ξ゚听)ξ(……………今度こそ)

『Extra Stage』 ミスティEX

見つ〜める〜…ってどこ見てんのよぉおぉぉ!


トゥゥバーッド…


ξ゚听)ξ「……………」


少女がプレイするのは「ポップンミュージック」。
音楽ゲームの金字塔「ビートマニア」から派生した「音楽ゲーム」のシリーズであり、クラブDJのブースを模した操作盤がある本家ビートマニアとは異なり、カラフルな9つのボタンをたたく、名前通りポップさを前面に押し出した、どちらかと言えば多人数でのパーティプレイを想定した機種だった。

だった。

いつしかこのゲームは他シリーズ同様一人でプレイされるのが主流となり、ポップさを口実にバラエティを広げる方向性に来ており、連動するようにしてどんどん譜面難易度も上がっていった。
そして最新作「ポップンミュージック13カーニバル」の前作「ポップンミュージック12いろは」にて、ついに全国で通信しながら、シリーズの名物ともいえる「オジャマ攻撃」による妨害込みでリアルタイムで他プレイヤーとスコアを競う「ネット対戦」が導入され、その狂熱(フィーバー)ぶりは加速の一途をたどっていた…。


(´<_` )「あの娘はまたミスティやってるな兄者」
( ´_ゝ`)「しかもまた同じところで落ちているな弟者」

ξ゚听)ξ「……………」

そのふたりの声が聞こえているのか居ないのか…間違いなく聞こえているのだろう。
彼女は少なからずむっとした表情で、少し離れた順番待ちの席に戻る。

( ´_ゝ`)「ここはひとつ我々の実力を示しておくとしよう」
(´<_` )「流石兄者」

『1st Stage』 ミスティEX

見つ〜m(ry

No Bad!


ξ゚听)ξ「……………」

その光景を感慨なさそうに少女は眺めている。


その彼女にとって、これも見慣れた光景だった。
郊外のゲーセンとはいえ、それなりに規模の大きい学園の街。
しかも近隣にランカーが常駐するゲーセンがいくつもあり、集まってくるプレイヤーの質も、技量はともかくとして人格的にはお世辞に褒められたものではない。
彼女に見せつけるようにして、わざと同じ選曲をし、彼女がハイパー譜面しか選べない譜面であればエキストラ譜面にしているこの二人のような輩など、最早見慣れ過ぎて飽きすら来ている。

そして彼らも薄々それに気づいているのだろう。
思ったような反応を得られず興醒めしたか、1クレプレイしただけで、淡々と筐体に着くツンを一瞥してそのまま店を去っていった。

彼女はおもむろに筐体へコインを投入し、自身のICカードを筐体の装置へ読み込ませる。
無難に気に入った曲を中心に、レベル34前後までは大体埋まっているが、レベルが35を超えるとクリアマークは殆ど無い。
初心者と言う程ではないが、上級者とは決していえない…中級者というのが、無難なところだろうか。

そんな彼女もいつものように、無難な曲を選んでポイントを稼ぎ、エキストラステージを出す。

『Extra Stage』 メルトEX

トケタ-( ゚д゚ )

トゥゥバーッド…

ξ#゚听)ξ「……ああもう!」

レベル37…彼女にとってあまりにもその壁は高かった。
先のミスティEXもだが、こちらも終盤に延々長い階段地帯が繰り返し振ってくる…適正域でもだいぶ手こずる難易度の高い譜面だ。

筐体を殴ったりとかはしないまでも、彼女は悔しそうに地団駄を踏む。
そこへひとりの少女が近づいてきた。

(*゚ー゚) 「まーたやってるのね」
ξ゚听)ξ「…しぃ」

(*゚ー゚) 「もうその辺にしておきなよ、ツン。
    あんたの気持ちも解るけど…彼女…クーは別格なんだよ」
ξ#゚听)ξ「うるさいっ!」

「しぃ」と呼ばれた少女の言葉を遮り、彼女は語気を荒げて激しく頭を振る。

ξ#゚听)ξ「あいつは昔からそうだったんだ!
     なまじ幼馴染だったばっかりに、何時も何時も周りはあいつとあたしを比べて…挙句の果てにこれまであっさりと追い越されて!」

激昂した彼女がポップンの筐体を指し示す。

ξ#゚听)ξ「もう負けたくないのよっ!何一つも、あの女に!」
(*゚ー゚) 「……ツン」

そしてツンは再度、憤然とポップンの筐体にコインを投じる。
しぃはただそれを見守ることしか出来ずにいた。



<ξ゚听)ξがポップンでランカーを目指すようです プロローグ>



彼女の名前はツンデレ。通称はツン。
私立クオリティ学園高等部の一年生である。
学校の成績は上の下、黙って立っている分には本来中々の美少女のはずだが、彼女には損な点があった。

やや童顔だが学園でも指折りの美少女でありつつ、ツリ目で少し気の強そうな印象を与えるが、実際にかなり気性は激しい。
あまりにも沸点が低く、ちょっとしたことでも直ぐにブチ切れる。
しかも幼少期からオテンバで鳴らしただけあって、華奢そうな見た目に反して合気道の心得もある。
実際に彼女の虫の居所が悪いときに言い寄って、しかも彼女の「地雷」を踏み抜き数メートルぶん投げられたアワレな犠牲者もいたらしい。

ツンにとっての「地雷」…それこそ彼女の幼馴染であり、十数年の腐れ縁となった万能の天才・クー。
中等部の時代から学年のトップをひた走る文武両道の天才で、しかも彩色兼備で性格も良い完璧超人。
悪いことにツンとクーは家が隣同士だったこともあり、常々クーと比べられることが多かった。

多感な時期をそうして過ごしてきたツンは、クーに対抗するためあらゆる努力を惜しまなかった。
実際にツンも基本はハイスペックだった。
だが、それだけになおのこと、ツンにその現実が突きつけられる…努力に努力を重ねるたびにその差は大きくなるばかりという。

それも当然…クーもまた、さらに上を目指して努力を怠らないタイプだったから。
しかしツンにはそんなことは解らない。
常にクーが涼しい顔して、そんなのをおくびにも出さず…そして空気も読まず、淡々とツンの目の前でやってのける。
まるで、見せつけるかのようにして。

そんなツンの数少ない楽しみこそ、ポップンだった。
元々かわいい物好きの彼女は、ライバルとして登場するポップなキャラクター達と、ポップの枠で収まらないバラエティ豊かな楽曲のトリコになるのに時間は掛からなかった。
ゲームセンターは、数少ない彼女の癒やしスポットになっていた。

しかしそれも長続きはしなかった。
あるとき…これに興味を抱いたらしいクーに少し手ほどきをしてやったのが運のつき。
始めは初心者でも余裕で超えられるような譜面で乙る程度だったクーも、瞬く間にレベルを上げ…半年経った今ではネット対戦でも将軍のレベルを超え、仙人部屋にも到達しようかというレベルだ。

対するツンは暦こそAC7からの付き合いだが、そろそろAC15の稼動が秒読みとなった現在でも最高クリアレベルは36程度。
ネット対戦に到っては英雄部屋にぎりぎり生き残っているという状態だった。


ξ゚听)ξ(……………今日こそ…今日こそは!)

学校から帰り、服を着替えて夕方までポップン。
これまでは一週間に一、二回だった回数も何時しか彼女の日課になりつつあった。

日を経るにつれ、筐体の画面に映る彼女の表情は…険しさを増していった。


『Extra Stage』 オイパンク0H

OiOi!OiOi!駅の蕎麦。ってか歌詞全然違うわなにをするやめくぁwせdrftgyふじこlp;

トゥゥバーッド…

ξ゚听)ξ「…………」


(´・ω・`)「惜しいところまではいってるんだけどなー」
( ><)「仕方ないですよ、AU部屋クラスならどうしてもアレが壁になりますから」

順番待ちをしていたふたり組の青年の言葉には悪意はなかった。
しかしこの日は間が悪いどころではない。
女性特有の例の日に当たり、しかも基本的にこの期間のツンが機嫌の良かった例しがない。彼女の両親ですら、おいそれと話しかけるのを避けるほどだ。


故に、全ての言葉が…彼女にとって「起爆剤」となるのだ。


ξ#゚听)ξ「なによっ!ヘタクソだからさっさと辞めて帰れとでも言いたいのっ!?」

彼女は筐体に当たることはなかったが、それが最後の理性だったと言って良い。
だが…その怒りは全て、店外まで響き渡りそうな、甲高い怒声となって放たれた。

(;><)「あ、その、そういうわけじゃ」
(;´・ω・`)「ちょ、落ち着いて、ね」

青年達も腕に覚えがある方ではなかったようだが…それを差し引いてもこの剣幕だ、思わず後ずさってしまうのも止むなし。
しかし一度キレたツンは止まらない。
アツくなったら最早止まらない…それ故、この状態のツンは「狂犬」に例えられ、学園中で恐れられていた。

ξ#゚听)ξ「どうせ私に才能なんてないわよ!どうせ何をしたって、私なんてっ!!」
(;*゚ー゚) 「ちょ…ちょっとツン!」

運良くというか、運悪くというか…ともかく丁度ゲーセンに入ってきたしぃがツンの怒鳴り声を聞いて慌てて駆け寄ってきた。
この状態のツンを止められるのは、しぃぐらいしかいないが…それでも、五分五分だ。

だが、この日は何かが違っていた。

ξ;凵G)ξ「私なんてっ…!」
(;*゚ー゚) 「……ツン」

感情の昂りが閾値を超え、怒りが自身への嫌悪やら何やらに変わる。
それを抑えきれなくなってしまったツンはその場にへたり込むと…大声で泣き出してしまった。
店の中には人こそ少なかったが、それだけに三人もどうしていいものやらと困り果ててしまった。

しぃもツンとの付き合いは長い方だが、こんなツンを見るのは初めてだった。

(;><)「あー…」
(;*゚ー゚) 「すみません…友達が迷惑をおかけしたみたいで…」
(´・ω・`)「いや…でも何かワケありみたいだね。
     良かったら聞かせてくれないか?
     力になれるかどうかは解らないけど」
(;*゚ー゚) 「あ…はい」

そしてしぃはツンをなだめながら、ふたりの青年に事の次第を語って聞かせた。


青年たちはそれぞれビロード、ショボンと名乗った。
聞けばクオリティ学園の大学部に在籍しているという。
それぞれ違う地方出のふたりは今年から学園のあるこの町に引っ越してきたが、趣味が共にポップンということで意気投合し、ふたりで根城とするべきゲーセンを探してここに立ち寄ったのだという。

(´・ω・`)「そうか…世の中って存外狭いもんだな…あのクーがここに住んでたなんて」
(;><)「びっくりですよ。
     あの人将仙スパクラスでもかなり強いんで、どんな人なのか気にはなってたけど…」
(´・ω・`)「先ずオジャマがほとんど効かないし、かといって発狂ぶつけてもかなり安定して処理してくるからな。
     あれほどのバケ…いや失礼、強いヤツが俺らよりも3つも年下なんてなぁ」

ショボンは柔和で頭が良さそうに見えるが、実際にしぃからの断片的な情報から半ば、ツンとクーの関係性を理解している様子だ。
選ぶ言葉も、それなりにツンをこれ以上刺激しないよう、気を配っているようだ。

ξ゚−゚)ξ「………………」

目を紅く腫らしたツンは一言も発せず、順番待ちのベンチの端で俯いたままだ。

(´・ω・`)「つまり彼女…ツンはクーに勝ちたい一心でポプに粘着していると」
(*゚ー゚)「ええ…でも」

しぃはそこまで言って、ツンのほうを横目で窺う。
その先を続けていいものやら悩んでいるようだった。
ショボンはしばしツンの方を見つめていたが…ふぅ、と一息つくと、吟味していた言葉を口にする。

(´・ω・`)「本来ゲームなんて、そんなことでムキになるべきモンじゃないと思う。
     かくいう俺もかわいいものが好きで、それに加えてこのゲームの奥深さに引き込まれたクチだ…そんな悲しい気持ちでプレイして欲しくない…と言いたいところだが、そんな建前をあまり言いたくはないのもまた本音だ。
     なぁツン…君さえよければだが…俺らと一緒に練習してみないか?」
ξ゚−゚)ξ「………………?」

その言葉の意図する所を図りかね、ツンは無言のままショボンの顔を上目遣いに見やる。

(´・ω・`)「何事もひとりでやるより、何人かでやったほうが上達の早道になると思う。
     あえてこう言わせてもらうが…少なくとも今のレベルは俺やビロードのほうが上だし、何かアドバイスできると思う」
( ><)「そうですねー。
     僕としても、あのクーさんに負けっぱなしなのもアレですからね。
     ひとりよりは三人で練習すれば、楽しいと思うし」
(*゚ー゚)「いえ、四人で。
   あたし家庭用しかやってないけど、道連れが多いならACにも進出してみようかなー…なんて」

ξ゚−゚)ξ「………………」

ツンはしばらく考え込んでいたようだったが。

ξ゚听)ξ「…………うん」

ひとこと、そう言った。


ツンはのちに述懐する。
このときの出会いは、確実に自分の運命を変えたのだと



(プロローグ 終わり)