♪BGM 「迷宮 禁忌ノ森」♪
どのぐらい走っただろう。
いつどうやって磁軸を通ったのか解らぬまま、ミスティアが気づいた時に彼女は、迷宮の一角に居るのは解った。
「ここは…」
彼女が追ってきたコウモリの翼はどこにもなく、そこは夜の帳に包まれたままの、美しい樹海が広がる。
何処か箱庭を思わせる造形の森。不自然な境目のある空。そこが「禁忌ノ森」であるだろうことは解ったが…穣子達とヘカトンケイルを討伐に来た時にも、先にリリカ達と来た時にも、この場所を通った記憶はない。
少なくとも、彼女が知っている区画ではないことは確かだ。
ミスティアはきょろきょろと周りの様子をうかがう。
魔物の気配はおろか、まったく他の生物の気配も感じない。いや。
彼女はすぐ近くに、思っても見ない…そして、よく知る気配を感じる。
ミスティアが身構えるよりも早く、その気配はこちらの方へ向かって来た。
「あっ、やっぱりみすちーだ!
みすちー!!」
満面の笑顔で、自分へ飛び付くように抱きついてくる青い髪の少女を、彼女は反射的に受け止める。
踏鞴を踏むようにして踏みとどまり、受け止めたのが氷精特有の異常に低い体温を持つことを認識するより早く、その後を追うようにしてこれまた見知ったふたつの影が暗がりから姿を見せる。
ミスティアは、混乱する感情のまま茫然と呟く。
「…チルノ…ルーミア達まで…どうして」
「そこの⑨に強引に連れてこられたんだよ。
まったく…私は私で今は、ホワイトランドの仕事だって決して暇じゃないってのに」
呆れるように肩を竦めるルーミアを、傍らのコーデリアがなだめる。
「あたい達…みすちーやリグルが酷い目にあったって聞いて…居ても経ってもいられなくなったんだ。
だから、もっともっと強くならなきゃって…そしたら、みすちーもこっちに来てるって…それと、それと」
チルノはまくしたてるように、なのにもかかわらず次の言葉を探している。
その仕草に呆れ茫然としていたミスティアも…なんだか怒るのも馬鹿馬鹿しくなってきて、表情を緩めて彼女へ言葉を返そうとするが、うまく言葉が出てこなかった。
「役者が揃ったようね。
まったく、またチルノが居なくなったと聞いて、幽香の頼みを訊いて来てみればこの有様だものね」
そして、最後に悠然とその影が姿を見せる。
コウモリが発したその声が、その姿が露わになるにつれ、ミスティアは僅かに表情をこわばらせ…否、困惑する。
「レミリア…さん」
それを受けて、何処か優しげに微笑むレミリアのその格好は、冒険者の中でも探索に特化したレンジャーのそれであった。
よく見回せば、チルノやルーミアも、同じように腰に大弓を携えたレンジャーの姿だ。
「まあこの子達と一緒にひと花咲かせてやるのも悪くないかと思ってね。
…ふふっ…あなたもよく見れば、鬱憤の溜まってそうな顔をしているもの。
どう? 私達のウサ晴らしに付き合ってみない? パチェがこの国の膨大な資料から見出した、「深淵なる闇」とかいうふざけたバケモノを狩りに行くっていう」
レミリアは冗談めかして笑う。
チルノ達、というかチルノが基本的に脊髄反射だけで行動しているようなところがあるのは、長い付き合いだからよく知っている。とは言え、特に近年はわりとその場のノリで行動している事も多くなったとはいえ、レミリアまでもがチルノに同調してそういう事をし始めた、という事はにわかに想像し難い。
レミリアはあえて深くは触れてこなかったが、恐らく自分に起きたことの一部始終を知っているのだろうが…そこまで考えが至るほど、今の彼女は困惑していた。
そんな彼女の逡巡を余所に、レミリアはその手を取って告げる。
「…今のは半分は冗談。
でもね、これはアリスからの頼みでもあるのよ。
あの子がわざわざ、私のところになんて来ることは珍しいと思ったけど…」
「えっ…?」
「丘の一件は、自分にも原因がある事だから、それにあなた達を巻き込んだことを、アリスはアリスなりに責任を感じているのよ。
本来は、自分がここに来るのが筋だとは言ってたけど…彼女には彼女の為すべきことがある。
それに……私とあなたの方が、彼女とあなたよりも付き合いは長い。そういうことよ」
状況がよく飲み込めず、困惑するばかりのミスティアの手を、レミリアはさらに強く取る。
「ミスティア。
あなたは私や…あの穣子達と一緒に、あの過酷な旅をやり遂げて…最強の竜まで、屠って見せた。
あんな三下どもにあなたの誇りを穢されたことは! この私にとっても…あなたを認めた私の怒りでもある!!」
その怒りの表情は…きっと、自分の内なる弱さに向けて放たれたものではないのだろう。
繋がった手から、その想いが熱となって伝わってくる。
かつて劣等の吸血鬼としてのコンプレックスを抱え、雁字搦めになった柵の中で苦しみ続けながら、その全てを受け入れ今や幻想郷の覇王の一人として恥じぬ実力と存在感を示す彼女が、これほどまで自分を評価し、認めてくれることに…ミスティアの瞳からそれに応えられぬもどかしさが涙となってこぼれおちてくる。
その涙をそっとぬぐい、レミリアはさらに勝気な表情のまま告げる。
「行きましょう、ミスティア。
あなたの得てきた総てが、確かな証であることを再確認するために。
…準備はとうにできているわ…傲岸不遜の魔神を、一切の反撃も許さぬままに狩る。その為に、あなたの力が必要不可欠なの!」
「そういう事だよ!
最強のあたいとルーミアと大ちゃんとレミリアだけじゃ、どうしても足りないから!
だから、みすちーも手を貸して!!」
さし出してくるその小さな手を、ミスティアは強く握り返す。
そこへ、ルーミアやコーデリア、レミリアの手が重なった。
「うん…!
連れてって、みんなと一緒に!」
泣き笑いの表情で、ミスティアは応える。
(もう一度、取り戻そう。
私が守ろうとしたその全てを。
もう二度と……何もできずに終わるなんて、そんなの、嫌だっ!!)
その瞳に、これまで以上の強い覇気がこもる。
握りしめた拳に「証」を取り戻すために。
「狐尾幻想樹海紀行 緋翼の小皇女」
第六十八夜 Clench your fist、for reforging the reason(後編)
ヤマメ「えっ恐らくはあのクッソ長い解説で半分以上埋まる話だけで後編になるのこの茶番?(しろめ」
静葉「気にしたら負けよ、多分ウルトラファイトやレッドマンよりはストリーとして意味を成してるわ」
レティ「そんな極端な例を出されても困るんだけど…兎に角パターン書いてるだけで紙面足りなくなるし、さっさと始めちゃいましょう。
こんなところ見てるより実際、これに関しては流石にwikiの方が詳しいんだからそっち見ろみたいなところあるけど」
ヤマメ「それも今更だなあ。
じゃ、本来はこんなタイミングで解説する方がおかしい裏ボス中の裏ボス、始原の魔神の解説始めていくかね」
DLCクエスト「最凶なる迷宮と始原の魔神」ボス 始原の魔神
レベル99 HP280000 属性すべてに弱い 毒・盲目・腕封じ・脚封じに弱い/それ以外の全ての状態異常が無効
誰が為の力 全体に極大のTPダメージ、戦闘開始時に一度だけ使用
汝、力を捧げよ(腕) 近接拡散壊攻撃、3ターン物理・属性攻撃力ダウン付与
我は軟弱を嫌う(腕) 近接貫通斬攻撃、3ターン物理・属性防御力ダウン付与
力を見よ(腕) ランダム3~5回近接壊属性攻撃、盲目・麻痺・毒・テラー・石化のいずれかを付与
踊り狂え(腕) 全体に盲目・毒・混乱・呪いのいずれかを付与
我の怒り/悲しみ/慈悲 ランダム3~5回炎/氷/雷属性攻撃、全個所の封じを付与
強者/隠者への賞賛 味方PT側前列/後列のTPを大回復
崇高なる休息 魔神自身のHPを5000~99999回復、回復量はそれまでの魔神の被ダメージや経過ターン数等に依存する(?)
滅ぼす風 単体無属性極大ダメージ
黄昏を見よ 味方PT側のフォースゲージを消滅させ、フォースブースト及びフォースブレイクを使用不能になる(フォースブースト発動時はそれも解除する)
全てを包み込む闇 味方側強化打ち消ししHP回復量ダウン、強化が付与されてない味方を即死させる(即死無効でない限り必ず即死する)
陽はまた昇る 味方PT側のフォースゲージを復活&全回復させる
解放、そして力 魔神自身の全ての弱体・状態異常解除し、5ターンの間物理・属性攻撃力大幅アップ
孤独は尊ぶ(脚) 全体近接突攻撃、PTが全員生存している場合ダメージが飛躍的にアップする
孤独は卑しむ(脚) 全体近接突攻撃、PTの誰かが一人でも戦闘不能の場合ダメージが飛躍的にアップする
流れよ涙 対象列に1800/列の人数分の軽減不可ダメージ(ゲームモードがEXPARTの時のみ使用)
去れ、永久に(依存部位なし) ランダム15回必中遠隔無属性極大ダメージ
死の領域 3ターンの間あらゆる弱体・異常・封じ・戦闘不能が回復できない
理を知れ 下記の「始原の瞳」が出ているときに使用、瞳の色のいずれかに応じた必中の属性極大ダメージ(赤は炎、青は氷、黄は雷)
※依存部位表記ないモノは依存部位なし(あるいは頭依存と思われる)
始原の瞳
レベル99 HP11000 赤:氷弱点/炎無効、青:雷弱点/氷無効、黄:炎弱点/雷無効 呪い・麻痺・毒・盲目・全個所の縛りに弱い/他スタン以外すべて無効
死の輝き(依存部位なし) 単体即死攻撃(付与率がかなり高い)
※始原の瞳が残存している限り、始原の魔神への攻撃は無効化される。
瞳が倒された場合、その色に応じた属性拡散大ダメージの自爆を行う(この自爆も依存部位なし)。
レティ「なんなのよこれだけでもすさまじい文章量じゃない」
ヤマメ「これ全部ランダムでやってくるなんてったらもう完全に手出しできねえシロモノだな。
FF8のオメガウェポンとかがかわいく見えてくるレベルだよこれ、なにしろこのゲームにはリレイズなんて気の利いたものねえし」
静葉「不安定だけど不屈の号令あるけどね一応。
パターンがあるとはいえ、結構ランダム行動が絡んでくるから運要素もかなり絡んでくるわね。
どの攻撃も威力が非常に高く、なおかつ厄介な状態異常、強烈な弱体が絡んでくる。まともにやるならドクトルマグスの結界は必須ね」
レティ「あー、ストーリーPT推奨って言うのはまさかそっちが本命?」
静葉「そうね、ファーのバ火力より、その繋ぎのターンを凌ぐためのクロエ、こっちが本当の鍵だわ。
実際に、戦略を間違えなければクラシックPTでも十分に制することができるのは、多くの先人が証明した通りよ。ごく一部の例を除けば、マグス必須と言ってもいいわね。
で、こいつのパターン一覧を紹介するわ。まあとにかく長いから、覚悟しておいてね」
戦闘開始~HP213000程度まで(難易度によって変化、ここではエキスパートの例を記載)
誰が為の力を1ターン目に必ず使用
以降は次のパターンになる
汝、力を見よor力を見よ→我の怒りor悲しみor慈悲→我は軟弱を嫌うor踊り狂え→滅ぼす風&強者への賞賛→汝、力を見よor力を見よ→我の怒りor悲しみor慈悲→我は軟弱を嫌うor踊り狂え→滅ぼす風&黄昏を見よ→先頭へ
※ループ中はorの技は記載した順番でループするが、どれを最初に使うかはランダム。
HPが規定値を割ったそのターンに始原の瞳(赤)を2つ召喚し、次の行動パターンへ。
瞳召喚後(一回目)
崇高なる休息&全てを包み込む闇→踊り狂え&死の輝き→理を知れ→滅ぼす風&死の輝き→滅ぼす風→踊り狂え&死の輝き→去れ、永久に&黄昏を見よ
※瞳が途中で全て無くなった場合、そのターン終了時に力を溜め次のターン去れ、永久にを使用し以降の行動パターンをキャンセルし次の行動パターンへ。
なお難易度エキスパートでない場合、去れ、永久にのあと最初のパターンへ戻る。
瞳消滅後~HP143000程度まで
このパターンに突入した最初の時孤独は尊ぶ&陽はまた昇る
以降は次のパターンのいずれかから選択
①滅ぼす風→孤独は卑しむ→我の悲しみ→踊り狂え→孤独を尊ぶ→先頭へ
②我の慈悲→滅ぼす風→孤独は卑しむ→踊り狂え→孤独を尊ぶ→先頭へ
③我の怒り→滅ぼす風→孤独は卑しむ→踊り狂え→孤独を尊ぶ→先頭へ
※どのパターンになるかはランダムだが、以降は①→②→③の順でループする
踊り狂えの1回目ターン終了時に隠者への賞賛、3回目に黄昏を見よを使用。
HPが規定値を割ったそのターンに始原の瞳の青、黄を2つずつ召喚し、次のパターンへ。
瞳召喚後(二回目)
崇高なる休息&全てを包み込む闇→踊り狂え&死の輝き→理を知れ→孤独は卑しむ&死の輝き→孤独は尊ぶ→踊り狂え&死の輝き→去れ、永久に&黄昏を見よ
※基本的には一回目の瞳召喚時と同様。
難易度エキスパートでない場合、去れ、永久にのあとこのひとつ前のパターンへ戻る。
瞳消滅後~HP83000程度まで
解放、そして力→流れよ涙(前列)→パターン1→流れよ涙(後列)→パターン2→流れよ涙(前列)→汝、力を捧げよor我は軟弱を嫌う(完全ランダム)→
滅ぼす風→流れよ涙(後列)→先頭へ
※パターン1とパターン2は以下のどれかランダムからスタートし、あとはその順番にループ。
我の怒り→我の悲しみ→孤独は卑しむ→我の慈悲
難易度エキスパートでない場合、流れよ涙のところをスキップする。
全体で二周し、二周目二回目の後列流れよ涙使用後もしくはこのパターン中にHPを規定値まで減らした場合、ターン終了時に三色の瞳を一個ずつ召喚。
パターン中にHPを規定値まで減らして瞳を召喚した時に限り、そのターンの行動が陽はまた昇るに置き換わる。
瞳召喚後(三回目)
崇高なる休息&死の領域→踊り狂え&死の輝き→理を知れ&瞳を更に3色1個ずつ召喚→孤独は卑しむ&死の輝き→孤独は尊ぶ→理を知れ&死の輝き→去れ、永久に&黄昏を見よ
※基本的には一回目の瞳召喚時と同様。
難易度エキスパートでない場合、去れ、永久にのあとこのひとつ前のパターンへ戻る。
最後の瞳召喚後
陽はまた昇る→流れよ涙(前列)→ランダム1→ランダム2&死の領域→流れよ涙(後列)→ランダム3→ランダム4→流れよ涙(前列)→ランダム5→ランダム6&死の領域→流れよ涙(後列)→ランダム7→ランダム8→流れよ涙(前列)→孤独を尊ぶor孤独は卑しむ(完全ランダム)→滅ぼす風→去れ、永久に→以降は去れ、永久にを連打する
※最初の流れよ涙のターン終了時、強者への称賛を使用。
難易度エキスパートでない場合、流れよ涙のところをスキップする。
ランダム部分は基本的に何をしてくるかははっきりとはしていない。
使用してくるのは我の怒り/悲しみ/慈悲、踊り狂え、力を見よ、我は軟弱を嫌う、汝、力を捧げよ、滅ぼす風、孤独は卑しむのいずれか(孤独は尊ぶは使用しない?)。
ヤマメ「おひ…」
レティ「ツッコミどころ満載というより、ツッコミどころしかないじゃないこれ」
静葉「裏ボス中の裏ボスに何マトモな対応を期待してるのよ、そもそもこの手の連中は「討伐出来なくて当然」の前提で作られてるんだから。
普通のプレイヤーならまず「挑んでみる」という発想の埒外よこんなの」
レティ「いや確かにそれは正論なんだけど…えっこれ本当にどうやって倒すの?」
静葉「ポイントになるのは最初のパターンの時、いかに素早くなおかつ正確に67000前後のHPを削り落とすか。
それと、全てを包み込む闇の時までにいかにしてバフを付与するか。そして、瞳をどうやって高速で始末するかの3点ね。
総じて継続的かつ瞬発的に高い火力を叩きだすことと、いかに高確率即死を含む強烈な異常付与を回避するかが要求されるわ」
ヤマメ「簡単に言ってくれるなあ…だがその意味、特に前者でファーが必要になることだけはよく解った」
レティ「ストーリーパーティだとパラディンもいるけど、むしろダメージタンク役としてペットが欲しくなるところね。
というか流れよ涙って仕様どういう感じなの? 実質割合ダメージ的な何かだと思うんだけど」
静葉「対象列に3人いれば一人頭600、2人ならば900確定かつ必中で飛んでくるわよ。
耐えきる可能性があるとすれば常に前者、なおかつマックスのHPを常にキープしておくことが一番の対応」
ヤマメ「おーいのっけからなんだその無茶振り…」
レティ「後列に飛んでくる場合は、後列にHP完全回復させた前衛職を置くという手段が取れるかしら。
軽減もできないんだったら喰らって生き残る前提でモノを考えろってことじゃないの?」
静葉「ついでに、パターンは戻らないけど崇高なる休息の回復量は、それを使うまでに与えたダメージ総量やターン数にも影響されるそうよ。
例えば最初のループ、二周目のラストに必ず黄昏を見よが飛んでくるわ。
またそのときになったら説明するけど、魔神の去れ、永久には幼子のそれと違って、軽減回避すべて不可能な十五回連続攻撃の一発一発で被ダメ20000オーバーというロクでもない代物よ。ペットもしくはパラディンのフォースブレイクがほぼ必須になるわね」
ヤマメ「おーいそんなもんどうしろってんだよマジで!!もう考察すんのやだぞ私!!><」
レティ「まー確かに相当シビアなターン管理、ダメージ管理が要求されて、なおかつ運まで絡むという事だけはかろうじて理解できたわね。
でもここで取り上げるという事は…あるんでしょう、とんでもない裏技が」
静葉「…ええ、そうよ。
けれども、その解説は次に回すことにして、一応こいつの行動の随所に穴がある。それをうまくつくことが出来れば、別にファフニールがいなくても倒すことは十分可能よ。
実に今回の冒険譚の大分初期から攻略面でお世話になっているギルドへっぴり腰の連中ときたら、ファー抜きのドのつくぐらいの正攻法でレベル50でこの魔神を攻略しているのよ…!」
ヤマメ「…はい?」
レティ「えっ、というかどうやって」
静葉「必須となるのは限界突破で確実に全ての状態異常を弾く結界を持つドクトルマグス、そしてビキニアーマーつきのペット、容易に全体バフを撒けるバード、そして全体に高火力の大ダメージをバラ撒けるアタッカー…五月雨撃ちを持つレンジャーなんかがカギになるわね。
あと流れよ涙には穴があってね、あれは必ず列の左側から飛んでくる「列攻撃」でしかない。つまり」
レティ「…あ、ひょっとして対象列2人にして右側の奴が左側をかばってゾンビ戦法するのね?」
静葉「そういう事よ。
へっぴり腰の攻略法は本当、単純な発想の転換よ。後攻ネクタルでゾンビするなら、大王の氷冠で強引にネクタル係の行動順を遅くすればいい。
あとはビキニアーマー+アームシールド+火竜のオーブと対雷ミストに結界を加えて三色どれが飛んできても対応可能。ペットは自衛の本能の軽減率が凄まじいから、これに身代わり自体の軽減率にキープガードまで加われば、ほぼ落ちることはない。
彼らの戦いの要点を簡単にまとめると、こんな感じよ。推奨レベル通りでやれば、もっと安定して戦う事が出来るでしょうね」
レティ「とは言うけど、あくまで低レベル攻略に沿った戦い方なのだから、実際はどうなのかしらね」
静葉「もっと雑に言うと、ビキニペットに蛮族と自衛のバフのっけまくってそれに完全にダメージを集中させるのが基本だから、魔神と言わずあらゆるボスに流用できる戦法よ。
ペットを使うなら、無引退レベル99前後で身代りの誓いによる竜巻ディバイドをする動画もあったわね。あの動画だと無引退のみならずグリモア非使用だったからそれはそれでとんでもないことよ。
あと、魔神は腕脚封じと毒、盲目以外は入らないけど、逆にそれらが非常によく入る。耐性リセットをうまく活かして、徹底的に火力を上げたダクハンのソウルリベレイトやトランス霊攻大斬でも恐ろしいダメージが叩き出せるし、バフデバフを駆使すれば二点エクスタシーでも十分な火力になるわ」
レティ「大半の行動が依存部位ないみたいだけど、それでもいくつか腕や脚依存のモノがあるわね。
例によってこれらを封じてしまえば、大分楽になりそうね」
静葉「そうね。
同じ技を幼子も使ってくる我は軟弱を嫌う、孤独は尊ぶなんかは巧くそのタイミングで腕や足を縛れば不発に追い込める。
特に孤独を尊ぶは、うまく被害を抑えていくにはこっちからわざわざ一人戦闘不能にしておくくらいしか他に手はないし、それでも残ったメンバーに飛んでくるダメージも決して小さくはないわ。脚縛り耐性はないというかよく効くから、タイミングを見て縛りあげてしまうのがベストよ。
運は絡むけど、LUCを上げるなり、縛り成功率アップの付加効果のグリモアを粘るなり、やり方はいくらでもあるわ」
ヤマメ「というかこっちからタイミング見て一人落とすって、そっちのやり方は…あ、サクリファイスがあるなカスメの」
静葉「それがまあ基本ね。けど、立て直しを考えると縛ったほうがいいかしらね。
孤独を尊ぶは行動補正マイナスかかるのか、後攻ネクタルでの対処も難しいしね。けどまあ、大王の氷冠とサクリファイスをうまく使うという対処法もあるけど」
レティ「こっちの行動補正をわざと下げるというのも、発想の転換よねその意味では。
マグスの回復スキルは先制発動だから、それをうまく駆使して行動順を調整する…よく考えられたものね」
静葉「基本はパズルボスなんだから、やりようは結構いくらでもある、という事。あとは根気よ」
ヤマメ「う…うーん? そういわれてみればんなとなくなんとかなりそうな…?」
静葉「そもそもへっぴり腰の一件に関しては、未だあれ以下のレベルで魔神攻略したって話聞かないわ。今後は解らないけど、それでも世界樹攻略史上類を見ない大記録になるんでしょうね」
レティ「そらそうでしょ。そもそもその魔神まで含めなくても、マスターバードのソロ、赤竜、七王以外の全てのシナリオボスとクエボス、FOEをレベル1で攻略とかその時点で前人未到の記録よどう考えたって」
(さとり注釈:この二人こんなこと言ってますけど、実際へっぴり腰の魔神レベル50撃破の手法に関しては動画内なでそれとなく触れられていますが、黒幕というか、先駆者がいますよ。まあそれでも、九割以上のボス・FOEをレベル1で撃破したことは例を見ない事だとは思うんですけど…)
静葉「と言っても、今回私達のは位置づけとしては番外編よ。
だからこそ、多少えげつない手を取った。
製作スタッフが緻密に練り上げたこのパズルを解くことを頭から拒絶し、超速攻で28万のHPを削りきる。
このDLCクエストが解禁されてほんの一週間も経たずに出てきた高速撃破戦法…残影チェイス。今回チルノ達が使った戦法が、これよ。
それに関しての解説は次に回すわ。というわけで」
ヤマメ「今回はここまで、と。
しかしまあ、本当にそんなの可能なのかねえ…」
レティ「まあ、種明かしは次でしてくれるでしょ。静葉がえげつないと言った以上、本当にロクでもないやり方であるのは確かそうだわ」
…
…
生物の気配もないその区画を奥へ奥へと進み、少女達はそこへ辿りついた。
そこには、彼女達がこれまで見たこともないような、おぞましき存在がある。
「あれが…深淵なる闇?」
コーデリアが、最早恐怖もとっくに通り越してしまったような、茫然とした表情で呟く。
その周囲は、それが放つ強烈な瘴気に歪み、見ているだけでも彼女らの気分を害するかと思われるほど濃く、強い。
基本的にその行動が脊髄反射と評されるチルノはもとより、この場に居る誰もが、その巨大なる魔にあまりにも圧倒的過ぎる力が秘められている事を感じ取る。
「かつて、上帝はこの地のフォレスト・セルを討つべく様々な戦闘生物の研究を行った。
上帝の狂気は、やがて改造されて生み出された魔物の長所を全て結集し、それを一つにまとめ上げた究極の戦闘生命を誕生させるに至ったものの…それは、今現在も禁忌ノ森に繋がれている「始原の幼子」よりもさらに手に負えないシロモノになってしまった。
…故に、上帝はこの森そのものを顕界と彼岸の狭間に閉じ込めていたのよ」
「あれが、あいつなの?」
ルーミアの問いに、レミリアが神妙な表情のまま頷く。
「あれは殺意と敵意の塊。
そして、その狂暴な意思は様々な世界から、同様の念を呼び込むわ。
…成程、こればかりは看過できないわね…八雲のスキマには、そんな義理はないとはいえ」
その手には、何時の間にか赤黒く輝く杓のようなものが握られており…それが、その力の脈動と共に両サイドが延び、赤黒の大弓と化していく…!
「馬鹿げているわ。
昔の因縁なんか知ったことではない。そんなものを理由に、たかだか魔族如きがなんの正義を語る!?
貴様らが妖精や人間を、他の罪なき魔族を傷つけ、ただ己の野望欲望を満たすために振る舞い続けたことを棚に上げ!!否!!」
レミリアは嚇怒の表情で、弓の先をその魔へ突きつける。
「貴様が下らない主義主張を振りかざすのは勝手にするがいい!
許せないのは、この私達の誇りを踏みにじり穢したことよ!!
魂魄の髄までその愚を思い知らせ、二度と同じ姿で生まれ変わろうなどと思えぬほどの恐怖と屈辱、我らの手で刻み込んでくれる!!!」
大喝と共に放たれたその覇気が、それまでこちらを傲然と睥睨していた魔神を僅かに反応させる。
その、自分達のよく知る「誰か」を思わせるレミリアの姿に一瞬飲まれるミスティアだったが。
「やっぱりレミリアの言ってること、なんか難しくてよく解んない。
もっと簡単でいいじゃん、この最強のあたい達に喧嘩を売ったのは許せない!けちょんけちょんにしてやるって!!」
そうやって能天気にぶんぶんと、連続でパンチを繰り出す仕草をするチルノの姿に、ミスティアのみならず他の面々も呆気にとられ、レミリアですら少し吹き出してしまう。
「…やっぱりあなたは単純明快でいいわ。
そうね、まったくもってその通りよ」
「私だって、許せないのは一緒だよ。
レミリアも十分かごめ流だと思うけど、チルノの方がもっとそれっぽい」
ルーミアも背負っていた大弓…それは、ホワイトランドでもかつて秘中の秘とされた神宝にして、かつて前世の大天使ポエットが愛用していたとされる幻弓ザイデングラート…それを構え、ルーミアの影から生み出された暗黒の矢が装填される。
「そうだよね」
ミスティアもまた、己の両拳に剣を纏い、独特の構えを取る。
「これは、私に売られた喧嘩だもん。
穣子さんなら、最後まで投げださないで、とことんまでやり合っちゃうもんね…!だから!!」
頷きあい、そして、その魔へ…自らの手で果たさねばならぬけじめを果たすために。
「覚悟しろ!
本当の私の、私達の力、思い知って消えちゃえ!!!」