現在の総合戦績は…プレイしている三人はもとより、ギャラリーも計算に頼る以外に知る術はなかったが、
おおよそ、各種ボーナス(総合リザルトのときのみ加算されるステージトップ賞2kを含む)を含めるとこのような感じになる。
ξ゚听)ξ 210k 1位
(´・ω・`) 206k 2位
川 ゚ -゚) 201k 3位
単純計算すれば、現状ツンはショボンに4k差、クーとの差にいたっては9kでトップという有様だった。
<ξ゚听)ξがポップンでランカーを目指すようです 第七章>
(;><)(よもや…こんなことになるなんてね)
1、2曲目の仕掛け人たるビロードですらも…この結果は予想外もいいところだった。
とはいえ9kという差は、選曲次第だが1ステージでいくらでも逆転の目がある僅かな差である。
クーがクルバドとダンスを駆使してコンボ賞+トップ賞を取り、素のスコアでツンを6k上回ればそれだけで十分埋ってしまう。
鬼気迫る笑みを浮かべるショボンに対し、クーも何か鬼気迫る表情をしている。
川 ゚ -゚)「…」
その表情は、完全に「目が覚めた」というところかも知れない。
彼女はツンに対する引け目から「本気の勝負」といいながら何処か全力を出すのを躊躇していた風がある。
彼女にとってもあの日の事件は、相当なトラウマになっていた。
もしかしたら、この件をきっかけに以前のような関係に戻れると思っていたのだろう。
だが…彼女自身も気づいていなかったろうが…クーもまたツンと負けず劣らずの「負けず嫌い」なのである。
ξ;゚−゚)ξ「…」
ツンにも、その表情は見覚えがあった。
小学校の時、それまではツンと同等の成績を出していたクー。
体育の跳び箱でツンが8段飛んだのに対し、彼女が7段しか飛べなかったそのとき…すなわちツンが最初に…かつこれまで唯一クーに勝った時の、その表情だった。
三者の思惑を孕み…ショボンが選曲した最後の曲目が、画面に表示された。
ξ;゚听)ξ「…!!11」
川 ゚ -゚)「…!」
一瞬顔を引き攣らせるクーと明らかな動揺を見せるツン。
(;*゚ー゚)「…そんな…なんでこんな…!」
その正体を知って顔面蒼白のしぃ。
(;><)(ショボンさん…こんな恐ろしい選曲をッ!)
ビロードにしてみれば…恐らくは外れて欲しかった嫌な予感。
Final Stage(ショボン選曲)
「夢幻ノ光」(ACいろは・ハイパージャポネスク)EX/38
ξ;゚−゚)ξ「…」
川 ゚ -゚)「…」
(;*゚ー゚)「…」
この三人のそれまでの日々を打ち壊した…悪夢の源となった楽曲。
譜面そのものはレベル38では標準レベルといえる。
全体的にノートの密度が濃く、メロディラインに合わせた、ややリズムを外して降ってくる同時押しを絡めた配置。
特徴的なのはラスト…ほぼ右手だけでの処理を要求される右青+右黄のトリルと、左側に散在する同時押しの組み合わせから、左→右へと流されるような同時押しが間髪入れず入るという、典型的なラス殺し譜面。
スコアは出やすいが、これを安定してフルゲージクリアできるものはそういない。
レベル設定上ヒーロー部屋で見ることはないが、将軍部屋に行ける程度のプレイヤー…あるいは、神部屋へ拉致られるぐらいの技量があっても、だ。
当然ヒーロー部屋適正であれば、ラストだけで普通に死ねる。ツンもその例に漏れない。
これまでの二週間余り…ツンはクリアできないながらも、レベル38以上の譜面にも手を出し始めていた。
しかし…この曲だけはプレイを避けている。
ビロードはツンとこの曲にまつわる話を全く聞いていなかったが…それでも、この曲に何かしら嫌な思い出があるだろうことを、薄々気づいていた。
この場の二人の様子を見れば、クーとツンの間に何かしらの因縁があるだろうことも。
…この譜面でのみ必ず「捨てる」ことで有名なプレイヤーがいて…おそらくそれがクーであることも。
(`・ω・´)「過去に囚われるな」
ξ;゚听)ξ川 ゚ -゚)「…!」
(`・ω・´)「そしてツン…お前がこれまでの成果を出すべきは…むしろこの曲であるべきだ。
放棄するならそれでいい。
お前の持つ『異質』の真価…トップランカーにもなり得る未来を見れなくなるのは、残念な気がするが…それだけのことだ」
ξ;゚−゚)ξ「…」
彼女も、悟るところはあったのかもしれない。
ξ ゚−゚)ξ「…」
画面を向いたまま、ツンは真隣のショボンに向けて、親指を下にして突き出した。
ξ ゚听)ξ「…やってやろうじゃないの…!
あなたがランカーだろうが何だろうが関係ない。
このまま押し切ってやる、クー諸共にね!!」
その指で、首を掻き切るような仕草をした。
彼女の表情に、煩悶はもうない。
川 ゚ -゚)(…そうだ…ここで逃げてしまったら、私は何のために…!)
それを受けてクーの決心も固まった。
川 ゚ -゚)(それに、私は…)
川 ゚ -゚)(負けたくない…絶対に!)
ふたりの視線が、この対戦が始まって初めて交錯した。
ξ ゚−゚)ξ(クー)
ξ ゚−゚)ξ(解ってる。
最初に言ったのはあたしのほうだ。
クーは『あたしと同じ舞台で戦う』という目的があったから、こうなった)
ξ ゚−゚)ξ(これは、むしろあたしが望んだ戦いなんだ。
やってやるわ…ショボンさんの言ったあたしの『異質』とやらが本当に通じるなら!)
そしてツンもオプションを決定し、決定のボタンを押す。
ξ ゚−゚)ξ(今ここで超えてやる、あたしの壁を!!!)
Are You Ready?
この対戦の勝者を決める最終戦の幕が切って落とされた。
(*゚ー゚)「ねぇビロードさん」
( ><)「どうしました?」
(*゚ー゚)「結局…さっきの言葉の意味ってどういうことなんですか?
やっぱりなんかピンとこないです。
でも、ツンが出来ることは…クーばかりでなく、他の多くの人。
らんかー?のショボンさんですら出来ないっていうことは解ったんですけど」
( ><)「そこまで理解できているなら難しい話じゃないです。
所謂クールパフェ…クール判定が存在する状況で総てのノートをクールで取れるなんて、俗に言う『界王』…つまりインターネットランキングの上位ランカーの中でも、一握りの人間しか出来ないことなんです。
挙句にツンちゃんの恐ろしいところは…恐らくですけど、彼女がしっかり聞き込んだ曲の譜面であれば、同じようにして高いスコア力を叩き出せることです。
少なくともレベル30、もしかしたら35ぐらいでも…僕がスコアで彼女に勝てる曲は、ほとんど残ってないんじゃないかな…はは」
(*゚ー゚)「…え…じゃあ、ツンの…本当の実力って」
( ><)「低難易度…もしかしたら一部高難易度帯の譜面でも、『界王』クラスのランカーに匹敵するスコア力の持ち主です。
こんな点数をたたき出していれば、IRでもノーマルマスターなら界王クラスと同じところに名を連ねているはずですが…聞けば彼女、エキスパートコースをプレイしたことがないそうですね。
つまり『全国で』『誰が』『どのくらいのスコアを出せるか』…その『基準』を知らなかった。
それを理解した上で練習すれば、彼女は英雄部屋で収まる技量ではない…僕たちはひょっとすると、とんでもない怪物を目覚めさせてしまったかも知れません…」
( ><)「あの日…彼女がメルトNでクールパフェ叩き出して見せたとき…正直、間違えて普通のチャレンジ選んでたのかと思いましたよ。
そしてよくよく見れば、彼女のクリアデータにはちらほらとおかしなスコアがいくつもある。
とてもじゃないけど、同じ人間がプレイしているカードのデータとは思えませんでした。
僕らがこのことに気づかなければ…誰も彼女の『才能』に、気がつかないで終わったんじゃないですかね」
そう。
それこそがツンの『天賦の才』だった。
のちにはっきりすることであるが…彼女は生まれながら『絶対音感』と、類い希な『位置把握能力』の持ち主であった。
そのため逆に音楽の授業では彼女「だけ」が何故かタイミングがズレる、アカペラでは音域がズレるなどと言うことがあったが…後年、彼女を担当した音楽教諭はその異常な『天賦』を思い返し、ひょっとするととんでもない逸材を目の前にしていたのでは…と、思い返したとのことだという。
ただ、この時点でそれと気づくものがいなかった。
クラスメートも、必ず音楽の時は彼女だけ何かしらズレるので、音痴だという評も立ったが…正しいのは、彼女の方だったのだ。
その『天賦』は、彼女がこの「ポップンミュージック」というゲームに触れてその真価を発揮した。
降ってくるオブジェがその部分を担当することで、BGMから欠落している音と、その本来の配置…彼女にはその総てが解ってしまう。
そして、一度見たものはなかなか忘れないという高い記憶力も後押しし、先のサニーNのような全譜面暗記という芸当も朝飯前にこなしてしまう。
ただ、何しろ譜面まで含めて総数1000譜面を超えるポップンの収録譜面。
ソフトがぶっ飛んでいても、ハード…すなわち彼女の肉体は平準的な女子高生。それゆえ高難易度譜面の高レベルの処理にまで到達できずにいた。
ショボンやビロードも、彼女のそれがどういう能力によるものかまでは解っていなかっただろうが…兎に角、彼女が特にN譜面は全般的に、加えて中難易度帯の一部譜面に対する処理能力に関して途轍もないレベルにあることだけは、理解していたのだ。
こんなことがなければ、ツンはそのことに一生気づかなかったかも知れない。
自分にそれだけの能力があるのだということを…彼女は実体験を通じ、ようやく自覚しようとしていた。
そこからは説明のしようがないほど、壮絶な勝負であった。
これまでショボンやビロードの指導により得た引き出しを総て空け切り、そして自分の能力を自覚したことで、二週間前とは別人のような手の動きでコンボとクール判定を稼ぎ出すツン。
総てのしがらみを振り払い、仙人部屋に彗星のごとく現れ、いまだ猛威を振るい続けるその腕を存分に振るうクー。
そして…腕の負傷が癒えながら、どこかでブレーキが掛かっていた腕のギアを…何時か自分の立っていた場所に上り詰めるだろう才能あるプレイヤーを相手にしたことで、ついに最大限解放し…その真なるところを見せ付けるショボン。
中盤の密集でクーの放ったクルバドを、ツンはその能力をフル稼働させてBad一ケタ台に切り抜ければ、同じ局面で放たれたツンのバラスピをショボンは完全に捌ききってみせる。
そして、ランダムが変化した強制LOW-SPEED…HSオプションを無効化し、なおかつノート落下速度を1/2にするという強力なキラーオジャマを、クーは普段よりもずっと研ぎ澄まされた驚異的な集中力で凌ぎきっていく。
この2分間で、ツンはショボンやビロードから教わったテクニックを、クーはツンの持つ恐るべき才能への対応能力をそれぞれが己のものとし…ショボンは、最強のランカーとしての自分に完全に立ち返ろうとしていた。
そんな三人その実力は完全に…かつ、恐ろしく高い水準で拮抗していた。
たった2分弱の時間が、無限にも思えた。
(;*゚ー゚)(…すごい…すごいよみんな…!)
(;><)(…なんて…戦いだ)
しぃもビロードも、三人が展開する戦いに完全に心を奪われていた。
( ´w`)「ふふ…これが仙人・英雄クラス同士の戦いといって一体誰が信じる?
ショボン君はともかくとしても…完全に、同じ力量を持つトップランカーの戦いだ」
[ー。ー]「それ以上に…アツい戦いだぜ。
今日日、こんなアツい戦いには滅多にお目にかかれるもんじゃねぇ…先月どっかのDQNランカーが仕出かした狩り事件以降、こんな熱い戦いのできる連中は、ほとんどがこのゲームを見捨てて去っちまったってのによ。
シャキン…いや、ショボンもそうだと思ってた…でも、そうじゃねえんだな…!」
その戦いを、熱いまなざしで見守る店長と店員。
全員がこの戦いに立ち会えたその幸運をかみ締めていた。
その最終局面。
(`・ω・´)(ラスト…逃さずに行かせてもらうぜえ!)
三者の撃てるオジャマは…いずれもレベル1、一発分。
川# ゚д゚)(負けない…負けて…!)
三人の撃ったオジャマは見事にクロスカウンターの状態になる。
そしてツンは…。
ξ# ゚听)ξ(たまるもんですかぁぁぁ!)
最後のトリル。
決して出来ないだろうと心の中で決め付けていたそれを…完全に捌ききっていた。
川 ゚ -゚) 95k/コンボ賞・クリア・フィーバー 1位
(´・ω・`) 94k/クリア・フィーバー 2位
ξ゚听)ξ 93k/クリア・フィーバー 3位
(*゚ー゚)「…ツン!」
(;><)「…クリアだ!」
そして、この結果を受けた総合戦績が表示される。
1位 311.4k
2位 311.2k
3位 310.9k
1位と3位の差、僅か500点。
その僅かの差で。
ξ;゚听)ξ「かっ……た?」
その戦いを制したのは…ツンだった。
川; ゚д゚)「………」
2位は肩で荒く息を吐くクー。
そして3位のこの男。
(`・ω・´)「………」
(´・ω・`)「…ふ」
その表情が、普段のそれに戻る。
(´・ω・`)「あーちくしょー!!
もうちょっとはやくギア入ってくれりゃーなああーもー!!」
これ見よがしに悔しがってみせるショボン。
とはいえ負けた彼も…負け惜しみではなく、満足のいく勝負だったと思った。
(´・ω・`)「ありがとよツン、クー。
俺自身怪我もあったけど、きっと心のどこかでは、ポップンから離れ掛かっていたのかも知れない。
帰ってきてよかった…強い子に会えて」
ξ ゚听)ξ「…ショボンさん」
その肩に手を置かれ、戸惑うツンだったが…青年の穏やかな笑顔につられるように彼女も笑い返す。
そしてツンはもう一方の主役に…今回の事件の発端となったクーに目を向ける。
川 ゚ -゚)「…」
息を整えたクーは無言だった。
その表情が、不安そうな瞳で覗き込むツンの前で、唐突に変わった。
川 ゚ー゚)「…くやしいな」
ξ;゚听)ξ「…え?」
少女が放った意外な言葉にツンは一瞬、呆気に取られてしまった。
川 ゚ー゚)「私は…この話が出たときも…どうしたいのか本当はよく解らなかった。
でも、本当は最初の時も…やっぱりツンには負けたくないと思ったのかも知れない」
普段滅多に見せない、はにかんだ笑顔のクー。
川 ゚ー゚)「生まれて初めて、他の人が…ツンのことが、すごいって思った。
でも、それ以上に負けたくない。
ツンにそんなすごい才能があって、それがもっとすごくなるかも知れないなんて。
ツンは昔から…自分だけそんなことを思ってたなんて、ずるいよ」
ξ゚听)ξ「クー」
川 ゚ー゚)「…だから、次は絶対に勝つ。
もう、絶対に私の知らないところで、勝手に強くなんてならせない。
嫌だって言っても付きまとってやるから…!」
ξ゚ー゚)ξ「…」
そのてらいのない言葉は、ふたりの間にあった溝を埋めきり…
ξ゚ー゚)ξ「…上等だわ!
あんたになんか絶対に追いつかせなんて、させてやんないから!」
ツンは満面の笑顔で「友達」に、中指を立てた拳を突き出した。
(*゚ー゚)「そういうの、ちょっとずるいな」
( ><)「同感ですね」
今までその様子を蚊帳の外で眺めていたしぃとビロードが不満ありありの表情で割り込んできた。
(*゚ー゚)「あたしも本気でやってみたくなっちゃったよ。
ツンもクーも自分らの世界入り過ぎ。ついでにショボンさんも。
あたし達置いてきぼりじゃない」
( ><)「僕にはそんな取り立てた事情も何もないですけどさー、でもなんかここで尻尾巻いて逃げるのもなんかやですしね。
ハードルは高ければ高いほど、萌えるってもんです!」
(´・ω・`)「ちょwwwwwwビロードおまwwwwwwww字違wwwwwwっうぇwwwww」
そこには、また新たな絆が生まれようとしていた。
( ´w`)「雨降って地固まる、かな?」
[ー。ー]「常連が増えてくれるってことは確実にいいことなんだろーがな。
んまーしばらくはショボンのことは他には内緒だな、目端の利く奴にはバレてっかもだが、いきなり本気スコアをバンバン出してくれるんじゃねーぜ?
おまいらは問題ねーと思うが、ランカークラスが店に3人もいたとなりゃそういうクソ共が集まってこねーとも限らねえしな、忙しくなるぜこれから」
カワイさんの一言に、イバタ君は嬉しそうにも、憤然と言ったようにも言い放つ。。
時間にして約10分足らずのその戦いを…知るのはそこに居合わせた7名のみ。
大きなイベントで行われたものであったら確実に「伝説」となっただろうその一戦を経て。
その主役となった少女…ツンの中で確実に何かが変わりつつあった。
(第七章終わり)