三人が「バーボンハウス」にたどり着く頃には、時計は午後の七時半を指していた。
店長のカワイさんに、副店長(という名目の唯一のバイト)のイバタ君が三人を出迎えた。

( ´w`)「お待ちしてましたよ、御三方」
(´・ω・`)「すいません店長、イバタさん…無理言ってしまって」
[ー。ー]「まぁいいってことさ。
    新進気鋭のランカーと名高い『DJシャキン』の本気プレイを見せてもらえるとなりゃ、多少の無茶はするさ」
(;><)「えちょマジですか!!!ショボンさんがあの!!?
     解禁直後のカーニバルHELL2をBAD1ケタで完走したというあの」
(;´・ω・`)「お、おいおいイバタさんそれは伏せてくれって…ああもう!
      …あまり知られたくなかったんだよ…そのせいで、俺地元では浮き気味だったし」
[ー。ー]「はっ!どうせいずれはバレるこったそんなん。
    逆に言えばもうコレで掛け値なし本気で出来るだろ? 存分にやっちまってくれ、ショボンニキ」


ツンはこのときは知る由はなかったが…ショボンは紛れもなく、この時点で国内最高水準の実力を持つと言われたトップランカーの一人であった。

しかし当時は色々あって指を怪我してしばらくポップンから離れており、「サブカード」を用いてリハビリ中であった。
元々持てはやされたくないし、怪我を知らない他のプレイヤーから「ランカーのくせにナメプしやがって」みたいなことを言われるのも気分の良いものではなかった。

実際に、この頃のショボンは、日本最強クラスのランカーとしての能力を取り戻しつつあった。
しぃやビロード…そして、ツンという「心の底からポップンを楽しむ仲間達」との日常の中で…むしろショボンはこのあと長きに渡り「日本最強のポッパー」として君臨する素地を、あたらめてこの時期に身につけていたのかも知れない。


閑話休題。

筐体の順番待ちに使われる椅子はビロード、しぃのふたりの姿がある。
しかし…珍しいことに店内にはその四人しかいなかった。


<ξ゚听)ξがポップンでランカーを目指すようです 第五章>


ξ゚听)ξ「ええと…これは?」
川 ゚ -゚)「………」

その光景に些か戸惑った様子のふたり。
クーはともかく、ツンはこの店の常連として久しい。
彼女の記憶が確かであれば、いくら最新の格闘ゲームやアクションゲームの類がないこの店であってもそれなりの客の出入りがあるはずなのだが…。

( ´w`)「ショボン君から話は聞いたよ。
     多分今からのポップンは…君らにとって恐らく、特別な意味を持つものになると思う。
     だから…あえて人払いをしたんだ」

元々そんなにお客さんはいなかったけど、と穏やかに微笑むカワイさん。


先にも述べたとおり、この店の常連客は基本的にマナーをきちんと守れる人のいい連中が多い。
加えて店長であるカワイさんの人あたりの良さと…その「伝説」を知る者も少なくはなく、たまにならこのくらいの「無理」が可能となるのである。


(*゚ー゚)「まぁそういうことよ。
   あ、因みにふたりの家にはあたしが連絡入れときましたんで…」
(´・ω・`)「あー、それ説明済み」
(;*゚ー゚)「え」

(;><)「というかショボンさん…正気ですか?」
(´・ω・`)「問われるまでもない」
(;><)「いくらなんだってレベルの差とか…僕にも解ります、ショボンさんが時々手をかばいながらポップンしてたの。
     イバタさんに聞かなくても、きっとショボンさんは僕よりずっと強かったって…少なくとも、マトモにやり合ったら」

ビロードの言葉も無理のないことである。
彼らの対戦での戦歴のほどは、以下の通りだ。

ξ゚听)ξ
キリンヒーロー/トランプ25枚所有(1種類コンプリート)/キャラクター:マッスル増田
(´・ω・`)
フェニックス神(勝率は4割強)/トランプマスター/キャラクター:7ポエット1P
川 ゚ -゚)
グリズリー仙人/トランプ32枚所有(2種類コンプリート)/キャラクター:8ししゃも1P

そして余談だが。

( ><)
グリフォン仙人(勝率3割強)/トランプ48枚所有(2種類コンプリート)/キャラクター:アンナ2P
(*゚ー゚)
スズメアイドル/トランプ3枚所有/キャラクター:9アッシュ1P

しぃのみ初めて間もないので、ひとりだけ相当に差があるようだがまぁこれは仕方ないとして。

初めて間もないというなら異常なほど高い勝率を誇るのがクーだ。
俗に言う「肉食称号」というもので、この称号をつけるには少なくとも総合一位の率は4割5分以上…実際クーの総合一位の率は5割をやや超えている。

後半になってプレイヤーが少なくなっているためか、上位部屋から綺麗にスパイラルしている状態であるとはいえ、それは裏を返せばそれだけクーが実力のあるプレイヤーであることを示している。


そしてショボン。

いくらブランクはあれど、彼の「メインカード」でクリアマークがついていない譜面はわずか2つ。
いずれも最高難度、一方は人間の腕ではクリア不可能というレベルのものだ。
そしてあまつさえだが…レベル41、42でもフルコンがついている譜面すらある。ツンは勿論のこと、クーにとってすら遥か格上のプレイヤーなのだ。


ショボンはビロードの服を引っ張り寄せ、耳元に小声でたしなめた。

(´・ω・`)「アホ、そんなのは選曲次第でどうにでもなるってお前だって解ってるだろう。
     それに…ツンの本当のヤバさを、お前だって知っているはずだ。
     んなことよりも選曲はお前に一任してるんだ、その辺抜かりないんだろうな?」
(;><)「ええまぁ…条件どおりだと思いますけど」

ショボンはビロードから差し出されたメモを引ったくり一瞥する。

(´・ω・`)「おk」

そして満足そうに口の端を釣り上げたショボンは、二枚のメモ紙になにやら書き出すと、なおも立ち尽くしたままのツンとクーにそれぞれ手渡した。

ξ;゚听)ξ川; ゚ -゚)「…?」
(´・ω・`)「真剣勝負とは言ったが、お前たちの選曲だけはこちらで指定させてもらう。
     といっても俺は直接は関与していないがな。
     一応この中では第三者に近い位置にいるビロードに、俺がある条件を提示して選ばせたものだ」

視線をその紙とショボンの顔とで往復させながら、困惑した表情のツン。

ξ;゚听)ξ「こんな曲を…ですか?
      でも…これは」
(´・ω・`)「こんな曲、をだ。
     ただし解っていると思うが…コレは、あくまで勝負だ。
     プレイスタイルは各自のものに任せるし、俺も『対戦そのもの』はそんな得意じゃない。遠慮なくオジャマを使わせてもらう。
     解ったら準備を始めろ、いいな?」
ξ;゚听)ξ「は…はい」
川; ゚ -゚)「…」

ツン同様困惑した表情のまま、無言で頷くクーも自分に宛がわれた筐体の前へつく。
どういう設定をしたのか、このとき曲のプレビューがまったく流れなかった。
つまり…誰がどんな曲を選曲したのか、まったく解らない状態だ。

ショボンはともかく、お互いの選曲を知らないツンとクーも、互いにどんな曲を宛がわれたのか気にはなっている。
どちらにとっても「何故?」と思える曲であったことは互いの表情を見れば明らかだった。

離れ離れになっていても、やはりそのあたり、ふたりは幼馴染であるのだから。


(;><)「正直、戦歴の差は凄いですよ。
     ショボンさんは論外としても…戦歴イコール実力であるなら、ツンちゃんはクーさんに勝てる要素がない。
     ツンちゃんの称号は所謂"和み系"称号…総合1位の率は2割あるかないか」
(;*゚ー゚)「あの称号ってそんな意味が…あれ?じゃあ私はどうなんですか?スズメ?」
( ><)「あ…しぃちゃんのは"空中系"です。
     クーさんほどじゃないけど、総合勝率が結構高いと出ますよ。4割くらいかな」

( ><)「あと総合1位100回以上で、勝率無関係で特殊な称号がつきます。
     僕の"グリフォン"は300回以上、400回以上で"ドラゴン"。
     ショボンさんの"フェニックス"は500回以上です」
(;*^ー^)「さ…300とか500とかって…やり過ぎw」

(※因みに狐野郎の蟹時代最終称号はグリフォン仙人ですが100勝到達直前は和み系のパンダでした)

( ><)「でも…単純な戦歴ばかりで決まらないのが対戦の面白いところです。
     選曲、オジャマ装備のチョイス、それを絡めた譜面理解度と付随する立ち回りと駆け引き…それらを駆使すれば、多少のランクの差をひっくり返すことは可能です。
     ショボンさんもようやく勘を取り戻しつつあるといえ、勝負になるはず」
(;*゚ー゚)「じゃあ…ツンがあの面子に勝つ可能性も…?」
( ><)「十分ありえますよ。
     僕らもツンちゃんのパスポートのデータ持ってますし…実はショボンさんが意外と苦手で、スコア上ツンちゃんがショボンさんの追随を許さない曲が、数曲あるんです。
     実はあの選曲m」

(#´・ω・`)「ビロード…貴様は俺の44口径(マグナム)の餌食になりt」
煤i;><)「アッー!wwwwwwそれはご勘弁wwwwwwwwwwww」
(´・ω・`)「ここではネタバレ厳禁なのでsage進行で願います。おk?」
(;><)「オッスオッス!わかりやした!」
(;*゚ー゚)「?」

(´・ω・`)「ったく…まぁいい、始めようか」

つ彡◯チャリーン
つ彡◯チャリーン
つ彡◯チャリーン

コインが投入され、三人のカードがリーダーに投入される。
そして対戦モード→店内対戦と選択され、三人がそれぞれの選曲と、オジャマ装備を整え、
全ての準備が整ったところで、決定ボタンが押された。


三者の装備はこうだ。

ξ゚听)ξ ふわふわ判定ライン−爆走(CIRCLE)−バラバラスピード
川 ゚ -゚) ダンス−道連れ−COOL or BAD
(´・ω・`) ダンス−ランダム−なし

(;><)「ショボンさんは所謂だんらん装備ですね…クーさんはアナグマ…ツンちゃんは得点阻害系オジャマをメインに持ってきましたね。
     あの曲目なら、相当に面白くなりそうですね」
(*゚ー゚)「アナグマ?」
( ><)「あぁ…アナグマって言うのは、道連れと強力なレベル3オジャマの組み合わせのことですよ。
     一応リフレクションなんてのもあるけど…まああれはランダム取得だし、気にしなくていいですね。
     いろはの時代は対戦でもエキサイトが使えたし、コンディションシステムもなかったからよく使われたんですけどねー」
(*゚ー゚)「へぇー…でもそれなら強いんじゃ?
   店内対戦はコンディション一律みたいだし」
( ><)「コンディションはプレイ中にもどんどん悪くなっていきますから。
     ただクーさんのレベル3…恐らくコンボ賞を奪いに行くつもりなんでしょう。
     彼女のオジャマ耐性は相当なものです。
     相手の自滅と、コンボカットを使い分ける気ですね」

( ><)(まぁそうはいっても…あの選曲だと多分)

ビロードは(内心ショボンが怖かったので)口には出さなかったが…ある程度はどんな結末を迎えるのか予想がついていた。
そういう選曲を仕組んだのは彼だからだ。


※見かた
「曲名」(収録作品・ジャンル名)モード/レベル
(リザルト)
キャラ/素点/コンボ賞/クリア/フィバクリ


Stage1(クー選曲)
「雫」(12いろは・ラメント)H/36

(;*゚ー゚)「ちょ…いきなりこれなんですか!?
      ツンのクリアレベルすれすれじゃないですか」

顔色を変えるしぃ。
しかしビロードは涼しい顔だ。

( ><)「ええ…でも、これはツンちゃんが僕らに出会う前からクリアが安定していた曲でもありますから。
     しかもMAXスコアだけ見たら、彼女のスコアはAU部屋…英雄クラスでは先ず見かけない。
     僕じゃ絶対に無理ですよあんなの」
(;*゚ー゚)「あ」
( ><)「先にも言ったとおり、対戦の真髄はクリアレベルの高さでは勝負が決まらないところなんですよ。
     プレイヤーにとって得意不得意の譜面がある…例えランカーであろうとも、ひとつひとつの曲の習熟度は、高いわけではない。
     まして…ツンちゃんは死なば諸共、自分である程度喰らうことも覚悟でかなり強力なおジャマを入れてきてますしね」


最初の低速地帯、ややショボンが出遅れた格好になる。
しかしコンボをつなぎきったことで盛り返し、中盤に入るとショボンとクーが熾烈なデッドヒートを繰り広げているが、ツンは3位から浮上する気配はない。

ξ;゚听)ξ(落ち着いて…何時ものアドバイスを、よく思い出すの…!)

ツンは冷静に、譜面に集中する。

ラメントHは階段・縦連打・左右に振られる同時押しなどが満遍なく、しかも一部複合して配置される総合難譜面。
ヘタすればレベル40前後をクリアできていても体力切れで乙ることがある、36レベル帯では最高難易度譜面の一角に数えられる譜面である。

しかしいろはの頃にこの曲にはまり込んだツンは、その後わずか一ヶ月で100プレイ前後繰り返したお陰で、この譜面に関してはほぼ例外的にクリアが安定していた譜面…しかも、この譜面の一点突破だけでも対戦で勝つことすらある譜面でもあったのだ。

三人とも、今だオジャマ攻撃を発動する気配はない。
店内対戦のためコンディションが「普通」で一律となっており、曲の中盤でも大したゲージ量が溜まっていない所為もあった。

とはいえ…サビに突入した時点でトップのショボンと3位のツンの差は2kほどしかない。

(´・ω・`)(ここからが勝負どころだ…さぁどう出る!?)
川;゚ -゚)(手を…抜くわけにはいかない…!
     ここで本気で攻めないと…私は…!)

クーのゲージがレベル3に達する。彼女は間髪いれず、振って来たオジャマアイコンを捉えた。
攻撃を受けたショボンのマスが揺れる。

(;´・ω・`)(おいおい…やってくれるぜまったく…)

通称「クルバド」と呼ばれるこのオジャマ攻撃、AC9で初めて搭載された「GOODがBADに」(グドバド)の強力版ともいえるオジャマで、ネット対戦や超チャレンジモードなどに存在するCOOL判定ではない判定を、総てBAD扱いにするという強烈なシロモノである。
レベル20以下の超低難易度譜面ですら高確率でコンボを奪うその破壊力は、レベルが上がれば上がるほど、ゲージをも奪う必殺兵器へと変貌する。

負傷から復帰したハンデを抱えながらも、それでも大きくゲージを落とすことなく取り捌いていくショボン。
さしもの彼もグレ判定を避けきれず、素点ではやや水をあけられてしまい、クーがこのまま突っ切るのかと思われた、その瞬間だった。

ξ゚听)ξ(今だ…喰らえっ!)
川;゚ -゚)「!」

(;*゚ー゚)「あ…クーの譜面の流れが」

クーのオジャマゲージが回復しきらないのをを見計らい、なおかつ最期の密集に突入する直前でのバラバラスピード。
ポップ君1つ1つにハイスピードが個別に設定されてしまうというこの強烈なレベル3オジャマは、競争相手を出し抜いたことで少なからず油断のあったクーのグルーヴゲージを容赦なく奪い去った。
そして…このおジャマはさしものクーとて無傷で裁くことは不可能。

( ><)「流石にやり尽くしているだけある…これは効いたはず…!」

(´・ω・`)(なるほど、やはりそこで行くよなw)
川;゚ -゚)(そんな…)

一瞬放心状態になりながらもなんとかゲージを半分残すことが出来たクーだったが、そのあと必死に追いすがるもツンを止めきることは出来なかった。
悪あがきのダンスも終盤、わずかにツンのゲージを奪うに留まったのみ…。

ξ゚听)ξ 92k/クリア・フィーバー 2位
川 ゚ -゚) 88k/コンボ賞・クリア 3位
(´・ω・`) 91k/クリア・フィーバー 1位

ξ;゚听)ξ(勝てた…?)

リザルトではわずかな差だった。
しかしわずかな差ではあったが、ツンは確かにクーを制していたのだ。

(;´・ω・`)(…点差は大したことはない…しかし…)

苦笑するショボン。

(´・ω・`)(まいったね…ブランク込みでもこの有様…ビロードのヤツ、思った以上にいい仕事してくれやがったな)

彼はあえて最初は仕掛けず、様子見に徹してはいたのだが…ボーナス抜きで考えれば、明らかにツンに出し抜かれた格好になった。
そういう曲を選ばせた以上、こういう結果になることは当人も承知の上だったはずだが。

(´・ω・`)(いいじゃねえか…今の俺でも十分戦える!
      俺も楽しませてもらうぜ!)

凍り付いていた時間が動き出す感覚。
ショボンは固まっていたギアが、徐々に動き出すのを感じて、目的を忘れそうになっていた。


川;゚ -゚)(…私は…)

自信がないわけではなかった。
バラスピであれば受け慣れているし、冷静に対処していればあの局面でも被害を最小限に止められたはずだ。
そのことが彼女を困惑させていた。

ξ;゚听)ξ(…先ずは一曲目、ここからが本番だわ…!
      …次は私の選曲…でも、なんであんなものを…?)

ツンはなおもその意味を図りかねていた。
その意味を彼女が理解するまで…ランカーであるショボンが恐れるその真の力が明らかになるまで、あと数分。


(第五章終わり)