「おらあっ!!」
気合一閃、魔理沙の魔法銃が紫電を放つと、わらわらと行く先から現れる機械の監視者達を貫き、爆散させていく。
しかし、その爆炎の陰から、また新たな監視者達が現れ、レトロチックにも思えるモノアイから一斉に電磁波を放ってくる。
「…っと!
くそっ、倒しても倒してもきりがねえ!」
その電磁波を紙一重で回避する魔理沙が舌打ちする。
「避けろ、魔理沙!
そっちに機雷がいくぞ!」
背後からてゐの檄が飛び、意図を読み取った魔理沙は背後から迫る機械音の接近に合わせ、絶妙なタイミングで横へと飛びのく。
そこへ、一定速で飛来する球状の機械が飛来して通り過ぎていくと、監視者の一体が放った熱戦に撃ち抜かれて大爆発する。
「今だっ!」
「わーってらい!!」
爆発の衝撃か、本来味方のものである機雷を誤射したことでプログラムが混乱しているのか、逡巡するようにモノアイを明滅させる監視者達の脇を、魔理沙、フラン、みとりが一斉に駆け抜ける。
その後ろから、はるか後方にいた筈の文がてゐに追い付き、頷きあって僅かに脇へとそれると…その背後から高速で飛来する別の機雷。
文が、得意げな顔で、下に向けた右親指で首を掻き切る仕草をすると、着弾した機雷が監視者達諸共大爆発する。
監視者を無尽蔵に排出していた機構も、その衝撃で大きく破損している。
「これでしばらくは大丈夫そうね」
「ああ。だが…おそらくもうすぐだ」
二人が見る広間の先。
フラン達が駆けていく、先の爆風で穿たれた隔壁の先に、巨大な門が見える。
そこから伝わってくる気配は、まるでない。
その静けさが、かえって不気味さを強め、何が待ち受けているのかという不安を否応なくかき立てる。
てゐは剣を強く握りしめたまま、前へと歩き出す。
「行こう」
頷く文も、それに続く。
その先に待ち受けるは、果たして、過去に囚われたただの亡霊か。
絶望に狂った新世代の暴君か。
彼女たちの冒険は、今ひとつのピリオドに向けて動き出す…!
「狐尾幻想樹海紀行 緋翼の小皇女」
第二十五夜 永劫に坐したる者
かごめ「どうもかごめさんです。
いよいよクリア前ストーリーも最終局面、クラシックモード最終ボスオーバーロードのところまでやってまいりました」
諏訪子「まあなんだな、他にもなんか色々話したい事があった気がしなくもないんだけどな。
盗賊とか盗賊とか盗賊とか」
さとり「そもそもメイン攻略組ばかりだけじゃなくて別パーティとかそんなワケの解らないことばっかりしまくってるもんだから、無駄に長引いてるだけじゃないですかこれも。
平成25年の歳の暮れからもう三ヶ月以上、ポケモンにも触れてないですし(超実話」
かごめ「実際ここでヨタ話してる時点でもう金竜とやりあってるわけだしな実際。
というか全く勝てる気しねえんだけどどうするよ、かといってスタンダートを許したら前作みたいに途中でgdりそうな予感しかしねえぞ」
諏訪子「どー考えてもPTよくねえだろPT。
肝心なところでヒーラーが機能停止するわ、幽香は仕事しねえわ美結がまったく機能してねえわで」
さとり「というか金竜に以上はいらないって何処ソースなんです?
あえてネタばらししますけど、攻略ガイドだと毒と眠り普通に通りますよあの金色蛇」
かごめ「( ̄□ ̄;)!!??
ちょ、ちょっと待ってあたしちょっと席外す…悪いけど今回ちょっとあんた達に任せるよ(そそくさ」
【システムウインドウ】 Kagomeさんがログアウトしました
諏訪子「おーい何を勝手に…って逃げ足はやっ(;´Д`)」
さとり「攻略本のリリースされるタイミングが速いのか、それとも攻略wikiサイトまとめ辺りで悶着があるのかわかりませんが、結構最新作周りのwikiの記述内容杜撰ですからねえ。
アレだと金竜の耐性、異常関係はすべて×になってるみたいです」
諏訪子「そもそもデミファフニールの耐性に関してもwikiの記述鵜呑みにしてたみたいだけど、実際ある攻略動画を見る限りだと盲目は結構普通に入るみたいだしな。
アラクネーの頭縛りにしてみたって、恐らくは早い段階で抑制攻撃ブーストでも限界突破させてからやってたんじゃねえのかな」
さとり「でも確か、美結さんの異常って混乱剣しか伸ばしてない気がしますしね。
最もダクハンで毒撒くといっても結構無理はあると思いますが…」
諏訪子「まあこの辺はその時にまたがっつりすりゃいいんじゃないか。
今回はえーと、24Fとオーバーロードのスペックだな」
さとり「あれ、25Fは?」
諏訪子「24Fまでの総まとめみたいなフロアだから逐一詳しく触れることもあるめえ。
とはいえ見た感じつづら折りみたいになっててただひたすら長ぇだけだし、序盤のFOEゾーン超えると実はそんなに妙な仕掛けはねえ」
さとり「ゼラチンキングについてはどうなんです?」
諏訪子「25Fにしか出ねえアレか。
HP2000近くある上に物理全般と雷耐性、普段は拡散雷の「王の中の王」を使ってくるが、こいつ単体になるとイエローキューブを二体召喚して、次のターンランダム5×イエローゼラチンの生き残り数の雷攻撃「爆雷陣」を使ってくる。
まー確かにな、イエローゼラチンがパワーゲル使った後に爆雷陣とかぶっ放されたら普通にhageるわな。炎氷はしっかり通るから速攻で凍らせるか溶かしちまえばいい。あるいは他の敵と一緒に出てきたら、こいつを先に倒せばゼラチンを呼ばれずに済む。
後アレか…そういえば25F限定なら死霊の兵士なんてのもいたな。属性と武器を選ばねえチェイス使ってくる奴だ」
さとり「ほら、探してみたら結構面倒なのいるじゃないですか」
諏訪子「死霊の兵士の流光の追刃は属性、武器は確かに選ばねえが、限界突破もできず本家チェイスに比べると微妙感は否めないな。
性質もそんなに変わらん、今回チェイスもさらに弱体化してるから、チェイス使うとなるとパーティビルドそのものから考えねえと十全に能力発揮してくれねえしな」
諏訪子「話はちとずれたが、24Fの話するか。
此処で登場するFOE銀盤の監視者は、リメイク前だとジャガーの前座的なFOEで、普通に蹴散らして進める程度のごく弱いFOEだった」
さとり「だった?」
諏訪子「まさかリメイクで鬼みたいに耐久性能上がって、なおかつ個々の部類しか縛らなかった電磁波がそれ一本で全縛りときてやがるなんて誰が想像できんだよ。
挙句、灼熱光線なんて新技までもらってる始末だ。
基本的には初手と5nターンで電磁波、それ以外のターンは頭を縛られてない限り灼熱光線をひたすらぶっ放す行動パターンだ」
さとり「というと、リメイク前だと電磁波は頭脚腕それぞれ個々に対応してて、対応する電磁波ではそこ一か所しか縛られないと」
諏訪子「そゆことだ。
灼熱光線は威力中程度の全体炎攻撃。
逆にいえばこれしかしてこないから、電磁波のターンを結界などで防ぎ、あとはひたすらファイアガードしつつ雷属性攻撃で殴れば意外とあっさりカタがつく。電磁波と灼熱光線に対処できるなら到達時でも十分勝てるごくごく弱いFOEだ」
さとり「強いんだか弱いんだかわからないじゃないですか…」
諏訪子「25Fにもいるんだけど、こいつ巡回ルート決まってて、巡回ルートに踏み込んだ時点で追尾型に変わる。
しかも一定の条件を満たすと、足りなくなった数を補充する機構があるんだ。
例によって、漆黒さん同様爆破することもできるが、もたもたしてるとおかわりが来るってのが漆黒さんにないいやらしい点だな。巡回ルート外からしかけて速攻で狩り、進んでいくのが手っ取り早いかも知れんね」
さとり「後半は爆弾の誘導しづらい位置にいますしね。
ところで、如何にもメカっぽい見た目と技ですけど、グリモア化できたりします?」
諏訪子「どっちもできるよ。
ただ、相手から撃たれるとピクニックですら何処かしら一個所縛られ、エキスパなんつったらかなり高レベルでも全縛り食らったりする電磁波、こっちから使っても成功率はさほどでもないどころかゴミレベル。
金竜の呪縛の円舞もだが、敵スキルの複数縛るスキルは本当にアテにならねえ。あと灼熱光線も燃費かなり悪いから使う価値ほとんどねえな」
…
…
重く巨大な扉を開けると、そこはひと際巨大な広間となっていた。
その中には生きる者の気配はなく、周囲からかすかに響く機械の駆動音が、かえって不気味さを際立たせている。
見渡すと、周囲には見たこともない機器類が散見されるが…暗がりでなくとも、それがいかなる機構であるのか理解はできないものばかりであっただろう。
「ここが…一番奥、なのよね?
オーバーロードとかいうふざけた奴がいるとすれば、あとここしかない筈なんだろうけど」
文は固い表情のまま、あえておどけた調子で肩をすくめて見せる。
-いかにも。
此処はこの「空船」の最上部。
この「空船」は、かつて滅びを迎えた大地から我々が逃れるために、超古代の伝承にある箱舟に擬えて作られたものだ-
いずこからか、オーバーロードというその存在の声が響く。
はっとして周囲を見回すと、暗がりの中、開けた天窓から覗く夜空に、雲間から月が顔を出すと…その月明かりに照らされ、やがてその異様があらわになった。
-汝らは知らぬだろう。
この世界は千年以上前、優れた文明が発達し、自然界のあらゆる現象法則を解き明かし、神に類する力を人類が手にした時代があった。
しかし…愚かにもその時代の者達は、互いの疑心暗鬼を増大させ、自ら生み出した悪魔の如き兵器で大地を、海を、世界のすべてを焼き尽くし…そして、この世界を一度、自らの手で殺したのだ-
オーバーロードの声は、その巨大な卵状の…棺にも形容できそうなその物体から響いてくる。
-我らは滅びを予見し、それが避けられ得ぬと知った時に、この「空船」によって大地を離れたのだ。
禁断の炎に焼けたその大地は、最早ヒトの住めぬ死の世界になっていた…何百年も経ったある日、それでも大地に残り続けた者達が「世界樹」を作り、大地を蘇らせようとしたが…蘇った大地に我々は適応できなくなっていたのだ。
我は、その大地に帰る方法を探るため、命を超越する研究を始めた。
しかし…それが人の摂理に反すると、一部の者はその大地へと降りたのだ。それが、汝らの知るハイ・ラガードの興りだ-
てゐは肩を竦め、やれやれといったように首を振る。
「てめえ、何時まで私達を野蛮人扱いしていやがる…否、判断能力と想像力まで捨て去った機械人形如きに言っても無駄か。
この世界が、一度核戦争で滅んだことぐれえ知ってる。
しかも多分、千年前なんてどころじゃねえ。世界樹が植えられた年代と伝承の年代が明らかにかみ合わねえんだからな」
しばらくの沈黙ののち、オーバーロードは再び淡々と語り始める。
-汝らにどれほどの知識があるかなど、さしたる問題ではない。
我は…深遠なる人の生命の研究を行うに、人間の肉体ではあまりにも足りぬ時間に嘆き…ヒトの身体を捨てた。
そして…何百、何千の歳月を研究に費やしたのだ…我を信じ、この空船に残った者達をあらゆる災厄から救わんとするために!!-
その言葉には…何処か悲痛さを感じさせる一方、深い狂気を滲ませている。
-伝説にすぎぬ「世界樹」が如何な形であれ、この世界に蘇ったのと同じように、我も命を与える「聖杯」を手に入れることができた。
しかし…聖杯には謎が多く、これにより不死を得た者は遺伝子に異常をきたし、知性と人間の姿を諸共に失ってしまうのだ。
遺伝子研究を得意とした彼女さえいれば…今となっては、叶わぬ夢。我は一人でも研究を続けるのだ!-
「煩い、黙れッ!!
お前のその身勝手で、一体どれほどの哀しみをこの地上にもたらした!?
お前は…お前だけはッ…私がそのすべてを否定し禁止する!!」
みとりの怒声が、フロアにこだまする。
-禁止、だと。
地を這うものの分際で、我を見下ろすが如き物言いか!-
「禁止だけじゃ足りないよ、みとりさん。
オーバーロードの狂気は、この先も残してはいけないもの。
ここで…私達が破壊する! 過去から繋がるその狂気と悲しみもすべて!!」
「そうだな。
機械のバグなんて、河童でも月兎でもない私にゃ専門外も甚だしいが、こいつばっかりは直してやりてえとも思えねえ。
粉微塵に分解してやる、二度とこんなバカができねえようにな!」
フランと魔理沙も、槍を構え、銃口をその物体へ向ける。
そして、文もその傍らへと歩み出る。
「如何な事由でも、創られてしまった生命には最後まで責任を持てって…
でも…あんたは別だ。
自分で「自分を造って」、その行く末の責任を放棄して暴走を続けてるだけ。
容赦はしないわよ、ガラクタ野郎!!」
そして…中心に立つてゐが、緋緋色金の剣先を突きつけて告げる。
「幻想を裁く者、四季映姫。
あんたの権限を侵す僭越を今だけは許しておくれよ。
…お前は絶対の黒、有罪だ!此処で私達がお前に引導を渡してやる!!」
それに応えるのようにオーバーロードの巨体が激しく鳴動する。
-愚か者どもめ。
ならば、我…オーバーロードの力自らで灰燼に帰すがよい!!-
…
…
さとり「あれっこのストーリーって主人公フランさんの筈ですよね?
最後の決めゼリフって普通主人公がするものであって…あれ?」
諏訪子「あーもーいろんな奴がでしゃばりまくってるからな、もう完全に群像劇みたいな感じになってるしその辺気にすんなよ。
アントニオのセリフじゃねえけど、肩入れするやつが途中から明らかにおかしくなってるんだ。
てゐ自身が何処かで言ってたかも知れんが、今のこの環境では信じられねえ事に、狐野郎は当初嫌いなキャラとしててゐとリリカを名指ししてたんだぞ。もう私にも意味が解らんわ」
さとり「そういえば何処かに「新説因幡の素兎」みたいな話も書いてましたよねあの狐。
もう今からでもサブタイトルを「緋翼の小公女」から「白兎樹海行」とかそんな感じのタイトルに変えりゃいいんですよ」
諏訪子「そーはいうけど今更だな。
とりあえず、まずはオーバーロード第一段階の解説に入るぞ」
クラシックモード最終ボス オーバーロード第一段階
レベル60 HP6000
雷弱点 即死、石化、呪い、睡眠無効/毒に弱い
VOID0〜3(頭) 全体に無属性攻撃。数字が小さくなるほど威力上昇。3を2ターン目に、2を4ターン目に、1を6ターン目に使用し、8ターン目以降はただひたすらVOID0を連打する。
LRDA(頭) 全体に呪いかテラーか混乱を付与。1ターン目に使用する。
AACV(依存なし) ターン終了時まで属性攻撃を無効化して、ダメージをそのまま反射する。3ターン目に使用。
MACV(依存なし) ターン終了時まで物理攻撃を無効化して、ダメージをそのまま反射する。5ターン目に使用。
REPAIR(依存なし) HPを1000回復する。7ターン目に使用する。
さとり「あれっ…ラスボス?
って第一形態という事は」
諏訪子「4の神樹を思い出してもらえればいいな。
あの妖蛆と一緒で、行動完全固定だ。VOID0は勿論だが、VOID1でも十分一発でパーティが総崩れになる破壊力だ。
まあ、5ターン目くらいに決着付けなきゃ攻略は無理だと思った方がいいな」
さとり「あ、自爆はしないんですね」
諏訪子「しねえ。
雷が抜群に通りいいし、AACVとMACVは複合属性でもしっかり反応するから、どっちかに性質はっきりした攻撃を持ってねえなら、3、5ターンはチャージやバブでやり過ごした方がいい。
此処ではVOIDはみんなみとりに持ってかせて、魔理沙とフランでひたすら殴るだけだ。チャージなしのインボルブとチャージサンダーだけで2000は持ってけるから、チャージ絡めばまあVOID1が飛ぶ頃には決着つくわな」
さとり「第一段階という事は、インターバルとか何か挟むんですかね?」
諏訪子「挟まねえ。
そのくせバフデバフはリセットされるから、こいつで全力傾けるという事がない様に立ち回りたいところだ。
特にフォースブレイクの使用は厳禁、っていうかこんな奴にフォースブレイクなんて使ってるようじゃエンディングなんて見れねえよ」
…
…
「喰らいなデカブツ…アースライトレイッ!」
魔理沙の放つ雷の魔法の直撃を受け、さしたる抵抗もないままオーバーロードはゆっくりと…元の場所にすうっと着地する。
そして、そのまま駆動音を止め、動かなくなってしまった。
「…お、おい、まさかこれで終わりなのか?」
困惑を隠せないみとり。
フランも魔理沙も、みとりも…ナゾの光を伴う衝撃波を受けてはいたが、さしたるダメージを負っていない。
とはいうが、これが決着というなら、あまりにも拍子抜けに過ぎよう。
どうしようかと面々が逡巡していると、突如オーバーロードは、再び駆動音を響かせてゆっくり浮上する。
-素晴らしい…!
汝らの力…口先だけではないことはよく解った-
その声は、狂気交じりではあったが、喜悦の色を帯びている。
「そうかい。
丁度よくぶったたかれて、考えがマトモになったか」
魔理沙は警戒を解くことなく、銃口を再度突きつける。
次の瞬間、オーバーロードが言ってきた言葉は…あまりにも予想外であった。
-聞け。戦いばかりでは何の解決にもならぬ。
我が研究はまだ途上…ヒトを作り変えるシステムは一応の完成を見たが、聖杯のシステムの解明そのものは始まったばかりなのだ。
…どうだ? 汝らの力があれば、聖杯の謎を解明できるやも知れぬ。ヒトの…否、生命の限界を越える力を、汝らは欲しくないか?-
一瞬、何を言っているのかその意図が読めず、魔理沙とフランは顔を見合わせる。
しかし、背後からてゐがどやしつけ、そして、ふたりの前に立つ。
「解ってねえようならもう一度言うぞ。
巫山戯けんな、大馬鹿野郎!
私達は…そんな腐った永遠如きに一切興味はねえッてんだよ!!」
はっきりと、そして目の前の、生命を冒涜する堕落者のなれの果てに対して宣言する。
てゐはあえてその言葉を使った。
「永遠」。
それは…自分の良く知る存在を…そして自分自身をも、気の遠くなるような昔から縛りつけていた呪い。
死すらも許さぬ、終わりなき苦痛の同義語。
その言葉に、フランも文も…皆が思い返す。
その言葉が、一体どれだけ長く、誰を苦しめてきたのかを。
頷き、フランもまた、それに倣うように槍を突きつける。
「私に…大切な事を教えてくれたひとがいる。
そのひとだって、きっと同じことを言うんだと思います。
……いい加減にしろ! あんたの狂った研究は、此処で私が一片残らず破壊するって言っただろうが!!」
その怒号は…その一瞬見せた表情まで、魔理沙も文もみとりも、ある誰かを思い出して笑う。
その「永遠」のくびきから脱し、今も第一線に立ち続ける「幻想の覇王」の姿を、フランに垣間見たからだ。
「おうよ。
もし永遠の命でも欲しくなったら、その時は自分で研究して手に入れてやるさ。
テメエからもらうような薄汚ぇ永遠なんざ願い下げだ!!」
「悪いがそうなったら私はお前も禁止してやるからな、魔理沙。
だが…今は貴様だ! 貴様の暴走、此処で永劫に停止させてやる!!」
「そういう事よ。
そろそろ私も千数百年生きてるけど、これからの生をわけも解らなくなったまま生きるなんて冗談じゃないわ。
無論、あんたなんかに殺されるつもりもないけどね!」
沈黙ののち、オーバーロードは溜息を吐き、答えを返す。
-それが、汝らの選択か。
やはり、我と汝らでは、その思想に永遠の一致を見ることはあるまい-
そして…玉座めいたその場から、大きく飛翔する。
その姿は夜空に、割れる前面が翼となり、揺らめく炎の飾りは現れた手に七支の双剣として握られる。
♪BGM 「戦場 天の支配者」♪
-聞くがよい、異界から訪れし者どもよ。
我は、滅んだ世界からの脱却、新たな世界での未来を夢見た-
星海を越えた彼女らも知らぬ、未知の合金で構成される強靭な四肢に、月明かりが生えてその姿があらわになると…それは、まるで竜のようにも、天使のようにも…伝説の魔王にも擬えられる異様の姿と見てとれる。
禍々しくも神々しい、世界の闇を統べる王としての風格が…はたまた、偉大なる邪神の如き威容というべきものが、その姿にあった。
-何人たりとも、我が研究の邪魔などさせぬ!
ヒトがヒトであるがゆえの限界を、我は超えるのだ!-
その時になって、初めてオーバーロードと呼ばれる者から、凄まじいプレッシャーが伝わってくる。
それは…階下で今もレミリア達が死闘をくり広げているだろう…ジャガーノートをはるかに超える威圧感。
-神となりし我が力、思い知れ!!-
…
…
さとり「ついに、ラスボスですね。
けどまあ、リメイク前を知ってるとどうしても「ラスボス(笑)」としか言いようないんですけどねえ。
様子見で挑んだらあっさりsageたなんて報告には枚挙に暇がないですし」
諏訪子「私もその認識でいたんだがな。
まあでも、リメイクされて非常に面倒くさくなってる。
レベル59で挑んだことになってるが…まーとにかくこのレベルではどうにもこうにも勝負にならなかったんだよ」
さとり「ふむ…スキュレーとかの例を挙げるまでもなく、パターンやら何やらもう色々別物でしたから、ラストに配されるオーバーロードがなんの改善(笑)もされてないというわけはないと思いましたが…」
諏訪子「精々モーターヤブがモーターヤブ再び改善くらいになった程度の差しかないと思ってたが…正直恐れ入ったとしか言えないな。基本スペックはこうだ」
クラシックモード最終ボス オーバーロード第二形態
レベル60 HP27000 耐性等は第一形態と同じ
美しき陽光(頭) 全体に炎属性攻撃、頭封じ付与
凍雨と雨氷(頭) 全体に氷属性攻撃、腕封じ付与
雷鳴と我が身(頭) 全体に雷属性攻撃、脚封じ付与
生まれ出づる悩み(腕) 近接拡散壊攻撃、混乱付与。後列を狙う事が多い。
山行水行(腕) 近接一列壊攻撃。前列のみを狙う。
孤独そして孤立(脚) 全体に呪いかテラーを付与し、物理防御を下げる。
何処何処(依存部位なし) 弱体解除し、3ターンの間物理・属性攻撃力アップ
如く舞う(依存部位なし) ランダム5回斬属性攻撃
※何処何処は弱体を受けたターン終了時、ターン中の行動枠を消費せずに使用する
諏訪子「基本はこうだ。
実は全体的に火力は高くない上、行動パターンがある程度決まってるんだ。
だから今回もラスボス(笑)かと思えば、実はそうでも無くてな」
さとり「どうせオプションとか何か呼ぶんでしょう?」
諏訪子「そういう事だ。
とりあえず先ず、こいつの行動パターンを説明するぞ」
第一段階
何もしない(様子を見る、等)→山行水行→通常攻撃→何もしない(ryのループ
HP21600を下回るくらいでサテライトキラー(HP1700、雷弱点)を後列に1体召喚し次パターンへ
※サテライトキラーはオーバーロードが属性攻撃を行った場合、同じ属性の攻撃で受けた対象(全体なら全体)に追撃する。それ以外の時は通常攻撃(恐らくは壊攻撃)をする。
第二段階
山行水行or通常攻撃→同左、ただし直前が山行水行だった場合は通常攻撃+ロードコア設置(HP4000、耐性等は本体に準ずる)→美しき陽光×4→如く舞う 以降ロードコアが撃破されるまで如く舞うを繰り返し、コア撃破で次パターンへ
※ロードコアが残っている状態で如く舞うを使用した場合、回数が5回から10回に増え、一発の威力も上昇する。ロードコアは行動しない。
第三段階
様子を見る(何もしない)→山行水行or通常攻撃or生まれ出ずる悩み→様子を見る→山行水行or通常攻撃or生まれ出ずる悩み、のループ
※山行水行、通常攻撃、生まれ出ずる悩み、山行水行…という順で繰り返すが、スタート地点はランダム(?)
HP16000を下回るくらいでサテライトキラーを後列に2体召喚し次パターンへ
第四段階
第二段階のパターンに準ずるが、最初の2ターンは第三段階のループを受け継ぎ、美しき陽光の代わりに凍雨と雨氷を使用
第五段階
第三段階のパターン、山行水行と通常攻撃の間に孤独そして孤立が混ざる
HP10000程度を下回ると、サテライトキラーを後列に2体召喚し次パターンへ
第六段階
第二段階のパターンに準ずるが、最初の2ターンは第五段階のループを受け継ぎ、美しき陽光の代わりに雷鳴と我が身を使用
第七段階
第五段階のループを引き継いでいるものと思われる
生まれ出ずる悩みを使用した次のターンにロードコア召喚、以降属性三種ランダムで3〜5ターン使用したのち、如く舞う使用しループの最初に戻る
※発狂状態に入っている可能性が高く、行動パターンが安定していないようである
諏訪子「詳しい立ち回りについては次に解説するが、実は色々エグイことにはなってる。
基本は三色ガードで属性を防ぐんだが、召喚されるサテライトキラーが曲者でな。こいつを処理できなかったために大体第四段階辺りで属性チェイスまでさばききれなくて押し負けたってパターンだ」
さとり「後列ってのがいやらしいですね。
どうせ魔理沙はペネトレイター振ってんだろうし、それである程度はカバーできるでしょうが…というか、ただでさえバーローの全体属性攻撃が色々酸っぱいのにガード一枚で対処できないというのが本当にいやらしいですね」
諏訪子「即死は効かないけど、実は強耐性で確率は低いながらもサテライトキラーには石化が入る。
第四階層でコカトリスをちまちま狩ってれば石化の香も買えるようになってるだろうから、PTにカスメやアルケミなどLUC高い奴がいて、処理に間に合わないようなら試してみるのも手だな」
さとり「と言っても、アルケミが居るんだったら攻撃アイテムダメージ三倍料理食べて雷撃術の起動符投げれば済む話なのでは」
諏訪子「それは言っちゃいけないお約束…というか、巨苺大福はその救済策にあるようなアイテムかも知れんわな。
定量分析が絡めばレベルにもよるけどまあ、ほぼ一発でサテライトキラーが吹っ飛ぶのでそれも試せれば試してみるといい。
そしてロードコアだが、こいつ自体は何もしない。ただこいつが生きてると、如く舞うの被害が単純に四倍になる。しかも生きてる間如く舞うを連打してくるから、こいつもとっとと処理しなきゃならねえ」
さとり「というか、ロードコアなしでも適正なら一発あたり120前後貰うじゃないですか。
これ威力上がって回数まで増えたら一発でも受け切れるかどうか怪しいんですけど」
諏訪子「それはもう触れちゃいけない所だな。
まー兎に角、これまでのボスに比べて手数がハンパなく多い。
厄介な異常は乱用しないが、決して無視できない程度には使ってくるから、リメイク前の先入観を捨てないと泣きを見る羽目になるな…っていうか実際、見たしな(しろめ」
諏訪子「次はアレだな、いよいよクラシックのラスト。
各キャラのスペック紹介とか諸々の紹介、まずジャガーに挑んだ連中からやっていこうと思う」
さとり「ポケモンもそうですけど、世界樹も此処からがある意味本番ですからね。
しかしまあ、これから登場するあの子達の顛末何時になったらしっかり語られることやら」
諏訪子「それは言うな(しろめ」
…
…
稲妻が閃き、炎が舞い、氷の竜巻が「空船」を駆け抜けるたび、少しずつ、攻める彼女たちの手数が減っていく。
悲鳴のような怒号を上げながら、流れる血で片目を塞がれたままの魔理沙が、それでも最後の足掻きに向けた銃口から雷火を放つより前に、鉄槌の如き尾が彼女の身体を床へと叩きこむ。
振り卸された刃の先で、みとりも己の血で出来た血だまりの中に突っ伏して立ち上がる気配すらない。
フランはなおも、ただ自分の手にある槍一本を恃みに立ちあがるが…それを嘲笑うようなオーバーロードの無慈悲な一撃で吹き飛ばされた。
文の姿に至っては、視界の中にはない。
先に吹き飛ばされ、瓦礫の下に埋もれた彼女の生死すらも解らない。
(私…どうしてこんなことしてるんだろうな)
てゐはただ、この絶望的な戦闘を…薄れゆく意識の中で茫然と眺めていた。
無残にも、左手の二の腕から下と、左足の腿から先…その先の感覚は既にない。
ひしゃげて血と肉の塊となったその境目から、狂いそうなほどの激痛があったはずなのに。
これは、夢なのだろうか。
夢だとしたら、笑えないくらい荒唐無稽で、飛びきりの悪夢だ。
此処はまだきっと、自分がこの樹海に旅立つ前の夢の世界なのだとしたら…予知夢なのだとしたら。
しかし…そうでないことは、彼女自身が一番よく知っていた。
(私も、ここまでか…ごめんよ、クロガネ)
彼女の眼から涙が零れ落ちる。
-汝らの冒険はここまでだ。
さあ、死ぬがよい!!-
神を気取り、その神に近き狂える機械の魔神が、己の力の脈動で発光した七支の切っ先で、てゐの身体を刺し貫こうとしたその刹那。
『何やってんのよ、馬鹿兎!
こんなところで何時までも寝てるんじゃないわよ…諏訪子さんに、またサボりいれてるって報告するよ!』
てゐははっと目を見開く。
止まった時の中、その少女は振り向いて、悪戯っぽく笑う。
『あなたは、この旅路の中で、護りたいものが見つかったんじゃない。
託された誇りを、想いを、繋いできた絆を。
あなたが見てきた千余年の中に、なかった景色も今はこんなにいっぱい』
その少女の伸ばしてきた手に、失われたはずの左腕の感覚が蘇り…そして、その手をしっかりととる。
『折角素敵なモノを一杯もらってきて、新しい自分だって見つける事が出来て。
イイじゃない、今のあなたは、とっても素敵な私の大先輩だよ。
だから…こんなところで負けないで、てーさん!』
てゐは、少女の名を小さく呟く。
繋がった手が、光に包まれるその身体に、力がみなぎる。
-何ッ…!-
高速回復する四肢でしっかりと大地を踏みしめ、てゐは渾身の霊攻大斬でその剣を受け止める!
「まだだ、まだ終わりじゃねえ!
追い詰められた兎の底力、篤とその目に焼き付けろ!!!」