「…ーったくよお。
全く意味がわかんねえったらねえぜ。
トアのアホやエロサイドテールまではまだいいぜ、なんでテスト終わってからずっと姿を見せてないつぐみにまで私ぁ抜かれてんだ?
正直納得できねえどころじゃねえぜ」
実に三カ月ぶりになるレジィナの料理を片っ端から貪りながら、魔理沙はなおも文句を垂れ続けているのを、隣に座った美結が宥め、対面に座った透子がうんざりしたように頬杖をつきながら言葉を返す。
「あんたもしつこいな。
つぐみぁ元の学校でほぼ毎回主席独走してるぐれえの才媛なんだよ。
かごめさんだって、学生の頃は毎日みたいにサナさんと酒盛りしては翌日の授業を寝て過ごしてたくせに、高校最後の期末以外学年一位を恣にしてたらしいからな。親子揃ってどこぞの翠里や鈴花なんざとはどっか次元が違うんだからよ」
「そういうのってありなのかよ?
それに私が聞いた話じゃ、基本的に学生って生き物はすべからく勉強嫌いなんだろ」
「誰から聞いたデマだか知らんが、いやまあ、おおむね間違っちゃいねえけどさ、何処の業界にも例外っているんだよ。
そもそも、そういう意味ではあんただって十分変わり者だよ。
早苗から聞いてんぞ、お前予鈴が鳴ると誰よりも早く机の上に教科書とノート一式並べて、目ェ輝かせて授業受けてやがるって。あたいに言わせりゃそんな奴の方が正直異常だよ」
「好きこそモノのジョーズで油断した海水浴客はみんな喰われるっていうだろが」
「言わねえよ何処のブロントさん理論だそりゃ」
口を尖らせなおも謎理論で喰い下がる魔理沙に、透子もうんざりしたように吐き捨て、一見ゲテモノにしか見えないサソリの鋏から器用に身を取り出しつつ、緑色のパスタごと巻きとっては口に運ぶ。
なおも何かを言おうとする魔理沙の機先を制し、それまで成り行きを見守っていた美結が話題を変えようと口をはさんでくる。
「才媛といえば、そういえばですけど、幻想郷の異変の後に来た転校生の子。
今回、見事にトップをもぎ取っていくかと思ってたんですけど」
あー、と、心当たりがあると見えて魔理沙が何処か気の抜けた相槌を打つ。
「そうそう、居たなそんな奴。
外の世界っていうか、元々人界に居たってんだろ?
人界の人間で、まして私達とそんな年も変わらねえただの女子高生が、あわや幻想郷を根底からひっくり返すかもしれない異変の元凶だったなんてな。華扇とマミゾウがいち早く動いたおかげで大事には至らなかったとは言うが…」
「幻想郷の妖怪だって、ほとんど生きた都市伝説みたいなもんだろ?
それが胡乱なオカルト如きでどうにかなっちまうなんて方が、あたいとしては意外なところも多いが」
「それがそうでもないらしいんだ。
師匠(魅魔)いわく、色々あって漸く動くに支障がなくなったとはいえ、今の紫の力で大規模な結界を安定して維持するのはかなり難しいらしいんだ。
挙句、今回の異変は結界そのものを、それこそ一年以上前から少しずつ書きかえられてたことで大事になりかけたらしい」
「一年前…ってと、あたい達が倉野川でドンパチやってた頃か」
「だな。
私も詳しくは知らんが、どうも月の方もからんでたらしいぜ。
こっちも何がどうなったんだか、何時の間にかかごめのところには月人の執政とかいうのが居座って、そんで全部丸く収まったとかなんとか。
私も一応異変解決者でいたつもりだが、特にここ数年は私が全く絡んでないのも多いしな。ったく自分の存在意義を疑っちまうぜ」
机にのっそりと身を預け、魔理沙はまた口を尖らせる。
まあそういうな、と、透子は魔理沙をなだめるように前置きし…だが、僅かに険しい表情で言葉を続ける。
「東深見って言えばな、あたいのゼミにも出身者がいてな。
元々の行政区分では、丁度倉野川の隣町になるんだが…魔理沙に言っても通じんだろうが、東京六大学や京大立命館といったトップクラスの大学に行く奴だって、毎年何人もいるほどの超進学校だ。
そこを首席で入学したってだけでも正直耳を疑うレベルなんだが…」
「ああ…例の、菫子さんですね」
宇佐美菫子。
ほんのひと月ほど前、幻想郷に「都市伝説」を持ちこんで結界を破壊しようとした異変の首謀者とされる少女。
彼女が撒いた噂話により、同期して出現した力ある魔石「オカルトストーン」を集め、願いをかなえるべく多くの妖怪達が相争うようになったのは…丁度ゴールデンウィークの頃。
魔理沙がレミリア達と共に赤竜を討ち、そして、かごめとの死闘の果てに全治半月の大怪我を負った魔理沙が、倉野川の病院で暮らしているその期間に起きた異変であった。
なんとか穏便に異変を収めようとする白蓮・神子の思惑もどこ吹く風で命蓮寺と神霊廟の全面対決の様相すら呈し、泥沼の戦いとなりかけたなかで、マミゾウと華扇が双方の全面衝突を回避すべく立ち回り、そしてかごめが月の執政である稀神サグメをこの戦いに介入させたことで終結した。
そして、異変の中心にいた菫子を説得し、東深見高校から日向美の招待生として招いた…それが事の顛末であるが。
「正直、何がどうなってんのか私にもよくわかんねえんだぜ。
霊夢もアリスもわけがわからん、の一点張りでな」
「ただ、ひとつ確かに言えることは…その菫子サンが、どういうわけかこの樹海に連れて来られているという、その事実だけだ。
今はかごめさんをはじめとして、ほとんどの人が別件あって手を引いてる状態だ。
……そういう状態でスタンドプレーに走られても、あたい達にはどうしてみようもねえんだけどな。翠里の奴もだが」
「狐尾幻想樹海紀行 緋翼の小皇女」
第五十五夜 翠里と菫子
~古跡の樹海~
「なによ…どいつもこいつも人を馬鹿にして…!」
多くの冒険者に踏破され、今や完全に「新入り冒険者の訓練場」となった感のある浅層の樹海を、憤然と歩くマントの少女。
クセのある栗色髪を無造作に襟もとで両サイドの二つに括り、然程お洒落とも言えない赤縁の眼鏡をかけたその少女にとっても、この樹海は退屈に過ぎたといっていい。
その、この世界の冒険者とは一見解らぬ、チェックのジャンパースカート風の学生服めいた衣装で身に包む姿からは一見わかりづらいが、術式のような紋様を刺繍されたそのマントから伺うに、恐らくは
先に透子達の触れた「幻想郷オカルト異変」の首謀者と目される少女だ。
彼女は生まれつき高い魔術の素養を持ち、なおかつ明晰な頭脳と、そして特殊な術式を組まずに魔力による様々な現象を起こす能力を有していた。
魔法の失われつつあるという「人界」においては、所謂「超能力」とされる能力を、生まれつき持っていたのだ。
彼女の持つ「超能力」は、物を念じただけで自在に動かす「
彼女はその明晰な頭脳と、人界では失われつつあるその特殊能力故に、自分は特別な、優れた存在であると思い込んでいた。
それ故に他人との関わりを持ちたがらず、常に孤高を貫き…と言えば聞こえは良いが、自ら孤独を求めた。
周囲を取り巻く人間など、交わる価値もない存在と切り捨てた。少なくとも本人はそう思っていた。
しかし…その特異性ゆえに、彼女は交わる相手を「人間以上」に求めるようになる。
幻想郷の存在が明らかになった頃、周囲の「愚物」共がそれを御伽噺の延長戦と一蹴する一方で、彼女はそこに住まう強大な真祖・貴種といったレベルの大妖怪が再びこの世界に蔓延るようになれば、そこに「自分という特別な人間」の居場所が見いだせるのではないか、と考えるようになる。
既に第一志望校である超進学校・東深見高校を、親から強要された嫌々でとはいえ推薦で合格を内定させ、中学卒業までのまるまる一年を自由に使えるようになった菫子は、各地の力ある史跡を巡り、そこで手にした力のある石を自らの魔力で加工した「オカルトボール」をいくつも作成し、偶然見つけた「幻想郷へ通じるスキマ」から幻想郷へばらまいた。
そして、彼女が持つもう一つの特異な能力…「影法師」を使い、幻想郷の妖怪達に「オカルトボールを七つ集めた者には、願いがかなう」というウワサを撒いたのだ。
折しも、幻想界と幻想郷の融合が八割ほど終わり、なおかつ「輝針城反乱」以後の、八雲紫の力が不安定になって動けなかった時期である。
まして、かごめの来訪以降、妖精や小妖怪に至るまで、これまで抑圧されていた者達が向上心をむき出しにして闊歩する現在の幻想郷で、彼らの脳裏に「自重」の文字はなかった。オカルトボールにそれぞれ封印された「都市伝説」を己の力とし、格上の妖怪すら倒すような者も現れ出した。
菫子は「影法師」の能力と、生まれ持った強大な魔力を武器にそんな小妖怪達を狩り始める一方、勢力の大きな命蓮寺や神霊廟の者達をこの騒ぎに巻き込むことに成功する。彼女らの力で、オカルトボールに仕込まれた術式を完成させ、幻想郷を人界へ接続するという彼女の野望があと一歩で成就するところで…彼女は、その裏で進行していた月の反政府組織の目論見をも叩き潰したかごめ、マミゾウ、華扇の三人により、その計画を頓挫させられたのだ。
菫子は、異変の罪科で本来なら命を取られる代わりに、かごめの言いつけた「今後も休みの時などは幻想郷に出入りしていい代わりに、日向美に転校して普段は真面目に学生をする」という条件を渋々飲み…そして現在、心中の憤懣と共に樹海にいた。
「そんなに自分の力を示したいのであれば、うってつけの場所がある」…そう、かごめに焚きつけられる形で、だ。
「何が…ただし参加料はお前の命か、それ以上に大切なものだ…よ。
こんな温い世界に来させられるぐらいなら、まだ幻想郷の妖怪どもにおっかけ回される方が億倍マシだわ」
彼女はなおも、不満そうに一人ごちる。
彼女は見た目こそ魔術師…というよりも、贔屓目に見て奇術師の類にしか見えないが、既にアルケミストとしては樹海探索の先輩とも言える透子や、あるいは別世界軸のハイ・ラガードで金竜に挑む氷海に匹敵するほどの卓越した技術を持っており、樹海に来て三日も経つ頃には、古跡樹海の主であるキマイラとも単独で互角以上に戦えるほどの冒険者となっていた。
その才覚故に、樹海探索での先駆者である透子達を完全に軽んじていた。
「見てらっしゃい。
あの時は私が単に油断してただけだって…思い知らせてやるわ」
それ故に…彼女は、これから自分に何が起ころうとしているのかなど、想像だにしなかったであろう。
彼女は、依頼書にあった通りの場所へ続く扉へ、ためらいもなく手をかける。
不幸にも、というべきであろうか。
この扉の先から…このフロアの全ての生物が身を隠してしまうほどの、途轍もない重圧が伝わってきている事も、感じ取れぬまま。
…
…
静葉「ドーモ、シチョウシャ=サン。秋静葉です」
レティ「ドーモ、静葉=サン。レティ=ホワイトロックです。
…いやちょっと視聴者はおかしくないこの場合?」
静葉「細かいことはいいのよ(キリッ
さて、ストーリー編も終わってここから本線に戻るのかしらね。
相変わらず、裏ではまたなんか色々とわけのわからないことになってる系の気配なんだけど、このへんの理解度はなんとなくでいいわ。ただとりあえず、宇佐美の菫子てゃんが新たにメンバーに加わったという事だけ理解してくれれば」
レティ「狐野郎はなんだかんだで深秘録やったみたいだからね。何故か心綺楼をすっ飛ばして」
静葉「心綺楼どころか輝針城も実はすっ飛ばしているんだけどね(真顔
まあ例によって色々背景は作ってるわよ、勿論深秘録も普通に魔理沙は異変にメインで絡んでいるし?」
レティ「はいはい脳内補完脳内補完。
というか、この子がてゐ枠に入るってことは、のちのちマグスへ転職ってことになるんでしょ。アルケミからマグスへの転職って実際どうなん」
静葉「実は巫剣はSTRとTEC両方が威力に反映されるらしいんだけど、まあアルケミはSTR低すぎるから御察しという。
通常の霊攻大斬の威力は今作のTEC最低職ダクハンと変わらないとは思うけど…まあ、ダクハンには伝家の宝刀トランスがありますし」
レティ「まあそこは。
一応、杖から撃てば巫剣マスタリーが乗るけど、微々たるものですものね。
つまるところメインは潤沢なTPと高いTEC・LUCを活かした巫術中心のマグス、という解釈でいいのかしら」
静葉「概ねそう思ってもらえれば。
一応、リンクオーダーはてゐより火力出せるから、余裕があったら巫剣マスタリーも振って霊攻・霊防衰斬を使っていければっていう」
レティ「デバフ撒く目的なら後列でもさほど困らないしね。
で、今回は」
静葉「まずはVTRの続きからどうぞ(キリッ」
…
…
♪BGM 「情景 赤と黒」♪
菫子は、その扉を開いた先に重いもがけぬ光景を目にして、息をのんだ。
まず目に飛び込んできたのは、無残に首を圧し折られ、血反吐を吐きながら息絶えている恐竜の魔物の死骸。
それだけでは、さして珍しいものではない…この樹海に住む「駆け寄る襲撃者」相手なら、菫子とて後れを取る相手ではない…このフロアに散在する、古代に誰かがこの魔物を相手するために作ったと思われる落とし穴などを使わなくとも、彼女は十分この魔物を圧倒することができる。
問題は、その数。
夥しいほどの襲撃者が、恐らくは一撃で…その無残な屍を晒しているという事実。
「…ふむ、冒険者か。
だが、私の待ち人とは違うようではあるな」
僅かに物憂げなトーンで呟く、その声の主が発する途轍もない重圧。
菫子はその時ようやく、その恐るべき者の存在を認知し、戦慄した。
「なっ…何よ、あんた。随分態度でかいわね。
というか何なのよあんた…喋る鶏とは聞いてたけど、そんな恐竜イジメしたってこの樹海じゃ…」
「彼らには言葉は通じん。
それに、挑まれたとあらば全力で応対することこそ、武に生きる者の本懐…私は、そう認識している。
…冒険者よ、私のウワサを聞いてここへ足を踏み入れたのであれば…君も、私に挑むべく訪れた者か」
静かな、それでいて僅かに値踏みするような鋭い眼光が、菫子を射抜く。
菫子は真っ青な顔で、短い悲鳴を漏らして後ずさる…が。
「に、鶏の分際で…あんたもこの私を馬鹿にするっての!?
上等だわ! あんたなんかに負ける私じゃない!!」
残念ながら…というべきなのだろうが、彼女のそのちっぽけな自尊心が、僅かながらその恐怖を上回った。
腕組みをするその鳥の魔物も、嘆息するが…止めても無駄と悟ったのか、悠然とした動作で構える。
「今や、我が血の滾りを受け止めてくれる冒険者も少なくなった。
君は、私の拳に応えられる者か否か…試させてもらうぞ!」
なおも悪態を吐こうとする菫子の前に、一足飛びでその魔物が間合いを詰めた次の瞬間。
♪BGM 「戦場 戦慄」♪
彼女は背にすさまじい衝撃を覚え、息が止まった。
一拍置いて、空気を切り裂くような爆音が耳を打ち、そして自分がはるか後方にある扉…先に自分が開けたそれに叩きつけられていたことを理解した。
地面に突っ伏し、激痛と共に激しく
そして、何処か悲しそうな、内の怒りを無理矢理に抑えつけているような瞳で、魔物は告げる。
「君の力では、単独で私に戦うにはるかに足りぬ。
自信を持つことは悪いことではない。
だが、己の力量を過信する者は、いずれ無残な死を迎えるのみだ…!」
ギリギリと圧を加えられ、先のダメージに加え全身がきしむような新たな痛みを与えられた彼女は、恐怖と苦悶の表情で涙を浮かべた。
悔しい。
でも、怖過ぎる。
反撃に出ようと指を動かし、術式を組もうという思いとは裏腹に、震える手が動かないのは…魔物の強烈な握力によるものではなかっただろう。
-参加料はお前の命か、それ以上に大切なものだ-
かごめの言葉が脳裏をリフレインする。
頬と足を伝う熱い感覚が、彼女の心を圧し折り…彼女は初めて己の蛮勇を後悔した。
せめてもの情けをと思ったのだろうか。
鳥の魔物は、無様な姿となって解放した彼女の首元に狙いを定め、その強靭な足の一撃を繰り出そうとするその瞬間だった。
風を切る、矢の音がした。
「…ッ!?
何者だ!」
魔物はその凄まじい威力を一瞬で察し、飛び退き間合いを離す。
菫子の瞳には、歪んだ黒い羽がひとひら、目の前に映る。
その両者の間に、何時の間にか立っていたその少女が…振り返って笑うのが見えた。
♪BGM 「東の国の眠らない夜」(東方文花帖)♪
「もう、大丈夫。
こいつは、私がやっつけるっすから…安心するっすよ!」
その姿に鳥の魔物は目を見開いた。
「君は…あの時の…!
だが、何故だ…あの時とは見違えるようだ…!」
魔物は、驚きと、何処か歓喜の表情で戦慄くように呟いた。
少女…翠里は、勝気な表情でゆっくりと、後ろの少女を庇うように向き直った。
「私もあなたのこと、ずっと探しまわってたっす。
何時か、つぐみさん達が言ってたみたいに、私にもずっと借りを返さなきゃならない相手がいた。
…私のチカラじゃ、まだまだ文さんには遠く及ばないかもしれないけど…ニワトリさん、私と勝負するっすよ!」
矢をつがえ、強烈な妖気を放つその姿に、僅かに身震いする鳥の魔物は…ニヤリと笑い、そして先に見せた構えとまるで異なる、まるで猛禽が獲物を狙い飛びかかるかのような構えをとる。
「良い眼だ…!
君は、あの時見た君とはまるで別人のようだ…あの日見た我が強敵(とも)、射命丸文に匹敵するかの野生を感じる!
我が新たなる強敵よ! 名を、教えてはくれまいか!」
「私は翠里、姫海棠翠里…幻想郷最速の翼、その背を追う者っす!
あの時の借り、ここできっちりと返させてもらうっすよ!!」
互いの口上が終わるや否や、双方の闘気と妖気が台風となり、菫子の目の前で激突する。
「…あーあ、こんなになっちまって。
解っただろ、
でも、もう多分大丈夫だぜ。あとは、
ふたつの暴風がぶつかった余波で吹き飛ばされた菫子は、再び扉へと打ちつけられるその瞬間に、誰かにしっかりと受け止められている事が解った。
呆れるような口調と共に、ハンカチで頬をぬぐう魔理沙に、彼女はしっかりと抱きついて泣いた。
…
…
レティ「…狐野郎こういう表現大好きね」
静葉「使うとしたらまず何処かで菫子の鼻っ柱を盛大に圧し折るところからにする、みたいな考え方はあったらしいわ。
それじゃ、まずは紫もやしが軽く触れて終わったマスターバードの解説から行くわよ」
DLCクエスト「戦いに生きる空の王者」ボス マスターバード
レベル65 HP30000 突・雷弱点/炎耐性 即死・石化・テラー・混乱・麻痺無効/腕封じ・脚封じ耐性/毒に弱い
畏怖の眼光(頭) 全体にテラー付与と物理・属性攻撃力ダウン
気功脚(脚) 単体に壊属性攻撃、麻痺を付与
朱雀の構え 3ターンの間「朱雀の構え」を取り、使用するスキルが以下のふたつに変更される
・鳳凰爪撃(腕) 近接拡散斬属性攻撃、頭封じを付与
・紅蓮旋風翔(腕) ランダム対象4~6回の近接炎属性攻撃(同一対象への複数回ヒットあり)
静葉「基本的に力押しのボスね。
だけど、STRはもとより、LUCも僅かとはいえ金竜より上というバケモノよ。
挙句かなり異常付与の絡む攻撃を多用してくるから、クエスト説明文の推奨レベルで5人パーティでも普通に全滅させてくる強敵よ。
エキスパなら5人でもレベル75程度ないとかなりきついわ」
レティ「とんだ地雷キャラよね。
戦う前に戦う人数選べるっていうけど、実際はその時のパーティ人数で強制的に挑むことになるわね。
一人で挑む場合は、一人でこいつのところまでいかなきゃならないという」
静葉「DLCの連中に関してはもう誰もパターン調べてる奴がいないと見えて、実は今回は低レベル攻略動画のマスターバード編の記述を引用させてもらうわ。
あのうぷ主ついに低レベルで七王まで攻略したらしいけど、必要なグリモア厳選と戦術構築までやってやりきってしまううぷ主がクレイジーなのか、そこまでやらせるように仕向ける視聴者がクレイジーなのか解らなくなってくるわ」
レティ「そこは触れない方がいい話だと思うけどねえ。
で、肝心のパターンは」
静葉「まず基本パターンとして、初手と、朱雀の構えを解いた直後のターンで必ず畏怖の眼光を使ってくるわ。
HPが75%程度になるまで、初手の朱雀の構えの後は、通常攻撃と気功脚ひたすら繰り返すんだけど、どっちが先になるかはランダムよ。
で、HPが75%を切ったら、そのターンの終了時にターン消費せず朱雀の構えをするわ。ここがまず第一段階ね」
レティ「この時は様子見、というわけね。
っても、気功脚だけでも普通に700以上の与ダメが飛んでくるわけだから」
静葉「レベル99で、HPブースト★★でジビエを食べたレンジャーがわりと頻繁に即死するダメージよ(文メモ:ピクニックでも普通に200ぐらい喰らうんですがそれは…)」
レティ「単独で挑むつもりなら、受ける前提で行くのは無謀ってわけね」
静葉「第一段階の朱雀の構えは、鳳凰爪撃を三回。
当然、鳳凰爪撃の破壊力もかなりのものよ。属性が違うから、気功脚が受けれても爪撃で死ぬというパターンもある。
その後は畏怖の眼光から通常攻撃と気功脚をひたすら繰り返す。構え前が通常攻撃なら気功脚、気功脚なら通常攻撃から飛んでくるわ。
50%を切ると、二回目の朱雀の構えをして、今度は鳳凰爪撃を二回、最後に紅蓮旋風翔をぶっ込んでくるわ」
レティ「旋風翔は純属性だっけ?
ランダムヒットはサラマンドラの怒りの獄炎撃もだけど、ガードでは捌き切れないのがね。基本が一発400程度もらうから、半端な対策では消し炭にされて終わるわね」
静葉「ミストもしくは高レベルの幻想曲とサークルを併用して捌くのが賢いのかしらね。
で、構えを解いた後は25%前後までまた畏怖の眼光から気功脚と通常攻撃のループで、最後の朱雀の構えのところまでくれば最終パターンになるわ。
最終パターンの朱雀は、3ターン旋風翔を連打してくる殺戮モードになるわ。そして、構えを解いて畏怖の眼光から、構え前の行動に応じて気功脚か通常攻撃どちらか使用してすぐに朱雀の構えから旋風翔三連打。
つまりラストのパターンは朱雀の構え、旋風翔×3、畏怖の眼光、通常攻撃or気功脚のターン終了時に構え、旋風翔…というループね」
レティ「…なんか最後の最後で追い詰められたら本気を出す、みたいな?」
静葉「それまでの道中でも十分死ねるんだけど、まあ、ぶっちゃけ最終パターンまではある程度はゾンビ戦法でもどうにかなるということね。
あと、何気に呪いが普通に入るので、運は絡むけど、呪い三倍料理を食べて二回目の構えの時に呪いをぶっ込んで、旋風翔を究極がまんで呪いカウンターするという荒技も可能よ」
レティ「それまでをどうやって凌ぐかっていうことまでは考えないのね。
大体こんな奴をどうやって単独で倒すっていうの? 私知ってるわよ、実は前回マスターバードに触れた時だって、ピクニックですら一度返り討ちにされてたって」
静葉「初手から夢幻残影使わなかった結果がまあね。あと眼光からのテラーが」
レティ「ただでさえその直前金竜のテラーに散々苦しめられてきたのに…」
静葉「だから今回単独撃破に翠里を使ったけど、基本的には低レベル撃破マスターバード編で、無印でフォース使ったら真逆の効果を生み出してしまう不遇の漢()が取った戦法の大部分をパクっているわ。
もっとも、レベルは43ではなくて99なんだけど」
レティ「動画にはならなかったけど、2りPTだったらレベル20でも狩れるとかほざいてたわねあの饅頭。
十分にそれも正気の沙汰じゃないんだけど」
静葉「レベル制限かけてない、なおかつ99引退の99レンジャーですら本当にただの運ゲーだったわよ。
今回はマスターバードの紹介だけにとどめて、次でこちらの戦法の詳しい解説をしていくわね」
レティ「先に聞いておくけど、何回hageたの?」
静葉「それ先に言ったらつまらない気もするけど…実は5回よ。
装備や料理も何度か変更してるし、その辺の解説も次ね」
レティ「それで5回とか言う辺りでも十分クレイジーだけどねえ…」