計算外だったってことでしょうよ。
言っちゃ悪いけど、あの翼人って連中、そんな強そうには見えないもの。
…どうする? 畳みかければ親玉はつぶせると思うけど…!?」

その刹那。
猛然と横を薙ぐ魔鳥の爪から、みとりはフロントガードで間一髪防ぎきる…が、三人の姿は後方の壁へと強かに叩きつけられる。

「ちっ…!」

反射的に受け身を取った文と、壁を着地する格好で衝撃を逃したてゐは、みとりを気つけると再び立ち上がる。


「短期決戦だ、文。
流石にあの群れまで相手にしてたら命がいくつあっても足りねえ…まずは親玉を潰すぞ!
「…了解…!」



「狐尾幻想樹海紀行 緋翼の小皇女」
第二十二夜 天空の女王



かごめ「あ、どーもいつものかごめさんと」
さとり「毎度のさとりさんです」
諏訪子「うわーなんだろこの見慣れない図式」
かごめ「まあ気にするな同志洩矢(キリッ
   えーと、今回はアレか、SQ2きっての残念ボスと名高いおハルさんだな」
さとり「なんだかんだでみなさん好き勝手言ってますね本当に。否定はしませんが」
諏訪子「しろよ…いや、別にいいか所詮は4ボス(笑)だったしな、こいつ。
   とりあえずデータから見ていこうか」




第四階層ボス ハルピュイア
レベル52 HP19600
雷弱点 毒・頭封じに弱い/即死・石化・テラー・盲目無効
金切り声(頭) 全体にテラー付与
カオススクリーム(頭) 全体に5ターンの間、封じ及び状態異常耐性低下を付与
絶望の大爪(腕) ランダム対象に2回近接斬攻撃、麻痺を付与(同一対象が被弾した場合、麻痺判定も2回行われる)
ストームフェザー(腕) 全体に近接斬攻撃、盲目を付与
捕食の宴(脚) ランダム対象に複数回近接斬攻撃、全個所への縛りを付与
        初回は3回攻撃だが、使用するたびに3回ずつ回数が増える(最大18回)
        同じ対象にヒットすることはないが、使用するたびに「同じ対象にヒットする回数」が1回ずつ増える(最大6回)

かごめ「…あれ? 意外とエグくね?」
諏訪子「意外とじゃねえよ。結構エグいよこいつ。
   面倒なのは初手で必ず使ってくる金切り声と、5倍数ターン目の終了時に使ってくるカオススクリームだ。
   そして、カオススクリームをぶっ放して来た次のターンに捕食の宴、その次に金切り声と続くパターンだな」
さとり「えーと…そうするとアレですか、6ターンごとに捕食の宴の回数と被弾数が上がっていくということですか?」
諏訪子「そうなるな。
   まあ計算上、回数12回、同一対象被弾数4回になる24ターン目まで長引いてるようじゃ、ほぼ勝ち目はあるまい。
   最大回数の最大被弾数になるのは36ターン目、6回目の使用時だが、まあそこまでになる前には大概決着はつくな、hageるにせよsageるにせよ」
かごめ「ってもこっそり全封じついてくるとかおかしくね?
   ましてや、直前にワケ解んねえデバフ喰らうし」
諏訪子「…………お前ら調子に合わせてくれてありがとう(棒読み
   しつこいようだが、強化はしっかりされてるはされてる。
   だが、はっきり言うがそんな事前準備も必要ない、基本はピンのボスだ。状態異常がほとんど入らない事を除けば、至極与しやすいな。
   攻撃も斬属性だけだし、心配なら斬撃の守りやディノブレストなどで斬耐性上げて挑むといい。もっとも、そこまでやればただのいじめだが」
かごめ「あ、やっぱ大したことねえのかこいつ。
   ごくたまに「今作はスキュレーより苦戦した」って話を聞くもんだから、そのへんどうなのかと思ってな」
諏訪子「パーティ構成にもよるんだろうな。
   ただ、どの攻撃にも封じ・異常付与が絡んでくるからそれが非常に厄介ではある。
   冒頭のが完全にミスリードになってるんだけど、実際こいつに盲目は入らんしな、念のため言っとくけど」
さとり「そもそも、がっつりというわけではないですが、前回の装備品で解るように事前準備も万端ですし。
   金切り声のターンを完全にボーナスターンにしてましたね、実際」
諏訪子「そだな。
   蠍針の羽飾りは、デスストーカーのドロップから作れるアクセサリーで、テラー完全耐性だ。
   勿論、冒頭でてゐがやったように、金切り声のターンは決まってるから、マグスがいるなら巫術:結界で対策取っても問題ねえ。
   ただし、その場合は巫術マスタリーのみ★の場合、結界を★★にしても3%程度の確率で防御が失敗する。確実を期すなら巫術マスタリーを★★にして、結界のレベルを限界突破で16以上なら100%防げるが…まあ、3%程度なら流石に事故だし割り切ってもよかろ
かごめ「結界の限界突破がある意味マグスのアイデンティティだからな。
   限界突破を加味しないなら、霊攻大斬の破壊力は実はメディックに撃たせた方が僅かに強いという」
さとり「マグスは何気にLUC高いですけど、自前で異常とか撒く系統のスキルは乱疫しかないですしね。
   巫剣の破壊力を取るならメディックからの転職で良さそうな気もしますね」
諏訪子「話脱線しちまってるがまあ、概ねその通りだ。
   で、ぶっちゃけるとこいつ本当に苦戦してねえ。何しろみとりの野郎が盾でストームフェザーは弾きやがるわ、捕食の宴は身がわりと忠義マスタリー駆使して全弾被弾しきっても耐えきるわで、回復しなきゃならねえ兎詐欺野郎以外の三人が完全にフリーでな。
   捕食の宴もみとりだけ2ケタでやり過ごしてたからあれっ、と思ったけど、てーの野郎が倍近いダメージ喰らってたから確率発動の忠義がかなり高い確率で発動しまくってただけっぽいとはいえ
さとり「こっそり物理・属性の防御ブーストも振ってますしね、発動しなくてもそれなりに固いと思いますが」
諏訪子「せやな。
   文がソーマをばらまいてる横で、2ターン置きにフランと魔理沙が合計3000程度のダメージを叩きだしやがるもんだから17、8ターンくらいで決着ついたかな。捕食の宴の三回目を見た気がしなくもないが…まあ、察せという感じだな」
かごめ「えっじゃあマジで楽勝だったのか」
諏訪子「余裕があったら頭縛っちまっても良かったんじゃねえかってくらいにな。
   なお、こいつのレアドロップは頭封じ撃破。素材はシルフィードベストの材料だ。
   一応23F到達で復活の条件満たすんで、それから悠々と取りに言ったな」
さとり「呪鎖スティグマから三点縛りエクスタシーで超余裕でした(プークスクス
かごめ「いや散々だなこいつ…ピクニックで狩りに行ったとはいえ」
諏訪子「難易度を上げるなら、ハルピュイアの居る区画の破滅の光鳥をそのままにしておいて乱入させるという手もあるが。
   やつらが近くの巣にいるいる場合、最初のカオススクリームのターンで反応して乱入してくる。
   流石に捕食の宴とブルータルレイが重なると絶叫モノだぞ」
さとり「でもそれでも雷一貫しますよね(プークスクス
諏訪子「………お前なんでそんなに楽しそうなんだ?
   一応、この仕様の為かハルピュイアからは逃げることが可能だ。もうここまでくるとサンダーウイングのないイワォロペネレプだな」


諏訪子「さて、何気にまだ第四階層で解説してない話もいくつかあったな。
   そもそもハルピュイアの居る区画だって、すんなり行けるわけじゃない。
   20Fから、吹き抜けエリアを埋めつつ一度16Fまで降りて、また昇って来なきゃならない…まあ、やろうと思えば17Fから引き返す事もできるがな」
かごめ「どうせそこに陣取ってるFOEをしばき倒せれば、なんて条件もあるんだろ」
諏訪子「まったくもってその通り。
   17Fの重要な通路に、頭の悪いサイ野郎が陣取ってる。
   こいつを潰せば自由に階段を行き来できる。それが嫌なら、サイを避けて一度16Fまで降りる必要があるな」
さとり「吹き抜け部分にはそれぞれの階で登場する雑魚に加えて、20Fから登場するコカトリス、ナイトフラワー、マッドワームも加わりますね。
   コカトリスはなんというかそのまんまというか」
かごめ「スワコ=サンお得意のセキカ=ジツを使ってきますな
諏訪子「それ多分ここでの話であって一般的な話じゃねえから私の石化は。
   けど今回石化させるとか即死させる系のスキルはかなり貴重だからな。危ない石像のストーンゲイズ? 見たこともねえよ(半ギレ
さとり「18Fと19Fで登場するカマイタチの無空波が加わると石化被弾率の危険性がぐっと上がりますからね。
   危ない石像と違ってコカトリスは狂ったように石化の睨みをしてくるから、グリモア化の機会も多いですが石化hageの危険度もさほどではありませんね」
かごめ「カマイタチの無空波もグリモア狙ってるけど高レベルのが取れなくてなー」
諏訪子「石化もレベル8で妥協してたよな。
   どうせまたどっかでグリモアマラソンするんだろうし何とかしろよ、そこで」
さとり「何気に双葉茶はプレミアムチャンスばかりじゃなくて、グリモアチャンスそのものの発生率も上がってる気はしますね。
   即死も首打ちとブレインレンドだけでは」
かごめ「そもそもどっちも即死付与率なんておまけ程度だしな。七転八起があっても焼け石に水だしな」
さとり「抑制攻撃は即死とスタンに補正かかりませんからねえ。
   ナイトフラワーはアレですね、危険な花びらの劣化」
かごめ「すわエトリアの悪夢再来かと思ったらそんなことはなかったと。
   全体催眠は狂気だがそれしかしねえし、そもそも溜めもあるしなナイトコール」
諏訪子「全体的に四層は雑魚がヌルいからな今回、精々出現率の低いビッグモス程度で。
   で、解説がまだのFOEは二種類、18Fのカエルと19Fのでかい鳥。
   突貫する大蛙はまあ御馴染のトノサマガエルなんだが、今回呪いガエルを4体も呼んで呪いと数とじゃんぴょんで一斉攻撃を仕掛けてくる。まったくもってカエルの風上にも置けねえ連中だ」
かごめ「カエルに風上におけるおけないとかってあるのかよ…?
   まあいいや、HPはかなり高いけどサイに比べると非常に倒しやすくはあるな。というかジャンピングが凌げれば到達時点でもさほど強敵というわけじゃない。その挙句、こいつも巧く誘導してやれば穴に落とせるからな
諏訪子「2マス一気にジャンプ移動して、一回休むという変則的な追尾型だ。
   ジャンプ移動だから隣接した落とし穴には落ちないけど、移動のルートによっては勝手に落ちて何時の間にかいなくなってたりする。
   サイと一緒で1日で復活するFOEだが、希少種化して狩るときは本当に移動ルートも考慮しないと非常にもったいない事になる」
さとり「上り階段側から二匹いる区画に入ると、いきなり同じ穴に落ちて二匹ともいなくなりますからね。
   アレは本当に初めて見たときはなんぞ、と思いましたよ」
諏訪子「ワシはアレか、SQ4で出てきた高空FOE怒れる猛禽だな。
   HPは5倍くらいになってるがSQ4の時とやってくることはほぼ一緒で、全体盲目の暴風の翼が厄介極まりない。しかも、盲目にならなくても命中が高い挙句、破壊力のでかい引きちぎる大爪。大爪は適正ならパラですら上から一発で持ってかれる威力だから、ある意味でも何でもなくこいつサイよりも強い。
   ただ、暴風の翼をグリモア化すれば非常に強力なんだ。貴重なAGI依存の全体遠隔斬攻撃だからガンナーやレンジャーのサブウェポンとして重宝する。安定して狩れるようになったら是非ともマスターを粘りたい」
かごめ「純粋におハルのストームフェザーより高性能だからな。五層に入ってからこの為にグリモアマラソン敢行したが、文、めうめう、あともうひとりの為に大分粘ったな。文なんぞこれで高確率で盲目ばら撒けるから主力になる」
さとり「一応捕食の宴もAGI依存の遠隔斬ですけど」
諏訪子「被弾制限ないとはいえ3〜18回とか期待値のばらつきがでかすぎて使えるかという
かごめ「ギャンブルだよねえアレは」









大型猛禽の魔物の群れが飛来する時間制限が出来たことで焦りの色が見え始める攻め手に、その隙を逃さず斬りこんでくるハルピュイアに防戦一方となっていくフラン達。
繰り出す度に、まるで獲物をいたぶるかのようにその回数が増えていく爪の乱舞を防ぐことでみとりも手一杯になっていた。
ハルピュイアの放つ二種類の「声」の効果もあり、その対応にてゐも追われており、十全な支援の受けられないみとりの焦燥感も高まっていく。

(くそっ…どうすればいいんだ!)

傷ついて動けないフランの前に立ち、その大爪を盾で弾こうとするが…体力の消耗が決定的となったその瞬間、受け止めたままじりじりと重圧に押し切られそうになっていく。
倒れて動けない文と魔理沙の回復に追われるてゐの叫び声も、何処か遠くに響いているように、彼女の耳には届かない。


(私には…わたしには、何も護ることができないのか…?
 にとりが受け入れる事が出来たものを、いまだに受け入れられずにいる私には…。
 あの時みたいに…何もかもを否定して…壊してしまうことしか…


折れそうになる心の中で、彼女はそう自分へ問う。

かの大異変で幻想郷を崩壊寸前まで追いやったという引け目は、まだ、彼女の心の中に消えない枷となって残っている。
存在意義を見出す事ができ、心を許せる存在が出来た今となっても…それでも、彼女は自分自身を許せる事が出来ずにいた。

(私の血塗られた手では…誰も)

その絶望の重さが、手にした盾を離そうとしたその時…みとりは、暗転したその視界の中に、力強くその手を支える三つの手に気付く。


「諦めちゃダメだ!!」


はっとして、その声の方に振り向くと…そこには、見慣れた蒼い河童が一人居る。

「あんたは、護るって決めたんだろ!
だから、最後まで諦めちゃダメだ!
私にも…私にもできたことなんだ…その最後の時を、護り通す事が。
あんたは私の心から生まれた河童なんだ…だから、私に出来てみとりにできないなんてことは絶対にないんだ!!
「そうだよ、みとりちゃん」

にとりと対になるように、傍らに立つこいしが笑いかける。

「私達はもう…とっくにみんなが許してくれてるんだ。
みとりちゃんをまだ赦してないのは、みとりちゃん自身だけなんだよ。
自分の事を許してあげられなきゃ、誰も守れない…あの日、私はルナサさんとメルランさんから、そう教えてもらったってことを…やっと思い出せたんだよ。
みとりちゃんはこれまで十分過ぎるほど、頑張ってきたんだ。だから…もう自分の事を許してあげても、いいんだよ
「そうだよ。
私はそもそも…あなたのことを恨む理由すらなかったしね」

はっとして、視線を前に戻すと…三人目のシルエットが同じようにして目の前に立つ。
そして、その少女が振り向いて笑う。

「自分に負けるな、なんて私にも言えないし…そもそも、自分さえも敵に回しちゃったら、もう他に誰が味方についてくれても、誰も信じられないよ。
だから、みとりさんはまず、自分の事を許してあげなきゃダメだよ。
じゃなきゃ…私もあなたを許さない。それで、いいんじゃないかな?


みとりは三人の顔を茫然と見返す。
そして…同じように笑う。

「そうか。
答えなんて…こんな近くに、とびっきり解りやすいものが、転がってたじゃないか」

握り締めた拳に力が戻ってくる。
再び見開いた眼には、決して赦されざる所業が生み出した暴虐の力を受け止める、己自身の最後の拠り所。


♪BGM 「ナラク・ウィズイン」/藤澤健至(Team-MAX)♪


「この先には…通さない…!」

渾身の力で、その爪を押し戻すみとりの盾が、紅い輝きを放ちはじめる…!


「私は、私自身を信じる…!
そこに、私という存在を示す標がある限り! 何度迷っても、私は私を最後まで信じる!!
流れを成せ、“河伯標識”!!」



強烈に発した紅い閃光が視界を埋めつくし、それが晴れた瞬間、恐るべき魔鳥の爪は派手に空中へと跳ね上げられ…否。

「これは…!」

てゐはその理由にすぐに気付いた。

魔鳥の爪は「弾きとばされた」のではない。
まるで、何かの力に強制されるかのように、自然な動きで「空中へと進路を変更されていた」のだ。
みとりの持つ、標識をかたどったその盾の示す表示通りに。


思わぬ反撃を受けた魔鳥は、怒りに任せて刃のような羽を無差別に放つ…が、それも、みとりの示す「標識」が速度制限に変わると、その数字が小さくなるにつれて減速し…そして、慣性を失った羽はひらひらと地面へと落ちていく。
それは、みとりたちの正面に飛んで来たものばかりではなく、今だ倒れ伏した魔理沙の元へ飛んでいったものも…勿論、それを茫然と見つめるてゐの元へ飛んでいったものも。

「…盾の、魔装か!
ただ「禁止」するだけじゃない…標識の表示通りにその動きを支配する!

そして、気つけた文がその袖をくい、と引く。

「…奴らの増援、気にする必要もなくなってきたみたい。
羽音の数、減ってる

てゐはそれを受けて周囲へ注意深く耳を傾ける。

そこかしこに響く、剣戟の音。
感じ取れるその妖気は…彼女もよく知る少女達のもの。

「あいつら…来てくれたのか…!」

そして、標識を掲げるみとりが女王に宣告する。

「お前の攻撃の進行方向は、総てこの私の指示に従ってもらう!
そして…」
「この先は通してもらうよ!!
喰らえ、魔槍“スピア・ザ・ミステルテイン”!!

レミリアのグングニルを彷彿とさせる紅い光の投槍が、みとりの標識の速度表示に従って加速する。
音速まで達したその光が、見事魔鳥の頭を粉砕すると…魔鳥は爆発四散するかのようにその羽を周囲に巻き散らし、そして鳩尾辺りまでを吹き飛ばされた亡骸が空中へと投げ出される。

「ったく、フランもみとりももうちょい考えろ…あんなの街に落ちたらどうすんだッてんだ。
…ま、私が後片もなく吹き飛ばせば問題ねえんだけどよ」

何時の間にか起きあがっていた魔理沙が、構える銃口に途轍もない純粋魔力を収束させる。

「吹っ飛びな、マスタースパークッ!!」

その必殺の魔砲を受けた女王の亡骸も、この世から後片もなく消滅した。







女王のふさいでいたその道の先に、これまで見た樹海磁軸とは異なる蒼い磁軸が見える。

誰が言うともなく、その先には天空の城がある事を確信していた。
それは、この過酷な旅路の目的地が、すぐ迫っていることを否応なく実感させる



「やっと、ここまでたどり着いたんだな」
「そうね。
でも、まだ終わりじゃない。まだ…やるべきことは残ってるんだ。
これ以上…このハイ・ラガードに過去のしがらみから来る悲しみを生みださせないためにも」

フラン、魔理沙、みとりの三人は顔を見合わせて頷く。

「今なら解るんだ。
この旅に同行したのは成り行きで…きっかけに過ぎないけど。
でも、私は過去に向き合ってただけじゃなくて、見当違いの事ばかり考えて自分の事を見ていなかった事が
「みとりさんだけじゃないよ。
私だって一緒。だから、此処から改めて…私達は本当の「仲間」になったんだって、そう思う

フランはみとりの手を取って笑う。

「過去のことは消せはしない。
でも、これからどうするかで、未来なんていくらでも変わっていくんだから
「そういう事だな。
…行こう、過去に囚われたままの大馬鹿野郎をぶん殴りに!

てゐの差し出した手に、四人の手も重なる。
そして、駆けだした五つの影が蒼い磁軸へと吸い込まれ…天へと昇っていく。



その光景を、離れた空の浮島から見つめるふたつの影。

「あの子達も、いいチームになったわね。
タルシスを旅した時を思い出すわ」
「そうね。
私達と一緒にいたままじゃ、あんなフランは見ることはできなかったかもしれない。
数多の書物でも語ってくれない世界は、この世に五万と広がっている…出てきた甲斐が、あったというものだわ。
…けれど、意外だったわね」
「何がよ」

長い髪のシルエットを持つ少女が、溜息を吐いて応える。

「あの子があっさりと私達の樹海行きを飲んだ事が、よ。
これまで、散々馬鹿な理由を振りまわしては、あなたにしばき倒されていたのが」
「…それだけ、色々あったのよ、私達姉妹と彼女は。
私の代わりがチルノ、というのは些かどころじゃないくらい不安だらけだけど…まあ、咲夜の事だしうまくやってくれると思うわ。
いざとなればコーディかポエットがなんとかしてくれるでしょ」
「昔から思ってたけど、なんか特に最近その辺アバウトになって来たわねレミィ。
帰った時に住む場所がなくなってたりしたら本当、どうしようかしら」

月明かりに照らされ、ふたつのシルエットの姿がはっきりとその中に姿を現していく。




「リリカ達も巧くやってくれたみたいね。
ここからが本番よ、パチェ。
久々に…幻想郷最強魔導師の腕前、間近で見せてもらおうじゃないの」




「この森は、本当に知的好奇心がくすぐられるわ。
こんな面倒事はとっとと済ませて…ゆっくりとこの森の謎、解き明かすとしましょうか…!」











諏訪子「( ̄□ ̄;)なんでこいつらがいるんだザッケンナコラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!??
かごめ「あ、うんなんかヒマそうにしてたから声掛けたら本当に来るとは思ってなかった(迫真」
さとり「えっそんなアバウトな理由でいいんですか私もわりと言えた義理ないけど。
   けどまあ、らしいというからしい人選…? ちょっとわずかにレミリアさんの武器がおかしい気もしますが」
かごめ「槍って後列補正ねえしそれなら別にTP増えるクリムゾンイーターでもいいかなーって。
   ほら、だってクリムゾンだし」
さとり「細かい話すると同じ赤系統の色でも、一般的な赤が「Red」、緋色が「Scalet」、深紅が「Crimson」って微妙にニュアンスの違いがありますね。
   緋色ってちょっと黄色がかった赤で、どっちかというと太陽の色のイメージはこの緋色のような気がしますが」
かごめ「どうでもいいが赤には洋紅色(カーマイン)ってのもあるがな。これはちょっとピンクがかった赤だ。
   光の三原色で赤系統に入れられるマゼンタ(唐紅)はピンクに近い系統だが」
諏訪子「そんなことはどうでもいいわ!!><
   いや百歩譲ってレミリアは解るよあいつタルシスにもいたよいたけどよ。
   超インドア派の名をほしいままにしてる紫もやしなんて樹海で生息できるのか!?><」
さとり「世界樹命名wikiにもアルケミの項目に「パチュリー」があったから問題ないんじゃないですかね(プヒー
かごめ「紫の名前がミスティックの項目にあったときは大草原不可避でしたな」
諏訪子「ああもうこいつらは…というかこの装備もすっげえ意味深なものを感じるよなこれは触れていいところかどうなんだ」
かごめ「(無視)というわけで次回はまた横道にそれてクエストとかそっち系統の話ですか?」
さとり「ああいや、これがあるじゃないですか、隠しフロア。
   まあ一応クエストの絡みありますしね、一応私達のですが」
かごめ「じゃあまあ次回はそんな感じで」
諏訪子「話聞けええええええええええええええええええええええ!!!><」