~件の騒動から数日後、鋼の棘魚亭~


「姐さん一体何処に行ってたんだ?
こっちゃ大変だったんだぜマジで。
いきなり空が真っ暗になってよお、気づいたら空がばぁッと光りやがって次の瞬間西区が火の海だぜ
「そんなんあたしにどうしろってんだい。
いくらあたしが人間じゃねえからっても、できることとできない事に限度ってあるわい。
ギルドに行けばギルド長が、お前ら何処で油売ってやがったみたいな言い方しやがるし…第一あたしだって事情がよく飲み込めてねえんだ、アントン知ってんだろまず説明だ説明」

かごめは、ワケも解らないと言わんばかりに口を曲げ、すっかり定位置となったカウンターの一角に腰かけながら頬杖を突いている。

かごめが「禁忌ノ森」から帰ってきたのは、金竜が町を襲撃した翌日のことであった。
当然、下の方で何が起きていたかなど彼女等は知る由もないが…心当たりがないと言えば、嘘となる。


突然、街を襲った雷の雨。
そのような芸当ができる存在を、かごめにはいくつか心当たりがあるが…この世界で、それに類するデタラメな力をもった存在と、戦った経験もある。
そして…禁断の森の守護者であるゴーレムを倒したことで、解き放たれたいくつかの強大な魔物の気配に、それがいることも。


(目覚めやがったな)

かごめは表面上アントニオに覚られぬよう、彼の愚痴を聞き流しているが…その心中は、来るべき戦いに備えて既に考えを巡らせ始めていた。
その彼女の思索を打ち破るかのように、ひとつの影がその隣の席に腰かける。

「かごめ。
奴は…私がもらうわよ」


カウンターの先…アントニオすらもその視線の先に入れぬ険しい目つきのまま、幽香ははっきりとそう宣言する。
幽香のいつになく険しい表情に、誰何することも忘れて後ずさるアントニオを余所に、かごめは僅かに眉をひそめ、視線を合わさないままの幽香へたしなめるように告げる。

「何の因縁があるのかしらねえが、オススメはしねえよ?
あたしは一度戦ったことはあるが、正直今は条件がその時とは」
「私だって馬鹿じゃないわ。その時、あなたが諏訪子にどう啖呵を切ったのか、忘れたわけではないもの。
同じ事を、そっくりそのままあなたに言うわ。
あれほどの屈辱を受けたまますごすご引き下がっているのは、私の…いえ、私「達」の流儀じゃないわ

その時になってかごめは初めて狼狽の色を僅かに見せ、そして、刺すような殺気と共に横目で幽香を睨む。
アントニオも状況が解らぬままだったが、それでも二人のその一発触発の空気へ割って入る。。

「ま、まあ待てよ姐さんがた。
俺にはどうも色々事情は飲み込めてねえが、とりあえず姐さん方が今回の真相に心当たりあることと…あと多分だが、何かしらの因縁がありそうな事だけは理解出来たぜ。
込み入った事情のところには踏み込まねえのが俺の流儀じゃあるが、流石にあんたらに一戦やらかされちゃあたまらねえ

真剣な表情に戻った彼が、ふたりにグラスを差し出しながら、仲裁とも警告ともとれる語調で割って入る。
かごめが何か言おうとする前に、そこに現れた意外な者が、意外な一言を発した。


「お母さん。
幽香さんの言うとおり…私は、何処をどう転んでも「藤野かごめの娘」なんだよ。
私からもお願い…私達に、あいつと戦わせて…「雷鳴と共に現る者」と!」




「狐尾幻想樹海紀行 緋翼の小皇女」
第二十八夜 天砕き、荒れ狂うは雷の王(前編)




静葉「あ、前回に引き続きまして最近出番の少なさが気になり始めてる静葉さんです」
てゐ「どんだけ気にしてるんだい。
  クリア後の三竜はもうあれですな、世界樹のお約束みたいな感じになりかけてるわけだけど」
静葉「前提クエスト抜きというか、討伐がクエストになってないでイベントでしかないのはSQ3だけね、今のところ。
  狐野郎は3から入ったから、三竜ってそんなものかと思ってて4と新では大分面食らってたみたいだけど」
てゐ「その上新に来ると、三竜のステも序列が出来てわけが解んねえみたいな。
  今までいっつも後回しにしてた金竜と、いきなり最初に戦わされるんだもんな」
静葉「実際これまでのシリーズ、特に3は「なんでこんなの後回しにしたよ…」ぐらいの拍子抜けっぷりで、4に至っては赤竜はもとより氷竜よりも再戦が楽だってほざいてたくらいですものね。
  その割には新ではエキスパでの攻略完全に諦めてたけど」
てゐ「今回は?」
静葉「このアホみたいにバランスのおかしいPTで、事もあろうに20回以上もhageながらなんとか倒してたわ
てゐ「………………20回?
  いやいやいやおかしいだろその回数。普通そこまでになるまでに何らかの措置とるんじゃねえの?」
静葉「やった上での20数連敗よ。
  あまりにもsageるビジョンが見えなくなった狐野郎は20hage以降数えるの止めたらしいわ。最後はもう、現時点のレベルカンストまで挙げた挙句一人を転職させたからね。それでも相当綱渡りの勝負で、それで負けたらスタンでの狩りを解禁してレベルを72、3位にあげてから再戦する気でいたらしいわ」
てゐ「それもひっでえな。
  一応一番弱い竜で、攻略wikiとかでもそんな攻撃激しくねえ的なこと書いてあった気がすんだけど」
静葉「まあそれがあくまで手慣れたボウケンシャーの所見でしかないことと、狐野郎も所詮は一般貧弱ボウケンシャーでしかなかったという事よ。
  実際、パーティ構成もそんなよろしくはなかったことも事実なんだけど」
てゐ「盾役はいないとはいえ、透子がショックガードもってったんじゃなかったのか?」
静葉「兎に角そんな前評判なんてさっさとドブに捨てろってことなんでしょうよ」








~翌日 桜ノ立橋・翼の聖地~


「んー…とりあえず、ここに来れば何かあるめうか?」
「そういう話なんだがな。
何しろかごめさんのことだしな。あれ以上問い詰めようとしたってのらりくらりはぐらかされて終わりだよ。
しかし…」

透子はつぐみのほうを見やる。

「つぐみ、あんたも…本気なんだな。
町を襲ったあいつは、あの時見た金色の竜だ。
幽香さんなら解らん話でもないけど…あんたまで本気で、あいつと戦うって言うんだな?

つぐみは黙って頷く。

「…どうしてだお?
正直、あんなおっかない奴となんて、もう二度と会いたくないって思うのが普通めう。
めう達だって、知ってる。あのとき…誰も、動くことなんてできなかった」
「問われるまでもない質問だわ。
あんな屈辱、倍返し程度で済むほど大人しい腹の虫なんて飼ってた覚えはない

幽香は使いこまれた大斧の刃先を地面に突き立てる。
何処か呆れ顔の透子が何か言おうとする前に、つぐみもまた、その大人しそうな顔立ちに似合わぬ宣言を放つ。

「そういう事だよ。
自分でも、おかしいんじゃないかって思うくらい…私も、こんな気持ちのままいるのは嫌だ。
だから…とーこさん達は別に私に付き合う必要はない。馬鹿をやるのは、私と幽香さんだけで」
「そか。
なんか納得したよ。
だったらなおのこと、あんたと一緒に行く理由が出来た

透子はその言葉を割って、つぐみの肩を叩く。
今度はつぐみが呆気にとられる番だった。

あんな程度の奴にビビってたんじゃ、あたいのやりたいと思ってる事だって夢のまた夢だ。
早苗も確か、かごめさんやリリカさんと一緒にあの竜と戦ったって言ってたよな。
…だったら、なおのこと負けてなんかられるかってんだ!」
「とーこ、正気めう!?」
「あたいは至って正常だ。
そういうめうめうさんよ、あんたはどうなんだい? 本当におっかないなら、あんただけでも此処から帰るか?」

わざと、からかうような口調で肩を竦める透子に、今度はめうが喰ってかかる。

「冗談じゃないめう!
確かに、危険は承知の上だお。まりりにも、めうが命をかける理由ないって言われたお。
でも…私にも、やりたい事があるんだ。こんなところで、逃げるなんて選択肢なんてない!
「なあんだ。
それじゃあ、これでみんなの意思は揃った…引き返す必要も、止める理由もないじゃないですか」

何処か呆れるように、美結も大げさに溜息を吐く。
そして、僅かに険しい表情をするつぐみに、同じような表情で返す美結。

「つぐみちゃん。
私の言葉は一昨日、言ったばかりだよ。
こんなことで私達はノケモノにされる云われもないし、あなたにその権利もないはず。
…かごめさんもそれを解ったからこそ…何も言わずにここへ行くように言ってくれたんじゃないの、「私達」に!?


美結はそう言って、少し寂しそうに笑うと、その手を取って諭すように続ける。

「理由を抱えて居るのは、みんな、そうだよ。
酷い事を言うけど、あなたのことが心配だからとか、そういう理由でついてくんじゃない。
目的が…偶々一緒だっただけ。それだけだよ
あたい達はそれぞれ得手勝手に、自分の落とし前をつけに行くだけさ。
あんただって、そうだろ、つぐみ」

つぐみはその時になって、ようやく表情を緩める。
そして、申し訳なさそうにうつむく。

「ごめん…みんな。
そうだよね…私がそんなことを決めるなんて、そんなおこがましい話なんてあっちゃいけないんだ。
…倒そう、みんなで。あの竜へ借りを返す為に!

そして、つぐみが顔を上げた時…彼女は思いもしないものをその先に見た。


「借りを返す、か。
ふっ…ははははは! お前達はかごめと同じような事を言う。
外の世界にはお前達の様な剛毅な娘たちが余程多くいると見える」


空に舞うその影が、さも愉快そうに笑う。
鳥の翼と手を持ち、獣のような耳を持つ、何処か威厳と高貴さを感じさせる翼持つ者が、そこにいた。




「…あなたは?
それに…お母さんを知ってるの!?」
「その質問に対する答えは、是だ。
彼女は、土の民ですら知らぬ、さらに古い盟約の言葉を知っていた。
故に…我が翼人の長として、空の座のさらに天空に広がる禁断の箱庭の封印を解く手引きをした」
「お、おいどういう事だ?
って言うかあんたは一体ナニもんだよ本当に?」
「ちょっとみすちーに似てるめう」

ふむ、と、その翼人…クァナーンは腕組みをしたまま、ゆっくりと少女達の目の前に降りてきて言葉を続ける。

「我はクァナーン、この桜の森に古くから住まう翼人が長。
かごめは言っていた。
もし、自分の名を知る者がこの地に来て、その者達がクランヴァリネを討つ意思を示したその時に、クランヴァリネの元へ導けと
「クランヴァリネ?」

小首を傾げる美結に、クァナーンが頷く。

君たちの言葉では、金竜。もしくは、土の民の伝承にある「雷鳴と共に現る者」を指す。
我らの伝承にも古くより伝わる、雷を纏い暴れる空の暴君」
「暴君、ね。
あいつのせいでハイ・ラガードの街が酷い事になったんだ。
あたい達に勝負をすっぽかされた腹いせに、あの金色が降りてって暴れたらしくてね」

クァナーンは僅かに表情を曇らせる。

「それは…不遇な定めであったな。
かごめ達が禁忌の箱庭へ向かって間もなく、「雷鳴の座」からすさまじい雷が起こり、土の民の街へ向かったのを見た。
知らせるべきか迷う暇すらなく、奴はその暴を振るってしまったという事か」

苦々しげに口を開くその様子からも、彼らもまた、古くからその恐ろしさを身をもって体験していることがつぐみ達にも解った。

「アレは、我が先祖の代より、忌避すべき天災の一つとして考えられていた。
…あえてもう一度聞こう。
君らはあの空の暴君に、クランヴァリネという強大な力に立ち向かう気はあるか?
「しつこいのは嫌いよ。
奴には借りがある。それを、皆で返しに行くところよ。
知っているなら居場所を教えなさい、鳥人間」

それまで沈黙を守っていた幽香が、静かにその強い言葉を告げると、一瞬呆気にとられながらも、クァナーンはさも愉快そうに笑う。


「君の言うことは確かにひとつの道理。
それは、我らの定めに反するものではない。
…教えよう、クランヴァリネの潜む「雷鳴の座」…その道しるべを!」









てゐ「結局クランヴァリネってどういう意味なんだろう」
静葉「さあ…語感的にはイタリア語かフランス語っぽいけどどうなのかしら。
  まあそんなことはとりあえずどうでもいいわね」

静葉「先にも触れたと思うけど、金竜討伐には二つの前提クエストがある。
  「金色の幻影」と「啜れ、古なる血の杯」よ。
  加えて、後者のクエスト終了後に出現するゴーレムを倒す必要がある」
てゐ「ああ、それであの連中ゴーレムを倒しに行ったわけ」
静葉「そういうこと。
  それで、金竜討伐クエスト「天砕き、荒れ狂うは雷の王」が依頼に現れるので、それを受けると20Fの東側の所にクァナーンがいるから、彼との会話イベント後に「金色の書」をもらえるわ。
  そしたら今度は、19Fの下り階段側近くにあるナゾの紋章を調べると、金竜の所へ続く外周部へ行けるようになる。
  その外周を辿って、19F外周部にある雷鳴の座に辿りつくとイベントが発生、金竜が出現して戦う事ができる」
てゐ「四層攻略時に私も気になってたんだけど、なんかFOEっぽいのが巡回してたところだろ?
  隠しエリアなのは解ったけどどう言ったもんかとずっと思ってたんだよね。まだ何気に触れられてない世界樹の
静葉「それ多分もうちょっと先の方のイベントで触れるから(キリッ
  これもかごめ達が話してた気がするけど、そこに巡回しているFOEが彷徨う魔眼、元々第五階層FOEだった奴ね。
  こいつの巡回パターン少し変わってて、基本的には19Fから登場する鷲の様なループ巡回するんだけど、途中に穴があるとそこを出入りする。
  出る前と出た後のパターンは決まってるんだけど、結構巡回ルート上の穴からいきなり現れるから心臓に悪いことこの上ないわ…もっとも、実はそんな強いFOEじゃないというか、ぶっちゃけかなり弱いわよ」
てゐ「弱いんかい^^;」
静葉「HPは14000強、混乱無効で物理に非常に高い耐性があるけど、初手で使ってくる「狂奮の瞳」が面倒なくらいね。
  狂奮の瞳は混乱と、物理攻撃力アップ付与してくる攻撃よ。補正率は1.5倍程度とかなり高いから同志討ちされると悲惨な事になるけど、混乱を解除すればかなり有用。物理は通らないけど、序曲で属性付与してやればまるっと利用できるわ。
  拡散斬攻撃「掻き切る爪」の威力は結構あるけど、致命的なレベルじゃない。属性攻撃の通りがめちゃくちゃいいから、狂奮を逆利用して掻き切る爪の威力に耐えきれるなら恐れることはないわ」
てゐ「少なくとも26Fに居る牛野郎よりは弱いことは理解できた
静葉「とりあえずこいつのレアドロは盲目撃破が条件。
  カスメ最強防具の素材がレアドロで取れるけど、通常ドロップで作れる盾も3番目に強い盾の素材よ。
  ああ、先に言っておくけど殺戮の盾は防具じゃないわよ、シールドスマイトの破壊力をアップさせるための武器だから(キリッ
てゐ「たーしーかーにー(棒読み
  まあでも、面倒だから無視して言ってもいいわけだろ。クセはあっても所詮は巡回型なんだろうし」
静葉「むしろ面倒なのは雑魚ね。
  隠しフロア限定で出現するサンダードレイクとシザーズクラブ、どちらも第六層雑魚相当の能力がある。
  シザーズクラブは力溜めの後に即死付与付全体攻撃をぶっ放してくるわ
てゐ「その辺は世界樹本当に容赦ねえよな。
  サンダードレイクのランダムヒット雷攻撃も属性火力下げられる厄介な攻撃だしな」
静葉「例によって、どちらもレアドロが結構優秀な防具の材料になる…というか、サンダードレイクのそれはガンナー最強小手の材料になるわね。
  シザーズクラブをテラー撃破すると落とすレアドロップからは、テラー耐性を大幅に上げてくれる最上位クラスの軽鎧ができるわ。これがメディックに装備できれば、どれほど後述する金竜戦が楽になったことか」
てゐ「…なんとなく20hageとかいうトンチキな事態の理由が見えてきたぞ…。
  まあいいや。ストーリー()的にはすぐにでも金竜と戦えそうな気配だが」
静葉「先にそっちに触れてしまうわね。
  今回は金竜のスペック解説が主になるわ。攻略と、こっちのスキル紹介は次の回でね」


クエスト「天砕き、荒れ狂うは雷の王」ボス 雷鳴と共に現る者
レベル70 HP32000 雷無効/炎弱点 即死・石化・テラー・呪い無効/眠りと毒以外すべてに強め
サンダーブレス(頭) 全体に極大威力の遠隔雷攻撃。1ターン目と、呪われし遠吠えの次のターンに必ず使用。
古竜の呪撃(頭) 貫通近接斬属性攻撃。与えたダメージ分のHPを回復する。
竜の鉄槌(脚) 全体に遠隔壊属性攻撃、麻痺を付与。
呪縛の円舞(脚) 全体に全個所封じを付与。後述する「ドラゴンハート輝」出現直後のターンに使用(例外あり、解説参照)。
呪われし遠吠え(頭) 全体の強化を解除し、テラーか呪いを付与。

※HPが70%程度、40%程度、10%程度になると、同列に「ドラゴンハート輝」が出現(HP3000、耐性等は本体に同じ)。
 出現した次のターンの終了時、ターンごとに威力が上昇する全体雷攻撃「雷の共鳴」を毎ターン使用する。
 なお、本体のHPがドラゴンハート出現時から変わらない場合、撃破しても即座に復活する(?)。


てゐ「…………なあ静葉、こいつ本当に三竜の中で一番弱ぇの?
  どう見てもなんか色々おかしいんだが(しろめ」
静葉「タルシスの奴よりは狂ってないわ(迫真
  まあでも、気持ちは解るわよ。結局エキスパでの攻略を投げた前作の金竜も、HPはこれより10000程度低かったわ。
  なおかつ今回はどの竜もなんだけど、ドラゴンハートとか言う別部位の出現がある。これの対処も必要になるから、兎に角ひたすら面倒なことになってるわね」
てゐ「というか、逐一こっちの足止めするような異常の多いこと多いこと。
  全体に全個所縛り、麻痺付与、テラーか呪い…なんだこれ本当に倒させる気ねえだろ?」
静葉「それでも轟雷なんていう狂った技のあったタルシスよりマシよ(迫真
  でもま実際、こいつ相手は本当に狐野郎が何べんも心を折られてたわ。異常撒きが激しすぎて、特にテラーで何回つぐみが機能停止したことか
てゐ「エキスパ適正域のテラーは本当に嫌がらせかってぐらい停止するからな。
  ブレスもアレか、新の仕様なんだな。私の聞く所では4以前は完全固定ターン、新から予告あってその次というパターンになったって話だし」
静葉「大まかな行動パターンはこうね。
  初手のブレス以降と、次のブレスまでの間はおよそ1~4ターン。
  最初にドラゴンハートの出現する70%くらいまでは、竜の鉄槌と通常攻撃を延々と繰り返すわ。そして、大体最初の周回はサンダーブレス→鉄槌→通常攻撃→鉄槌→呪われし遠吠え→ブレスでほぼ固定されてるわ
てゐ「ん? そうすると一周目は必ず、ブレスとブレスの間は4ターンあると言ってるように聞こえるが?」
静葉「流石に20回以上戦ったから、そこはほぼ間違いないわね。
  というより、最初のドラゴンハートが出現するまで、ブレスと次のブレス、もしくは遠吠えと次の遠吠えの間に4ターンインターバルがあるのは間違いないと思う。そのパターンが崩れ出すのは、最初のドラゴンハートが出現してからね。
  因みに二週目は鉄槌から始まるわ」
てゐ「なんとなくだが、ジャガーノートの腐った息や、オーバーロードの属性以外の行動パターンと一緒か」
静葉「そういうことね。
  そんなこんなで70%までHPを削ってやると、ドラゴンハートが出現する。
  次のターンから雷の共鳴をターン終了時に使ってくるけど、最初は大したダメージじゃない。でも、2回目から一気に火力が上がってくから…そうね、出現したら3回目の共鳴が放たれる前に倒さないと、確実にそこで死ねるわね。4回目ともなれば、エキスパだと大体250前後喰らうわ」
てゐ「ほとんど立て直し効かねえダメージじゃねえか。
  一応雷属性だったらしガードで防げねえの?」
静葉「防げるわよ勿論。
  けど、放置戦法を取るなら本体のブレスも防ぐ別の要員が必要になるけど」
てゐ「あー…そういうこと。
  HPもそんなないからさっさと処理しろと」
静葉「勿論、以降の竜はドラゴンハートのHPもトチ狂った数字になっていくから、放置した方が速い場合もあるけどね。
  話は横道に逸れたけど、ドラゴンハートが出現した直後には必ず、呪縛の円舞を使う。
  ただこれにも例外のパターンがある…ドラゴンハート出現の次のターンが、遠吠えを撃つタイミングと重なってた場合ね」
てゐ「優先順位はどっちになるの?」
静葉「遠吠えよ。
  なのでドラゴンハート出現→遠吠え→ブレス→円舞までが確定するわね。
  これも、HP70%までならまだ、遠吠えのタイミングが読めるんだけど…問題はこれ以降。
  ドラゴンハート出現以降からはパターンが少し変わり、ブレスの3ターン後ぐらいに遠吠えを使うなんて事もしてきやがる。つまり、ブレスとブレスの間隔が、3ターンだったり4ターンだったりまちまちになる
てゐ「間隔変わるとかじゃなくて、間隔がまちまちになるのか…?
  じゃあ、うまくブレスの直後とかに出現させたりしねえと、円舞読みでバインドリカバリするか遠吠え読みでリフレッシュするかを読み外したらえっれえことになるじゃん」
静葉「大体それだけで5、6回はhageたわね。
  透子にテラー対策、つぐみに頭縛り対策を施してあったんだけど…まあ、これが本当に面倒で。
  因みに二回目の出現以降、ブレスの2ターン目ぐらいで遠吠えを始めやがったりもするからさらに面倒なことになる」
てゐ「おひ…( ̄□ ̄;)」
静葉「あと言い忘れてたけど、最初のドラゴンハートの出現時は古竜の呪撃も混ざって、鉄槌→呪撃→通常攻撃→鉄槌…というループになるわ。
  でも、ドラゴンハート出現二回目以降はそのパターンも崩れる。通常攻撃が鉄槌か呪撃に置き換わり、鉄槌→呪撃→鉄槌→鉄槌みたいに鉄槌を連発したりするわ。
  終盤は滅茶苦茶よ、ループなんてどこにもなくて、ただ鉄槌を連打したりブレスの間隔が短くなったりとかいう殺戮マシーンと化すわ。ブレス打った次のターン即座に遠吠え→ブレスなんてわけのわからないこともされたわね」
てゐ「逆を言えばそこまで押し込めれば、もうドラゴンハートなんざ無視して、こっちが参る前にフォースブレイクをガンガン使って速攻で倒しきれ、ってことなんだろ?」
静葉「その認識でいいわ。
  レベル70にもなれば、微妙微妙と言われるフルゲインでおおよそ3500近いダメージが叩き出せる。
  この威力があればドラゴンハートも一撃だけど、ドラゴンハートの処理に使うか本体を削りきるのに使うか…これを見誤って7回くらいhageたかしら。まさかドラゴンハートが何回も何回も召喚されるなんて考えてもないもの(しろめ
てゐ「なんだかなあ。
  えーっていうかこれで一番弱いのかよしつこいようだけど…つか私本当にこんなのと戦わなきゃいけない?(しろめ」
静葉「君はこの強大な力に立ち向かう事にしてもいいし、私には無理だと諦めて幻想郷に帰ることにしてもかまわない(キリッ」
てゐ「…言うと思ったよ。
  しゃあねえ、今から文でも連れてって対策練るか('A`)」
静葉「あ、結局やるのね^^;」


静葉「というわけで、詳しい立ち回りは次に回すわね。
  今回はここまでにするわ」
てゐ「不謹慎な話かも知れんけど、あいつら本当にどうやったらそんな何回も何回もhageたのか気になるよな」
静葉「そこも踏まえて、今回は残ってる限り、対策の変遷についても触れるわ。
  狐野郎はそれこそそのたび、今回こそは必勝だ!ってスキルのメモだけはよく残してあったようだし」
てゐ「よく言えば試行錯誤の歴史なんだろうがな。
  じゃ、今回は」
静葉「ここまで」








「ここが…雷鳴の座?」

立橋の長い長い外郭を辿り、道中正体の解らぬ目玉の如き魔物を回避しながらたどり着いた部屋の景色に、美結達は思わず息を飲む。
折しも、翼人の言う「時の節」…自分たちが「春」と呼ぶその季節に当たる桜の森から吹き付ける風は、桜色の美しい奔流となり、その美しさに眼がくらみそうにすらなる。

「すっごい景色…!
くやしいけど倉野川公園の並木じゃ比べ物にならないめう…!」
「あんにゃろ、ハイ・ラガードを滅茶苦茶にしやがった分際で、こんないい場所をねぐらにしてたのかよ。
それだけでも十分に許されないね」

透子が軽口と共に肩を竦める。

しかし…美しい景色に気を取られながらも、彼女達はそこに迫るすさまじい気の存在を感じ取っている。
次の瞬間、俄にその場へ黒雲が立ち込め、そして。


-ようやく来たか!
我が血の渇望を満たす者どもよ!!-



激しい雷鳴と、咆哮。
そして、天をも揺るがすような大音声が、劈くように降り注ぐ!





♪BGM 「戦場 戦慄」♪


黒雲から、雷を纏うその姿がゆっくりと現れる。

雷鳴と共に現る者、雷竜クランヴァリネ。
その姿はまさに、荒れ狂う空の暴君であり…あの時に見た底知れぬ暴威の気と、それに相反する神々しさを持って目の前に現れた。

その時は、誰もがその姿に恐れ、動くことすらできなかった。
しかし…今の彼女たちは違う。

「あんたがふざけたことをしてくれたおかげで、ハイ・ラガードの連中は酷い目にあったそうよ。
私達個人を狙うなら話は別だけど、あんたは調子に乗り過ぎたわ。
此処できっちり八つ裂きにしてやるから覚悟なさい!!」

幽香は、禁断の箱庭に住む、超硬質の蛾の爪を幾つも使って鍛えられた大斧の刃先を突きつけ、そう宣言する。
金の竜は、さも愉快そうに笑う。

-ふははははは!! 大きく出たな小さき者よ。
そうでなければ汝らをあぶり出せぬと思った故だ。
他の小さき者のことなど我の知ったことではない
-

「戦闘狂なのは結構だが、その為に何でもかんでも巻き込んでいいって言うそういうのはあたい嫌いだな。
もう二度とそんな口が利けないようにしてやる」
「そうめう! ニンジャ殺すべし、インガオホーめう!!」

-くくく…その威勢は褒めてやろう。
この我の目の前に再び現れたこと、後悔するでないぞ!!!-

金の竜が再び咆哮し、そして、稲光が激しく周囲の景色を黒と金に染める。
戦闘態勢に入る竜が、弾ける気を大きく吸い込むのに呼応するように、少女達はそれぞれの獲物を構える。




「やろう、みんな!
此処でこの暴君竜を討つ!!」


つぐみの放った雷の銃弾と、金竜の放つブレスが激しく視界を埋め尽くす。
それが、戦いの合図となった。