「…そうでしたか。
この老体にも、アリアンナ様におかけすべき言葉か見つかりませぬ…しかも、今また、ハイ・ラガードの英雄たるそなたにも、それほどまでの重責を背負わせてしまうことになるとは」
そう言って、ダンフォード老はつぐみに対し深々と頭を下げる。
あのあと、憔悴しきったアリアンナを部屋に送って間もなく、ギルドハウスにダンフォード老が訪ねてきた。
ハイ・ラガードの全ての冒険者に関わる事柄を取り仕切るこの老大臣であれば、友好国からの賓客たるアリアンナの動向を案ずるのは至極当然のことなのだろうが…この老大臣の語る事実は、つぐみにとっても意外な事であった。
「カレドニアの要請を受け、我々も打ち捨てられていた格好になっていたギンヌンガ遺跡に関する調査も独自に行い、これまでも都度、かの国へ調査の内容をつぶさに伝えてきたつもりでありました。
されど、つぐみ殿をはじめとした「狐尾」の手により、全ての真相が明かされてもなお、カレドニアの側が執拗に「儀式」の執り行いを求めてくること、その矢継ぎ早な催促に少々、キナ臭いものを感じておったのです。
故に…この老体に鞭打ち、アーテリンデ殿に同行を願い、そなたらの元いた世界へ通じるという時軸を越え…かごめ殿に事情を話したのです」
「お母さんに!?
じゃ、じゃあ急に、私にアリアンナ…さんの護衛を依頼するように言ってきたのも」
慌てて言い繕うつぐみだったが、動揺していたこともあったろうが、それだけこの短期間にアリアンナとも打ち解けたクセでつい呼び捨てにしかけてしまう。
ダンフォードは、それは無用、とばかりにゆっくり首を振る。
「我らとて、呑気に草を貪る羊の集団ではありませぬ。
それなりに腕利きの者を密偵として送り、その内情を調べて解ったこと…おそらくかの国の今の大公家は、姫将軍の失踪以来出ぬものと思っていた「印の娘」が、形骸化していた主家より出たことにより…貴族どもが角の立たぬよう、それを体よく亡き者とする機会をうかがっていたとしか思えぬ事実がいくつも浮かんでくる始末。
このままでは、我らがラガード大公様や公女様とも縁の深いアリアンナ様が、何時その憂き目にあうか解らぬ状態であることがわかり申した。
…それ故、危険を承知で、アリアンナ様を「儀式」遂行の名目でこの国へ迎え入れようとすべきの結論へ至ったのです」
「じゃあ、アリアンナをこの国へ一人で来るように仕向けたのも」
クロエの問いかけに、ダンフォードは一拍置いてからゆっくりと頷く。
「左様。
この老体より、絶対条件として突きつけたもの。
無論…この国で最も老練の腕利きであり、隠密行動にも長けたライシュッツ殿に、陰ながら道中の護衛も頼み申した」
「ライシュッツ…この国で狐尾に次ぐと称されたギルド・エスバットの銃士「魔弾のライシュッツ」か」
ベルトランの呟きに、その通りです、とダンフォードは頷く。
「最早アリアンナ様に、帰る国など存在せぬのですじゃ…それどころか、そのお命すら…。
それ故、形だけでも「儀式」を完遂させ、不穏分子どもを黙らせねばならぬ…ですが、アリアンナ様が幼少のみぎり失ったはずの「ファフニールの騎士を選ぶ力」とは無関係に、新たな「騎士」となるべきものが生まれたことは、その絶望的な状況を覆す一縷の望み。
……じゃが、それをこの老体から、強要することはできませぬ。
この老体とて人の子…人ならざる身といえ、このような未来ある娘御に過酷な宿命を背負わすことなど」
ダンフォードは、震える手のままつぐみの腕を取り…深く項垂れる。
つぐみは目を閉じ、その決意を確かめるように頷いて、その手をしっかりと握り返す。
「私は…この悲しい宿命を終わらせる決意なら、とうに固めています。
でも、アリアンナにまでそれを強要するつもりはない…二人で話し合って、それで結論を出したいと思います」
「でしたら、私の心も既に決まりました。
私は…“印の娘”としてこの儀式を最後までやり遂げます」
はっとしてつぐみ達が振り返ると、そこには、アリアンナが立っていた。
ひとしきり泣いた後なのだろうか、瞼を腫らしてはいたが…その表情に、煩悶はない。
「私も、少し思い出せたことがあるのです。
私が失った、空白の記憶に…つぐみ様と同じ「印」をもつ方に護って頂いた記憶を。
その方がどうなったのか、私には思い出せない…ですが、その記憶を辿るためにも、つぐみ様と「儀式」をやり遂げることで、私が何をすべきかも、見えてくるのではないかと思うのです。
身勝手を申し上げているのは、承知しております。でも、今の私に残された道標は、それしかない…!」
「アリアンナ…」
アリアンナはつぐみの手を取り、精一杯の笑顔で告げる。
「私も、精一杯成すべきことを致します。
ですから、つぐみ様、フラヴィオ様…どうか、お力を…貸してはいただけませんか…?」
「狐尾幻想樹海紀行 緋翼の小皇女」
第四十九夜 氷姫アーテリンデ
静葉「ドーモ、秋神の姉の方です」
文「なによその自虐的なアイサツ。っていうかなんなのこのタイトル?」
静葉「その理由はあなたが一番よく知ってると思うんだけど。
とりあえずはアラクネーは一旦飛ばして、第三階層の話から入るわよ」
文「炎の魔人は?」
静葉「一蹴って感じだったからねえ。
一応28って適正よりちょっと上よ。推奨は26前後と言われるわ」
文「結界にファイアガードまで持ち込んで装備は最強装備なんだったら、もうちょっと下げられそうな気がするんだけど」
静葉「まあねえ。
でも28だと、流石に狼相手がきつすぎて」
文「いや、避ければいいじゃない」
静葉「面倒くさいから一気にレベル31まで上げて狩ったわよ(真顔」
文「うわあ(しろめ」
静葉「一匹狩れば通行に不自由なくなるからね。
あ、狼だから一頭だろってツッコミはなしで」
文「どうでもいいわよそんな事。
まさか邪竜まで狩ったなんて馬鹿な事言わないでしょうね?」
静葉「やっても良かったんだけど(真顔
最初に見た奴がいきなり稀少個体だったし、正直スルーはもったいなかったわねえ」
文「やめんか(真顔
というかもうFOEを完全にただの経験値の塊としか見てないでしょ」
静葉「氷爆生活長かったから」
文「どんな造語よそれ」
静葉「それはさておき、三階層まで特に変わったイベントはないわね。
話をすっ飛ばしたアラクネー戦の後、例のモニュメントのところでイベントが発生し、主人公が幼い頃にアリアンナに出会っていた際、既に「印」に選ばれてしまっていたこと、百年前に儀式が中途半端に終わっていた事が解る…っていう話は、ヤマメが大暴れした時にも書いたかしら」
文「ああ、かごめがミノムシになった時の」
静葉「その覚え方もどうなのかしら…まあ、間違っちゃいないんだけどさ。
因みに、ミッションの題目がちょっと変わってるわね。サラマンドラの羽はギンヌンガの情報と引き換えに儀式関連の文書管理の担当者が欲しがってることになってるし、大公の病を治す薬の材料として要求されてるのは氷の花だけね。
ちょっと先の話になるけど、大公の病を治すのに聖杯すらも必要ではないみたいね。しかも、のちに触れるある時点ではおそらく、その時点で大公の病も回復しているか、最悪でも快方に向かっているかという感じみたいね」
文「それじゃあなんのために天空城を目指すのよ?」
静葉「それはまあ、ギンヌンガの茶番が終わった辺りで触れることにしましょうか。
今回はスキュレー戦になるけど、第三階層までは階層ボス攻略ごとに、変身時限定の特殊なスキルがいくつか解禁されるわ。
キマイラ戦後に消費TP3で凶悪な補正(キャラクターのレベル1の時点で350)を与える、変身1回ごとに1回しか使えない近接壊攻撃「メテオスマッシュ」、バジリスク戦後に変身時限定の食い縛り「パワーセル」、炎の魔人戦後にフォースブーストを実質2ターン延長させる「エクステンド」、アラクネー戦後に変身時リジェネ効果を得る「自己再生」が追加されるわ。
パワーセルと自己再生はパッシブ。当然、どれもグリモア化はされないわよ。フォースブレイクに準じる扱いだと思えばいいわね」
文「どれも変身時限定なのね。
まあ、通常解禁されたら頭おかしいスキルばかりだけど」
静葉「メテオスマッシュは変身時に1回しか使えないから、1回使ったら次の変身まで使えない上に単体なんだけど、TP3でアホかっていうくらいの補正つくからね(兎詐欺メモ:こいつも他職のブレイクスキルと一緒でレベルによって威力が変動するんだが、レベル40だとおよそ300%ぐらいじゃねえかな。あの人食い箱野郎の大喰らい並のコスパとか頭わいてんじゃねーか?)。
これを術掌で属性を書き変える事も勿論可能よ。2ターンかかるけど、TP17で超強力な属性攻撃を仕掛けることができるわ。ファフはTECもかなり高い部類だし、実際ウェイブ系が主力になることが多いから属性攻撃ブーストを伸ばしてやった方が活きるし、術掌との相性はいいかもね」
文「そうすると、スキュレーの時にも何か解禁される、ということね」
静葉「その話は最後の方で触れるわね。というわけで、一旦茶番に戻すわ」
…
…
~六花氷樹海~
儀式を進めるべく、ファフニールの騎士となる力を得るために樹海を進む。
その思いを新たにしたつぐみとアリアンナは、フラヴィオは勿論のこと、ある目的から遺跡の謎を探ろうというベルトラン、そして「ベルも行くなら」と同行を願い出たクロエを新たにメンバーに加え、「護り手」の言葉に従い、年中雪と氷に閉ざされた氷の樹海へと赴く。
分厚い氷に閉ざされた氷湖を越え、襲いかかる狼たちの牙をかわし、邪竜の潜む森を切りぬけつつ、つぐみ達はやがてある場所へとたどり着く。
そこには、この土地の巫医とよく似た…とんがり帽子と簡素ながらも耐寒性の高そうな、しっかりした作りのローブを身に付けた黒髪の女性がたたずんでいるのが見える。
女性は、深い悲しみと憂いに満ちた表情で、時折上層の「桜ノ立橋」から舞い落ちてくる桜の花びらが舞う、幻想的な光景を醸し出す氷湖のある一点を、ただずっと眺めていた。
その憂いに満ちた表情と裏腹に、その女性の放つある種のオーラ…樹海に挑み続け、数多の障害を乗り越えてきた歴戦の猛者だけが放つその重圧に、一行は声をかけることにも二の足を踏む。
やがて、つぐみ達の気配を察したのか、その女性はゆっくりとこちらへ振り向いた。
「随分、久しぶりに見る顔ね。
…ああ、そう言えば私はあなたを知っているけど、直接会うのも話すのもこれが初めてですものね。
正確には、あなたの名前と母親の顔を知っている…そう言うべきかしら?」
そう言って、女性は向き直って、何処か悪戯っぽく笑う。
「あなたは?」
「…かつて、あなたの仲間の一人は先に私の名を呼び、そしてある子は、私達に先に名乗れと返した。
早いもので、それからもう一年近く経つのよね。
…その当時は、よもやこのギルドが、この公国最強の座を恣にするなんて誰も考えてはいなかったでしょう…同じように、最後は私達が手を下すことで、全てが見果てぬ夢になるものだと、そう思っていた」
「なんだ…?
一体何言ってんだ、あんた…」
「そうね、はじめまして、と言っておくべきなのかしらね…「狐尾」ギルドマスターの愛娘、藤野つぐみさん。
私はアーテリンデ。今は色々あって、ハイ・ラガード公国に仕える者の一人」
その名前に、つぐみは目を見開く。
「姫巫医アーテリンデ…現在の「エスバット」の実質的なリーダーか」
「マジで!?
じゃあ、あの人がかつて公国最強と呼ばれた」
難しい顔で腕組みをするベルトランの言葉に驚くフラヴィオに、アーテリンデは寂しそうに笑う。
「それはもう過去の話。
それにギルドといっても、私と爺の二人だけ…それに、さっきも言った通り私達はもう、公国に仕える身になったわ。
あくまで名目上で、だけどね」
「どういう事だ?
「エスバット」の話は、俺達も聞いた事があるぜ。
今はもう無くなってしまったっていう「ベオウルフ」と共に、この樹海迷宮を発見して…一時は天空に最も近いギルドと呼ばれた」
「では…その「エスバット」が、氷樹海よりも上を目指そうとした数多の冒険者を…この氷樹海で葬ってきたという話は、聞いたかしら?」
「なっ…!!」
思わぬ事実に、驚愕するフラヴィオやアリアンナばかりでなく、ベルトランも僅かに眉をひそめる。
アーテリンデは淡々と、過去にあった事実を告げ始める…。
「この氷樹海にはかつて、ワイバーンという強力な魔物がいた。
天の城に住む「上帝」が生み出したこの空の暴君によって…当時最強と言われた「エスバット」のリーダー・マルガレーテは、仲間を逃がすためにただ一人でこの凶悪な魔物に立ちはだかり、命を落としたわ。
けれども…彼女は「上帝」の手により、新たな氷樹海の主…氷姫スキュレーとして蘇らされてしまった。
誰よりも優しかった彼女が、他の冒険者の命を奪い喰らう残虐な魔物と化したのよ…!!」
「そんなっ…!
どうして…どうしてそんなことに…!?」
さらなる驚愕の事実に戦慄くアリアンナ。
アーテリンデは深く息を吐く。
「それが、永遠の生命を望む「上帝」の研究の一環だったからよ。
しかしそれはあまりに不完全なもので…永遠に近しい生命を得る代わりに、人間としての記憶や理性も失う怪物になってしまう…私達はかつて、それでも変わり果てた彼女を護ろうと、彼女を「ただの強力な魔物」として討とうとする他の冒険者をこの手で葬った。
滑稽な話よね…他者の「命を救う」力をもつ巫医が、「命を奪う」側に回るなんて。
…無論、全て私達が手をかけたわけではないけどね。半端な実力の冒険者では、そもそも氷樹海を踏破することもできなかったし」
「じゃあ…「狐尾」が立橋より上に行くまで、「エスバット」よりも上の階層に辿りつけたギルドがいなかったのは」
「そういう事よ。
私達はこの地でフランと…この樹海迷宮の攻略を任された「狐尾」のメンバーと戦い、敗れた。
その後は色々あったけど、今この場にこうして私達がのうのうと生きていられるのも、彼女達のお陰…なのかしらね。
私達は…この湖でフランが葬ってくれた氷姫と…私達が奪ってしまった命の分まで、この樹海の謎を解き明かそうとする冒険者や大公宮を援ける道を選ぶことができた。
もし氷姫が…マルガレーテお姉様が生きていたなら…きっと今の私と同じ道を迷うことなく選んだと思うから…!!」
ゆっくりと、それまで髪に挿していた、古びた銀の髪飾りを手に取り、アーテリンデはゆっくりと独特の、剣を構える様な構えをとる。
そして、伝わってくるすさまじいプレッシャー。
「つぐみ。
あなた達がこの地を目指した理由は、私も知っているつもりよ。
私がここへ来たのも、私にも声が聞こえたから…過去の遺産である「ファフニールの力」を受け継いだあなたの力を…私との戦いを通じて高めてほしいという」
つぐみは目を見開く。
直接会ったことは確かに初めてであるものの…かつて、アーテリンデとライシュッツは、フランドールや文達と互角以上の力を揮い、互いの護るべき物のために死闘を演じたことを、つぐみも知っている。
直接剣を交えたフランは「私達が本来の力を揮えたとしても、アーテリンデが最初から本気だったらとても勝負になったとは思えない」と話していた。
てゐもまた、巫医としてのみならず、剣士としても魂魄妖夢以上の実力者であると、そう評していた。
フランの戦闘能力の高さはつぐみもよく知っているし、フラン達一行の過酷な旅路を俯瞰の位置から見続けていたてゐの目利きを疑う余地は何処にもない…だが、目の前に立ちはだかるアーテリンデは、明らかにそれ以上の、恐ろしい何かを秘めている…つぐみは、そう感じていた。
その認識は、一瞬後に確信に変わる。
「私はあなたに会う事はなかったけど、一週間ほど紅魔館にいたわ。
そこで、私は新しい力を得た。
私にとっては忌まわしい記憶の産物…けれども、私は…お姉様が“得てしまった力”で、他の誰かを援ける力になれるのなら!!」
彼女の手の中で髪飾りが白銀のまばゆい光を放ち、その光が力の脈動と共に解き放たれる。
「湖上に嗤え、蒼嵐氷姫!!」
♪BGM 「戦場 朱にそまる」(SSQ)♪
髪飾りが一瞬、流線型の銀の刃を持つ剣へ変わった次の瞬間、冷たく輝く銀の光と凍える様な旋風が辺りを満たし、その中から、女性のシルエット残した上半身と、タコやイソギンチャクといった海生生物の特徴を併せ持った異形の肉体をもつ怪物が姿を見せたではないか!
「な…どうなってんだよ!?
なんであの人、あんな姿に…うわあ!?」
何かの気配を感じてその場を飛びのいたフラヴィオの目の前に、湖の厚い氷を突き破り巨大な触腕が姿を現す。
しかもそれは一本二本ではない…湖のそこかしこに、同じようなタコのような巨大触腕がいくつも姿を現している!
「…迎え撃つ気、満々?」
「ちげえねえ。
理由は解らんが、魔物に変身する力をもつ人間がこの世に…ああいや」
ベルトランは僅かに、険しい表情でアーテリンデだった者の姿を眺めるつぐみを見やる。
「どうやら、俺達が…いや、俺が知ろうとしている謎の答えは、想像以上にヤバいシロモノだったのかも知れねえな…!!
くそっ、嫌になるねえ」
口ぶりとは裏腹に、ベルトランはクロエを庇うように半歩、盾を構えて前に進み出る。
つぐみもまた、不安そうに見つめるアリアンナに一度振り返り、心配ない、というかの如く、微笑んで頷く。
「ここを越えていかなきゃ、儀式は続けられない。
この人に勝たなきゃ…先には進めないんだ!」
「…はい!」
ドラグヴァンディルを抜き放ち、力を解放するつぐみの姿もメガデンリュウの姿へと変貌していく。
その姿を見た新たな氷姫…アーテリンデは、一瞬だけ目を細めるも…眦を裂き、狂猛な咆哮を氷の森へ放つ。
-さあ、本気で来なさい!
でなきゃ、あなた達の冒険は、ここで私が終わりにしてあげるッ!!-
…
…
文「どうしてこうなった(しろめ」
静葉「まあ二週目となれば本来いろんな要素も解禁されてたりするものだし?
サガ3SOLでアシュラゴーストとかと戦えるのも実質、二週目からだしねえ」
文「限度ってもんがあるでしょうが限度って。
大体サガ3SOLなんてあの狐野郎、武器の消耗修理と資金繰りがあまりにもシビア過ぎてついていけなくなったから、異次元入った直後に投げやがったし」
静葉「最初から素直にイージーで周回して引き継げばよかったものを、という」
文「そういう脱線はもうよろしい(真顔
スキュレーに関してはもう説明要らないと思うけど、こいつどうやったんだっけ?」
静葉「装備グリモアはほぼ変わらないわね。
ベルトランにケリケイオン、クロエに真竜の剣を持たせて、ベルトランの血の暴走を切った、大きな変更はこんな辺りかしら。
あと炎術掌の伝説グリモアがあったから、それを主人公に持たせたわ」
文「大改変ぢゃないですか(しろめ」
静葉「んでもってマヌケな事に道中から挿しっぱなしになってた抑制攻撃を火劇に換えるのを忘れてた割に、何故かめいっぱいファイアオイルを買い込んであったからフラヴィオはそれでちまちま殴ってたんだけど…ちまちま殴った、というのはあまりにも異常過ぎるダメージが出てもうね」
文「だってそのファイアオイル、元々アラクネー戦に持ち込んだのの余りじゃない。
ただ買い込んだはいいけど、普通にフラヴィオは序曲から通常攻撃してた方が強いし、主人公は三色剣があるし」
静葉「まー確かに明らかにオイル要らないのよね。
実際、レベル38でレベルの暴力もあったけど、1ターン目号令から術掌、2ターン目に炎メテオスマッシュとブースト霊攻大斬と夢幻残影、3ターン目のイグニートレイであっさり決まっちゃったもの。
弱体化させる必要もないぐらい楽勝だったわね」
文「それも酷いわね。
というか、地味に触れてないけど道中のエスバットはどうしたのよ」
静葉「亡者の灰を結界で防いでいる間にバフ撒いて、じいさんが高速乱射してくる直前から術掌メテオスマッシュで一撃よ。
そもそもじいさん、結界で防ぎきれなかったベルトランのテラーを転移されたり、返しのクロエから放ったバイタルシャットで腕縛られてまったく何もできなかったわね」
文「アワレ過ぎる…まあ、私達も戦ってたときは気づかなかったけど、ライシュッツ爺さんのバステ耐性ザルだからね」
静葉「アーテリンデの方はもっとひどいわよ、次のターン巫剣解放直後にイグニートレイからの五月雨射ちで瞬殺。
巫剣解放したら森羅万象されようがされまいが普通に死ぬ可能性あるしね」
文「私達の時なんて、こいつらに弱点あるなんて普通に考えてなかったしねえ」
静葉「それでライシュッツよりアーテリンデの方を先に倒して進んだとか正直信じられないんだけどねえ。
まあじいさんの方は攻撃も単調とはいえ、HP減らすと全体攻撃が混ざってくること考えると、生かしとけば厄介な気がするし。
亡者の灰をシャットアウトできるなら、アーテリンデの巫剣を喰らって困ることはあまりないしね」
文「というか、結界完全じゃないのに挑んだってどういう事なのかしらね。
クロエが結界を伸ばしたってことは、どうせ巫術マスタリも結界も重ねてる筈だから100%防げるんじゃないの?」
静葉「何を勘違いしてたのか、エスバットの時までマスタリを重ねてなかったらしいわよ。
スキュレー戦の時にはすでに巫術マスタリ結界伝説再生陣バイタルになってたけど」
文「何やってんだか」
静葉「でもって、さっき地味に触れてなかったけど、スキュレー戦で解禁されるのがこの超級クソスキル・アクセラレートよ。
メテオスマッシュ、エクステンド同様変身1回につき一度のみ使用可能。
使ったターンの次のターンも変身状態でさえあれば、最速で3回行動ができるというイカレたシロモノよ」
文「ある意味でもなんでもなく、フォースエナジーと並ぶ変身時最大の目玉ね。
幼子、始原の魔神といった頭おかしい隠しボスをそのパターン完全無視して数ターンの内に沈め切るのに必須な、そしてそれを可能にしてしまう超絶クソスキルだわね」
静葉「エクステンドは実質2ターン延長、アクセラレートは実質一回分の手数を余分に増やしてくれるわけだけど、例えばディレイチャージは乗らないのにブレイドリコールの属性追撃とかはしっかり発動するし、フルスラッシュは二撃目以降のダメージが下がっていくのに対し、レゾナンスソードは最高火力のまま三連打できたりとか、仕様上注意しなきゃならない特徴もあるんだけどね。
単純にいろんな技を三回たたき込むように使っても強いけど、チャージ系スキルとかをうまくかみ合わせると瞬間火力が物凄いことになるわ。言うまでもなく、ファフニール変身時の強さの基幹というべきスキルね」
文「これをうまく使いこなせると、ここからのボス戦とかが途轍もなく楽になるからね。
制限プレイするなら、そもそも変身を使わないというだけでも大分難易度は上がるけど」
静葉「変身中のみ使用可、なおかつ効果発動時にも変身を維持している、という前提条件はあるものの、SSQで猛威をふるったアクトブーストをはるかに超える凶悪スキルだから、雍彭雍涼を護って使わないと本当にただのヌルゲーになるわ。
今回はただの周回目的だからじゃんじゃん使ってますけど(真顔」
文「うんまあ、それは知ってる(真顔」
静葉「というわけで、今回はここまで。
次回は帰ってきたYAMAMEちゃん回を挟んで、いよいよ今回のおはなしの中盤のクライマックスへとつながっていくことになるわ」
文「またクモですか(真顔
というかしつこいようだけど、あいつ本当に事あるごとにつぐみに絡んでくるわね」
静葉「同じ電気タイプなんでポケモンとしては同時選出できないんですけどねえ。
つぐみは鈍足だからネットの恩恵も受けにくいし」
文「どうでもよろしいそんなこと」
…
…
「お嬢様…」
その激しい戦闘を終え、氷も所々派手にひびが入ったり砕けたりしているその氷湖の中央で、大の字になってその身体を預けるアーテリンデの元に、一人の老銃士が心配そうに彼女を見下ろしながらたたずんでいた。
「あーあ、本気でけちょんけちょんにしてやるつもりだったんだけどなあ。
あんまり認めたくないけど、これも血筋の差、っていうのかしら。
私もいっそ、お姉様みたいに魔物に改造されちゃえば、もっとましな戦い方が出来たのかしらね」
自嘲気味に呟くアーテリンデ。
その銃士…ライシュッツが、一層悲しげに眼を細めるのに、冗談よ、とアーテリンデは笑う。
彼に身体を支えられ、時々身体の所々に走る痛みに顔をしかめながらも、アーテリンデは自分の巫術で傷ついた肉体を癒しつつ、ゆっくりと立ち上がった。
「…悔しくないと言えばウソになるわ。
でも、彼女達を見てると、辛い思いをしながらそれでも歯を食いしばって乗り越えて、そうして生き抜くことを選べたことに感謝すら覚える。
ねえ爺、もし私達があの時、フラン達に殺される結末を辿っていたとすれば…そのことで私達の気は済んだかもしれないけど、その方が今の私達の辿った道より正しかったと思う?」
ライシュッツはゆっくりと頭を振り、そして、ゆっくりと言葉を選ぶように答える。
「それは…今となっては解らぬ事です。
ですが、きっとそうすれば、マルガレーテ様はお喜びにならぬでしょう…我に言えるのは、それだけです」
「そうよね。
私達はお姉様が苦しむ姿を見たくなかった…その為に、お姉様を護る道を選んでしまったのだもの。
それが、よりお姉様を悲しませることともわからずに」
憂いを帯びた声のトーンではあったが、空を見上げるその表情には煩悶はない。
やがて、アーテリンデは踵を返す。
「あなたにどんな道が待ち受けているかは解らない。
けど…あなたはどうか…私と同じ悲しみを背負わぬよう、祈っているわ」
去り際に、それだけ呟く。
その言葉は、誰に送られたものだったのか。