つぐみが「ファフニールの儀式」に赴く、丁度一か月前…八雲の家。
奥座敷の一室、その襖が静かに開き、坐していた藍は一度その方向へ目をやり、溜息を吐いて再び視線を戻す。
その傍らに、襖を閉じた訪問者…かごめが、同じようにしてすわりこんだ。
色々あって、ほとんど庇を突き合わせるように隣り合っている藤野の家と八雲の家に、互いの住人が自由に行き来している事は日常茶飯事であり…そのことをとがめる者は誰もいない。
「藍、具合はどうだ?」
問いかけるかごめの視線も、藍も、互いの方へ視線を向けていない。
その先には、まるで死んだように眠る…この家の真の主の姿。
藍はゆっくりと頭を振る。
「…あれきりだ。
お前が魔理沙と戦ったあの日から…帰ってからもう二カ月にもなる。
異世界への単独境界移動、それに加えて式を四体生成…それだけの行為でも、今の紫様にとってはこれだけの休眠を必要とするほどの行為なんだろう」
厳かにそう応え、なおも何かを言おうとして、藍は口籠る。
かごめも、その意味するところを解っているのだろう。そっか、と一言呟いて、嘆息する。
輝針城の大反乱以降、幻想郷の大賢者と呼ばれた八雲紫は、その反乱に際して持っていた魔力の大半を喪っていた。
今は消滅した「小槌」に奪われた力は、その強大な魔力のごく一部…それこそ上澄みに過ぎないものであったが…肉体に残された莫大な魔力を制御するために作られた「自信の記憶と人格を複製した式神」のままで強大な力を行使した反動の為、エトリアで「小槌」を破壊した際にその大部分が失われてしまっていたのだ。
紫は、それでも反乱の事後処理を終えるまで不眠不休で作業を続け、そして…反乱の事後処理がなから目途のついた一週間後の朝に、意識を失って倒れているのを、たまたま居合わせたかごめによって見つけられた。
折しも、フランをはじめとした探索メンバーをハイ・ラガードへ送り込む段取りを始めた頃の話であったが…八雲紫に起こった異変は、今の幻想郷においては非常に大きな混乱を招くことであった。現に、月の反政府勢力の残党が、菫子を利用した異変によりその探りを入れてきたことに端を発する、先の「月紛争」も、一歩間違えれば幻想郷の存亡どころの話では収まらなくなる大異変となりえたのだ。
紫の変異を知るのは、かごめと藍をはじめとした藤野・八雲両家の住人を除けば、さとりなど真祖級全員やヤマメ、マミゾウなどごく一部の上級大妖や、神子や華扇、慧音、霊夜など信頼を置くに足るごく一部の者に限られてる。
実際に、菫子の異変に対しては、当代の巫女である霊夢が動くより前にマミゾウと華扇が動き、その後の月の混乱に際しても、その記憶を取り戻し正体を明かしたサグメと、八意永琳の要請を受けてかごめと綿月姉妹の手で解決している。紫が万全とまで行かずとも、多少なりとも動くことができる状況であれば、異変解決のために彼女らほどの実力者がむやみに動くことはせず、次代を担うべき霊夢や早苗、妖夢などといった若手に任せ、必要に応じてサポートに回ることで事足りた筈だ。
「紫様は自分を人柱にしてでも、幻想郷が幻想界に完全接続するまで力を使い続けるつもりだ。
だが…このままではもう、紫様のお身体がもたない…!」
それまで気丈に振る舞っていた藍が、声を震わせている。
動けぬ紫の代理人として、主としても母同然の存在としても慕っていた彼女の名に恥じぬよう努めていた藍の精神も疲弊しきっていた。
普段、他の多くの者に弱音を吐かない彼女も、紫と同格の親友であるかごめや幽々子の前においては、こうやって本心をさらけ出すことも珍しいことではなくなった。事後処理の際に、月の執政としての記憶を取り戻す前の天邪鬼…鬼人正邪の力によって飛ばされた、異なる世界線の先にいた自分自身の姿を、ある意味ではトラウマとして残している彼女にとって、紫の実質的な不在がどれほどのストレスになっているのか、かごめも知っている。
かごめにとっても、紫は無二の親友だ。
生まれ変わり、記憶と取り戻すまでの気の遠くなるほど長い時間、陰ながら見守り続けてくれた紫に対する恩を、まだ返し切れていない。
否…そんなことは些細な事で…。
「…わかってる。
こいつは…まだまだ知らないことが多すぎる…それを解らせるまでは、ぶん殴ってでも生かし続けてやるって…一緒に生きて探してやるって、あたしは誓ったんだ。
だから、藍…あんたは紫と待ってて。あたしが、必ずなんとかする…!」
「…かごめ…?」
今にも泣き出しそうな表情で、藍は踵を返し立ち去ろうとするその後ろ姿を見やる。
既に幾度となく見慣れた…揺るぎない覚悟と意思を背負う彼女の背を。
「狐尾幻想樹海紀行 緋翼の小皇女」
第六十三夜 「リブート、マイ ファンタジア -Part1-」
翌日、かごめは紗苗やつぐみに「しばらく家を開ける」という旨を告げ、学園理事の代行も茜に依頼し了解を取ると…その日の内に旅装を整え、陽溜丘の外れにあるひとつの魔力門(ポータル)の前にいた。
そこでなにやら彼女は文言を唱えると、しばし明滅していた魔力光が通常の青ではなく、緑へと変わる。
「そいつだと行き先はエトリアになるな」
不意に、他に誰もいないはずのこの場所に声が響き、かごめはゆっくりと振り返る。
後をつける気配があることは知っていた。
しかし、あまりにもよく知る、なおかつ殺気はおろか敵意も感じられないその存在へさしたる警戒を払わず…否、かごめはそれを知りつつ、あえて向こうからアクションを取ってくるのを待っていたふしがあった。
振り返った先にいたヤマメは、寂しそうに笑う。
「つぐみに会ってさ。
あいつは、お前がまたなんかするのは仕方ない、みたいに言ってたんだけどさ」
「…何の用だ。
今回は、遊び半分で何かしに行くわけじゃ」
「解ってるよ。
だったらなおさら、私ぐらいは連れて行ってくれてもいいだろ」
かごめは僅かに眉根を釣り上げる。
寂しく笑うままであったが、ヤマメの視線はいつになく真剣で、鬼気迫るものがあった。
「何故、そこまで拘る?」
しばらく互いに見合ったまま沈黙を守っていた二人だったが、やがてかごめが口火を切る。
かごめには、その理由がわからずとも、確信めいたものがあった。
先のエトリアの件で、自分達を地底に閉じ込めた件で紫を恨むパルスィを止めたのは、ヤマメだったとつぐみやキバガミからも聞いていた。
ヤマメは確かに、紫が作った別世界に住んでいた「妖怪のカケラ」の前世を持ち、紫が「自信の制御プログラム」として式神のベースとしたマエリベリーとの縁が深いことはわかる。とはいえ、紫とヤマメ達地底妖怪の確執は深く、その程度で正直簡単に揺らぐようなものではないはずだ…「式神マエリベリー」消滅後のヤマメの言動や、その後の「本当のメリー」に対する感情に関しても、かごめはあえて触れないことにしていたが、あまりに謎が多すぎた。
すなわち、ヤマメが「八雲紫本人」にこれほどまでの強い拘りを見せる理由を。
「簡単な話さね。
八雲紫が、私にとっての大恩人だからさ。
私に妖怪としての生き方を教え…「最初の式神」にしてくれた紫に、恩を返したいだけだから」
かごめは目を見開く。
「どういう事だ?
紫自身が言っていた…あいつは、この世界に降りたってすぐに、一族を失った藍を式神として」
「その八雲藍が、あいつの最初の式神だって、紫自身が言ってたか?」
かごめは口を噤む。
ヤマメのあまりに真剣な言葉に、僅かに気圧されたこともあったろうが…冷静に思い返してみれば、紫は藍を「この世界における最初の式神」と云ったのみで、それが「八雲紫の最初の式神」とは明言していなかったはずだ。
かごめは、自分の内に生まれた雑多な疑問をぶつけるよりもと、ヤマメの発言を促し…そして、ヤマメもその意図を理解して応える。
「紫があんたを探して多元宇宙を渡り歩いてた際、あいつは、こことは別の次元の「土蜘蛛が居た世界」にも立ち寄っていたんだ。
私は元々、その世界の源頼政とその四天王に討伐された、大蜘蛛の娘だった。
討伐隊に母が殺され、私自身も瀕死の重傷を負って死にかけてたのを救ってくれたのが、妖怪になって間もなく、その世界に立ち寄った紫だった」
「あんたはこの世界で、頼政の一派に一族が殺されたとか言ってなかったか?」
「私自身も、その記憶に違和感がなかったわけじゃないんだよ。
メリーの事を思い出してから徐々に、その辺りのことも思い出してきててさ。
…あいつは私の命を救う代わりに、式として私の力になれと、そう言った。私もやっぱり、あのまま死ぬのが怖かったんだろうな…あいつの提案を受け入れ、あいつの式となり、そして力と技を磨いた。
それから百年ほどして、あいつはまた別の次元に渡ることとなり…私の糸を使って、いくつもの次元とのつながりを作った。正邪…今はサグメだったか? あいつのせいでそこに飛ばされてえれえ目にあったあの世界や、元々メリーが生み出された世界の元を発見したのも、そのときだ。
紫は今の世界へとたどり着いたが、そこでしばらく「隔絶世界」を生み出す方法を模索してた。そして、私は一度記憶と力を封じられて、「妖怪のカケラ」としてメリーたちの世界で生き…あの世界が滅びる直前に、私は元の世界へ戻された。
カケラとしての記憶を僅かに残したまま、私が他の連中と一緒に地底に押し込められたのも、多分そのときだ。その時に、私は「自分自身の生まれた頃」の記憶だけを半端に思い出してて、地底に着るまでの経緯を全然覚えちゃいなかった。紫がどうして私を地底に置いたのかわからんが…もし全部覚えてたんなら、パルスィのこと言えた義理ないぐらい、あいつのことを憎んでたのかもな」
「……成程な。
道理で、一度生まれ変わったにしちゃ、随分強大な力を持ってやがると思った…お前、もしかしなくても」
「ああ。
私も多分、もう存在年数的には五ケタ近いんだろうな。
そこまで存在し続ければ、まあ封じられていようがいまいが、記憶も曖昧になってくるわな」
冗談めかして笑うヤマメだったが、不意に表情を曇らせる。
「あいつがどうして地底に私を置いたのかわからないが…それでも、私を妖怪として命を救ってくれたのがあいつであることには変わらない。
聞きたいことも、言いたいことも山ほどあるんだ…だから、今はあいつを助けたい」
哀しくも、強い意志を秘めたその視線に…かごめは、ゆっくり頷く。
「…なんか、ようやくわかった気がするよ。
あんたが、あれだけつぐみを気にかけてくれる理由も。
つぐみも…あたしの中に「植え付けられた紫」が大元になって生まれたんだからな」
かごめはゆっくりとその手を取る。
「あんたは、戦力的に居てくれた方が有難い。
力を…貸してもらえるか、黒谷ヤマメ」
「勿論!」
その二人の気に呼応するかのように、一層強く緑に輝く魔力門。
ふたりは、改めてそれに向き直る。
「エトリアの偉大なる赤竜を探し出して討つ。
その竜珠の力を使えば、今ある分だけでも紫の力を安定させることができるかもしれない…赤竜を討つのも含めて、一か八かの賭けだけどね」
「成程、ね。
プリズムリバーの二人が、不安定だった力を安定させるのにも、金竜の竜珠を使っていたもんな」
「そういう事。
行くよ!」
二人は躊躇うことなく、その緑の光へと飛び込んでいく。
だが、二人も気づいてはいなかった。
その後を追って現れ、同じように躊躇いなく光へと飛び込む、二人の少女の影を。
…
…
静葉「前回はラストでディノゲイターの話をするといったな…ククク、ありゃ嘘だ(真顔」
レティ「あんたマジで誰に喧嘩売ろうとしてんのよ。
というかまだこのネタ引っ張るの、「妖怪のカケラ」としてのヤマメの話」
静葉「大体にして狐野郎自身も、あれだけエトリアの紫とかに対してさばけた態度をとるのかの理由づけ必要になって来たから、こういうの考えたんでしょうね。まー既に「生まれ変わり」みたいな話はしてるし、その時点でわりとしっちゃかめっちゃかにあの近辺の設定食い散らかしてるから、今更「実はあのヤマメと同一人物です」と言ってしまっても問題はないという判断で」
レティ「私大問題だと思うんだけど、それ」
静葉「今更の話よ、もういい加減に色々その辺りの齟齬をどうするか考えるのもぶっちゃけめんどくさいし」
静葉「というわけで今回はだいぶ本編から外れた番外編の話になるわね。
ちょっと前にも触れた、エトリア赤竜の話よ」
レティ「実は話のプロットはあったらしいけど、エトリア氷竜完全にシカトなのね。
なんか私参加させられたことになってんだけど、アレ」
静葉「金竜周りの話を見てると、あの時つぐみが参加してたかどうかすらあやしくなってたわね。
実はあの時いたのはつぐみじゃなくてリッキィにされてるとか、のちのちなってそうよねえ」
レティ「リッキィならまだいいわよ、なんか全くこの時絡んですらいないような子にされてるとか普通にありそうよ」
静葉「…やめましょうなんか悪い方へ悪い方へと考えてたらきりがないわ。
とりあえず今回は赤竜と戦うところまでの話と奴のスペック、ついでに氷竜についてもちょっとだけ触れるわ」
レティ「なんかこっそり第六階層にいるクローン共は?」
静葉「あいつらに関しては裏設定もまったくわかんないし基本無視で」
レティ「アッハイ」
静葉「と言っても、あいつらのブレスも本家と全く同じモノなんで一応グリモア対象になるし威力も一緒よ。
新からのプレスターン仕様の変更があった代わりなのか、クローンのブレスターンは初手と5nターン固定になっているわ。
あとは厄介な咆哮と大半のスキルを使ってこないし、HP一律20000。一応それぞれの条件ドロップからも強力な装備品というか、各職の専用防具が作れるわね。クローン赤はハイランダー、クローン金はガンナー、クローン氷はアルケミ」
レティ「条件も赤が斬、金が壊、氷が突で撃破だからその辺は本家と違って倒しやすくはなってるのかしら」
静葉「面倒ならそのメインで行けるアタッカーだけで固めた狩り専用のパーティ組むのが楽ね。
あとこいつら通常FOE扱いよ、出現場所固定だけど」
静葉「一応解禁順を考慮して、まずは氷竜の話を少しするわね。
前提クエストは、酒場ではおなじみになった片腕の元冒険者が、かつて氷樹海で戦ったという氷竜の存在した証拠を探してくるという「勇士の証はたてられた」ね。
コロトラングル攻略時点ではまったく不明だった、15F上半分部分を捜索するんだけど、これは16F左下辺りにある隠し通路から降りないとこれない場所よ。このフロアには特殊モンスターとしてアイアンタートル、そして無限湧き助太刀型FOE吸い尽くすものが出現するわね」
レティ「そう言えば無限湧き型のFOE、SSQ2には地味に居なかったわね。
SSQにはルシファーホークもとい深淵を舞う者もいるけど」
静葉「ルシファーホークっていうか深淵を舞う者は何故かニコ百に単独記事があるけど、こいつの悪魔のくちばしが鬼のように強いからね。
一応グリモア化もできるし、グリモア化したらしたでこれもまたメチャクチャ強力よ。威力の高い全体近接突+盲目の追加効果で、ブシドーに地震とセットで持たせるだけでも雑魚戦のせん滅力が飛躍的に高まるわ」
レティ「地震はヒュージアントだっけ。
ポケモンと違ってこっちの地震は全体壊攻撃だから飛んでる奴にも普通に効くし、なにより六層最下層に出没する激おこぷんぷん蟹をサソリとまとめて始末できる超優秀スキル」
静葉「六層を歩き回るんだったら十分なTPと、全体高威力壊・雷属性攻撃持ってれば事足りるわね。
まあ話は脱線したけど、まずは格子状に部屋が並ぶ15F隠しフロアを奥まで進んで、そこで「氷漬けの腕」を発見すればOK。
その腕は、片腕の冒険者が喪った腕そのもので、氷竜のブレスで凍ったまま残っていたの。彼は氷竜との戦いで敗れたけど、誰もが竜の存在を信じず、「仲間を見捨てて腕までなくして逃げたウソつきの臆病者」って陰口を叩かれていたけど、この腕を発見したことで、彼は真の勇士であったということの証明がなされたわ」
レティ「この冒険者、酒場で会うと最初は素っ気ない態度をとるけど、強力な魔物と戦うヒントをくれるのよね。
そのうちに少しうちとけて「お前たちは自分によく似ている」みたいなことを言ってくるんだけど…このクエスト終えたら、それきり酒場では会えなくなっちゃうのよね」
静葉「この時の彼との会話は、非常に感慨深いものになっているから、是非とも自分の目で確かめてほしいところね。
そして、このクエストを終えると氷竜討伐クエスト「永遠の蒼は此処に在りし」を受注できる。氷竜の出現が確認され、この竜による被害を拡大させないために討ってくれという内容のクエストね。
氷竜の出現するのは「氷漬けの腕」があった隠しフロア最深部。スペックはこんな感じね」
クエスト「永遠の蒼は此処に在りし」ボス 氷嵐の支配者(氷竜)
レベル80 HP35000 雷弱点/氷無効 状態異常は毒のみ僅かに有効、他すべてに耐性あり
アイスブレス(頭) 全体遠隔氷属性極大ダメージ
クラッシュアーム(腕) 全体近接壊属性攻撃、頭封じを付与
三連牙(頭) ランダム3回近接斬属性攻撃
ミラーシールド(腕) ターン終了時まであらゆる攻撃を無効化、ターン終了時に攻撃を受けた回数だけ全体に無属性カウンター
氷河の再生(頭) 3ターンの間、ターン終了時にHP回復(1500程度)
劈く叫び(頭) 全体に眠りと物理防御ダウン付与
静葉「ハイ・ラガードのよりも少しHPが低いこと、ミラーシールドが腕依存になってる事を除けば、ほぼハイラガのと一緒よ。
アイスブレスは初手と劈く叫びの直後のターンに撃ってくるけど、こいつの咆哮は眠りだから本当にシャレにならないわ。
そして何より大変なのは、4nターンで使用するミラーシールド」
レティ「えっこっちのミラシ定期で入り込んでくるの!?」
静葉「ええ。
劈く叫びは最初だけ、5ターン目に使うけどそれ以降は4~6ターン周期でランダムになるわ。
劈く叫びが4nターンに重なっていた場合、劈く叫びが優先される。そのあとはブレスが来るけど、そのブレスの次に後回しにされたミラシが飛んでくることはない。次の4nターンまで使ってはこないわ。
そしてHPが半分を切る頃には氷河の再生も使い始めるけど、こっちから撃てるHP関係のデバフはSSQにないから、ラウダナム必須かしらね」
レティ「みんな大好き絶対零度と、こいつのめんどくささを無駄に助長するアイスシールドは使わないのね」
静葉「その代わりうっかりミラシの時に殴って、カウンターダメージの一撃でhageたボウケンシャーも多数いたそうね。
エキスパだと普通に全員即死するダメージが返ってくるから、4nターンは立て直しに使うといいわね。あとは回復役に頭封じ対策、ガード役に眠り対策をさせておけば安定して討ちとれるはずよ」
静葉「氷竜の話はこのぐらいにして、次はいよいよ赤竜ね。
エトリア赤竜は実は、ワイバーンと密接に関係するわ。前提クエスト「飛竜の呼び声」も、何かに恐れ興奮状態になっているワイバーンを討伐するクエストよ」
レティ「なんかワイバーンにとってはハタ迷惑な話なんだけど…」
静葉「エトリアのワイバーンはHPが22500と、ハイ・ラガードのものに比べるとかなり低いわね。
やってくる事もほぼ同じで、雷無効、炎耐性で氷がよく通る。条件ドロップは脚封じだけど、耐性があるから水溶液使った方が楽ね」
レティ「ハイ・ラガードと違ってボスにも即死石化が稀に通る分、全体的に異常耐性しかないものが多いわねーよく考えると」
静葉「そうね、ボス相手だとカスメとダクハンがわりと腐りがちになるわ。
というかハイ・ラガードのダクハンが気持ち悪いぐらい強化されたのと、即死石化がボスに通らなくなった分わりと毒や盲目は相手を選ばないから、相対的にカスメも強化されてる感じだし、そこから見るとSSQは異常漬けにしてなんかする、という戦法が取りづらいかもしれないわ。
こうして考えると、SSQ2は相当難易度はひかえめになってるかもね。ピクニックなんて本当にピクニックですもの」
…
…
「かごめさん!
赤竜の出現、確認取れましたよ!
エトリアの執政院から、正式に赤竜討伐のミッションが発令されたっす!」
エトリアの赤竜探索を開始して数日。
かごめは、酒場に情報収集に立ち寄った「金鹿の酒場」で、まるで想定外の顔が居たことに目眩を覚え、そして頭を抱えた。
満面のしたり顔でその、執政院からの依頼書を差し出してくる翠里と、その後ろに立っているこれまたしたり顔のリップ、そして差し出された依頼書をひとしきり目をやり、そして、一層渋い顔のままかごめは呻くように声を絞り出す。
「なんでおめえらが居るんだなんで。
というかどうやって何時からいた」
「どうやってって…ねえ?」
「気づいてなかったっすかね?
かごめさんのあと、尾行(つけ)させてもらってたんすけど…んで、せっかくだからちょっと私達の方でもなんかしておいた方がいいかなーってふぎゃあ!?∑( ̄□ ̄;)」
かごめは無言で翠里の両こめかみを拳で挟み込むと、凄まじい勢いのウメボシ攻撃を仕掛ける。
一瞬で頭をミキサーにかけられた翠里が、ばたりとその場に倒れ伏すと、かごめの視線にリップは後ずさる。
「…まー…しゃあねえんじゃねえの、来ちまった以上は」
ヤマメも苦笑するしかない。
かごめはその辺りの椅子にどっかりと腰をおろし、不機嫌そうに頬杖を突く。
そして、ひときわ大きな溜息を吐いた。
「…あんたにも最初言っただろうが。
これはな、遊びじゃねえんだよ。
もっと言えば、最初に藍任せにしてやってた課外授業ともわけが違う。紫の結界はもうねえんだ」
「遊びだから…私達は来ちゃダメだっていうの?
つぐみ達なら命を賭ける事が出来ても…私達は、ダメだっていうの…!?」
不意に、真剣な声のリップが、その背に問いかける。
リップはなおも続ける。
「めうめう達、気づいてなかったかもしれないけど…私も、美結に起きたこと…知ってたんだ。
めうめうは、同じ血筋があるから、最後まで美結を見守る権利があるって、そう言ってた…私には、何もできなかったんだよ。
でもさ」
「…そうですよ。
私は、みんなと仲良くなってからまだ日が浅いけど…それでも、私達ばかり仲間外れにされるなんて、ひどいっすよ。
だから…私達も連れてって欲しいっす。最悪、捨て石になるくらいの役には」
「そんなことをあたしが許すと思ってんのか」
ぞっとするような、鬼気迫る鋭いトーンの声が、かごめから飛んできて…二人は硬直する。
しかし、次の瞬間飛んできた言葉は、二人の想定していない言葉だった。
「これから数日、あんた達を徹底的に鍛え上げてやる。
…役に立たねえと解ったら、強制的に突き帰すからな…ついでに、無断欠席のペナルティも通常の倍くれてやる」
かごめは振り返り、その意思を確かめるかのように視線を送るヤマメに頷いて、二人へ向き直る。
「欲しいのは遊撃兼回復役としてのレンジャー、そして言わずもがな護りの要となるパラディンだ。
…これが天命とあらば、受け入れるほかあるまい」
…
「じゃあお前、そのままかごめさんの赤竜討伐に同行したっていうのか!?」
ところ変わって、現在の狐尾紅茶館。
てゐ達の到着が少し遅れるというので、その日の夜はギルドハウスに宿泊しつつ、夕食会を兼ねて菫子にこれまでの経緯を順を追って説明していた際、透子が「翠里も菫子も竜の討伐は経験ないはず」という言葉に対して、翠里が異を唱えたところで、経緯を聞いた透子は目を丸くする。
「しかもあのアホリップもかよ…。
あいつ、王女戴冠式からしばらく、王宮の行事が忙しくてずっと学校来てなかった気がすんだけど」
そういう魔理沙と美結も顔を見合わせ、そして、首を傾げる。
「いやまあ…リップの事だしな。
つぐみが昔、魔界行ってなんか仕出かして来た時も、リップの奴ぁ王宮を勝手に抜けだして魔界に行ったらしいんだよな。
どうせ城の連中の目を盗んで、抜けだしたってところじゃないか?」
「あー…それもあるんすけど」
翠里は困ったように笑い、そして、さらに衝撃的な事実を明かす。
「リップさんが抜け出すのを手引きしたの、私なんすよ。
事が済んだ後に王様から言われたっす、うちのリップが言いだしたことでも、君がまだ子供でもないなら、国法に照らして縛り首にしなきゃならなかったって」
「そりゃそうだろ!
考えようによっては王女の誘拐だ、いくらその辺色々ユルいホワイトランド王国だっつっても特級の大犯罪だぞそれ」
あまりの事実に、透子も素っ頓狂な声を上げる。
「んまあ…あんたがここに生きてのうのうとあたい達とくっちゃべってられるってことは、色々うまく行ったからってことなんだろうが」
「万事おっけーっすよ。
お陰で、紫さんだけじゃなくて、藍さんも強大な赤竜の力を得ることができたっすから」
「ん? そりゃどういう事だ?
ここまでの話を聞く限りだと…赤竜討伐に参加したのはかごめとヤマメ、リップ、あとはお前だろ?
かごめの目的は紫に紅のドラゴンハートを渡すことで」
魔理沙が一層、難しい顔で腕組みをする。
「その辺はまあ、これから順を追って説明するっすよ。
私達は、かごめさんから二日ほど徹底的に必要な技術を叩きこまれて…なんとか、赤竜の討伐に加わらせてもらうことになったんす。
そして私達四人は、赤竜が元の巣の主であるワイバーンを追い払ってしまった、大森林のワイバーンの巣へと向かった…」
…
…
静葉「というわけで、最後に赤竜までの経緯と、エトリア赤竜のスペックを紹介するわね。
前提クエストは「飛竜の呼び声」。竜に関わるクエストでは最後、29F到達で発生する。
執政院の依頼に応じてワイバーンの巣に向かい、ワイバーンを倒すだけのクエストなんだけど…因みに固定FOE扱いであるワイバーンをこの近辺で倒してしまうと、復活するまでこのクエストクリアできないわよ」
レティ「えっ?
こういう場合、受注してすぐ復活とかそういうのは?」
静葉「地味にそれはないのよね。
だから、近辺でうっかりワイバーンを倒してしまていたら、あの細目の顔を14連続で見る羽目になるわね」
レティ「…それはひどいわね。
ローザとか普通にギルドハウスに寝泊まりしてるんだし、ギルドハウスに宿泊するってできなかったのかしらね」
静葉「特にSSQは回復ポイントに籠って、素材売りに来るとか以外の理由で街に戻るボウケンシャーがほとんどいなかったことに定評のあるシリーズのリメイクですものねえ。
宿に泊るという行為は、それ専門のレベル1パーティ作ってのFOE復活日数稼ぎの作業プレイになるんじゃないかしら。逆鱗マラソンもあった事だし」
レティ「今思うと、今のマラソン行為は当時に比べて本当にソフトになったわよねえ」
静葉「今回も逆鱗の出現率はさほどではないから、まあ、手っ取り早く水溶液を使えっていうことなんでしょうけども。
で、エトリア赤竜のスペックはこんなもんよ」
クエスト「其の紅き者に触れるな」ボス 偉大なる赤竜
レベル90 HP45000 氷弱点/炎無効 状態異常はすべてに耐性あり
ファイアブレス(頭) 全体遠隔炎属性極大ダメージ
ドラゴンクロー(腕) 一列に近接斬属性攻撃、腕封じを付与
ドラゴンビート(脚) ランダム4~6回近接壊属性攻撃、スタン付与
火竜の激震(頭) 全体に近接壊属性攻撃、脚封じ付与
火竜の猛攻(頭) 3ターンの間、物理・属性攻撃力アップ
とどろく咆哮(頭) 全体に混乱と物理攻撃ダウン付与
静葉「やってくることは基本的にこちらもSSQ2と一緒というか、SSQとSSQ2で変わらないというかそんな感じよ。
ただし、明確なトリガーが存在しない分、HPが7割ぐらいに減るとドラゴンビートを使い始めるわ。
そしてHPが半分を切ると、お馴染火竜の猛攻を使い始める」
レティ「ブレスや咆哮の周期も氷竜と同じ感じなのね。
wiki見ると「絡め手は少ない」みたいな感じに書かれてるけど、ドラゴンクローと激震で腕や足は縛られるわ咆哮で混乱はさせられるわで結構めちゃくちゃじゃない?」
静葉「そういう発言は鵜呑みにすると確実に馬鹿を見るわよ、いつものことじゃない。
兎に角攻撃力も高いし、SSQ2に比べれば低いものの、HPも裏ボスを除けば最も高い。セオリーとしては強力な氷属性攻撃で一気呵成に、と行きたいところなんだけど」
レティ「かごめがいるわね、炎属性攻撃以外する気配のなさそうな」
静葉「その辺りの解説は例によって次に回すわ。
後半戦に続くわよ」