かごめがこの日、酒場へ姿を見せたのはそろそろ店も閉じようとする夜更けのことだった。
浴びるように酒を飲んで突っ伏しているメルランとこいしを起こそうとするリリカの傍に、かごめがさも当たり前のように腰かけると、こちらも解ってるかのようにアントニオが、度数の強い樹海産の素材で作られた酒の注がれたグラスを一つ置いた。
「お前らなあ」
リリカから事の顛末を聞いたかごめは、渋い顔をしながら一度グラスを煽り、そして溜息混じりに言う。
「まああたしが依頼を半分すっぽかしたのは事実だし、それを解決したのはお前らだから文句の言い様もないがな。
それに、十分な予行演習もできているようだ」
「それはやっぱり、私達の力が必要になってる…そういう解釈でいいの?」
「些かやり過ぎ感は否めないがな。
まあ、こっちの用事は済んだし、フランもそろそろ天空城へ辿りつくだろう。
明日には、あんた達も天空城へ向かってもらう…レミィ達もそれを追って城へ入るだろうから、連中と共同して事に当たってくれ。
…おそらく、それですべてケリがつく」
「かごめさんはどうするの?」
かごめは二杯目を口に運んで、もう一つ息を吐く。
「あたしの目的は、天空城と、そのさらに上にある。
あんたのせい、っていうわけでもないが、少し計画にずれが生じているからな…時間が出来たという意味では、むしろあり難い誤算なんだがな」
「リリカがいの一番にあのモニュメントに触れたこと、それが影響してるってことかしらね~」
それまで泥のようにカウンターに突っ伏していたメルランが、酩酊して僅かに頬を染めた顔のまま、かごめの方へ首を向ける。
「あのモニュメントは、元々何かの力を宿していたものが、もうほとんど枯渇状態になっていたわね。
…リリカとこいしの空神の力が、あれに呼応したわ。
最初、三途の川みたいなところに放り出されて、どうしようか迷ってるうちにあれに触れたら、ハイ・ラガードの世界樹が見えてひと安心、ってとこなんだけどね~」
「だが幸か不幸か、そのお陰で僅かに結界が力を取り戻した。
あの程度まで結界が回復していれば、あたしが多少中で暴れても問題ないことが解ったからな。お陰で、いいものも見れた」
かごめの表情は、心なしか何処か嬉しそうにも見える。
「メルラン、あんたには別件でひとつ頼みたい事もある。
天空城へ行くのはリリカとこいしだけ…レミィとパチュリー、あと藍がいる筈から、その五人でチームを組んでくれ。
次に会うときは、その全てが終わった後だ」
「狐尾幻想樹海紀行 緋翼の小皇女」
第五十九夜 こいしと笛の音
~その数日後、鋼の棘魚亭~
メルラン「いや本当に参ったわよ。
あの翼人って連中、これで命を落としてもそれが星の定め、とか言いやがって天井が思いっきり崩落しまくってるのに平然とその中歩いてきやがるんだから。中には荷物持ったままジュエルリザードにやられ放題になってる奴までいやがるし。
正直見てる私の方が気が気じゃなかったわよ。
しかもなんなのあいつら服着てないし。眼のやり場に困ったわよ本当!><」
こいし「えっメルランさん私達が戦ってる脇でそんなことしてたの」
メルラン「さとりじゃないけど、いい加減かごめが何を考えてるのか詮索する気も起きないけどさー…あいつもあいつで持って来られた資料読み漁りながらいっかな動きゃしないし…んでもって、あいつ城でドンパチやってんのが終わると「お前もういいし街に帰っていいわ」とか。
流石の温厚な私でもそろそろ本気でキレるかと思ったわよ(#^ω^)」
こいし「でもそのかごめさん達、ずっと街に帰ってきてない気がするんだけど。
もうあれから一週間近く経つけど、フロースの女将も見てないっていうし…」
メルラン「知らないわよあんな奴もう!
マスターもう一杯頂戴、飲まないとやってられないわっ><」
店主「へいへい。
…おうそうだ、あんたらもし手が空いてるようなら手頃な依頼もあるし、ひとつ受けちゃくれねえか?
なんつーかお宝の気配がする依頼なんだが…」
メルラン「宝ぁ!?
もう宝物とかそういう言葉聞くだけでもうんざりなんだけどさあ」
こいし「(小声)メルランさん荒れてるねえ、あの日?(ニヨニヨ」
リリカ「そういうぶしつけな事を云うんじゃありません(キリッ
それにお宝、って言ってもねえ」
こいし「エトリアみたいにゴーレムがいたりして^^」
リリカ「だからそういう不穏な事も言うな!><」
店主「まあ、俺様はごめんだが、宝探しには危険がつきものだからよ。
それに百戦錬磨のオメエらなら、多少の魔物屁でもねえんだろ?」
メルラン「えーいいわよ魔物ぐらいひとひねりよ(プンスコ
いいからとっとと本題話しなさいよ受けてやるから」
リリカ&こいし「∑( ̄□ ̄;)えちょ」
…
…
静葉「ドーモ、解説役の秋静葉です」
レティ「あんたもうすっかりそう名乗るのに抵抗がなくなってるわね」
静葉「どうせ喚き散らしても事態なんか変わりゃしないもの。
今回はあれね、リメイク前にもあった笛絡みの一連のクエストになるかしら。
氷竜の話した時「あるギルドとある盗賊の間で悶着があって」という話をしたと思ったけど」
レティ「そのギルドは他でもないメルラン達だったと」
静葉「そういうこと。
時系列的には丁度本編が終わったあたり、一度クランヴァリネが街に降りてきた直後ぐらいだと思ってもらえればいいわね。
あとそれに関わって別のクエストにも触れられてるけど」
レティ「第六層解禁に関わる一連のクエストのひとつ「崩壊への秒読み」ね。
天空城にある翼人の宝物庫から、翼人の宝を回収してくるって言うクエストになるかしら。
実はリメイク前だと、選択次第では翼人に犠牲者が出るか、宝が失われるかの二択になるんだけど」
静葉「どっちの結果でもクエストの成否には関係しないわね。
翼人が犠牲になるとクァナーンは「それがそいつの定めだし仕事果たしてくれてありがとう」みたいなことを言うけど、宝を回収しないと「そこでなくなるのがあの宝の定めだったし、同胞を助けてくれてありがとう」みたいなことを言ってくるのよね。
まあおおらかというかなんというか」
レティ「ちょっとクァナーン流され過ぎだろみたいなツッコミも多く出てるわねこの辺り。
でもってこのクエストが六層解禁クエスト「啜れ、古なる血の杯」につながっていくわけね」
静葉「しかもその根底には前提となる複数のクエストがあって…とか、兎に角続き物クエストが多いわねSQ2は」
レティ「その辺がSQ2でもいっちばん面倒なところよね。リメイクされてクエストが増えまくったからなおのこと酷いことになってるし。
そもそも六層に入るのに前提クエストがあるとかなんなのかと」
静葉「で、その一連のクエストの源流に当たるのが、今回触れる笛絡みのクエスト。
理由はあとで触れるけど、所謂「盗賊クエ」と呼ばれる一連のクエストね」
レティ「そういえばサブタイトルがドキドキ大冒険じゃなくなってるけど、その辺は」
静葉「最初そのつもりで行ってたけど、なんかだんだんそれじゃしっくりこなくなってきたみたいよ。
あとクエスト内容というか、経緯はかなりアレンジされてるからその辺は注意ね」
レティ「というか、別話レベル?
いつもの事のような気もするし今更NRSも起こしてられないけどさ(呆」
…
…
店主「依頼人は気弱そうな野郎なんだが、そいつが氷樹海中層で「氷の花」が咲くっつー場所の南西にある洞窟で、お宝を見たってんだな。
なんでそれを自分で持って来ねえ、って言ったら、中には怖くて入れねえとか言いやがる。
正直ちょっとふざけた話だが…とにかく、そのお宝がなんなのか確かめてほしいッてんだな。
まあそんなところのお宝だから、どんな罠があるかもわからんというし…釣り合うかどうかは知らんが、やっこさんかなりの大金を報酬として預けて行きやがった。そんな価値のあるもんかどうかも解らんところが、多少胡散臭くはあるんだがな…」
~というわけで六花氷樹海~
こいし(相変わらずのスク水一枚装備)「ぶぇーくしょ!!><」
リリカ「まただよ(呆」
メルラン「ここまで行ったらただのマゾよね。
まあもう気にしないことにするけど(キリッ」
リリカ「そうだね(日常顔」
こいし「うーふたりともリアクションつめたーい><
ところで、洞窟ってあれかな?」
こいしちゃんの指差す先にはなんひかえめな穴が口を開けてるでござるwwwwデュフフwwwww
リリカ「…何このナレーション」
メルラン「気にしたら負けじゃないかしら。
依頼人の言葉を信じるとすれば、あれじゃないかしら。
けど、その依頼人の姿はないわね」
「やあ、もしかして君たちが洞窟の奥を調べに来たっていう冒険者かな?」
リリカ達が洞窟を入ろうかと驚き戸惑ってるとなんか衛士らしいのが馴れ馴れしく近づいてきた
こいつ絶対我々のコリブリ狙いに来てるだろ…いやらしい…
メルラン「なんか急に話しかけてきたわね」
衛士「そんな警戒しなくてもいいよー。
僕はこの辺りの巡回任務してるんだけど、ここにいた気弱そうな冒険者っぽい人が、ここに自分の依頼を受けた人たちが来ると思うから、急用ができたから待ち合わせはできないと伝えてって、僕に伝言していったんだよ。
本当に来るかどうか不安だったけど、来てくれて安心したよー」
馴れ馴れしい衛士はさらに馴れ馴れしく一方的に話しかけてきた
おいィ? こっちの質問とか受けつけないで一方的に用件だけ伝えるとかお前忍者だろ? 汚いなさすが忍者きたない
衛士「君たちはこの洞窟を調べるんだろ?
中はどうなってるか僕も知らないし、知っての通りこの近辺には強力な魔物も結構いる。
洞窟内の狭いところでいきなり襲われたら困るだろうし、どうだろう、僕が外を見張るから、その間君らで」
「いい加減黙りなさいよ」
そのとき、刺すような少女の言葉が、それまで明るいトーンで流暢に話していた衛士の言葉を止めさせた。
リリカとメルランが一瞬顔を見合わせ…それが、こいしの放ったものだと気づくのに僅かな間をおいた。
こいしの表情は、内心の不快感や嫌悪感を露骨に示しているかのように、険しい。
リリカもこれほど険しい表情のこいしを見るのはあまり記憶にない。
「ど、どうしたんだい突然?
我ながら名案じゃないかと思うんだけど…あ、まさか僕が君達を背後から襲いかかって宝を横取りしようとか、そういうことを疑ってるのかな?
そんなことするわけないよ、洞窟の天井には鍾乳石がびっしりで、何時落ちてくるかもわかんないし。
それにそんなことしたら僕はこの国にいられなくなっちゃうからそんなことは…」
「うるさい、黙れッ!!
さっきから声が聞こえてるのよ!あんたのその心の中の薄汚い声がッ!!
さっさとここから消え去れ…さもないと…!」
こいしが鬼気も露わに低く構え、抜刀の体勢に入るその柄を抑えるようにして制しながら、リリカが一歩前に出る。
「ごめんね。
所詮は人間のあなたに、この子がどんだけ怒ってるかなんて理解できないでしょ?」
「え…あ、いや、確かに突然現れた僕の正体を疑う気持ちはわかるよ…危険に身を置く冒険者なら、当然の警戒だな。
だったら」
「そう。
じゃあ、私からあなたに解りやすいように、あんたの何処が怪しいのか指摘してあげる。
あんた、洞窟には入ってないんでしょ?
だったら何故、洞窟の天井に鍾乳石がびっしりだなんて知ってるの!?」
「………ッ!!」
リリカの差すような視線と、自分が不用意に発した言葉の矛盾を突かれ、衛士はそれまでのニヤニヤ笑いを消して後ずさる。
「そうね。
そもそも依頼人も、中には入っていないとか言いながら、中にお宝があることを知っていた。疑うなという方が無理ね。
あんたと依頼人がグルか…それとも!」
言うが早いか、メルランは何時の間にか掌に生成していた魔力のクナイ弾をその衛士へ向けて放つ。
衛士は醜悪な怒りの表情に顔をゆがめ、弾幕の射線から最小限の動きで身をひるがえしながら舌打ちして悪態を吐くと、懐に隠し持っていた轟音弾を投げつつ飛びのいた。
けたたましい爆音と共に轟音弾が炸裂し、周囲の雪が舞い上げられるが…それが晴れた頃にはその怪しい衛士の姿はどこにもなかった…。
…
店主「成程な。
大方そいつは、衛士に化けた盗賊かなんかだろう。
…オメェらが出て言ってすぐに、野郎が置いていった報酬の中身を確認してみたんだが…何時の間にか中身が全て石ころにすり替えられてやがった…ふざけたことをしてくれやがるぜ…!」
メルラン「えっ!?
それじゃあ今回はタダ働きになるの!?」
僅かに眉をひそめるメルランに、アントニオは否定するように手を振った。
店主「んや、こいつは俺の不手際でもあるし、今回はそれに見合うかどうかわからんが、俺の方から自腹で幾許か払うさ。
それで、悪いが俺の方は勘弁してもらえりゃ助かる…気に入らねえって言うなら、今日の分の飲み食いした代金は取らねえ、好きに喰ってくれ」
メルラン「……まあ別にいいわよ、そのくらいは。
ところで、その洞窟の中でこんなものを見つけたんだけど」
【システムウインドウ】 Merlinさんはキーアイテム「空色の笛」を手渡しました
店主「なんじゃこりゃ?
まさか、こいつがお宝なのか…?」
メルラン「他にそれらしきものはなかったわね。
ただ、これを手に入れた時、別の所から笛の音がしたわ。その直後、大量の虫の魔物が襲いかかってきた」
店主「…この笛がもうひとつ、あるってことか?
しかも魔物が現れたことと、こいつに何らかの関係性がある…そう言いてえのか?」
メルラン「確証はないわ。
この笛を吹けば、同じことになるかもしれないけど…それだったら何故、わざわざ私達に取りに行かせたのか気になるところね」
アントニオは難しい顔で腕組みしてしばらく考えていたが。
店主「ふむ…この笛、少しあずからせてくれねえか?
何か重大な秘密があるかもしれねえ、今回の盗賊野郎の件も含めて、報告がてら大公宮に調べさせてえ。
…なんとなく、嫌な予感もするしな」
メルランは傍らにいたリリカ、こいしそれぞれの方へ、意見を求めるかのように振り返ると…リリカとこいしは顔を見合わせ、頷いて返す。
メルラン「解ったわ。
あなたの言うことなら、少なくともあのニセ衛士よりずっと信用できそうだもの。
それと今日、あなたのおごり…でいいのよね(にっこり」
店主「はっ、今日はマジで商売あがったりだぜ全く。
…この件は任せな…なぁに、逃がしゃしねえよそんなふざけた野郎。うちの信用問題にもなるからな」
…
…
静葉「そんなこんなでまず一番最初のクエスト「擬態と捕食」ね。
この時の衛士との会話で、衛士の何処が怪しいかを正しく指摘してやらないと、のちのちのクエストが少し面倒な事になるわ。
正解は…まあリリカが言ってる通り「何故この衛士が洞窟の中に鍾乳石があるのを知っているのか」を指摘すればOK。
ちなみにこの選択肢を選ぼうが選ぶまいが、洞窟から出たとたんにはさみカブト5体から奇襲を喰らうわ」
レティ「なんか3りPTだけど、流石にレベルがレベルだけに全く恐ろしくもないわね」
静葉「こいしが抜刀氷雪を叩きこめば2ターンで終わるからね。
まあ戦闘開始で構えてれば初手で一掃できるんだけど、属性まんべんなく通るし」
レティ「適正レベルでやるときでも、雷撃の印術とかの範囲属性攻撃でさっさと片付けてしまいたいところね。
で、このクエストが次のクエストにつながっていくわけで…」
静葉「なおこの時、盗賊の正体を見破ることでのみ、キーアイテム「装飾のついた空色の笛」を入手できるわよ。
このキーアイテムの有無によって後につながっていくクエストの難易度と、展開がほんのちょっとだけ違っていくわよ」
レティ「一周め二周めはどっちも取らずに行ったのよね。
もっとも、あってもなくてもそんな劇的に難易度変わるわけじゃないんだけど…おもに製作スタッフのミスというかなんというかで」
…
…
~それから一週間後~
メルラン「危険な魔物?」
店主「おうよ。
しかも結構手強い奴らしくてな、氷樹海に入れるようになったぐらいの連中がだいぶ返り討ちになってるらしいんだな。衛士隊にもだいぶでっかい被害出ててな…でけえ声じゃ言えねえが、数十人単位の隊が全滅したっていうんで、大公宮でも氷樹海の件については緘口令を敷いた上で衛士隊の出動を止めてるって有様だ」
メルラン「…ちょっと、かなり大事じゃないのそれ。
確かにここの衛士、タルシスの連中に比べれば大分頼りない感じもするけどさ」
店主「そんな世界でも屈指の強豪部隊を引き合いに出されても困るんだがなあ…まあ、否定はできねえけどよ頼りねえってのは。
まあそんなわけで、大公宮命令で既に、禁忌の森とかをメイン探索してるような連中が事に当たってるみてえなんだが、またそういう奴らが入ったときに限って出て来ねえときてやがる。どうも魔物の方も相手を完全に選んでるんじゃねえかって話なんだわ。
しかもキナ臭いのはそこだけじゃなくてな」
こいし「どういうこと?」
店主「それがな、さっきも触れたとおり、もう既にいくつかのギルドが犠牲になってるんだが、そいつらの荷物は勿論、ホトケさんも完全に身ぐるみはがされた状態なんだとよ。
その魔物が持ち去ったんじゃねえかなんて話もある」
メルラン「魔物が追剥ぃ!?
そんなことってあり得るのここ!?」
店主「こいつもおおっぴらにしていい話じゃねえんだが…かごめ姉さんが持ち帰った「天空城」の資料って奴にな、あの氷樹海には「ムベンガ」っつー、「天空城」の主が生み出したとかいう、魚の頭をした奴らも住みついてるんだとよ。
そいつらは人間をいたぶり殺すことを何よりも楽しみにしてる、「上帝」の生んだ失敗作だが…凶暴かつ狡猾な奴らしいから、そいつの仕業っていう可能性も指摘されてんだ。まあなんにせよ、今度「ムベンガ」の掃討作戦も検討に入れることも考え、なるべく実力があるギルドを調査に投入してえってのが大公宮の思し召しでな」
こいし「ふーん。
じゃあ今のところの容疑者は、そのムベンガとかいうインスマウスの住人めいた何かだっていうわけね」
メルラン「確定したわけじゃないから容疑者じゃなくて被疑者、ね」
リリカ「今そういうのとりあえずどうでもいいことじゃないかなあ(呆」
店主「まあ報酬もあくまで調査だし大したことはねえがな、こいつにはいい副次効果もあってな、今結構参加してる連中血眼になってっからな。
オメェらも受けるつもりなら、早めに事に当たった方がいいぜ。もうけが少なくなる」
リリカ「えっ、どういうことです?」
アントニオは「わかってねえなあ」と首を振ると、口元をニヤリと歪めて右手の親指と人差し指で丸を作って示す。
店主「お宝だよ、お、た、か、ら!
他はどうか知らんが、この街の世界樹では樹海に落ちてるものなら、いかな歴史的重要物であろうが、樹海でホトケさんになった他の冒険者の持ち物だろうが、好きなように懐に納めていいって暗黙のルールがあんだよ!
無論その為に他の冒険者を亡き者にしていいってわけじゃねえが…魔物がやったとすれば、それはノーカンって奴だ? そうだろ?」
メルラン「えーそういうのもありなのここ?(呆」
こいし「焼肉定食のルールと感心するけど何処もおかしくないね^^」
リリカ「それを言うなら弱肉強食でしょうが。
まあお宝()云々はどうでもいいとしても、あまり面倒な魔物だったら放っておくのも危険よね」
…
~氷樹海~
メルラン「というわけで氷樹海へやってきたわけなんだけど」
リリカ「けど少し引っ掛かることがあるのよね。
普通、この手の魔物の被害は、夜であることが多いよね。
…正午をまたいで五時間ほどの間に「しか」被害が集中していない、明らかにヘンだよ」
メルランはリリカの指摘に腕組みをして、軽く溜息を吐く。
メルラン「ええ。はっきり言っておかしいわね。
正直お宝云々より、そっちの方が私も引っかかってはいたのよ。
ムベンガの話は私も幽香さんから聞いたわ…人間を自分のテリトリー内に誘き寄せて、寄って集っていたぶり殺すのを存在意義としてるような魔物よ。それだけ狡猾な奴が、そんな真昼間から追剥目的で冒険者を襲うなんてこと自体、無茶な考えよ」
リリカ「…相変わらず幽香さん色々やってるなあ^^;
けど…確かにこの近辺には幽香さんの妖気がそこらじゅうに残ってるわ。ムベンガに限らず、幽香さんの気配を強く感じるところには魔物もあまり寄っては来ないの、見てるしね。
それになにより」
リリカは横目で、二人から一歩下がって、流石に今日はコートを羽織って俯いているこいしを見やる。
リリカ「こいしがあんな反応を見せるということが、何よりの証拠だよ。
…此の事件、魔物の仕業じゃない。
必ず裏で糸を引いてる奴がいる…ふざけてるわね!」
リリカがその槍を周囲に一閃する。
然程、チカラを込めたものではないように見え、それは強烈な音の波となって森へと走り…反響する。
リリカはしばし目を閉じ、反響されて集まった音を吟味し、そして、眼を見開く。
「見つかったのね」
「来るよ、うまく挑発に乗ってくれた。
これは私達に売られた喧嘩だよ…喧嘩を売る相手を間違えたって、思い知らせてやる!」
ある種の獰猛さを滲ませる、鬼気迫る表情でリリカが槍を構えると同時に、何処からか歪んだ笛の音が響き…そして、背後の茂みの中から巨大な影が飛び出してくる!
♪BGM 「戦場 その鮮血は敵か汝か」(SQ3)♪
「こいし、後ろッ!!」
リリカは振り向きざま、スペルカードを発動させて、三人の魔力を一時的に増大させる。
メルランも同時に、呪歌をこいしの刀に纏わせていた。
後方に飛びのくリリカ・メルラン姉妹とは対照的に、こいしは微動だにしない。
メルランが声をあげようとするが、それをリリカが制する。
茂みから姿を見せたのは、この森に多く生息するはさみカブト…だが、そのサイズは通常のはさみカブトの倍以上あり、小柄なこいしよりもはるかに巨大な体高のある大型のものだった。
口元やその角、強靭な外骨格に覆われた足などは黒ずんだ血の跡が染みついており、この個体にそれだけ多くの冒険者が襲われ犠牲になったことをうかがわせた。
しかし、魔物はこいしに激突しようかという直前で棹立ちになり、苦しそうに呻いている。
冷静に観察すれば、殺気を放っているどころか…むしろ逆に、何かに怯え、恐れ…逃げようとすらしている。
その時になってリリカも気づいた。
こいしの「第三の目」が見開かれており、そして…こいしが幽香の魔力を放っているということを。
「はさみカブトが格上の冒険者を襲うのは、空腹のときだけ…幽香さんはそう言っていたわね。
あれだけのサイズになるまで生き抜いていたのなら、喧嘩を売るべき相手を弁えている筈だわ。
…魔物の方が、その辺のルールに正直よね」
メルランは、そうか、と何かを悟ったような、心なしか険しい表情のまま、周囲への警戒を崩すことなく、その光景を見やっている。
怯える魔物は、そのままゆっくりと後退を始めようとするが…しかし、何処からか先よりも強い、苛立ちの色をも孕む歪んだ旋律が鳴り響く…!
「…っ!
なんなの、この不快な音ッ…!?」
リリカが思わず耳をふさいだその瞬間、魔物の挙動が変化する。
魔物が俄かに凶暴化し、血に染まった牙をこいしめがけて繰り出してくるではないか!
だが、こいしは刀を鞘におさめた状態で独特の上段脇構えを取り、そして、その一閃が振り抜かれるとともに魔物の姿が一瞬にして紅蓮の炎に包まれた!
「あの技…卸し焔!?
こいしは居合メインのはずだから使えないんじゃ」
「ううん、違うよお姉ちゃん。
こいしは一瞬で構えを「無双」に切り替えた。集中力を保ちきれないから長い時間は構えてられないけど、あの構えからなら全ての構えで繰り出せる技を繰り出せる。
エトリアで、まだあの時には完成させてなかったこいしの切り札」
こいしは、収束する炎のバラの中で、やがて息絶え動かなくなる魔物の前で…構えたそのままの姿で動かない。
リリカはただそっと、小刻みに震えながら「ごめんね」と呟くこいしの背をしっかりと抱きしめていた。
…
…
静葉「というわけでクエストのふたつ目「誰が為に陽光は輝く」ね。
13Fに入って、昼10時から15時の間にエンカウントして戦闘を終えると、固き鎧の主のアンブッシュを受けて全員80ダメージを喰らうわ。
そして、笛の音で狂わされた固き鎧の主と実質的な連戦となる」
レティ「HPは2300、通常のはさみカブトの5倍程度のHPがあるわね。
普通のはさみカブトと違って、いらつく羽音の代わりに範囲斬攻撃のなぎ払いを使ってくるわ。けど耐性はほとんどはさみカブトと一緒で、攻撃もさほど激しくないどころか、時々何かに怯えるようなアクションを取って行動しないタイミングもあるのよね」
静葉「シチュエーションは異なるにせよ、範囲攻撃があって、たまに行動が停止するという意味ではシロップベアーに近いわね。
確かにこの強化はさみカブト自体はそんな強くないけど、このフロアには雪トカゲやスレイプニルといった広範囲攻撃持ちもいるし、FOE戦後であっても容赦なく乱入してくるから、適正レベル前後で挑む時はエンカウントの厳選も必要かしらね」
レティ「あと、固き鎧の主戦後、会話イベントがあって、怪しい衛士(盗賊)から受け取った水を飲みかけた誰かが10ダメージおまけに喰らうわね。
ここではこいしが喰らったんだけど、人線はPTの二人目で固定なのかしら」
静葉「というわけで今回はここまで。
次回は盗賊クエ解決編、というか今回はこいしの真面目なお話で終わる予定よ」
レティ「レベルがレベルだから茶番重点にしかならないけど、これ本当に大丈夫なの?」
静葉「いいのいいの、攻略云々っていう内容はないから元から(キリッ」
レティ「うん、しってた(しろめ」