魔神が、少女達の闘気に反応してゆっくりと身体を浮遊させる。
瘴気の脈動が放たれるが、五人は素早くその範囲外へ離脱して、その攻撃を避けた。

「みんな、大丈夫?
あれに下手に触れれば、魔力を全て奪われてしまうわ」
「うぇっ!?
そそ、そういう事は早く言ってくださいよレミリアさん!?」

しれっと告げるレミリアに、コーデリアの物言いも至極当然である。
レミリアは悪びれもせず続ける。

「だからごめんって。
それに、最初のしばらくはあいつに好き勝手をすることを許してしまう…その間、どんな手でもつかってアイツの動きを止めて頂戴。
それは…ミスティアにしかできないことよ!!」

そこに、魔神の強大な触手の一部が飛んできて、直撃の瞬間にレミリアはコーデリアを抱えて回避する!

「レミリア!大ちゃん!」
「二人なら大丈夫!
私達も!」

チルノも頷き、二人が飛んだ場所に一瞬遅れて触手でつくられた槍…否、「破城鎚」が轟音と共に突き刺さる。
ミスティアは瞬時に自分の与えられた役割を理解し、妖気を全開にしてその触手破城鎚を本体めがけて駆けあがっていく。


ミスティアの瘴気が、魔神の瘴気に衝突してこすれ合う中で、彼女の耳に無数の怨嗟が響いてくる。
それは、あの日丘で訊いた、意識を失いかける彼女へのリンチを続ける魔族たちの嘲笑と同じで。

「ふざけるなッ…!」

ミスティアは、一度目を背けるも、ふつふつと己の奥底から湧きあがってくる衝動を感じている。
煮えたぎるマグマのように、それは、彼女の感情を少しずつ、そして確実に染め上げる…一方的な理不尽への、憤怒の色に。

「ふざけるなあ!!
あんたたちがいたぶり殺したあの子達が、あんた達に何をしたあああああああ!!」


賭けるその翼が、着火した紅蓮の炎に包まれる。
怨嗟を響かせ雲霞の如く襲いかかる瘴気の槍が、爆発的に放たれる炎の妖気にぶつかって一方的に焼き滅んでいく。


♪BGM 「燃え上がれ闘志 忌まわしき宿命を越えて」/田中公平(機動武闘伝Gガンダム)♪


その怒りが、構えた刃に赤熱した光を纏わせ、猛然と飛ぶその姿は、あたかも、叱り狂う感情のままに燃え盛る鳳凰の焔となる。
そのまま十重二十重に、魔神の本体は縦横無尽に切り裂かれ…否、それを守ろうとした巨大な触手腕を、そのまま本体を雁字搦めにする戒めとしてつなぎ止めている!

「よっしゃあ!さすがみすちー!!」

コーデリアがルーミアにかけた呪歌を、付け焼刃ではあるが補助魔法で自身に写し取りながら、チルノは己の事のように喜びガッツポーズする。
しかし、ミスティアの攻撃はそれだけでは終わらない。

力任せにもぎ取られた羽の一枚が、ミスティア自身の瘴気をたっぷり吸いこんで毒々しい紫の光を纏い、そして、高速の弾丸として打ち出される。
触手の中心に吸い込まれるようにそれが魔神へ到達すると、周囲におぞましい悲鳴が鳴り響き、大気を大きく歪ませた。

「パチェの言葉じゃないけど…書物はウソをつかないわね。
あいつには、触手を縛りあげることと、猛毒に対する抵抗性が皆無…そして!」

それまで精神を集中させていたレミリアが、魔力を解き放つ。
それは…数多の強力な大魔導師に匹敵するかのような、莫大な氷雪魔力だ。
そして、同様の魔力をルーミアとチルノも解き放つ。


魔神はその危険性を本能的に感じ取り、触手拘束の中心から片眼をミスティアの猛毒羽で潰されその毒の苦悶で身体をうごめかせながらも、なおも強大な瘴気を解き放つ。
その瘴気は無数の雷と化し、周囲を雷光とオゾンの匂いで満たすが…その回避不能のはずの雷の嵐も、冷気魔力の反駁でレミリア、ルーミア、チルノの三人はいなしていく。

そして、至近距離に居たミスティアも、燃え盛る自身の翼で受け止め、爆散させていた。

「まだだ、これも持ってけッ!!」

ミスティアはさらに、飛び去りながら魔神の暗く濁った瞳に、自らの妖気を直接塊にして叩きこむ。
その妖気…否「覇気」のすさまじい衝撃は、魔神の動きを完全に止めた。


魔神が動きを停止したのは、ほんの一瞬の出来事に過ぎない。
しかし、その「一瞬」は、全てを決着に導くに足る…魔神にとって致命の一瞬間であった。


ミスティアは己の熱を高め、周囲の大気から一瞬のうちに「熱」を奪う。
霜の舞う雪のフィールド…氷精のチルノにとっては勿論、強大な冷気魔力で大気を震わせるレミリアとルーミアに対しても、大きなアシストになることも…ミスティアには、解っている。

「私ひとりにできる役目は終わり…みんな、後は頼んだ!
まかせろみすちー!
みんな、行くよ!!」

チルノの言葉に、傍らのコーデリアが頷く。
そして、彼女の解き放った魔力も、巨大な方陣となって光を放つ。
バードの奥義たる「最終決戦の軍歌」、それに類する超絶強化魔法だ。




「いっけえええええええええええええええええ!!!」


チルノ、ルーミア、レミリアが解き放った魔力が、高速連射される矢を次々と、氷の巨矢…否、氷のミサイルと変え、それは横殴りの豪雨の如く魔神の巨体に突き刺さっていく。
その豪雨は嵐となり、そして、天に舞う氷の雲の上にレミリアとミスティアが立つ。

「行くよ、レミリアさん!」
「ええ、よくってよ!!」

一切の反撃も許さぬ大氷嵐の攻勢に、苦悶の絶叫を上げる巨大な魔へめがけ。


「ギガ!!」


手を取り、錐揉み回転する二人の身体を中心に巨大な冷気と砕け散った氷の刃が渦を巻く。


「ドリル!!」


それは、超高速旋回する氷の螺旋となって。


「ブレエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエクッ!!!!」




瘴気を貫通し、次の瞬間、空間を劈く轟音とともに、魔神の五体は木っ端微塵に吹き飛んだ。
上帝の狂った研究が生み出した究極かつ最凶の魔神は、最強の「小さき者」達の手でいともあっけなく滅び去っていくのであった。



「狐尾幻想樹海紀行 緋翼の小皇女」
第六十九夜 小さき翼に大きな絆を




静葉「さーいよいよ今回の攻略、というか残影チェイスの解説を始めていくわよ」
ヤマメ「あ、むしろそれがメインなんだ」
静葉「通常の魔神攻略に関してはそれこそ、動画も多数あるしそっち見てもらった方が早いわ。
  ギルドへっぴり腰の例を上げるまでもなく、無引退ストーリーキャラ未使用攻略とか、火力を特定のスキルだけで行うとかそういうのもあるわよ。
  あと、超威力の去れ、永久にをペットやパラディンのフォースブレイク抜きで受け切るという手法も発見されてるそうだし」
レティ「そういう話聞いてると、盾役とはなんだったかという気になることしか本当にないわね。
   今回みたいな超速攻撃破なんてその極致だけど」
静葉「まあそうなんだけど、それでもストーリーパーティを用いた速攻撃破となると、致命的な魔神のスキルを回避しての時間稼ぎとしてベルトランのブレイクは確実に必要になるから、考え方次第よ。
  確かにこの手法だと盾はいらないけど」
ヤマメ「なんか決着は5ターンで決まるものの、その為の準備が莫大な時間がかかるとか聞いたけどその辺は」
静葉「その辺も併せてまずは、彼女達のスキルから見てもらいましょうか。
  因みに全員99引退済み、かつミスティアのみレベル94であとは99よ」




ミスティア ダークハンター
ヒュプノバイト7 ショックバイト7 ミラージュバイト7 ソウルリベレイト★ ドレインバイト★
スコーピオン★ トラッピング★ スネークアイ★
HPブースト★ 剣マスタリー★ 物理攻撃ブースト★ 抑制攻撃ブースト★




チルノ レンジャー
フランクショット1 スリープアロー1 パライズアロー1 ブラインドアロー★ ドロップショット5
ダブルショット★ サジタリウスの矢★ トリックステップ1
弓マスタリー★ HPブースト★ TPブースト★ 抑制攻撃ブースト★ エイミングフット★
素早さブースト9 危機感知★ 野生の勘★




ルーミア レンジャー
フランクショット1 スリープアロー1 パライズアロー1 ブラインドアロー★ ドロップショット5
ダブルショット★ サジタリウスの矢★ トリックステップ★ アザーズステップ★
弓マスタリー★ HPブースト★ TPブースト★ 抑制攻撃ブースト★ エイミングフット★
素早さブースト★ 野生の勘5




レミリア レンジャー
フランクショット1 スリープアロー1 パライズアロー1 ブラインドアロー★ ドロップショット5
ダブルショット★ サジタリウスの矢★ トリックステップ1 エフィシエント★ 簡易手当★
弓マスタリー★ HPブースト★ TPブースト★ 抑制攻撃ブースト★ エイミングフット★
素早さブースト9 野生の勘5




コーデリア バード
猛き戦いの舞曲5 聖なる守護の舞曲3 軽業の旋律★ 慧眼の旋律3
火劇の序曲1 雷劇の序曲1 氷劇の序曲★ 氷幕の幻想曲★ 蛮族の行進曲★ 耐邪の鎮魂歌★
活力の重奏3 韋駄天の重奏3 生命の重奏★ 音の反響★
歌マスタリー★ HPブースト6 素早さブースト★ 癒しのリズム★


レティ「うわ、なんなのこのアタッカー3人のグリモア」
ヤマメ「地味にミスティアのもすげえな。
   封じにどんだけボーナスのっけてるんだ」
静葉「キーになるのは、いかに最序盤に魔神の攻撃をやり過ごすか、その一点よ。
  初手は誰が為の力確定、そして2ターン目は汝、力を捧げよか力を見よのどちらかだけど両方とも腕依存。4ターン目の我は軟弱を嫌うか踊り狂えも腕依存だから、3ターン腕縛りを持続させることは勿論確実に2ターン目に腕を縛りあげることが必要不可欠。
  だから、食材は危険な花茶を用いているわ」
レティ「花茶…ああ、確実に3ターン腕を封じ続けるという事ね」
静葉「地味に毒の蓄積ダメージも重要になるわ。
  つまり、2ターン目にはミスティアがブレイクを叩き込み、毒と腕縛りを同時にぶっ込む。
  初手は誰が為の力を止める役が必要だけど、これはミスティアに一極集中させるわ」
ヤマメ「ああ…フォースブレイクにはTPいらんから、こいつはTP空にしてもいいのか」
静葉「ただし4ターン目、そして決めの5ターン目の為にはミスティアにもTPが必要になるわ。
  バブとデバフのタイミングも重要。
  故に表にすると、各自の行動は次のようになるわね」

1Tめ 魔神:誰が為の力
レンジャー3人攻撃技何か、ミスティアみがわり、コーデリア氷幕の幻想曲
2Tめ 魔神:汝、力を捧げよor力を見よ(撃破成功時は汝、力を捧げよ)
ルーミア火竜の猛攻、チルノ&レミリアは音の反響(ルーミアのバフを自分にコピー)、コーデリア氷劇の序曲をルーミアに、ミスティアフォースブレイク
3Tめ 魔神:属性三種何か(撃破成功時は我の慈悲)
レンジャー3人フォースブーストからサジタリウスの矢、コーデリアフォースブーストから慈愛の襟巻、ミスティアは自分にアムリタ2
4Tめ 魔神:我は軟弱を嫌うor踊り狂え(撃破成功時は我は軟弱を嫌う)
レンジャー3人リミットレス、ミスティアスネークアイ、コーデリアは特に何もしない(バフ付与以外なら何でもいい、防御が鉄板)
5Tめ
レンジャー3人チェイスフリーズ、ミスティアフリーズサークル、コーデリアフォースブレイク
(魔神行動前に撃破完了)


ヤマメ「えっらい簡単にまとまったな。
   でもこれで本当に足りるの? サジ矢に限った話じゃないけど、術掌でもないスキルで属性書き変える奴とかないと思うし」
静葉「鍵になるのはレンジャーのフォースブースト、夢幻残影よ。
  このフォースブーストは、弓を使った攻撃を行った時に通常攻撃での追い討ちをかける。
  そして、チェイスフリーズはSTR依存ではあるけど、指定された属性攻撃を行った際にその属性と武器属性の複合攻撃で追撃を行うわ。
  つまり」
レティ「サジ矢の着弾で氷属性の追撃が飛んで、それをチェイスするのね。
   さらにチェイスもリミットレスの効果で弓で撃つから、そのチェイスにも夢幻残影が適用される」
ヤマメ「じゃあ何か!?
   チェイスが追撃を発動させられる限界数まで、一方的に攻撃できるってそういう事か!?」
静葉「そういう事よ。
  チェイスは自分の夢幻残影に発動しないし、なおかつ★★じゃないから全員が最大数発動できる確率はさほど高くない。
  仮にチェイスが最大数発動した場合、サジ矢とチェイスで合計6発の残影が発動し、最大の攻撃数は36。そのうち最大限のバフがのっかった残影の攻撃は18回。
  AGI94でグリモアボーナス、火竜、襟巻、序曲、幻想曲に最終決戦の軍歌とサークルが乗って、減算のかかったスネークアイでも110%程度の補正が付くから、おおよそ残影のダメージは一発あたり15000前後出るわ
レティ「それだけでもほぼ27万程度のダメージが出るのね…魔神のHP28万だから」
ヤマメ「サジ矢とチェイスのダメージだけで十分過ぎるおつりが出るってことか」
静葉「サジ矢の着弾時には仕様上リミットレスの補正が入らないから、サジ矢の前にリミットレスを使いたくなるけど、そうすると行動順を色々考えなきゃならなくなるからね。
  幻想曲のデバフを残してバフの部分を後の襟巻で上書きする必要もある。サジ矢は素撃ちするしかないわ」
レティ「成程ねえ。
   となると、突もしくは氷のボーナスは、残影のダメージを稼ぐためでもあると」
ヤマメ「残影で15000ダメージってのも、ボーナス4つほどでいいんだ」
静葉「そうね、グリモアの付加ボーナスが全くなくても大体12000程度のダメージは出せるしそれでも倒せるけど、そうするとチェイスを全弾叩き込むことが必須条件になるわね。
  レンジャーが初手で攻撃に出たり、毒ダメージも蓄積しておくこともより重要になる。
  あともっと重要なのは、レンジャーの素早さ管理ね」
ヤマメ「ルーミア以外はわざとAGI下げたり、素早さブーストをマスターさせてなかったりするな。
   これはアレだな、ルーミアが確実に他の二人より先に、猛攻を使わなきゃならないってことだな?」
静葉「ご名答。
  コーディはマスタリと素早さブーストでほぼ先制で序曲を使えるから、ルーミアが猛攻と序曲を持った状態であとの二人が自分にそのバフをコピーできる。
  何もしなければ攻撃のターンにはルーミアの猛攻が切れちゃうから、次のターンでコーディがフォースブーストして、それを切らさない必要があるわね」
レティ「地味に音の反響で延長された状態でコピーされるから、コピー先はそれで問題ないわけだしね。
   で、属性だけは縛りで防げないけどその辺りは
静葉「レンジャー3人に集中してなおかつ残影の効果で避けきるのに期待する(真顔
レティ「うわあ(しろめ」
ヤマメ「そこだきゃ運なのか(しろめ」
静葉「この戦略における最大の鬼門がそこね。
  一応一発400程度の与ダメだから、一発だけならミスティアかコーディが受けても問題ないけど、問題は封じ付与。
  アタッカーの腕と脚は言うまでもなく、ミスティアの頭と腕、コーディの頭が封じられてもそこでアウトよ。スネークアイ、サークル、最終決戦の軍歌が確実に撃てるというのも必須事項だから」
レティ「解っちゃいたけど結構綱渡りなのね、これはこれで。
   ところでこれ、氷属性である意味あるの?」
静葉「一応だけど魔神は幼子同様、属性全般弱点だからどのチェイス使ってもいいわよ。
  速攻撃破動画だと雷だったけど、ここではまあほら、チルノがいるから」
ヤマメ「なるほどなあ…なんかこればっかりの気がするけど、よく考えられてるもんだな。
   これでも結構他のボスにも流用できそうな気がするが」
静葉「へっぴり腰の話ばかり引き合いに出すのもなんだけど、彼らは同じ戦略をオーバーロード幼子相手にも使っているわ。
  特に幼子戦のグリモア厳選ぶりは鬼よ、アタッカー3人はパッシブに至るまで全てのグリモアに装備ボーナスを乗せるという荒技ぶりだったわね。
  幼子レベル50で撃破の代償は、睡眠時間3時間平均の延べ1ヶ月に及ぶグリモア厳選作業というから尋常じゃないわ」
ヤマメ「そこまでやるかよ普通…」
レティ「それに地味に解説されたことなかったけど、グリモアの付加効果って階層ごとに決まってるじゃない。
   その辺までどうやって加味するかだけど」
静葉「細かく説明するのもアレだし、そこらへんはwikiでも解説されてるからそっち見てもらうといいわ。
  一応第六階層は全てのグリモア付加効果がつくけど、全ての付加効果でなおかつレベル3のみがつくフロアがある。それが、魔神の潜む専用のフィールド、31F「楽園の闇」よ。
  ここには一切エンカウントが存在しないけど、リスポーンがわずか五時間(=300ターン)と早く、なおかつ出入りするだけで復活するFOE暗黒に揺らめく者と氷爆カズラしかいない。
  つまり、このFOEをひたすら双葉茶飲んで狩る。クリア後から使える最強最後のグリモアマラソンポイントよ」
ヤマメ「FOE相手限定なのかよそれ…あ、じゃあかごめの野郎がよく行ってたのってそこか!」
レティ「私も行ってんだけどねそこ(しろめ
   今回は基本的に通常スキルのみやってたけど、パッシブとか本当にどんだけ莫大な時間がかかることやら。
   防御か通常攻撃でも、攻撃スキルやこのアノマロカリス野郎のスキル「貪食」も対象になるから、パッシブ厳選は莫大な時間を必要とする」
ヤマメ「そこはパッシブのグリモアだけ装備しとけばいいんじゃね?」
静葉「グリモアはSPを使われていればいるほど生成の確率が高くなるし、ほんのちょっとしかSP振られてないといくらこのアノマロカリスのモンスターレベルが99でなおかつ双葉茶の支援があってもほとんど発生しないわよ。
  いずれにせよ、気の遠くなるようなレベルの時間がかかる。パッシブに関しては、完全運頼みね」




静葉「そして魔神も首尾よく撃破し、もう存在意義がよくわからないナゾご祝儀であるラグナロクを入手して終了。
  説明まだだったけど、実はこれ、地味に魔神をエキスパートで狩ったという証明でもあるわ。エキスパートで撃破した時のみ、戦闘終了後にイベントが入ってラグナロクを入手できるの。
  今回取得したグリモアの中には、今後攻略上とても有用なモノもあるし、こっからボス攻略自体はさっさと進んでいくことでしょうね」
ヤマメ「やな含みもたすなよそこ…」
レティ「いつものことじゃないかしら。
   で、次はどこから行くの?」
静葉「まずは、魔理沙達にしようかと思うわ。実はこの時のグリモア稼ぎの甲斐もあって、あと必要なのはパラディンに持たせる自衛の本能と身代わりのTP回復3だけ。出来れば暴風の翼の異常付与3も欲しいけど、前半しか使わないし閃光疾走でもいいし。
  ただその前にピクニックでティンダロスを倒して、ティンダロス撃破後のある確認もしなきゃならない。そっちもまあ、魔理沙達をメインで話を作るつもりでいるわよ」
ヤマメ「となると暫定的には七王、ティンダロス、幼子の順にクリアしてエンディングか。
   いよいよ完全制覇も見えてきたね」
レティ「そうすれば間髪いれずにSQ5の解説が始まるんじゃないかしら。
   何時からになるかは知らないけどね(真顔」
静葉「というわけで今回はここまで、あとはただの茶番だからその辺はよろしく(キリッ」









ミスティアははっと目を開ける。
起き上がったそこは、煌々と照らす月明かりに照らされた、元の部屋だった。

彼女は起き上がり、きょろきょろと周囲を見回す。
あれは夢だったのだろうか?
あの戦いで感じた熱も…そもそもあの魔神そのものが、自分の悪夢の一つの形だったのだろうか。

「っ!」

ミスティアは、そのとき、壁に立てかけてあったひと振りの剣を見て息を飲む。
彼女は立ち上がり、恐る恐るそれに近づくと…それを震える手で取り、確かめる。

その刀身は鋭く闇を刺すような光を放ち、神々しささえ漂わせる刃は、それに触れるありとあらゆるものを切り裂くかのような雰囲気を漂わせていた。
そして、何より…握りしめた柄を通して、その刃から彼女の身体へと、無限にも思える力が漲ってくるのすら感じる。


まるで鏡の如く輝く刃に映しこまれた自分の表情が歪んでいく。
ミスティアは、この名剣の柄を強く握り、確信に変えた。


「夢じゃ…ない!
私達の戦いは…みんなと戦ったことは、すべて!」



へたりこみ、万感の思いが涙となってその頬を滑り落ち、床へと吸い込まれていく。


この剣は…戦いを終えた後、ぐずぐずの肉片と化しながら魔神の五体が消滅していったその跡に、何時の間にか突き刺さっていたものだ。
それが最初からそこにあったものなのか、または深淵なる闇の魔神の肉体に刺さっていたモノがこぼれおちたものなのか、誰にもわからなかった。
レミリアも、この剣については何も聞かされていないのか…知らない、と答えたのみだった。

彼女はそれを戦利品として持ち帰るかと、少女達がはしゃぎまわる光景の中で、意識が途切れ…。



「そうよ。
あなたはそれから、丸一日眠っていたの」


ミスティアはその声にハッとして振り返ると…そこには、何時の間にかリリカが立っていた。
リリカは涙をぬぐって見上げるミスティアのそばまで来ると、同じようにしゃがみこんで、その手を取る。

「話は全部、レミリアさんから聞いたよ。
あなたは、その戦いで全ての力を使い果たしたみたいだって…こっち来た時もずっと、そう言えばロクに何も食べてないみたいだったからね」

リリカがそうやって笑いかけると、ミスティアの腹の虫が寂しそうに音を立てた。
拭ってもあとから溢れる涙を流しながらも、彼女は一度恥ずかしそうに眼を伏せ…そして、泣き笑いの表情で顔を上げると、リリカも笑顔で返す。

その表情が不意に曇った。

「ごめんね、ミスティア。
あなたが、苦しんでるのは気づいてたけど、私達には何もできなかった。何もしてあげられなかった。
あなたが居なくなった時…すぐに探しに行こうと思ったけど、幽香さんが止めたんだ。
ミスティアのことは、チルノ達がきっとなんとかしてくれるから…って
「…リリカは、悪くないよ。
私も、ごめんね。みんなを、振り回して」

リリカは頭を振る。
そして、その身体を強く抱きとめる。

ミスティアも、嗚咽の声を隠すかのように、その身体にしっかりと抱き返していた。
そこへ、こいしも飛び込んで来て。


♪BGM 「piece of youth」/ChouCho(ガールズ&パンツァー劇場版EDテーマ)♪


「あの…みんなはこれからまだ、やることがあるんだよね。
もし、もしよかったらだけど…私も、連れて行ってほしい。
私に何が出来るのか、まだ、解らないことも…知りたいことも、いっぱいあるから」

三人でひとしきりお互いの温もりを確かめ合った後(それでもなお離れたがらないこいしをリリカが強引に引きはがしてから)、ミスティアは二人に告げた。

「きっと、役に立って見せるから。
魔理沙が、もう一度自分の道を見つけられたように…私も、なりたいの

その表情は泣き笑いのようだが、煩悶は既にない。
リリカとこいしはお互いの顔を見合わせ、そして、満場一致だと言わんばかりの笑顔で頷いて。

「勿論だよ!」
「あなたの力は、私達にとっても必ず必要になる…改めてよろしくね、みすちー!

差し出したリリカの手をミスティアが握り返し、そこへこいしの手も重なり…三人は、同じ笑顔で笑う。


リリカはこの時、初めて彼女を愛称で呼んだことを、他の誰が気づけていただろうか?
きっと、リリカ自身も今までどこか、この夜雀の少女に遠慮の様なものがあったのかもしれない。


(ううん、今はそんなのはどうでもいい。
 今度は、「みすちー」と一緒に、強くなるんだから。
 それだけで十分だよ)


リリカは己の意思を確認して、頷く。





「…雨降って地固まる。
いいえ、チルノの仕業なら、降ってきたのは雹かしらね?」

その様子を、戸口の向こうで伺うルナサが深く溜息を吐く。

「言い得て妙ね。
と言っても、あんな暑苦しい凍土はないわね。メタンハイドレートかしら」

うんうん、と頷きながら、メルランも同意しているのかどうなのか解らない風に返す。

「姉さん、本当にこのままみすちーを連れて歩くつもり?
静葉さんとか心配してるんじゃない?」
「逆よ、静葉が物凄い心配してて、私になんとかしてくれって言ってきたのが事の始まりだもの。
大体あの酒場、実質的に取り仕切ってるのはあの不良秋神よ。だから、しばらくは連れ回しても問題はないわ、アフターケアって奴で」
「そういうもんかしら。
でも、あの子の歌は私も好きよ。あの子が加わってくれるだけでもとてもハッピー度合いが上がるもの」
「じゃあ寺の山彦も呼んでくる?」
「あ、あいつ混ざると騒音公害になるんで却下で」

そんな妹の姿に、ルナサは呆れたように溜息を吐くと、その場から離れるべく踵を返す。
その表情は伺えないが、その声のトーンが、否応なくこれから挑む案件の困難さを予測させた。

「あのライルとかいう学者の持ちこんできた一件、思った以上に厄介だわ。
私達は多分、神話生物の類に挑むことも考えていた方がいいという事」
「神話生物?
なんかあれ? 触手とかうじゅるうじゅるしてるあんなやつ?」

メルランはわざと顔をしかめ、タコのような身をくねらせる仕草で不快感を表しておどけて見せる。

「概ね、その通りよ。
封印されていると言われているのは、恐らくその性質から「ティンダロスの猟犬」。
どのような経緯で封印されたかはわからない…けれど、それを封印している「真円の結界」が綻ぼうとしている…猟犬は執念深く狡猾、まだ完全に封印が破られていないのでしょう、結界の完全な破綻を待っているのかもしれないわ

「封印が完全に解かれたら、どうなるの?」
「解らない。
でももし仮に、封印を施したのが上帝であるとするなら、上帝に対する恨みを転嫁して、それを討つ切欠になったラガード公家や、直接討伐に関わった私達に矛先を向けてくる可能性もある。
ありとあらゆる鋭角から次元を超えて己の分身を投影し、無限に数が増やせるというふざけた奴よ。そんな奴が、今の幻想郷に入ったとなれば」

メルランはその危惧を理解する。
ルナサは振り返る。

「…結界の効力が完全に切れていない今なら、好機かもしれないわ。
猟犬が自由に身動き出来ないうちに無力化させてから、結界を完全修復させて、その復活を完全に阻止する。
私達がなすべきは、それよ」
「はあ…まさか、神話生物の類とやり合うハメになるとはねえ。
まあ、退屈だけはしなさそうね」

その言葉以上に、肩をすくめながらも能天気な雰囲気のままの妹の姿にルナサは呆れながらも、最早見慣れたものなのだろう…ふっと笑って再び踵を返す。


「一丁、やりますか。
私達のライブを、奴への葬送曲にしてやりましょう」