ポップンパスポート。
ネット対戦という新たな境地を開いたAC13稼動期に、ポップンの携帯ページからダウンロードできたアプリ。
楽曲のクリア状況、ネット対戦で使用できるオジャマのコンディションや戦績などのデータ…果ては知り合いのIDを登録することでそのプレイ状況なども知ることのできるツールである。
ツンはクーにもパスポートをダウソさせ、互いのIDを登録していたのだ。
つまり…双方が双方のプレイ状況を、逐一知ることが出来る。
クーは当然ながら、愚かな少女ではない。
このデータツールの危険性を即時察知し…カードを二枚作って片一方をツンたちと一緒のときに使い…そして別のカードを作って練習していたのだ。
いわゆる「サブカード」という、このシステムが始まったAC9の頃から多くのプレイヤーが使っていた別名義プレイである。
ツンがクーの「サブカード」の存在を知ったのは全くの偶然だった。
母親への怒りから部屋に籠もっていたとき、とある大手攻略サイトの交流版で、それらしき存在に気づいた。
小さなゲーセンである。
接続しているプレイヤーとは、口を利いたことはなくとも…概ねお互い把握できる。
ツンの知る限り、そのサイトの書き込みを行っている者など……絶無。
そして…そのカード名…ハンドル名が、ツンにも簡単に気づける程度のアナグラム。
文字を並び替えると、クーの名前。
彼女はその事実に気づくと、恐るべき冷静さで…そのアカウントをお気に入り登録する。
初めは信じられなかった。信じたくなかった。
翌日、両親が気味悪がるほど穏やかに、そして唐突に日常へ戻ってきた彼女は…注意深くそのプレイヤーと、クーの動向を観察し続けた。
ξ#゚听)ξ「ここ二週間のプレイ状況!
あたしやしぃが知らないところで、ずっとやり続けてるじゃない!
あたし達に隠れて、こそこそと!!」
川; ゚ -゚)「う…」
ξ#゚听)ξ「あんたあの曲を、始めて二週間も経たないうちにクリアしてるじゃない!
それだけじゃない…初めて次の日には、一気にレベル25前後の曲をあらかたクリアしてる…あたしがそこまでなるのに…2年かかったのよ…!!」
疑念を確認に変えたツンはこの日…あえてクーを焚き付けて「夢幻ノ光」EXをプレイさせた。
テストが終わったこと、そして間近に控えた高校生活への期待で少々浮かれていたクーは、ツンの真意を察することなく…その誘いに乗ってしまったのだ。
クーには恐らく、他意はなかったのだろう。
こっそり特訓して、そしてツンやしぃを驚かせてやりたい…そのくらいのつもりだったのかも知れない。
いや、昔からそうだった。
ξ^凵O)ξ[クーすごーい!なんでそんなことできるの!?]
幼いときの、ちょっとした切欠だった。
二人は同じ病院で生まれ、同じ街で姉妹同然に育ち、厳しい両親の躾によって、物心ついた頃から様々な習い事をさせられた。
不幸なことに、彼女の持って生まれた才は、様々な技術を高レベルで習熟させ…それ故に、常に羨望と嫉妬の視線にさらされ続けた。
だが…幼いツンは、自分の「すごさ」を誰よりも認めてくれた。
自分がどれほどの才気を見せても、眉ひとつ動かさなかった両親と違って。
それが、うれしかった。
もっともっと、彼女に出来ないことをして見せて。
もっともっと…ツンに喜んで欲しかった。
ただ、それだけだったのに。
だがいつしか時は流れ、「よくできる自分の存在」で精神的に追い詰められていたツンには、これがクーの裏切り行為に見えてしまっていたのだ。
クー自身、知らないはずではなかった。
自分と彼女が比べられることなど、望んでいなかったのに。
そして、その聡明さで、彼女はコレが「致命的な手違い」であったことに気づいた。
川 ゚ -゚)「…済まないツン…でも、私はたd」
クーはばつが悪そうに視線を逸らす。
だが、そこへ飛んできたのは…ツンの強烈な追い討ちだった。
ξ#゚听)ξ「最低…そうまでして、あんたはあたしのやることなすことを否定して…あたしの存在を、この世界から消したいのね…!」
川; ゚ -゚)「!!!」
(;*゚ー゚)「ちょ…ツン!」
まるで汚らわしいものを見るようなツンの視線が、狼狽えるクーを貫く。
(;*゚ー゚)「いくらなんでも、言い過ぎよ!
クーだって悪気があったわけじゃ」
ξ#゚听)ξ「冗談じゃないわ!
天才様が気まぐれで、これ以上あたしの居場所を奪わないで!」
ツンは制止するしぃの腕を振り払い、外へと飛び出していった。
<ξ゚听)ξがポップンでランカーを目指すようです 第三章>
ξ゚听)ξ「あたしはあいつを許せない…あいつがいるだけであたしの居場所がなくなってしまう。
だから、ひとつでもいい…あいつに出来ないものを、あたしは欲しかった。
それだけだった…それだけだったんだ」
(´・ω・`)「そうか」
ツンの話を聴き終え、ショボンはひとつ息を吐く。
(´・ω・`)「ならツン、この一週間…お前は何を考えてポップンしてた?」
ξ゚听)ξ「え?」
まったく別の角度の質問が飛んできて、ツンは戸惑ってしまった。
(´・ω・`)「最初はなんか…まるで、このゲームに当たり散らしてるようにみえて…初対面の俺達の目の前でも泣き叫んじまうぐらい、辛い気持ちでやってたんだなって、そう思ったよ。
でも…少しずつだけど、俺達と一緒にポップンしはじめてから…お前がポップンしている時の表情は、楽しそうになったように見えたよ。
俺達の、決してタメになってるかどうか解らんアドバイスにも、素直に耳を向けてくれて」
(´・ω・`)「そして一昨日輪生Hをクリアしたとき…あのときの嬉しそうな笑顔は…俺にはお前がもっと、かけがえのないものを手にしたように見えたんだ」
ξ゚听)ξ「ショボンさん…」
(´・ω・`)「誰かに勝ちたい、ということもいいと思う。
でも、これはあくまでゲームなんだ。
ゲームで楽しもうとする心をなくした次点で、俺はダメだと思う…誰かを許せないからゲームする、とか、絶対に間違ってる」
(´・ω・`)「それに…居場所はもうここに出来たんじゃないのか?」
ξ゚听)ξ「え…?」
(´・ω・`)「ツンは…俺やビロード、しぃと一緒にポプをやるの…つまらないか?」
真剣な表情のショボン。
ツンは困惑する。
その脳裏には、その日の朝、クーが言った言葉がリフレインする。
川 ゚ -゚)(最近、楽しいか?)
川 ゚ -゚)(私は、どうしたら…もう一度お前の"友達"に戻ることができるんだ…?)
ξ゚听)ξ「あたし…あたし…は」
自分は何のために、
クーに勝ちたいから?
ショボンやビロード、しぃと一緒に遊ぶのが好きだから?
それとも、本当にこのゲームそのものを心から楽しみたいから?
ξ゚听)ξ「………………」
(´・ω・`)「…悪い、別に困らせるつもりはなかったんだ。
でも、俺は出来れば、誰かを許せないとかそういう気持ちからじゃなくて…折角のゲームなんだから、もっと楽しみながら巧くなって欲しいと思った。
それに、お前はきっと…いや、それはいいか」
無言で俯いたままのツンに、ショボンは意味深な一言を残して筐体につくと…普段と同じようにプレイを始める。
ツンはその様子を無意識のうちに眺めていた。
中難易度の譜面に横分身やバラスピといった強力なオジャマノルマを適用したり、低難易度で素点の限界に挑んだり、いまだ落とせぬ高難易度に挑戦したり…。
ξ゚听)ξ(………………やっぱり、巧い)
ショボンの腕前はやや仙人寄りだが、ほぼ神部屋に常駐できるレベルの実力者だった。
ビロードも時折神部屋に「拉致られる程度」というが、ショボンの腕前は明らかにビロードを凌駕している。
クーとの破局的な出来事以来、他人のプレイなど気にも留めていなかったが…恐らくショボンは、限りなくランカーに近い実力者なのではないかと言うことを…ツンは薄々思い始めていた。
いずれにせよ、ツンからすれば雲の上の人間に等しい。
俗に「神常駐」だの「界王」だのと呼ばれるプレイヤーのプレイングはツンも幾度か見た覚えがある。
彼女にはそれらが何をしているのかわからなかった。
それは彼女がそんなレベルのプレイヤーじゃないから理解できないのだと思っていた。
しかし…目の前のショボンはどうだろう。
(´・ω・`)「フヒヒwwwwwwwwwwwwwやっぱオイ0ムリポwwwwwwwwwwwwwwwwww
スクリーンとレベル入れ替えろアホスwwwwwwwwwwwwwww」
ショボンがどんなプレイングをしているか、ある程度のレベルまできた今でもよく解らない。
うろ覚えだったランカーのプレイと比べても、彼の技量は十分匹敵するものなのだろう。
けれども…それ以上に目の前のこの青年は、心底ポップンを楽しんでいる。
そのことだけは、ツンにも解る。
知り合って行動をともにしていなくても…きっと今の自分ならそのことが理解できるだろう。
ξ゚听)ξ「…!」
そのショボンの姿が、ツンの脳裏で一人の人物と重なる。
彼女も気がついていた。
自分にいろいろな「スゴ技」を見せてきた「友達」のことを。
その「友達」に対して、今自分がショボンに対するのと同じような瞳で見ていたということを。
ξ゚听)ξ(……クー……!)
彼女はどうしてか、胸を締め付けられるような感覚に陥った。
ショボンはそんなツンの胸中を知ってか知らずか、「それから」(スカイ)Hをプレイし始めた。
♪ほんの悪戯に 時は気まぐれに また ふたりを引きあわせたの
<回想が混ざるぞゴルァ!>
川; ゚ -゚)(…ぽっぷんみゅーじっく?なんか難しそうだなぁ…)
ξ^凵O)ξ(うん。まぁ物は試しって言うでしょ。何時もは教えてもらうのはあたしだけど、今度はあたしが教える番だね)
川 ^ -^)(あはは…お手柔らかに頼むよ、ツン)
♪あのときの風と この町のにおい 誰よりも知ってる わたしたちを
川;゚ -゚)(お…おいツン!コレどうするんだ!wなんか落ちてきた!ww)
ξ^凵O)ξ(あははwだから同じ色の同じ位置のボタンを叩くのwこのラインに到達したタイミングでw)
川;゚ -゚)(ちょwwBADとか出たwwwwww)
♪あなたは忘れた? 時間は経ちすぎたけど
けんかの途中よ まだ笑えない でも 涙も出ないの
トゥゥーバーッド…
川; ゚ -゚)(どう見ても初心者です本当に以下略)
ξ^凵O)ξ(まぁ最初は誰だって一緒よ。じゃ、あたしが手本見せてみよっか♪)
川 ^ -^)(そうだな…ひとつ拝見させてもらうとするか)
♪Through the shining days
アルバムの中に 卒業できないままのわたしがいる
グッド!
ξ^凵O)ξ(ざっとこんなもんよ)
川; ゚ -゚)(流石だなー…私も練習すればこのくらいまでなれるかな?)
ξ^凵O)ξ(大丈夫でしょ。あたしだってここまで来るのに時間かかったけど…何時か対戦してみる?)
川 ^ -^)(そうだな…できたらいいな)
<回想終わるぞゴルァ!>
♪あたたかいことばが持つ距離に
それからどうしてたか 聞けなくなる…
ξ゚听)ξ(…クーは…)
曲を聴きながら、ツンはもう一度朝のことを思い出した。
川 ゚ -゚)(私は、どうしたら…もう一度お前の"友達"に戻ることができるんだ…?)
そして、仲違いした日のことを。
川 ゚ -゚)(…済まないツン…でも、私はたd)
あの時クーが何を言おうとしたのか。
クーがどんな思いでいたのか。
自分にとって、クーとは本当はどんな存在だったのか。
川 ゚ -゚)(私はただ、お前に喜んで欲しくて!)
あのとき聞けなかった言葉。
聞いたわけではないのに、鮮明にその姿が瞼をよぎる。
ξ;゚听)ξ(…あたしが…あたしが馬鹿だった…クー!)
ツンはそれを初めて理解した気がしていた。
ξ;゚听)ξ「ごめんショボンさん!
あたし、急用思い出した!」
(;´・ω・`)「え?」
ツンは突如立ち上がり、突然のことに呆気に取られるショボンを残し、店の外へ飛び出していった。
(第三章終わり)