氷王の墓所。
文が調べていたという伝承の如く、竜はそこにいた。
遠目からでも解るその蒼き巨体には、槍の如き角を備えた三つ首に、合わせて十二個の黄色く澱んだ瞳を備えている。
何処かワイバーンと似たシルエットを持ちながら、その異様な竜の放つプレッシャーはワイバーンをはるかに超える。最早竜種としての格が、上帝の生み出したワイバーンとはケタが違う事を文は認識する。
「幻想郷最強の“
あの冬妖怪、数人がかりとはいえマジであんなもんを六体も殺ったって? ウソ吐いてたら承知しねえぞ?」
「残念ながら真実よ、勇儀さん。
私実はこいつ見るの二回目なんだけど…こんなのに好き好んで喧嘩売るような奴の気が知れないわね」
軽口をたたき合う文と勇儀の表情、その口の端も引き攣っている。
氷の竜はまるで眠っているかのように、静かに佇んでいるだけだ。
何処か物悲しさすら漂わせているその竜の脚元…そこに、探していた小さな影を見つける。
「クオナ!」
その姿を認めるや、眠ったように横たわったまま動かない少女めがけて幽香が駆けだす。
その時だった。
-我が主の眠りを妨げるものは赦さん!!!-
大気を振るわせる轟音のような怒号と共に、十二の瞳を強烈な怒気と殺気に染めたその竜が、一瞬のうちに空へ舞い上がり…威嚇のブレスを吹きつけてくるではないか!
メルランが声を上げるより前に、その恐るべきブレスが幽香の姿を白銀に鎖す…が。
♪BGM 「戦場 朱色の雨」♪
その強烈な吹雪のブレスをもろに受けながらも、まるで無傷なままの幽香…信じられない事に、この酷寒の森では自殺行為とも言える、水着の如きその衣装だけの姿で大きく跳躍し、禁忌の森の守護者の巨腕から作られた巨大戦斧を頭の一つめがけて力任せに叩きつける!
「これは…!」
メルランは目を丸くして、傍らのてゐに視線を送る。
「伝承はウソをついてねえってことだ。
これなら、専門の盾技能持ちを用意する必要はねえ…あとは、ひたすら攻めるだけだ!」
「成程ね。
残念ながら確かに、力任せに勝てるような相手じゃないことは確かそうだ…今回は、あんたの策に従って戦おうじゃないか!」
勇儀はこれまでの道中手にしていた杯を背後へ放り、戦いの構えをとると、文も弓を番えて支援の体勢を取る。
てゐもまた幾度となく振るった愛剣を抜き放って構える。
「おいそこのめるぽ、お前
とっととあの花妖怪に雷幕かけろ! ジリ貧にならねえうちに速攻で終わらせるぞ!」
「え…ええ、解ったわ!」
半信半疑だったメルランも道中着ていた普段着を脱ぎ捨て、同じような水着姿になって呪歌を歌う体勢を取る。
「行くぞ!」
狐尾の智将・因幡てゐの号令一下、氷樹海の支配者である竜との戦い火蓋が切って落とされた。
「狐尾幻想樹海紀行 緋翼の小皇女」
第三十六夜 氷華王・風見幽香
静葉「お待ちかね種明かしのこぉ~なぁ~(棒読み」
レティ「∑( ̄□ ̄;)ちょっと待てええええええええええええええええええええええええええええ!!??
メンバーおかしい! メンバーおかしいわよこの写真!!
というかそこに居るのめるぽじゃなくてみすちーじゃないいったいどうなってるのよ!!!」
静葉「見ての通りよ。
本当に参加したメンツは写真の五人。
メルランがバードなのは本当だけど、メルランを新規作成したの、氷竜戦のずっと後だもの実は」
レティ「そもそも今更だけど私エトリアの氷竜なんて知らないわよ!?
というか一体エトリアの氷竜ってどんなメンツで討った事になってるの!?
捏造するにしてももうちょっとマシなでっち上げをねえ!!><」
静葉「元々あなたタイプ相性的にドラゴンに強いじゃない。ついでに草にも(キリッ」
レティ「ポケモンの話はこの際どうでもいいでしょうが!!><(さとりメモ:狐野郎のところではレティさんはマンムーです。マンムーと言えばドラゴンの多い600族狩りに定評がある優秀なポケモンですね。一般的にはマンムーの特性は厚い脂肪一択だそうですが、レティさんの特性は鈍感…察してくださいね♪)」
静葉「まあ落ちつきなさいってば。
大分あやふやになってる前作の攻略記録なんだけど、僅かに残ってた画像を信じる限りエトリアの氷竜狩りに関わったのはこんなメンツよ」
レティ「ナニコレ(しろめ」
静葉「ここではレミリアがあなたに入れ変わってる事になってるのかしらね。
ついでに言えばエトリアの氷竜も行動パターンはこっちとほぼ一緒よ。
絶対零度がないと思ってたらミラーシールドとかわけの解んない事をされて一瞬でhageた。な、なにをいってるのか」
レティ「いやいやいや「世界(ザ・ワールド)」初体験ポルナレフをやりたいのはむしろ私だから私だからね(しろめ
そもそも無印2で氷竜をヤバい案件にしてたのはまさにその絶対零度よね。
ブレスとは別件の氷全体攻撃で事もあろうに即死付与とか言う」
静葉「あなたタルシスでも氷竜とやりあってたじゃない、アレだって絶対零度使うわよ」
レティ「実際タルシスの氷竜狩りが安定しなかったのは概ね絶対零度のせいね。
別に氷の境界を使われる必要なんてないのよ即死付与がハマったらみんな死ぬしかないじゃない(しろめ」
静葉「その代わりっちゃなんだけど今回もミラーシールドがあるからね。
ただ、確かに強敵は強敵だけど、SSQ2の氷竜は歴代氷竜でもSQ3のそれに匹敵する程度の最弱竜よ実は。
まず、厄介な行動はミラーシールドと、劈く叫びだけ。
そして何よりこいつ、今回の三竜で唯一呪いが通るのよ」
レティ「えっそんなのなんの関係……あっ(察し」
静葉「勿論、データ見てもらえば分かる通り毒以外は非常に入りにくい。脚縛りの耐性もぬるいけど、縛ったところで何、って言う所だし。
ついでに言うと、クリア後のクエボスで呪いが通るのは氷竜以外ではワイバーンとゴーレムだけよ。けど、入れば瞬殺レベルの劇的な効果を期待できるのは」
レティ「そこまで言われたら⑨でも解るわね。
超威力のブレスを呪いダメージ倍加料理と併用すれば、初手で瞬殺も可能よねこいつ」
静葉「氷竜攻略の裏技、それがまずひとつよ。
呪いダメージ倍加料理を食べて初手で呪いをぶち込み、なおかつ殺戮の盾とかで氷耐性をがっつり下げさせたペットで究極がまん発動させて瞬殺。狐野郎が最近何気にはまっている、某低レベルボス攻略動画シリーズでも使われた呪いカウンターね。
けど今回狐野郎が使った方法はさらにえげつない方法よ。どちらもDLCクエボスのレア素材で作成できる防具…炎耐性を大幅に下げる代わりに氷耐性を大幅に上げる盾・アームシールドと、防御力はゴミレベルだけど三色耐性を鬼のようにアップさせるビキニアーマー。この二つを併用することで、ブレスだろうが共鳴だろうがお構いなしでダメージを1ケタにして、ガード抜きでドラゴンハートを無視するというやり方よ」
レティ「これまあ本当にもうね。聞いた瞬間盾役の存在意義ってなんなのとか喚きたくなる私の気持ちも少しは考えてよ本当に><
この方法ってすっごい重要な副次効果もあるのよね、劈く叫びで眠らされても、直後の共鳴による極小ダメージで勝手に起きてしまうという」
静葉「何気に一番大きな恩恵が、それよ。
どのみち直後はアイスブレスが来るんだけど…とりあえず、叫びのターンとブレスのターン、最低でも1ターン以上パーティ全員フリーに動ける事が確約される。
あとはクラッシュアームとかのダメージをどう減らすかだけど、そもそもアームシールドの防御力、聖騎士の盾より上よ。あとは防御力の高い兜あたりを持たせるか、でなきゃクラッシュアームに対応する為の壊撃の守りでいいんじゃないかしら。
まあ実際はどうだったのかはこちらね。ついでにスキル紹介もするわ」
幽香 ソードマン
ブーメランアクス★ スタンスマッシュ1 ヘッドバッシュ5 パワーゲイン5 ソードブレイク★ トライチャージ★
斧マスタリー★ 物理攻撃ブースト★ HPブースト3 TPブースト5 物理防御ブースト5 フェンサー★ ダブルアタック★
グリモア:斧マスタリー★ 物理攻撃ブースト★ フェンサー★ ダブルアタック(異常回復1)★ 血の暴走★ 忠義マスタリー★
ミスティア(本文中ではメルラン) バード
猛き戦いの舞曲1 聖なる守護の舞曲1 軽業の旋律1 慧眼の旋律1 蛮族の行進曲1
火劇の序曲★ 氷劇の序曲★ 雷劇の序曲★ 火幕の幻想曲7 氷幕の幻想曲7 雷幕の幻想曲7 耐邪の鎮魂歌8
歌マスタリー★ 癒しのリズム★ 素早さブースト★ HPブースト5
グリモア:火劇の序曲6(伝説グリモア) 氷劇の序曲★ 雷劇の序曲★ 盾マスタリー★ 音の反響★ 限界突破8(伝説効果で★扱い)
てゐ ドクトルマグス
巫術:再生★ 再生帯5 再生陣5 鬼力化1 皮硬化1 脈動5 呼応5 乱疫3 転移3 結界★ 反魂5
巫剣:霊攻衰斬1 霊防衰斬1 霊封頭斬1 霊封腕斬1 霊封脚斬1 霊攻大斬★
巫剣マスタリー★ 巫術マスタリー★ 抑制防御ブースト★ 物理攻撃ブースト4 吸命1
グリモア:巫剣マスタリー★ 巫剣:霊攻大斬★ 盾マスタリー★ 巫術マスタリー★ 刀剣マスタリー★ リンクオーダー★
文 レンジャー
フランクショット5 ブラインドアロー★ スリープアロー1 パライズアロー1 トリックステップ4
ドロップショット5 ダブルショット5 サジタリウスの矢★ スケープゴート★ アザーズステップ★
弓マスタリー★ 抑制攻撃ブースト★ 素早さブースト★ TPブースト1 エイミングフット★
グリモア:弓マスタリー★ 抑制攻撃ブースト★ スケープゴート★ パワーゲル★ 物理攻撃ブースト★ 盾マスタリー★
勇儀 ハイランダー→ブシドー
無双の構え★ 無双連撃★ 雷耀突き★ 小手討ち3 貫突1 ツバメがえし1 地走撃1 阿吽の尾撃1 後の先1
刀マスタリー★ 物理攻撃ブースト★ HPブースト1 TPブースト5 上段の構え★ 青眼の構え★ 居合いの構え★
グリモア:刀マスタリー★ 物理攻撃ブースト★ 青眼の構え★ 盾マスタリー★ ディレイチェイス8 フォースチャージ8
レティ「うわあ相変わらずツッコミどころ満載ねえ(しろめ」
静葉「あなたさっきから白目剥いてばかりだけど大丈夫?」
レティ「そんなことはこの際どうでもよろしい><
さしあたってまずアレよね、どう考えてもこのスターベアさん、今後も普通使っていくレベルにキャラメイクされてるわよね?」
静葉「本家ブシドーに比べてSTR、AGIは一歩譲るけど、HPとVITはハイランダーの方が上よ。
何気に本編のフランがそうなんだけど、ディレイクロスとかHPを削ることを考えない場合のハイランダーはそこそこ固かったりするわ。その硬さゆえに、ハイランダーベースのブシドーは攻撃力速度共に対して本家より落とさずに耐久力を上げる事が出来るわ。
あとAGIは犠牲にするけど、ソードマンベースのブシドーも火力を維持しつつ耐久性能を大幅に上げられるわ。こっちはこいしがそうね」
レティ「ここまでやってスポット参戦とか本当に…というかディレイチェイスとかフォースチャージって」
静葉「ストーリー引き継ぎじゃなくても、運は絡むもののストーリーでもファフニールのスキルは一応入手可能なのは知ってるわよね。
グリモアトレードって奴よ」
レティ「まあ概ね勇儀はなにしようかすぐ解るわね。
一時話題になった、無双連撃とフォースチャージでフォースを溜めまくって即座にフォースゲージ確保して、無双の構えを維持していくっていう」
静葉「限界突破やフォースリセットを絡めるとさらに特化できる所なんでしょうけどね。
チャージのレベルが8だから、残念ながらそこまですっとんではないけど…それでも、フォースチャージからの連撃でおよそ6割ぐらいまでゲージがたまるわ。
まあ先にも少し触れたと思うけど、勇儀はここでのスポット参戦の扱いで、無双フォースはかごめへ引き継がれているわ。かごめもいずれ、DLCで馬鹿やりたいみたいな話してたし、多分あなたにも出番はあるんじゃないかしら」
レティ「ない方がいい気もするけどね、この場合。
ミスティアはあれかしら、属性支援特化型のバード」
静葉「そうね。
実はこのすぐ後話す、穣子の馬鹿に付き合う羽目になった以上、あの子のプランに最もいい支援バードが属性特化しかないからね。
ちょっと先のネタばらしになるけども、正直なかなか痛快ではあったわ遺憾ながら」
レティ「…あなた最近さとりが伝染して、妹に対する扱いがちょっとアレじゃない?
まあいいわ。とりあえず盾持てる以外の連中みんな盾マスタリー持ってるけど」
静葉「地味に幽香に忠義と盾のどっち持たせるか迷ったんだけど、実は忠義の発動率は盾の倍なのよ(さとりメモ:両方が★なら忠義20%、盾10%の発動率です)。
完全無効は魅力的だけど、半減の方が機会も多いしその分生き残る率も上がるなら、と言ったところかしら。
ああ、言うまでもなく今回も攻撃の要は幽香よ。基本的には雷撃★★で強化された斧のフェンサーダブルアタックを叩きこむ簡単なおしごと、時々兎詐欺が強引に追撃をかましていくスタイルね。勇儀は一応雷耀持ってるけど、わりと好き勝手してるから、実はこの枠誰でも良かった説もあるわ」
レティ「そこまでやるんだったら、歌っていない夜雀にもリンクオーダーを打たせる仕事渡しておけばよかったんじゃないの?」
静葉「今思えばそれでも良かったかもしれないわね。
何気にバードはTEC相当高い(さとりメモ:実はマグスやカスメに僅かに及ばない程度なのでかなり高い部類です)から、TPの豊富さにものを言わせてサブにそういうの持たせてもわりと腐らないしね。
まあ、地味に劈く叫びの耐久ダウンを打ち消せるから、所詮はレベル1の守護を何度も歌わせる仕事もあったし」
レティ「序曲幻想曲を一属性ピンポイントにして、その分舞曲に回す選択肢はなかったのかしら」
静葉「ところがねえ、今作の舞曲は特にだけど、序曲以外の歌スキルはレベルを上げるとTP消費が頭おかしいくらいに跳ね上がるのよ。
一応歌マスタリーでカバーできるとはいえ、それでも攻撃防御両方の舞曲が★で消費29。攻撃および防御補正130%の5ターン継続全体がけと言っても、気軽にガンガン使って行けるとは言い難いわね。いくらバードのTPが潤沢にあると言ってもねえ」
レティ「1ターンあたりの効率としては十分優秀だとは思うんだけどねえ。
それと、天狗ナニすんの?」
静葉「アイテム撒き(迫真」
レティ「うわあ(しろめ」
静葉「っても一応こいつはパワーゲルを撒く仕事があるわね。
あと一回だけ、どうしても幽香やてゐを護るために、勇儀にスケゴかましてネクタルする役目もあったかしら。一回くらいしかなかった気もするけど」
レティ「鬼を身代わりにする天狗とはいったい…」
静葉「一応氷竜には盲目や麻痺も通るし、本当に仕事のない時は運任せに異常矢をちまちま打たせたりしてたわ。流石に通りはしなかったけどね。
盲目でも通ってくれれば、僅かにだけど振り始めてるトリックステップでもいい仕事が出来たかもしれないけど」
…
…
♪BGM 「戦場 朱色の雨」♪
ブレスや、その力の源たるドラゴンハートから直接放たれる冷気の波動も、本来マトモに受ければ致命的な一撃であろう筈だが、てゐの奇策により完全にその二つを実質的に封じられ、その蒼い竜は徐々に追い詰められつつあった。
メルランの呪歌により、紫電の魔力を纏う幽香の巨斧が唸りを上げ、勇儀の放つ雷の貫手がその身体を穿つごとに、あれほど強大なプレッシャーを放っていた筈の氷竜は、彼女達の繰り出す猛攻に耐えきれず無残な姿となっていった。
それでもなお、氷竜は苦し紛れに強靭な腕から繰り出す爪の一撃で対抗するが…。
「うおおおおらあああああああッ!!」
ついにその爪も、鬼力化の支援を受けた勇儀に受け止められてしまう。
三つあった頭のうち、戦闘開始直後幽香に潰された右ばかりでなく、左の頭もまた、その激しい戦いの中で機能を完全に失っていた。
恐らく、最早氷竜はその必殺の武器であるはずのブレスを打つことは勿論、その三つの頭が連携して繰り出す恐るべき牙の一撃を行使することも出来まい。
その決着の時は、確かに近づきつつあった。
だが…文は、この青い竜の姿に何か違和感を感じ取り、離れた位置からその様子をうかがっている。
この雪原を染める血は、ほとんどがこの竜から流れたものだ。
だが、最初に襲いかかってきたときのスピードをもってすれば、この竜はむざむざと、幽香や勇儀の繰り出す大ぶりな攻撃を、何の支援も無しに此処まで受けることはなかったのではないだろうか。
いまだに歌の陣を張り続けてるメルラン、彼女の様な吟遊詩人の技には「慧眼の旋律」という、こちらの運動性能をアップさせて命中率を上げてくれるものがあることも、彼女は知っている。
だが、メルランの歌っている呪歌は、幽香と勇儀に施した「雷幕の序曲」、そして、こちらの軽装をカバーする「聖なる守護の舞曲」…そのふたつだけのはず。
(あいつは勇儀さん達の攻撃を受け止めなければならない理由が…ううん!そうじゃない!
絶対にそこから引くことのできない理由が…あっ)
文はその理由に気付いた。
氷竜の隙を突いて、てゐはその背後へと回ろうと試みるも…氷竜は幽香達の攻撃を受けることを承知の上で、てゐに対して蹴りを繰り出そうとしている。
竜の動きを見る限り、この竜は脚技を得意としているわけでは決してないだろう。てゐはそれでも、その爪を避けるたびに大きく飛びのいているが…てゐの狙いは恐らく、この戦いのどさくさにまぎれてクオナも救い、安全圏外へ離脱させてからメルランの「最終決戦の軍歌」を上乗せした勇儀・幽香両名の大技を決めて一気に勝敗を決する腹づもりなのだろう。
だが、そこまでしなくても、何故か背後を気にしてやまない氷竜はこのままでも十分に制することはできよう。
(そうじゃ…そういうことじゃ、ない!
まさか、あの竜は…クオナを護ろうとしてる!?
私達を、あの子を奪おうとする敵と認識して…だとしたら、それは何故!?)
考えをめぐらす文の脳裏に、ほんの数時間前に聞いたハンナの言葉がよぎる。
-そういえば幽香さん、ヤマユリの花を持って帰ってきたんだよ。
なんでも、氷樹海で見つけて来たって言って…うちの子にって-
-クオナが居なくなったそのとき、その花もなんでか一緒に持って出ちまったんだよ-
文は、千里眼の力を持つ天狗族の目を凝らして見る…クオナの帽子には、飾りめいて一輪の百合の花が差されている。
恐らく、幽香が渡したという「氷王のアウラツム」なのだろう。
氷王は、氷嵐の支配者を…この目の前に居る竜種を従えた。
アウラツムは氷王のシンボルであり、それをクオナが持っている。
文の思考がそれ全てをひとつの推論へ符合させた。
「しぶとい奴だったが…根くらべはあたし達の勝ちのようだな…!
これで決めさせて」
「待って! 勇儀さん、みんな!
あなたも聞いて頂戴、これ以上私達が争う事になんて意味はなかったのよ!!」
勇儀が構える貫手を、満身創痍の蒼い竜に向けて繰り出そうとするその前に、文が竜を庇うようにして割り込む。
攻撃の手を止め、訝る勇儀達を前に、文は竜へ向けて訴える。
♪BGM 「情景 しじまに吹く風」(SQ4)♪
「聞いて、氷竜!
あなたが護ろうとしているその子は、あなたが慕った氷王じゃないわ!
氷王はもう死んでしまったのよ!!」
竜種は強大な暴の象徴とされる一方で、中には、時に妖怪の賢者と呼ばれるものすらも軽く凌駕する高い知性を持ち、神として信仰の対象にすらなっているものが存在することも、文は知っている。
そこまででなくても、目の前の氷の竜は、氷王という「人間に従っていた」存在と伝承されているのだ。十分に話し合いができる相手であることを、文は状況判断により確信していた。
現に氷竜は、傷ついた体のまま、残った真ん中の首だけで文の姿をじっと見つめ…その言葉に耳を傾けている。
文はさらに、竜へ訴える。
「その子は…氷王とは無関係の、ただの女の子なの。
私の仲間が…そこに咲いていたその花を勝手に持ち出して、その子にあげちゃっただけなの…その事は謝るわ」
そして文は、ゆっくりとその脇を通り過ぎる。
制止しようとする勇儀を、てゐは制して頭を振る…心配ない、そう言わんばかりに。
竜は何の妨害もせずに文を素通しし、やがてクオナを抱き上げて戻ってきた文が、その身体を幽香に預けると、クオナの帽子に差されていたアウラツムの花を抜き取り、竜へと差し出した。
「これは…ここにきちんと返す。
あなたの怪我も治して、今後誰にもこの場所へ踏み込ませないように、氷王の一族にも説明するわ。
解って頂戴…氷王は、もうこの世には…!?」
その瞬間だった。
文の差し出したアウラツムの花がにわかに光を放ち、見る間にそれが一本の、氷の如く透き通った純白の鞭へと変わっていくではないか!
そして…その鞭を見た氷竜は、天に向けて咆哮する。
「あいつ…泣いてるのか?」
哀しげな咆哮を上げ続けるその蒼い竜の姿に、勇儀は呟く。
「…私の…所為かも知れないわ。
私が、あのアウラツムが、この子にとってとても大切なものだと、理解していれば」
幽香はそっと、竜の脚へ触れる。
すると…触れたあたりから竜の身体は見る間に蒼い蛍火へと変わり、天を覆い尽くしていく。
蒼い燐光がまるで渦のように旋回する中で、その声が聞こえてくる。
-氷王様は…もういない。
だが、アウラツムは、お前を認めた-
そして…無意識に差し出した幽香の手の中に燐光が収束し…それは、蒼い竜玉となって手の中におさまった。
茫然とそれを眺めていた幽香に、文は白い鞭を差し出す。
「これはきっと、あなたが持っているべきものだと思うわ。
あの竜はきっと…自分が仕えるべき主をずっと、待ち続けていたのよ。
氷王が死んでから、ずっと、気の遠くなるほどの長い孤独の時を」
幽香はじっとそれを眺めていたが、ふっと笑うと、文の手からそれを受け取る。
「そうね。
それも、私が果たすべき義務なら、そうする」
眩い光と共に、幽香の手の中で竜玉と鞭が一つに融合し…それが、伝承に残る氷王の愛用した「白蔦の氷鞭」であることが判明したのは、のちのことである。
…
あの後、幽香の介抱されていた岩室に戻った一行は、そこで元の服に着替えると、クオナの回復を待った。
ほどなくして目を覚ましたクオナは、自分を抱きかかえる幽香を見上げ、はにかんだ表情で言う。
「あのね…わたし、夢を見てたの。
見たこともないおっきなお化けが出て…凄くこわかったんだよ。
でもね…幽香さんが来てくれて、助けてくれた。夢なのに、起きたら本当に幽香さんがいてくれて…」
「私なんかが出てきたら、余計に怖くなったかもしれないわね」
クオナはふるふると頭を振る。
「そんなこと、ない…。
幽香さん、とっても強くて…わたしのこと、守ってくれて…とってもとっても、格好良かった。
だから…平気だったの」
クオナはにっこり笑いかける。
幽香は一瞬呆けたようにしていたが…やがて、つられるようにして笑う。
クオナは何か、足りないものがあるのか、きょろきょろと周りを気にし始める。
幽香ならずとも、恐らくは帽子に刺していたアウラツムの花を探しているのだろうと察した。
「あの花は…ごめんなさい、やはり元の場所に戻す事にしたわ。
折ってしまったから、いずれ枯れてしまうものではあるけれど」
幽香は少し迷ったが、その事を告げた。
そうなんだ、と哀しい顔をしたクオナが、ぽつりとつぶやく。
その言葉に一瞬目を丸くする幽香に、少女は気恥ずかしそうに「なんでもない」と顔を隠してしまう。
その様子を伺っていたてゐは、何処か悪戯っぽい笑みで立ち上がる。
「そんだけ喋れるようになれば大丈夫だろ。
帰ろう、女将も心配してるだろうし」
「ええ、とりあえずは大事にならずよかった、ってことで。
とりあえず今回使ったあの水着?どうすればいいの?」
それに合わせるかのようにそそくさと立ち上がるメルランも、意味ありげな含み笑いをしている。
「ああ、ありゃ結構伸縮性があるってか、着るとひとりでにフィットしちまうらしいんだ。
元々が女ばっか狙う不埒なエロガエルの伸した皮だ、ある程度融通利くんだろその辺」
「えーっそんじゃなんか素肌に着たくなかったなーそんなのー。
意外と着心地は悪くなかった気がするけどさー、あっ幽香さんその子の事はお願いね? あなたが元々助けに来たんだし」
急に話を振られて、呆気にとられながらも抗議の言葉を投げようとする幽香へと、畳みかけるように文も悪戯っぽく言う。
「そそ。
私達の様なアクの強い妖怪と違って、天下のゆうかりんさんは子供たちの人気者でございますれば」
「ちょっと! あんた達一体何を言いたいの!?」
「そのアクの強いのってあたしも込みか?
んまあ、否定はしねえけどな…っとそういやさっき放りなげた時に一緒に酒も空けちまってたか、勿体ねえことしたな」
「そんなことはどうだっていいわよ!
あんた達ふざけたこと言ってるとねえ」
「あーはいはい糸使いますから、幽香さんはその子をしっかりと抱き止めといて、おーけー?」
顔を真っ赤にして怒る幽香だったが…やがてふっと、溜息を吐く。
-わたしも、幽香さんみたいに、強くて格好いいひとになれたらって-
最後に聴いた少女のつぶやきが、何時までも優しくリフレインする。
腕の中で楽しそうに笑うクオナを見ていると、こんな日常も悪くない…彼女は、そう思った。
…
…
静葉「というお話でした」
レティ「何よちょっと色々美化しまくり過ぎじゃないの? 幽香ばかりじゃなくて氷竜とかも色々」
静葉「何気に何処見ても、意外と触れられてない見解があるのよね。
クオナをさらってしまったことでロリコン竜のレッテルをはられる羽目になった氷竜だけど、見方を変えると、氷竜がこだわっていたのはその時クオナが持っていたアウラツムの花だったんじゃないのか、という事。
クオナ自身に氷王の面影を氷竜が見ていた、なんてのもたまにあるけど、結局根底には氷竜=ロリコンっていう損なイメージからの延長線上だし…クオナがわざわざ花を持って出かけたのも、自分を助けてくれる冒険者達のようになりたい、という想いからみたいだし」
レティ「成程ねえ…こりゃあ幽香は今後かごめに滅茶苦茶いじられるわね^^」
静葉「それもやむなし(キリッ
まあ兎に角、氷竜はアウラツムの花に氷王の面影を見てて、クオナをさらったというよりは「クオナの持っていたアウラツムの花を取り戻そうとしていた」だけだったのかもしれないわ。
ある意味ではとばっちりで殺されてしまったみたいな解釈も出来るし、どうせ作り話なんだからきれいにまとめてみましょうと」
レティ「というか、場合によっては何カ月も氷樹海に放置されてる羽目になるというか、結局攻略を投げたボウケンシャーのところでは永劫に放置されてもわりと何ともなかったぜ!なクオナが病弱(超強靭)なんて揶揄をされたりすることも稀によくあるわね。
実は緋想天とかでわりと方々ほっつき歩いてる図書館系紫もやしの喘息(笑)並に首傾げたくなる案件ね」
静葉「まあその辺は深く気しててもしょうがない気がするわ。
そもそも、メテオ発動後のFF7だってわりと何日もかけてチョコボブリーダーやってたりなんてプレイヤーだって星の数ほどいるし、一週間で世界滅亡とかいいながら8回以上宿屋に泊ってもゲームオーバーになるわけでもないし」
レティ「メタいわねえ。
そんで、結局氷竜は普通に殴り勝ったわけ?」
静葉「他に語りようがないくらいあっさりカタついたわね。
まあでも実は、一回ミラーシールドの事を忘れて殴って盛大にカウンターでhageたから、その後は終盤普通にアザステで飛ばした幽香しか殴ってなかったりとか…ただ、終盤のランダム行動でランダム行動にミラシ混ざるの、実はガセの可能性あるわね。
でなきゃ、前作同様氷河の再生直後高確率で使うのか…少なくともsageた2回目でランダムに突然ミラシ使われることはなかったわね。兎に角呆れるほど楽よこの方法」
レティ「まあ紳士カエルと大王のDLC合わせて500円(リアルネットマネー)必要な方法ではあるけどねえ」
静葉「という事で今回はここまでよ。
次回はまあ…あれね。クエストそのものはダンフォードじいさんがえっらい大事にしてるけど、こっちじゃ穣子が絡むから基本的にギャグの扱いになるんじゃないかしらね。
何気にだいぶ前に持ちらと触れられていたヘカトンのお話よ」
レティ「いよいよ本気で総てのボスを狩る方向に来てるわね。
ところでティンダロスとかのDLCも買ったんでしょ? やらないの?」
静葉「そっちは未定だけど、少なくとも赤竜までは狩る事は確定してるというか、実はこの時点でもう…まあ、察してくれ、と。
というわけで今回はここまでにしとくわ」
レティ「わーそういう濁しかた嫌いだなー(棒読み」