「そこで私は言ってやったのよあのくっそ生意気な赤髪に!
どこぞのアホ女王()とこの一級豊穣神であるこの私が違うという事を実際に証明して来てやるって!!
だからさっさと手頃なボスクラスと戦えるクエストを私に寄越すべきそうするべき!!><(バンバン」
かごめ「…おい誰だよこの馬鹿焚きつけたの…」
諏訪子「文脈から察すればわかるだろが…ったく杏子の野郎余計なこと言いやがって。
どうするよかごめ、いっそこの馬鹿フォレスト・セルの生贄にでもしてやるか?」
かごめ「組ませる奴にもよるけど、こいつ普通に狩りそうだしなあ。
というか、金竜も討てたようだし、美結達の傷が癒え次第ギンヌンガは連中に任せることにはしたからな。
…竜討伐経験あるんだっけ、この芋神?」
諏訪子「あるよ、オメェが絡む前にタルシスの赤竜と氷竜どっちも殺ってる。ついでに冥竜もな」
かごめ「出来れば竜狩りは経験ない奴に優先的に回してやりてえしな。
…ケロ様無印の2は経験あるんだよな、このクエとかどんなもん?」
諏訪子「どれどれ……………ああ、これかぁ。
んまあ、いいんじゃねえの? あそこにスマキになってる夜雀がテキトーに守護の舞曲を使い続けられる環境あれば、あとのメンバー誰にするかにも依るけど問題ねえだろ」
みすちー(スマキ)「うええええんなんで穣子さん真っ先に私を巻き込むんだよおおおおおおおおお!!><」
かごめ「…とりあえず静姉今フリーだっけ。
とりあえず呼びもどして組ましとこう、どうせ穣子のこった、のっけからチェイスガン振りしてるんだろうし」
諏訪子「みすちーの序曲とあいつのダブルアタックと穣子のチェイスか、まあ悪くねえ組み合わせだな。
いざとなったら私ヒーラーでこいつについてくわ、ヘカトン相手なら多分そんな厄介な状態異常飛んで来ねえだろうし」
かごめ「あー悪ぃ、そんときはよろしく頼むわ('A`)」
諏訪子「それよりだ…かごめ。
この馬鹿も確かに厄介と言えば厄介だが…先に幻想郷に戻った藍の奴から、ちと困ったことが起きたって話があってな」
かごめ「なんだ?
正直そんな面倒事ばっか持ってこられても困るっていうか、なんでそれをみんなあたしんトコに持ってくんだよ」
諏訪子「お前黙ってれば黙ってたで、なんでさっさとあたしに言わねえッてキレるからだろうがよ。
…実はな」
諏訪子の耳打ちでかごめはすっごく嫌そうな顔をする…。
かごめ「…………………だからなんでそういう面倒くせえ事態が起きるんだ?
一体どうやったら倉野川からこっちに迷いこめるんだよ、ただの女子中学生が」
諏訪子「解らん。
だが…随分大昔の話になっちまったが、リリカがシンオウに行った時の例もあるだろうが。
紫のスキマ、最近かなり不安定になってるらしくてな」
かごめ「ちゃんと元は塞いであるんだろうなそれ?」
諏訪子「先日、さとりもいくつか閉じて来たって言ってたけどな。
入ってきたのはそいつ一人だけだが…どうもそいつ、承知の上で飛びこんだ形跡もあるとかなんとか。
美結とめうが気になることを言ってたしな」
かごめ「ったく…こっちに来たらタダの神隠しでは済まねえ事態にもなるってのに」
諏訪子「一応文やてゐにも話して、情報集めながら樹海にも探しに入ってもらってる。
それっぽい目撃談もあるにはあるが…どうもな。
ひょっとすると、当人気づいてないだけでかなりの資質をもった人間…もしくはある種の魔性の先祖帰りの可能性もある」
かごめ「初見の樹海でも前情報なしで生き残れるサバイバビリティの持ち主ってか?
…まあいい。あたしも捜索隊に加わるわ。あの馬鹿のお守、暫く任せていいかい?
道中で静姉みたら事情話しておくし」
諏訪子「あいよ」
…
♪BGM 「妖々跋扈 ~ Who done it!!」(東方妖々夢)♪
~遡ること数日前、ハイ・ラガード郊外~
「な…なんだか想像以上にみょんなところに迷いこんでしまったっす…。
とりあえず此処が人間の居る街で、普通に言葉が通じるという事だけは解ったっすけど…どこ、ここ?」
街外れの一角、その少女は脇道の角からきょろきょろと通りの様子をうかがっている。
その風体はあまりにもこの街には不自然。
見る者が見ればすぐ解る、学生服のような服を身につけ、ハンチング帽とケープを身に纏うその姿は、さながら少女探偵、と取れなくもない。
「庶務要らずと呼ばれた敏腕書記と、凛女唯一にして最強のゲーマーの突然の留学…しかし、その行先は全く知らされていない。
この、一見接点のない二人を繋ぐ鍵は不思議なスキマ、その先にこそ答えがあると思って来たものの…ぐぬぬ、此処が何処であるのか解らない以上、この美少女名探偵翠里ちゃんの頭脳をもってしても解らぬことばかりとは…」
少女…白鳥翠里は、再び物陰に隠れて腕を組み、大仰に天を仰いで嘆息する。
彼女は、つい先日まで美結とめうが在籍していた倉野川の名門女子校「凛花女子学園」中等部の新聞部長であり、また「凛女の美少女名探偵」を自称する問題児の一人である。
成績は、名門進学校でもある凛女中等部でも中の下程度であるが、全体的にお嬢様の多い同校において、常にゴシップ記事と事件を追い求め、(その信ぴょう性はともかくとして)洒脱に飛んだ文章で記事を書くことから人気があり、また一方で、トラブルに首を突っ込まなければ気のすまないというトラブルメーカー的性格から、風紀委員に目をつけられていた。
ある意味ではめうと同様、凛女の異端児というべき存在である。
彼女はその尽きぬ好奇心から、自分と同様中等部卒業…ひいては、高等部への編入を間際に控えながら、突如として「留学」という名目で学園を離れた二人に何らかの「事件の種」をかぎ取り、学業そっちのけで二人の後を追い続けていた…ぶっちゃけ、ストーカー紛いの行動を繰り返していたのだ。
そして、この日…美結とめうを見送った他の「日向美ビタースイーツ♪」の面々が立ち去った後に残された、ハイ・ラガードへと続くスキマに飛びこみ…現在に至る、というわけである。
「現在のところ手掛かりは、この校章?めいたものだけっすね。
所々この街で見かけたっすけど、それにしても不思議な紋章っすね。この樹みたいなのは、あの馬鹿おっきい樹なんすかね…」
彼女は何処で入手したのか…ハイ・ラガードの公国章を手にしている。
それが何を意味するものなのか解ってはいなかっただろうが、名探偵を自称するだけあって、彼女の飛び抜けて鋭い勘と、出歯亀めいた情報集積と推理力で、これがこの街で活動するのに必要なものだというところまで辺りがついているようであった。
「どなたの落とし物か解らないっすけど、落ちつくまでこれを使わせてもらうっす。
…でもまずとりあえずは」
彼女がお腹を抑えると、そこから空腹を訴える悲しげな音が響く。
「なんとかご飯の種にありつかないといけないっす。
どっかにお金、落ちてないっすかね…」
「なんだ嬢ちゃん、新米か?
カネが欲しいなら、依頼事を受けてもらえばいくらでも用立てるぜ」
「∑( ̄□ ̄;)ひゃあああ!!??」
不意に背後から声を掛けられ飛びあがる翠里。
反射的に逃げようとしたその首根っこを捕まえたのは…仕入れの帰りなのか、屈強な片腕に多くの食材の入った袋を抱える棘魚亭店主・アントニオだった。
「狐尾幻想樹海紀行 緋翼の小皇女」
第三十夜 名探偵翠里ちゃんの樹海事件簿
パチェ「ドーモ、閲覧者=サン。大図書館の魔女な管理人パチュリーです。
主人公がタイトルとあってないことも板についてきたこのログも、とうとう三十回の大台に突入しました(しれっ」
レミィ「あんた一体誰を忍殺するつもりなのよその挨拶。
…というか、とうとう解説できる奴が誰もいなくなってしまったわね、ここも」
パチェ「一度やってみたかった。反省は特にしていない。インガオホー」
レミィ「とりあえず無意味に忍殺語を使いたいというのだけは理解出来たわ。どうでもいいけど。
というか今回何の話すんの? めぼしいクエストと言えばこれからギンヌンガ行ったり、なんかフランが因縁のある相手に会いに行ったり、穣子のアホがなんかしに行ったりとかくらいな気配だけど」
パチェ「狐野郎が先物買いしたキャラがいた。
最近ポケモンやってないから先んじて世界樹で作った。
…………あと一行どうしよう」
レミィ「あんた本当に何がしたいのよ…。
とりあえずキャラ紹介がてら、馬鹿話をしようという趣旨でいいのかしら」
パチェ「おふこーす(しれっ」
レミィ「まずは翠里の話かしら。
ラピスの3月追加イベントで登場した新キャラね。
新聞部で自称名探偵という、なんというかまたこれもスノッブ臭いというかなんというか」
パチェ「意外とベタ過ぎて、逆に最近ほとんどなかったパターンかもしれないわね。
ラピスのイベントキャラって、なんかその辺呆れるぐらい王道というか、ベッタベタだわ。
此処ではなんかキャラの方向性が完全に独自方面へ暴走してるけど、元来美結なんて典型的な黒子タイプ(射命丸注:「とある」シリーズに登場する白井黒子のことですね。その筋では超有名なので此処では説明は省きますが…)、最近の学園コメディにはありふれたタイプのキャラよ」
レミィ「此処までキャラがかけ離れたらもう完全に別物ですものね。ひうみんLOVEとか一体何だったのかしら」
パチェ「そんな今更のことはさておきまして。
見た目はガンナー、キャラ的にはまあ…例のスポイラー天狗意識なんでしょうかね、レンジャーを最初から考えてたんだけど、結局ここではガンナー転職のレンジャーという形に落ち着いたようよ。
なお、レンジャーとガンナーの違いはHPとTP、あとTECとLUCの値ね。レンジャーの方が僅かにHP・LUCが高めで、ガンナーだとTPとTECが少し高くなる。あと、僅かにAGIはガンナーの方が速いわね」
レミィ「同じ銃・弓技でもガンナーベースの方が僅かに高い火力が出る、というわけね。
どっちにしてもアタッカー意識なら、何処かから物理攻撃ブーストを調達する必要はあるけど」
パチェ「そうね。
狐野郎がQRを拾ってきた元の、始原の魔神5ターン撃破動画でレンジャー三人並び立てて夢幻残影チェイスするのを見て、速攻撃破でも目指そうかとかそんなことでも考えているのかしらね。
折しも、そういう系統に走らせやすいキャラも出た。のっけの幸いと思ったんじゃないかしら」
レミィ「射命丸の文とは一体何だったのかしら。
まあその文も、もっぱら古兎と組んでるようでいて組んでない感じでなんかやってる印象も最近は強いけどね。からすとうさぎとは一体」
パチェ「そのあややが異常撒き重視なら、翠里はおもっくそアタッカーレンジャーね。
リミットレスからのチェイスも視野に入れていることを考えれば、いずれそっち方面でもなんかやるんでしょうねこの子」
レミィ「…穣子と組ませるの?」
パチェ「準備は結構かかるけど、穣子と翠里のダブルチェイスに序曲夢幻残影、そして静葉の序曲ダブルアタックが絡むとものすごい瞬発火力が出るんでしょうね。まさか上で少し触れてるクエボス相手に試し打ちする気かしら」
レミィ「あの馬鹿ならやりかねないのが怖いわねえ。
その穣子だけど、ハイランダーからの転職なのね」
パチェ「TPやTECは大差ないけど、LUCが少し低い代わりにAGIが飛躍的に高まるから、特に剣ソドで上取りながら立ち回りたい時にはハイランダーやブシドー、ダクハンから転職させた方がいい感じはするわね、ソードマンは。
もっともチェイスメインの芋神にAGIが必要なのかどうかは置いといて」
レミィ「こんな馬鹿に付き合わされるミスティアも要領が悪いというかなんというか。
まさかこいつ、グリモアまで込み込みでチェイスに特化する気かしら」
パチェ「威力上がることはもとより、★★にすれば5回確実に追撃するからね。
そもそもフェンサーツリー伸ばさないし、剣マスタリーと物理攻撃ブーストを重ねて三色持たせたら、残り一枠はチェイス特化で深刻化するTP不足を解消する巫剣マスタリーだけ持たせとけばいいしね。
巫剣マスタリーはリメイクで本当に鬼みたいな超優良パッシブになった感じするわね。リメイク前は巫剣そのものもかなり微妙なスキルだったけど、一応斬耐性にも通るのは当時から一緒とはいえ」
…
…
~その数日後、棘魚亭~
「な…そ、その金細工は…見せてくれたまえ!」
見るからに高貴な身分と解る服を着たその男は、その少女…翠里の差し出した金細工の駒をひとつひとつ、恐る恐ると言ったように取り、戦慄くようにそれを見ている。
精緻な装飾の施された衛士、城兵、公王、騎士、そして学者の駒まで一通り己が目の前に置き、男は険しい表情で唸る。
「どーすか?
あなたの言った「公女以外の駒」全て集めてきたっす!」
「あ…ああ。
確かにこれはすべて、間違いなく本物。
まさか本当に総て集めてくるなんて…」
男は一度天を仰ぎ、嘆息すると…大事そうに抱えていたその公女の駒を、名残惜しそうに一度見てから翠里へと差し出す。
「よかろう、私も男だ、一度言ったことを曲げる真似はしない。
この公女の駒は、約束どおり君に譲ろう。持っていきたまえ」
「交渉成立っすね!」
満面の笑顔でそれを受け取る翠里に、男は溜息をついて、渡された五種類の駒を傷つけぬようひとつひとつ布に包み、懐にしまう。
そして「許せ…いずれまた、お前を我が手に戻して見せる…」と寂しげにつぶやき、店を後にしていった。
男が立ち去るのを見て、翠里は様子をうかがっていたアントニオに振り返ると、公女の駒を見せてにっと笑う。
彼女はトレードマークの帽子と髪型はそのままに、一級レンジャーの証とも言える魔馬の皮で作られたブーツ、そして、美しい風切り羽であつらえられたベストを、その制服の上から身につけている。
その様子にアントニオも呆れたように溜息を吐くが、感心したような面持ちで告げる。
「…翠里っていったっけか。
いや、実際お前さん大したもんだぜ。
この街には狐尾っていう連中がいてな、そいつらもお前さんとそう変わらねえ小娘だらけのギルドなんだが…お前さんがその関係者じゃねえって言うなら、連中に匹敵する位の腕前があるってだけでもとんでもねえ事なんだぜ」
「ふぇ?
それってそんなすっごいことなんすか?
私は結構必死なんすけど…」
翠里はカウンターに腰かけ、公女の駒をアントニオに手渡すと、彼は「報酬は今度、依頼人が持ってくる手はずだ」と、それを金庫の中へとしまいこむ。
アントニオは、素性も曖昧なこの少女に見どころを感じたらしく、まずは駆け出し冒険者への定番となりつつある「世界樹の芽」狩りをさせ…そうして渡した資金でレンジャーらしい装備(と、食事と寝床)を整えてやると、彼女は新聞部のゴシップ集めで培ったバイタリティを遺憾なく発揮し、僅か数日で新入り達からも一目置かれる存在となっていた。
折しも、倉野川から戻って以降ブランクを取り戻すべく立橋で修行中の美結達、そして、相変わらず「禁忌ノ森」から戻らぬかごめ達、とある理由から六花氷樹海に籠りきりのフラン達など、狐尾のほぼ全員が棘魚亭を離れていたこともあって、彼女の素性に心当たりのありそうな者達がいないことも手伝い、彼女は何時の間にか「単独でも十分な仕事をこなせる冒険者」として、街になじみつつあった。
ハイ・ラガードに来てから十日余り、活動資金も十分に集まり、街での過ごし方、樹海での探索に慣れてきた翠里だったが…今頃、学校では彼女が突然失踪したことで大騒ぎになっているだろうことは想像に難くなかった。
(困ったっすね…店主さんにはお世話になってるし、本来の目的も結局真相わからずじまいだったっすけど…そろそろ帰らないと色々ヤバいことになってるような…特にテストとかテストとかテストとか。
けど、帰り方の見当もつかない以上どうすればいいのやら)
彼女は、この街に初めて来たときにいた街外れの一角に行ってみたが、彼女がこの世界に来るきっかけになったスキマの片鱗すらもなかった。
だが…彼女はこれまで集めた情報で、その手掛かりになりそうなものもしっかり得ていた。
「店主さん。
その…狐尾?とかいう人たちっすけど、この世界と別の世界から来たっての…本当の話っすか?」
「…気になるだろ?
俺も詳しい話は知らねえんだ。
だがよ、正直バケモノじみた連中だぜ。あれほどのバケモノぞろいの連中なら、それも強ち嘘じゃねえかも知れねえなって、そんな程度だぜ。
気になるなら当人から聞け、って言いたいとこけどな…連中、今こぞって半月以上も樹海から帰ってきやがらねえ。
お前さんも奴らに会いたいかい?」
「うー…ええ、まあ」
手掛かりは、その彼女等「狐尾」しかない。
確信というにはあまりにも遠い、一縷の望みであったが…彼女は、それに縋るしかなかった。
「ま、何時帰るか解らんあの連中を待つくらいなら、適当にその辺の依頼事でも受けて、樹海に入ってみるしかねえってもんだ。
お前さんの実力ならそろそろ、常緋の森辺り行ってみてもいいと思うがな」
「ぐぬぬ…」
シニカルな笑みを浮かべるアントニオに、だんだん翠里は、目の前のこの店主にいいように使われているだけなのではないかと思い始めていたが…それでも、手がかりに近づけるならと一つの依頼書を選んで、渋々店主に渡した。
…
「魔物退治なんて、出来ればそんなやりたくないんすけどね…」
古跡の樹海を歩く彼女は、何処か寂しそうに溜息を吐く。
実際、彼女が腰に抱えている弓…それは、狐尾の名サポート役として名の売れた射命丸文が持っているものと同じもの…すなわち魔獣キマイラの、毒で変質した翼骨にその皮で縒られた弦を張った最高級の逸品である。
お嬢様学校だけあってか、凛女の体育実習にはアーチェリーもあり、彼女は入学以来毎年面白半分に履修していたが、四方やそれが未知の異世界で自分の命を繋ぐことになるとは思ってもいなかったことだろう。
根は心優しい彼女のことであり、人間を襲う魔物相手とはいえ、むやみにその命を奪う事には抵抗があった。
もっぱら、その弓の技術は魔物を追い払うために使われることが多かったが…それはそれで、当人は気付かずとも、類稀な弓術の資質を有している彼女だからこそ出来たことであろう。
彼女が受けた仕事…それは、ここ最近樹海の浅いところで、非常に強力な鳥の魔物が暴れているから退治して欲しいというものだ。
しかし、その依頼の内容は眉唾物にも程がある。なぜなら…。
「というか、人間の言葉を喋ってやたら武術が強い鳥とか、なんの冗談っすかねえ。
人間の言葉が通じて、武術に通じているって言うんなら、なんとか話し合いで解決できればいいんすけど」
それは、狐尾の面々が街を離れて間もなく、起こった事件であった。
アントニオも「どうせそいつら、そんな下層で無様な目に遭ったもんだから尾鰭背鰭付けまくってるだけだろうがな」と笑うばかりであったが…話を聞くに、その魔物はとにかくやたら強く、どうも戦う相手を求めているとかそういう話でもあった。
翠里は魔物の目撃情報がある、そのフロアに踏み込んだ。
見回しても、何もいない。
「えっ…?」
茫然とつぶやく。
そう「何もいない」のだ。
そのフロアには…「駆け寄る襲撃者」と渾名される、凶暴な恐竜のような魔物が群れで屯している場所であるのに。
いや。
その視界の先に、彼女はとんでもないものを捉えていた。
翠里はそこまで小柄ではないが、その彼女と比べても倍近い背丈と、むき出しになっている屈強な胸筋からも伺える、鍛え抜かれた強靭な肉体。
そして、堂々と品定めするかのようにこちらを見据える眼光と、歴戦の猛者が放つ独特のオーラが、その魔物を数倍も大きく感じさせる。
情報では好戦的な魔物、という印象であったが、その魔物は放つオーラこそすさまじくはあったものの、すぐにこちらに襲いかかってくるような気配も素振りも見せない。
翠里は恐る恐る、その鳥の魔物へと近づいていく。
「ようこそ、勇敢なる冒険者よ。
まずは、相まみえたことを嬉しく思うぞ!」
「ひゃああああああああああ!!??」
何処か凛とした青年の声で、その魔物が話しかけたことに翠里は肝を潰して思わず飛び上がりそうになる。
これには鳥の魔物も心外だったと見えて、訝しげに問う。
「何故そんなに驚く?
君は、私のウワサを聞いて、私とここに戦いに来たのではないかね?」
「たた…たたた、戦う!?
というかあなたは鳥なのになんでしゃべって…っていうか何者なんすかあなた!?」
魔物はさして気にした風もなく、「ふむ」と嘆息して言葉を続ける。
「私が何者であるか、か。
それは、実に難しい問いかけだ…なぜなら、私自身が私自身の来歴を知らぬ。
語るべき過去を、私は持っていないのだ」
鳥の魔物は何処か寂しそうに、遠い目をする。
「此処が樹海であり、私が何故か君の言葉を…人間の言葉をしゃべり、理解し、会話することもできる。
しかし、何時から私はこの樹海にいたのか?
昔はヒヨコだったのか? 親はニワトリなのか? 何時人間と言葉で意思疎通できるようになったのか?
そんなことが一切わからぬのだ」
真っ青な顔で戦慄くままの翠里を余所に、そのニワトリの魔物が続ける。
「だが、そんな私にも解ることがひとつだけあるのだ。
我が心が求めるのは…闘争!
血沸き肉躍り、羽が震える! 命のやり取りこそが我の欲するモノ!
樹海の魔物ではもはや、我が心を満たす者はおらぬ…そして、君ら冒険者に出会った!
冒険者…君たちは素晴らしい! 個で戦うものも居らば、群を成し互いを補佐する者もいる…その豊富な技術を駆使した戦術、そのどれもが私の心を震わせるのだ!」
そして、逃げることもできす固まったままの翠里に指(?)を突きつけて宣告する。
「若き冒険者よ。
君も私を倒しに来たというのであれば! それは大いに歓迎する所ッ!
私の所望する、君と私1体1の熱き戦いを…さあ、準備が整っているなら早速手合わせ願おう!!」
「ひっ……わ、わわ、私は戦いに来たわけじゃ!!」
「この私を失望させるな!
この樹海に、単独で探索に来る冒険者がタダ者ではないことは、承知している!
さあ、腰の獲物をとりたまえ…私は弱者をいたぶるつもりはない!!」
翠里は腰を抜かすことすら許されず、泣きそうな顔でがくがくと首を横に振る。
業を煮やした魔物が、さらに怒りの言葉を発しようとした、その時だった。
「そこな闘士!
戦いを望まぬ者に無理強いするは、闘士として本懐ではあるまい!」
♪BGM 「風神少女」(東方文花帖)♪
その間に、空から舞い降りた一つの影が割って入る!
「君は…」
「我が名は射命丸文。
幻想郷が最速の天狗、その栄誉にかけてあなたと一対一の戦いを申し込む!」
翠里はその名を聞いて眼を見開く。
近年、明らかになった幻想郷の存在。
新聞記者を目指す彼女が、その名を知って憧れとしていたその存在が、今その目の前にいた。
「下がってて。
あなたの事情は、知ってるつもり。
この戦闘狂ニワトリをぶちのめしたら、ちゃんと倉野川へ帰してあげるからね!」
黒い鴉天狗の翼を広げ、文は翠里を庇うように立って振り返ると「もう大丈夫」とばかりにウインクして見せる。
彼女が声を上げるより前に、その誇り高き空の闘士が歓喜の声を上げる。
「おお…文、といったか。
君の瞳には私と同じ野生を感じるッ…ああ、なんと良き日であろう!
強敵とめぐり合い、拳とクチバシを交える!これ以上の至福はない!!」
「これ以上の問答は無用!
いざ尋常に、勝負ッ!」
構えをとる文に、闘鶏の猛士も同じように構えて叫ぶ。
「さあ、わが好敵手よ!!
我が身の猛り、その全てを受け止めてくれ!!!」
…
…
レミィ「…暑苦しいニワトリね…なんなのこいつ」
パチェ「DLCクエスト「戦いに生きる空の王者」で登場するマスターバードね。
こいつ、戦う人数によって、勝利時に貰えるアクセサリーがそれぞれ違うわ。
HPは30000。突、雷弱点だけど、兎に角攻撃力が非常に高い挙句、HPが減ると「朱雀の構え」を取って超威力の単体斬攻撃「鳳凰爪撃」と、「紅蓮旋風翔」っていう高威力のランダム4~6回炎攻撃を仕掛けてくるわ。
ピクニックでレベル70あってもこいつと安全に戦える職はほとんどないわね。素早さブーストガン振りしたレンジャーで運ゲーに持ち込むか、血の暴走をセットしたパラディンやペットで反撃しながら戦うか…しかないわね」
レミィ「つまりその運ゲーを文でやったと」
パチェ「ピクニックでレベル70あっても、こいつの気功脚で3ケタ近いダメージ貰うけどね。
とりま、パワーゲルからリミットレス、んでもってマスターしたサジ矢ぶっ放して、その着弾に合わせてリミットレスダブショからの夢幻残影喰らわせて1ターンで沈めてやったわ。
なおエキスパだと気功脚一撃で被ダメ400軽く超えるから無謀の極みね」
レミィ「あ、やったんかそれも^^;」
パチェ「貰えるアクセは1りのときはコガネのベルト、2りだとシロガネのベルト、3り以上ならアカガネのベルト。
似たような効果だけど、アカガネはHP+30で全能力+2に対してコガネはHP+100の全能力+5。これだけでも非常にふざけてるわね。
なおドロップ品は15000エンで売れるけど、アイテム説明見るとちょっと可哀想になってくるから、お金稼ぎに狩るのは勘弁してあげてね(しきたり」
レミィ「これで作れるフルフェイスも、走り屋のお約束フルフェイスヘルメットなのかしら。
その割には防御力が余りにもお粗末(防+1、全耐性30%ダウン)なのよね。STRが+8もされるけど、あのヘルメットってやつ相当頑丈よ本来」
パチェ「あとこっそり、第二階層あたりで受注できる、公女の駒を手に入れるクエストも少し出てるわね。
これはそれ以外の5種類の駒を手に入れるクエストがあるんだけど、最後の学者の駒がもらえるクエストが第六階層で受注できる。つまり、どうあがいてもクリア後までかかるという非常に長いクエストよ。
リメイク前は三竜クエにも絡んでたらしいけどねえ」
パチェ「というわけで番外編はここまで。
次回は…フラン達の話をすることになるわね。
そろそろかごめ達も戻って来るだろうし、私達も探索に出かけましょうか」
レミィ「相変わらずマイペースねえ貴方は。
まあいいわ。それじゃあ、皆さんごきげんよう」
…
…
「ご迷惑…おかけしたっす…」
マスターバードとの死闘を終え、てゐの治療を受ける文の傍らに座る翠里が、居並ぶかごめ達の前で悄然と頭を下げる。
「…なんでえ、姉さんがらみだったのかこの子。
知らなかったこととはいえ、色々こき使っちまってなんか済まねえ」
フォローのつもりなのだろうが、アントニオもバツが悪そうに言う。
かごめはじっと黙って聞いていたが、それは、翠里にも他の面々にも、まるで予想もできない言葉だった。
「…気に入ったよ、あんた。
向う見ずなところもあるが、それでも自分の持てるすべてを駆使し、この樹海を生き抜いてきたその能力をあたしは買いたい。
凛女の経営者連中には一応、顔が利く。あんたさえよければ…あたし達の探索を手伝う気はないかい?」
「えっ!?」
「おい待てかごめ正気か!?
確かに、私達不在の時にこの子が色々やってたってのは聞いたが」
諏訪子の言葉も意に介さず、さらにかごめは問う。
「翠里、って言ったよね。
あんたのそのチカラは、きっちり伸ばしてやれば将来優れた魔性狩りになれる可能性がある」
「でも、あたしは…」
「…何も、魔性と殺し合いするばかりが魔性狩りの仕事じゃない。
人間の力では解決できない難事件も、魔性狩りのチカラをもってすれば解決できることだってある。
…あんたの素性は調べさせてもらったよ。あんたの身請人さんにも話はつけてあるし、もしあんたが望むなら…日向美学園の招待生として迎える用意がある。
どうだい?」
翠里は、おずおずと言葉を返す。
「あたしも…文さんのように、なれるでしょうか?
真実を追い求め、解き明かしていけるような新聞記者に…ううん、探偵になりたいんです!」
「それは、あんた次第だ。
だが勿論、必要となる支援は、可能な限りあたし達がする。
もう一度聞くよ…白鳥翠里、あたし達と一緒に来るか?」
翠里は一度文の方を振り向く。
文も、思うところあるのだろうか…にっこり笑って頷いて返す。
「よろしくお願いしますっっ!!」
かくして…後年「倉野川の疾風」の異名をとる魔性狩り兼名探偵・白鳥翠里の第一歩は、まさにこの時に踏み出されたのであった。