〜フラン達が立橋の探索を続けているその頃…立橋の別区画〜




君たちの目の前に存在感を放つその存在はエトリアで悪夢と呼ばれた魔物!
手負いといえどそれは夢でも幻でもなくその魔物はこちらを威嚇している…。


めう「うみゅ?
  確か「エトリアの悪夢」って呼ばれているのは、危険な花びらっていう魔物だってさなな(早苗)言ってためうよ?
透子「まあ魔物なんだから、あたい達の常識の尺度であてはめられるかどうかはわかんないけど…一体あのイノシシめいたやつのどの部分が花でどの部分が茎なのか」
幽香「いやいやいやどう贔屓目に観てもアレ花びらじゃないわよ。
  一応私危険な花びら見たことあるもの、断じてあんなイノシシ野郎じゃないわ。どう見ても無害そうな可愛らしい魔物よ
つぐみ「私にはアレが可愛いとはとても思えないんですけどねえ(しろめ
   あれ、確かバビルサだよ。遺都の最下層にいっぱいいた魔物だよ」
美結「バビルサはインドネシアのスラウェシ島を中心とした島々に生息するイノシシ科の動物ですね。
  セレベスバビルサを含む亜種三種だけがそれに該当する一属一種の動物で、乱獲や作物の食害をすることから害獣として追われ、繁殖能力も低いことから絶滅危惧種として現在保護されてますね。
  何故か下あご前の犬歯が異常に発達して、大きく反り返るという独特な風体をしていることから、延びた牙が頭に突き刺さって死んでしまうなんて言われていて、その為か「自身の死を見つめる動物」という風に言われたこともあったそうです」
透子「ふーん…っていうか、今目の前にいるあいつはどうもそんな感じじゃない事だけは確かだけどな。
  ところでつぐみ、あいつヤバいの?」
つぐみ「んーと…基本的には大イノシシなんだけど、FOE並に体力あるし、威力の高い全体壊属性攻撃持ちだからまず足ぶち抜いて動き止めるところから狩り始めたかなあ。
   …けど、あの階層花びらもいたし、花びらの方が億倍ヤバかったから正直悪夢って言うほど強くは…あっ^^;」

目の前のバビルサはいじけている…。

幽香「何よあいつ、本当のこと言われただけじゃない情けないわねえ。
  大方、冒険者じゃなくて仲間との群れ争いで追われてきただけなんじゃないかしら」
つぐみ「えええっと、一応でもSSQストーリークリア前で戦える一般モンスターでは一番最後のフロアでしか登場してないから決して弱くは…っていうか、あれの猪突猛進だけでPT壊滅したって話も稀に良く聞くから^^;」
めう「なんか全然フォローになってないめう…っていうか、魔物のフォローに入ってどうするめうか?(しろめ」
つぐみ「まあ実際「エトリアの悪夢」はさっきめうめうが言った通り、危険な花びらの事が一般的だよ。
   登場階が地下七階とわりと早い段階にもかかわらず、何故か付与率の高い、しかもこともあろうに全体対象の催眠を撒いてきて、スノードリフトを血祭りにあげて意気揚々と密林に乗り込んできたボウケンシャーをことごとく樹海の養分にしたっていうよ。
   その悪魔の如き催眠撒きっぷりから、群れで出てきたらhage必至のトラウマメーカーとして、ついた渾名が「エトリアの悪夢」というわけ」
幽香「とりあえずどうでもいい情報よねそれ。
  まあいいわ、どうでもよさそうだしほうって先行きましょうあんなの。
  私達は時間制限つきであのサイを狩りに来てるんだし、あんなのに構ってるヒマないから」
バビルサ「( ̄□ ̄;)ガーン!!!



「狐尾幻想樹海紀行 緋翼の小皇女」
第二十三夜 雷鳴の幻影(まぼろし)






かごめ「どうもかごめさんです。
   冒頭のはアレですな、第四階層に入ってじきにあるミニイベント、手負いのバビルサ
諏訪子「一応こいつと戦う前には選択肢出るんだけど、もうイベントに入っちまったら戦闘不可避らしいし。
   それどころか立ち去ろうとすると結局不意打ちまで喰らうという塩梅で」
さとり「えー花びらかよーとか思ってたら、次の瞬間大多数ののボウケンシャーが「いやおめぇじゃねえからwwwww」と大草原不可避だったという。
   実際バビルサはバビルサで確かに色々おかしい魔物でしたし、やってくること一緒だから普通に猪突猛進連打でミンチにされかねませんが
かごめ「先のネタばらしすると、バビルサ出てくるのこれ一回こっきりで、しかも戦ったところで何か特典があるわけでもねえ。
   一応図鑑には載るから、スウォームスノーとかみたいに討ち漏らしないように狩る程度だな」

かごめ「っというわけで今回は予告通り、またまたクエスト話になる。
   冒頭でゆうかりんさんの言ってるサイの話だが、この、SSQ2で追加された新しいクエスト「気高き峰に立つ勇者に名誉を」の前提クエストである「猛き者、喰らうは飽くなき欲望」は、世界樹クリア後名物で御馴染三竜討伐クエストに繋がっていくクエストの一つだな。
   どの竜に繋がっていくかはまあ、此処で紹介するクエストが完全なネタばらしなんだが」
さとり「あ、メインそれじゃないんですね。
   サイというとあれですか、バビルサが出て来たってことは間違いなくあれですね、突き進む犀角」
諏訪子「私もまったく思いだせなかったからアレだけど、実はこいつリメイク前では第一層で数多くのボウケンシャーにトラウマを植えつけてきたシンリンサイなんだよな。どうでもいい話だけどさ。
   これはまあ、SQ3からもたびたび登場する「時間内になんか狩れ」系のクエストだな。
   タイムリミットはゲーム内時間で10時間、つまり300歩(ターン)以内に出来るだけ多くのサイを狩れっていうもので、当然ステージである17Fでフロアジャンプすらもしたらその時点でクエスト終了。吹き抜けにいる1頭を除く、フロアにいる6頭のサイが標的だ
かごめ「あー、確かに17階は吹き抜けに渡る手段ないもんなあ」
さとり「それどころじゃないですね。
   6頭狩ることを考えたら、うち1頭たりとも穴に落とすことすら許されません」
諏訪子「せやな。
   推奨レベルは50以上、実際第五階層に入ってから受領可能になるが、最大報酬を安定して狙うならやはりピクニックでやるのが一番だ。
   エキスパならまあ…突耐性を上げた上で、強力な氷技をガンガン使っていく戦法になる。なおかつ、雑魚戦も極力避けなきゃならない」
さとり「流石にジャガーノートを倒せるくらいまでやってれば楽勝かも知れませんけどねえこれ。
   サイとカエルは実は一日で復活するとはいえ、時間制限やら何やらもありますし」
諏訪子「そもそも1頭でも狩ればその時点で報告可能なんだけどな。
   ただ、報酬はアムリタ2で6頭全部狩れば5個ももらえる。3頭までが1個、5頭までが3個って事を考えると、まああとあとを考えてピクニックで全部狩るほうがお得ではあるわな」










美結のミラージュバイト=カラテでバイオサイは混乱したが、なんと突進してきたもう一頭のバイオサイがエントリー!
しかし誉れ高きアーチニンジャを目指す為にこのインストラクションをやり遂げねばならないのだ!カラダニキヲツケテネ!!

美結「いや混乱入れたはいいけどなんでこんな乱入されなきゃならない場所で戦わなきゃならないんです?(しろめ」
透子「つーかあたい達は別にリアルニンジャ目指してるわけじゃねえし(しろめ」
幽香「あらあらあなたたち情けないわねえこの程度で音を上げるなんて♪
  仕方ない子達ねえ下がってなさい私が全部片付けるから(うきうき

めう「もうやだめうこのひと(しろめ
つぐみ「公然とFOEの群れ狩れるからもうね、とりあえずさっさと終わらせる以外ないんじゃないかな…けど」
めう「うみゅ? 戦闘中によそ見は禁物めう!
  …ってあれ…なんかあの空の向こう、ちょっとおかしいかも」

つぐみはその、微かではあるが凄まじい気を感じ取っている。

つぐみ「めうめう、幽香さんに氷撃の序曲。
   また機嫌悪くするかもしれないけど、多分これとっとと片づけたほうがいいみたい」
めう「むゅ、めうもそう思うめう。
  計算が合ってれば、フロアに残った犀角はこの二頭で最後の筈めう」

ふたりは頷きあうと、同時に魔力を解放して一気に強化の魔力で三人をつつむ。
幽香は僅かに刺すような視線を向けるが…彼女とてそう呑気ではない。空の向こうから値踏みするような視線を感じ、不快感を覚えているのは彼女もいっしょなのだ。

幽香「………あんたたち解っててやってるのでしょうね。
  仕方ない、そう楽しんでいる余裕もないという事かしらね!

ゴウランガ…おお、ゴウランガ!
序曲と号令で強化されたフェンサー=ジツとダブルアタック=カラテの相乗効果で、新たにエントリーして来たバイオサイが一瞬のうちにゴアをまき散らしネギトロめいた肉塊となって周辺に飛び散る!
そしてその惨状にNRSに陥る暇もなく、ミラージュバイト=カラテでZBR中毒状態となったもう一頭のサイに美結が紅い刃を振りかざして迫る!

幽香「そっちはあなたに譲るわ。
  一撃で、斬り倒しなさい」

美結は答える代わりに内なるソウルを解放しトランス=アティチュードを発動させる!
このユニーク=ジツは相手がドク=ジツなどで前後不覚になっている場合さらなるカラテ上昇を引き起こすのだ!

そして見よ…紅い刃がまるでライトセイバーめいて発光しているではないか!
これは、古代からいるリアル素兎てゐ=サンのヒサツ=ワザ、暗黒巫剣奥義霊攻大斬の構え!!
裂帛の気合と共に振り卸された刃がバイオサイを角ごと真っ二つに切り裂く!ゴウランガ!!


ゴアをまき散らしながら石畳を鳴らす重い音は、普段のアトモスフィアであれば彼女たちが絶対勝利者である事を祝う号砲めいて響いたに違いない。
しかし…にわかに天は黒い雲が覆い、稲光を走らせる異様なアトモスフィアが、何か想定外の事態が進行しつつあることを少女達に予感させる…。

「なんだ…空気が、重い…!」
「…なんだか、息苦しいめう。
多分この階にいたサイは今ので全部の筈めう…早くかえろ…うみゅ!?」

めうは取りだしたアリアドネの糸を天に掲げる…だが何としたことだろう、糸は何の反応も示さない。

「糸が反応しない!?
…いったい、これは」
「わからない。
でも、このすさまじいプレッシャー…あの雲の中に、何かとんでもないものがいる…!

つぐみは美結を庇うように前へ立つと、雲の中に向けて気丈にも銃口を向ける。
永劫にも思える長い沈黙の中、やがて稲光が黒雲を切り裂き、その中から恐るべき、そして想像だにしない存在が姿を見せる…!




♪BGM 「戦乱 散るもかなり」♪

それは金色の鱗におおわれた、長蛇の如き身体と、大太刀の如き爪と槍の如き角を備えている。
その姿は、古文書に記された竜神の姿そのものだった。

「雷鳴と共に、現る者…金竜…!」

つぐみはその姿に、茫然とつぶやく。

彼女の母かごめが、タルシスの石林で討ったと言われる、神の如き力を持つ魔物。
否、その恐ろしくも神々しい、威厳に満ちた姿は、神獣と呼ぶにふさわしいだろう。

かつてつぐみは、キバガミやヤマメと共にエトリアの地で、猛吹雪の化身ともいえる蒼い竜「氷嵐の支配者」と戦ったことがあった。
タルシスにいた同種の竜のように、一瞬のうちに死へと誘う極低温の冷気こそ放たぬものの、総てを拒絶する氷の障壁に苦しめられながらも、苦闘の末その強大な竜を討ったが…それに勝るとも劣らない、途轍もない気を目の前の存在は放っている。

怖いもの知らずの幽香ですら、言葉もなくその竜をただただ、茫然と見つめている。
つぐみは自分を奮い立たせてこの竜に抗うべきか、それとも、なんとかこの場から逃げる算段を取るべきか逡巡する。

単独でこの竜に勝てるなど、毛ほども思えない。
そもそもつぐみの得意系統魔法は雷、目の前の金色の長蛇は雷の化身。お互いに大したダメージは与え合わないだろうが…幽香はまだしも、他の三人はその恐るべきブレスに耐えることはできないだろう。
縦しんばそれを凌いだところで、呪いと恐慌をもたらす爪と牙、そして巨大な体躯から放たれる尾撃…そのすべてを防ぐとなれば。

恐怖でカタカタ鳴りそうになる歯を食いしばるつぐみに、それまでじっと立ちつくしていた筈の幽香が肩を叩く。

「あなたの母親みたいなデタラメなど、誰もあなたに強要するつもりはない…流石に今の私達であいつに挑むのは無謀だわ
「ゆう…か、さん…?」

その時、つぐみは初めて口を開く。
彼女自身が滑稽にも思えるくらい、その声は震えていた。

見上げる幽香も、その表情は硬い。

「改めて、恐れ入ったわ。
かごめの奴、よくこんなのと正面切って戦おうと思ったものね…悔しいけど、私にはこいつを八つ裂きに出来そうなビジョンは全く見えないわ。
まして…今にも失神しそうな後ろの三人を巻き込んでなんて

つぐみははっとして、後ろを振り返る。
美結やめうは言うに及ばず、気丈な透子ですら、真っ青な顔で凍りついたように立ちつくしている。
それ以前に…彼女は自分の中にある感情を認めざるを得なかった。


恐ろしい。
目の前の、その存在が。



幽香は少しずつ、つぐみの身体を後ろに引きながら、後退を始める。
目の前のその存在を刺激しないように…否。

「あんたは、少しは自分の退屈が紛れると思って出てきたのでしょうけど…残念ながら、今私達がそのリクエストに応えることはできそうにないわ。
今は…あんたと戦うつもりはない。
この私に、敵前逃亡という選択を強いた屈辱…必ず晴らしてやるから覚悟してなさい…!!


ハッタリというにも程遠い、虚勢。
幽香は目の前の竜が、自分と似た者同士という事を感じ取っている。
己が強大な力を持て余し、それを発散する好機と思って出てきたら、とんだ肩透かしを食わされたのだ。心中穏やかである筈がない。

幽香は、相手の出方を伺いながらも…最悪、その角の一本、指の一本でも道連れにしてやろうと斧をを握る手に力を込める…が、やがて竜は、深く溜息を吐くと、その場からゆっくりと上空へと飛翔して、黒い雲を纏って彼方へとゆっくり飛び去っていった。








諏訪子「金竜ですか」
さとり「今回出るの早すぎでは?」
かごめ「一応クエスト受領できるのは24F到達してからなんだけどなあ。
   金竜討伐クエに繋がるクエスト「金色の幻影」だ。
   16Fに調査に入った衛士隊が行方不明になって、捜索隊も送られたのだが…その捜索隊に不思議な事が起こっているから調査して欲しい、という内容の依頼だ」
諏訪子「というか、リメイク前にあった「金色の幻影」と「道迷える子羊、何処へ」をひとつにしたクエストに変わってるな、内容が」
さとり「受注後にフロアに入ると、扉の向こうにある区画は入口と奥の一つの扉以外通行不能になってて、さらに入れる扉の入り口付近に衛士がいて「扉の先の区画では前に進もうとすると、何故か入口に戻されてしまう」という事が聞けますね。
   入れば三歩目まではすんなり進むのですが…」
かごめ「SSQのクエスト「歪んだ磁軸」に似ているが、実は歩き方に一つ法則性がある。
   実は前方向に四歩進むことで、スタート地点に戻されるトリガーが引かれる。で、そのトリガーは一歩下がることで消される。つまりー」
諏訪子「三歩進んだら一歩下がる、を繰り返して進むわけだな。
   そして一番奥の部屋に取り残された衛士と合流できるんだけど…そこでまさかの金竜登場、と。
   これ、本当はバトルにならなかったり最悪イベント戦闘だったりとかは」
かごめ「両方正解だな。
   選択肢が出て、逃げるか戦うかを選択できる。
   戦闘にはいる場合はまあ…初手サンダーブレス、竜の鉄槌、そして3ターン目に竜が逃げて行ってしまい戦闘は終わる。
   サンダーブレスとかのダメージはのちにクエで正式に戦う場合と変わらねえから、ピクニックじゃねえならまともに食らえば普通に消し炭になるいつも通りの破壊力だ」
諏訪子「一応リメイク前でも撃破は可能だったが、ものすげえ大金もらえるんだよな。
   しかも、報告しなきゃ何度でも金竜が即復活するから、倒せさえすりゃ金稼ぎ放題と」
かごめ「一応こっちも倒せばなんか特典あるらしいが…こっちはクエスト中一回こっきりだな。
   しかもターン制限も相当厳しい…まあ、出来たとしてもその時点でレベルキャップが解放させるわけでもなし、無理に倒す必要はねえんじゃないかな」
さとり「いやそれ…「戦う必要がない」の間違いでは?
   そもそも金竜倒す事が目的のクエストじゃないんでしょうこれ?」
かごめ「甘いな同志古明地、ハチミツにサッカリンをぶちまけるくらい甘い。
   リメイク前ならいざ知らず、SSQ2にはグリモアがある。
   実はこの戦闘、金竜を取り逃がして戦闘が終わったとしても、普通に戦闘で精製されたグリモアが手に入る。つーまーりー」
諏訪子「クリア前からグリモアでサンダーブレス使えるってか。重すぎて使いものにならねえだろ」
かごめ「他にも竜の鉄槌と呪縛の円舞もとれるが…五層後半戦は特に雷の通りがいい。FOEも軒並み雷弱点だし、TEC高めのやつに属性攻撃ブースト持たせておけばいざというときに役立つだろ。
   実際、此処でサンダーブレスの★粘りましたからな」
さとり「一番最初の戦闘で雷アップついた竜の鉄槌★とったのにブレスがゴミみたいなのしかできなくて、絶望につままれながらリセットしましたよね(プークスクス」
かごめ「うるせえ、つねるぞ。
   なおこの時取った高レベルの鉄槌はあたしが持ってる
諏訪子「あ、やっぱりテメエがガメてやがったか。
   まあ、上段ブシドーは範囲狭いからな。AGI依存だけどAGI高いし、高威力全体壊属性攻撃はあって損もねえしな」


かごめ「とりあえずこの話は本編クリア後まで続くけど、今回はここまで。
   他に触れたいクエストもいっぱいあるけど、だからと言っていちいち触れてたら紙面なんていくらあっても足りねえし」
諏訪子「じゃあとりあえずアレか、封印された扉の先は」
かごめ「それはまあアレだ、銃士の呼び声はワイバーンクエやる頃触れるだろうからその時に。
   次回はラストまで一直線、怒涛のクライマックス編だ。
   で、此処からは少し、時系列的には今進行しているストーリーの少し先の話するぞ。受けたのはクリア前だけど。
   クエスト「豪傑の過去」からだ」
さとり「あの人にも色々あったんだって話ですね。
   報酬は料理大全なんですけどね。これはこれで結構いいシナリオなんですよね
かごめ「あと、オーバーロードの独白とかな。
   とりあえず今回はこの辺で。ちゃお♪」








〜フラン達が天空城へ向かって数日後〜




「姐さんよ。
天空城の先を目指すっていうあんたたちが忙しいのは承知の上だ…だが、それを承知で、ひとつ確かめて欲しい事がある」



いつものように、他の多くの常連が帰途に就いた後の棘魚亭。
この日、カウンターに座っていたのはかごめひとりであったが…何時になく真剣な、それでいて何処か寂しそうな表情のアントニオが、ゆっくりとそう切り出す。

「…珍しいこともあるもんだな。
まあ、あたし達は冒険者だ。報酬次第、と言っておくか
「そうだろうな。
なら、此処からは俺の独り言だ

苦笑を隠せないアントニオにも、こうした酒場での約束事はキチンとわきまえている。
一方で、かごめもまた、そうした人情を解さないわけではない…むしろ、口を開けばがめついほどに報酬の話をしている彼女こそ、誰よりも人情に篤い。そうでもしておかないと、冒険者の本分を見失いかねない事を、彼女自身誰よりも知っている。

アントニオはその上で、一人の冒険者の話をし始める…。

「まあ、なんだ。
俺はさ、あんた達を含め…うちの店に来てくれる奴は、みんな大事な客だと思ってる。
あんた達がどう思ってくれるか知らねえが…この店は確かに礼儀や品性のカケラもねえだろうが…それでも、差別も偏見もねえ、誰もが楽しんでくれるこの国一番の酒場だって、そう思ってるんだ
…少なくとも、あたし達は居心地のいい場所だと思ってるさ。
時々、目上に対する礼儀を知らねえ駆け出しの馬鹿が喧嘩売ってくる事を除けばな」
「そうだな、幽香姐さんばっかじゃなく、あんたもなんだかんだで血の気多いからな」

余計な御世話だ、とわざと口を尖らせるかごめに苦笑し、酒を注ぎながらアントニオは続ける。

「あんただってそう変わらねえだろうが…俺も人の子だ、商売柄客の区別は良くねえと思ってても、どうしてもってことは時にはある。
…昔な、随分肩入れした冒険者がいた。
ソイツも…姿はともかくだが、雰囲気はあんたに良く似てたよ。何時からか店に入り浸るようになって、同じようにして、他の連中がいなくなったカウンターに当たり前のように腰かけやがって」

アントニオはそこで、昔のことを思い出すかのように深く溜息を吐く。

「そいつがあるとき、言いだしたんだ。
「天空の城はある、あたしは世界樹の上を目指してやる」ってな。
まだ,あの樹海迷宮が見つかってなかった頃の話…十数年以上も前の事だ。
みんな、大法螺を吹くなと笑ったもんだが…ある時、そいつは俺にだけこっそりと教えてくれたんだ…世界樹の迷宮の入り口を見つけた、と。
俺は信じなかった。どうせ木の洞のでけえのと勘違いして言ってんだろうって思ってた。
俺はいつものように軽い気持ちで送り出してやったが……それきりだ。それきり……今もあいつは、戻って来やしねえ

かごめは、僅かに震えるその手から、あえてその顔を見ないようにしてグラスを受け取る。

…俺はそいつと賭けをしてたんだ!
オメエの言葉が正しいなら、金貨を一枚くれてやるって!

あいつがいなくなって数年後…エスバットやベオウルフといった連中の手により正式に樹海迷宮が発見されたが…俺は、あいつが今もそこにいるんじゃねえかって…ひょっとすれば、天空城まで辿りついたかもしれねえって…!」

僅かな沈黙ののち、アントニオはかごめの前に一枚の金貨をそっと、差し出す。

「…俺もガキじゃねえ、あんなバケモノどもの闊歩する森で、十何年もあいつが生き続けてるなんてバカなこと、考えちゃいねえよ。
でもな…俺も、その約束を果たさねえと…前に進んで行けねえ気がしてんだ
「解るよ、その気持ち。
……いいさ、探索の片手間で良ければこの金貨…その娘ン所へとどけてやるさ。
見つかるかどうか、わかんないけどな」

彼女はその金貨を胸ポケットにしまい、アントニオに笑いかける。

「…済まねえ、姐さん。
こんな頼みごと、無茶苦茶だって俺自身、解ってるんだ。
まして、こんな私用を特定の冒険者に押し付けようとするなんざ、国から依頼の取り仕切りを任されてる身としては失格だってことも

そういうのを受ける馬鹿野郎だと見込んでくれたからこそ、あんたはあたしに話してくれたんだろ?
まあ、期待はしないどいてよ。あたしゃ人間でないといっても、他の人間より多少死にづらいってだけでしかないんだから」

彼もまた、寂しそうな笑顔で頷く。





翌日。
事情があって倉野川に戻っているめうと美結、そして二人の様子を見に行った幽香がこの地を離れ、ヒマを持て余していたつぐみと透子を連れて、かごめは天空城へとやって来ていた。

あの日、フラン達が行った戦闘の跡は修繕されることなく、そこで想像を絶する戦いが行われたという痕跡が生々しく残るその地で、かごめはまるで何かに導かれるかのように、主亡き後もその活動を止めず空に浮かぶ城の奥を目指した。




果たして…城の奥まった所に、三人は古びた剣が突き刺さっているのを見つける。
見れば、既に骨も風化したのだろうか…まるでそこに横たわっているかのような、簡素な造りの鎧も置かれている。

「これは…どういう事?
まさか、大昔に地上から連れ去られた冒険者の?」

つぐみはその疑問を口にする。
まさか、と肩を竦める透子。

「連れ去られた奴は皆、魔物にされちまったって話だろ?
それだったらその遺品だって、こんなところに残ってるわけもねえと思うし」
「じゃあ、この人はここまでたどり着いた人なのかな?
でも、私達が来る前に、一番高いところまで登ったのは確か…エスバットの二人だけだって言うし」
「多分…こいつがそうなんだろうな。
アントン、あんた賭けに負けちまったどころの騒ぎじゃねえぞこりゃ
「えっ?」

かごめは何処か寂しそうな笑顔で、訝る娘達を余所に懐の金貨を取りだすと、そっとその防具のベルトに挟んでやった。
そして、同時にそこに、一枚の羊皮紙が挟まっているのに気づいて、それを取り上げる。

かごめはその内容を読み説いて目を見開き、そして、確信に変えた。
そして、金貨を入れていた代わりに今度はその羊皮紙を、胸ポケットにしまいこむ。

「これで、依頼は達成だな。
悪かったなあんた達、事情は後で説明するよ」

透子とつぐみはワケも解らないままに顔を見合わせる。
そして、小首をかしげながら、かごめに続いて立ち去ろうとしたつぐみはそれに気付いた。

「あれっ…なんだろうこのボタン」

つぐみは、その戦士の亡骸の傍、壁際に一つのボタンを発見する。
上にはスピーカーのようなものも見てとれるが…その意味するところが解らず彼女は首をかしげる。

「まさかこいつ、此処のボタンの罠かなんかにかかって死んだとか?」
「かもしれんが…これは、もしかすると」

かごめは念のため二人を少し離れさせると、ボタンを押す。
すると、スピーカーから、ノイズ交じりの音声が再生される…。

-…いいですか、皆さん。
我々の祖国はすべて…消えてしまったのです。
今となっては……これまでの指導…も…意味は……あたらし…者を…-


それはノイズも酷く、途切れ途切れであったが…再生される声は、悲痛に満ちていた。

-…は…私…そが、この箱舟を建造し…新たなユートピアを…-

彼女達は知る由はなかったろうが、もしここにフラン達がいれば、それはオーバーロードと呼ばれたモノの声だと解ったかもしれない。

声の内容は、ノイズ交じりが酷くその全容までははっきりとはしなかった。
もし、その全容が知れても、その意味するところは解らなかったのかもしれない。

だが、つぐみは、何処かタルシスの「殿」に残されていたある研究者の独白と、同じような悲しみを感じ取っていた。
知らず、涙がこぼれおちそうな彼女の肩を、かごめはそっと抱き寄せて告げる。

「帰ろう。
此処でもう、あたし達に出来ることはなさそうだ」

かごめにもきっと、その事は解っていたのかもしれない。
つぐみが頷くと、かごめはアリアドネの糸を取りだし…天に掲げた。





その夜。
他に誰もいなくなった酒場で、かごめはその羊皮紙をアントニオへ差し出すと…彼も全てを悟ったのか、恐る恐るその羊皮紙を受け取り、そして。


「…へへ…あの野郎っ…手紙なんざ、寄越したこともねえってのに…!」

かごめは、つぐみと透子に総てを離して聞かせた。
そして、その手紙の意味するところと、かごめが受けた「依頼」の事を理解する。


「あたい達が生まれた頃に…もう、そんな先まで冒険してた人がいたんだね」
「まだ、この地の人間達が樹海迷宮の存在を知らなかった頃だ。
だから、オーバーロードは強力な魔物を番人めいて樹海においてはいなかったんだろうが…それでも、単独であの迷宮を踏破できたというのは、他の誰にも真似できねえことだろうよ」

オーバーロードの名が出た時に、つぐみは僅かに悲しそうな表情をする。

「ねえ、お母さん。
オーバーロードのしてきたことは、確かに許されない事だと、私も思うよ。
でも…オーバーロードもきっと、誰かのためにそうしようとして

「そうかもな。
何処かで道を一個踏み外してしまって、それがどうしようもねえと気づいてしまった時…総てが手遅れになったって、ひょっとしたら奴自身も解ってたのかもしれん。
だからこそ、あいつは…自分の過ちにケジメをつけてくれる奴を、待ってたのかもな


かごめは、ふたりを席に促すと、定位置となったカウンターの一角に腰かける。
そして、人目もはばかることなく涙ぐんで、手紙を何度も読み返すアントニオに、何処か悪戯っぽく問いかける。


「なあ、大将。
あんたは彼女との賭けに負けたら、金貨一枚払うっていう話だったよな…実際、そうしたけどさ。
もし彼女が賭けに負けてたら、あんたはどうするつもりだったんだい?

彼は涙を乱暴に拭うと、いつものように皮肉めいた、それでも何処か寂しそうな表情のまま答える。

「今となっちゃ叶わぬ夢だが…俺が勝ったら、俺と一緒にずっと、この店を切り盛りしてくれって…一緒に暮らそうって、そう言ってやったさ。
…イイ女だったんだぜ?
気が強くて、ワガママで…あんたみたいに、べらぼうに腕が立つ剣士だったんだ。
……オメエの勝ちだよ、馬鹿野郎……金貨はちゃんと払ってやったからな……!

その日の酒は、普段よりも少し苦い味に思えた。
だが、かごめもたまにはそれもよしと、それを一息に煽った。